説明

トリインフルエンザウイルスに特異的な迅速診断法

【課題】ヒトインフルエンザウイルスと区別して、トリインフルエンザウイルスを特異的、迅速かつ簡便に検出する方法及びこれに用いるイムノクロマトグラフ法用試験具を提供する。
【解決手段】ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体を用いて、免疫学的測定法により、トリインフルエンザウイルスを検出する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリインフルエンザウイルス検出方法及びトリインフルエンザウイルスを検出するためのイムノクロマトグラフ法用試験具に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスは、核タンパク質(NP)と膜タンパク質(M)の抗原性の違いによりA型、B型、及びC型に分類される。このうちのインフルエンザA型ウイルスは、さらにヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)のアミノ酸配列又は抗原性の違いにより、HAはH1〜15の15種類、NAはN1〜9の9種類に分類され、その組み合わせの数の亜型が存在する。この中で、ヒトを宿主としてヒトに感染する亜型は、H1〜3、N1〜2である。そして、インフルエンザA型ウイルス(H1〜3、N1〜2)及びインフルエンザB型ウイルス(以下、「ヒトインフルエンザウイルス」ということもある)が、毎年大流行を引き起こす、いわゆるインフルエンザ(ヒトインフルエンザ)の原因となるものである。
【0003】
インフルエンザA型ウイルスはヒトだけでなく、多くの哺乳動物及び鳥類にも感染する。インフルエンザA型ウイルスが鳥類に感染して起きる鳥類の感染症が「トリインフルエンザ」であり、その原因となるトリインフルエンザウイルスには、H1〜15、N1〜9のすべての亜型が確認されている。トリインフルエンザウイルスの多くは重篤な症状を示さないが、H5及びH7亜型のトリインフルエンザウイルスの中には、鳥に感染した場合に重篤な症状を示すものもある。これらは高病原性トリインフルエンザウイルスと呼ばれるものであり、ヒトへの感染の可能性が危惧されている。また、H9亜型のトリインフルエンザウイルスの中には、ウイルスに感染した家禽と接触したヒトへの感染、発病が報告されている例もあるため、ヒトでの感染の拡大が危惧されている。
【0004】
現在、臨床ではインフルエンザウイルス抗原を迅速に検出するキットを用いてインフルエンザの診断が行われている。このような迅速診断キットとしては、酵素イムノアッセイ(EIA)、イムノクロマトグラフ法を原理として用いたものが挙げられ、インフルエンザA型ウイルスのみを検出するもの(例えば、特許文献1参照)、インフルエンザA型ウイルスとインフルエンザB型ウイルスとをまとめて検出するもの、インフルエンザA型ウイルスとインフルエンザB型ウイルスとを別々に検出するものなどがある。
【0005】
しかしながら、特許文献1の迅速診断キットは、ヒトインフルエンザA型ウイルスであるかトリインフルエンザウイルスであるかを区別せず、インフルエンザA型ウイルスに属する広範囲のウイルスを検出するものである。従って、ヒトがインフルエンザの徴候を示した場合、それがトリインフルエンザウイルスによるものなのか、あるいはヒトインフルエンザウイルスによるものであるかを診断することができない。このためトリインフルエンザウイルスの迅速な診断法の開発が必要とされている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−67979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ヒトインフルエンザウイルスと区別して、トリインフルエンザウイルスを特異的、迅速かつ簡便に検出する方法及びこれに用いるイムノクロマトグラフ法用試験具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために次の技術的手段を講じた。
トリインフルエンザウイルス検出方法に係る本発明は、ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体を用いて、免疫学的測定法により、試料中のトリインフルエンザウイルスを検出することを特徴としている。
この検出方法によれば、ヒトインフルエンザウイルス(A型(H1〜3亜型)及びB型)とは反応せず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応する抗インフルエンザウイルス抗体を用いているので、今まではヒト由来のインフルエンザウイルスであるかトリ由来のインフルエンザウイルスであるかを区別することなくインフルエンザA型ウイルスとしてしか検出できなかったのに比べ、ヒトインフルエンザウイルスとトリインフルエンザウイルスとを区別して、複数種の亜型のトリインフルエンザウイルスを検出することができる。
【0009】
上記トリインフルエンザウイルス検出方法は、前記抗インフルエンザウイルス抗体が反応性を示すトリインフルエンザウイルス亜型のうち、少なくとも1つがトリインフルエンザウイルスH5亜型、H7亜型及びH9亜型からなる群から選ばれることが好ましい。トリインフルエンザウイルスH5亜型、H7亜型又はH9亜型は、過去にヒトへの感染が確認されたことがあるトリインフルエンザウイルスであり、ヒトでの感染拡大を引き起こす可能性があるからである。
上記トリインフルエンザウイルス検出方法において、前記抗インフルエンザウイルス抗体が、少なくともH3〜15亜型のトリインフルエンザウイルスに反応性を示すものであってもよい。この場合、トリインフルエンザウイルスがH3〜15亜型のものであれば広範囲に検出することができる。
【0010】
上記トリインフルエンザウイルス検出方法において、前記抗インフルエンザウイルス抗体として、インフルエンザA型ウイルスの核タンパク質に対する抗体を用いることができ、また、トリインフルエンザウイルスの核タンパク質のアミノ酸配列のN末端側から第46位〜第159位の領域に存在するエピトープを認識する抗体を用いることもできる。
また、上記トリインフルエンザウイルス検出方法において、前記抗インフルエンザウイルス抗体が、受託番号がFERM P−20822であるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0011】
さらに、上記トリインフルエンザウイルス検出方法は、前記免疫学的測定法が、インフルエンザウイルスに対する第一及び第二の抗体を用い、標識された前記第一の抗体と固相に固定された前記第二の抗体とインフルエンザウイルスとを含む複合体を形成させる工程を含んでおり、且つ少なくとも前記第二の抗体が、ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体であることが好ましい。
この場合、第一の抗体とトリインフルエンザウイルス(抗原)と第二の抗体とでいわゆるサンドイッチ構造を構築させることにより、試料中のトリインフルエンザウイルスを高感度で測定することができる。
【0012】
前記第一及び第二の抗体が、ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体であることが好ましい。
この場合、第一及び第二の抗体の両方に前記抗インフルエンザウイルス抗体を使用することにより、感度及び特異性が上がり、検出精度が向上する。
【0013】
前記免疫学的測定法が、イムノクロマトグラフ法であることが好ましい。操作が簡便で、特別な装置が不要であり、迅速に測定を行うことができるからである。
前記イムノクロマトグラフ法が、前記第二の抗体が固定されたクロマト用膜担体において、当該第二の抗体と標識された前記第一の抗体とインフルエンザウイルスとを含む複合体を形成させる工程を含んでおり、且つ前記第二の抗体が、ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体であることが好ましい。この場合、クロマト用膜担体において、第一抗体と抗原と第二抗体との複合体(サンドイッチ構造)が形成されるため、第一抗体の標識を認識することによりトリインフルエンザウイルスを検出することができる。
【0014】
イムノクロマトグラフ法用試験具に係る本発明は、インフルエンザウイルスに対する第一及び第二の抗体を利用して試料中のインフルエンザウイルスを検出するためのイムノクロマトグラフ法用試験具であって、前記試料を添加する試料添加部材と、標識物質で標識された第一の抗体を担持する標識保持部材と、第二の抗体が固定された判定領域を配置したクロマト用膜担体とを有し、前記第一の抗体が、トリインフルエンザウイルスに反応性を示し、前記第二の抗体が、ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体であることを特徴としている。
このイムノクロマトグラフ法用試験具を使用すれば、ヒトインフルエンザウイルス(A型(H1〜3亜型)及びB型)とは反応せず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応する抗インフルエンザウイルス抗体が用いられているので、ヒトがインフルエンザに感染した場合、その原因となるインフルエンザウイルスがトリ由来のものであるか否かを確認することができる。
【0015】
上記イムノクロマトグラフ法用試験具において、前記標識物質が、不溶性粒状マーカーであることが好ましい。また、その中でも特に、着色合成高分子粒子又はコロイド状金属粒子であることが好ましい。これらを用いれは、判定領域での色の変化を肉眼で観察することにより、迅速且つ簡便に判定することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヒトインフルエンザウイルスとトリインフルエンザウイルスとを区別して、トリインフルエンザウイルスを特異的、迅速かつ簡便に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
トリインフルエンザウイルス検出方法は、ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体を用いて、免疫学的測定法により、試料中のトリインフルエンザウイルスを検出する方法である。
【0018】
トリインフルエンザウイルス検出方法に用いられる抗体は、ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体である。この抗インフルエンザウイルス抗体は、ヒトインフルエンザウイルス(A型(H1〜3亜型)及びB型)とは反応せず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応するので、今までヒト由来かトリ由来かを区別することなくインフルエンザA型ウイルスを検出していたものを、ヒト由来かトリ由来かを区別してトリ由来のインフルエンザA型ウイルスを検出することができる。
【0019】
抗インフルエンザウイルス抗体が反応性を示すトリインフルエンザウイルス亜型のうち、少なくとも1つがトリインフルエンザウイルスH5亜型、H7亜型及びH9亜型からなる群から選ばれることが好ましい。トリインフルエンザウイルスH5亜型、H7亜型又はH9亜型は、過去にヒトへの感染が確認されたことがあるトリインフルエンザウイルスであり、ヒトでの感染拡大を引き起こす可能性があるからである。
抗インフルエンザウイルス抗体が、少なくともH3〜15亜型のトリインフルエンザウイルスに反応性を示すものであってもよい。この場合、トリインフルエンザウイルスがH3〜15亜型のものであれば検出することができる。
抗インフルエンザウイルス抗体が、インフルエンザA型ウイルスの核タンパク質に対する抗体であることが好ましい。また、抗インフルエンザウイルス抗体として、トリインフルエンザウイルスの核タンパク質のアミノ酸配列のN末端側から第46位〜第159位の領域に存在するエピトープを認識する抗体を用いることも好ましい。
【0020】
抗インフルエンザウイルス抗体の具体例として、ハイブリドーマMouse−Mouse Hybridoma 4E3により産生されるモノクローナル抗体(以下、「4E3」という)が挙げられる。当該ハイブリドーマは、大阪府立公衆衛生研究所により独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されたものであり、平成18年2月24日付で受領され、受託番号FERM P−20822が付与されている。このハイブリドーマは、マウス骨髄腫細胞由来株とマウスリンパ球との融合細胞であり、インフルエンザA型ウイルスH3〜15亜型の核タンパク質(NP)に結合するモノクローナル抗体(4E3)を産生する。4E3は、例えばハイブリドーマMouse−Mouse Hybridoma 4E3を10%ウシ胎児血清、10mM L−グルタミン、0.25% NaHCOを含むRPMI 1640培地(SIGMA R6540)中、37℃、5% COにて培養し、産生された4E3を公知の方法にて回収及び精製することにより、製造することができる。
このモノクローナル抗体は、そのフラグメント、及びそのキメラ抗体及びヒト化抗体等の改変抗体並びに変異抗体を含む。これらのフラグメント、改変抗体又は変異抗体もまた、元の抗体と同様のトリインフルエンザウイルスの複数の亜型に対する特異性を有するものである。これらは、当業者により既知の手段又は方法により製造され得る。
【0021】
免疫学的測定法(イムノアッセイ)は、抗体との結合能力を利用して物質を定量的に測定する方法であり、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)法、免疫放射定量測定(IRMA)法、酵素イムノアッセイ(EIA)法、酵素免疫測定(ELISA)法、均一系酵素免疫測定法、蛍光イムノアッセイ(FIA)法、免疫蛍光分析(IFMA)法、蛍光偏光法、化学発光イムノアッセイ(CLIA)法、化学発光酵素イムノアッセイ(CLEIA)法、イムノクトロマトグラフ法を用いることができる。免疫学的測定法において用いられる上記抗インフルエンザウイルス抗体は、1種類でも2種類以上であってもよい。
【0022】
試料は、インフルエンザウイルスが含まれる可能性があるものであればよく、例えば被疑患者からの涙、目脂、喀痰、唾液及び大便等の生体試料を、生理食塩水、リン酸緩衝液等の溶媒と混合したもの、被疑患者の患部(鼻腔、咽頭等)を清拭したガーゼ、スワブ等から前記の溶媒で洗浄又は抽出したもの、又は被疑患者の患部の前記溶媒による洗浄液であってもよい。
【0023】
免疫学的測定法の中でも、インフルエンザウイルスに対する第一及び第二の抗体を用い、標識された前記第一の抗体と固相に固定された前記第二の抗体とインフルエンザウイルスとを含む複合体を形成させる工程を含む、サンドイッチ法を測定原理とする免疫学的測定法を用いることが好ましい。
ここで、少なくとも前記第二の抗体として、上述のヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体が使用されるが、前記第一及び第二の抗体が、前記抗インフルエンザウイルス抗体であることが好ましい。第一及び第二の抗体の両方に前記抗インフルエンザウイルス抗体を使用することにより、感度及び特異性が上がり、検出精度が向上する。
【0024】
サンドイッチ法を測定原理とする免疫学的測定法には、IRMA法、ELISA法、IFMA法、イムノクロマトグラフ法等が含まれる。
第一の抗体に結合させる標識物質としては、放射性同位元素(125I、14C、32P等)、酵素(β−ガラクトシターゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、蛍光物質(フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体等)、不溶性粒状マーカー等が挙げられる。
第二の抗体を固定する固相の素材又は形状は、測定法に応じて適宜選択される。固相の素材としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスチレン、スチレンン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレンン−無水マレイン酸共重合体、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン等の合成有機高分子化合物、デキストラン誘導体、アガロースゲル、セルロース等の多糖類、ガラス、シリカゲル、シリコーン等の無機高分子化合物が挙げられる。これらは、さらにアミノ基、アミノアシル基、カルキシル基、アシル基、水酸基、ニトロ基等の官能基が導入されたものであってもよい。固相の形状としては、例えば、マイクロタイタープレート(ELISAプレート)、ディスク等の平板状、ビーズ等の粒子状、試験管、チューブ等の管状、繊維状、膜状にすることができる。
【0025】
サンドイッチ法を測定原理とする免疫学的測定法の中では、操作が簡便で、特別な装置が不要であり、迅速に測定を行うことができることから、イムノクトマトグラフ法が好ましい。
前記イムノクロマトグラフ法は、前記第二の抗体が固定されたクロマト用膜担体において、当該第二の抗体と標識された前記第一の抗体とインフルエンザウイルスとを含む複合体を形成させる工程を含んでおり、且つ前記第二の抗体が、ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体であることが好ましい。この場合、クロマト用膜担体において、第一抗体と抗原と第二抗体との複合体(サンドイッチ構造)が形成されるため、第一抗体の標識を認識することによりトリインフルエンザウイルスを検出することができる。
イムノクロマトグラフ法においても、上述の標識物質を使用することができるが、その中でも色を肉眼で観察することにより迅速かつ簡便に判定できることから、不溶性粒状マーカーが好ましく用いられる。不溶性粒状マーカーは、イムノクロマトグラフ法で標識物質として使用されている粒子のうち、それ自身が色を呈する粒子のことであり、例えば、金コロイド、白金コロイド等のコロイド状金属粒子、顔料等で着色されたポリスチレンラテックス等の合成高分子粒子(着色合成高分子粒子)、重合染色粒子等が挙げられる。
【0026】
図1は、本発明の1つの実施形態に係るイムノクロマトグラフ法用試験具の断面図である。このイムノクロマトグラフ法用試験具1は、表面に粘着層を有するプラスチック板からなる基材2上に、レーヨンの不織布からなる試料添加部材3と、ガラス繊維の不織布からなる標識保持部材4と、ニトロセルロースの多孔体からなるクロマト用膜担体5と、セルロースの不織布からなる吸収部材6とを備える。
【0027】
基材2は、試料添加部材3や標識保持部材4等の上記部材を適切に配置するためのものであり、プラスチック以外にも紙、ガラス等の材質のものを用いることができる。
試料添加部材3には試料が添加される。試料としては上記免疫学的測定法で用いられる試料と同様のものを使用することができるが、鼻腔吸引液、鼻腔拭い液又は咽頭拭い液が好ましい。試料は、緩衝液等の適当な溶媒で希釈して添加してもよい。試料添加部材3としては、レーヨンの不織布以外にも、例えば、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレン等の多孔質合成樹脂のシート又はフィルム、濾紙、綿布等のセルロース製の紙、織布又は不織布、ガラス繊維の不織布を用いることができる。
【0028】
標識保持部材4は、試料添加部材3に接触して配置され、標識物質で標識された第一の抗体が担持されている。この第一の抗体は、試料中の測定対象と抗原抗体反応するものであり、ここではトリインフルエンザに反応性を示す抗体が使用される。トリインフルエンザに反応性を示す抗体であれば、1種類又は2種類以上を使用することができる。第一の抗体として、好ましくは4E3が使用される。また、4E3と他のトリインフルエンザに反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体を組み合わせて使用することもできる。
第一の抗体を標識する標識物質としては、上記サンドイッチ法を測定原理とする免疫学的測定法及びイムノクロマトグラフ法で用いられる標識物質と同様のものを使用することができる。その中でも色の変化を肉眼で観察することにより迅速かつ簡便に判定できることから不溶性粒状マーカーが好ましく、その中でも特に着色合成高分子粒子又はコロイド状金属粒子が好ましい。
当該標識保持部材4は、標識された第一の抗体の懸濁液をガラス繊維の不織布に含浸せしめ、これを乾燥させること等によって作製することができる。なお、標識保持部材4としてガラス繊維の不織布が用いられているが、これに限定されるものではなく、例えば、セルロース類の布(濾紙、ニトロセルロース膜等)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質プラスチック布等も使用することができる。
【0029】
クロマト用膜担体5は、標識保持部材4と間隔を介して配置され、測定対象と抗原抗体反応する第二の抗体が固定された判定領域5Aを有する。第二の抗体は、ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体であり、好ましくは4E3である。
クロマト用膜担体5として、ニトロセルロースの多孔体を用いているが、試料に含まれる測定対象をクロマト展開可能で、かつ、上記判定領域5Aを形成する第二の抗体を固定可能なものであればいかなるものであってもよく、他のセルロース(例えば、セルロースアセテート)の膜、ナイロン(例えば、カルボキシル基、アルキル基等を置換基として有してもよいアミノ基が導入された修飾ナイロン)の膜、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜等を使用することもできる。
吸収部材6は、クロマト用膜担体5と接触するように配置されており、過剰試料を吸収するためのものである。吸収部材6は、液体を速やかに吸収し、保持できる材質のものであればよく、綿布、濾紙、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質プラスチック不織布等を使用することができる。そして、試料添加部材3の一部及び吸収部材6の表面は、図1に示されるように透明シート7で覆われている。
【0030】
本発明のイムノクロマトグラフ法用試験具1は、例えば以下のように作製することができる。まず、クロマト用膜担体5を基材2の中程に貼着し、当該クロマト用膜担体5のクロマト展開の開始点側(すなわち、図1の左側、以下「上流側」という)の末端と接触しないように間隔をあけて標識保持部材4を基材2の上流側に貼着する。そして、試料添加部材3の上流側部分を基材2の最上流側部分に貼着し、それと同時に当該試料添加部材3のクロマト展開の終了点側(すなわち、図1の右側、以下「下流側」という)部分を標識保持部材4及びクロマト用膜担体5の上流側部分の上面に載置するとともに、標識保持部材4とクロマト用膜担体5との間にある基材2に貼着する。また、クロマト用膜担体5の下流側部分の上面に吸収部材6の上流側部分を載置するとともに、当該吸収部材6の下流側部分を基材2の最下流側部分に貼着する。そして、試料添加部材3の下流側部分及び吸収部材6の表面を透明シート7で覆う。
【0031】
かくして、試料を必要に応じて適当な溶媒と混合してクロマト展開可能な混合液とし、当該混合液に前記イムノクロマトグラフ法用試験具1の上流(試料添加部材3)側を浸すと、当該混合液は、試料添加部材3を通過して標識保持部材4において、標識された第一の抗体と混合される。
その際、前記混合液中にトリインフルエンザウイルス(抗原)が存在すれば、抗原抗体反応により標識保持部材4と第一の抗体とが結合して複合体が形成される。
この複合体は、クロマト用膜担体5中をクロマト展開されて判定領域5Aに到達し、そこに固定された第二の抗体と抗原抗体反応して捕捉される。
このとき、標識物質として青色ラテックス粒子等の着色合成高分子粒子が使用されていれば、当該粒子の集積により判定領域5Aが青色に着色するので、直ちにトリインフルエンザウイルスの存在を目視により確認することができる。
【0032】
なお、クロマト用膜担体5は、判定領域を1つだけでなく2つ以上備えることも可能である。また、クロマト用膜担体5は、対照部を備えていてもよい。対照部を備える場合、標識保持部材4に、例えば、赤色ラテックス粒子で標識されたアビジンを保持し、クロマト用膜担体5の対照部に、アビジンと特異的に結合するビオチンを固定すればよい。また、アビジンとビオチンの組み合わせの代わりに、例えば、2,4−ジニトロフェノール(DNP)等のハプテンとそのハプテンを認識する抗体とを組み合わせて使用することができる。このとき、ハプテンとしては、測定に使用する試料中に存在しないハプテンを使用することが好ましい。
【0033】
また、本発明のトリインフスエンザウイルス検出方法に用いられる抗インフルエンザウイルス抗体が反応性を示す亜型は、H15亜型までに限定されるわけではなく、現在インフルエンザA型ウイルスの亜型として確認されているH16亜型、さらには将来確認されるであろうH17以降の亜型についても含まれる。
【実施例】
【0034】
以下の実施例、比較例及び試験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例及び比較例のイムノクロマトグラフ用試験具に使用する抗体は、先に説明したハイブリドーマ(特許生物寄託センター、受託番号FERM P−20822)により産生されるモノクローナル抗体4E3、およびハイブリドーマMouse−Mouse Hybridoma 1C10により産生されるモノクローナル抗体(以下、「1C10」という)である。当該ハイブリドーマは、大阪府立公衆衛生研究所により独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されたものであり、平成18年2月24日付で受領され、受託番号FERM P−20821が付与されている。
ここで、インフルエンザウイルスが感染したMDCK細胞を用いて、酵素抗体法によりインフルエンザウイルスに対する4E3又は1C10の反応性を調べた。96ウェルマイクロプレートのウェルにおいてインフルエンザウイルスとMDCK細胞を12時間インキュベーションし、MDCK細胞にインフルエンザウイルスを感染させた。次に、感染したMDCK細胞をエタノールで固定し、4E3を生産するハイブリドーマを培養して得られる上清又は1C10を生産するハイブリドーマを培養して得られる上清と30分間室温にてインキュベーションした。インキュベーション後、PBSで洗浄し、次にペルオキシダーゼ標識抗マウス免疫グロブリン抗体を30分間反応させた。反応後、PBSで洗浄し、ジアミノベンチジンを添加して抗マウス免疫グロブリン抗体を視覚化した。この方法では、MDCK細胞に感染させたインフルエンザウイルスと4E3又は1C10の抗体とが結合した場合には抗マウス免疫グロブリン抗体の標識が検出されるが、結合しなかった場合には標識が検出されない。なお、インフルエンザウイルスとしては、表1に示したようにヒトから分離したインフルエンザA型ウイルス(14種類)、トリから分離したインフルエンザA型ウイルス(16種類)、インフルエンザB型ウイルス(5種類)を使用した。
その結果を表1に示す。表1において、MDCK細胞に感染させたインフルエンザウイルスと抗体との結合が認められたものを(+)、結合が認められなかったものを(−)とした。
【0035】
【表1】

【0036】
表1より、4E3はトリから分離されたインフルエンザA型ウイルスH3〜15亜型に反応性を示すことが確認された。また、1C10はトリから分離されたインフルエンザA型ウイルスH5亜型のみに反応性を示すことが確認された。
【0037】
実施例1
標識物質で標識される第一の抗体及びクロマト用膜担体5に固定される第二の抗体として上述した4E3を使用し、以下の方法に従ってイムノクロマトグラフ用試験具1(以下、試験具という)を作製した。
まず、図1に示すように、ニトロセルロースメンブレンからなるクロマト用膜担体5の判定領域5Aに、抗体塗布機(BioDot社)を用いて、リン酸緩衝液(pH7.0)で2.0mg/mLの濃度になるように希釈した4E3を塗布し、50℃で30分間乾燥させた。
乾燥後のクロマト用膜担体5をブロッキング液(BSAを含有するリン酸緩衝液(pH7.0))に浸漬し、ブロッキングを行った。その後、洗浄液(SDSを含有するリン酸緩衝液(pH7.0))で洗浄し、40℃で120分間乾燥させ、クロマト用膜担体5を得た。
【0038】
次に、4E3を青色着色ポリスチレンラテックス粒子(粒径0.3μm)に感作し、分散用緩衝液(BSA及びシュークロースを含有するリン酸緩衝液(pH7.0))に懸濁し、4E3感作ラテックス粒子を作製した。感作する際の抗体の濃度は、1%ラテックス粒子1mLに200μg IgGとなる濃度であった。この4E3感作ラテックス粒子を、ガラス繊維製パッドに添加後、真空乾燥機で乾燥させ、標識保持部材4を得た。
そして、このクロマト用膜担体5及び標識保持部材4を用いて、常法により、実施例1の試験具を得た。
【0039】
試験例1
実施例1の試験具を用い、ヒトから分離されたインフルエンザウイルス(ヒトインフルエンザウイルス)に対する反応性を検討した。
(1) 本試験例では、下記の表2に示した19種類のヒトインフルエンザウイルスを鶏卵培養し、得られたウイルスを生理食塩水で希釈したものをウイルス液として用いた。ウイルス液中のウイルス濃度はHA価又はFFUで表される。各ウイルス液中のウイルス濃度は、表2の通りである。HA価は、インフルエンザのもつ赤血球凝集能を利用したインフルエンザ定量法(赤血球凝集法)の単位で、感染性のあるウイルスの活性を示す基準であり、FFU(focus forming unit)は、細胞に感染したウイルスを免疫染色することによって確認できるウイルス感染細胞数から算出されたウイルス数を表す単位である。なお、表2中のHA価又はFFUにおいて(−)と示されているのは、HA価又はFFUが未測定であることを表している。
(2) 次に、検体抽出試薬(0.3w/v% NP−40(ポリオキシエチレン(9)オクチルフェニルエーテル)を含むリン酸緩衝液pH7.3)800μLに、所定濃度のウイルス液150μLを加えて混合し、試料とした。
(3) 上記(2)で調製した試料約200μLをガラス試験管に滴下し、そこに上記方法で作製した試験具1の上流(試料添加部材3)側を入れて放置し、約10分後に判定領域5Aにおける呈色を肉眼で判定した。判定は、呈色が認められたものを(+)、呈色が認められなかったものを(−)として評価した。これらの結果を表2に示す。
【0040】
なお、比較例として、第一の抗体及び第二の抗体として上記1C10を用い、それ以外は実施例1と同様にして試験具を作製した(比較例1)。また、第一の抗体として4E3、第二の抗体として1C10を用い、それ以外は実施例1と同様にして試験具を作製した(比較例2)。
また、市販されているヒト用インフルエンザ検査キットであるポクテム インフルエンザA/B(シスメックス)を比較例3とした。比較例1〜2については上記試験例1と同様にして評価を行った。比較例3については、キットに付属するマニュアルに従って評価を行った。これらの結果を表2に併せて示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2から、実施例1、比較例1及び比較例2の試験具は、ヒトから分離されたインフルエンザウイルス(ヒトインフルエンザウイルス)とは全く反応しないことがわかった。これに対して、市販のヒト用インフルエンザ検査キットである比較例3は、試験したすべてのヒトインフルエンザウイルスに対して反応性を示した。
【0043】
試験例2
次に、実施例1、比較例1〜3の試験具が、トリから分離されたインフルエンザウイルス(トリインフルエンザウイルス)と反応するかを検討した。
本試験例では、下記の表3に示した17種類のヒトインフルエンザウイルスを鶏卵培養し、得られたウイルスを生理食塩水で希釈したものをウイルス液として用いた。各ウイルス液中のウイルス濃度は、表3の通りである。なお、表3中のHA価又はFFUにおいて(−)と示されているのは、HA価又はFFUが未測定であることを表している。
【0044】
【表3】

【0045】
表3から、実施例1の試験具は、試験したトリインフルエンザウイルス(H3〜15亜型)すべてに対して反応性を示すことがわかった。これに対して、比較例1及び2の試験具は、トリインフルエンザウイルスH5亜型としか反応しなかった。比較例3の試験具(市販のヒト用インフルエンザ検査キット)は、試験したすべてのトリインフルエンザウイルスに対して反応性を示した。
試験例1及び試験例2の結果から、実施例1及び比較例1〜2の試験具は、ヒトインフルエンザウイルス(A型(H1〜3亜型)及びB型)とは反応せず、トリインフルエンザウイルスに反応する抗インフルエンザウイルス抗体(4E3又は1C10)を第二の抗体として用いているので、今までの試験具(比較例3)がヒト由来のインフルエンザウイルスであるかトリ由来のインフルエンザウイルスであるかを区別することなくインフルエンザA型ウイルスとして検出していたのに対して、ヒト由来かトリ由来かを区別してトリ由来のインフルエンザA型ウイルスを検出することができる。さらに、比較例1〜2の試験具ではトリインフルエンザウイルスH5亜型しか検出できないのに対し、実施例1の試験具に使用されている4E3はトリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応するので、トリインフルエンザウイルスの複数種の亜型を検出することができる。すなわち、実施例1の試験具を用いることで、トリインフルエンザウイルスの複数種の亜型を検出することが可能になる。
【0046】
試験例3
実施例1、比較例1〜2の試験具を用い、2種類のトリインフルエンザウイルスH5亜型で希釈試験を行い、各試験具の感度を調べた。
本試験例では、トリインフルエンザウイルスH5N2(A/Duck/HK/342/78)及びH5N9(A/Turkey/Ontario/7732/66)を生理食塩水で希釈したものをウイルス液として用いた。具体的には、トリインフルエンザウイルスH5N2のウイルス液は、まず1.1×10FFU/mLのウイルス濃度となるウイルス液を調製し、さらにこれを段階希釈して下記の表4に記載のウイルス濃度となるウイルス液を調製した。トリインフルエンザウイルスH5N9のウイルス液は、まず1.375×10FFU/mLのウイルス濃度となるウイルス液を調製し、さらにこれを段階希釈して下記の表5に記載のウイルス濃度となるウイルス液を調製した。このウイルス液を用いて、上記試験例1と同様に試験を行った。トリインフルエンザウイルスH5N2の結果を表4に、トリインフルエンザウイルスH5N9の結果を表5に示す。
【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
表4及び表5より、第一及び第二の抗体として4E3を使用した実施例1の試験具は、第二の抗体として1C10を使用した比較例1及び2の試験具に比べて、トリインフルエンザウイルスH5亜型を感度よく検出できることがわかった。
【0050】
試験例4
実施例1の試験具を用い、ヒトに感染したトリインフルエンザウイルスに対する反応性を検討した。
本試験例では、下記の表6に示した10種類のトリインフルエンザウイルスに感染したヒトから咽頭拭い液を採取し、MDCK細胞に接種して4〜5日培養した。培養後、得られた培養液の上清を回収した。これをウイルス液として用い、上記試験例1と同様に試験を行った。また、比較例として、上記比較例3を用い、キットに付属するマニュアルに従って評価を行った。これらの結果を表6に併せて示す。
【0051】
【表6】

【0052】
表6より、実施例1の試験具は、ヒトに感染したトリインフルエンザウイルスを検出することができることがわかった。
【0053】
次に、第一の抗体として、2種類以上の抗インフルエンザ抗体を使用することが可能であるかを検討すべく、実施例2の試験具を作製した。
実施例2
第一の抗体として、4E3と1C10とを等量ずつ使用し、それ以外は上記実施例1と同様にして、実施例2の試験具を得た。
【0054】
試験例5
実施例1及び実施例2の試験具を用い、試験例3とは異なるトリインフルエンザウイルスH5亜型に対する試験具の感度を調べた。
本試験例では、トリインフルエンザウイルスH5N3(A/Duck/HK/820/80)を用い、生理食塩水で希釈してウイルス濃度3.4×10FFU/mLとした以外は、試験例3と同様に試験を行った。その結果を表8に示す。なお、各バンドは、青色の呈色度合いに応じて、「−」、「W」、「1+」、「2+」及び「3+」の5段階に区別して判定した。「−」、「W」、「1+」、「2+」及び「3+」は、出現したバンドを、TRS3000 Membrane Strip Reader(BioDot社)で測定した場合に得られる測定値に基づいて、表7に記載の基準で設定した。表中のROD値とは、バンドの測定値からニトロセルロースメンブレンの濃淡を測定した値をバックグラウンドとして差し引いた値である。ちなみに、青色のバンドを肉眼で確認することができるのは、「W」、「1+」、「2+」及び「3+」である。
【0055】
【表7】

【0056】
【表8】

【0057】
表8から、実施例1及び実施例2の試験具は、同程度の感度でトリインフルエンザウイルスを検出することができることがわかった。このことから、第一の抗体として4E3とトリインフルエンザウイルスに反応性を示す他の抗インフルエンザウイルス抗体との組み合わせで使用し、第二の抗体として4E3を使用した試験具でも、トリインフルエンザウイルスを検出することができることがわかる。なお、感度は実施例1の試験具の方がやや良い。
【0058】
試験例6
免疫沈降法により、上記試験例で使用したモノクローナル抗体4E3及び1C10が認識する抗原を特定した。
ウイルスとして、インフルエンザウイルスH3亜型であるA/Kitakyusyu/159/93(H3N2)、及びインフルエンザウイルスH5亜型であるA/Turkey/Ontario/7732/66(H5N9)を使用した。
抗体として、上記4E3及び1C10、インフルエンザA型ウイルスの核タンパク質(NP)を認識する抗体である7304(Medix Biochemica社)、インフルエンザB型ウイルスの核タンパク質(NP)を認識する抗体である41027(Capricon社)、及びインフルエンザA型ウイルスH3亜型のヘマグルチニン(HA)を認識する抗体であるF49(タカラバイオ(株))を使用した。
【0059】
1.ウイルス感染
6wellにコンフルエントになったMCDK細胞に上記ウイルスを1時間感染させた。上清を除去し、分離用培地を1mL加えて一昼夜培養した。スクレーパーで細胞をチューブに回収し、遠心後、Cold PBS(−)で洗浄した。溶解液を加えてソニケーションして細胞を破砕し、そのままドライアイスで保存した。
2.標識及び免疫沈降
Cellular Labeling and immunoprecipitation kit(Roche Diagnostics社)を使用し、このキット付属のマニュアルに従って標識及び免疫沈降を行った。ここでは、まずウイルスのタンパク質をビオチン化する。そして、ビオチン化ウイルスタンパク質、抗体及びプロテインA−セファロースを混合して、プロテインA−セファロース上に抗体と当該抗体に特異的に結合するビオチン化ウイルスタンパク質との複合体を形成させる。
3.電気泳動
上記セファロースに50μLの電気泳動バッファーを添加し、100℃で3分間ボイルした。10μLずつサンプルをグラジェントゲル(5−20%)にアプライし、30mAで90分間電気泳動(SDS−PAGE)した。電気泳動後のゲル中のタンパク質を、250mA、2時間でPVDFメンブレンに転写した。その後、5%スキムミルク・PBS(−)でブロッキングし、メンブレンを3回洗浄した。1:1000希釈したストレプトアビジン−POD溶液で30分間反応させてメンブレンを洗浄し、4−クロロナフトール液で検出した。その結果を図2に示す。
【0060】
図2から、4E3のH5ウイルスのところで出現したバンドが、7304(A型インフルエンザの核タンパク質(NP)を認識する抗体)で出現したバンドと同じ位置であることから、4E3がトリインフルエンザウイルス(H5N9)の核タンパク質(NP)を認識する抗体であることが確認された。また、1C10のH5ウイルスのところで出現したバンドが、F49で出現したバンドと同じ位置であることから、1C10がトリインフルエンザウイルス(H5N9)のヘマグルチニン(HA)を認識する抗体であることが確認された。
【0061】
試験例7
上記試験例で使用したモノクローナル抗体である4E3が認識するエピトープを特定することを目的として以下のような実験を行った。
【0062】
(1)遺伝子組換え核タンパク質(NP)の作製
大阪府立公衆衛生研究所から入手したヒトインフルエンザウイルス株(Puerto Rico/8/34)を用いて、ヒトインフルエンザウイルスをMDCK細胞に感染させ、感染したMDCK細胞を培養した。得られた培養上清からQIAGEN Magtration system 6GC(QIAGEN)及びEZ Virus Mini Kit試薬(QIAGEN)を用いてウイルス核酸を抽出した。そして、以下のプライマー(配列番号1及び2)を用いたRT−PCR法により、抽出したウイルス核酸からヒトインフルエンザウイルスNPをコードする領域を含むDNA断片を増幅した。
フォワードプライマー:5’-ATGGCGTCCCAAGGCACCAA-3’(配列番号1)
リバースプライマー:5’-TTAATTGTCGTACTCCTCTGCA-3’(配列番号2)
上記で増幅したヒトインフルエンザウイルスNPをコードする領域を含むDNA断片に、制限酵素(KpnI及びEcoRI)により切断される部位及び6つのヒスチジン残基をコードする配列を付加するために、以下のようなプライマー(配列番号3及び4)を用いてPCRを行った。
フォワードプライマー:5’-ATGGTACCATGGCGTCCCAAGGCACCAA-3’(配列番号3)
リバースプライマー:5’-TAGAATTCTAGTGATGGTGATGGTGATGATTGTCGTACTCCTCTGCATT-3’(配列番号4)
ゆえに、本試験例で得られる遺伝子組換えNPはC末端に6個のヒスチジン残基が付加される。
【0063】
大阪府立公衆衛生研究所から入手したトリインフルエンザウイルス株(H5N9/Ontario/7732/1966)感染細胞を培養し、得られた培養上清から上記と同様の方法でウイルス核酸を抽出した。そして、以下のプライマー(配列番号5及び6)を用いたRT−PCR法により、抽出したウイルス核酸からトリインフルエンザウイルスNPをコードする領域を含むDNA断片を増幅した。
フォワードプライマー:5’-ATGGCGTCTCAAGGCACCAAAC-3’(配列番号5)
リバースプライマー:5’-TTAATTGTCATATTCCTCTGCATTG-3’(配列番号6)
上記で増幅したトリインフルエンザウイルスNPをコードする領域を含むDNA断片に、制限酵素(KpnI及びEcoRI)により切断される部位及び6つのヒスチジン残基をコードする配列を付加するために、以下のようなプライマー(配列番号7及び8)を用いてPCRを行った。
フォワードプライマー:5’-ATGGTACCATGGCGTCTCAAGGCACCAAAC-3’(配列番号7)
リバースプライマー:5’-TAGAATTCTAGTGATGGTGATGGTGATGATTGTCATATTCCTCTGCATTGTC-3’(配列番号8)
得られた各DNA断片(制限酵素切断部位及び6つのヒスチジン残基をコードする配列を含む)を、真核細胞用発現ベクターpcDNA3.1(+)(Invitrogen)のKpnI/EcoRI部位に組込み、野生型ヒトインフルエンザNP発現ベクター及び野生型トリインフルエンザNP発現ベクターを作製した。
【0064】
次に、野生型ヒトインフルエンザNP発現ベクターを制限酵素(KpnIおよびBamHI)で切断し、得られた断片を電気泳動した後、ヒトインフルエンザNPのN末端側159アミノ酸をコードするDNA断片、並びに、C末端側339アミノ酸と6つのヒスチジン残基とベクターとをコードする断片をそれぞれQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて精製した。
同様にして、野生型トリインフルエンザNP発現ベクターを制限酵素(KpnIおよびBamHI)処理し、得られた断片を電気泳動した後、トリインフルエンザNPのN末端側159アミノ酸をコードするDNA断片、並びに、C末端側339アミノ酸と6つのヒスチジン残基とベクターとをコードする断片をそれぞれ精製した。
【0065】
DNA Ligation kit(タカラバイオ)を用いて、トリインフルエンザNPのN末端側159アミノ酸をコードするDNA断片、並びに、ヒトインフルエンザNPのC末端側339アミノ酸と6つのヒスチジン残基とベクターとをコードする断片をライゲーションすることにより、キメラNP1の発現ベクターを構築した。
同様にして、ヒトインフルエンザNPのN末端側159アミノ酸をコードするDNA断片、並びに、トリインフルエンザNPのC末端側339アミノ酸と6つのヒスチジン残基とベクターとをコードする断片をライゲーションすることにより、キメラNP2の発現ベクターを構築した。
【0066】
次に、野生型ヒトインフルエンザNP発現ベクターを制限酵素(KpnIおよびApaLI)で切断し、上記と同様にして、ヒトインフルエンザNPのN末端側45アミノ酸をコードするDNA断片、並びに、C末端側453アミノ酸と6つのヒスチジン残基とベクターをコードする断片を精製した。
さらに、野生型トリインフルエンザNP発現ベクターを制限酵素(KpnIおよびApaLI)で切断し、上記と同様にして、トリインフルエンザNPのN末端側45アミノ酸をコードするDNA断片とC末端側453アミノ酸と6つのヒスチジン残基とベクターをコードする断片を精製した。
【0067】
DNA Ligation kit(タカラバイオ)を用いて、トリインフルエンザNPのN末端側45アミノ酸をコードするDNA断片、並びに、ヒトインフルエンザNPのC末端側453アミノ酸と6つのヒスチジン残基とベクターをコードする断片をライゲーションすることにより、キメラNP3の発現ベクターを構築した。
同様にして、ヒトインフルエンザNPのN末端側45アミノ酸をコードするDNA断片、並びに、トリインフルエンザNPのC末端側453アミノ酸と6つのヒスチジン残基とベクターをコードする断片をライゲーションすることにより、キメラNP4の発現ベクターを構築した。
【0068】
上記のようにして作製した野生型ヒトインフルエンザNP発現ベクター、野生型トリインフルエンザNP発現ベクター、キメラNP1発現ベクター、キメラNP2発現ベクター、キメラNP3発現ベクター及びキメラNP4発現ベクターは、それぞれEndoFree Plasmid Maxi Kit(QIAGEN)を用いて精製した。そして、Superfect transfection reagent(QIAGEN)を用いて、精製後の各発現ベクターをサル腎臓由来のCOS−7細胞に導入し、5%COインキュベーター内で48時間培養し、各遺伝子組換えNPを発現させた。このうち、野生型ヒトインフルエンザNP発現ベクターから得られた遺伝子組換えNPをr−Human Flu NP(配列番号9)とし、野生型トリインフルエンザNP発現ベクターから得られた遺伝子組換えNPをr−Avian Flu NP(配列番号10)とし、キメラNP1発現ベクターから得られた遺伝子組換えNPをr−Ch1 Flu NP(配列番号11)とし、キメラNP2発現ベクターから得られた遺伝子組換えNPをr−Ch2 Flu NP(配列番号12)とし、キメラNP3発現ベクターから得られた遺伝子組換えNPをr−Ch3 Flu NP(配列番号13)とし、キメラNP4発現ベクターから得られた遺伝子組換えNPをr−Ch4 Flu NP(配列番号14)とした。
【0069】
図3は、r−Human Flu NP(配列番号9)、r−Avian Flu NP(配列番号10)、r−Ch1 Flu NP(配列番号11)、r−Ch2 Flu NP(配列番号12)、r−Ch3 Flu NP(配列番号13)、及びr−Ch4 Flu NP(配列番号14)のアミノ酸配列を模式的に示したものである。図3で示しているように、何れのアミノ酸配列も全長504残基であり、C末端のアミノ酸6残基(すなわちアミノ酸配列第499位から第504位)がヒスチジンになっている。
【0070】
そして、r−Human Flu NPのアミノ酸配列第1位から第498位は、ヒトインフルエンザウイルスNPのアミノ酸配列の全長(498残基)に相当する。
r−Avian Flu NPのアミノ酸配列第1位から第498位は、トリインフルエンザウイルスNPのアミノ酸配列の全長(498残基)に相当する。
また、r−Ch1 Flu NPのアミノ酸配列第1位から第159位は、トリインフルエンザNPのN末端側159アミノ酸に相当し、アミノ酸配列第160位から第498位は、ヒトインフルエンザNPのC末端側339アミノ酸に相当する。
r−Ch2 Flu NP のアミノ酸配列第1位から第159位は、ヒトインフルエンザNPのN末端側159アミノ酸に相当し、アミノ酸配列第160位から第498位は、トリインフルエンザNPのC末端側339アミノ酸に相当する。
r−Ch3 Flu NP のアミノ酸配列第1位から第45位は、トリインフルエンザNPのN末端側45アミノ酸に相当し、アミノ酸配列第46位から第498位は、ヒトインフルエンザNPのC末端側453アミノ酸に相当する。
r−Ch4 Flu NPのアミノ酸配列第1位から第45位は、ヒトインフルエンザNPのN末端側45アミノ酸に相当し、アミノ酸配列第46位から第498位は、トリインフルエンザNPのC末端側453アミノ酸に相当する。また、参考までに、今回作製したr−Human Flu NP及びr−Avian Flu NP、並びに、下記の12種類のヒトインフルエンザウイルス株由来NP及び下記の12種類のトリインフルエンザウイルス株由来NPのアミノ酸配列を図4〜図13に示す。
【0071】
ヒトインフルエンザウイルス株:
A/HongKong/117/1977(H1N1)
A/Japan/170/62(H2N2)
A/Kitakyushu/159/93(H3N2)
A/Kumamoto/1/65(H2N2)
A/NewYork/5/2004(H3N2)
A/PuertoRico/8/34(H1N1)
A/Kiev/59/79(H1N1)
A/Beijing/353/1989(H3N2)
A/Brazil/11/1978(H1N1)
A/Victoria/15681/59(H2N2)
A/NewCaledonia/20/1999(H1N1)
A/Panama/2007/1999(H3N2)
【0072】
トリインフルエンザウイルス株:
A/Duck/Australia/341/83(H15N8)
A/Mallard/Astrakan/263/82(H14N8)
A/gull/Maryland/704/1977(H13N6)
A/pintail/Alberta/49/2003(H12N5)
A/duck/England/1956(H11N6)
A/pintailduck/ALB/584/1984(H10N6)
A/shorebird/DE/261/2003(H9N5)
A/turkey/Ontario/6118/1968(H8N4)
A/chicken/Germany/R28/03(H7N7)
A/shearwater/Australia/1972(H6N5)
A/blackduck/NewYork/184/1988(H5N2)
A/turkey/Ontario/7732/1966(H5N9)
【0073】
(2)反応性の比較
(1)で調製した遺伝子組換えNPを発現する各COS−7細胞をTrypsin−EDTA溶液(Sigma社製)によりシャーレから剥がし、各COS−7細胞をPBSで洗浄した。洗浄後の各COS−7細胞を適量のPBS中に懸濁させ、細胞浮遊液を調製した。細胞浮遊液をスライドグラスに適量スポットし、風乾後アセトンで固定した。アセトン固定後のスライドグラスに4E3抗体液(10μg/mlの4E3、1%BSAを含むPBS)を滴下し、スライドグラス上のCOS−7細胞と4E3とを反応させた。次に、1%BSAを含むPBSで100倍希釈したFITC標識抗マウスIg抗体(DAKO)をスライドグラスに滴下した。そして、蛍光顕微鏡下でスライドグラスを観察することにより、COS−7細胞で発現している各遺伝子組換えNPに対する4E3の反応性を調べた。
なお、対照として、4E3の代わりに抗Hisタグ抗体(PentaHis、QIAGEN)を用いた。結果を図14に示す。
【0074】
図14より、4E3は、r−Human Flu NP、r−Ch2 Flu NP及びr−Ch3 Flu NPに反応せず、r−Avian Flu NP、r−Ch1 Flu NP及びr−Ch4 Flu NPに反応することが分かった。すなわち、4E3は、トリインフルエンザウイルスNPのアミノ酸配列46位〜159位を含む核タンパク質には反応性を示すが、含まない核タンパク質には反応性を示さないことが分かった。このことから、4E3がトリインフルエンザウイルスNPのN末端側の特定の領域(アミノ酸配列46位〜159位)内に存在するエピトープを認識していると推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の1つの実施形態に係るイムノクロマトグラフ法用試験具の断面図である。
【図2】モノクローナル抗体4E3及び1C10が認識する抗原を特定するための試験結果を示す図である。
【図3】r−Human Flu NP、r−Avian Flu NP、r−Ch1 Flu NP、r−Ch2 Flu NP、r−Ch3 Flu NP、及びr−Ch4 Flu NPのアミノ酸配列を模式的に示す図である。
【図4】r−Human Flu NP及びr−Avian Flu NP、並びに、12種類のヒトインフルエンザウイルス株由来NP及び12種類のトリインフルエンザウイルス株由来NPのアミノ酸配列第1位から第50位を示す図である。
【図5】同じくアミノ酸配列第51位から第100位を示す図である。
【図6】同じくアミノ酸配列第101位から第150位を示す図である。
【図7】同じくアミノ酸配列第151位から第200位を示す図である。
【図8】同じくアミノ酸配列第201位から第250位を示す図である。
【図9】同じくアミノ酸配列第251位から第300位を示す図である。
【図10】同じくアミノ酸配列第301位から第350位を示す図である。
【図11】同じくアミノ酸配列第351位から第400位を示す図である。
【図12】同じくアミノ酸配列第401位から第450位を示す図である。
【図13】同じくアミノ酸配列第451位から第504位を示す図である。
【図14】各遺伝子組換えNPに対する4E3及び抗Hisタグ抗体の反応性を比較した図である。
【符号の説明】
【0076】
1 イムノクロマトグラフ法用試験具
2 基材
3 試料添加部材
4 標識保持部材
5 クロマト用膜担体
6 吸収部材
7 透明シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体を用いて、免疫学的測定法により、試料中のトリインフルエンザウイルスを検出することを特徴とするトリインフルエンザウイルス検出方法。
【請求項2】
前記抗インフルエンザウイルス抗体が反応性を示すトリインフルエンザウイルス亜型のうち、少なくとも1つがトリインフルエンザウイルスH5亜型、H7亜型及びH9亜型からなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗インフルエンザウイルス抗体が、少なくともH3〜15亜型のトリインフルエンザウイルスに反応性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗インフルエンザウイルス抗体が、インフルエンザA型ウイルスの核タンパク質に対する抗体である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗インフルエンザウイルス抗体が、トリインフルエンザウイルスの核タンパク質のアミノ酸配列のN末端側から第46位〜第159位の領域に存在するエピトープを認識する抗体である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗インフルエンザウイルス抗体が、受託番号FERM P−20822であるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫学的測定法が、インフルエンザウイルスに対する第一及び第二の抗体を用い、標識された前記第一の抗体と固相に固定された前記第二の抗体とインフルエンザウイルスとを含む複合体を形成させる工程を含んでおり、且つ少なくとも前記第二の抗体が、ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第一及び第二の抗体が、ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫学的測定法が、イムノクロマトグラフ法である請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記イムノクロマトグラフ法が、前記第二の抗体が固定されたクロマト用膜担体において、当該第二の抗体と標識された前記第一の抗体とインフルエンザウイルスとを含む複合体を形成させる工程を含んでおり、且つ前記第二の抗体が、ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
インフルエンザウイルスに対する第一及び第二の抗体を利用して試料中のトリインフルエンザウイルスを検出するためのイムノクロマトグラフ法用試験具であって、
前記試料を添加する試料添加部材と、
標識物質で標識された第一の抗体を担持する標識保持部材と、
第二の抗体が固定された判定領域を配置したクロマト用膜担体とを有し、
前記第一の抗体が、トリインフルエンザウイルスに反応性を示し、
前記第二の抗体が、ヒトインフルエンザA型ウイルスH1亜型、H2亜型及びH3亜型並びにヒトインフルエンザB型ウイルスに反応性を示さず、トリインフルエンザウイルスの複数の亜型に反応性を示す抗インフルエンザウイルス抗体であることを特徴とするイムノクロマトグラフ法用試験具。
【請求項12】
前記標識物質が、不溶性粒状マーカーである請求項11に記載のイムノクロマトグラフ法用試験具。
【請求項13】
前記不溶性粒状マーカーが、着色合成高分子粒子又はコロイド状金属粒子である請求項12に記載のイムノクロマトグラフ法用試験具。


【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−83024(P2008−83024A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18400(P2007−18400)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】