説明

トリウムタングステン陰極の製造方法、トリウムタングステン陰極、熱陰極装置

【課題】トリウムタングステン金属体の表面に選択的に炭化層を形成しまたは炭化層の厚みを変化させた熱電子放射陰極を得ること、さらにトリウムタングステン陰極の傍熱型陰極への適用を容易にし、またトリウムタングステンの直熱型陰極の機械的な脆弱性を改善する。
【解決手段】熱電子放射領域を有する陰極本体11を構成するトリウムタングステン金属体41の表面に炭化層42aを成層するトリウムタングステン陰極10の製造方法において、前記トリウムタングステン金属体41の炭化層を形成する表面に炭素構造体40を近接させて水素雰囲気中で熱処理する熱処理工程を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトリウムタングステン陰極の製造方法、トリウムタングステン陰極、およびこれを用いた熱陰極装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トリウムタングステン(Th−W)を材料とする熱電子陰極は、その耐熱性と耐久性に優れているところから、マグネトロンなどの負荷の大きな電子管に採用されている。一般的な高周波加熱用のマグネトロンではトリウムタングステン線条をコイル状に巻回した直熱型陰極が用いられる(特許文献1参照)。この陰極を活性化するために表面を浸炭処理することが必要で、この浸炭方法として従来から水素炉内に被処理陰極を配置し、2400℃近くまで短時間に昇温して表面洗浄した後、2100℃〜2300℃に下げて水素およびベンゾールを導入して熱処理し炭化層を形成する方法が知られている。
【0003】
図9に示す断面写真のように、浸炭によりトリウムタングステン金属体本体100の表面に炭化層101が成層される。炭化層はタングステンカーバイト(WC、WCまたはその混合物)の層で、微細な結晶粒界のクラック102とその間の層部分に面方向にすじ状の微細炭素層103が密集積層された構造である。炭化層は脆弱であり、前述の浸炭方法によると、コイル線条の全表面で浸炭が生じて、芯になるトリウムタングステン線条が細くなり、タングステン金属の再結晶化も進んで、陰極の機械的強度が劣化する。
【0004】
また、良好なスペクトラムが要求されるレーダ用途のMW出力の大電力マグネトロンなどには傍熱型陰極が用いられているが、熱電子放射領域となる陰極本体にトリウムタングステン金属材料が適用されにくい。これは傍熱型陰極が円筒状の陰極本体を陰極スリーブの外周面に嵌着する構造であり、従来のトリウムタングステン陰極の製造方法では、トリウムタングステン円筒の内表面に外表面と同様に厚い炭化層が形成されるからである。炭化層の表面は粗面になるので、外表面と同様に炭化層が形成された内表面は陰極スリーブとの密着性が低く実用に向かない。したがって傍熱型陰極には通常、バリウムインプレ陰極やモールド陰極が用いられている。
【特許文献1】特開2002−226935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、トリウムタングステン熱電子陰極はマグネトロンのコイル状陰極また送信管の籠型陰極などの直熱型陰極に用いられているが、非常に脆く機械的な振動などに弱いという弱点がある。また、傍熱型陰極に利用できないために用途が限定されるという不都合がある。
【0006】
本発明は傍熱型陰極に適用でき、しかも直熱型陰極の機械的脆弱性を改善したトリウムタングステン陰極の製造方法、トリウムタングステン陰極およびこの陰極を備えた電子管などの熱陰極装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トリウムタングステン金属体の表面に炭化層を成層するトリウムタングステン陰極の製造方法において、トリウムタングステン金属体の炭化層を形成する表面に炭素構造体を近接させて水素雰囲気中で熱処理する熱処理工程を具備することを特徴とするトリウムタングステン陰極の製造方法を得るものである。
【0008】
さらに具体的には、前記熱処理工程は、トリウムタングステン金属体の炭化層を形成すべき表面に炭素構造体を0.1mm〜1.0mmの範囲の間隙おいて配置し、水素雰囲気中で1500℃〜2000℃で熱処理し炭化層を形成する第1の工程と、炭素構造体を取り除き水素雰囲気中において2000℃以上で再加熱する第2の工程とからなり、第2工程で前記炭化層をカーボンラミネート層質に調整する。
【0009】
また、トリウムタングステン金属体の熱電子放射を要求される面と要求されない面とに選択的に炭化層を形成し、または形成される炭化層の厚みを選択的に変化させた陰極を得るものである。具体的には熱電子放射領域として選択された表面の炭化層の厚みに対してそれ以外の表面の炭化層の厚みは1/10倍以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トリウムタングステン金属体の表面に選択的に炭化層を形成しまたは炭化層の厚みを変化させた熱電子放射陰極を得ることができ、トリウムタングステン陰極の傍熱型陰極への適用を容易にし、またトリウムタングステンの直熱型陰極の機械的な脆弱性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態は本発明をパルスマグネトロンの傍熱型陰極に適用したものであり、後述する製造方法によりトリウムタングステン金属体でできた円筒状の陰極本体は熱電子放射機能を有し、その外表面に炭化層(WCまたはWC)が形成され、内表面に炭化層が実質的に形成されていない構造を有している。
【0013】
図2に示すように、傍熱型陰極10の熱電子放射領域を有する陰極本体11がタングステンの円筒状陰極スリーブ12の外周面に密着して嵌着され、上下両端に電子放射の向きを整えるためのエンドハット電極13,14が配置される。陰極スリーブ12内にはコイル状に形成したタングステンヒータ15が挿入されて、その一端Aはスリーブ端部に溶接され、他端Bはヒータロッド16を経由してステム部24のHK端子に接続される。陰極スリーブ12はヒータ15のリードを兼ね、ヒータ電流はヒータ端子K(図1)からヒータロッド16を通りヒータ15を通って陰極スリーブ12に通流され、また、図示のように陰極スリーブ12は陰極本体11の通電路としてステム部24(図1)の端子HKを介して真空外に接続される。
【0014】
本発明の実施の形態のパルスマグネトロンについてを参照して説明する。高周波信号を発生する陽極部20は、内側に複数のベイン21aを配置した円筒状陽極21があり、円筒状陽極21の側面には、これを冷却するための水路30が設けられ、冷却水入り口31から冷却水を流し、円筒状陽極21を周回して冷却水出口32に至る構造で水冷されている。円筒状陽極21の上下両端の開口部は、塞ぐように設けられた強磁性体のポールピース22,23から構成されている。また、円筒状陽極21の中心に傍熱型陰極10が配置されている。
陽極部20の一方の側、たとえば図の下方にステム部24が設けられている。ステム部24には、陰極10に電圧を印加するための端子12aが貫通している。ステム部24は、高電圧(約65kV)が印加されるためインプットフランジ33以下、カソード電圧絶縁セラミック筒34、コロナリング35,36およびヒータカソード端子HK、カソード端子K、ヒータ絶縁セラミック37の部分は、絶縁油容器38に油漬されて使用する。
【0015】
また、陽極部20の他方の側たとえば図の上方には周波数を可変するチューナ25とこの駆動機構25aおよび排気管(図示しない)が設けられている。円筒状陽極21の側壁の一部に貫通したスリット26が設けられている。高周波出力は、このスリットから、円形の気密窓27を通して真空外に導かれ、出力導波管フランジ28から矩形導波管に変換されて取り出される。陽極部20を構成するポールピース22,23の側面には、馬蹄形をした永久磁石33が配置されている。永久磁石33の磁力は、ポールピース22,23と磁気的に接続され、マグネトロンの動作の作用空間29まで導かれている。
【0016】
図3ないし図6により、本実施形態における傍熱型陰極の製造方法を説明する。本実施形態は、円筒状陰極本体の外表面を主体的に浸炭し、得られる炭化層の反応炭素濃度を適正に脱炭してカーボンラミネ―ト層を成層する方法である。図6に製造工程を示す。
【0017】
(陰極本体とカーボン冶具の準備工程)
先ず、図3に示すようにタングステンに0.5〜2重量%、例えば1重量%のトリウム金属を分散したタングステントリウム合金の金属体でなる円筒状の陰極本体11を用意する。この合金はタングステン粉末とトリウム粉末を混合し加熱還元した粉末を成形焼結したもので、圧延して円筒状に形成する。一例として、円筒の外径15mm、内径12.5mm、高さ28mmである。
【0018】
続いてトリウムタングステン金属体に近接させる炭素構造体としてグラファイトのような純炭素でできた円筒状カーボン冶具40を用意する。炭素構造体は純炭素でなくてもよく、炭素に難溶性金属や酸化物を混入させたものなど種々の材料が適用できる。カーボン冶具内径を陰極本体の外径に対して0.1mm〜1.0mmの間隙が形成されるようにやや大きく形成してあり、この中に陰極本体11を挿入配置する。間隙部分にスペーサを入れて間隙寸法を正確に設定することも可能であるが、カーボン冶具内面の凹凸などで隙間を保つことができる。両者の接触部分で陰極本体外表面の一部に炭素と直接反応して熱電子放射になじまない不均一な炭化層部分ができるが、接触領域がわずかであれば支障がない。
【0019】
(浸炭工程)
炭素は水素雰囲気中で加熱されると、1100℃以上で水素と反応しCHガスになり、一方タングステンは水素雰囲気中で1400℃以上で炭素と反応し、WC若しくはWCが生成される。これらが複合する条件下で、発生したCHガスの炭素(C)とタングステン(W)が反応し、タングステンカーバイト(WCもしくはWC)が生成される。陰極本体11の外周の表面に近接させるようにカーボン冶具を配置すれば、近接させるほどCHガス濃度が高まり、陰極本体の主に外表面にWCもしくはWC(WCとWCとが混在している)が生成される。発生したCHガスは炉内を拡散していくので、陰極本体の内表面でも反応するが、CHガス濃度が低いために陰極本体11円筒の両端付近の端面に近い部分に薄く炭化層が生成される。
【0020】
陰極本体の熱電子放射領域に必要な厚みの炭化層を主体的に形成し、他の領域に炭化層を付けないか、または付いても薄い炭化層ができる程度に制御できるようにするため、陰極本体とカーボン冶具の間隙は0.1mm〜1.0mmが最適である。間隙が大きくなるとガス濃度が下がって規定量の浸炭に時間を要し、また不要な領域の浸炭を助長する。
【0021】
本実施形態は、陰極本体の外表面すなわち浸炭面とカーボン冶具内面の間隙0.2mm、浸炭処理の水素炉温度1800℃で5時間の熱処理を行い炭化層を生成した。図4に炭化層断面の金属顕微鏡写真を示す。符号41はトリウムタングステン金属体でその結晶面、符号42は浸炭された炭化層(WCもしくはWC層)である。
【0022】
この炭化層42は、従来技術の炭化層(図9)とは全く異なった層質の炭化層である。図4からわかるように、WCもしくはWCの粒界がはっきりせず、炭素の結晶方向がトリウムタングステン金属体の外径方向から延びてきているように観察される。またすじ状の微細炭化層が存在していない。
【0023】
このような性質の炭化層が成層される理由は、従来のベンゾールガスを使った炭化と異なり、低い温度で時間をかけてタングステンと炭素の反応を進めるため炭化層の炭素密度が高くなるのと、処理温度が低いためトリウムタングステン金属体の二次再結晶が進まないためである。
【0024】
(脱炭による層質変質工程)
本発明は、この炭化層の層質を変質させるため、脱炭のための適正な熱処理を組み合わせる。
【0025】
本実施形態の層質変質処理は、2000℃で4時間の処理を行った。なお炭化層の炭素の濃度やトリウムタングステンの材料の結晶粒などで最適条件を調整する。
【0026】
図5は本工程の炭化層の層質変質処理を終了した炭化層断面の金属顕微鏡写真を示す。図中の符号41はトリウムタングステン金属体でその合金組織を示し、符号42aは、炭化層(WC層およびWC層)を示している。
【0027】
炭化層42aは、図4の炭化層42の層質とは異なり、円筒表面側にマッシブ層と呼ぶ炭素リッチな微細岩塊の集合体である岩塊状層44と、炭素プアなカーボンラミネート層と呼ぶ細いスジ状に見える微細炭素層を形成した層45の2種類の積層構造に変層した。
【0028】
マッシブ層44には、縦方向(円の外側に向かう半径方向)のクラックが無数に走り、円筒陰極の表面を顕微鏡で観察すると、蜘蛛の巣状のクラックが観察される。
【0029】
また、カーボンラミネート層45は、平面方向にスジ状の線(これは、線状炭素層である)が無数確認されその粒界に半径方向のクラックが形成されている。本実施形態ではカーボンラミネート層の厚みがマッシブ層の厚みより大きい。
【0030】
この外側のマッシブ層44と内側のカーボンラミネート層45の出現によって、陰極本体が加熱された時、トリウムタングステンの中のトリウムは金属内拡散によって陰極表面にトリウムの単原子層を作る。トリウムの熱電子が取り出されるとクラックからトリウム原子が補充される。なおかつトリウム原子は、マッシブ層のクラックやラミネート層のスジに蓄積され、良好なトリウムタングステン陰極熱電子放射源を実現することができる。
【0031】
前記した製造方法で製作された円筒状陰極本体は、外表面は図5のような炭化層断面を持っているが、円筒の内面側は端面から1mm程度入り込んだ部分までしか薄く炭化されず、大部分はトリウムタングステンの金属組織のままであった。円筒外面の炭化層に対する内面の炭化層の厚みの差は1/20以下である。
【0032】
このため、円筒構造の強度も強く、傍熱形陰極構造としての組立てにも全く支障が無く組み立てられる。
【0033】
この陰極を組込んだパルスマグネトロンでは、熱電子放射電流密度10A/cmを安定して取り出せ、マグネトロンの高周波出力3GHz帯、電力3.0MWを安定して達成することができた。
【0034】
(第2実施形態)
本実施形態は、本発明を電子レンジ用マグネトロンのコイル状直熱型陰極に適用したものであり、図7および図8により説明する。図7に示すように、トリウムタングステンのコイル状陰極本体51は両端をエンドハット電極52,53に溶接される。上部エンドハット電極52はコイル中心を通る第1サポートロッド54の先端に溶接されたアンカー(図示しない)とこのアンカー部分に溶接されたエンドハット本体からなり、陰極本体の一端はアンカーに接続される。下部エンドハット電極53は第2サポートロッド55に接続されている。各サポートロッドはリード線を兼ねてステムに固定されて陰極組立体50とされる。電子レンジ用マグネトロンの陰極サイズの一例は直径0.6mmのトリウムタングステン線条をコイル状にしたもので、コイルの外周径3.8mm、長さ9mmである。
【0035】
一方、図8に示す多数の円形孔61を穿設した炭素の板状体62でなるカーボン冶具60を用意し、上記陰極組立体(上部エンドハット電極52の本体を取付け前のもの)50を複数個、それぞれ円形孔61中に挿入する。円形孔61の内径はコイル状陰極本体51の外周径よりも平均0.1mm〜1.0mmの間隙ができるように大径に形成してある。円形孔61面を凹凸にしておけば、その凸部が陰極本体51の一部に接触するので、所定の間隙が容易に保持できる。
【0036】
このように陰極組立体を挿入した状態で、水素炉内に配置し、熱処理を施す。浸炭、脱炭工程は第1実施形態と同様である。コイル線条の外径に対応して加熱条件を設定する。
【0037】
陰極本体のコイル線条間には隙間があるので、カーボン冶具と水素が反応して生成するCH4は隙間を通してコイル内周側にも拡散する。しかし、生成するCH濃度は冶具に近接する側で高く、離れるにしたがい低くなるので、浸炭によるコイル外周面の炭化層(WCもしくはWC)に対して内周側に形成される炭化層の厚みは非常に小さくなる。製造条件によるが、外周面の最大厚みに対して内周面の最小厚みを1/10以下にすることができる。
【0038】
熱電子放射が要求されるのは陽極と対向するコイル外周面であり、内周面の炭化層はあまり意味がない。したがって、内周面の浸炭を抑えることにより、コイル線条の金属体部分の細りを減らして不要な機械的脆弱化の程度を低減することができる。
【0039】
以上本発明を傍熱型及び直熱型陰極のマグネトロンの実施形態について説明したが、本発明はこれらに限られるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で、籠型フィラメントをもつ送信管、凹面陰極のクライストロンやコイル状陰極をもつX線管などの電子管、放電燈の電極、放電やレーザで加熱される陰極など種々の電子放射陰極を備えた熱陰極装置に適用できるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態のパルスマグネトロンを説明する断面図。
【図2】図1の要部の陰極の断面図。
【図3】図2の陰極の製造方法を説明する斜視図。
【図4】第1実施形態の浸炭工程で得られる陰極本体の断面の金属顕微鏡写真。
【図5】第1実施形態の脱炭工程で得られる陰極本体の断面の金属顕微鏡写真。
【図6】第1実施形態の製造方法を説明する工程図。
【図7】本発明の第2実施形態の陰極を説明する平面図。
【図8】第2実施形態の製造方法に用いるカーボン冶具の平面図。
【図9】従来の陰極本体の断面の金属顕微鏡写真。
【符号の説明】
【0041】
10:陰極
11:陰極本体
12:陰極スリーブ
13,14:エンドハット電極
15:ヒータ
16:ヒータロッド
20:陽極部
21:円筒状陽極
24:ステム部
40:円筒状カーボン冶具
41:トリウムタングステン金属体
42,42a:炭化層
44:マッシブ層
45:カーボンラミネート層
51:コイル状陰極本体
52,53:エンドハット電極
54,55:サポートロッド
60:カーボン冶具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電子放射領域を有する陰極本体を構成するトリウムタングステン金属体の表面に炭化層を成層するトリウムタングステン陰極の製造方法において、
前記トリウムタングステン金属体の炭化層を形成する表面に炭素構造体を近接させて水素雰囲気中で熱処理する熱処理工程を具備することを特徴とするトリウムタングステン陰極の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理工程は、前記トリウムタングステン金属体の炭化層を形成すべき表面に前記炭素構造体を0.1mm〜1.0mmの範囲の間隙おいて配置し、水素雰囲気中で1500℃〜2000℃で熱処理し炭化層を形成する第1の工程と、
前記炭素構造体を取り除き水素雰囲気中で2000℃以上で再加熱する第2の工程とからなることを特徴とするトリウムタングステン陰極の製造方法。
【請求項3】
前記トリウムタングステン金属体はタングステン金属中に0.5〜2wt%のトリウムまたは酸化トリウムを分散させた金属体であり、前記炭化層は主にタングステンカーバイトであることを特徴とする請求項1または2に記載のトリウムタングステン陰極の製造方法。
【請求項4】
前記炭化層は微細な炭素層が積層されたカーボンラミネート層とその外側の微細岩塊状集合体でクラックを有するマッシブ層の複合層でなり前記カーボンラミネート層が前記マッシブ層より厚く形成される請求項1ないし3のいずれかに記載のトリウムタングステン陰極の製造方法。
【請求項5】
前記炭化層が電子管用の傍熱型陰極または直熱型陰極に適用されてなる請求項1ないし3のいずれかに記載のトリウムタングステン陰極の製造方法。
【請求項6】
熱電子放射領域を有する陰極本体を構成するトリウムタングステン金属体の表面に炭化層を成層するトリウムタングステン陰極において、前記熱電子放射領域として選択された表面の炭化層の厚みに対してそれ以外の表面の炭化層の厚みが1/10倍以下であるトリウムタングステン陰極。
【請求項7】
請求項1または2の製造方法により得られるトリウムタングステン陰極を傍熱型または直熱型陰極として構成することを特徴とする熱陰極装置。
【請求項8】
前記熱陰極装置がマグネトロンである請求項7に記載の熱陰極装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−224205(P2009−224205A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67947(P2008−67947)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)