説明

トルクリミッタ

【課題】永久磁石とヒステリシス材との寸法を変えることなく、両者間により大きなトルクを発生させることが可能なトルクリミッタを提供する。
【解決手段】トルクリミッタ10は、円筒状外周部を有する第1回転体11と、円筒状外周部に対向する円筒状内周部を有し、第1回転体と同軸状で互いに対して相対的に回転可能に設けられた第2回転体20とからなり、第1回転体11の円筒状外周部には永久磁石13が、第2回転体20の円筒状内周部にはヒステリシス材23が設けられる。永久磁石13とヒステリシス材23との間には磁性粉25が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば複写機やプリンター、ファクシミリ等の給紙分離装置や、ドアのダンパ等に用いられるトルクリミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクリミッタは、相互に対向する永久磁石とヒステリシス材とから構成されている。従来のトルクリミッタにおいては、永久磁石とヒステリシス材とのギャップおよび対向面積は、トルクリミッタの組立時に決まってしまっていた。
【0003】
このような問題点に対処して発生トルクを変更可能なトルクリミッタが、たとえば、特開2006−017141号公報(特許文献1)に開示されている。同公報によれば、磁石とヒステリシス材との対向面積を変えることによって発生トルクを変更している。
【特許文献1】特開2006−017141号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトルクリミッタは上記のように構成されていた。通常のトルクリミッタでは、永久磁石とヒステリシス材との間のエアギャップにヒステリシストルクが発生し、一定のトルク値が得られていた。このように、永久磁石とヒステリシス材との寸法が同一であれば、発生トルクは一定であり同一寸法で、より大きなシストルクを得るには限度があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、永久磁石とヒステリシス材との寸法を変えることなく、両者間により大きなトルクを発生させることが可能なトルクリミッタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る、トルクリミッタは、円筒状外周部を有する第1回転体と、円筒状外周部に対向する円筒状内周部を有し、第1回転体と同軸状で互いに対して相対的に回転可能に設けられた第2回転体とからなり、第1回転体の円筒状外周部および第2回転体の円筒状内周部のいずれか一方には永久磁石が、いずれか他方にはヒステリシス材が設けられる。トルクリミッタは、第1回転体の外周部と第2回転体の内周部との間に摩擦力を発生させる摩擦力発生部材を含む。
【0007】
トルクリミッタは、永久磁石とヒステリシス材とから発生するヒステリシストルクだけでなく、両者間には摩擦力も発生するため、両者間により大きなトルクを発生させることが可能なトルクリミッタを提供できる。
【0008】
好ましくは、摩擦力発生部材は、磁性粉である。
【0009】
永久磁石は、軸方向に隣接して設けられ、相互に異なる極性を有する部分に分割されているのが好ましい。この分割された部分は複数の永久磁石で形成されてもよいし、1つの磁石をそのように着磁してもよい。
【0010】
また、永久磁石は、円周方向に相互に異なる磁極が隣接するように分割されているのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1はこの発明の一実施の形態に係るトルクリミッタ10を示す要部断面図である。図1を参照して、トルクリミッタ10は、図示のない駆動用のシャフトに止めネジ(図示なし)を介して一体的に回転するようにされた、円筒状外周部を有する第1回転体11と、第1回転体11の円筒外周部に対向する円筒状内周部を有する第2回転体20とを含む。
【0012】
第1回転体11は、合成樹脂円筒体12と、合成樹脂円筒体12の外周部に接着により設けられた円筒状の永久磁石13とを含む。永久磁石13は、第1回転体11の軸方向に
第1永久磁石13aと第2永久磁石13bとが設けられている。第1永久磁石13aと第2永久磁石13bの磁力は等しく、軸方向の長さも等しいのが好ましい。
【0013】
第2回転体20は、キャップ21とキャップ21に対して溶着で固定されたケース22とを含む。キャップ21とケース22とは、第1回転体11と、軸摺動部11a、11bで摺動する。キャップ21とケース22の内周面には、円筒状の永久磁石13の外周部に対向する円筒体であるヒステリシス材(半硬質磁石)23が設けられている。ヒステリシス材23の軸方向の長さは、第1永久磁石13aと第2永久磁石13bとの長さの和に等しい。この実施の形態においては、永久磁石13とヒステリシス材23との間の隙間24には、摩擦力発生部材として磁性粉25を封入している。
【0014】
したがって、この実施の形態に係るトルクリミッタ10においては、永久磁石13とヒステリシス材23との間には、ヒステリシストルクに加えて、ヒステリシス材23と磁性粉25の間の摩擦力を利用することができる。したがって、同一寸法で高トルクを発生させることができる。
【0015】
図2は、図1に示したトルクリミッタ10の要部を示す拡大図であり、永久磁石13の円周部の詳細を示す。図2を参照して、軸方向に2分割された第1永久磁石13aと第2永久磁石13bとは、それぞれ円周方向に隣接するする部分が異なる磁極を有するように着磁されている。すなわち、たとえば、図中、右上がりの斜線で示した部分は、N極であり、左上がりの斜線で示した部分はS極である。
【0016】
磁性粉25は、図1および図2に示すように、磁極が軸方向に変化する位置に集中するので、磁性粉25が外部に漏れるのを防止することが可能である。
【0017】
なお、上記実施の形態においては、別体の永久磁石に対してそれぞれ周方向に着磁したものを軸方向にN極とS極が、互いに対向するように配置したが、同一の永久磁石に周方向および軸方向に着磁してもよい。
【0018】
また、上記実施の形態においては、軸方向に分離された第1永久磁石13aと第2永久磁石13bとは、それぞれ円周方向にも複数の磁極に着磁されている場合について説明したが、これに限らず、円周方向には異なる磁極に着磁されていなくてもよい。
【0019】
また、上記実施の形態においては、永久磁石13が軸方向に2分割されている場合について説明したが、これに限らず、軸方向に3分割、4分割等に分割されていてもよい。この場合も相互に軸方向に隣接している部分の極性は異なるものとする。
【0020】
また、磁極が軸方向に変化する位置は用途に応じて任意に変更してもよい。この場合も、磁性粉25は磁極が対向している位置に吸着されるので、特別な構造を用いなくても磁性粉25が外部に漏れるのを防止できる。
【0021】
また、上記実施の形態においては、永久磁石を第1回転体に取り付け、ヒステリシス材を第2回転体に取り付けた場合について説明したが、これを逆にしてもよい。
【0022】
また、上記実施の形態においては、摩擦力発生部材として磁性粉を例に上げて説明したが、これ以外のものであっても、永久磁石またはヒステリシス材との間で摩擦力を生じるものであれば、任意のものが使用できる。
【0023】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明に係るトルクリミッタは、発生するトルクを増大させることが可能であるため、トルクリミッタとして有利に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施の形態に係るトルクリミッタの断面図である。
【図2】図1に示したトルクリミッタの要部を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
10 トルクリミッタ、11 第1回転体、12 合成樹脂円筒体、13 永久磁石、20 第2回転体、21 キャップ、22 ケース、23 ヒステリシス材、24 隙間、25 磁性粉。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状外周部を有する第1回転体と、前記円筒状外周部に対向する円筒状内周部を有し、前記第1回転体と同軸状で互いに対して相対的に回転可能に設けられた第2回転体とからなり、前記第1回転体の円筒状外周部および前記第2回転体の円筒状内周部のいずれか一方には永久磁石が、いずれか他方にはヒステリシス材が設けられるトルクリミッタであって、
前記第1回転体の外周部と前記第2回転体の内周部との間に摩擦力を発生させる摩擦力発生部材を封入した、トルクリミッタ。
【請求項2】
前記摩擦力発生部材は、磁性粉である、請求項1に記載のトルクリミッタ。
【請求項3】
前記永久磁石は、軸方向に隣接して設けられ、相互に異なる極性を有する部分に分割されている、請求項1または2に記載のトルクリミッタ。
【請求項4】
前記永久磁石は、円周方向に相互に異なる磁極が隣接するように分割されている、請求項1から3のいずれかに記載のトルクリミッタ。
【請求項5】
前記軸方向に隣接して設けられ、相互に異なる極性を有する部分は異なる複数の永久磁石を含む、請求項3に記載のトルクリミッタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−240805(P2008−240805A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79504(P2007−79504)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)