説明

トリガー式液体噴出器

【課題】流路内に吐出弁46を備え、且つ、上方付勢状態で上下動可能に装着された作動部材B3と、トリガー62を引くことで軸着部分を中心に回動し、上方付勢力に抗して作動部材B3を押し下げる操作部材B4とを備え、トリガーを引ききった後にも暫くの間液の噴出が可能であるトリガー式液体噴出器を提案する。
【解決手段】シリンダB2下部に補助シリンダB5を連設するとともに、補助シリンダB5内を摺動する吸込み弁70付き補助ピストン71を上方付勢状態で設け、ピストン40の下降によりシリンダB2内が加圧されることで吐出弁46が開いて加圧液が噴出口44より噴出され、同時に補助ピストン71が上方付勢力に抗して下降し、補助ピストン71の上方付勢力を吐出弁46の弁体48圧接力より大として吐出弁46が閉じる前に補助ピストン71が上昇し、補助ピストン71の上昇が終わるまで噴出口44からの液の噴出が行われる如く構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
トリガー式液体噴出器が種々提案されている。(例えば、特許文献1を参照)
【0003】
上記特許文献1に記載されたトリガー式液体噴出器は、上方付勢状態で押し込み可能に起立したステムと、ステムの前方側に配設された指掛け部及び押下部を有し、ステムの後方側に配設された揺動軸周りに揺動可能なトリガーと、トリガーの揺動に伴って押下部によりステムが押し下げられることで作動するポンプと、ノズルとを備えている。また、上記ポンプとして、シリンダと、シリンダの内側に配置されてシリンダの内周面に摺接している二重筒構造のピストンと、中心軸線に沿って延設された芯棒と、シリンダ内に収容されたコイルスプリングと、球体状の弁体とで構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−131813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のこの種のトリガー式液体噴出器は、トリガーを引くと一定量の液体が短時間で(一瞬にして)噴出される。そのため、例えば、壁面に吹きつける場合等には一回のトリガーの引きつけに当たり小さな面積しか行えなかった。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、トリガーを引ききった後にも暫くの間液の噴出が可能であるトリガー式液体噴出器を提案する。また、従来のこの種のトリガー式液体噴出器と比較しても、極力少ない構造の変化で形成でき、製造が容易で、その結果安価に製造できる利点を備えた液体噴出器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、容器体口頸部12に嵌着してシリンダB2を固定する装着基部B1と、シリンダB2内を摺動するピストン40を備えたステム41を有するとともに、ステム41内より先端の噴出口44に至る流路内に吐出弁46を備え、且つ、上方付勢状態で上下動可能に装着された作動部材B3と、装着基部B1に対して軸着部分を中心として回動可能に装着されるとともに、トリガー62を引くことで軸着部分を中心に回動し、上方付勢力に抗して作動部材B3を押し下げる操作部材B4とを備え、シリンダB2下部に補助シリンダB5を連設するとともに、補助シリンダB5内を摺動する吸込み弁70付き補助ピストン71を上方付勢状態で設け、ピストン40の下降によりシリンダB2内が加圧されることで吐出弁46が開いて加圧液が噴出口44より噴出され、同時に補助ピストン71が上方付勢力に抗して下降し、補助ピストン71の上方付勢力を吐出弁46の弁体48圧接力より大として吐出弁46が閉じる前に補助ピストン71が上昇し、補助ピストン71の上昇が終わるまで噴出口44からの液の噴出が行われる如く構成した。
【0008】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、上記吐出弁46が蓄圧式の吐出弁46である。
【0009】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの一つの手段に於いて、シリンダB2下端の連結筒34に上部連結筒部74を密嵌させて補助シリンダB5を装着し、補助シリンダB5の下部連結筒部75に吸い上げ用のパイプ76を嵌着させた。
【0010】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第3の手段のいずれか一つの手段に於いて、補助ピストン71は、補助シリンダB5内周を摺動する摺動部71a を外周面に備えるとともに、内周面下部にテ−パ状の吸込み弁座71b を備えた環状をなし、吸込み弁座71b 上に載置した玉状弁体77とで吸込み弁70を形成し、補助ピストン71と補助シリンダB5内底面との間に介在させた補助コイルスプリングs1により常時補助ピストン71を上方付勢させた。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ピストン40の下降により下降する補助ピストン71の上昇が終わるまで噴出口44からの液の噴出が行われるため、液の噴出時間を長く保つことができ、その構造も吸込み弁70付きの補助ピストン71を内蔵した補助シリンダB5を加えるだけのなので、従来品と比較しても極めて少ない構造的変化で形成でき、製造が容易で、安価に製造できる利点を備えている。
【0012】
上記吐出弁46が蓄圧式の吐出弁46である場合には、液切れの良い液体噴出器となる。
【0013】
シリンダB2下端の連結筒34に上部連結筒部74を密嵌させて補助シリンダB5を装着し、補助シリンダB5の下部連結筒部75に吸い上げ用のパイプ76を嵌着させた場合には、補助シリンダB5の組み付けがより容易に行える利点がある。
【0014】
補助ピストン71は、補助シリンダB5内周を摺動する摺動部71a を外周面に備えるとともに、内周面下部にテ−パ状の吸込み弁座71b を備えた環状をなし、吸込み弁座71b 上に載置した玉状弁体77とで吸込み弁70を形成し、補助ピストン71と補助シリンダB5内底面との間に介在させた補助コイルスプリングs1により常時補助ピストン71を上方付勢させた場合には、極めてシンプルな構造となり、占有部位も少なく、また、組み付け操作も容易となりる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】トリガー式液体噴出器の断面図である。(実施例1)
【図2】トリガー式液体噴出器のトリガーを引いた状態の断面図である。(実施例1)
【図3】補助シリンダ部分の作用を説明する説明図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1乃至図3はトリガー式液体噴出器1の一例を示し、該トリガー式液体噴出器1は、容器体Aと、ポンプBとを備えている。
【0018】
容器体Aは、胴部10より肩部11を介して口頸部12を起立している。
【0019】
ポンプBは、装着基部B1、シリンダB2、作動部材B3、操作部材B4、補助シリンダB5を備えている。
【0020】
装着基部B1は、口頸部12外周に螺着した周壁20a 上端よりフランジ状の頂壁20b を延設した装着キャップ20を備え、装着キャップ20の頂壁20b 内周縁より立設した嵌合筒部21を備え、嵌合筒部21の後部及び装着キャップ20の頂壁20b 後部より斜め上方へ延設した一対の支持板22a と、支持板22a 間を連結する連結板22b とで構成され、操作部材B4を軸支する軸支部22を備えている。
【0021】
シリンダB2は上下端を開口した筒状をなし、周壁部30の上部を嵌合筒部21内に嵌着固定し、周壁部30の外周に突設したフランジ31を装着キャップ20の頂壁20b 裏面に嵌合させて装着基部B1に固定している。また、内部に棒部材32を嵌着している。棒部材32は、下部を大径に上部を小径に形成し、大径部分外周下端部より周方向複数突設したリブ33をシリンダB2内底部に液の流通が可能に嵌着し、上端をシリンダB2の上端開口及び嵌合筒部21の上端開口より上方位置で、ステム41内に上下動可能に挿入している。
【0022】
作動部材B3は、シリンダB2内を摺動する環状のピストン40を下端部に備えたステム41を備え、ステム41の上端部より前方へ延設した射出筒42の先端に嵌着したノズル43に噴出口44を開口している。また、ステム41内から噴出口44に至る流路内に弁部材45で構成される蓄圧弁式の吐出弁46を設けている。弁部材45は、射出筒42内先端部に形成された弁座47に圧接する板状の弁体48を備え、また、射出筒42の先端部に嵌着し、周囲に流路溝49を凹設した横柱状の固定部50を備え、弁体48と固定部50とを、中間部にリング状の弾性部51を備えた連結棒52により連結している。また、弁体48の後面からは射出筒42内に案内棒53を突設している。
【0023】
上記作動部材B3は、ピストン40下面と棒部材32のリブ33上面との間に介在させたコイルスプリングsにより常時上方に付勢されている。
【0024】
操作部材B4は、装着基部B1の軸支部22両側上部に於いて、両側板61a の後部をそれぞれ軸着し、軸着位置から射出筒42の前部両側位置まで延設した両側板61a を後部において連結板部61b で連結した押圧部61を備え、また、押圧部61の両側板61a 前部下面よりそれぞれステム41前方へ垂設した一対の側板62a 間を前板62b で連結したトリガー62を備えている。押圧部61の両側板61a 内面には、ステム41の上部両側に突設した横円柱状の被押圧突起54上面を押圧する押圧突起63を突設していて、トリガー62を引き込むことで、押圧突起63が被押圧突起54を押圧してステム41が下降し、牽いては作動部材B3が下降する如く構成している。
【0025】
補助シリンダB5は、シリンダB2下部に連設し、吸込み弁70付きの補助ピストン71を備えている。図示例では、上部材72と下部材73とで補助シリンダB5を形成しており、上部材72は、周壁上端縁より頂壁を延設した下端開口の筒状をなし、頂壁に基端を連結して立設した上部連結筒部74を、シリンダB2下端の連結筒34と液密に嵌合してシリンダB2内と補助シリンダB5内とを連通している。また、下部材73は、周壁下端縁より底壁を延設した上端開口の筒状をなし、上部材72の周壁外周に周壁を液密に嵌着して補助シリンダB5を形成している。また、底壁に上端を開口した下部連結筒部75を垂設し、下部連結筒部75にパイプ76を連結して容器体A内と補助シリンダB5内を連通している。
【0026】
補助ピストン71は、補助シリンダB5を摺動する上下一対のスカート状をなす摺動部71a を外周に備え、内周下部にはテ−パ状の吸込み弁座71b を備えた環状をなしている。また、吸込み弁70は、吸込み弁座71b 上に載置された玉状弁体77とで構成される。補助ピストン71はその下方に介在された補助コイルスプリングs1により常時上方に付勢される。尚、補助ピストン71の上方付勢力を吐出弁46の弁体48圧接力より大としている。本例に於いてこの状況を現出するためには、補助ピストン71の摺動摩擦力等を考慮した上で、基本的には補助コイルスプリングs1の弾発力を吐出弁46の弁体48を圧接するためのリング状の弾性部51の弾発力より大きくすればよい。
【0027】
上記の如く構成されるトリガー式液体噴出器1を使用する場合について説明する。図1の状態からトリガー62を引き込むと軸着部分を中心に押圧部61が回動して押圧突起63が被押圧突起54を押し下げ、それにより作動部材B3が下降してシリンダB2内が加圧される。この加圧状態がある一定圧までくると、リング状の弾性部51による弁体48の圧接力に打ち勝って吐出弁46が開き噴出口44から液が噴出する。一方、略同時に補助コイルスプリングs1の上方付勢力に抗して補助ピストン71を下降させる。ピストン40の下降によるシリンダB2内の加圧力は、リング状の弾性部51による弁体48の圧接力や補助コイルスプリングs1の上方付勢力に比較して絶対的に大きくなるため、液の噴出及び補助ピストン71の下降を略同時に行える。
【0028】
この状態では図2に示す如く、吐出弁46が開いた状態で液の噴出状態にあり、また、トリガー62は後方へ引ききった状態にある。補助ピストン71の上方付勢力を吐出弁46の弁体48圧接力より大としているため、この状態から吐出弁46が閉じる前に補助ピストン71が上昇し始め、補助ピストン71が最上昇位置に至るまで吐出弁46を開いた状態で液の噴出を続ける。
【0029】
この様な作用に関して、図3に於いて補助シリンダB5部分の部分拡大図を用いて説明すると、図3(a)ではシリンダB2内が加圧されていない状態で、補助ピストン71は補助コイルスプリングs1により最上昇位置に押し上げられており、吸込み弁70は閉じている。この状態からシリンダB2内を加圧すると、図3(b)の如く、シリンダB2内の加圧液が補助シリンダB5内に補助ピストン71の上方付勢力に抗して圧入される。この際同時に噴出口44からの液の噴出が行われる。次いで図3(c)の如く、補助コイルスプリングs1の上方付勢力で補助ピストン71が上昇するが、補助ピストン71の上方付勢力を吐出弁46の弁体48圧接力より大としているため補助ピストン71が最上昇位置に至るまで吐出弁46が開いており、その間の液の噴出時間を延長することができる。
【0030】
補助ピストン71が最上昇位置に到達した後吐出弁46が閉じて液の噴出が停止する。次いでトリガー62の引き込む力をはなすとコイルスプリングsにより作動部材B3が上昇し、それに伴ってトリガー62も元の状態に回動復元する。その際、ピストン40はシリンダB2内を上昇するため、シリンダB2内が負圧化し、負圧化したシリンダB2内に吸込み弁70を開いて容器体A内の液が導入される。
【0031】
尚、上記例は吐出弁として蓄圧式のものを使用した例を示したが、これに限らず、例えば、ステム内に突設した弁座と、該弁座上に載置された玉状弁体とで構成した吐出弁を採用した場合にも本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1…トリガー式液体噴出器
A…容器体
10…胴部,11…肩部,12…口頸部
B…ポンプ
B1…装着基部
20…装着キャップ,20a …周壁,20b …頂壁,21…嵌合筒部,22…軸支部,
22a …支持板,22b …連結板
B2…シリンダ
30…周壁部,31…フランジ,32…棒部材,33…リブ,34…連結筒
B3…作動部材
40…ピストン,41…ステム,42…射出筒,43…ノズル,44…噴出口,45…弁部材, 46…吐出弁,47…弁座,48…弁体,49…流路溝,50…固定部,
51…リング状の弾性部,52…連結棒,53…案内棒,54…被押圧突起
B4…操作部材
61…押圧部,61a …側板,61b …連結板部,62…トリガー,62a …側板,
62b …前板,63…押圧突起
B5…補助シリンダ
70…吸込み弁,71…補助ピストン,71a …摺動部,71b …吸込み弁座,
72…上部材,73…下部材,74…上部連結筒部,75…下部連結筒部,76…パイプ, 77…玉状弁体
s…コイルスプリング
s1…補助コイルスプリング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体口頸部12に嵌着してシリンダB2を固定する装着基部B1と、シリンダB2内を摺動するピストン40を備えたステム41を有するとともに、ステム41内より先端の噴出口44に至る流路内に吐出弁46を備え、且つ、上方付勢状態で上下動可能に装着された作動部材B3と、装着基部B1に対して軸着部分を中心として回動可能に装着されるとともに、トリガー62を引くことで軸着部分を中心に回動し、上方付勢力に抗して作動部材B3を押し下げる操作部材B4とを備え、シリンダB2下部に補助シリンダB5を連設するとともに、補助シリンダB5内を摺動する吸込み弁70付き補助ピストン71を上方付勢状態で設け、ピストン40の下降によりシリンダB2内が加圧されることで吐出弁46が開いて加圧液が噴出口44より噴出され、同時に補助ピストン71が上方付勢力に抗して下降し、補助ピストン71の上方付勢力を吐出弁46の弁体48圧接力より大として吐出弁46が閉じる前に補助ピストン71が上昇し、補助ピストン71の上昇が終わるまで噴出口44からの液の噴出が行われる如く構成したことを特徴とするトリガー式液体噴出器。
【請求項2】
上記吐出弁46が蓄圧式の吐出弁46である請求項1記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項3】
シリンダB2下端の連結筒34に上部連結筒部74を密嵌させて補助シリンダB5を装着し、補助シリンダB5の下部連結筒部75に吸い上げ用のパイプ76を嵌着させた請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項4】
補助ピストン71は、補助シリンダB5内周を摺動する摺動部71a を外周面に備えるとともに、内周面下部にテ−パ状の吸込み弁座71b を備えた環状をなし、吸込み弁座71b 上に載置した玉状弁体77とで吸込み弁70を形成し、補助ピストン71と補助シリンダB5内底面との間に介在させた補助コイルスプリングs1により常時補助ピストン71を上方付勢させた請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のトリガー式液体噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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