説明

トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低燃費性、グリップ性能、耐摩耗性をバランスよく改善できるトレッド用ゴム組成物、及び該トレッド用ゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】特定の化合物により変性されたジエン系重合体を含むゴム成分と、シリカと、特定のシランカップリング剤と、平均一次粒子径が200nm以下の微粒子酸化亜鉛とを含むトレッド用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤの転がり抵抗を低減することにより(転がり抵抗性能の向上)、車の低燃費化が行われてきた。近年、車の低燃費化への要求はますます強くなってきており、タイヤ部材の中でもタイヤにおける占有比率の高いトレッドを製造するためのゴム組成物に対して、優れた低発熱性が要求されている。
【0003】
ゴム組成物において低発熱性を満足させる方法として、シリカやカーボンブラックなどの補強用充填剤の含有量を減量する方法が知られている。しかし、この場合、ゴム組成物の補強性、グリップ性能、耐摩耗性が低下するという問題があった。
【0004】
特許文献1には、メルカプト基を有するシランカップリング剤を配合することにより、加工性、作業性、低燃費性を向上できることが開示されている。しかし、低燃費性、グリップ性能、耐摩耗性のバランスについては改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−126907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、グリップ性能、耐摩耗性をバランスよく改善できるトレッド用ゴム組成物、及び該トレッド用ゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記式(1)で表される化合物により変性されたジエン系重合体を含むゴム成分と、シリカと、下記式(2)で表されるシランカップリング剤と、平均一次粒子径が200nm以下の微粒子酸化亜鉛とを含むトレッド用ゴム組成物に関する。
【化1】

(式(1)中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
【化2】

(式(2)中、Rは−O−(R10−O)−R11(m個のR10は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、Rと同一の基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基又は−O−R12(R12は水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。)
【0008】
上記トレッド用ゴム組成物は、下記式(3)で表される加硫促進剤を含むことが好ましい。
【化3】

(式(3)中、zは1〜8の整数を表す。)
【0009】
ゴム成分100質量部に対して、硫黄の含有量が0.1〜7質量部であることが好ましい。
【0010】
上記式(1)で表される化合物により変性されたジエン系重合体が変性スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、上記トレッド用ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定の化合物により変性されたジエン系重合体を含むゴム成分と、
シリカと、特定のシランカップリング剤と、微粒子酸化亜鉛とを含むトレッド用ゴム組成物であるので、低燃費性、グリップ性能、耐摩耗性をバランスよく改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、上記式(1)で表される化合物により変性されたジエン系重合体を含むゴム成分と、シリカと、上記式(2)で表されるシランカップリング剤と、平均一次粒子径が200nm以下の微粒子酸化亜鉛とを含む。上記変性ジエン系重合体、シランカップリング剤及び微粒子酸化亜鉛を組み合わせて使用しているため、単に変性ジエン系重合体にシランカップリング剤を添加する効果と微粒子酸化亜鉛を添加する効果だけでなく、これら3成分を組み合わせることによる相乗的な効果(特に耐摩耗性の改善効果)を得ることができる。従って、本発明では、低燃費性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性のバランス性能が非常に優れている。
【0014】
本発明では、ゴム成分として、下記式(1)で表される化合物により末端が変性されたジエン系重合体(変性ジエン系重合体)を含む。変性ジエン系重合体を含むことにより、ポリマー末端の動きを抑制し、低発熱性を得ることができる。
【化4】

(式(1)中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
【0015】
上記式(1)で表される化合物により変性されるジエン系重合体としては、特に限定されず、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系合成ゴムが挙げられる。なかでも、グリップ性能と低燃費性がバランスよく得られるという理由から、SBRが好ましい。変性スチレンブタジエンゴムなどの変性ジエン系重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
式(1)で表される化合物で変性された変性SBRとしては、特開2010−111753号公報、特開2010−111754号公報などに記載されているものが挙げられる。
【0017】
式(1)において、R、R及びRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)。R及びRとしてはアルキル基が好適である(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)。nは、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3である。好ましい化合物を使用することにより、低燃費性及びウェットグリップ性能をバランス良く改善でき、本発明の効果が良好に得られる。
【0018】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記変性SBRのビニル含量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。ビニル含量が90質量%を超えると、強度が悪化するおそれがある。該ビニル含量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。ビニル含量が20質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。
なお、本明細書において、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0020】
上記変性SBRのスチレン含量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。スチレン含量が50質量%を超えると、加工性が悪化するおそれがある。該スチレン含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。スチレン含量が5質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。
なお、スチレン含量は、H−NMR測定により算出される。
【0021】
ゴム成分100質量%中の変性ジエン系重合体の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。10質量%未満であると、グリップ性能が低下するおそれがある。該変性ジエン系重合体の含有量は、100質量%であってもよいが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。90質量%を超えると、低燃費性、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0022】
変性ジエン系重合体以外に本発明で使用できるゴム成分としては、特に限定されず、上記ジエン系合成ゴム、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ジエン系ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、低燃費性、グリップ性能、耐摩耗性がバランスよく得られるという理由から、BR、NR、SBRが好ましく、BR、NRがより好ましい。
【0023】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。なかでも、低燃費性、耐摩耗性が良好であるという理由から、BRのシス含量は90質量%以上が好ましい。
【0024】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。該含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。該含有量を上記範囲内とすることにより、耐摩耗性を飛躍的に改善できる。
【0025】
NRとしては、特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0026】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。該含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。該含有量を上記範囲内とすることにより、耐摩耗性を飛躍的に改善できる。
【0027】
本発明では、シリカが使用される。変性ジエン系重合体とともに、シリカを配合することにより、良好な低発熱性(低燃費性)及び高いゴム強度が得られる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0028】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、40m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましい。40m/g未満では、加硫後の破壊強度が低下する傾向がある。また、シリカのNSAは、250m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましい。250m/gを超えると、低燃費性、ゴムの加工性が低下する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0029】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。20質量部未満であると、シリカ配合による充分な効果が得られない傾向がある。該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。150質量部を超えると、シリカのゴムへの分散が困難になり、ゴムの加工性が悪化する傾向がある。
【0030】
本発明では、下記式(2)で表されるシランカップリング剤が使用される。該シランカップリング剤を配合することにより、低燃費性能、グリップ性能を改善できる。
【0031】
【化5】

【0032】
上記式(2)のRは−O−(R10−O)−R11(m個のR10は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。
【0033】
10の2価の炭化水素基としては、例えば、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基、炭素数6〜30のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、シリカと結合しやすく低燃費性を改善できるという点から、上記アルキレン基(炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜3)が好適である。
【0034】
10の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等が挙げられる。R10の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基等が挙げられる。R10の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基等が挙げられる。R10の炭素数6〜30のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0035】
上記mで表される整数は、好ましくは2〜20、より好ましくは3〜7である。
【0036】
11の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは2〜30、より好ましくは6〜30)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0037】
11の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。R11の炭素数6〜30のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。R11の炭素数7〜30のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0038】
上記式(2)のRの具体例としては、例えば、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1225、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1429、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327等が挙げられる。なかでも、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327が好ましい。
【0039】
及びRは、同一若しくは異なって、Rと同一の基(すなわち、−O−(R10−O)−R11で表される基)、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基又は−O−R12(R12は水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。なかでも、Rと同一の基、−O−R12(R12が分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基の場合)で表される基が好ましい。
【0040】
及びRの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。
【0041】
12の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基としては、例えば、上記R11の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。R12の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜5)のアルケニル基としては、例えば、上記R11の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。R12の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜12)のアリール基としては、例えば、上記R11の炭素数6〜30のアリール基と同様の基を挙げることができる。R12の炭素数7〜30(好ましくは炭素数7〜13)のアラルキル基としては、例えば、上記R11の炭素数7〜30のアラルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0042】
上記式(2)のR及びRの具体例としては、例えば、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1225、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1429、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、C−O−、CH−O−、C−O−等が挙げられる。なかでも、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327、C−O−が好ましい。
【0043】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5)のアルキレン基としては、例えば、上記R10の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基と同様の基を挙げることができる。
【0044】
上記式(2)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、エボニックデグッサ社製のSi363等を使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記式(2)で表されるシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは4質量部以上、より好ましくは8質量部以上である。4質量部未満では、破壊強度が大きく低下する傾向がある。該含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。15質量部を超えると、シランカップリング剤を添加することによる破壊強度の増加や転がり抵抗低減などの効果が得られない傾向がある。
【0046】
本発明では、カーボンブラックを配合してもよい。これにより、ゴムの強度を向上することができる。使用できるカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。
【0047】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は30m/g以上が好ましく、70m/g以上がより好ましい。30m/g未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、該NSAは250m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましい。250m/gを超えると、未加硫時の粘度が非常に高くなり、加工性が悪化する傾向、または、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217、7項のA法によって求められる。
【0048】
本発明のゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。5質量部未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、該カーボンブラックの含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。60質量部を超えると、発熱が大きくなり、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0049】
本発明では、特定の平均一次粒子径を有する微粒子酸化亜鉛が使用される。微粒子酸化亜鉛と、上記変性ジエン系重合体及び上記シランカップリング剤とを併用することにより、背反性能である低燃費性と耐摩耗性を同時に改善でき、良好なグリップ性能も得られる。
【0050】
微粒子酸化亜鉛の平均一次粒子径は、200nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは130nm以下である。酸化亜鉛の平均一次粒子径は、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上である。上記範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる。
なお、酸化亜鉛の平均一次粒子径は、窒素吸着によるBET法により測定した比表面積から換算された平均粒子径(平均一次粒子径)を表す。
【0051】
微粒子酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。該含有量を上記範囲内とすることにより、本発明の効果が良好に得られる。
【0052】
本発明では、下記式(3)で表される加硫促進剤を使用することが好ましい。これにより、メルカプト基を有するシランカップリング剤を使用した場合であっても、スコーチの発生を抑制でき、低燃費性、グリップ性能、耐摩耗性をバランスよく改善できる。
【0053】
【化6】

【0054】
上記式(3)のzは1〜8(好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3)の整数を表す。
【0055】
上記式(3)で表される加硫促進剤としては、大内新興化学工業(株)製のノクセラーTBzTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)などが挙げられる。
【0056】
上記式(3)で表される加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。0.1質量部未満では、加硫速度が遅く、充分な加硫速度が得られないおそれがある。また、上記含有量は、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下である。2.0質量部を超えると、スコーチしやすい傾向がある。
【0057】
本発明では、上記式(3)で表される加硫促進剤と共に、他の加硫促進剤を併用してもよい。併用できる他の加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、又は、キサンテート系加硫促進剤が挙げられる。なかでも、耐スコーチ性を保つことができるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0058】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)等が挙げられる。なかでも、汎用性が高いという理由から、TBBS、CBSが好ましい。ここで、スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.2〜3質量部であることが好ましい。
【0059】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、クレー、マイカ等の補強用充填剤、ステアリン酸、各種老化防止剤、アロマオイル等のオイル、ワックス、硫黄などの加硫剤などを適宜配合することができる。
【0060】
本発明では、通常硫黄が配合される。ここで、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上である。0.1質量部未満であると、ゴムの補強性が不充分となるおそれがある。硫黄の含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下である。7.0質量部を超えると、ゴムが硬くなり、グリップ性能が悪化する傾向がある。また、ゴムが脆くなる傾向となり、ゴム強度が低下する傾向がある。
【0061】
本発明では、オイルを配合してもよい。これにより、良好なグリップ性能が得られる。オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物を用いることができる。なかでも、加工性、耐摩耗性が比較的良好であるという点から、プロセスオイルが好ましく、パラフィン系プロセスオイルがより好ましい。ここで、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5〜40質量部が好ましい。
【0062】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0063】
本発明のゴム組成物は、タイヤのトレッドに好適に使用できる。トレッドは、単層構造でも、多層構造でもよい。多層構造のトレッドは、シート状にしたものを、所定の形状に張り合わせる方法や、2本以上の押出し機に装入して押出し機のヘッド出口で2層以上に形成する方法により作製することができる。
【0064】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【0065】
また、本発明のタイヤは、乗用車用タイヤ、二輪車用タイヤ等として好適に用いられる。
【実施例】
【0066】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0067】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
変性SBR:住友化学(株)製の変性スチレンブタジエンゴム(ビニル含量57質量%、スチレン含量25質量%、上記式(1)のR、R及びR=−OCH、R及びR=−CHCH、n=3)
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス1,4結合量97質量%)
NR:RSS#3
シリカ:ローディア社製のZ115Gr(NSA:112m/g)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のシーストN220(NSA:114m/g)
シランカップリング剤(1):エボニックデグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤(2):エボニックデグッサ社製のSi363(下記式で表されるシランカップリング剤(上記式(2)のR=−O−(C−O)−C1327、R=C−O−、R=−O−(C−O)−C1327、R=−C−))
【化7】

酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
微粒子酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製のジンコックスーパーF−2(平均一次粒子径:65nm)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「桐」
老化防止剤:フレキシス社製のサントフレックス13
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
プロセスオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスPS32
硫黄:軽井沢精錬所製の硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤D:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
加硫促進剤TBzTD:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTBzTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド、上記式(3)のz=2)
【0068】
実施例及び比較例
表1に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材とはりあわせ、150℃で35分間の条件下で加硫することにより、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を作製した。
得られた試験用タイヤについて下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(低燃費性指数)
転がり抵抗試験機を用いて、得られた試験用タイヤを、リム15×6JJ、タイヤ内圧230kPa、荷重3.43kNおよび速度80km/hの条件下で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例1の転がり抵抗指数を100とし、下記計算式により、各配合の転がり抵抗を指数表示した。なお、指数大きいほど、転がり抵抗が低減され、低燃費性に優れることを示す。
(低燃費性指数)=(比較例1の転がり抵抗)/(各配合の転がり抵抗)×100
【0070】
(ウェットグリップ性能指数)
1800cc級のABSが装備された乗用車に試験用タイヤを装着して、湿潤アスファルト路面(ウェット路面状態、スキッドナンバー約50)にて初速度100km/hからの制動距離を求めた。結果は比較例1の結果を100とし、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほどウェットグリップ性能が良好である。
ウェットグリップ性能指数=(比較例1の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
【0071】
(耐摩耗性指数)
試験用タイヤを実車走行させ、35000km走行後のパターン溝深さの変化を求め、比較例1を100としたときの指数で表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性が良好である。
【0072】
【表1】

【0073】
表1から、変性SBR、メルカプト基を有する特定のシランカップリング剤及び微粒子酸化亜鉛を組み合わせた実施例では、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性がバランスよく得られた。変性SBRに、微粒子酸化亜鉛のみを添加することによる改善効果に比べて、シランカップリング剤及び微粒子酸化亜鉛の両成分を添加することによる改善効果が大きく、特に耐摩耗性について顕著な改善効果が得られた(比較例7、実施例1など)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物により変性されたジエン系重合体を含むゴム成分と、
シリカと、
下記式(2)で表されるシランカップリング剤と、
平均一次粒子径が200nm以下の微粒子酸化亜鉛とを含むトレッド用ゴム組成物。
【化1】

(式(1)中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
【化2】

(式(2)中、Rは−O−(R10−O)−R11(m個のR10は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、Rと同一の基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基又は−O−R12(R12は水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
下記式(3)で表される加硫促進剤を含む請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
【化3】

(式(3)中、zは1〜8の整数を表す。)
【請求項3】
ゴム成分100質量部に対して、硫黄の含有量が0.1〜7質量部である請求項1又は2記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物により変性されたジエン系重合体が変性スチレンブタジエンゴムである請求項1〜3のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−72259(P2012−72259A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217645(P2010−217645)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】