説明

トリガー式噴出器

【課題】噴射量と併せてその噴射範囲を変更することができるトリガー式噴出器を提供する。
【解決手段】トリガー式噴出器100は、ボディ120に設けたシリンダの外周面に回動可能に保持される回動部221と、当該回動部221に一体に設けられた腕部222とを有し、当該腕部222の先端に形成された接触部224が、操作レバー140とシリンダとの相互間に位置して、操作レバー140の背面側内壁の端縁140eと整列する位置まで回動されることで、操作レバー140の牽曳に際してその途中で当該操作レバー140の背面側内壁の端縁140eに接触することにより、操作レバー140の牽曳量を制限する回動部材220である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作レバーの牽曳とその牽曳の解除を交互に繰り返して内容物を吸引、加圧して圧送するポンプを備えたトリガー式噴出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トリガー式噴出器には、噴射ノズルからの内容物(カビ取り剤・住居用洗剤・住居用ワックス・衣料用仕上げ剤・衣料用糊剤・整髪剤などの化粧品・殺虫剤ほか)を霧状または泡状に噴射するものがあり、例えば、内容物を泡状に噴射する噴出器には、噴射ノズルの前面に開閉自在な衝突板を設け、常に内容物を十分に泡立てて噴射する場合と、余り泡立てずに噴射する場合とで噴射形態を切り換えるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−71463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした従来のトリガー式噴出器では、噴射形態を切り換えることができるものの、衝突板の開閉に関わらず噴射量は常に一定であり、また、衝突板を閉じた時の噴射範囲も広範囲であるため、少ない量の内容物を特定の箇所に対し重点的にピンポイント的に噴射したい場合には、その機能を十分に発揮することが困難であった。
【0005】
本発明は、こうした事実に鑑みてなされたものであり、噴射量と併せてその噴射範囲を変更することができるトリガー式噴出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内容物を泡状に噴射するための泡生成部を備える噴射ノズルと、この噴射ノズルにつながる送給経路を有し内容物の吸引、加圧を司るポンプを備えたボディと、このボディに揺動可能に保持されその牽曳および解除によって前記ポンプを作動させる操作レバーと、前記ボディを容器の口部に固定保持するベースキャップとからなるトリガー式噴出器において、前記操作レバーの牽曳量を切り換えて内容物の噴出量を制限し併せて噴射範囲を変更する切り換え手段を設け、当該切り換え手段は、ボディに設けたシリンダの外周面に回動可能に保持される回動部と、当該回動部に一体に設けられた腕部とを有し、当該腕部の先端に形成された接触部が、前記シリンダと前記操作レバーとの相互間に位置して、前記操作レバーの背面側内壁の端縁と整列する位置まで回動されることで、当該操作レバーの牽曳に際してその途中で当該操作レバーの背面側内壁の端縁に接触することにより、前記操作レバーの牽曳量を制限する回動部材であることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明は、内容物を泡状に噴射するための泡生成部を備える噴射ノズルと、この噴射ノズルにつながる送給経路を有し内容物の吸引、加圧を司るポンプを備えたボディと、このボディに揺動可能に保持されその牽曳および解除によって前記ポンプを作動させる操作レバーと、前記ボディを容器の口部に固定保持するベースキャップとからなるトリガー式噴出器において、前記操作レバーの牽曳量を切り換えて内容物の噴出量を制限し併せて噴射範囲を変更する切り換え手段を設け、当該切り換え手段は、前記ボディ又は当該ボディに設けられたスピンエレメントに対して回動可能に保持される回動部と、当該回動部に一体に設けられた腕部とを有し、当該腕部の先端に形成された接触部が、前記操作レバーの背面側内壁の端縁と整列する位置まで回動されることで、前記操作レバーと前記シリンダとの相互間に位置して、前記操作レバーの牽曳に際してその途中で当該操作レバーの背面側内壁の端縁に接触することにより、前記操作レバーの牽曳量を制限する回動部材であるものである。
【0008】
上記切り換え手段が、ボディ又は当該ボディに設けられたスピンエレメントに対して回動可能に保持されるものである場合、当該切り換え手段は、噴射ノズルとボディとの相互間で回動するものとすることができる。また、この場合、当該切り換え手段は、噴射ノズルと一体に回動するものとすることもできる。更に、前記切り換え手段は、操作レバーの内壁端縁と接触してその牽曳動作を禁止するロック部を一体に備えるものとすることができる。
【0009】
なお、本発明のトリガー式噴出器は、各構成部材を後述の形態等及び図面に記載される通りそれぞれ別パーツ構成として組み立てたトリガー式噴出器のほか、例えば、ボディと操作レバー或いはボディとベースキャップを一体成形する等、幾つかの構成部材を一体成形して他の構成部材と組み立てたトリガー式噴出器も含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トリガー式噴出器に、操作レバーの牽曳量を切り換えて内容物の噴出量を制限し併せて噴射範囲を変更する切り換え手段を設けたことから、操作レバーの牽曳およびその解除によって作動するポンプから送給経路に圧送される内容物の排出量とその圧力が減少し、噴射ノズルに設けた衝突板の背面等の泡生成部に内容物が衝突する影響が軽減されるため、少ない量の内容物を広範囲に拡散させることなく、特定の箇所に対してピンポイント的に噴射することができる。
【0011】
本発明において、上記切り換え手段は、回動部材の接触部が操作レバーとボディとの相互間にあるため、回動部材の接触部が使用者の牽曳動作を妨げることなく、操作性に優れるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の参考技術であるトリガー式噴出器を、スライド部材が全牽曳量を保証する位置にある状態で示す縦断面図である。
【図2】同参考技術において、スライド部材が牽曳量を制限する位置にある状態で示す要部断面図である。
【図3】同参考技術の操作レバーおよびスライド部材を背面から示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の形態を示す縦断面図である。
【図5】同形態における牽曳動作を説明する他の斜視図である。
【図6】本発明の第2の形態を示す縦断面図である。
【図7】同形態における牽曳動作を説明する斜視図である。
【図8】同形態における牽曳動作を説明する他の斜視図である。
【図9】(a),(b)はそれぞれ、本発明の第3の形態における牽曳動作を説明する斜視図および要部拡大図である。
【図10】(a),(b)はそれぞれ、同形態における牽曳動作を説明する他の斜視図および要部拡大図である。
【図11】(a),(b)はそれぞれ、同形態における牽曳動作を説明するさらに他の斜視図および要部拡大図である。
【図12】同形態の変形例を示す斜視図である。
【図13】同形態の変形例を示す他の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の様々な形態を詳細に説明する。
【0014】
図1および図2はそれぞれ、本発明の参考技術であるトリガー式噴出器200を、後述するスライド部材150が全牽曳量を保証する位置にある状態で示す縦断面図と、スライド部材150が牽曳量を制限する位置にある状態で示す要部断面図であり、図3は、トリガー式噴出器200に設けた操作レバー140およびスライド部材150を背面方向から示す斜視図である。
【0015】
図1,2において、符号110は、ボディ120に形成した送給経路121にスピンエレメント130を介してつながる噴射ノズルである。噴射ノズル110は、スピンエレメント130に取り付けるノズルベース111と、このノズルベース111の先端に取り付ける衝突板112と、ノズルベース111に一体に取り付けられ、後述する操作レバー140の牽曳を禁止するロック部113からなる。
【0016】
ノズルベース111は、スピンエレメント130との相互間に、旋回流形成路を形成しこの旋回流形成路とつながる開孔111aを有する。衝突板112は、ノズルベース111との相互間に、旋回流形成路を経て噴射された内容物を拡散させる拡散室114を形成し、この拡散室114につながる開孔112aを有する。
【0017】
これにより噴射ノズル110では、スピンエレメント130との相互間で旋回流となった内容物が噴霧粒子として拡散室114で拡散したのち、その一部が衝突板112の背面に衝突し、拡散室114の噴霧粒子がさらに細かな粒子となって空気と共に攪拌されるため、拡散室114で泡となって噴射孔112aから噴射される。
【0018】
ボディ120は、図1に示すように、送給経路121を有し内容物の吸引、加圧を司るポンプPを備える。ポンプPは、開孔120aを介して送給経路121につながるシリンダ122と、このシリンダ122内を摺動自在なピストン123との相互間にリターンスプリング124を配してなる。
【0019】
符号140は、ボディ120に設けたピン部120pによって揺動可能に保持される操作レバーであり、その背面の一部はピストン123に常時接触している。これによりポンプPは、操作レバー140の牽曳およびその解除によるリターンスプリング124の反力により内容物の吸引、加圧が可能となる。
【0020】
また操作レバー140の背面141には、図3に示す如く、3つの内壁142,143,144が一体に形成されており、これら内壁で画成された開空間には、操作レバー140の長手方向に沿ってスライドし、そのスライド量に応じて、操作レバー140の牽曳に際してボディ120(シリンダ122)と接触するスライド部材150が設けられている。
【0021】
スライド部材150は、図3に示す如く、その背面151にボディ120に向かって突出する接触部152と、このスライド部材150をスライドさせる際に用いられる把持部153を有する。またスライド部材150は、その一側面に、操作レバー140の内壁142に対して摺動するガイド壁154が設けられる一方、その他側面は解放されて端縁150eを形成している。これにより、スライド部材150を操作レバー140の背面141から取り付けると、スライド部材150の背面151が操作レバー140の内壁143に設けられた張り出し部143p,145によってアンダーカット嵌合されるため、スライド部材150は、操作レバー140に対してスライド可能に保持固定される。
【0022】
また、図示しないが、操作レバー140およびスライド部材150との相互間には、スライド部材150を位置決めするための位置決め手段Poを設けてもよい。この位置決め手段Poは、操作レバー140およびスライド部材150のいずれか一方に凸部を、他方に該凸部が嵌合する凹部または乗越え可能な第2凸部を設けることにより構成することが可能であり、この場合、常に操作レバー140に対して適切に位置決めすることができる。
【0023】
一方、シリンダ122と開孔120aでつながり垂直方向に延在する送給経路121の内部には、操作レバー140の牽曳で解放される第1の逆止弁(弾性弁)125と、操作レバー140の牽曳の解除により解放される第2の逆止弁(玉形弁)126とを内装したインテーク127が設けられている。インテーク127は、水平方向に延びる送給経路121とつながる開孔127aおよび、シリンダ122の開孔120aとつながる開孔127bを有し、ボディ120の下端付近にアンダーカット嵌合されている。
【0024】
符号160は、インテーク127のフランジ127fを介してボディ120に対して回転可能に保持されるベースキャップである。このベースキャップ160は、所謂スクリューキャップであって、ボディ120を容器の口部11に固定保持する。
【0025】
つまりトリガー式噴出器200は、噴出ノズル110につながる送給経路121を有し内容物の吸引、加圧を司るポンプPを備えたボディ120と、このボディ120に揺動可能に保持されその牽曳および解除によりポンプPを動作させる操作レバー140と、この操作レバー140をスライドするスライド部材150と、ボディ120を容器の口部11に固定保持するベースキャップ160からなる。
【0026】
かかるトリガー式噴出器200によれば、スライド部材150を図1に示すように操作レバー140の最下点付近までスライドさせると、スライド部材150の接触部152は、操作レバー140の牽曳に際してボディ120(この参考技術ではシリンダ122の開口縁122e)と接触しないため、噴射ノズル110をスピンエレメント130周りに回転させてロック部113をシリンダ120の開口縁122eから解除すると、操作レバー140の牽曳量を制限させることなく、全牽曳することができる。
【0027】
この場合、操作レバー140の全牽曳によりピストン123をリターンスプリング124の弾性力に抗してシリンダ122内に押し込んで該シリンダ122内の内容物を加圧して送給経路121に圧送し噴射ノズル110から泡状になった最大量の内容物を広い範囲に噴射できる一方、操作レバー140の牽曳の解除によりピストン123をリターンスプリング124の弾性力で初期位置に復元させてディップチューブ128からシリンダ122内に内容物を吸引することができる。
【0028】
これに対して、図2に示すようにスライド部材150をピン部120pに向かってスライドさせると、スライド部材150の接触部152が、シリンダ122の開口縁122eと整列し、操作レバー140の牽曳に際してその途中でシリンダ122の開口縁122eに接触するため、操作レバー140の牽曳量を制限させることになる。
【0029】
かかる構成によれば、スライド部材150が操作レバー140の牽曳量を制限することにより、シリンダ122から送給経路121に圧送される内容物の排出量とその圧力が減少し、衝突板112の背面に内容物が衝突する影響が軽減されるため、少ない量の泡状の内容物を広範囲に拡散させることなく、特定の箇所に対してピンポイント的に噴射することができる。
【0030】
なお、本参考技術の場合、トリガー式噴出器200を使用しないときには、噴射ノズル110を図1に示すように回動させて、ロック部113を操作レバー140とシリンダ122の開口縁122eとの間に配置しておけば、操作レバー140の牽曳動作が禁止されるため、不使用時における誤噴射を防止することができる。またロックに際してのスライド部材150の位置は、上記した図1に示す位置の他、図2の位置においても、スライド部材150の形状を接触部152の一部を切り欠くと共にガイド壁154を片側のみとした前記形状としたことにより、ロック部113を操作レバー140とシリンダ122の開口縁122eとの間に配置することが可能となっている。
【0031】
これに対し、図4,5はそれぞれ、本発明の第1の形態であって、縦断面図とその牽曳動作を説明する斜視図であり、参考技術と同一の部分は同一符号をもってその説明を省略する。
【0032】
この形態では、スライド部材150に換えて、シリンダ122周りを回動する回動部材220が設けられている。回動部材220は、シリンダ122の外周面に対して回動可能に保持される回動部221と、この回動部221に一体に設けられた腕部222とを有する。
【0033】
腕部222は、図5に示す如く、その先端付近が段223,224を形成しており、段223は、操作レバー140の内壁端縁140eと接触してその牽曳動作を禁止するロック部を構成する一方、段224は、段223よりも操作レバー140に遠い位置にあって操作レバー140の牽曳を制限する接触部を構成する。また腕部222の下端には、回動部材220を回動させる際に用いられる把持部225が設けられている。これにより、回動部材220は、シリンダ122周りで回動可能に保持される。なお、回動部材220も、シリンダ122周りで回動可能に保持する他に、回動部材220とシリンダ122の外周面との相互間には、図示しないが先に説明した凹凸嵌合部、乗越え可能な第1,第2凸部、若しくは、突部および溝からなる位置決め手段Poが設けられている。
【0034】
かかる構成によれば、トリガー式噴出器100を使用しないときには、回動部材220を腕部222が操作レバー140に潜り込む位置に回動させて図4に示すようにロック部223を操作レバー140の内壁端縁140eに接触させておけば、操作レバー140の牽曳動作が禁止されるため、不使用時における誤噴射を防止することができる。
【0035】
そして、その使用時にあっては、2つの噴射形態に切り換えることができる。例えば、少ない量の内容物を特定の箇所を重点にピンポイント的に噴射したい場合には、回動部材220をロック部223が操作レバー140の背面141に画成された開空間に導入される位置または接触部(段)224が操作レバー140の内壁端縁140eと整列する位置まで回動させれば、回動部材220のロック部223は解除されるものの、操作レバー140の牽曳に際して操作レバー140の内壁端縁140eが接触部224に接触するため、操作レバー140の牽曳量を制限できる。また、最大量の内容物を広い範囲に拡散させたい場合には、図5の位置からさらに、接触部224が操作レバー140から離れる向きに回動させれば、操作レバー140は、操作レバー140の牽曳に際して接触部224と接触しないため、操作レバー140の牽曳量を制限させることなく、全牽曳することができる。
【0036】
なお、この形態では、図5の領域Aに示すように、回動部材220の回動部221の側面およびシリンダ122の外装面に、噴射形態を規定する位置合わせ用のマークが施されている。
【0037】
図6は、本発明の第2の形態を示す縦断面図であり、また図7,8はそれぞれ、同形態の牽曳動作を説明する斜視図である。なお、以下の説明において、第1の形態等と同一の部分は同一符号をもってその説明を省略する。
【0038】
この形態では、回動部材220に換えて、噴射ノズル110とボディ120との相互間で回動する回動部材230が設けられている。回動部材230は、スピンエレメント130に対して回動可能に固定保持される回動部231と、この回動部231に一体に設けられた腕部232とを有する。
【0039】
腕部232は、図7,8に示す如く、その先端背面232eがシリンダ122の開口縁122eに対して摺動可能に接触する一方、その先端前面は段233,234を形成しており、段233は、操作レバー140の内壁端縁140eと接触してその牽曳動作を禁止するロック部を構成する一方、段234は、段233よりも操作レバー140に遠い位置にあって操作レバー140の牽曳を制限する接触部を構成する。これにより、回動部材230は、噴射ノズル110とボディ120との相互間に回動可能に保持される。なお、回動部材230も、噴射ノズル110とボディ120との相互間に回動可能に固定保持する他に、ボディ120またはスピンエレメント130との相互間には、図示しないが先に説明した凹凸嵌合部、乗越え可能な第1,第2凸部、若しくは、突部および溝からなる位置決め手段Poが設けられている。
【0040】
かかる構成によれば、トリガー式噴出器100を使用しないときには、回動部材230を腕部232が操作レバー140に潜り込む位置に回動させて図7に示すようにロック部233を操作レバー140の内壁端縁140eに接触させておけば、操作レバー140の牽曳動作が禁止されるため、不使用時における誤噴射を防止することができる。
【0041】
そして、その使用時にあっては、2つの噴射形態に切り換えることができる。例えば、少ない量の内容物を特定の箇所を重点にピンポイント的に噴射したい場合には、図8に示すように、回動部材230を接触部234が操作レバー140の内壁端縁140eと整列する位置まで回動させれば、回動部材230のロック部233は解除されるものの、操作レバー140の牽曳に際して操作レバー140の内壁端縁140eが接触部234に接触するため、操作レバー140の牽曳量を制限できる。また、最大量の内容物を広い範囲に拡散させたい場合には、図8の位置からさらに、回動部材230を接触部234が操作レバー140から離れる向きに回動させれば、操作レバー140は、操作レバー140の牽曳に際して回動部材230の接触部234と接触しないため、操作レバー140の牽曳量を制限させることなく、全牽曳することができる。
【0042】
なお、この形態でも、図7,8の領域Aに示すように、回動部材230の回動部231の側面およびボディ120の外装面に、噴射形態を規定する位置合わせ用のマークが施されている。また回動部231はスピンエレメント130に対して回動するが、これは、噴射ノズル110に隣接するボディ120周りで回動可能に固定保持してもよい。
【0043】
図9〜11(a),(b)はそれぞれ、本発明の第3の形態であって、その牽曳動作を説明する斜視図および要部拡大図であり、他の形態等と同一の部分は同一符号をもってその説明を省略する。
【0044】
この形態では、回動部材230に換えて、噴射ノズルと一体に回動部材240が設けられている。回動部材240は、スピンエレメント130に対して回動可能に固定保持される回動部241と、この回動部241に一体に設けられた腕部242とを有する。回動部241は、前述した噴射ノズル110と同様の内部構造(図1の噴射ノズル110等参照)と、拡散室114とつながる噴射孔240aを有する噴射ノズルを構成する。これにより、回動部材240は、既知の手段でスピンエレメント130に対して回動可能に保持固定される。なお、回動部材240は、スピンエレメント130との相互間に回動可能に固定保持される他に、ボディ120またはスピンエレメント130との相互間に、図示しないが先に説明した凹凸嵌合部、乗越え可能な第1,第2凸部、若しくは、突部および溝からなる位置決め手段Poが設けられている。
【0045】
腕部242は、シリンダ122に向かって延在する水平部分242aとこの水平部分242aから回動部241周りに沿って延在するシリンダ接触部分242bからなり、水平部分242aを境にシリンダ接触部分242bの反対位置に、操作レバー140の内壁端縁140eと接触してその牽曳動作を禁止するロック部243を設ける一方、シリンダ接触部分242bの先端付近に、ロック部243よりも段差の低い操作レバー140の牽曳量を制限する接触部244を設ける。なお、シリンダ接触部分242bの背面242eは、ロック部243または接触部244が操作レバー140の内壁端縁140eと接触する位置では、図9,10(b)の拡大側面図に示す如く、シリンダ122の開口縁122eに対して摺動可能に接触する。
【0046】
かかる構成によれば、トリガー式噴出器100を使用しないときには、図9(b)に示す如く、回動部材240をロック部243が操作レバー14の内壁端縁140eと整列する位置まで回動させてロック部243を操作レバー140の内壁端縁140eに接触させておけば、操作レバー140の牽曳動作が禁止されるため、不使用時における誤噴射を防止することができる。
【0047】
そして、その使用時にあっては、2つの噴射形態に切り換えることができる。例えば、少ない量の内容物を特定の箇所を重点にピンポイント的に噴射したい場合には、図10に示すように、回動部材240の接触部244が操作レバー140の内壁端縁140eと整列する位置まで回動させれば、回動部材240のロック部243は解除されるものの、操作レバー140の牽曳に際してストロークL1をもって操作レバー140の内壁端縁140eが回動部材240の接触部244に接触するため、操作レバー140の牽曳量を制限できる。また、最大量の内容物を広い範囲に拡散させたい場合には、図11(a)の位置に回動させれば、操作レバー140は、図11(b)に示す如く、操作レバー140の牽曳に際して回動部材240の接触部244と接触しないため、操作レバー140の牽曳量を制限させることなく、ストロークL2をもって全牽曳することができる。
【0048】
特に、本形態の場合、回動部材240が噴射ノズルと一体に回動自在に保持固定される回動部材としてなるから、回動部材240以外は既存の部品を流用することができる。
【0049】
図12,13はそれぞれ、上記第3の形態の変形例を示す斜視図であり、他の形態等と同一の部分は同一符号をもってその説明を省略する。
【0050】
この形態において、噴射ノズルと一体に設けられた回動部材250は、スピンエレメント130に対して回動可能に固定保持される回動部251と、この回動部251に一体に設けられた腕部252とを有する。回動部251は、前述した噴射ノズル110と同様の内部構造とつながる噴射孔250aを有する噴射ノズルを構成する。これにより、回動部材250も、既知の手段でスピンエレメント130に対して回動可能に保持固定される。なお、回動部材250も、スピンエレメント130との相互間に回動可能に固定保持される他に、ボディ120またはスピンエレメント130との相互間には、図示しないが先に説明した凹凸嵌合部、乗越え可能な第1,第2凸部、若しくは、突部および溝からなる位置決め手段Poが設けられている。
【0051】
腕部252は、図12,13に示す如く、その先端背面252eがシリンダ122の開口縁122eに対して摺動可能に接触する一方、その先端前面は段253,254を形成しており、段253は、操作レバー140の内壁端縁140eと接触してその牽曳動作を禁止するロック部を構成する一方、段254は、段253よりも操作レバー140に遠い位置にあって操作レバー140の牽曳を制限する接触部を構成する。
【0052】
かかる構成によれば、トリガー式噴出器100を使用しないときには、図12に示す如く、回動部材250をロック部253が操作レバー140の内壁端縁140eと整列する位置まで回動させてロック部253を操作レバー140の内壁端縁140eに接触させておけば、操作レバー140の牽曳動作が禁止されるため、不使用時における誤噴射を防止することができる。
【0053】
そして、その使用時にあっては、2つの噴射形態に切り換えることができる。例えば、少ない量の内容物を特定の箇所を重点にピンポイント的に噴射したい場合には、図13に示すように、回動部材250の接触部254が操作レバー140の内壁端縁140eと整列する位置まで回動させれば、回動部材250のロック部253は解除されるものの、操作レバー140の牽曳に際して操作レバー140の内壁端縁140eが回動部材250の接触部254に接触するため、操作レバー140の牽曳量を制限できる。また、最大量の内容物を広い範囲に拡散させたい場合には、図13の位置からさらに、接触部254が操作レバー140から離れる向きに回動させれば、操作レバー140は、操作レバー140の牽曳に際して回動部材250の接触部254と接触しないため、操作レバー140の牽曳量を制限させることなく、全牽曳することができる。
【0054】
なお、この形態にも、図12,13の領域Aに示すように、回動部材250の回動部251の側面およびボディ120の外装面に、噴射形態を規定する位置合わせ用のマークが施されている。
【0055】
上述したように、本発明によれば、トリガー式噴出器100に、操作レバー140の牽曳量を切り換えて内容物の噴出量を制限し併せて噴射範囲を変更する切り換え手段を設けたことから、シリンダ122から送給経路121に圧送される内容物の排出量とその圧力が減少し、衝突板112の背面に内容物が衝突する影響が軽減されるため、少ない量の泡状の内容物を広範囲に拡散させることなく、特定の箇所に対してピンポイント的に噴射することができる。
【0056】
特に、上記切り換え手段が操作レバー140とボディ120との相互間に、回動部材(220〜250)の接触部(224,234,244,254)が位置することから、回動部材(220〜250)の接触部(224,234,244,254)が使用者の牽曳動作を妨げることなく、操作性に優れるという効果が得られる。
【0057】
上述したところは、本発明の様々な形態を示したに過ぎず、当業者によれば、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。例えば、ボディ120に設けたポンプPは、操作レバー140の牽曳およびその解除が直接噴射量に影響する構造のものであれば、上述の各形態等で例示したものに限定されるものではない。また操作レバーの牽曳量は、回動部材の接触部に段差を設ける等して2つ以上の切り換えを可能にすることができ、その際の位置決めも、位置決め手段Poのクリアランスや溝の個数を増やして対応させることができる。さらに、上述の各形態等で説明した技術内容は、上述の参考技術や本形態毎にそれぞれ独立するものではなく、トリガー式噴出器としての用途に応じて適宜組み合わせることができる。
【0058】
なお、上述した各形態において示した内容物を発泡させるための構造は、旋回流路とつながる開孔111aと衝突板112との間に外部より空気を取り入れて開孔111aから噴出された内容物と混合するため、噴射ノズル前面で内容物噴射のための開孔111aの周囲に空気導入部を形成するか、或いは、噴射ノズルの側壁に開孔111a前方につながる空気導入部を形成することにより外部から取り入れた空気と噴出された内容物とを混合して衝突板112に衝突させ発泡させる構造を示しているが、そのいずれを採用するかはノズル本体1のサイズや形状によって適宜選択される。さらには、泡生成部材である衝突板112の形状も本形態等で示した形状の他、種々の公知の形状が選択可能であり、加えて、前面の衝突板112に代えてノズル内壁を衝突部として構成することも可能であり、その形状は噴出させる内容物の粘度他の諸特性や使用形態に適した噴出パターンに合わせて適宜選択可能である。
【符号の説明】
【0059】
11 容器口部
100 トリガー式噴出器
110 噴射ノズル
120 ボディ
130 スピンエレメント
140 操作レバー
150 スライド部材
160 ベースキャップ
220〜250 回動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を泡状に噴射するための泡生成部を備える噴射ノズルと、この噴射ノズルにつながる送給経路を有し内容物の吸引、加圧を司るポンプを備えたボディと、このボディに揺動可能に保持されその牽曳および解除によって前記ポンプを作動させる操作レバーと、前記ボディを容器の口部に固定保持するベースキャップとからなるトリガー式噴出器において、
前記操作レバーの牽曳量を切り換えて内容物の噴出量を制限し併せて噴射範囲を変更する切り換え手段を設け、
当該切り換え手段は、ボディに設けたシリンダの外周面に回動可能に保持される回動部と、当該回動部に一体に設けられた腕部とを有し、
当該腕部の先端に形成された接触部が、前記シリンダと前記操作レバーとの相互間に位置して、前記操作レバーの背面側内壁の端縁と整列する位置まで回動されることで、当該操作レバーの牽曳に際してその途中で当該操作レバーの背面側内壁の端縁に接触することにより、前記操作レバーの牽曳量を制限する回動部材であることを特徴とするトリガー式噴出器。
【請求項2】
内容物を泡状に噴射するための泡生成部を備える噴射ノズルと、この噴射ノズルにつながる送給経路を有し内容物の吸引、加圧を司るポンプを備えたボディと、このボディに揺動可能に保持されその牽曳および解除によって前記ポンプを作動させる操作レバーと、前記ボディを容器の口部に固定保持するベースキャップとからなるトリガー式噴出器において、
前記操作レバーの牽曳量を切り換えて内容物の噴出量を制限し併せて噴射範囲を変更する切り換え手段を設け、
当該切り換え手段は、前記ボディ又は当該ボディに設けられたスピンエレメントに対して回動可能に保持される回動部と、当該回動部に一体に設けられた腕部とを有し、
当該腕部の先端に形成された接触部が、前記操作レバーの背面側内壁の端縁と整列する位置まで回動されることで、前記操作レバーと前記シリンダとの相互間に位置して、前記操作レバーの牽曳に際してその途中で当該操作レバーの背面側内壁の端縁に接触することにより、前記操作レバーの牽曳量を制限する回動部材であることを特徴とするトリガー式噴出器。
【請求項3】
前記切り換え手段は、噴射ノズルとボディとの相互間で回動するものである請求項2に記載のトリガー式噴出器。
【請求項4】
前記切り換え手段は、噴射ノズルと一体に回動するものである請求項2に記載のトリガー式噴出器。
【請求項5】
前記切り換え手段は、操作レバーの内壁端縁と接触してその牽曳動作を禁止するロック部を一体に備えるものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトリガー式噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−45885(P2011−45885A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237755(P2010−237755)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【分割の表示】特願2003−125654(P2003−125654)の分割
【原出願日】平成15年4月30日(2003.4.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】