説明

トレッドゴム組成物

【目的】 本発明は、タイヤ耐摩耗性を大巾に低下させることなく、タイヤのRRを低減させ得るトレッドゴム組成物を提供することを目的とする。
【構成】本発明のトレッドゴム組成物は、ゴムにカーボンブラック、シリカ及びシランカップリング剤が配合されたトレッドゴム組成物であって、カーボンブラックとシリカの配合比(重量)が前者に対して後者が1以上5以下であり且つカーボンブラック及びシリカの合計量がゴム100重量部当り20〜60重量部であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トレッドゴム組成物に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】電気自動車は、バッテリー積載の為に重量が増大し、それ故特にローリングレジスタンス(RR)が低減されたタイヤの開発が要求されている。タイヤのRRを低減させるには、トレッドゴムのヒステリシスロスを少なくさせることが有効であることはよく知られた事実である。
【0003】また、従来からゴム補強材としてカーボンブラックはゴム補強性が大きい為に、主としてカーボンブラック単味で使用されている。しかしながら、トレッドゴム等の耐摩耗性を要するゴムに耐摩耗性向上のためにカーボンブラックを増量していくと、ゴムのヒステリシスロスが大きくなるという欠点が生ずるのを避け得なくなる。そのためゴムのヒステリシスロスを少なくする方法として、例えばカーボンブラックの配合量を少なくする方法、用いるカーボンブラックのグレードを下げる方法等が検討されている。しかしながら、これらの方法によれば、タイヤの耐摩耗性が低下するのを避け得なくなる。
【0004】このように従来の方法では、タイヤのRRを低減させ、しかもタイヤに優れた耐摩耗性を付与し得るトレッドゴム組成物は、未だ開発されていないのが現状である。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、タイヤの耐摩耗性を大巾に低下させることなく、タイヤのRRを低減させ得るトレッドゴム組成物を提供することにある。
【0006】本発明者らは、上記要望に合致したトレッドゴム組成物を開発すべく鋭意研究を重ねて来た。その結果、ゴムにカーボンブラックと共にシリカ及びシランカップリング剤を配合し、しかもカーボンブラックとシリカとを特定の割合で配合した場合に本発明の所期の目的を達成し得ることを見い出した。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
【0007】即ち、本発明は、ゴムにカーボンブラック、シリカ及びシランカップリング剤が配合されたトレッドゴム組成物であって、カーボンブラックとシリカの配合比(重量)が前者に対して後者が1以上5以下であり且つカーボンブラック及びシリカの合計量がゴム100重量部当り20〜60重量部であることを特徴とするトレッドゴム組成物に係る。
【0008】本発明で用いられるゴムとしては、特に限定されず、従来公知のものを広く使用でき、例えば天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等の合成ゴム等が挙げられる。これらゴムは、1種単独で又は2種以上混合して使用され得る。
【0009】本発明で用いられるカーボンブラックとしては、特に制限がなく、従来公知のものを広く使用できる。本発明では、ASTM D2414に準拠して求めたカーボンブラック100g当りのジブチルフタレート吸油量(cm3 )の数値DBPとASTM D3765に準拠してセチルトリメチルアンモニウムブロマイドの吸油量より求めたカーボンブラック1g当りの比表面積(m2 )の数値CTABとの合計値が150〜230であるカーボンブラックを使用するのが望ましく、具体的にはISAF、HAF、FEF等を例示できる。
【0010】本発明で用いられるシリカとしては、特に制限がなく、従来公知のものを広く使用でき、例えば乾式法による無水珪酸、湿式法による含水珪酸、合成珪酸塩等が挙げられる。
【0011】本発明では、カーボンブラックとシリカの配合比(重量)が前者に対して後者が1以上5以下であり且つカーボンブラック及びシリカの合計量がゴム100重量部当り20〜60重量部、好ましくは30〜50重量部となるように両者を配合することが重要である。カーボンブラックとシリカの配合比が1より小さくなると、タイヤのRRが高くなるという不都合が生じ、逆に該配合比が5より大きくなると、タイヤの耐摩耗性が大巾に低下するという不都合が生じる。またカーボンブラック及びシリカの合計量が60重量部より多くなると、タイヤのRRが高くなるという不都合が生じ、逆に20重量部より少なくなると、タイヤの耐摩耗性が大巾に低下するという不都合が生じる。
【0012】本発明においては、シランカップリング剤を配合するのが望ましい。シランカップリング剤としては、従来公知のものを広く使用でき、例えばビス(トリエトキシリルプロピル)テトラスルフィド、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらシランカップリング剤の配合量は、通常シリカ100重量部当り3〜20重量部程度、好ましくは10重量部程度とするのがよい。シランカップリング剤の配合量が3重量部未満であると、得られるタイヤのRRが高く且つ耐摩耗性が低下する傾向となり、またシランカップリング剤の配合量が20重量部を超えると、コストが高くなり不経済となるので、望ましくない。
【0013】また、硫黄の配合量としては、使用中の架橋密度を過度に増加させないため、ゴム100重量部当り1.5〜2.5重量部程度配合するのが好ましい。
【0014】本発明の組成物には、上記成分以外に公知の加硫剤、加硫促進剤、軟化剤、老化防止剤等が配合され、更に必要に応じて加硫遅延剤、粘着付与剤等が配合され得る。
【0015】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明をより一層明らかにする。
【0016】実施例1〜7及び比較例1〜5下記表1に示す配合で各トレッドゴム組成物を得た。RRの代用特性として、JIS K6301に従い各トレッドゴム組成物の反発弾性を測定し、比較例1の組成物の反発弾性を100として指数で示した。反発弾性の数値が大きい程、RRが小さく良好であることを示している。また、通常の方法に従って700R15−10PRのタイヤを試作し、2万km走行後の摩耗量を求め、その逆数を比較例1の組成で得られたタイヤの摩耗量を100として指数で示した。実走摩耗の数値が大きい程、耐摩耗性が良好である。これらの結果を下記表1に併せて示す。
【0017】尚、表1中、天然ゴムは、RSS#3である。シランカップリング剤は、ビス(トリエトキシリルプロピル)テストスルフィドである。老化防止剤は、2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノリンである。加硫促進剤は、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアマイドである。
【0018】
【表1】


【0019】表1から明らかなように、本発明のトレッドゴム組成物を使用すると、耐摩耗性が大巾に低下せず、RRが低減されたタイヤを得ることができる。比較例1は、シリカが配合されていない例である。比較例2は、カーボンブラックとシリカとの合計量がゴム100重量部当り20重量部を下回る例であるが、この場合には耐摩耗性が大巾に低下する。比較例3は、カーボンブラックとシリカの配合比が1より小さい例であるが、この場合にはRRの改善効果が少ない。比較例4は、カーボンブラックとシリカとの合計量がゴム100重量部当り60重量部を上回る例であるが、この場合にはRRが極端に悪くなる。比較例5は、カーボンブラックとシリカの配合比が5より大きい例であるが、この場合には耐摩耗性が大巾に低下する。
【0020】
【発明の効果】本発明のトレッドゴム組成物は、タイヤ耐摩耗性を大巾に低下させることなく、タイヤのRRを低減させ得るものである。従って、本発明のトレッドゴム組成物を用いて作成されたタイヤは特に電気自動車に好適に使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ゴムにカーボンブラック、シリカ及びシランカップリング剤が配合されたトレッドゴム組成物であって、カーボンブラックとシリカの配合比(重量)が前者に対して後者が1以上5以下であり且つカーボンブラック及びシリカの合計量がゴム100重量部当り20〜60重量部であることを特徴とするトレッドゴム組成物。
【請求項2】 シランカップリング剤の配合量がシリカ100重量部当り3〜20重量部である請求項1記載のトレッドゴム組成物。