説明

トリフェニルメタン化合物

【課題】高い鮮明性及び発色性の特徴を有し、耐熱性などの堅牢性に優れた新規なトリフェニルメタン化合物及びその染料組成物を提供する。
【解決手段】アリール基に、メチル基、ジエチルアミノ基等を有するトリフェニルメタン化合物であり、更に、該化合物内に、スルホン基、スルホンアミド基等を有する化合物。及びこの化合物を含む油性または水性染料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なトリフェニルメタン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
C.I.Acid Blue 104等のトリフェニルメタン染料は、ブルーの染料として広く使用されており、各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用、染色用など幅広い用途での応用がなされている。一般に色材に要求される特性は用途によって異なるものの、色相が鮮明で、高発色性を有し、着色物が光や熱等に対し堅牢である事が求められている。
【0003】
特許文献1では、C.I.Acid Blue 104は分光特性が良好であり、カラーフィルター用途に好適であることが示唆されている。しかしながら、本発明者らの検討の結果、C.I.Acid Blue 104は分光特性は良好であるが、耐熱性については不十分であった。
【0004】
また特許文献2には、トリフェニルメタン染料のスルホンアミド化物を用いたカラーフィルターについて公開されているが、C.I.Acid Blue 104の例示は無く、また耐熱性などの堅牢性に関する記載もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2003−5362号
【特許文献2】特開平2006−257411号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐熱性等の堅牢性に優れる新規なトリフェニルメタン染料並びに該染料を用いた染料組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の構造を有するトリフェニルメタン染料が、従来に比べ飛躍的に耐熱性等の堅牢性が向上する事を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)一般式(1)で表される化合物
【化1】

(式(1)においてR及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18のアルキル基またはアリール基を表し、RとRは互いに結合し環を形成しても良い。)、
(2)式(1)のRとRが、水素原子、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基で置換されたアルキル基またはフェニル基で置換されたアルキル基である(1)に記載の化合物、
(3)式(1)のRとRが、水素原子または炭素数1〜12の鎖状アルキル基である(1)または(2)に記載の化合物、
(4)(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の化合物と少なくとも1種類の油溶性有機溶媒を含有する油性染料組成物、
(5)(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の化合物及び水性媒体を含有する水性染料組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化合物は、上記の通り鮮明性および発色性に優れ、油性または水性染料組成物を形成して染料着色体に加工すると、従来品よりも堅牢性に優れた特性を示すものである。すなわち、本発明の化合物は染料着色体に利用でき、カラーフィルター用インキやインクジェット用インキ等の幅広い用途に応用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の化合物は、前記式(1)で表される。
【0011】
一般式(1)においてR及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18のアルキル基またはアリール基を表し、RとRは互いに結合し環を形成しても良い。
【0012】
式(1)のR及びRの炭素数1〜18のアルキル基は、置換基を有しても良く、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、アリル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、1、2−ジメチルプロピル基、2−エチルプロピル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、4−(1,1−ジメチルエチル)シクロヘキシル基等の鎖状若しくは環状のアルキル基;1−クロロエチル、2−クロロエチル、4−ブロモへキシル基等のハロゲン原子で置換されたアルキル基;メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル基、3−イソプロポキシプロピル基等のアルコキシ基で置換されたアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基等のヒドロキシ基で置換されたアルキル基;シアノエチル基、3−シアノプロピル基、5−シアノヘキシル基等のシアノ基で置換されたアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のフェニル基で置換されたアルキル基等が挙げられる。
【0013】
式(1)のR及びRの炭素数1〜18のアリール基は、例えばフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、ベンゾピレニル基等の芳香族炭化水素残基;ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピロリル基、インドレニル基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、チエニル基、フリル基等の芳香族複素環残基、等が挙げられる。
【0014】
式(1)のR及びRにおいて、アリール基はさらに置換基を有してもよく、該置換基としては特に制限はないが、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基等のアルコキシ基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基;メトキシエチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、ブトキシエチル基等のアルコキシアルキル基;2―ヒドロキシエトキシ基等のヒドロキシアルコキシ基;2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2−スルホエチル基、カルボキシエチル基、シアノエチル基、スルホン酸基、等が挙げられる。
【0015】
また、式(1)のRとRは互いに結合し環を形成しても良く、環としては例えばインドール基、ピロール基、ピペリジノ基、カルバゾール基、等が挙げられる。
【0016】
式(1)のR及びRとしては、水素原子、又は置換基を有しても良い炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、さらには、水素原子、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基で置換されたアルキル基またはフェニル基で置換されたアルキル基が好ましい。中でも水素原子、2−エチルヘキシル基、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル基が特に好ましい。
【0017】
本発明の化合物は、相当するスルホニルクロライド化合物と対応するアミン化合物の縮合反応で合成することができる。具体的には、市販のC.I.Acid Blue 104のスルホン酸基を、クロロスルホン酸、五塩化燐、三塩化燐、塩化チオニル等のクロル化剤を用いてクロロスルホニル基とし、続いて対応するアミン化合物と縮合することにより合成できる。
【0018】
上記式(1)で表される化合物の具体例を、以下の表1−1及び表1−2に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0019】
表1−1

表1−2

【0020】
本発明の油性または水性染料組成物は、本発明の化合物及び、油性染料組成物の場合は油溶性有機溶媒を、水性染料の場合は水性媒体を含有する。本発明の油性または水性染料組成物においては、本発明の化合物を0.2〜40質量%含有させるのが好ましく、さらには0.5〜20質量%含有させるのがより好ましい。また本発明の油性または水性染料組成物において、色相の調整などの目的で必要に応じて前記式(1)以外の色材を添加してもよい。添加できる色材としては、例えば酸性染料、反応性染料、直接性染料、カチオン染料、塩基性染料等の水溶性染料、分散染料、ソルベント染料等の油溶性染料、有機顔料、カーボンブラック等が挙げられ、溶媒に溶解した状態あるいは分散した状態で添加される。
【0021】
本発明の水性染料組成物は、水性媒体に本発明の化合物を分散させて調製する事ができる。水性媒体としては、水または水溶性有機溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等のアミン類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、等が挙げられる。
【0022】
本発明の油性染料組成物は、少なくとも1種類の油溶性有機溶媒に本発明のトリフェニルメタン染料を溶解または分散させて調製する事ができる。用いられる油溶性有機溶媒としては、例えば、エタノール、ペンタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、テトラフルオロプロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のグリコール誘導体;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ブチルフェニルエーテル、ベンジルエーテル、ヘキシルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等の極性有機溶媒、等が挙げられ、これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0023】
油性染料組成物に用いられる分散剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、ポリオキシアルキルエーテル燐酸エステル塩等公知のアニオン界面活性剤、ビニルナフタレン誘導体、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、スチレン、スチレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、無水マレイン酸、無水マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、またはこれらの塩等の高分子分散剤等が挙げられ、これらの1種以上を分散する色素化合物に対して10〜100質量%の間で使用するのが好ましい。またこれらの分散剤と併せて、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合物等の公知のノニオン系の界面活性剤やシリコーン系、アセチレン系の公知の消泡剤を必要に応じ、顔料分散時及び/または顔料分散化後に添加する事ができる。
【0024】
顔料を微粒子に分散する方法としては、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いる方法が挙げられるが、これらの中でもサンドミル(ビーズミル)が好ましい。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましく、更に粉砕処理後に濾過、遠心分離などで素粒子を除去することが好ましい。
【0025】
本発明の染料組成物にはその他の添加剤として表面調整剤、防腐・防黴剤、pH調整剤等を含んでも良い。表面調整剤としては、ポリシロキサン系あるいはポリジメチルシロキサン系の界面活性剤、防腐・防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩等を、pH調整剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の3級アミン類等が挙げられ、それぞれ必要に応じて添加する事ができる。
【0026】
また本発明の油性または水性染料組成物中には被着色体への色素の定着性を向上させる目的で、必要な範囲内で組成中の媒体と相溶性のあるポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系又はポリアクリル系樹脂を含有させる事が好ましい。また定着性を向上させる目的で、必要な範囲内でエチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマーや重合開始剤などを含有させてもよい。本発明の油性または水性染料組成物は上記各成分を溶媒に溶解あるいは分散及び混合する事によって調製することができる。
【0027】
本発明の化合物は、油性染料組成物、または水性染料組成物として各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用着色組成物に用いられる。油性染料組成物および水性染料組成物は、例えば普通紙、コート紙、プラスチックフィルム、プラスチック基板などの被着色材料に用いられる。また、本発明の染料組成物を被着色材料に付与する方法としては、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの各種印刷方法あるいはスピンコーター、ロールコーターなどによる塗工方法が挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものでは無い。耐湿熱性等は染料着色体の色度(L値、a値、b値)を分光光度計「(株)島津製作所製UV−3150」により測定し評価した。また、実施例中、合成によって得られた各化合物は液体クロマトグラフィー質量分析装置「Agilent Technologies製 1260Infinity」(以下、LC−MSと略記)によって同定した。測定条件は以下の通りである。
カラム;Inertsil ODS−2(5μm、3.5mm×250mm)
移動相;A液;5mM酢酸アンモニウム水溶液、B液;アセトニトリル
グラジエント(B液);5%→(10分)→50%→(5分)→90%→(5分)→99%→(5分)→100%
観測波長;254nm、カラム温度;40℃、流量;0.4ml/mim
【0029】
実施例1(表1における化合物No.1の合成)
500mlの4つ口フラスコに、クロロホルム216g、ジメチルホルムアミド14.8gを仕込み、氷浴中でよく攪拌した。これに液温が12℃を超えないように塩化チオニル19gを滴下し、氷浴のまま30分攪拌した。氷浴をはずし、16分かけて35.4gのC.I.Acid Blue 104(下記式(100))を添加し、35℃で3時間攪拌した。更に塩化チオニル2.2gを追加し、35℃で1.5時間攪拌した。その後、この反応溶液を冷却し、12℃を超えないように2−エチルヘキシルアミン17.7gを滴下、続けてトリエチルアミン46.6gを滴下し、室温で14時間攪拌した。反応溶媒を減圧下で除去し、メタノール106gを加えた後、再び濃縮した。この反応混合物にメタノール140g、酢酸10gを加え、室温で30分攪拌した。この反応溶液を攪拌されているイオン交換水3000g中に滴下し、析出した染料をろ取、水1000g、イオン交換水200gで洗浄、70℃の真空乾燥機で乾燥させた。得られた結晶をヘキサン330g中で懸濁攪拌、ろ取、乾燥することにより化合物No.1を39g得た。最大吸収波長:618nm(シクロヘキサノン)。LC−MS測定値:保持時間;20.2、計算値(Exact Mass);878.45、実測値([M+H]);879.41。
【化2】

【0030】
実施例2(表1における化合物No.3の合成)
実施例1に記載の2−エチルヘキシルアミンを3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミンに変更した以外は実施例1と同様にして、化合物No.3を38g得た。極大吸収波長:617nm(シクロヘキサノン)。LC−MS測定値:保持時間;21.2、計算値(Exact Mass);936.49、実測値([M+H]);937.45。
【0031】
実施例3 油性染料組成物及び染料着色体の作成
500mlの4つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート160g、メタクリル酸6.6g、シクロヘキシルメタクリレート 30g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6g、α,α’-アゾビス(イソブチロニトリル)2gを仕込み、攪拌しながら30分間窒素ガスをフラスコ内に流した後、そのまま80℃まで昇温した。80〜85℃でそのまま4時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却したところ、無色の透明で均一な液体、すなわち 共重合体溶液を得た。このポリスチレン換算重量平均分子量は12000、また、酸価は100であった。得られた共重合体0.8gに、前記実施例1及び2で得られた化合物No.1及びNo.3の各0.025gをテトラフルオロプロパノール1gに溶解させた溶解液を加え、油性染料組成物を作成した。得られた油性染料組成物をガラス基盤にスピンコートし、200℃で20分乾燥し、染料着色体を作成した。
【0032】
耐湿熱性試験
実施例3で得た染料着色体を、オーブン中に200℃で1時間放置した。試験前後の染料着色体を分光光度計でL値、a値、b値を、標準光としてC光源、2度視野角で測色し、下記式より色差を求めた。尚、色差が小さいほど、色相の変化が少ないため堅牢性に優れている事を示す。
色差=[(試験前L値−試験後L値)+(試験前a値−試験後a値)+(試験前b値−試験後b値)1/2
耐熱性試験における測色の測定値および色差を以下の表2〜表5に示す。
【0033】
下記の表4における比較例1は上記のC.I.Acid Blue 104(100)を使用し、同様に調製した染料着色体の評価結果である。
【0034】
化合物No.1の測色結果を以下の表2に示す。
表2
L値 a値 b値
試験前 49.67 5.49 −92.01
試験後 51.49 5.14 −84.06
試験前後差 −1.82 0.35 −7.95
【0035】
化合物No.3の測色結果を以下の表3に示す。
表3
L値 a値 b値
試験前 56.97 −2.52 −73.74
試験後 59.25 −2.64 −66.56
試験前後差 −2.28 0.12 −7.18
【0036】
比較例1の測色結果を以下の表4に示す。
表4
L値 a値 b値
試験前 45.17 14.08 −106.92
試験後 48.78 8.64 −68.37
試験前後差 −3.61 5.44 −38.55
【0037】
上記の表2乃至表4から化合物No.1、3及び比較例1の色差を求めた結果を下表5に示す。
表5
色 差
化合物No.1 8.16
化合物No.3 7.53
比較例1 15.83
【0038】
上記の結果から明らかなように、比較例1の染料着色体の試験前後における色差と、本発明の染料着色体を比べると、色差が低い値を示し、耐湿熱性にきわめて優れていることがわかる。
以上のように本発明の化合物及び、その染料着色体は耐熱性に優れ、高い堅牢性を有するものであり、カラーフィルター用インキやインクジェット用インキ等、アプリケーションの幅が広がるなどの産業的な価値が高い事が明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物
【化1】

(式(1)においてR及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18のアルキル基またはアリール基を表し、RとRは互いに結合し環を形成しても良い。)。
【請求項2】
式(1)のRとRが、水素原子、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基で置換されたアルキル基またはフェニル基で置換されたアルキル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1)のRとRが、水素原子または炭素数1〜12の鎖状アルキル基である請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化合物と少なくとも1種類の油溶性有機溶媒を含有する油性染料組成物。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化合物及び水性媒体を含有する水性染料組成物。

【公開番号】特開2013−87260(P2013−87260A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231735(P2011−231735)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】