説明

トリチウム除染装置

【課題】
本発明の目的は、単体元素状トリチウムが解離した後に再び機器表面に付着することなく除染できるトリチウム除染装置を提供することにある。
【解決手段】
密閉型除染容器1にはトリチウムの被除染対象物9が収納される。紫外線レーザー3は照射光学系2を介して被除染対象物9に紫外線光を照射する。ボンベ5は密閉型除染容器1に安定水素同位体分子種すなわち水素ガス(H、HD、D)と水蒸気(HO、HDO、DO)のうち、いずれかを含有する不活性ガスを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトリチウム汚染された対象物を紫外線により除染するトリチウム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核融合研究炉または研究設備などのトリチウムを扱う施設において、トリチウムと接触する機器は、特にその表面がトリチウムによって汚染される。トリチウムは放射性元素であるために、保守、解体時には安全性の観点から機器のトリチウム除染が必要である。
【0003】
トリチウムは表面のみならず内部にも浸透するが、特に表面が汚染される。したがって保守、解体時には先ず機器表面のトリチウムを除染する必要がある。機器表面に付着した水型(HTO、TOなど)あるいはガス型(HT、Tなど)は加熱により、容易に除去すなわち除染できるが、機器表面材料に化学結合したトリチウムに関してはその限りではない。
【0004】
日本原子力研究所のホームページでは、トリチウムの化学結合より光子エネルギーの大きい紫外線ランプ光または紫外線レーザー光を照射して、化学結合を解離させる事により除染する方法が実施された旨が記載されている。また、下記非特許文献1に記載されているように、核融合装置のプラズマ対向材料表面に蓄積されたトリチウムを除去するためにパルスレーザー光を用いた基礎実験を行っている。ところで、解離した後の単体トリチウムはイオンとなり、近傍に単体元素状トリチウムがない限りガス化できずに再び機器表面に付着する。
【0005】
【非特許文献1】日本原子力学会秋の大会予稿集VOL.2003,第1分冊、 第185頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トリチウムで汚染された機器表面に紫外線レーザーを照射してトリチウムの除去すなわち除染を実施する場合、解離した後の単体元素状トリチウムは近傍に単体元素状トリチウムがない限りガス化できずに、再び機器表面に付着してしまい除染効果が低下するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、単体元素状トリチウムが解離した後に再び機器表面に付着することなく除染できるトリチウム除染装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴とするところは被除染対象物を収納する密閉型除染容器に安定水素同位体分子種すなわち水素ガス(H、HD、D)と水蒸気(HO、HDO、DO)のうち、いずれかを含有する不活性ガスを供給して紫外線による除染するようにしたことにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明は密閉型除染容器内を安定水素同位体分子種雰囲気としているため、紫外線レーザー照射により発生した解離トリチウムが周辺の安定水素同位体と再結合し、解離トリチウムがガス化されるので、トリチウム汚染した機器の除染することができる。その結果として、保守・解体時の安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
密閉型除染容器にはトリチウムで汚染された被除染対象物が収納される。密閉型除染容器は内部に照射光学系が配置されている。密閉型除染容器の外部に配置されている紫外線レーザーで発生する紫外線は照射光学系と紫外線レーザーの間を光学的に連結する誘導光学系を介して被除染対象物の照射される。ガス供給系は密閉型除染容器に安定水素同位体分子種を供給し、密閉型除染容器で除染された排気ガスが排気ガス系から排気される。
【実施例】
【0011】
図1に本発明の一実施例を示す。
【0012】
図1において、密閉型除染容器1の内部には被除染対象物9が収納されている。照射光学系2は密閉型除染容器1の内部に配置され、二次元的に移動する。紫外線レーザー3は密閉型除染容器1の外部に配置されている。紫外線レーザー3と照射光学系2は誘導光学系により光学的に連結されている。誘導光学系はレンズ7と光ファイバー4により構成されている。
【0013】
ボンベ7は安定水素同位体分子種すなわち水素ガス(H、HD、D)と水蒸気(HO、HDO、DO)のうち、いずれかを含有する不活性ガスが充填されている。ボンベ7はバルブ10を介して密閉型除染容器1に接続されている。ボンベ7とバルブ10はガス供給系を構成する。
【0014】
密閉型除染容器1にバルブ11を介して接続されている真空ポンプ6、酸化反応器13および脱湿器14は排気ガス系を構成している。
【0015】
この構成において、除染する場合にはトリチウムで汚染された機器を図示のように板状に加工あるいはパイプであれば数分割として被除染対象物9にして密閉型除染容器1内に汚染面を上向きに収納する。
【0016】
この状態でバルブ10を閉、バルブ11を開き、真空ポンプ6により10―2Mpa未満に排気する。真空ポンプ6は2次汚染物が発生しないベローズポンプが好ましい。その後、バルブ11を閉じてバルブ10を開き、ボンベ5からガスを供給し、一定圧10―2Mpa以上でバルブ10を閉じる。密閉型除染容器1内の排気時圧力とガス供給時圧力は、圧力計12を用いて計測する。
【0017】
紫外線源(紫外線レーザー)3で発生する紫外線レーザー光8はレンズ7によって集光されて光ファイバー4に導入する。光ファイバー4で誘導された紫外線レーザー光8は2次元の移動が可能な照射光学系2によって集光し、かつ移動させて被除染対象物9の表面を照射する。被除染対象物9を汚染したトリチウムは雰囲気中にトリチウム化分子として移行して、除染が行われる。
【0018】
その後、バルブ11を開き、トリチウム汚染した排気ガスを真空ポンプ6により排気する。排気された水素ガス型のトリチウムを酸化反応器13で水蒸気型に変換し、水蒸気型のトリチウムと共に脱湿器14で回収する。脱湿器14の充填材はモルキュラーシーブが好ましい。
【0019】
図2に照射光学系の一例を示す。レンズ16が3本のリニアガイド15に支持されている。これによりレンズ16を2次元的に移動させる事が可能となり、被除染対象物9の汚染表面の除染が行える。
【0020】
このようにしてトリチウムの除染を行うのであるが、本発明は密閉型除染容器内を安定水素同位体分子種雰囲気としているため、紫外線レーザー照射により発生した解離トリチウムが周辺の安定水素同位体と再結合し、解離トリチウムがガス化されるので、トリチウム汚染した機器の除染することができる。その結果として、保守・解体時の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の照射光学系の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0022】
1 密閉型除染容器
2 照射光学系
3 紫外線レーザー
4 光ファイバー
5 ボンベ
6 真空ポンプ
7 レンズ
8 紫外線レーザー光
9 被除染対象物
10 バルブ
11 バルブ
12 圧力計
13 酸化反応器
14 脱湿器
15 リニアガイド
16 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被除染対象物を収納する密閉型除染容器と、前記密閉型除染容器の内部に配置される照射光学系と、前記密閉型除染容器の外部に配置される紫外線レーザーと、前記照射光学系と紫外線レーザーの間を光学的に連結する誘導光学系と、前記密閉型除染容器に安定水素同位体分子種を供給するガス供給系と、前記密閉型除染容器で除染された排気ガスを排気する排気ガス系とを具備することを特徴とするトリチウム除染装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−105703(P2006−105703A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290871(P2004−290871)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)