説明

トリメチレンカーボネートのハイドロタルサイト触媒重合

本発明は、非置換または置換トリメチレンカーボネートの重合のために、ハイドロタルサイトを触媒として用いることに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非置換または置換トリメチレンカーボネートの重合のために、ハイドロタルサイトを触媒として用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(トリメチレンカーボネート)グリコールは、様々な材料に用いられる。これらのジオールは、Hyun,Hらによる非特許文献1に記載されているとおり、トリメチレンカーボネート(TMC、1,3−ジオキサン−2−オン)の重合により、通常、亜鉛、錫およびアルカリ金属化合物等の有機金属化合物を含有する触媒を用いて製造されてきた。また、TMCは、Shibasaki,Y.らによる非特許文献2および3に記載されているとおり、様々なアルコールおよびHCl開始剤系を介して重合できることが報告されている。これらの方法では、用いた触媒を除去する必要がある。得られるジオールを生物医学用途に用いるときは特にその必要がある。ハイドロタルサイトは、重合反応のための不均一触媒として作用し得る(例えば、非特許文献4を参照のこと)。
【0003】
触媒を含まないポリ(1,3−プロパンジオールカーボネート)ジオールオリゴマーを、トリメチレンカーボネート(TMC、1,3−ジオキサン−2−オン)の重合により生成することが必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.:Vol.44(2006)
【非特許文献2】Macromol.Rapid Commun.20,532(1999)
【非特許文献3】Macromolecules 2000,33,4316
【非特許文献4】F.Cavaniら、Catalysis today,11(1991)173−301)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、非置換またはR置換ポリ(トリメチレンカーボネート)グリコールを製造する方法であって、非置換またはR置換トリメチレンカーボネートを、ハイドロタルサイト触媒と、1つ以上の溶剤の存在下で、摂氏約40〜約120度の温度で接触させて、非置換またはR置換ポリ(1,3−プロパンジオールカーボネート)ジオールオリゴマーを含む反応混合物を形成することを含む、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、トリメチレンカーボネート(TMC、1,3−ジオキサン−2−オン)から、高温(通常、摂氏約40〜120度)で、溶剤の存在下で、ハイドロタルサイトを触媒として用いて、非置換またはR置換ポリ(トリメチレンカーボネート)グリコールを製造する方法に関する。この反応は、下式により表わすことができる。
【化1】

【0007】
PO3Gとしても知られ、DuPont(Wilmington,DE)より入手可能な非置換トリメチレンカーボネートは、1,3−プロパンジオールから誘導することができる。
【0008】
上記の構造において、各R置換基は、独立に、H、C〜C20アルキル、特に、C〜Cアルキル、C〜C20環状アルキル、C〜C環状アルキル、C〜C25アリール、特に、C〜C11アリール、C〜C20アルカリール、特に、C〜C11アルカリールおよびC〜C20アリールアルキル、特に、C〜C11アリールアルキルからなる群から選択され、各R置換基は、近接するR置換基と共に環状構造基を、任意で形成することができる。典型的に、かかる環状構造基は、C〜C環状基、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタンである。上記の構造において、nは約2〜100、特に、約2〜50の整数であり、zは約1〜約20、特に、約1〜7、さらに約1〜5の整数である。
【0009】
非置換または置換ポリ(トリメチレンカーボネート)グリコールは、公知の方法を用いて分離することができる。
【0010】
トリメチレンカーボネート(TMC)は、当業者に知られた任意の様々な化学または生化学的方法により調製される。TMCを調製する化学的な方法としては、これらに限られるものではないが、a)1,3−プロパンジオールとジエチルカーボネートの、亜鉛粉末、酸化亜鉛、錫粉末、ハロゲン化錫または有機錫の存在下での高温での反応、b)1,3−プロパンジオールおよびホスゲンまたはビス−クロロギ酸の反応による、後に、熱および、任意で、触媒を用いて解重合されるポリカーボネート中間体の生成、c)拭取り式膜蒸発器における真空下でのポリ(トリメチレンカーボネート)の解重合、d)1,3−プロパンジオールとウレアの、金属酸化物の存在下での反応、e)トリエチルアミンのTHF中1,3−プロパンジオールおよびエチルギ酸クロロの溶液への滴下による付加およびf)1,3−プロパンジオールとホスゲンまたはジエチルカーボネートの反応が挙げられる。TMC調製の生化学的方法としては、これらに限られるものではないが、a)ジエチルカーボネートまたはジメチルカーボネートと、1,3−プロパンジオールとの有機溶媒中でのリパーゼ触媒縮合、およびb)TMCを生成するポリ(トリメチレンカーボネート)のリパーゼ触媒解重合が挙げられる。1,3−プロパンジオールおよび/またはTMCは、新たな原料から生化学的に得ることができる(「生物学的に誘導された」1,3−プロパンジオール)。
【0011】
好ましくは、反応物質として、または反応物質の成分として用いる1,3−プロパンジオールの純度は、ガスクロマトグラフィー分析により求めると、約99重量%を超える、より好ましくは、約99.9重量%を超える。
【0012】
精製1,3−プロパンジオールは以下の特徴を有するのが好ましい。
(1)紫外線吸収が、220nmで約0.200未満、250nmで約0.075nm未満、275nmで約0.075未満、および/または
(2)組成物のCIELAB「b」明度が、約0.15未満(ASTM D6290)、270nmでの吸光度が約0.075未満、および/または
(3)過酸化物組成物が、約10ppm未満、および/または
(4)合計有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度が、ガスクロマトグラフィーにより測定すると、約400ppm未満、より好ましくは、約300ppm未満、さらにより好ましくは、約150ppm未満である。
【0013】
本方法は、1つ以上のハイドロタルサイトを触媒として用いる。これらの材料は、数多くの供給源から入手可能である。これらの触媒は、通常、反応物質に添加されて、反応混合物を形成する。以下の実施例に示すとおり、都合よく、少量のこれらの触媒で、約25時間以内に高変換率(100パーセントに近い)が得られる。
【0014】
好適なハイドロタルサイトとしては、Sasol(Lake Charles,LA)より入手可能なPural(登録商標)MG材料が例示される。通常、これらのハイドロタルサイトは、式Mg2xAl(OH)4x+4CO・nHOであり、式中、nはマグネシウムアルミニウム化合物に関連した水分子数で、典型的に、1〜4の整数を表わす。購入したままの、実施例で用いた化合物において、nは4である。
【0015】
本発明の方法では、1つ以上の溶剤を用いる。通常、反応物質および/または触媒と実質的に非反応性で、望ましくない材料が形成されない限りは、任意の溶剤を用いることができる。本明細書に記載した方法に有用な溶剤としては、これらに限られるものではないが、塩化メチレン、トルエンおよびジオキサンが例示される。以下の実施例に示すとおり、少量の溶剤で、通常、高変換速度が得られる。
【0016】
本明細書に開示した方法は、高温、通常、摂氏約40〜120度で実施される。反応物質を併せて添加したら、任意の便利な方法により混合してよい。本方法は、バッチ、半バッチまたは連続モードで行うことができ、通常、不活性雰囲気中で実施される(すなわち、窒素下)。
【0017】
反応物質を、触媒と、1つ以上の溶剤の存在下で接触させたら、反応を所望の時間続ける。通常、少なくとも6パーセントのTMCを重合すると、約6時間後、所望のポリ(1,3−プロパンジオールカーボネート)ジオールオリゴマーが得られ、約75パーセントを超える変換率が、約25時間以内に達成される。以下の実施例に示すとおり、溶剤および触媒ならびにその量の適切な選択により、100パーセントの変換率を達成することができる。
【0018】
さらに、また、所望の重合度nは、溶剤および触媒ならびにその量の選択により達成することができる。以下の実施例に示すとおり、トルエンおよびハイドロタルサイトの使用により、nが約6〜約20のジオールオリゴマーが得られる。
【0019】
得られるポリ(1,3−プロパンジオールカーボネート)ジオールオリゴマーは、濃縮後ろ過をはじめとする、ろ過等の任意の便利な手段により、未反応の出発材料および触媒から分離することができる。
【0020】
本発明に示した方法によって、選択した溶剤および/または触媒、ならびに用いるこれらの材料の量に基づいて、重合度を選択することができる。本方法から得られる材料の特性を、粘度をはじめとして変えることができるため、これは有利である。ジオールオリゴマー、特にn’が20以下のポリ(1,3−プロパンジオールカーボネート)n’ジオールオリゴマーは、生体材料、工業用ポリマー、パーソナルケア材料、コーティング、潤滑剤およびポリカーボネート/ポリウレタン(TPU)をはじめとする製品に広く用いることができる。
【実施例】
【0021】
実施例1
トリメチレンカーボネート(10.00g、0.098モル)およびトルエン(25mL)を、攪拌器、還流冷却器を備えた4つの丸底フラスコに窒素下で入れた。各フラスコに、それぞれ、1.00gのハイドロタルサイトPural(登録商標)MG30、Pural(登録商標)MG50、Pural(登録商標)MG70およびPural(登録商標)MG61 HTを添加した。フラスコを、100℃に維持した油浴に入れ、攪拌した。周期的に一定分量を採って、減圧で濃縮し、プロトンNMRにより分析した。以下の表に結果の一覧を示す。
【0022】
【表1】

【0023】
実施例2
濃縮の影響
トリメチレンカーボネート(10.00g、0.098モル)およびハイドロタルサイトPural(登録商標)MG70(1.0g)を、攪拌器、還流冷却器を備えた3つのオーブン乾燥したフラスコに窒素下で入れた。トルエン(25、50および100mL)を、各フラスコに別個に添加した。フラスコを、約100℃に維持した油浴に入れ、攪拌した。周期的に一定分量を採って、減圧で濃縮し、プロトンNMRにより分析した。以下の表に結果の一覧を示す。
【0024】
【表2】

【0025】
実施例3
低温
トリメチレンカーボネート(10.00g、0.098モル)およびトルエン(25mL)を、攪拌器、還流冷却器を備えた3つのRBフラスコに窒素下で入れた。各フラスコに、それぞれ、ハイドロタルサイトPural(登録商標)MG70(2.00、3.00および4.00g)を添加した。フラスコを、50℃に維持した油浴に入れ、攪拌した。周期的に一定分量を採って、減圧で濃縮し、プロトンNMRにより分析した。以下の表に結果の一覧を示す。
【0026】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非置換またはR置換ポリ(トリメチレンカーボネート)グリコールを製造する方法であって、1つ以上の溶剤の存在下、非置換またはR置換トリメチレンカーボネートを、ハイドロタルサイト触媒と、摂氏約40〜約120度の温度で接触させて、非置換またはR置換ポリ(1,3−プロパンジオールカーボネート)ジオールオリゴマーを含む反応混合物を形成させることを含む、方法。
【請求項2】
ハイドロタルサイト触媒が、式Mg2xAl(OH)4x+4CO・nHOであり、式中、nはマグネシウムアルミニウム化合物に関連した水分子数で、1〜4の整数を表わす請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶剤が、実質的に非反応性である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
実質的に非反応性である溶剤がトルエンである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
非置換またはR置換ポリ(トリメチレンカーボネート)グリコールを単離することをさらに含む請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2011−505470(P2011−505470A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536135(P2010−536135)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/084713
【国際公開番号】WO2009/073483
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】