説明

トリガー式液体噴出器

【課題】液体の噴出量を可変させることができるトリガー式液体噴出器を提供することを目的とする。
【解決手段】上方付勢状態で押し込み可能に起立したステム3と、ステム3の前方側に配設された指掛部41及び押下部42を有し、ステム3の後方側に配設された揺動軸27周りに揺動可能なトリガー4と、トリガー4の揺動に伴って押下部42によりステム3が押し下げられることで作動するポンプ5と、ノズル6と、ストッパー7と、を備えるトリガー式液体噴出器1において、ストッパー7は、少なくとも、ポンプ5が停止した状態でステム3の押し下げ動作を規制するロック位置と、ロック位置よりも後方側に傾倒され、ロック位置におけるステム3の規制位置よりも下方の位置でステム3の押し下げ動作を規制する半開位置と、半開位置よりも後方側に傾倒され、ステム3の押し下げ動作を許容する全開位置と、に切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のトリガー式液体噴出器として、例えば下記特許文献1に示されているように、容器の口部に取り付けられる装着筒(キャップ)と、装着筒に設けられた支持筒(ガイド筒)の内側に挿通され、上方付勢状態で押し込み可能に起立したステムと、ステムの後方側に配設された揺動軸周りに揺動可能なレバー(トリガー)と、レバーの揺動に伴ってステムが押し下げられることで作動するポンプと、ステムの上部に連結されたノズルと、レバーの揺動軸に平行する回転軸周りに回転可能に設けられたストッパーと、を備える構成が知られている。上記ストッパーは、対向配置された一対の側板部と、一対の側板部の一端部の間に架設された回転軸と、一対の側板部の他端部の間に介在されて支持筒の上端に載置されるC形の係止板(載置部)と、側板部の外側面に突設された操作摘(アーム部、ツマミ部)と、から構成されている。このトリガー式液体噴出器によれば、ストッパーを起立させてロック位置に配置することにより、係止板が支持筒の上端に載置されるとともに一対の側板部の上端がレバーの側壁部の下端に当接してレバーが係止され、ステムの押し下げ動作が規制される。一方、ストッパーを後方側へ傾倒させて全開位置に配置することにより、一対の側板部がレバーの側壁部の下端から外れてステムの押し下げ動作が許容される。
【特許文献1】特開2004−209319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、液体の噴出量を可変させることができるトリガー式液体噴出器が要望されている。ノズルからの液体の噴出量を可変させるには、ポンプによる液体の供給量を可変させる必要があり、ポンプによる液体の供給量を可変させるには、ステムの押し下げストロークを可変させる必要がある。
しかしながら、上記した従来のトリガー式液体噴出器では、ストッパーがロック位置と全開位置とに切り替えられるだけであり、ステムの押し下げストロークを可変させることができない。したがって、上記した従来のトリガー式液体噴出器では、液体の噴出量を可変させることができない。
【0004】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、液体の噴出量を可変させることができるトリガー式液体噴出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るトリガー式液体噴出器は、上方付勢状態で押し込み可能に起立したステムと、該ステムの前方側に配設された指掛部、及び前記ステムを押し下げる押下部を有し、前記ステムの後方側に配設された揺動軸周りに揺動可能なトリガーと、該トリガーの揺動に伴って前記押下部により前記ステムが押し下げられることで作動するポンプと、前記ステムの上部に連結されたノズルと、前記揺動軸に平行する回転軸周りに回転可能に設けられたストッパーと、を備えるトリガー式液体噴出器において、前記ストッパーは、少なくとも、前記ポンプが停止した状態で前記ステムの押し下げ動作を規制するロック位置と、該ロック位置よりも後方側に傾倒され、前記ロック位置における前記ステムの規制位置よりも下方の位置で前記ステムの押し下げ動作を規制する半開位置と、該半開位置よりも後方側に傾倒され、前記ステムの押し下げ動作を許容する全開位置と、に切り替えられることを特徴としている。
【0006】
このような特徴により、ストッパーをロック位置に配置すると、ステムの押し下げ動作が規制されてポンプを作動させることができなくなる。これにより、例えば不意に作用した外力等によってトリガーが揺動して液体が噴出されることが阻止される。
また、ストッパーを後方側に傾倒させて半開位置に配置すると、ステムは押し下げ可能になるが、ロック位置における規制位置よりも下方の位置でステムの押し下げ動作が規制され、ステムは最後まで押し下げることができない。一方、ストッパーをさらに後方側に傾倒させて全開位置に配置すると、ステムの押し下げ動作が許容され、ステムは最後まで押し下げることが可能になる。つまり、ステムの押し下げストロークは、ストッパーが全開位置の場合よりも半開位置の場合の方が短縮される。
【0007】
また、本発明に係るトリガー式液体噴出器は、前記ストッパーに、前記ロック位置に配置された状態で前記押下部を係止する第一の係止部と、前記半開位置に配置された状態で前記押下部を係止する第二の係止部と、がそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0008】
これにより、ストッパーがロック位置に配置されると、第一の係止部がトリガーの押下部を係止し、トリガーの揺動動作が阻止され、ステムの押し下げ動作が規制される。
一方、ストッパーが半開位置に配置されると、第一の係止部がトリガーの押下部から外れてトリガーが揺動可能な状態になる。そして、トリガーが揺動すると、その揺動に伴ってステムが押し下げられる。そして、ステムが一定ところまで押し下げられたところで、第二の係止部がトリガーの押下部を係止し、トリガーはそれ以上揺動できなくなり、ステムの押し下げ動作が途中で規制される。
また、ストッパーが全開位置に配置されると、第二の係止部がトリガーの押下部から外れてトリガーが揺動可能な状態になり、ステムの押し下げ動作が許容される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るトリガー式液体噴出器によれば、ストッパーを半開位置と全開位置との間で切り替えることによりステムの押し下げストロークが可変するので、液体の噴出量を可変させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るトリガー式液体噴出器の実施の形態について、図面に基いて説明する。
図1は本発明の一例であるトリガー式液体噴出器1の側面図であり、図2はロック状態のトリガー式液体噴出器1の断面図であり、図3は半開状態のトリガー式液体噴出器1の断面図であり、図4は全開状態のトリガー式液体噴出器1の断面図であり、図5は後述するストッパー7を表す斜視図である。
なお、図2に示す鎖線Lは、後述するステム3の中心軸線であり、以下、単に「中心軸線L」と記す。また、本実施の形態では、後述するノズル6が向けられた方向(図1における左側)を前方とし、その反対側(図1における右側)を後方とし、後述するトリガー4の天板部43側(図1における上側)を上方とし、その反対側(図1における下側)を下方とし、前後方向及び上下方向にそれぞれ直交する方向(図1における紙面に垂直な方向)を左右方向とする。
【0011】
図1〜図4に示すように、トリガー式液体噴出器1は、図示せぬ容器の口部に取り付けられるキャップ2と、上方付勢状態で押し込み可能に起立したステム3と、ステム3を押し下げるためのトリガー4と、トリガー4の揺動に伴ってステム3が押し下げられることで作動するポンプ5と、ステム3の上部に連結されてポンプ5から供給された液体を噴出させるノズル6と、ステム3の押し下げ動作を規制するストッパー7と、を備えている。
【0012】
キャップ2は、外周面に雄ネジが形成された図示せぬ容器口部に螺着されるキャップである。キャップ2は、中心軸線Lに対して垂直に配設され、中央部に円形の開口が形成された円環状の天壁部20と、天壁部20の外縁部から中心軸線Lに沿って垂下され、内周面に雌ネジが形成された下筒部21と、天壁部20の中央部から中心軸線Lに沿って上向きに立設され、天壁部20の中央部の開口に連通された上筒部22と、上筒部22の上端から中心軸線Lに沿って上向きに立設され、上筒部22に連通されたガイド筒23と、上筒部22及びガイド筒23の後方に配設されたトリガー支持部24と、を備えている。
【0013】
トリガー支持部24は、上筒部22及びガイド筒23の外周面から後方に向けてそれぞれ突設され、間隔をあけて対向配置された一対の側壁部25と、一対の側壁部25の後端間に形成された後壁部26と、を備えている。側壁部25の上端の前部には、略U字形状に切り欠いた軸受け25aが形成されている。また、側壁部25の外側面には、前記軸受け25aの後方の位置に半球形状の突起25bが突設されている。側壁部25の上端の後部には、上方に向けて突出した突出部25cが形成されている。この突出部25cの外側面には、左右方向に延在する円柱形状の揺動軸27が突設されている。
【0014】
ステム3は、中心軸線Lに沿って延設された筒状部材である。ステム3は、ガイド筒23の内側に上下方向に移動可能に挿通されており、ステム3の上部は、ガイド筒23の上端から上方に向けて突出され、ステム3の下部は、ガイド筒23の下端から下方に向けて突出されて上筒部22内に配置されている。ステム3の上端部には、上端が閉塞された頭部30が設けられている。この頭部30の前面には、ステム3内に連通したノズル連結筒部31が前方に向けて突設されている。また、頭部30の左右両側の側面には、円柱形状の被押下部32がそれぞれ突設されている。
【0015】
ノズル6は、前方に向けて液体を噴射するためのものであり、ノズル連結筒部31の先端に連結されているとともに前方に向けて延設され、その先端面に図示せぬノズル孔が形成されている。
【0016】
トリガー4は、指等で後方に引いて操作する引き金部材であり、揺動軸27を介してトリガー支持部24に取り付けられており、この揺動軸27周りに揺動可能に設けられている。トリガー4には、指等が掛けられる指掛部41と、ステム3を押し下げるための押下部42と、が備えられている。指掛部41は、ステム3の前方側に配設されており、前方に向けて斜め下方に垂下されている。押下部42は、ステム3の頭部30の左右両側にそれぞれ配設されて互いに対向する一対の板状部であり、その下端には、被押下部32が周方向に摺動可能に嵌め込まれた円弧状の切欠部42aが形成されている。また、押下部42の後方側の下端部42bは、前方側の下端部よりも下方に延びている。
【0017】
詳しく説明すると、トリガー4は、ステム3の頭部30を覆う外殻状の部材であり、頭部30の上方に配設された天板部43と、天板部43の後端から後方に向けて斜め下方に延在した後板部44と、天板部43の前端から前方に向けて斜め下方に延在した前板部45と、天板部43の左右両側の側端からそれぞれ垂下されて互いに対向する一対の側板部46と、から構成されている。前板部45の上部には上下方向に長い長孔45aが形成され、この長孔45aにノズル6が挿通されている。一対の側板部46の内側面には、押下部42がそれぞれ設けられている。また、一対の側板部46の後部は、トリガー支持部24の突出部25cの外側面にそれぞれ対向配置されており、一対の側板部46の後部には、揺動軸27が周方向に摺動可能に挿通された軸孔46aが形成されている。なお、前板部45の下部が、上記した指掛部41となっている。
【0018】
ポンプ5は、図示せぬ容器内に収容された液体をノズル6に供給するためのものであり、キャップ2の内側に装着されている。ポンプ5の概略構成としては、中心軸線Lに沿って延設されたシリンダ50と、シリンダ50の内側に配置されてシリンダ50の内周面に摺接している二重筒構造のピストン51と、中心軸線Lに沿って延設された芯棒52と、シリンダ50内に収容されたコイルスプリング53と、球体状の弁体54と、を備えている。
【0019】
シリンダ50には、円筒形状のシリンダ本体50aと、シリンダ本体50aの中間部の外周面から径方向外側に突出したフランジ部50bと、シリンダ本体50aの下端に垂設された弁座部50cと、弁座部50cの下端に垂設された接続筒50dと、を備えている。シリンダ本体50aの上部はキャップ2の上筒部22内に嵌合されており、シリンダ本体50aの下部はキャップ2の下筒部21の内側に配設されている。フランジ部50bは、シリンダ本体50aの全周に亘って形成されており、キャップ2の天壁部20の下面に当接されている。また、フランジ部50bの下面には、リング状のパッキン50eが配置されている。弁座部50cの下部は、下方に向かうに従い漸次縮径されたテーパー形状になっている。接続筒50d内には、図示せぬ容器内に収容されるチューブ8の端部が嵌合されている。
【0020】
ピストン51は、ステム3の下端部に嵌合されており、ステム3の上下方向の移動に伴いシリンダ50の内周面に沿って摺動可能になっている。
芯棒52は、ピストン51内に挿通された棒状の部材である。芯棒52の上部は、ステム3内に挿通されている。芯棒52の下部には、拡径部52aが形成されており、この拡径部52aの下端部には、シリンダ本体50aの底面に載置された複数の縦リブ52bが周方向に間隔をあけて配設されている。
コイルスプリング53は、ピストン51と芯棒52の縦リブ52bとの間に介装されている。
弁体54は、弁座部50cの内側に収容されており、弁座部50c内のテーパー面に離着自在に配置されている。
【0021】
図1〜図5に示すように、ストッパー7は、トリガー4の揺動軸27に平行する回転軸70周りに回転可能に設けられた部材であり、トリガー4の揺動動作を阻止することによりステム3の押し下げ動作を規制するものである。ストッパー7は、ポンプ5が停止した状態でステム3の押し下げ動作を規制するロック位置(図2に示す位置)と、ロック位置よりも後方側に傾倒され、ロック位置におけるステム3の規制位置よりも下方の位置でステム3の押し下げ動作を規制する半開位置(図3に示す位置)と、半開位置よりも後方側に傾倒され、ステム3の押し下げ動作を許容する全開位置(図4に示す位置)と、に切り替え可能になっている。
【0022】
詳しく説明すると、ストッパー7は、対向配置された一対の側板部71と、一対の側板部71の一端部の間に架設された回転軸70と、一対の側板部71の他端部の間に介在された載置部72と、側板部71の外側面に突設されたアーム部73と、アーム部73の上端に設けられたツマミ部74と、備えている。
【0023】
一対の側板部71は、一端部が半円形で他端部が角丸長方形状の板状部であり、平面視において、上記したトリガー支持部24の一対の側壁部25の外側に配設されているとともに上記したトリガー4の一対の側板部46の内側に配設されている。側板部71の一端部は、トリガー支持部24の一対の側壁部25の外側面に対向配置されており、側板部71の一端部の内側面(側壁部25に対向する面)には、図2に示すようにストッパー7がロック位置に配置されている場合(以下、ロック時と記す。)に上記した突起25bが嵌め込まれる略扇形状の第一窪み部71aが形成されている。また、側板部71の中間部の内側面には、図4に示すようにストッパー7が全開位置に配置されている場合(以下、全開時と記す。)に上記した突起25bが嵌め込まれる略長円形状の第二窪み部71bが形成されている。また、側板部71の他端部は、ロック時に押下部42の後方側の下端部42bを係止する第一の係止部75となる。すなわち、ロック時には、押下部42の後方側の下端部42bが側板部71の他端部に当接されている。
【0024】
回転軸70は、左右方向に延在する丸棒状のものであり、回転軸70の両端部は、トリガー支持部24に形成された軸受け25aに軸回転可能に嵌め込まれている。ストッパー7は、この回転軸70周りに回転可能にキャップ2(トリガー支持部24)に取り付けられている。また、回転軸70の載置部72側の外周面には、回転軸70の中心軸線と平行に延設された凸リブ70aが突設されている。
【0025】
載置部72は、平面視C字形状の略筒形状のものであり、側面視において上辺が円弧状に傾斜されている。載置部72は、ロック時の状態において、前方側に向けて開放されてステム3が内側に嵌め込まれるとともに、ガイド筒23の上端に載置される。また、載置部72の先端部(開放側の端部)には、図3に示すようにストッパー7が半開位置に配置された場合(以下、半開時と記す。)の状態において上記した押下部42の後方側の下端部42bを係止する切欠状の第二の係止部76が形成されている。
【0026】
アーム部73は、側板部71の外側面に垂直に突設された板状のものであり、ロック時の状態において上下方向に延在されている。
ツマミ部74は、アーム部73の先端側の上端面に立設された円板状のものであり、トリガー4の側板部46の外側面に対して間隔をあけて対向配置されている。
【0027】
次に、上記した構成からなるトリガー式液体噴出器の作用について説明する。
【0028】
まず、トリガー式液体噴出器1を使用する前は、図2に示すように、ポンプ5を停止させた状態で、ストッパー7をロック位置に配置しておく。詳しく説明すると、コイルスプリング53によってピストン51が上方へ付勢され、ピストン51の上端面がガイド筒23の下端面に当接され、ポンプ5が停止状態になる。この状態で、ストッパー7が略鉛直なロック位置に配置され、載置部72がガイド筒23の上端に載置される。このとき、第一の係止部75が押下部42の後方側の下端部42bに当接し、トリガー4の下方への揺動が阻止され、押下部42によるステム3の押し下げ動作が規制される。これにより、ポンプ5は停止状態でロックされ、ポンプ5を作動させることができなくなる。また、ストッパー7がロック位置に配置されているとき、トリガー支持部24の突起25bがストッパー7の第一窪み部71a内に嵌め込まれている。また、ストッパー7がロック位置に配置されているとき、回転軸70の凸リブ70aが軸受け25a内に嵌め込まれて軸受け25aの内周面に圧接されている。
【0029】
次に、図3に示すように、ストッパー7を後方に傾倒させて半開位置に配置させる。詳しく説明すると、第二の係止部76が押下部42の後方側の下端部42bの略真下の位置に配置されるまで、ストッパー7を後方側に向けて回転軸70周りに回転させる。これにより、第一の係止部75によるトリガー4の係止が解除され、トリガー4の下方への揺動が許容され、ステム3が押し下げ可能となる。また、ストッパー7が半開位置に配置された際、第一窪み部71a内の突起25bが第一窪み部71aから外れて側板部71の内側面に摺接する。これにより、ストッパー7の回転動作の抵抗が増大し、ストッパー7が半開位置に配置されたことが感触で認識される。また、ストッパー7が半開位置に配置されると、回転軸70の凸リブ70aが軸受け25a内から外れて軸受け25aの開口部分に配置されて軸受け25aの後方側の開口端に当接する。これにより、ストッパー7が半開位置に配置されたことが明確に認識される。
【0030】
次に、トリガー4を引いてノズル6の先端から液体を噴出させる。具体的に説明すると、トリガー4の指掛部41に指等を掛けてトリガー4を後方へ牽引し揺動させる。トリガー4の揺動に伴い押下部42がステム3の被押下部32を下方へ押圧し、ステム3が押し下げられる。このとき、押下部42の後方側の下端部42bが第二の係止部76によって係止され、トリガー4のそれ以上の下方揺動が規制され、ステム3の押し下げ動作が規制される。つまり、半開時の状態では、ステム3は押し下げ可能になるが、ロック時における規制位置よりも下方の位置でステム3の押し下げ動作が規制され、ステム3は最後まで押し下げることができない。具体的には、半開時のステム3の押し下げストロークは、後述する全開時における押し下げストロークの半分程度に設定されている。
【0031】
上記したステム3の押し下げ動作により、ステム3の下端に連結されたピストン51が、シリンダ50の内周面上を摺動しながら下方に移動する。このとき、弁体54がシリンダ50の弁座部50cのテーパー状の下部内周面に着座されており、弁座部50cの下部が閉塞されているので、上述したようにピストン51が下方に移動することで、シリンダ本体50a内が加圧される。これにより、シリンダ本体50a内の液体が、芯棒52の外周面とピストン51の内周面との隙間を通ってステム3内に流入し、ステム3内を通ってノズル6に至り、ノズル6の先端の図示せぬノズル孔から噴出される。このとき、ステム3の押し下げストロークが全開時に比べて短いため、ポンプ5による液体の供給量は全開時に比べて少なくなり、ノズル6からは少量の液体が噴出される。具体的には、半開時におけるステム3の押し下げストロークは、全開時の押し下げストロークの半分程度であって、半開時における液体の噴出量は、全開時における噴出量の半分程度となる。
【0032】
次に、トリガー4を引いた指等を外すと、コイルスプリング53による付勢によりピストン51が上方に移動する。これにより、シリンダ本体50a内が減圧され、弁体54が浮上して弁座部50cの下部が開放され、図示せぬ容器内の液体が、チューブ8を通って、弁座部50c内に流入し、弁座部50c内から、芯棒52の縦リブ52b間を通ってシリンダ本体50a内に流入する。また、ピストン51の上方への移動に伴いステム3が上方へ移動することにより、被押下部32が押下部42を上方へ押圧し、トリガー4が前方側へ移動して元の位置に戻る。
【0033】
次に、図4に示すように、ストッパー7を上記した半開位置よりもさらに後方に傾倒させて全開位置に配置する。詳しく説明すると、第二の係止部76が押下部42の後方側の下端部42bよりも後方に配置されるまで、ストッパー7を後方側に向けて回転軸70周りに回転させる。第二の係止部76によるトリガー4の係止が解除され、トリガー4の下方への揺動が許容され、ステム3が最後まで押し下げ可能となる。また、ストッパー7が全開位置に配置された際、第二窪み部71b内に突起25bが嵌め込まれ、クリック感が生じる。これにより、ストッパー7が全開位置に配置されたことが感触で認識される。また、ストッパー7が全開位置に配置されると、回転軸70の凸リブ70aが軸受け25a内に嵌め込まれて軸受け25aの内周面に圧接されるので、ストッパー7の回転抵抗が増大し、ストッパー7の回動トルクが増大する。これにより、ストッパー7が全開位置に配置されたことが明確に認識される。
【0034】
次に、トリガー4を引いてノズル6の先端から液体を噴出させる。このとき、ストッパー7がトリガー4やステム3に干渉しない位置に配置されているため、ステム3は、頭部30の下端面がガイド筒23の上端面に当接する位置まで押し下げられる。上記したステム3の押し下げ動作により、ピストン51が下方に移動してノズル6に液体が供給され、ノズル6の図示せぬノズル孔から液体が噴出される。このとき、ステム3の押し下げストロークが半開時に比べて長いため、ポンプ5による液体の供給量は半開時に比べて多くなり、ノズル6から多量の液体が噴出される。
【0035】
次に、トリガー4を引いた指等を外すことで、トリガー4を元の位置に戻すとともに、図示せぬ容器内の液体をシリンダ本体50a内に流入させる。
トリガー式液体噴出器1の使用後は、ストッパー7をロック位置まで揺動させ、ポンプ5を停止状態でロックする。このとき、ストッパー7がロック位置に配置されると、トリガー支持部24の突起25bがストッパー7の第一窪み部71a内に嵌め込まれる。これにより、ストッパー7がロック位置に配置された際にクリック感が生じ、ストッパー7がロック位置に配置されたことが感触で認識される。また、ストッパー7がロック位置に配置されると、回転軸70の凸リブ70aが軸受け25a内に嵌め込まれて軸受け25aの内周面に圧接されるので、ストッパー7の回転抵抗が増大し、ストッパー7の回動トルクが増大する。これにより、ストッパー7がロック位置に配置されたことが明確に認識される。
【0036】
上記した構成からなるトリガー式液体噴出器1によれば、ストッパー7を半開位置と全開位置との間で切り替えることによりステム3の押し下げストロークが可変するので、液体の噴出量を可変させることができる。
【0037】
また、上記したトリガー式液体噴出器1によれば、ストッパー7に、ロック時の状態で押下部42の後方側の下端部42bを係止する第一の係止部75と、半開時の状態で押下部42の後方側の下端部42bを係止する第二の係止部76と、がそれぞれ設けられているため、トリガー4を確実に係止することができ、ステム3の押し下げ動作を確実に規制することができる。
【0038】
以上、本発明に係るトリガー式液体噴出器の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、ノズル6が前方に向けられているが、本発明は、ノズル6が上方、斜め上方、或いは他の方向に向けられていてもよい。
【0039】
また、上記した実施の形態では、ストッパー7のうち、側板部71の上端部が、ロック時において押下部42の下端部42bを係止する第一の係止部75となっており、載置部72に形成された切欠部が、半開時において押下部42の下端部42bを係止する第二の係止部76となっているが、本発明は、第一、第二の係止部の形状や位置などは適宜変更可能である。例えば、載置部72の上端部やアーム部73の上端部が第一の係止部となっていてもよく、或いは、側板部71やアーム部73に第二の係止部が設けられていてもよい。
【0040】
また、上記した実施の形態では、ストッパー7がロック位置に配置された場合及び半開位置に配置された場合の何れの場合でも、押下部42の下端部42bが係止される構成になっているが、本発明は、ストッパー7によって押下部42以外のところを係止する構成にすることも可能である。例えば、ストッパー7によってトリガー4の側板部46を係止する構成であってもよく、或いは、ストッパー7によってステム3の頭部30を係止する構成であってもよい。
【0041】
また、上記した実施の形態では、半開時におけるステム3の押し下げストロークが全開時の押し下げストロークの半分程度であり、半開時における液体の噴出量が全開時における噴出量の半分程度となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、半開時におけるステム3の押し下げストロークが全開時の押し下げストロークよりも短く、半開時における液体の噴出量が全開時における噴出量よりも少なくなればよい。例えば、半開時におけるステム3の押し下げストロークが、全開時の押し下げストロークの3分の1程度であり、半開時における液体の噴出量が全開時における噴出量の3分の1程度となってもよい。
【0042】
また、上記した実施の形態では、ストッパー7が各位置(ロック位置、半開位置、全開位置)に配置されたことを明確に認識させるために、回転軸70の載置部72側の外周面に凸リブ70aが突設され、この凸リブ70aが、ロック時及び全開時には、軸受け25a内に嵌め込まれて軸受け25aの内周面に圧接され、半開時には、軸受け25aの開口部分に配置されて軸受け25aの開口端に当接される構成になっているが、本発明は、他の構成でストッパー7が各位置に配置されたことを明確に認識させることも可能である。例えば、図6に示すように、回転軸70の載置部72側の反対側の外周面に凸リブ70bが突設されている。また、軸受け25aの内周面に、上記凸リブ70bが嵌め込まれる3つの凹部25d〜25dが間隔をあけて形成されている。具体的に説明すると、軸受け25aの内周面の下端部分に第1凹部25dが形成されており、軸受け25aの内周面の前端部分に第3凹部25dが形成されており、上記第1凹部25dと第3凹部25dとの間の位置に第2凹部25dが形成されている。これにより、ストッパー7がロック位置に配置されると、凸リブ70bが第1凹部25dに嵌め込まれ、ストッパー7がロック位置に配置されたことが明確に認識される。また、ストッパー7が半開位置に配置されると、凸リブ70bが第2凹部25dに嵌め込まれ、ストッパー7が半開位置に配置されたことが明確に認識される。ストッパー7が全開位置に配置されると、凸リブ70bが第3凹部25dに嵌め込まれ、ストッパー7が全開位置に配置されたことが明確に認識される。
【0043】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態を説明するためのトリガー式液体噴出器の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するためのロック状態のトリガー式液体噴出器の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための半開状態のトリガー式液体噴出器の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための全開状態のトリガー式液体噴出器の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するためのストッパーの斜視図である。
【図6】本発明の他の実施の形態を説明するためのストッパー周辺部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
1 トリガー式液体噴出器
3 ステム
4 トリガー
5 ポンプ
6 ノズル
7 ストッパー
27 揺動軸
41 指掛部
42 押下部
70 回転軸
75 第一の係止部
76 第二の係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で押し込み可能に起立したステムと、該ステムの前方側に配設された指掛部、及び前記ステムを押し下げる押下部を有し、前記ステムの後方側に配設された揺動軸周りに揺動可能なトリガーと、該トリガーの揺動に伴って前記押下部により前記ステムが押し下げられることで作動するポンプと、前記ステムの上部に連結されたノズルと、前記揺動軸に平行する回転軸周りに回転可能に設けられたストッパーと、を備えるトリガー式液体噴出器において、
前記ストッパーは、少なくとも、
前記ポンプが停止した状態で前記ステムの押し下げ動作を規制するロック位置と、
該ロック位置よりも後方側に傾倒され、前記ロック位置における前記ステムの規制位置よりも下方の位置で前記ステムの押し下げ動作を規制する半開位置と、
該半開位置よりも後方側に傾倒され、前記ステムの押し下げ動作を許容する全開位置と、
に切り替えられることを特徴とするトリガー式液体噴出器。
【請求項2】
請求項1記載のトリガー式液体噴出器において、
前記ストッパーには、前記ロック位置に配置された状態で前記押下部を係止する第一の係止部と、前記半開位置に配置された状態で前記押下部を係止する第二の係止部と、がそれぞれ設けられていることを特徴とするトリガー式液体噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−131818(P2009−131818A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311706(P2007−311706)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】