説明

トリエタノールアミンの製造法

【課題】公知技術水準と比較して改善された、よりいっそう高い色の品質を有するトリエタノールアミンを製造するための方法を提供する。
【解決手段】トリエタノールアミンに亜燐酸および/または次亜燐酸、および塩基性化合物を、トリエタノールアミンの蒸留前および/または蒸留中に添加し、この場合この塩基性化合物は、[R123(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドであり、但し、この場合R1、R2およびR3は、互いに無関係にC1〜C30−アルキルまたはC2〜C10−ヒドロキシアルキルを表わすものとする。
【効果】亜燐酸への水酸化アンモニウムの付加的な添加は、トリエタノールアミンの蒸留による収量の上昇を、色数に対する不利な影響なしにではあるが、むしろ、部分的に色数に対するプラスの影響(色数の減少の意味において)をもって生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリエタノールアミンの製造法および亜燐酸および/または次亜燐酸および一定の塩基性化合物を含有するトリエタノールアミンに関する。
【背景技術】
【0002】
トリエタノールアミン(TEOA)またはその連続生成物の重要な使用分野は、例えば化粧品工業における石鹸、洗剤およびシャンプーであるかまたは分散剤および乳化剤でもある。
【0003】
前記使用分野および別の使用分野には、前記性質をよりいっそう長時間(例えば、6、12または数ヶ月)に亘って維持する、例えばAPHA色数またはガードナー色数として測定された、できるだけ僅かな変色を有する水澄明な無色のトリエタノールアミンが望ましい。
【0004】
公知の問題は、例えばアンモニアと酸化エチレンとの反応によって取得されたトリエタノールアミン粗製生成物の分別蒸留後に得られた純粋なTEOAが黄色〜褐色またはバラ色の変色を有することである(色数、例えばDIN ISO 6271(=Hazen)による約10〜500APHA)。この変色は、特に高い温度で進行する処理において起こる。
【0005】
閉鎖された束の中および光の遮断下でもアルカノールアミンを貯蔵した場合には、この変色は、なおさらに強化される。(例えば:T.I. MacMillan, Ethylene Oxide Derivatives, Report No. 193, 第6章,第6-5および6-9〜6-13頁, 1991, SRI International, Menlo Park, California 94025, G.G. Smimova et al., J. of Applied Chemistry of the USSR 761, 第1508〜1509頁 (1988)およびChemical & Engineering News 1996. Sept. 16, 第42頁, 中段の欄参照)。
【0006】
前記刊行物には、改善された色の品質を有するトリエタノールアミンを製造するための種々の方法が記載されている。
【0007】
欧州特許出願公開第36152号明細書および欧州特許出願公開第4015号明細書(双方ともBASF AG)には、アルカノールアミンの製造法において使用される材料が処理生成物の色の品質に影響を及ぼすことが説明されており、ニッケル不含またはニッケル貧有の鋼が望ましいことが説明されている。
【0008】
米国特許第3207790号明細書(Dow Chemical Company)には、アルカリ金属の硼水素化物の添加によってアルカノールアミンの色の品質を改善するための方法が記載されている。
【0009】
欧州特許出願公開第1081130号明細書(BASF AG)の記載は、アルカノールアミンを水素で水素化触媒の存在下に処理することによって改善された色の品質を有するアルカノールアミンを製造するための方法に関する。
【0010】
欧州特許出願公開第4015号明細書(BASF AG)には、僅かな変色を有するモノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンが、酸化エチレンとアンモニアとの段階的な反応前または反応中または反応直後の亜燐酸または次亜燐酸、またはその誘導体の添加および引続く蒸留による単離によって得られることが記載されている。
【0011】
WO−A−00/32553(BASGF AG)の記載は、アンモニア水と酸化エチレンとを液相中で圧力下および高められた温度で反応させることによって得られたTEOAを、アンモニア水と酸化エチレンとの反応生成物と過剰のアンモニア、水およびモノエタノールアミンとを分離し、こうして得られた粗製生成物を酸化エチレンと反応させ、引続き亜燐酸または次亜燐酸、またはその化合物の存在下で精留することにより、精製する方法に関する。
【0012】
欧州特許出願公開第1132371号明細書(BASF AG)の記載は、改善された色の品質を有するアルカノールアミンの製造法に関し、この場合アルカノールアミンは、亜燐酸または次亜燐酸、またはその化合物の有効量と、最初に高められた温度で少なくとも5分間の時間に亘って処理され(工程a)、引続き前記燐化合物の有効量の存在下で蒸留される(工程b)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第36152号明細書(BASF AG)
【特許文献2】欧州特許出願公開第4015号明細書(BASF AG)
【特許文献3】米国特許第3207790号明細書(Dow Chemical Company)
【特許文献4】欧州特許出願公開第1081130号明細書(BASF AG)
【特許文献5】WO−A−00/32553(BASGF AG)
【特許文献6】欧州特許出願公開第1132371号明細書(BASF AG)
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】T.I. MacMillan, Ethylene Oxide Derivatives, Report No. 193, 第6章,第6-5および6-9〜6-13頁, 1991
【非特許文献2】SRI International, Menlo Park, California 94025, G.G. Smimova et al., J. of Applied Chemistry of the USSR 761, 第1508〜1509頁 (1988)
【非特許文献3】Chemical & Engineering News 1996. Sept. 16, 第42頁, 中段の欄
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、公知技術水準と比較して改善された、よりいっそう高い色の品質を有するトリエタノールアミンを製造するための方法を提供するという課題を基礎とした。本方法は、例えばAPHA色数として測定されたTEOAの変色を減少させ、色の安定性を改善するはずである(貯蔵時間に亘っての色数の望ましくない増加)。殊に、本方法は、欧州特許出願公開第4015号明細書、WO−A−00/32553および欧州特許出願公開第1132371号明細書の記載と比較してよりいっそう高い、TEOAの収量を生じるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
それに応じて、トリエタノールアミンに亜燐酸および/または次亜燐酸、および塩基性化合物を、トリエタノールアミンの蒸留前および/または蒸留中に添加し、この場合この塩基性化合物は、[R123(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドであり、但し、この場合R1、R2およびR3は、互いに無関係にC1〜C30−アルキルまたはC2〜C10−ヒドロキシアルキルを表わすものとすることによって特徴付けられるトリエタノールアミンの製造法が見出された。
【0017】
トリエタノールアミン中の酸:水酸化物の好ましいモル比は、さらに本明細書中の下記の記載から確認することができる。
【0018】
本発明によれば、H3PO3またはH3PO2の単独の使用と比較して色の品質を維持しながらかまたはむしろ改善しながら、付加的な塩基性化合物によって、TEOA中の副生成物の形成が著しく減少されることが確認された(塩基の緩衝作用)。同時に、TEOAの蒸留収量は、上昇される。副生成物の形成は、燐化合物の酸性作用に基づくものと思われる。
【0019】
本発明による方法において使用されるトリエタノールアミンは、公知方法により、殊にアンモニアと酸化エチレンとの反応(例えば、欧州特許出願公開第673920号明細書またはWO−A−00/32553の記載による)によって得ることができる。
【0020】
本発明による方法において使用されるトリエタノールアミンの純度は、有利に70質量%を上廻り、殊に80質量%を上廻る。直接に粗製の形で、相応する前駆体からなるアルカノールアミンを製造するために装置から取り出されてもよい蒸留されたかまたは蒸留されていない粗製トリエタノールアミンとともに、90質量%を上廻る、例えば95質量%を上廻る、特に97質量%を上廻る、殊に98質量%を上廻る、有利に特に99質量%を上廻る純度を有する蒸留されたTEOAが使用されてもよい。
【0021】
また、トリエタノールアミンと別のアルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、アミノジグリコール(ADG、H2NCH2CH2OCH2CH2OH)、O,N,N−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−エタノールアミン、N−(2−アミノエチル)−エタノールアミン(AEEA)、N−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン、N−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリン、N,N′−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンおよび1,3−プロパノールアミンとの混合物、または不活性溶剤中、例えばアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール)、エーテル(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン)、炭化水素(ベンゼン、ペンタン、石油エーテル、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、ミハゴール(Mihagol))および水またはその混合物中のトリエタノールアミンの溶液が使用されてよい。
【0022】
使用されるトリエタノールアミンのAPHA色数は、有利に100未満、殊に50未満、特に20未満である。
【0023】
本発明による方法は、次のように実施することができる:
色の品質の点で改善すべき、場合によっては不活性溶剤中の、液相中のトリエタノールアミンには、適当な容器中、例えば還流冷却器が装備されていてよい攪拌容器中で、亜燐酸(H3PO3)および/または次亜燐酸(H3PO2)の有効量および[R123(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシド、但し、この場合R1、R2およびR3は、上記の意味を有するものとし、が有利に攪拌下にまたはポンプ循環下に添加される。
【0024】
この混合物は、有利に少なくとも5分間、殊に少なくとも10分間(例えば、10分間〜50時間、殊に10分間〜24時間)、特に少なくとも15分間(例えば、15分間〜6時間)、特に有利に少なくとも30分間(例えば、30分間〜4時間または40分間〜3時間または60分間〜2時間)の時間に亘って40〜250℃、殊に100〜240℃、特に120〜230℃、特に有利に150〜220℃の範囲内の温度に加熱される。
【0025】
亜燐酸および/または次亜燐酸は、本発明による方法において、モノマーの形またはポリマーの形で、含水形(水和物または水溶液または水性懸濁液)でかまたは付着化合物(例えば、無機担体または有機担体、例えばSiO2、Al23、TiO2、ZrO2上)として使用されてよい。
【0026】
添加される酸の量は、一般にトリエタノールアミン(純粋な製品として計算した)の使用される量に対して少なくとも0.01質量%、有利に0.02〜2質量%、特に有利に0.03〜1.0質量%、殊に有利に0.5〜0.9質量%であるが;しかし、この作用は、よりいっそう高い量でも起こる。亜燐酸および次亜燐酸を一緒に使用する場合には、上記量の記載は、一緒にした2つの酸に関連する。
【0027】
塩基性化合物としては、本発明による方法において、有利に式[R123(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシド、即ち
【化1】

で示されるアンモニウムヒドロキシドが使用されてよい。
【0028】
基R1、R2およびR3は、互いに無関係に次の意味を有する:
非分枝鎖状または分枝鎖状のC1〜C30−アルキル、その中でC8〜C22−アルキル、有利にC1〜C20−アルキル、殊にC1〜C14−アルキル、その中でC1〜C4−アルキル、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、第二ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、第二ヘキシル、シクロペンチルメチル、n−ヘプチル、イソヘプチル、シクロヘキシルメチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル、2−n−ペンチル−n−ヘプチル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、2−n−ブチル−n−ノニル、3−n−ブチル−n−ノニル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、
2〜C10−ヒドロキシアルキル、有利にC2〜C8−ヒドロキシアルキル、特に有利にC2〜C4−ヒドロキシアルキル、例えば2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシ−n−プロピル、3−ヒドロキシ−n−プロピルおよび1−(ヒドロキシメチル)エチル、特に有利に2−ヒドロキシエチル。
【0029】
この2−(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシドは、当業者によれば、公知方法により入手可能である。この2−(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシドは、殊に相応する第3アミンR123N(例えば、ET3N、脂肪アミン、TEOA)をモル等量の酸化エチレンおよび水と反応させることによって得ることができる。
【0030】
[テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドについては、例えばA.R. Doumaux et al., J. Org. Chem. 1973. 38 (20), 第3630-3632頁およびドイツ連邦共和国特許出願公開第2217494号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第2121325号明細書(双方ともBASF AG)参照のこと。
【0031】
アンモニウムヒドロキシドの利点は、第四アンモニウム塩が完全にトリエタノールアミン混合物中に溶解し、H3PO3および/またはH3PO2が少なくとも部分的に中和される(緩衝作用)ことにある。
【0032】
特に好ましいアンモニウムヒドロキシドは、[テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドおよび[(C1〜C4−アルキル)3(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシド、例えば[トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドである。
【0033】
更に、特に好ましい[テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドの利点は、塩基がトリエタノールアミンの蒸留の条件下で部分的または完全に水および価値のある生成物のトリエタノールアミンに分解され、したがって価値にある生成物から分離する必要がないことから明らかである。塩の形成によって問題は、全く生じない。
【0034】
更に、脂肪アミン((C8〜C303N)を基礎とする好ましい(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシドの利点は、塩基がトリエタノールアミンの蒸留の条件下で部分的または完全に水および脂肪アミンに分解され、脂肪アミンが高沸点物として簡単に蒸留塔底部を介して純粋なTEOAと分離されうることにある。
【0035】
好ましくは、使用される酸対使用されるアンモニウムヒドロキシドのモル比は、1:1〜100:1、特に1,1:1〜10:1、殊に1,2:1〜8:1、特に有利に1.3:1〜6:1である。
【0036】
亜燐酸および次亜燐酸を一緒に使用する場合には、上記のモル比の記載は、一緒にした2つの酸に関連する。
【0037】
例えば、TEOSには、H3PO31000ppmおよび塩基化合物[テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシド320〜2573ppmが添加される。
【0038】
TEOS中には、最初に塩基性化合物を添加することができ、その後に酸を添加することができる。
【0039】
好ましい処理形式において、最初に酸は、TEOS中に添加され、引続き塩基性化合物中に添加される。
【0040】
別の好ましい処理形式において、最初に酸と塩基性化合物との混合物が製造され、次にこの混合物は、TEOAに添加される。
【0041】
この場合、よりいっそう良好な取り扱い可能性のためには、適当な不活性の希釈剤または溶剤、例えば水、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール)、エーテル(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン)またはアルカノールアミン(例えば、エタノールアミン、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、殊にトリエタノールアミン)中の亜燐酸および/または次亜燐酸の有効量を溶液または懸濁液の形で供給することは、有利である。
【0042】
塩基性化合物は、有利に水中の溶液または懸濁液として、例えば30〜80質量%、殊に40〜60質量%の溶液または懸濁液として使用されてよい。
【0043】
[テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドは、50質量%の水溶液として市場で入手可能であり、有利に使用することができる。
【0044】
酸と塩基化合物とからなる添加剤でのトリエタノールアミンの必要とされる処理時間は、なかんずく使用されたトリエタノールアミンの変色度およびTEOSの望ましい脱色および/または色安定性の程度からもたらされる。前記の処理時間は、一般に所定の温度で、本発明による方法で使用されるトリエタノールアミンの変色度がよりいっそう高く、処理生成物の色の品質に対する要件が高度であればある程、ますます長くなる。
【0045】
しかし、温度は、高すぎないように、即ち一般に250℃よりも高く選択されてはならない。それというのも、いずれにせよ、トリエタノールアミンの酸により誘発されるそれぞれ使用されるトリエタノールアミンにとって最も好ましい温度および処理時間は、簡単な予備試験で容易に算出することができる。
【0046】
酸および塩基性化合物を用いての前記処理の場合、前記混合物を全処理時間中にかまたは一時的にさらに混合する(例えば、攪拌するかまたは循環路中にポンプにより循環させる)ことは、有利である。
【0047】
更に、トリエタノールアミンの処理を保護ガス雰囲気下(例えば、N2またはAr)、即ちO2の不在下で実施することは、有利である。
【0048】
酸および塩基性化合物を用いてのアルカノールアミンの処理は、連続的に適当な容器中、例えば管状反応器中またはカスケード式攪拌型容器中で実施されてもよい。
【0049】
酸および塩基性化合物を用いてのトリエタノールアミンの処理は、蒸留塔の塔底容器中または蒸留貯蔵容器中でトリエタノールアミンの蒸留前および/または蒸留中に実施されてよい。
【0050】
1つの特殊な実施形式において、酸および塩基性化合物を用いてのトリエタノールアミンの処理中に、不活性ガス(例えば、N2またはAr)は、ストリッピング流としてトリエタノールアミンに導通され、不利に色の品質に作用しうる、生成される低沸点物、例えばアセトアルデヒドまたはその連続生成物は、前記混合物から除去される。
【0051】
別の特殊な実施形式において、処理すべきトリエタノールアミンは、循環路中で熱交換器上に導かれ、不利に色の品質に作用しうる、生成される低沸点物、例えばアセトアルデヒドは、導出される。この場合、熱交換器は、開放型熱交換器、例えば落下型膜蒸発器またはワイパーブレード型蒸発器、または閉鎖型熱交換器、例えば板状熱交換器または管束熱交換器であることができる。
【0052】
選択された反応条件に応じて、酸および塩基性化合物を用いてのトリエタノールアミンの処理は、過圧(例えば、0.1〜50バール)で実施することが必要であり、前記混合物からの1つ以上の成分の望ましくない逃出は、回避される。
【0053】
添加された化合物を分離するためのトリエタノールアミンの蒸留または精留は、非連続的または連続的に一般に100ミリバール(100hPa)未満の圧力、例えば約10〜50ミリバールまたは1〜20ミリバール、有利に0.5〜5ミリバールで一般に100〜250℃の塔底温度で行なわれ、この場合連続的な運転形式の場合には、1つの特殊な実施形式において、場合によっては存在する低沸点物含量は、塔頂部を介して取り出され、TEOAは、側方の取出し口で得られる。
【0054】
添加された化合物および/またはその反応生成物を含有する、蒸留または精留の残留物は、1つの特殊な実施態様において、完全にかまたは部分的に蒸留処理に返送されることができる。
【0055】
本発明による方法は、色に品質において改善されたトリエタノールアミンを供給し、この場合このトリエタノールアミンは、得られた後に0〜30、殊に0〜20、特に0〜10、例えば1〜6の範囲内のAPHA色数を有する。
【0056】
本明細中の全てのAPHAの記載は、DIN ISO6271(=Hazen)によりなされる。本明細書中の全てのppmの記載は、質量(質量ppm)に関連する。
【実施例】
【0057】
実施例
試験を、攪拌機、温度計およびガス供給管を備えた4リットルの三口フラスコからなる実験装置中で実施した。ジエタノールアミン21質量%とトリエタノールアミン79質量%とからなる混合物にH3PO31000ppmを添加し、それぞれ選択的に異なる量の塩基を添加した。
【0058】
真空中で前記フラスコから約190〜195℃の塔底温度で順次にジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンを1〜8時間の範囲内の時間でヴィグロウカラムを介して留去し、少なくとも99.4%(GC面積%)の含量を有するトリエタノールアミンの画分を得た。
【0059】
前記品質のトリエタノールアミンから色数の測定(Hazenによる)を実施し、次に表に詳細に記録した。副反応による収量の損失は、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン(TEOA)の得られた画分を計量することによって測定され、蒸留後に塔底部中に残留している高沸点化合物の形成に関連する。
【0060】
第1表
【表1】

【0061】
亜燐酸への水酸化アンモニウムの付加的な添加は、トリエタノールアミンの蒸留による収量の上昇を、色数に対する不利な影響なしにではあるが、むしろ、部分的に色数に対するプラスの影響(色数の減少の意味において)をもって生じる。
【0062】
第2表:
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリエタノールアミンの製造法において、トリエタノールアミンに亜燐酸および/または次亜燐酸、および塩基性化合物を、トリエタノールアミンの蒸留前および/または蒸留中に添加し、この場合この塩基性化合物は、[R123(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドであり、但し、この場合R1、R2およびR3は、互いに無関係にC1〜C30−アルキルまたはC2〜C10−ヒドロキシアルキルを表わすものとすることを特徴とする、トリエタノールアミンの製造法。
【請求項2】
トリエタノールアミンを、酸および塩基性化合物を添加しながら少なくとも5分間の時間に亘って処理する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
トリエタノールアミンを、酸および塩基性化合物を添加しながら10分間〜50時間の時間に亘って処理する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記添加量でのトリエタノールアミンの処理を40〜250℃の範囲内の温度で実施する、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
トリエタノールアミンに亜燐酸および/または次亜燐酸0.01〜2質量%(純粋なトリエタノールアミンに対して)を添加する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
トリエタノールアミンに亜燐酸および/または次亜燐酸、および[R123(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドを1:1〜100:1の範囲内の酸:水酸化物のモル比で添加する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
トリエタノールアミンに亜燐酸および/または次亜燐酸、および[R123(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドを1.1:1〜10:1の範囲内の酸:水酸化物のモル比で添加する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
アンモニウムヒドロキシドは、[テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドまたは[(C1〜C4−アルキル)3(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドである、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
アンモニウムヒドロキシドは、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドである、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
トリエタノールアミンに亜燐酸および/または次亜燐酸、および[R123(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドを含有し、但し、この場合R1、R2およびR3は、互いに無関係にC1〜C30−アルキルまたはC2〜C10−ヒドロキシアルキルを表わすものとする、トリエタノールアミン。
【請求項11】
亜燐酸および/または次亜燐酸0.01〜2質量%(純粋なトリエタノールアミンに対して)を含有する、請求項10記載のトリエタノールアミン。
【請求項12】
亜燐酸および/または次亜燐酸、および[R123(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドを1:1〜100:1の範囲内の酸:水酸化物のモル比で含有する、請求項10または11記載のトリエタノールアミン。
【請求項13】
[テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドを含有する、請求項10から13までのいずれか1項に記載のトリエタノールアミン。
【請求項14】
[(C1〜C4−アルキル)3(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム]ヒドロキシドを含有する、請求項10から13までのいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2010−260876(P2010−260876A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186367(P2010−186367)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【分割の表示】特願2007−528656(P2007−528656)の分割
【原出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】