説明

トレーニング及びフィットネス用装置

【課題】一般的なフィットネス又は護身トレーニング用の装置を備えた練習用装置を提供する。
【解決手段】装置10は、ベース部12と、該ベース部から上方に延びる第1の長尺部18及び第2の長尺部20を規定するように配置された手段と、目標部24において又は該目標部を用いて連結された第1の長尺部18及び第2の長尺部20とを有しており、ベース部12には、長尺部18、20を略直立状態に維持するように、長尺部18、20及び目標部24に対して、より重量が付与されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーニング及びフィットネス用装置、特に人体の特定領域に攻撃を加えるための技能訓練に用いる護身トレーニング用装置及び器具に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な練習及び器具が、フィットネスの一般的な改善及び/又は減量の支援や、各種スポーツ、特に物理的な接触を要する対人接触型のスポーツ、マーシャルアーツや護身術の分野において、技能及びテクニックの習得及び改善の支援に使用されている。
【0003】
特に、攻撃のテクニック、例えばキックやパンチを習得し、練習する場合に、攻撃の衝撃を吸収するように設計された器具を使用することが有利である。そのような器具は通常、重量をもったパンチバッグか又は第3者が装着し若しくは着用することができる防護用パッドの形態とされる。
【0004】
しかしながら、習得される技術は、実生活の状況をより現実的に模擬する環境で練習するのが望ましい場合が多い。このために、様々なダミーやマネキンが開発されており、これらは人体の部分又は全身を真似たものであり、これにより他人に危害を与える虞れなしに護身術を練習し、改善することができる。
【0005】
例えば、特許文献1にはキックボクシングの練習用装置が記載されており、該装置は、目標部、つまり人体の頭部、頸、胴体の外観をもった目標部を支持する重いベースユニットを含む。
【0006】
このような既知の装置は全て、マーシャルアーツやボクシングのトレーニングで主として使用するために設計され、頭部や胴体への攻撃に重点を置いている。しかし、護身トレーニング、特に婦女子のための基本的な護身トレーニングには、スポーツや競い合うマーシャルアーツにおいて許可されていない攻撃が幾つか含まれる。その一例は、攻撃者の鼠蹊部に対するキックや上方への膝の素早い動きといった形態での攻撃を含む護身術である。
【0007】
特許文献2は、空手などにおける護身トレーニングで使用する装置を開示しており、人体のように関節をもつトレーニング用ダミーを含み、これは柱に直立状態に支持され、かつ鼠蹊部を含めた、ダミーの各目標部位に配置された複数の別個の圧力レセプタ(受け部)を有する。この種の装置の不利な点は、装置の重量分布と、鼠蹊部に対するキック攻撃を困難にする支柱の位置である。
【特許文献1】米国特許第6,110,079号明細書
【特許文献2】米国特許第4,088,315号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した既知の装置及び従来のトレーニング法を超える利点を有する練習用装置を提供しようとするものである。
【0009】
特に、本発明は護身術をより有効に練習し、訓練することができる練習用装置の提供を目的としており、護身術には特に、男性の身体の鼠蹊部に対する攻撃を含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、少なくとも一つのベース部と、該ベース部から上方に延びる第1の長尺部及び第2の長尺部を規定するように配置された手段と、目標部において又は該目標部により連結された前記第1の長尺部及び第2の長尺部とを備え、前記ベース部には、前記長尺部を略直立状態に維持すべく前記長尺部及び目標部に対して、より重量が付与された、練習用装置が提供される。
【0011】
有利には、前記ベース部がほぼ凸状の下面を有することにより、装置が、使用時に攻撃を受けた後で略直立状態に自ずと復帰することになる。
【0012】
好ましくは、装置は、ほぼ凸状の下面と、ベース部から上方に延びる前記第1の長尺部を規定するように配置された手段とを有する第1のベース部と、ほぼ凸状の下面と、ベース部から上方に延びる前記第2の長尺部を規定するように配置された手段とを有する第2のベース部とを備えた、第1及び第2のベース部材を有している。2つのベース部、つまり各長尺部に対して1つずつベース部を有することは、攻撃する使用者の足と目標部との間の経路を遮るものが何もないことを意味する。
【0013】
有利には、装置の重心が第1又は第2のベース部のうちの少なくとも一方の上面の下方とされる。
【0014】
好ましい実施形態では、第1の長尺部が人体の第1の脚の外観をもつ形状とされ、かつ第2の長尺部が人体の第2の脚の外観をもつ形状とされる。
【0015】
練習用装置がフィットネス練習ルーチン用の装置又は護身術練習用の装置を成すように適合し得ることは容易に理解される。
【0016】
前記目標部は人体の鼠蹊部の外観をもつ形状にすることが好ましい。
【0017】
装置をさらに人体らしく見せるためには、前記目標部が第3の部分、つまり人間の胴体の一部又は全部の外観をもつ形状とされた部分を含むことが好ましい。
【0018】
有利には、第1のベース部及び第2のベース部が互いに移動可能であって、好ましくは装置の収納のために互いに近づく方向に移動する構成とする。第1のベース部及び第2のベース部が前記目標部を中心として回動する構成とすることが好ましい。
【0019】
第1のベース部及び第2のベース部は、中実の重量付与のための材料で形成することができるが、好ましくはこれらのベース部が中空とされ、重量付与のための量の材料を受け入れる構成とする。
【0020】
非使用時に装置サイズを最小にするため、前記第3の部分は膨張可能であることが好ましい。
【0021】
また第1の長尺部及び第2の長尺部を膨張可能としてもよく、あるいはこれらを中実とするか、又は中空にして重量付与のための材料を収容する構成にすることができる。
【0022】
装置全体を膨張可能にするか、あるいは全装置を中実にしてもよい。
【0023】
有利には、装置が平均的な成人男性の体重未満の重量を有する。
【0024】
一実施形態において、第1の長尺部及び第2の長尺部は、前記目標部への攻撃に応答して装置が地面から跳ね上がるようにするための手段、例えば、第1の長尺部及び第2の長尺部におけるコイルスプリングを備えることが好ましい。
【0025】
鼠蹊の目標部に加えて、装置はまた、喉元の目標部を含んでもよい。
【0026】
好ましくは、目標部だけがパッドで覆われる。
【0027】
また、頭部には少なくとも、一対の眼のような顔の特徴部を設けることができる。
【0028】
本発明について以下では、添付図面を参照しながら一例を挙げて詳説する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
理解されるように本発明は練習用装置を提供し、以下に説明する実施形態では、攻撃者、特に男性の攻撃者から身を守るために通常用いるテクニックの訓練を支援する機能をもった、護身トレーニングの練習用装置を提供する。
【0030】
本発明は特に、人体部位への攻撃、つまりマーシャルアーツでは伝統的に許されていない鼠蹊部への攻撃ではあるが基本的な自己防御の範囲でその有効性が通常教えられる技術のトレーニングに焦点をおいて装置を専用に設計する場合に有益である。
【0031】
本明細書で説明する図は、本発明に係る護身トレーニング用装置について特定の実施形態を示すものである。しかし、本発明は、ここで説明する実施形態に限定されないことが明らかであり、その理由は、本発明が各種の適切な材料から作製できることや、固体の重量物又はその他のものを選択して取り付けるための様々な重量付加手段を含めることができるとともに、ほぼ長尺状の形状部を、中央部に対して適切な角度で延びる延長部分に設けることができるからである。
【0032】
(第1の実施形態)
図1を参照すると、トレーニング用装置10は、好ましくはダミー又はマネキンの形態とされ、成人男性の身体の全部、又は少なくとも下半身の外観を呈する。
【0033】
装置10はベース部12を備え、該ベース部は下面14及び上面16を有する。第1の長尺部18及び第2の長尺部20は、上面16から延びている。第1及び第2の長尺部18、20は、人体の脚に似た形状を有することが好ましい。第1及び第2の長尺部18、20は第3の部分22、本例では胴体、頭部及び腕を含む完全な上半身の形状をもつ。また第3の部分22には目標領域24が設けられており、これはダミーの鼠蹊部の領域に位置している。目標領域24は通常、装置10の他の領域における材料に比して柔らかい材料から形成されており、これは使用者の使い心地を良くするためである。
【0034】
通常は別に教えられる、攻撃者の気管への基本的な自己防御のための攻撃に関するトレーニング及び練習を支援するために、装置10の首領域には、さらに別の目標領域を設けてもよい。
【0035】
本実施形態では、第3の部分22が胴体、頭部及び腕を備えているが、第3の部分22の本質的特徴は勿論、人体の鼠蹊部を表す目標領域24である。
【0036】
装置10は自立するように構成される。ベース部12は装置10が使用時にほぼ直立した状態を保つように重量配分がなされている。該ベース部12は中実とされ、任意の適切な材料、例えば木材や金属で形成することができる。これに代えて、ベース部12を中空とし、充分な重量をもつ流体又は固体、例えば水や砂を収容する構成にしてもよい。
【0037】
ベース部12の下面14は、凸状の丸みを帯びた面からなる。この形状は、装置10をその通常の状態、つまり使用者によって押され又は攻撃された後で垂直状態へと自動的に戻すことができるという点で有利であり、その前提として、ベース部12には装置の重心をベース部12の上部に維持するように、より大きな重量が与えられている。図1の下面14は、その形状が半球状に示されているが、実際上、任意の丸い形状を用いることができる。
【0038】
装置10の重心は、使用時にベース部12の上面16の下方にあることが望ましい。この特徴は、ベース部12の下面14の丸い、つまり球面状の凸形状を加味した場合に、有利には装置10が自ら直立することのみならず、装置10にかかる力とは無関係に直立状態へと常に復帰することを意味する。
【0039】
(第2の実施形態)
図2は本発明の第2の実施形態を示しており、装置は、単一のベース部ではなく2つの別個のベース部26、32を備える。装置10は、下面28及び上面30を有する第1のベース部26と、下面34及び上面36を有する第2のベース部32を備えている。第1の長尺部18は第1のベース26部の上面30から延び、また第2の長尺部20は第2のベース部32の上面36から延びている。
【0040】
本発明は、これまでの既知の装置に比べて、人体の鼠蹊部への攻撃に関して、より現実的な経験を提供するように設計される。この点において、装置の使用時には、ベース部26、32が互いに離間した距離をもって位置し、この距離は、直立した状態での典型的な人の脚の間隔に近似している。これにより、使用者は、ベース部26、32によって妨げられることなく、脚を表す長尺部18、20との間に足を上げることができる。好ましくは、ベース部26、32との間の距離、従って長尺部18、20との間になす角度を調節して、使用者の足で目標24を攻撃する際の難易度を変更できるようにすることが好ましい。また、第1のベース部26及び第2のベース部32は、装置10の収納のために互いに近接して配置できるようにすることが好ましい。
【0041】
(第3の実施形態)
図3は本発明の第3の実施形態を示しており、図2の下半身の部分と同じ特徴を有する。本例では、第3の部分22が目標領域24のみを備える。これは、より簡単に収納できるように装置10の物理的なサイズを小さくするのに有利であり、また、製造においてより少ない材料を使用すれば済むため、より安価である。
【0042】
(第4の実施形態)
図4は本発明に係る膨張可能な装置10を示す。主要な構成要素は図2に示したものと同じである。外観上の唯一の相違点は、脚を表す2つの長尺部18、20が、各々のベース部26、32の全面を覆っていることである。これは有利にも長尺部18、20の強度を増し、これらが膨張時に、望ましくない程に曲がらないよう防ぐ。
【0043】
本発明はまた、目標領域24への攻撃に応答して装置を自動的に動かすための1つ以上の手段を含む。装置10を自動的に動かすために必要な力は、任意の既知の駆動手段、例えば、ベース部12、26、32又は長尺部18、20における1つ以上の電気モータ又はコイルスプリングを使って生成できる。駆動手段は、目標領域24にあるセンサによって機械的又は電気的に始動させることができる。
【0044】
自己防御の練習用装置10は、任意の適切な材料、単一の成形材料又はその他の材料で形成することができる。有利には、装置は、従来のパンチバッグに使用される皮革又はカンバス材料によりその一部又は全体を形成することができる。装置10又は装置10の一部はまた、搬送や収納を容易にするために膨張可能にすることもでき、例えば、目標領域24を備える第3の部分22だけが膨張可能であるか、あるいは長尺部18、20もまた膨張可能にしてもよい。
【0045】
任意の適切な構造や四肢のサイズ及び形状を装置に与えてもよいことは勿論であり、本発明が前述した詳細部に限定される訳ではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る装置の一例を示す正面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る装置の一例を示す正面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る装置の一例を示す正面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る装置の一例を示す正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのベース部と、
前記ベース部から上方に延びる第1の長尺部及び第2の長尺部を規定するように配置された手段と、
目標部において又は該目標部により連結された前記第1の長尺部及び第2の長尺部とを備え、
前記ベース部には、前記長尺部を略直立状態に維持すべく前記長尺部及び目標部に対して、より大きな重量が付与されている、練習用装置。
【請求項2】
前記ベース部がほぼ凸状の下面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ほぼ凸状の下面と、ベース部から上方に延びる前記第1の長尺部を規定するように配置された手段とを有する第1のベース部と、
ほぼ凸状の下面と、ベース部から上方に延びる前記第2の長尺部を規定するように配置された手段とを有する第2のベース部とを備えた、第1及び第2のベース部材を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
重心が前記ベース部の上面の下方である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の長尺部が人体の第1の脚の外観をもつ形状とされ、かつ前記第2の長尺部が人体の第2の脚の外観をもつ形状とされた、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記目標部が人体の鼠蹊部の外観をもつ形状とされた、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記目標部が第3の部分を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
第3の部分が人間の胴体の一部又は全部の外観をもつ形状とされた、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1のベース部及び第2のベース部が互いに移動可能である、請求項3乃至8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のベース部及び第2のベース部が、装置の収納のために互いに近づく方向に移動するように構成された、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1のベース部及び第2のベース部が前記目標部を中心として回動するように構成された、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記ベース部が中空であって、重量付与のための材料を受け入れるように構成された、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記第3の部分が膨張可能である、請求項7乃至12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の長尺部及び第2の長尺部が剛体である、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の長尺部及び第2の長尺部が中空である、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の長尺部及び第2の長尺部が膨張可能である、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
平均的な成人男性の体重未満の全重量を有する、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記第1の長尺部及び第2の長尺部は、前記目標部への攻撃に応答して装置が地面から跳ね上がるようにするための手段を備える、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
装置が地面から跳ね上がるようにするための前記手段が、前記第1の長尺部及び第2の長尺部における1つ以上のコイルスプリングである、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
鼠蹊の目標部及び喉元の目標部を含む、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記目標部だけがパッドで覆われた、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
フィットネス練習用装置を備えた、請求項1乃至21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
護身トレーニング用装置を備えた、請求項1乃至21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
図1、2、3、4を参照して記載及び説明した練習用装置。

【公開番号】特開2009−34500(P2009−34500A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−182523(P2008−182523)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(508212060)エナネフ リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】ENANEF Limited
【住所又は居所原語表記】United Kingdom Surrey RH5 6JW,Dorking,Abinger Bottom,King George‘s Hill,Beechwood House