説明

トリレンジイソシアネートの製造方法

【課題】2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートを所望の異性体比で含むトリレンジイソシアネートを製造するためのトリレンジイソシアネートの製造方法を提供する。
【解決手段】2,4−ジアミノトルエンおよび2,6−ジアミノトルエンを第1異性体比で含有する第1ジアミノトルエンと、2,4−ジアミノトルエンおよび/または2,6−ジアミノトルエンを前記第1異性体比とは異なる第2異性体比で含有する第2ジアミノトルエンとを混合し、得られた混合ジアミノトルエンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により、トリレンジカルバメートを製造した後、トリレンジカルバメートを熱分解することにより、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートを目標異性体比で含むトリレンジイソシアネートを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリレンジイソシアネートの製造方法に関し、詳しくは、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートを所望の異性体比で含むトリレンジイソシアネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン、ポリ尿素などの原料として用いられる汎用イソシアネートとして、トリレンジイソシアネートが、広く知られている。
【0003】
従来より、トリレンジイソシアネートは、ジアミノトルエンとホスゲンとの反応(ホスゲン法)から工業的に製造されている。しかし、ホスゲンは毒性が強く、その取り扱いが煩雑であり、しかも、大量の塩酸を副生するので、装置の腐食に配慮する必要があるなど、種々の不具合があり、ホスゲン法に代わるトリレンジイソシアネートの工業的な製造方法の開発が望まれている。
【0004】
一般に、ホスゲンを使用しないトリレンジイソシアネートの製造方法として、例えば、アミンをジアルキルカーボネートでカルバメート化した後、得られたカルバメートを熱分解する方法(カーボネート法)や、アミンを尿素やN−無置換カルバミン酸エステルなどでカルバメート化した後、得られたカルバメートを熱分解する方法(尿素法)などが、知られている。
【0005】
例えば、芳香族ジおよび/またはポリイソシアネートを製造する方法において、第1級芳香族ジおよび/またはポリアミンとo−アルキルカルバミド酸エステルとを、尿素およびアルコールの存在下で反応させ、アリール−ジおよび/またはポリウレタンを製造した後、得られたポリウレタンを熱分解する方法が提案されている。
【0006】
とりわけ、トリレンジトリレンジイソシアネートの製造方法として、具体的には、2,4−ジアミノトルオールと、カルバミド酸エチルエステルと、エタノールとを反応させ、2,4−ジ−(エトキシカルボニルアミノ)−トルオールを製造し、得られた2,4−ジ−(エトキシカルボニルアミノ)−トルオールを熱分解することにより、トルイレンジイソシアネートを製造する方法が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
このような方法によれば、ホスゲンを用いることなく、トリレンジイソシアネートを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭56−65858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、工業的に用いられるトリレンジイソシアネートは、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートの異性体が存在し、それらを所望の異性体比で含有することが、要求されている。
【0010】
しかるに、カーボネート法や尿素法において、所望するトリレンジイソシアネートの異性体比(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート=80/20(モル比))と同一の異性体比のジアミノトルエン(例えば、2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン=80/20(モル比))を、原料として用いると、得られるトリレンジイソシアネートの異性体比が、所望する異性体比とは異なるという不具合がある。
【0011】
本発明の目的は、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートを所望の異性体比で含むトリレンジイソシアネートを製造するためのトリレンジイソシアネートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のトリレンジイソシアネートの製造方法は、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートを目標異性体比で含むトリレンジイソシアネートの製造方法であって、2,4−ジアミノトルエンおよび2,6−ジアミノトルエンを第1異性体比で含有する第1ジアミノトルエンと、2,4−ジアミノトルエンおよび/または2,6−ジアミノトルエンを前記第1異性体比とは異なる第2異性体比で含有する第2ジアミノトルエンとを混合し、混合ジアミノトルエンを調製する混合工程、前記混合ジアミノトルエンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により、トリレンジカルバメートを製造するカルバメート製造工程、および、前記トリレンジカルバメートを熱分解する熱分解工程を備えることを特徴としている。
【0013】
また、本発明のトリレンジイソシアネートの製造方法では、前記第1異性体比が、2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン(モル比)=79〜81/21〜19であり、前記第2異性体比において、2,4−ジアミノトルエンの比率が、前記第1異性体比における2,4−ジアミノトルエンの比率より高く、前記混合工程において、前記第1ジアミノトルエン100質量部に対して、前記第2ジアミノトルエンを、1〜30質量部混合することが好適である。
【0014】
また、本発明のトリレンジイソシアネートの製造方法では、前記熱分解工程において、トリレンジカルバメートの熱分解反応により得られる分解液から、トリレンジイソシアネートおよびアルコールを分離したイソシアネート残渣を、高圧高温水に接触させ、分解することにより、前記第2ジアミノトルエンを製造することが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトリレンジイソシアネートの製造方法によれば、2,4−ジアミノトルエンおよび2,6−ジアミノトルエンの異性体比が互いに異なる第1ジアミノトルエンと第2ジアミノトルエンとを混合して、混合ジアミノトルエンを調製し、その混合ジアミノトルエンをカルバメート化し、熱分解するので、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートを目標異性体比で含むトリレンジイソシアネートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のトリレンジイソシアネートの製造方法が採用されるプラントの一実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のトリレンジイソシアネートの製造方法では、2,4−ジアミノトルエンおよび2,6−ジアミノトルエンの異性体比が互いに異なる第1ジアミノトルエンと第2ジアミノトルエンとを混合して調製される混合ジアミノトルエンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により得られるトリレンジカルバメートを熱分解することによって、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートを目標異性体比で含むトリレンジイソシアネートを、製造する。
【0018】
具体的には、この方法では、まず、得られるトリレンジイソシアネートにおいて2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとが目標異性体比となるように、第1ジアミノトルエンと、第2ジアミノトルエンとを混合し、混合ジアミノトルエンを調製する(混合工程)。
【0019】
第1ジアミノトルエンは、2,4−ジアミノトルエンおよび2,6−ジアミノトルエンを、第1異性体比で含有している。
【0020】
第1異性体比としては、例えば、2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン(モル比)=75〜85/25〜15、好ましくは、77〜83/23〜17、より好ましくは、79〜81/21〜19である。
【0021】
このような第1ジアミノトルエンは、特に制限されないが、例えば、工業原料として入手することができる。
【0022】
第2ジアミノトルエンは、2,4−ジアミノトルエンおよび/または2,6−ジアミノトルエンを、第1異性体比とは異なる第2異性体比で含有している。
【0023】
第2異性体比として、好ましくは、2,4−ジアミノトルエンの比率(モル比)が、第1異性体比における2,4−ジアミノトルエンの比率(モル比)より高く、より好ましくは、2,4−ジアミノトルエンの比率(モル比)が、第1異性体比における2,4−ジアミノトルエンの比率(モル比)より、5〜25高く、具体的には、2,4−ジアミノトルエンの比率(モル比)が、例えば、80以上、好ましくは、85以上、より好ましくは、90以上であり、また、2,6−ジアミノトルエンの比率が(モル比)、例えば、20以下、好ましくは、15以下、より好ましくは、10以下である。
【0024】
このような第2ジアミノトルエンは、特に制限されないが、詳しくは後述するが、イソシアネート残渣(後述)を分解して得られるジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)を用いることができ、また、工業原料として入手することもできる。
【0025】
第1ジアミノトルエンおよび第2ジアミノトルエンの混合割合は、得られるトリレンジイソシアネートにおいて、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートが目標異性体比となるように、調整される。
【0026】
トリレンジイソシアネートにおける目標異性体比としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート(モル比)=75〜85/25〜15、好ましくは、77〜83/23〜17、より好ましくは、79〜81/21〜19である。
【0027】
このような場合において、第1ジアミノトルエンおよび第2ジアミノトルエンの混合割合は、第1ジアミノトルエン100質量部に対して、第2ジアミノトルエンが、例えば、1〜50質量部、好ましくは、1〜30質量部、より好ましくは、1〜20質量部、さらに好ましくは、1〜10質量部である。
【0028】
第1ジアミノトルエンおよび第2ジアミノトルエンの混合割合が上記範囲であれば、効率よく分解ジアミノトルエン(後述)を用いることができ、また、効率よくトリレンジイソシアネートを製造することができる。
【0029】
そして、これにより得られる混合ジアミノトルエンは、2,4−ジアミノトルエンおよび2,6−ジアミノトルエンを含有している。
【0030】
混合ジアミノトルエンにおける2,4−ジアミノトルエンおよび2,6−ジアミノトルエンの異性体比は、2,4−ジアミノトルエンの比率(モル比)が、トリレンジイソシアネートにおける目標異性体比における2,4−トリレンジイソシアネートの比率(モル比)より高く、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート(モル比)=75〜88/25〜12、好ましくは、77〜85/23〜15、より好ましくは、79〜82/21〜18である。
【0031】
次いで、この方法では、混合ジアミノトルエンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを反応させ、トリレンジカルバメートを製造する(カルバメート製造工程)。
【0032】
N−無置換カルバミン酸エステルは、カルバモイル基における窒素原子が官能基により置換されていない(すなわち、窒素原子が、2つの水素原子と、1つの炭素原子とに結合する)カルバミン酸エステルであって、例えば、下記一般式(1)で示される。
【0033】
O−CO−NH (1)
(式中、Rは、アルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
上記式(1)中、Rにおいて、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、iso−オクチル、2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜8の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、例えば、シクロヘキシル、シクロドデシルなどの炭素数5〜10の脂環式飽和炭化水素基などが挙げられる。
【0034】
において、アルキル基として、好ましくは、炭素数1〜8の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、より好ましくは、炭素数2〜6の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、さらに好ましくは、炭素数2〜6の直鎖状の飽和炭化水素基が挙げられる。
【0035】
上記式(1)において、Rがアルキル基であるN−無置換カルバミン酸エステルとしては、例えば、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、カルバミン酸n−プロピル、カルバミン酸iso−プロピル、カルバミン酸n−ブチル、カルバミン酸iso−ブチル、カルバミン酸sec−ブチル、カルバミン酸tert−ブチル、カルバミン酸ペンチル、カルバミン酸ヘキシル、カルバミン酸ヘプチル、カルバミン酸オクチル、カルバミン酸iso−オクチル、カルバミン酸2−エチルヘキシルなどの飽和炭化水素系N−無置換カルバミン酸エステル、例えば、カルバミン酸シクロヘキシル、カルバミン酸シクロドデシルなどの脂環式飽和炭化水素系N−無置換カルバミン酸エステルなどが挙げられる。
【0036】
上記式(1)中、Rにおいて、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルなどの炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。また、その置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(例えば、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素など)、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどの炭素数1〜4のアルコキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオなどの炭素数1〜4のアルキルチオ基など)およびアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基など)などが挙げられる。また、置換基がアリール基に複数置換する場合には、各置換基は、互いに同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
【0037】
上記式(1)において、Rが置換基を有していてもよいアリール基であるN−無置換カルバミン酸エステルとしては、例えば、カルバミン酸フェニル、カルバミン酸トリル、カルバミン酸キシリル、カルバミン酸ビフェニル、カルバミン酸ナフチル、カルバミン酸アントリル、カルバミン酸フェナントリルなどの芳香族炭化水素系N−無置換カルバミン酸エステルなどが挙げられる。
【0038】
これらN−無置換カルバミン酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0039】
N−無置換カルバミン酸エステルとして、好ましくは、上記式(1)において、Rがアルキル基であるN−無置換カルバミン酸エステルが挙げられる。
【0040】
また、カルバメート化反応の原料成分として用いられるN−無置換カルバミン酸エステルには、詳しくは後述するが、好ましくは、カルバメート化反応後に分離された低沸点成分(後述)から、さらに分離して得られるN−無置換カルバミン酸エステルが含まれる。
【0041】
アルコールは、例えば、1〜3級の1価のアルコールであって、例えば、下記一般式(2)で示される。
【0042】
−OH (2)
(式中、Rは、上記式(1)のRと同意義を示す。)
上記式(2)中、Rは、上記式(1)のRと同意義、すなわち、アルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
【0043】
上記式(2)において、Rが上記したアルキル基であるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール(1−ブタノール)、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、iso−オクタノール、2−エチルヘキサノールなどの直鎖状または分岐状の飽和炭化水素系アルコール、例えば、シクロヘキサノール、シクロドデカノールなどの脂環式飽和炭化水素系アルコールなどが挙げられる。
【0044】
また、上記式(2)において、Rが上記した置換基を有していてもよいアリール基であるアルコールとしては、例えば、フェノール、ヒドロキシトルエン、ヒドロキシキシレン、ビフェニルアルコール、ナフタレノール、アントラセノール、フェナントレノールなどが挙げられる。
【0045】
これらアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0046】
アルコールとして、好ましくは、上記式(2)において、Rがアルキル基であるアルコールが挙げられ、より好ましくは、Rが炭素数1〜8のアルキル基であるアルコールが挙げられ、さらに好ましくは、Rが炭素数2〜6のアルキル基であるアルコールが挙げられる。
【0047】
また、カルバメート化反応の原料成分として用いられるアルコールには、好ましくは、イソシアネート残渣を加水分解して得られるアルコール(後述)が含まれる。
【0048】
さらに、カルバメート化反応の原料成分として用いられるアルコールには、好ましくは、カルバメート化反応においてN−無置換カルバミン酸エステルを原料成分として用いた場合に副生するアルコール(後述)、および、トリレンジカルバメートの熱分解反応により得られる分解液から分離されるアルコール(後述)が含まれる。
【0049】
そして、この方法では、上記した混合ジアミノトルエンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを配合し、好ましくは、液相で反応させる。
【0050】
混合ジアミノトルエンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの配合割合は、特に制限はなく、比較的広範囲において適宜選択することができる。
【0051】
通常は、尿素およびN−無置換カルバミン酸エステルの配合量、および、アルコールの配合量が、混合ジアミノトルエンのアミノ基に対して等モル以上あればよく、そのため、尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルや、アルコールそのものを、この反応における反応溶媒として用いることもできる。
【0052】
なお、尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルや、アルコールを反応溶媒として兼用する場合には、必要に応じて過剰量の尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルやアルコールが用いられるが、過剰量が多いと、反応後の分離工程での消費エネルギーが増大するので、工業生産上、不適となる。
【0053】
そのため、尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルの配合量は、トリレンジカルバメートの収率を向上させる観点から、混合ジアミノトルエンのアミノ基1つに対して、0.5〜20倍モル、好ましくは、1〜10倍モル、さらに好ましくは、1〜5倍モル程度であり、アルコールの配合量は、混合ジアミノトルエンのアミノ基1つに対して、0.5〜100倍モル、好ましくは、1〜20倍モル、さらに好ましくは、1〜10倍モル程度である。
【0054】
また、この反応において、反応溶媒は必ずしも必要ではないが、例えば、反応原料が固体の場合や反応生成物が析出する場合には、例えば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ニトリル類、脂肪族ハロゲン化炭化水素類、アミド類、ニトロ化合物類や、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどの反応溶媒を配合することにより、操作性を向上させることができる。
【0055】
また、反応溶媒の配合量は、目的生成物のトリレンジカルバメートが溶解する程度の量であれば特に制限されるものではないが、工業的には、反応液から反応溶媒を回収する必要があるため、その回収に消費されるエネルギーをできる限り低減し、かつ、配合量が多いと、反応基質濃度が低下して反応速度が遅くなるため、できるだけ少ない方が好ましい。より具体的には、混合ジアミノトルエン1質量部に対して、通常、0〜500質量部、好ましくは、0〜100質量部の範囲で用いられる。
【0056】
また、この反応においては、反応温度は、例えば、100〜350℃、好ましくは、150〜300℃の範囲において適宜選択される。反応温度がこれより低いと、反応速度が低下する場合があり、一方、これより高いと、副反応が増大してトリレンジカルバメートの収率が低下する場合がある。
【0057】
また、反応圧力は、通常、大気圧であるが、反応液中の成分の沸点が反応温度よりも低い場合には加圧してもよく、さらには、必要により減圧してもよい。
【0058】
また、反応時間は、例えば、0.1〜20時間、好ましくは、0.5〜10時間である。反応時間がこれより短いと、トリレンジカルバメートの収率が低下する場合がある。一方、これより長いと、工業生産上、不適となる。
【0059】
また、この方法においては、触媒を用いることもできる。
【0060】
触媒としては、特に制限されないが、例えば、リチウムメタノラート、リチウムエタノラート、リチウムプロパノラート、リチウムブタノラート、ナトリウムメタノラート、カリウム−tert−ブタノラート、マグネシウムメタノラート、カルシウムメタノラート、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸鉛、リン酸鉛、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウム−イソブチラート、三塩化アルミニウム、塩化ビスマス(III)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、ビス−(トリフェニル−ホスフィンオキシド)−塩化銅(II)、モリブデン酸銅、酢酸銀、酢酸金、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセトニルアセタート、オクタン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、ヘキシル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、ウンデシル酸亜鉛、酸化セリウム(IV)、酢酸ウラニル、チタンテトライソプロパノラート、チタンテトラブタノラート、四塩化チタン、チタンテトラフェノラート、ナフテン酸チタン、塩化バナジウム(III)、バナジウムアセチルアセトナート、塩化クロム(III)、酸化モリブデン(VI)、モリブデンアセチルアセトナート、酸化タングステン(VI)、塩化マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、リン酸鉄、シュウ酸鉄、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、酢酸コバルト、塩化コバルト、硫酸コバルト、ナフテン酸コバルト、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、ナフテン酸ニッケルなどが挙げられる。
【0061】
さらに、触媒としては、例えば、Zn(OSOCF(別表記:Zn(OTf)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO、Zn(OSO、Zn(OSO、Zn(OSOCH(p−トルエンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO、Zn(BF、Zn(PF、Hf(OTf)(トリフルオロメタンスルホン酸ハフニウム)、Sn(OTf)、Al(OTf)、Cu(OTf)なども挙げられる。
【0062】
これら触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0063】
また、触媒の配合量は、混合ジアミノトルエン1モルに対して、例えば、0.000001〜0.1モル、好ましくは、0.00005〜0.05モルである。触媒の配合量がこれより多くても、それ以上の顕著な反応促進効果が見られない反面、配合量の増大によりコストが上昇する場合がある。一方、配合量がこれより少ないと、反応促進効果が得られない場合がある。
【0064】
なお、触媒の添加方法は、一括添加、連続添加および複数回の断続分割添加のいずれの添加方法でも、反応活性に影響を与えることがなく、特に制限されることはない。
【0065】
そして、この反応は、上記した条件で、例えば、反応容器内に、混合ジアミノトルエン、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、アルコール、および、必要により触媒、反応溶媒を仕込み、攪拌あるいは混合すればよい。主生成物として、2,4−トリレンジカルバメートおよび2,6−トリレンジカルバメートを含有するトリレンジカルバメートが生成する。
【0066】
また、この反応においては、アンモニアが副生される。
【0067】
また、この反応において、N−無置換カルバミン酸エステルを配合する場合には、例えば、下記一般式(3)で示されるアルコールが副生される。
【0068】
−OH (3)
(式中、Rは、上記式(1)のRと同意義を示す。)
また、この反応においては、例えば、下記一般式(4)で示されるN−無置換カルバミン酸エステルが副生される。
【0069】
O−CO−NH (4)
(式中、Rは、上記式(1)のRと同意義を示す。)
また、この反応において、反応型式としては、回分式、連続式いずれの型式も採用することができる。
【0070】
次いで、この方法では、得られた反応液から、公知の方法により、トリレンジカルバメートを分離するとともに、例えば、過剰(未反応)の尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、過剰(未反応)のアルコール、副生するアルコール(上記式(3))、N−無置換カルバミン酸エステル(上記式(4))などを、低沸点成分(軽沸分)として、分離する。
【0071】
なお、好ましくは、低沸点成分(軽沸分)から粗分離したアルコール(過剰(未反応)のアルコールおよび副生するアルコール)を、カルバメート化反応の原料成分として用いる。
【0072】
これにより、低沸点成分(軽沸分)から粗分離したアルコールを、工業的に有効利用することができる。
【0073】
また、好ましくは、低沸点成分(軽沸分)から粗分離したN−無置換カルバミン酸エステルを、カルバメート化反応の原料成分として用いる。
【0074】
これにより、低沸点成分(軽沸分)から粗分離したN−無置換カルバミン酸エステルを、工業的に有効利用することができる。
【0075】
そして、この方法では、得られたトリレンジカルバメートを熱分解し、トリレンジイソシアネートおよびアルコールを生成させる(熱分解工程)。
【0076】
すなわち、この方法では、例えば、上記の方法によって得られたトリレンジカルバメートを熱分解し、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートを、上記した目標異性体比で含むトリレンジイソシアネート、および、副生物である下記一般式(5)で示されるアルコールを生成させる。
【0077】
−OH (5)
(式中、Rは、上記式(1)のRと同意義を示す。)
この熱分解は、特に限定されず、例えば、液相法、気相法などの公知の分解法を用いることができる。
【0078】
気相法では、熱分解により生成するトリレンジイソシアネートおよびアルコールは、気体状の生成混合物から、分別凝縮によって分離することができる。また、液相法では、熱分解により生成するトリレンジイソシアネートおよびアルコールは、例えば、蒸留や、担持物質としての溶剤および/または不活性ガスを用いて、分離することができる。
【0079】
熱分解として、好ましくは、作業性の観点から、液相法が挙げられる。
【0080】
このような方法において、トリレンジカルバメートは、好ましくは、不活性溶媒の存在下において、熱分解される。
【0081】
不活性溶媒は、少なくとも、トリレンジカルバメートを溶解し、トリレンジカルバメートおよびトリレンジイソシアネートに対して不活性であり、かつ、熱分解時に反応しなければ(すなわち、安定であれば)、特に制限されないが、熱分解反応を効率よく実施するには、生成するトリレンジイソシアネートよりも高沸点であることが好ましい。
【0082】
このような不活性溶媒としては、例えば、芳香族系炭化水素類などが挙げられる。
【0083】
芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン(沸点:80℃)、トルエン(沸点:111℃)、o−キシレン(沸点:144℃)、m−キシレン(沸点:139℃)、p−キシレン(沸点:138℃)、エチルベンゼン(沸点:136℃)、イソプロピルベンゼン(沸点:152℃)、ブチルベンゼン(沸点:185℃)、シクロヘキシルベンゼン(沸点:237〜340℃)、テトラリン(沸点:208℃)、クロロベンゼン(沸点:132℃)、o−ジクロロベンゼン(沸点:180℃)、1−メチルナフタレン(沸点:245℃)、2−メチルナフタレン(沸点:241℃)、1−クロロナフタレン(沸点:263℃)、2−クロロナフタレン(沸点:264〜266℃)、トリフェニルメタン(沸点:358〜359℃(754mmHg))、1−フェニルナフタレン(沸点:324〜325℃)、2−フェニルナフタレン(沸点:357〜358℃)、ビフェニル(沸点:255℃)などが挙げられる。
【0084】
また、このような溶媒は、市販品としても入手可能であり、例えば、バーレルプロセス油B−01(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、バーレルプロセス油B−03(芳香族炭化水素類、沸点:280℃)、バーレルプロセス油B−04AB(芳香族炭化水素類、沸点:294℃)、バーレルプロセス油B−05(芳香族炭化水素類、沸点:302℃)、バーレルプロセス油B−27(芳香族炭化水素類、沸点:380℃)、バーレルプロセス油B−28AN(芳香族炭化水素類、沸点:430℃)、バーレルプロセス油B−30(芳香族炭化水素類、沸点:380℃)、バーレルサーム200(芳香族炭化水素類、沸点:382℃)、バーレルサーム300(芳香族炭化水素類、沸点:344℃)、バーレルサーム400(芳香族炭化水素類、沸点:390℃)、バーレルサーム1H(芳香族炭化水素類、沸点:215℃)、バーレルサーム2H(芳香族炭化水素類、沸点:294℃)、バーレルサーム350(芳香族炭化水素類、沸点:302℃)、バーレルサーム470(芳香族炭化水素類、沸点:310℃)、バーレルサームPA(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、バーレルサーム330(芳香族炭化水素類、沸点:257℃)、バーレルサーム430(芳香族炭化水素類、沸点:291℃)、(以上、松村石油社製)、NeoSK−OIL1400(芳香族炭化水素類、沸点:391℃)、NeoSK−OIL1300(芳香族炭化水素類、沸点:291℃)、NeoSK−OIL330(芳香族炭化水素類、沸点:331℃)、NeoSK−OIL170(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、NeoSK−OIL240(芳香族炭化水素類、沸点:244℃)、KSK−OIL260(芳香族炭化水素類、沸点:266℃)、KSK−OIL280(芳香族炭化水素類、沸点:303℃)、(以上、綜研テクニックス社製)などが挙げられる。
【0085】
また、不活性溶媒としては、さらに、エステル類(例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシルなど)、熱媒体として常用される脂肪族系炭化水素類なども挙げられる。
【0086】
このような不活性溶媒は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
不活性溶媒の配合量は、トリレンジカルバメート1質量部に対して0.001〜100質量部、好ましくは、0.01〜80質量部、より好ましくは、0.1〜50質量部の範囲である。
【0088】
また、熱分解においては、例えば、不活性溶媒をトリレンジカルバメートに配合し、トリレンジカルバメートを熱分解した後、その不活性溶媒を分離および回収し、再度、熱分解においてトリレンジカルバメートに配合することができる。
【0089】
また、液相法におけるトリレンジカルバメートの熱分解反応は、可逆反応であるため、好ましくは、熱分解反応の逆反応(すなわち、トリレンジイソシアネートと、上記式(5)で示されるアルコールとのウレタン化反応)を抑制するため、トリレンジカルバメートを熱分解するとともに、反応混合物(分解液)からトリレンジイソシアネート、および/または、上記式(5)で示されるアルコールを公知の方法により抜き出し、それらを分離する。
【0090】
熱分解反応の反応条件として、好ましくは、トリレンジカルバメートを良好に熱分解できるとともに、熱分解において生成したトリレンジイソシアネートおよびアルコール(上記式(5))が蒸発し、これによりトリレンジカルバメートとトリレンジイソシアネートとが平衡状態とならず、さらには、トリレンジイソシアネートの重合などの副反応が抑制される反応条件が挙げられる。
【0091】
このような反応条件として、より具体的には、熱分解温度は、通常、350℃以下であり、好ましくは、80〜350℃、より好ましくは、100〜300℃である。80℃よりも低いと、実用的な反応速度が得られない場合があり、また、350℃を超えると、トリレンジイソシアネートの重合など、好ましくない副反応を生じる場合がある。また、熱分解反応時の圧力は、上記の熱分解反応温度に対して、生成するアルコールが気化し得る圧力であることが好ましく、設備面および用役面から実用的には、0.133〜90kPaであることが好ましい。
【0092】
さらに、この方法では、必要により、触媒を添加することもできる。
【0093】
触媒は、それらの種類により異なるが、上記反応時、反応後の蒸留分離の前後、トリレンジカルバメートの分離の前後の、いずれかに添加すればよい。
【0094】
熱分解に用いられる触媒としては、トリレンジイソシアネートと水酸基とのウレタン化反応に用いられる、Sn、Sb、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、Ti、Pb、Mo、Mnなどから選ばれる1種以上の金属単体またはその酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、リン酸塩、有機金属化合物などの金属化合物が用いられる。これらのうち、この熱分解においては、Fe、Sn、Co、Sb、Mnが副生成物を生じにくくする効果を発現するため、好ましく用いられる。
【0095】
Snの金属触媒としては、例えば、酸化スズ、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、ギ酸スズ、酢酸スズ、シュウ酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、オレイン酸スズ、リン酸スズ、二塩化ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシジスタノキサンなどが挙げられる。
【0096】
Fe、Co、Sb、Mnの金属触媒としては、例えば、それらの酢酸塩、安息香酸塩、ナフテン酸塩、アセチルアセトナート塩などが挙げられる。
【0097】
なお、触媒の配合量は、金属単体またはその化合物として、反応液に対して0.0001〜5質量%の範囲、好ましくは、0.001〜1質量%の範囲である。
【0098】
また、この熱分解反応は、トリレンジカルバメート、触媒および不活性溶媒を一括で仕込む回分反応、また、触媒を含む不活性溶媒中に、減圧下でトリレンジカルバメートを仕込んでいく連続反応のいずれでも実施することができる。
【0099】
熱分解では、トリレンジイソシアネートおよびアルコールが生成するとともに、副反応によって、例えば、アロファネート、アミン類、尿素、炭酸塩、カルバミン酸塩、二酸化炭素などが生成する場合があるため、必要により、得られたトリレンジイソシアネートは、公知の方法により精製される。
【0100】
このようにして得られたトリレンジイソシアネートの異性体比は、上記した目標異性体比であって、その2,4−トリレンジイソシアネートの比率(モル比)が、原料として用いられる混合ジアミノトルエンにおける2,4−ジアミノトルエンの比率(モル比)より低くなる。
【0101】
なお、このような反応において、トリレンジイソシアネートの収率を高くすれば、トリレンジイソシアネートにおける2,4−トリレンジイソシアネートの比率(モル比)も高くなる。
【0102】
また、熱分解で得られるアルコール(上記式(5))は、分離および回収された後、好ましくは、カルバメート化反応の原料成分として用いられる。
【0103】
そして、このような方法において、トリレンジカルバメートの熱分解反応で得られた分解液から、トリレンジイソシアネートおよびアルコールを除去し、必要に応じて、溶媒を分離すると、イソシアネート残渣が得られる。なお、分離した溶媒は、再び熱分解に使用することができる。
【0104】
すなわち、例えば、トリレンジカルバメートを、混合ジアミノトルエンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により製造し、そのトリレンジカルバメートを熱分解することによりトリレンジイソシアネートを製造する場合には、例えば、得られるトリレンジカルバメートやトリレンジイソシアネート、あるいは、それらの中間体などが、例えば、多量化、ビウレット化およびアロファネート化などの好ましくない重合反応を惹起する場合がある。そのような場合には、例えば、尿素誘導体(ビウレット体)、カルバメート誘導体(アロファネート体)などの副生物が、イソシアネート残渣として得られる。なお、イソシアネート残渣には、例えば、未反応の尿素やカルバメートなどが、含まれる場合もある。
【0105】
このようなイソシアネート残渣は、通常、廃棄処理されているが、地球環境などの観点から廃棄処理物を低減することが要求され、また、回収されたイソシアネート残渣を有効利用する方法が要求されている。
【0106】
そのため、この方法では、得られたイソシアネート残渣を、高圧高温水に接触させて、ジアミノトルエンおよびアルコールに加水分解する。
【0107】
このとき、イソシアネート残渣は高粘度のタール状であるため、工業的には、イソシアネート残渣に流動性を付与すべくスラリーとして調製し、スラリー輸送することが望まれる。そのため、必要により、イソシアネート残渣に、溶媒(例えば、カーボネートなど)を配合することができる。
【0108】
具体的には、この方法では、公知の耐圧耐熱槽内に、イソシアネート残渣(および必要により溶媒)を供給するとともに、高圧高温水を供給し、イソシアネート残渣に高圧高温水を接触させて、ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)およびアルコールに加水分解する。
【0109】
高圧高温水は、高圧、すなわち、3〜30MPa、好ましくは、6〜25MPa、さらに好ましくは、6〜20MPaに昇圧され、かつ、高温、すなわち、190〜350℃、好ましくは、200〜300℃に加熱された水であって、公知の方法により加熱および加圧される。
【0110】
なお、イソシアネート残渣の分解圧力(槽内圧力)は、3〜30MPa、好ましくは、6〜25MPa、さらに好ましくは、6〜20MPaである。また、イソシアネート残渣の分解温度(槽内温度)は、190〜350℃、好ましくは、200〜300℃である。
【0111】
また、高圧高温水としては、加水比(高圧高温水/イソシアネート残渣の質量比)が、例えば、0.5〜30、好ましくは、1〜15に制御される。
【0112】
これによって、イソシアネート残渣が高圧高温水によって加水分解され、分解生成物として、ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)が生成する。また、この加水分解においては、二酸化炭素などが副生する。
【0113】
このとき、分解されるイソシアネート残渣が、上記したように、混合ジアミノトルエンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により生成されるトリレンジカルバメートを熱分解して得られるイソシアネート残渣である場合には、ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)は、2,4−ジアミノトルエンおよび/または2,6−ジアミノトルエンを、好ましくは、上記した第2異性体比で含有している。
【0114】
具体的には、このようにして得られた分解ジアミノトルエンの異性体比として、好ましくは、2,4−ジアミノトルエンの比率(モル比)が、混合ジアミノトルエンにおける2,4−ジアミノトルエンの比率(モル比)より高く、また、トリレンジイソシアネートの目標異性体比における2,4−トリレンジイソシアネートの比率(モル比)よりも高くなる。
【0115】
分解ジアミノトルエンの異性体比として、具体的には、2,4−ジアミノトルエンの比率(モル比)が、例えば、80以上、好ましくは、85以上、より好ましくは、90以上であり、また、2,6−ジアミノトルエンの比率が(モル比)、例えば、20以下、好ましくは、15以下、より好ましくは、10以下である。
【0116】
そして、このような分解ジアミノトルエンは、分離および回収された後、好ましくは、上記したトリレンジカルバメートの生成において、第2ジアミノトルエンとして用いられる。
【0117】
なお、分解ジアミノトルエンの分離方法としては、公知の方法でよく、好ましくは、蒸留が挙げられる。
【0118】
このようなトリレンジイソシアネートの製造方法によれば、2,4−ジアミノトルエンおよび2,6−ジアミノトルエンの異性体比が互いに異なる第1ジアミノトルエンと第2ジアミノトルエンとを混合して、混合ジアミノトルエンを調製し、その混合ジアミノトルエンをカルバメート化し、熱分解するので、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートを目標異性体比で含むトリレンジイソシアネートを得ることができる。
【0119】
とりわけ、この方法では、混合ジアミノトルエンをカルバメート化し、熱分解することにより得られるトリレンジイソシアネートの2,4−トリレンジイソシアネート比率が、混合ジアミノトルエンにおける2,4−ジアミノトルエンの比率に比べて低くなり、一方、イソシアネート残渣を加水分解して得られる分解ジアミノトルエンの2,4−ジアミノトルエン比率が、混合ジアミノトルエンにおける2,4−ジアミノトルエンの比率に比べて高くなる。そのため、分解ジアミノトルエンを利用することにより、得られるトリレンジイソシアネートの異性体比を、目標異性体比に調整することができる。
【0120】
図1は、本発明のトリレンジイソシアネートの製造方法が採用されるプラントの一実施形態を示す概略構成図である。
【0121】
以下において、上記したトリレンジイソシアネートの製造方法が工業的に実施されるプラントの一実施形態について、図1を参照して説明する。
【0122】
図1において、このプラント1は、尿素法でトリレンジイソシアネートを製造するトリレンジイソシアネートの製造装置であって、混合装置35と、反応装置2と、軽沸留去装置3と、熱分解装置4と、蒸留装置7と、加水分解装置5と、精製装置6とを備えている。
【0123】
混合装置35は、プラント1において、第1ジアミノトルエンと第2ジアミノトルエンとを混合し、混合ジアミノトルエンを製造するために設備されている。
【0124】
この混合装置35は、混合槽38と、混合槽38に接続される第1ジアミノトルエン供給管36および第2ジアミノトルエン供給管37とを備えている。
【0125】
混合槽38は、第1ジアミノトルエンと第2ジアミノトルエンとを混合し、混合ジアミノトルエンを製造するための混合槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
【0126】
このような混合槽38には、図示しないが、必要により、例えば、混合槽38内を不活性ガス(例えば、窒素ガスなど)で置換するための不活性ガス供給管、混合槽38内を攪拌するための攪拌装置などが備えられている。
【0127】
第1ジアミノトルエン供給管36は、混合槽38に第1ジアミノトルエンを供給するための第1ジアミノトルエン供給ラインであり、その下流側端部が、混合槽38に接続されている。また、その上流側端部が、図示しないが、第1ジアミノトルエンが導入される第1ジアミノトルエン導入ラインに接続されている。
【0128】
第2ジアミノトルエン供給管37は、混合槽38に第2ジアミノトルエンを供給するための第2ジアミノトルエン供給ラインであり、その下流側端部が、混合槽38に接続されている。また、その上流側端部には、第2ジアミノトルエンとして用いられる分解ジアミノトルエンが導入される、分解ジアミノトルエン還流管25(後述)の下流側端部が接続されている。
【0129】
反応装置2は、プラント1において、混合ジアミノトルエンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により、トリレンジカルバメートを生成するために設備されている。
【0130】
この反応装置2は、反応槽8と、反応槽8に接続される混合ジアミノトルエン供給管9、尿素供給管10、カルバミン酸エステル供給管12およびアルコール供給管11とを備えている。
【0131】
反応槽8は、混合ジアミノトルエンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとをカルバメート化反応させて、トリレンジカルバメートを製造するためのカルバメート化反応槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
【0132】
このような反応槽8には、図示しないが、必要により、例えば、反応槽8に触媒を供給する触媒供給管、反応槽8内を不活性ガス(例えば、窒素ガスなど)で置換するための不活性ガス供給管、反応槽8内を攪拌するための攪拌装置、副生するアンモニアを系外に留去するアンモニア排出管などが備えられている。
【0133】
混合ジアミノトルエン供給管9は、反応槽8に混合ジアミノトルエンを供給するための混合ジアミノトルエン供給ラインであり、その下流側端部が、反応槽8に接続されている。また、その上流側端部が、混合装置35の混合槽38に接続されている。
【0134】
尿素供給管10は、反応槽8に尿素を供給するための尿素供給ラインであり、その下流側端部が、反応槽8に接続されている。また、その上流側端部が、図示しないが、尿素が導入される尿素導入ラインに接続されている。
【0135】
カルバミン酸エステル供給管12は、反応槽8にN−無置換カルバミン酸エステルを供給するためのN−無置換カルバミン酸エステル供給ラインであり、その下流側端部が、反応槽8に接続されている。また、その上流側端部が、図示しないが、N−無置換カルバミン酸エステルが導入されるN−無置換カルバミン酸エステル導入ラインに接続されている。
【0136】
このようなカルバミン酸エステル供給管12には、その流れ方向途中においてカルバミン酸エステル還流管30(後述)の下流側端部が接続されている。
【0137】
アルコール供給管11は、反応槽8にアルコールを供給するためのアルコール供給ラインであり、その下流側端部が、反応槽8に接続されている。また、その上流側端部が、図示しないが、アルコールが導入されるアルコール導入ラインに接続されている。
【0138】
このようなアルコール供給管11には、その流れ方向途中において、アルコール第1還流管31(後述)の下流側端部、アルコール第2還流管32(後述)の下流側端部、および、アルコール第3還流管34(後述)の下流側端部が接続されている。
【0139】
軽沸留去装置3は、プラント1において、反応槽8で得られる反応液から、過剰(未反応)のアルコール、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルや、副生成物であるアルコール、N−無置換カルバミン酸エステルなどの低沸点成分(軽沸分)を、分離するために、設備されている。
【0140】
この軽沸留去装置3は、軽沸留去槽13と、軽沸留去槽13に接続される第1反応液輸送管14とを備えている。
【0141】
軽沸留去槽13は、反応装置2において得られた反応液から、上記の低沸点成分を留去するための留去槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
【0142】
第1反応液輸送管14は、反応装置2において製造された反応液を、軽沸留去槽13に輸送するための第1反応液輸送ラインであって、その下流側端部が、軽沸留去槽13に接続されている。また、その上流側端部が、反応装置2における反応槽8に接続されている。
【0143】
熱分解装置4は、プラント1において、反応液をトリレンジイソシアネートおよびアルコールに熱分解するために設備されている。
【0144】
この熱分解装置4は、熱分解槽15と、熱分解槽15に接続される第2反応液輸送管16およびイソシアネート排出管17を備えている。
【0145】
熱分解槽15は、反応装置2において得られた反応液を加熱して、トリレンジイソシアネートおよびアルコールに熱分解する分解槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
【0146】
このような熱分解槽15には、図示しないが、必要により、例えば、熱分解槽15に溶媒を供給する溶媒供給管などが備えられている。
【0147】
第2反応液輸送管16は、軽沸留去装置3において軽沸分が留去された反応液を、熱分解槽15に輸送するための第2反応液輸送ラインであって、その下流側端部が、熱分解槽15に接続されている。また、その上流側端部が、軽沸留去装置3における軽沸留去槽13に接続されている。
【0148】
イソシアネート排出管17は、反応液の熱分解により得られたトリレンジイソシアネートを、プラント1から排出するためのイソシアネート排出ラインであり、その上流側端部が熱分解槽15に接続されている。また、その下流側端部が、図示しないが、トリレンジイソシアネートが精製などされるイソシアネート精製ラインに接続されている。
【0149】
蒸留装置7は、プラント1において、軽沸留去槽13において得られた低沸点成分(軽沸分)から、アルコールと、N−無置換カルバミン酸エステルとを分離するために、設備されている。
【0150】
この蒸留装置7は、蒸留塔28と、蒸留塔28に接続される軽沸分輸送管27とを備えている。
【0151】
蒸留塔28は、軽沸留去装置3において得られた低沸点成分から、N−無置換カルバミン酸エステルを粗分離するとともに、アルコールを粗分離するための分離塔であって、公知の蒸留塔からなる。
【0152】
軽沸分輸送管27は、軽沸留去装置3において得られた軽沸分を、蒸留装置7に輸送するための軽沸分輸送ラインであって、その下流側端部が、蒸留塔28に接続されている。また、その上流側端部が、軽沸留去装置3における軽沸留去槽13に接続されている。
【0153】
加水分解装置5は、プラント1において、熱分解装置4で得られたイソシアネート残渣を、高圧高温水によりジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)およびアルコールに加水分解するために設備されている。
【0154】
この加水分解装置5は、加水分解槽18と、加水分解槽18に接続されるイソシアネート残渣輸送管19および水供給管20とを備えている。
【0155】
加水分解槽18は、イソシアネート残渣と高圧高温水とを接触させて、イソシアネート残渣をジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)およびアルコールに加水分解し、加水分解液を得るための加水分解槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
【0156】
このような加水分解槽18には、イソシアネート残渣の加水分解により副生する二酸化炭素、および、加水分解に用いられる水などをプラント1から排出する排水管33が備えられている。
【0157】
また、このような加水分解槽18には、図示しないが、必要により、例えば、加水分解槽18内を攪拌するための攪拌装置などが備えられている。
【0158】
イソシアネート残渣輸送管19は、熱分解装置4において生成したイソシアネート残渣を、加水分解槽18に輸送するためのイソシアネート残渣輸送ラインであって、その下流側端部が、加水分解槽18に接続されている。また、その上流側端部が、熱分解装置4における熱分解槽15に接続されている。
【0159】
また、イソシアネート残渣輸送管19の途中には、必要により、イソシアネート残渣輸送管19に溶媒を供給するための溶媒供給装置、イソシアネート残渣を加水分解槽18に向けて圧力輸送するための残渣圧送ポンプ(図示せず)が介在され、さらに、必要により、残渣圧送ポンプ(図示せず)の下流側に、イソシアネート残渣を加熱するための残渣加熱器(図示せず)が介在される
水供給管20は、高圧高温水を加水分解槽18に供給するための水供給ラインであり、耐熱耐圧配管からなり、その下流側端部が、加水分解槽18に接続されている。また、その上流側端部が、図示しない水(プロセス回収水やイオン交換水など)が給水される給水ラインに接続されている。
【0160】
また、水供給管20の途中には、高圧高温水を加水分解槽18に向けて圧力輸送するための水圧送ポンプ23が介在されている。さらに、水供給管20の途中には、水圧送ポンプ23の下流側に、水を加熱するための水加熱器22が介在されている。
【0161】
精製装置6は、プラント1において、加水分解槽18で得られたジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)およびアルコール、さらに、ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)やアルコールなどに分解されることなく残存する成分(2次残渣)を含む加水分解液から、ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)とアルコールとを分離および精製するために、設備されている。
【0162】
この精製装置6は、精製槽24と、精製槽24に接続される加水分解液輸送管21および2次残渣排出管26を備えている。
【0163】
精製槽24は、加水分解装置5において得られた加水分解液から、ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)とアルコールとを分離および精製するための精製槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
【0164】
加水分解液輸送管21は、加水分解装置5において製造された反応液を、精製槽24に輸送するための加水分解液輸送ラインであって、その下流側端部が、精製槽24に接続されている。また、その上流側端部が、加水分解装置5における加水分解槽18に接続されている。
【0165】
2次残渣排出管26は、イソシアネート残渣を高圧高温水と接触させたときに、ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)やアルコールなどに分解されることなく残存する成分(2次残渣)を排出するための2次残渣排出ラインであって、その上流側端部が精製槽24に接続されている。また、その下流側端部が、図示しないが、2次残渣が貯留される2次残渣貯留槽に接続されている。
【0166】
また、このようなプラント1は、さらに、分解ジアミノトルエン還流管25、アルコール第1還流管31、アルコール第2還流管32、アルコール第3還流管34およびカルバミン酸エステル還流管30を備えている。
【0167】
分解ジアミノトルエン還流管25は、精製装置6において、加水分解液から分離および精製された分解ジアミノトルエンを、反応装置2における第2ジアミノトルエン供給管37に還流するための分解ジアミノトルエン還流ラインであって、その上流側端部が精製槽24に接続されるとともに、その下流側端部が第2ジアミノトルエン供給管37の下流側端部に接続されている。
【0168】
アルコール第1還流管31は、熱分解装置4において、トリレンジイソシアネートを熱分解して得られたアルコールを、反応装置2におけるアルコール供給管11に還流するためのアルコール第1還流ラインであって、その上流側端部が熱分解槽15に接続されるとともに、その下流側端部がアルコール供給管11の流れ方向途中に接続されている。
【0169】
アルコール第2還流管32は、精製装置6において、加水分解液から分離および精製されたアルコールを、反応装置2におけるアルコール供給管11に還流するためのアルコール第2還流ラインであって、その上流側端部が精製槽24に接続されるとともに、その下流側端部がアルコール供給管11の流れ方向途中に接続されている。
【0170】
アルコール第3還流管34は、蒸留装置7において、低沸点成分(軽沸分)を蒸留して得られたアルコールを、反応装置2におけるアルコール供給管11に還流するためのアルコール第3還流ラインであって、その上流側端部が蒸留塔28に接続されるとともに、その下流側端部がアルコール供給管11の流れ方向途中に接続されている。
【0171】
カルバミン酸エステル還流管30は、蒸留装置7において、低沸点成分(軽沸分)を蒸留して得られたN−無置換カルバミン酸エステルを、反応装置2におけるカルバミン酸エステル供給管12に還流するためのカルバミン酸エステル還流ラインであって、その上流側端部が蒸留塔28に接続されるとともに、その下流側端部がカルバミン酸エステル供給管12の流れ方向途中に接続されている。
【0172】
次に、このプラント1によって、トリレンジカルバメートおよびトリレンジイソシアネートを製造するとともに、イソシアネート残渣を得て、得られたイソシアネート残渣を加水分解し、得られるジアミノトルエンおよびアルコールを、再度、カルバメート化反応の原料成分として用いる方法について、説明する。
【0173】
この方法では、まず、混合装置35において、混合ジアミノトルエンを製造する。
【0174】
混合ジアミノトルエンの製造においては、混合装置35が連続運転され、第1ジアミノトルエンが第1ジアミノトルエン供給管36から、また、第2ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)が、後述するように、分解ジアミノトルエン還流管25を介して、第2ジアミノトルエン供給管37から、それぞれ上記割合で圧力輸送され、混合槽38に対して、連続的に供給される。
【0175】
これにより、上記した割合で2,4−ジアミノトルエンと2,6−ジアミノトルエンとを含有する混合ジアミノトルエンを製造する。
【0176】
次いで、この方法では、反応装置2において、トリレンジカルバメートを製造する。
【0177】
このトリレンジカルバメートの製造においては、反応装置2が連続運転され、トリレンジカルバメートの原料である混合ジアミノトルエンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとが、混合ジアミノトルエン供給管9と、尿素供給管10および/またはカルバミン酸エステル供給管12と、アルコール供給管11とから、それぞれ上記割合で圧力輸送され、反応槽8に対して、連続的に供給される。また、必要により、これら原料成分とともに、触媒が、触媒供給管(図示せず)から供給される。
【0178】
そして、この方法では、反応槽8において、混合ジアミノトルエンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとがカルバメート化反応し、これにより、トリレンジカルバメートと、副生するアルコールおよびN−無置換カルバミン酸エステルを含む反応液が得られる。
【0179】
また、このようにして得られた反応液は、第1反応液輸送管14に供給され、軽沸留去装置3に圧力輸送される。
【0180】
次いで、この方法では、軽沸留去装置3(軽沸留去槽13)において、反応液から、例えば、過剰(未反応)のアルコール、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、副生するアルコール、N−無置換カルバミン酸エステルなどを含む低沸点成分(軽沸分)が分離される。
【0181】
軽沸留去槽13において分離された軽沸分は、軽沸分輸送管27に導入され、蒸留装置7に供給される。
【0182】
そして、この方法では、蒸留装置7に供給された低沸点成分(軽沸分)は、蒸留塔28において蒸留され、これにより、N−無置換カルバミン酸エステルおよびアルコール(過剰(未反応)のアルコールおよび副生するアルコールを含む。)が粗分離される。
【0183】
粗分離されたN−無置換カルバミン酸エステルは、カルバミン酸エステル還流管30に導入され、カルバミン酸エステル供給管12に還流される。これにより、N−無置換カルバミン酸エステルは、反応槽8に供給される。
【0184】
また、粗分離されたアルコールは、アルコール第3還流管34に導入され、アルコール供給管11に還流される。これにより、アルコールは、反応槽8に供給される。
【0185】
一方、軽沸留去装置3において、反応液から軽沸分を分離した後の残留物として得られた反応液は、第2反応液輸送管16に供給され、熱分解装置4に圧力輸送される。
【0186】
次いで、この方法では、熱分解装置4において、反応液を熱分解する。
【0187】
この反応液の熱分解においては、熱分解装置4が連続運転され、第2反応液輸送管16を介して供給される反応液が、熱分解槽15において、上記条件で加熱および熱分解される。
【0188】
これにより、分解液として、トリレンジイソシアネートおよびアルコールが得られ、また、トリレンジイソシアネートおよびアルコールとともに、イソシアネート残渣が得られる。
【0189】
熱分解槽15において得られたトリレンジイソシアネートは、イソシアネート排出管17を介して排出され、図示しないイソシアネート精製ラインに輸送される。
【0190】
一方、熱分解槽15において得られたアルコールは、分解液から分離された後、アルコール第1還流管31に導入され、アルコール供給管11に還流される。これにより、アルコールは、反応槽8に供給される。
【0191】
そして、熱分解槽15において得られたイソシアネート残渣は、イソシアネート残渣輸送管19に供給され、加水分解装置5に圧力輸送される。
【0192】
このとき、イソシアネート残渣輸送管19において、必要により、図示しない溶媒供給装置から、イソシアネート残渣に、溶媒(カーボネートなど)が配合され、高粘度のタール状であるイソシアネート残渣がスラリー状とされ、流動性が確保される。これにより得られるスラリー状のイソシアネート残渣は、加水分解装置5に圧力輸送される。
【0193】
次いで、この方法では、加水分解装置5において、イソシアネート残渣を加水分解する。
【0194】
このイソシアネート残渣の加水分解においては、加水分解装置5が連続運転され、熱分解装置4(熱分解槽15)からイソシアネート残渣輸送管19を介して供給されるイソシアネート残渣が、加水分解槽18において、上記条件で分解される。
【0195】
すなわち、この方法では、イソシアネート残渣が、イソシアネート残渣輸送管19を介して、例えば、3〜30MPaの供給圧力に昇圧され、かつ、例えば、190〜350℃の供給温度に加熱された状態で、加水分解槽18に供給される。
【0196】
一方、給水ラインから水供給管20に流入される水は、水圧送ポンプ23によって、水供給管20内を、加水分解槽18に向けて圧力輸送され、また、水加熱器22によって加熱される。これによって、水は、3〜30MPaに昇圧され、かつ、190〜350℃に加熱された高圧高温水となって加水分解槽18に流入する。
【0197】
加水分解槽18は、例えば、槽内温度(分解温度)190〜350℃、槽内圧力(分解圧力)3〜30MPaに制御されており、また、残渣圧送ポンプ(図示せず)および水圧送ポンプ23の制御により、(高圧高温水/イソシアネート残渣の質量比)が、例えば、0.5〜30に制御されている。
【0198】
これによって、加水分解槽18では、イソシアネート残渣が、高圧高温水によって連続的に加水分解され、分解生成物として、ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)およびアルコールが生成し、それらジアミノトルエンおよびアルコール、さらに、ジアミノトルエンやアルコールなどに分解されることなく残存する成分(2次残渣)を含む加水分解液が得られる。
【0199】
また、副生する二酸化炭素および加水分解において用いられた水が、排水管33を介してプラント1から排出される。
【0200】
ジアミノトルエンおよびアルコール、さらに、2次残渣を含む加水分解液は、加水分解液輸送管21に供給され、精製装置6に圧力輸送される。
【0201】
次いで、この方法では、精製装置6(精製槽24)において、加水分解液から、ジアミノトルエンとアルコールとを分離する。
【0202】
分離されたジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)は、分解ジアミノトルエン還流管25に導入され、第2ジアミノトルエン供給管37に還流される。これにより、分解ジアミノトルエンは、第2ジアミノトルエンとして、混合槽38に供給される。
【0203】
また、分離されたアルコールは、アルコール第2還流管32に導入され、アルコール供給管11に還流される。これにより、アルコールは、反応槽8に供給される。
【0204】
なお、精製槽24において得られた2次残渣は、2次残渣排出管26を介して2次残渣貯留槽(図示せず)に輸送され、その2次残渣貯留槽(図示せず)で一時的に貯留された後、例えば、焼却処理される。
【0205】
そして、このようなプラント1によれば、2,4−ジアミノトルエンおよび2,6−ジアミノトルエンの異性体比が互いに異なる第1ジアミノトルエンと第2ジアミノトルエンとを混合して、混合ジアミノトルエンを調製し、その混合ジアミノトルエンをカルバメート化し、熱分解するので、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートを目標異性体比で含むトリレンジイソシアネートを得ることができる。
【0206】
また、このようなプラント1によれば、連続的にイソシアネートを製造するとともに、イソシアネート残渣を一度に分解し、得られる分解ジアミノトルエンおよびアルコールを還流させ、効率よく利用することができる。
【0207】
さらには、このようなプラント1によれば、カルバメート化反応の副生成物として得られるアルコールおよびN−無置換カルバミン酸エステルを分離し、そのアルコールおよびN−無置換カルバミン酸エステルを還流させ、効率よく利用することができる。
【0208】
以上、トリレンジイソシアネートの製造方法について説明したが、このようなプラント1は、必要により、適宜の位置において、脱水工程などの前処理工程を実施するための前処理装置、中間工程、蒸留工程、濾過工程、精製工程および回収工程などの後処理工程を実施するための後処理装置などを備えることができる。
【0209】
また、上記した説明では、第2ジアミノトルエン供給管37の上流側端部と、分解ジアミノトルエン還流管25の下流側端部とを直接接続し、分解ジアミノトルエンのみを、第2ジアミノトルエンとして用いたが、例えば、第2ジアミノトルエン供給管37に、分解ジアミノトルエン還流管25の下流側端部を接続することなく、図1において破線で示すように、第2ジアミノトルエン供給管37の上流側端部を、第2ジアミノトルエンが導入される第2ジアミノトルエン導入ライン(図示せず)に接続し、第2ジアミノトルエンを、第2ジアミノトルエン供給管37から、別途、混合装置35に供給することができる。
【実施例】
【0210】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
【0211】
製造例1
(カルバメート製造工程)
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器および攪拌装置を備えた内容量1LのSUS製オートクレーブに、第1ジアミノトルエン(2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン=80/20(モル比))(122g:1mol)、カルバミン酸ブチル(333g:2.85mol)および1−ブタノール(211g:2.85mol)と、触媒としてp−トルエンスルホン酸亜鉛(1.0g:2.5mmol)とを仕込み、窒素ガスを毎分1L流通、500rpmで攪拌させながら、反応温度200℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節し、8時間反応させ、反応液を得た。
【0212】
反応液の一部を採取して定量したところ、2,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(2,4−トリレンジカルバメート)および2,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(2,6−トリレンジカルバメート)の総量として、トリレンジカルバメートが、収率95モル%で得られたことが確認された。
(軽沸分の減圧留去)
攪拌装置および冷却管を備えた内容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、上記カルバメート化反応により得られた反応液387.77gを仕込み、200rpmで攪拌させながら、真空ポンプで容器内を2kPaまで減圧した。冷却管に25℃の循環水を流した状態で、容器内を100℃まで昇温してカルバメート化反応液を濃縮し、軽沸分125.44gを留去した。
【0213】
留去された軽沸分について、高速液体クロマトグラフ(HPLC)およびガスクロマトグラフ(GC)により分析した結果、主成分はブタノールであることが確認された。続いて、循環水温度を70℃に設定し、容器内を180℃まで昇温してカルバメート化反応液を濃縮し、褐色の濃縮液195.89gと、軽沸分63.19gとを得た。
(カルバメートの熱分解、および、イソシアネート残渣の分離回収)
攪拌装置、および、上部に還流管の付いた精留塔を備えた内容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、上記軽沸分の減圧留去で得た濃縮液を196gと、溶媒としてバーレルプロセス油B−05(松村石油社製)196gとをそれぞれ仕込み、還流管の循環水温度を90℃として、230rpmで攪拌させながら、真空ポンプにて系内を133hPaに減圧した。
【0214】
次いで、反応器内部温度計の温調設定を230℃に設定し、昇温させることにより、塔頂温度を上昇させた。このとき、還流管内にトリレンジイソシアネートが凝縮しはじめたことを確認した後、還流比5(=還流10秒/留出2秒)に設定して還流液を留出させた。
【0215】
昇温より240分後に留出がなくなったことを確認した後、加熱を停止させ、反応液を5A濾紙にて濾過し、濾液と濾残とに分離した。
【0216】
還流液として得られたトリレンジイソシアネートの収率は、HPLCにて定量したところ、第1ジアミノトルエンを基準として、78モル%であった。また、その異性体比は、2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート=76/24(モル比)であった。
(分解ジアミノトルエンの製造)
熱電対および圧力調整弁を備えた内容量36mLのSUS製オートクレーブに、上記濾残6gを仕込み、さらに系内をイオン交換水で満たした。反応器を電気炉に入れ、反応温度260℃、内圧20MPaを保つように圧力調整弁で調節しながら20分反応させた。なお、このときの加水比(イオン交換水/濾残)は、5に設定した。
【0217】
反応器を室温まで放冷した後、反応液の一部を採取して、HPLCにて定量したところ、ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)の回収率は99モル%であった。また、分解ジアミノトルエンの異性体比は、2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン=95/5(モル比)であった。
【0218】
実施例1
第1ジアミノトルエン(2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン=80/20(モル比))100gと、第2ジアミノトルエンとして、製造例1で得られた分解ジアミノトルエン(2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン=95/5(モル比))21gとを混合し、混合ジアミノトルエンを得た(混合工程)。
【0219】
得られた混合ジアミノトルエンの異性体比は、2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン=82.6/17.4(モル比)であった。
【0220】
第1ジアミノトルエンに代えて、混合ジアミノトルエンを用いた以外は、製造例1と同様にして、トリレンジカルバメートを得た。なお、2,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(2,4−トリレンジカルバメート)および2,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(2,6−トリレンジカルバメート)の総量として、トリレンジカルバメートが、収率95モル%で得られたことが確認された。
【0221】
また、得られたトリレンジカルバメートを用いた以外は、製造例1と同様にして、軽沸分を減圧留去し、得られた濃縮液を熱分解して、トリレンジイソシアネートを得るとともに、濾残を得た。
【0222】
得られたトリレンジイソシアネートの収率は、HPLCにて定量したところ、混合ジアミノトルエン中の第1ジアミノトルエンを基準として、94.4モル%であった。また、その異性体比は、2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート=79/21(モル比)であった。
【0223】
また、製造例1と同様にして、上記で得られた濾残を加水分解し、反応液を得た。
【0224】
反応液の一部を採取して、HPLCにて定量したところ、ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)の回収率は99モル%であった。また、分解ジアミノトルエンの異性体比は、2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン=95/5(モル比)であった。
【0225】
実施例2
第1ジアミノトルエン100gに対して、製造例1で得られた分解ジアミノトルエン(第2ジアミノトルエン)27gを配合した以外は、実施例1と同様にして、トリレンジカルバメートを得た。なお、2,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(2,4−トリレンジカルバメート)および2,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(2,6−トリレンジカルバメート)の総量として、トリレンジカルバメートが、収率95モル%で得られたことが確認された。
【0226】
なお、混合ジアミノトルエンの異性体比は、2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン=83.2/16.8(モル比)であった。
【0227】
また、得られたトリレンジカルバメートを用いた以外は、実施例1と同様にして、軽沸分を減圧留去し、得られた濃縮液を熱分解して、トリレンジイソシアネートを得るとともに、濾残を得た。
【0228】
得られたトリレンジイソシアネートの収率は、HPLCにて定量したところ、混合ジアミノトルエン中の第1ジアミノトルエンを基準として、99.1モル%であった。また、その異性体比は、2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート=80/20(モル比)であった。
【0229】
また、実施例1と同様にして、上記で得られた濾残を加水分解し、反応液を得た。
【0230】
反応液の一部を採取して、HPLCにて定量したところ、ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)の回収率は99モル%であった。また、分解ジアミノトルエンの異性体比は、2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン=95/5(モル比)であった。
【0231】
製造例2
カルバメート化反応における反応時間を10時間とした以外は、製造例1と同様にして、トリレンジカルバメートを得た。なお、2,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(2,4−トリレンジカルバメート)および2,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(2,6−トリレンジカルバメート)の総量として、トリレンジカルバメートが、収率98モル%で得られたことが確認された。
【0232】
また、得られたトリレンジカルバメートを用いた以外は、製造例1と同様にして、軽沸分を減圧留去し、得られた濃縮液を熱分解して、トリレンジイソシアネートを得るとともに、濾残を得た。
【0233】
得られたトリレンジイソシアネートの収率は、HPLCにて定量したところ、88.0モル%であった。また、その異性体比は、2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート=78/22(モル比)であった。
【0234】
また、製造例1と同様にして、上記で得られた濾残を加水分解し、反応液を得た。
【0235】
反応液の一部を採取して、HPLCにて定量したところ、ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)の回収率は99モル%であった。また、分解ジアミノトルエンの異性体比は、2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン=95/5(モル比)であった。
【0236】
実施例3
カルバメート化反応における反応時間を10時間とし、また、混合工程において、第1ジアミノトルエン100gに対して、製造例2で得られた分解ジアミノトルエン(第2ジアミノトルエン)8gを配合した以外は、実施例1と同様にして、トリレンジカルバメートを得た。なお、2,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(2,4−トリレンジカルバメート)および2,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(2,6−トリレンジカルバメート)の総量として、トリレンジカルバメートが、収率98モル%で得られたことが確認された。
【0237】
なお、混合ジアミノトルエンの異性体比は、2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン=81.1/18.9(モル比)であった。
【0238】
また、得られたトリレンジカルバメートを用いた以外は、実施例1と同様にして、軽沸分を減圧留去し、得られた濃縮液を熱分解して、トリレンジイソシアネートを得るとともに、濾残を得た。
【0239】
得られたトリレンジイソシアネートの収率は、HPLCにて定量したところ、混合ジアミノトルエン中の第1ジアミノトルエンを基準として、95.0モル%であった。また、その異性体比は、2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート=79/21(モル比)であった。
【0240】
また、実施例1と同様にして、上記で得られた濾残を加水分解し、反応液を得た。
【0241】
反応液の一部を採取して、HPLCにて定量したところ、ジアミノトルエン(分解ジアミノトルエン)の回収率は99モル%であった。また、分解ジアミノトルエンの異性体比は、2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン=95/5(モル比)であった。
【符号の説明】
【0242】
1 プラント
2 反応装置
3 軽沸留去装置
4 熱分解装置
5 加水分解装置
6 精製装置
7 蒸留装置
35 混合装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートを目標異性体比で含むトリレンジイソシアネートの製造方法であって、
2,4−ジアミノトルエンおよび2,6−ジアミノトルエンを第1異性体比で含有する第1ジアミノトルエンと、2,4−ジアミノトルエンおよび/または2,6−ジアミノトルエンを前記第1異性体比とは異なる第2異性体比で含有する第2ジアミノトルエンとを混合し、混合ジアミノトルエンを調製する混合工程、
前記混合ジアミノトルエンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により、トリレンジカルバメートを製造するカルバメート製造工程、および、
前記トリレンジカルバメートを熱分解する熱分解工程
を備えることを特徴とする、トリレンジイソシアネートの製造方法。
【請求項2】
前記第1異性体比が、2,4−ジアミノトルエン/2,6−ジアミノトルエン(モル比)=79〜81/21〜19であり、
前記第2異性体比において、2,4−ジアミノトルエンの比率が、前記第1異性体比における2,4−ジアミノトルエンの比率より高く、
前記混合工程において、前記第1ジアミノトルエン100質量部に対して、前記第2ジアミノトルエンを、1〜30質量部混合することを特徴とする、請求項1に記載のトリレンジイソシアネートの製造方法。
【請求項3】
前記熱分解工程において、トリレンジカルバメートの熱分解反応により得られる分解液から、トリレンジイソシアネートおよびアルコールを分離したイソシアネート残渣を、高圧高温水に接触させ、分解することにより、前記第2ジアミノトルエンを製造することを特徴とする、請求項1または2に記載のトリレンジイソシアネートの製造方法。

【図1】
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