説明

トレーラ

【課題】多くの搬送物を積載する場合でも、搬送物を迅速に積み降ろすことが可能で、しかも作業者の負担を大幅に軽減することが可能なトレーラを提供する。
【解決手段】前輪49及び後輪51を有するとともに牽引車に連結可能なトレーラ本体40と、トレーラ本体40に設けられ汎用台車を載置可能な載置台41と、載置台41を、汎用台車の乗降に適した乗降可能位置、及び汎用台車の前輪を保持する保持位置、の間で変位可能に支持する支持手段を具備する。支持手段は、乗降可能位置では載置台41における少なくとも乗降側端部62を、走行床面に当接または近接させた状態とし、保持位置では乗降側端部62を、走行床面から上昇させた状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーラに関するものであり、特に、牽引車によって牽引され、組付部品等の搬送物を載置した状態で搬送するトレーラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば製品の組立工場においては、部品等の搬送物を夫々の現場間で搬送するために、無人搬送車による搬送システムが採用されている。このシステムでは、搬送経路に沿うように走行床面に誘導線が設けられており、無人搬送車は、この誘導線を検出しながら誘導線に沿って走行するように進行方向が制御されるようになっている。
【0003】
ところで、無人搬送車のみでは搬送物の積載量に限界がある。そこで、この無人搬送車を牽引車として利用し、一台または複数台のトレーラを牽引させることにより、多くの積載量を確保することも一般的に行われている。なお、複数台のトレーラを牽引させる場合、夫々のトレーラと各現場とを対応づけるようにすれば、予め指定されたトレーラに対して搬送物を積み降ろすことが可能となり、別の現場の部品を誤って降ろしてしまうこと、すなわち間違った場所に搬送されることが抑制される。
【0004】
【特許文献1】特開2003−011813号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、トレーラによって多くの搬送物を積載することが可能となった反面、各現場においては、トレーラに対する搬送物の積み降ろし作業に多くの時間と手間がかかるようになり、ひいては夫々の現場における無人搬送車の停止時間が一層長くなっていた。このため、各現場間で、搬送物を速やかに且つ円滑に搬送することが困難となり、生産性の低下が懸念されていた。また、搬送物の積載量が多い場合には、何度かに分けて積み降ろすこととなるが、この際、搬送物の積重ね順が変化したり、互いに異なる種類の搬送物が混ざり合ったりする虞もあった。さらに、トレーラにおける搬送物の載置面は、走行床面よりも高い位置にあることから、搬送物を積み込む際には搬送物を一旦持ち上げなければならず、これによれば、腰痛等の原因になるとともに、荷崩れ等に対する作業者の精神的な負担も大きくなっていた。
【0006】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、多くの搬送物を積載する場合でも、搬送物を迅速に積み降ろすことが可能で、しかも作業者の負担を大幅に軽減することが可能なトレーラの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるトレーラは、「車輪を有するとともに牽引車に連結可能なトレーラ本体と、
該トレーラ本体に設けられ汎用台車を載置可能な載置台と、
該載置台を、前記汎用台車の乗降に適した乗降可能位置、及び前記汎用台車の前輪または後輪の少なくとも一方を保持する保持位置、の間で変位可能に支持する支持手段と
を具備し、
前記支持手段は、前記乗降可能位置では前記載置台における少なくとも乗降側端部を、走行床面に当接または近接させた状態とし、前記保持位置では前記昇降側端部を、前記走行床面から上昇させた状態とする」ことを特徴とするものである。
【0008】
ここで、「牽引車」としては動力を有する無人搬送車を例示することができるが、動力を有さない場合もあり得る。例えば、複数台のトレーラを直列に連結する場合には、前側に連結されるトレーラが牽引車として機能することとなる。
【0009】
また、「トレーラ本体における車輪」の個数及び形態は特に限定されるものではないが、例えば、旋回可能な一つの前輪と、旋回することのない二つの後輪とから構成することができる。
【0010】
また、「汎用台車」とは、市販されている一般の台車であり、搬送物を載置させることが可能な載置板と、載置板の下面に回転可能に支持された前輪及び後輪と、載置板の一端側から立設された手押し用のフレームとを備える簡易台車を例示することができる。
【0011】
また、「載置台」は、汎用台車全体が載置されるものであってもよいが、汎用台車の一部のみ(具体的には前輪側のみ)が載置されるように構成してもよい。つまり、汎用台車には後輪が設けられているため、前輪側が載置台の上で保持されていれば、後輪を走行床面に当接させた状態でも、汎用台車を引き摺ることなく連れ回らせることが可能になる。
【0012】
また、「乗降可能位置」とは、載置台に対して汎用台車を円滑に搬入させることが可能となる位置を示している。つまり、昇降可能位置になると、載置台が下り勾配となったり載置台全体が走行床面まで降下したりするようになり、乗降側端部と走行床面との間における段差が極めて小さくなる。
【0013】
本発明のトレーラによれば、トレーラ本体には車輪(前輪及び後輪)が設けられており、牽引車に連結させると、牽引されて走行することが可能になる。トレーラ本体には、汎用台車を載置させるための載置台が備えられており、載置台は支持手段によって変位可能に支持されている。詳しく説明すると、載置台は、汎用台車の乗降に適した乗降可能位置と、汎用台車の前輪または後輪を保持する保持位置との間で変位し、乗降可能位置になると、載置台における少なくとも乗降側端部を、走行床面に当接または近接させる。これにより、乗降側端部を通して載置台の上に汎用トレーラを円滑に且つ容易に搬入させることが可能となる。つまり、汎用台車に積まれた搬送物を汎用台車からトレーラ上に積み替えるのではなく、搬送物を汎用台車ごとトレーラの載置台の上に搬入させることが可能になる。また、汎用台車を載置台の上に搬入すると、載置台は保持位置となり、この位置では、載置台の昇降側端部が走行床面から上昇した状態となる。したがって、昇降側端部を引き摺ることなくトレーラを走行させることが可能になる。
【0014】
このように、本発明では、搬送物を汎用台車に乗せたまま、トレーラによって搬送することから、トレーラに対する搬送物の積み降ろし作業が極めて容易となり、作業時間を大幅に短縮することが可能になる。したがって、各現場間で、多くの搬送物を速やかに且つ円滑に搬送することができ、ひいては生産性を高めることが可能となる。また、汎用台車を容易に載置台の上に搬入することができるため、作業者の労力や精神的な負担も軽減することが可能になる。
【0015】
また、本発明のトレーラにおいて、「前記載置台は、軸心を中心に、前記保持位置である略水平状態と、前記乗降可能位置である下り傾斜状態との間で揺動可能に支持され、
前記乗降側端部を通って前記載置台上に前記汎用台車が搬入された際、該汎用台車の自重によって前記載置台が前記下り傾斜状態から前記略水平状態に変位するように、前記軸心に対する前記汎用台車の加重位置が設定されている」ように構成してもよい。
【0016】
本発明のトレーラによれば、載置台は、支持手段によって揺動可能に支持されており、保持位置では略水平状態となり、乗降可能位置では乗降側端部が下降し下り傾斜状態となる。つまり、汎用台車を乗降させる際には載置台をスロープとすることにより円滑な搬入を可能とし、搬入された後は載置台を略水平状態にすることにより、汎用台車が乗降側端部に向かって移動(逆戻り)することを防止するとともに、乗降側端部を引き摺らないようにする。特に、本構成では、乗降側端部を通って載置台上に汎用台車が搬入されると、汎用台車の自重によって、載置台が下り傾斜状態から略水平状態に変位するようになっている。つまり、シーソー状に支持された載置台の上を移動させることにより、載置台に対する汎用台車(搬送物を含む)の加重位置が、載置台の軸心位置(すなわち支点)を越えて変化することとなり、載置台を下り傾斜状態から略水平状態に変位させることが可能になる。このように、汎用台車の搬入操作に伴って、載置台の位置が乗降可能位置から保持位置に自然に変化することから、適切なタイミングで載置台の状態を切替えることが可能となり、使い勝手がよくなる。しかも、駆動手段や操作手段を備えることなく実現できるため、複雑な機構を要することなく比較的安価に構成することができる。
【0017】
また、本発明のトレーラにおいて、「前記載置台における前記乗降側端部の中央部分から後方に延出して設けられ、後続のトレーラを連結するための後側連結部をさらに備え、
該後側連結部は、薄板状で且つ剛性を有する部材からなる」ように構成してもよい。
【0018】
本発明のトレーラによれば、後続のトレーラを連結するための後側連結部が備えられているため、複数のトレーラを直列に接続した状態で走行させることが可能になる。つまり、夫々のトレーラに汎用台車を載置することにより、複数の汎用台車を一緒に搬送することが可能になる。なお、複数の現場に対して搬送物を搬送する場合には、夫々の現場に対応する汎用台車を個々に設定しておけば、各現場において汎用台車ごと積み降ろすことが可能になる。
【0019】
また、後側連結部は、載置台における乗降側端部から後方に延出されており、載置台とともに軸心を中心として揺動する。このため、載置台が乗降可能位置となり乗降側端部が走行床面に対して当接または近接した状態になると、後側連結部も乗降側端部と同様の状態になる。特に、後側連結部は薄板状で剛性を有する部材から形成されているため、載置台が乗降可能位置になると、走行床面に敷設した状態となり、走行床面から大きく突出することなく配置することが可能になる。したがって、汎用台車を乗降させる際に、後側連結部の上を通過させることが可能になる。つまり、連結される複数のトレーラ同士の間隔を、汎用台車が進入可能な長さに設定すれば、トレーラ同士の間から(側方から)後側連結部の上を通って、汎用台車を出し入れすることができる。換言すれば、夫々のトレーラの連結状態を解除しなくても、各トレーラの後方から汎用台車に出し入れすることが可能になる。
【0020】
また、本発明のトレーラにおいて、「前記載置台は、前記汎用台車が載置されていない空の状態では、自重によって前記下り傾斜状態となるように、前記軸心に対する前記載置台の重心位置が設定され、
前記載置台が前記下り傾斜状態から前記略水平状態に変位した際に、前記載置台を前記略水平状態に維持させるロック機構をさらに備える」ように構成してもよい。
【0021】
本発明のトレーラによれば、載置台が空の状態、すなわち汎用台車が載置されていない状態では、載置台は自重によって下り傾斜状態となるように重心の位置が設定されているため、動力源を用いることなく載置台を昇降させることが可能になる。つまり、汎用台車を搬入させる際には載置台の自重によって乗降側端部を降下させ、一方、汎用台車を搬入させた後は汎用台車の重みによって乗降側端部を上昇させることが可能になる。
【0022】
また、ロック機構が設けられており、載置台が下り傾斜状態から略水平状態に変位すると、載置台は略水平状態に保持されるようになっている。つまり、載置台が空の状態であっても、ロック機構を解除しない限り、載置台を略水平状態に保持することができ、走行中に乗降側端部が床面に当接すること、すなわち引き摺られることを防止することができる。なお、ロック機構を解除すると、載置台は自重によって下り傾斜状態となる。
【0023】
なお、上記の構成を採用する場合、「前記ロック機構は、押圧されることによりロック状態を解除する解除操作片をさらに備え、
該解除操作片は、前記載置台における、前記汎用台車の搬出軌道上に突出して配置され、前記汎用台車の車輪によって押圧されるよう構成されている」ことが好ましい。
【0024】
これによれば、載置台上に載置された汎用台車を搬出する際、汎用台車を乗降側端部側に向かって移動させると、その搬出軌道上に突出して配置された解除操作片が、汎用台車の車輪によって下方に押圧される。すると、ロック機構のロック状態が解除され、載置台は下り傾斜状態になり、スロープを利用して汎用台車を滑らかに搬出させることが可能になる。つまり、ロック機構の解除による略水平状態から下り傾斜状態への変化を、汎用台車の搬出操作に従って自動的に行うことが可能になる。このため、汎用台車を搬出させる際の作業性を著しく高めることができ、作業者の負担を一層軽減することができる。
【0025】
また、本発明のトレーラにおいて、「前記トレーラ本体は、
前記牽引車として先行するトレーラの前記後側連結部に連結可能な前側連結部であって、且つ前記トレーラ本体から前方に延出して形成された前側連結部と、
先行する前記トレーラの前記後側連結部における後端側と前記前側連結部の先端側とを上下方向に重ね合わせた状態で、鉛直軸を中心として互いに回動可能に支持する回動支持手段と
をさらに備え、
前記トレーラ本体の前記車輪は、
前記トレーラ本体の前側に取付けられ鉛直軸を中心として旋回可能に支持された一つの前輪と、
前記トレーラ本体の後側に取付けられ、旋回しないように鉛直軸に対し固定状態で支持されるとともに、互いに独立して転動可能な一対の後輪と
からなり、
先行する前記トレーラの走行軌跡が直線上から所定の方向に変化した際、互いに連結された前記後側連結部及び前記前側連結部を介して、前記トレーラ本体の姿勢を前記所定方向とは反対側に変位させる」ように構成してもよい。
【0026】
本発明のトレーラによれば、先行する前方のトレーラと後続のトレーラとが、後側連結部及び前側連結部を介して連結される。後側連結部と前側連結部とは、端部側同士(すなわち後側連結部の後端側と前側連結部の先端側)を重ね合わせた状態で連結されるとともに、その連結部分は鉛直軸を中心として互いに回動可能になっているため、直列に接続された前後のトレーラの向き(姿勢)を互いに異ならせることが可能になる。特に、トレーラ本体に設けられた車輪は、旋回可能な一つの前輪と、旋回不能で互いにリンクされていない一対の後輪とから構成されているため、直線上での進行方向に対しトレーラ本体の姿勢を変化させるような力、すなわちカーブする方向に引張られる力が作用すると、トレーラ本体は、いずれか一方の後輪を中心として姿勢が変位するとともに、前輪がトレーラ本体の向きに合わせて旋回することとなる。つまり、トレーラ本体の向きに合わせて走行させることが可能になる。
【0027】
さらに詳細に説明すると、この際、トレーラ本体は、所謂大八車のように、一方の後輪を中心として向きが変位することから、後輪よりも前方に位置する前側連結部と後輪よりも後方に位置する後側連結部とは、互いに反対方向に変位することとなる。例えば、直線上での進行方向に対し、前側連結部を右側にカーブさせるような力が作用すると、前側連結部及び前輪は右側に変位し、後側連結部は左側に変位することとなる。換言すると、複数台のトレーラを直列に連結させたものでは、先頭の牽引車(例えば無人搬送車)が右側にカーブすると、その牽引車に連結された1番目のトレーラの前側連結部は左側に変位し、その後続となる二番目のトレーラの前側連結部は、1番目のトレーラの後側連結部の動きに従って右側に変位し、さらにその後続となる3番目のトレーラの前側連結部は、2番目のトレーラの後側連結部の動きに従って左側に変位する、というように、トレーラ本体の姿勢が交互に反対方向を向くこととなる。
【0028】
しかも、1番目のトレーラは、一旦は牽引車と反対側に姿勢が変化するものの、その後も牽引車によって右側に引張られると、牽引車に従って右側に移動することとなる。つまり、オーバーシュートさせた状態でカーブさせ、ひいては牽引車と同じ軌道上を走行させることが可能になる。また、同様に、2番目以降のトレーラに関しても先行するトレーラと同じ軌道上を走行させることが可能になる。したがって、連結されるトレーラが多数となり長蛇となっても、カーブする際に後続のトレーラが曲線の内側に回りこむことを阻止することが可能になる。換言すれば、搬送経路におけるコーナー部分のスペースが十分に確保することができない場合でも、設備等の障害物に接触することなく、円滑に走行させることが可能になる。
【0029】
さらに、本発明のトレーラにおいて、「前記載置台は、前後方向の長さが、前記汎用台車の前後方向の長さよりも短く設定され、
前記載置台の先端側には、前記汎用台車の前輪を落し込ませた状態で保持する浅溝状の窪み部が形成されている」ように構成してもよい。
【0030】
本発明のトレーラによれば、載置台の前後方向の長さが、汎用台車の前後方向の長さよりも短くなっているため、汎用台車の前輪のみが載置台上に載置され、汎用台車の後輪は載置台の乗降側端部よりも後方に位置することとなる。つまり、汎用台車の後輪を走行床面上で転動させながら、汎用台車を運搬することとなる。このように、載置台の長さを短くし汎用台車の前輪のみを載置することにより、トレーラを小型化でき、しかも載置台の加わる荷重を少なくすることができる。したがって、トレーラの管理や取扱いが容易になるとともに、比較的安価に製造することが可能になる。さらに、複数のトレーラを連結した場合でも長蛇となることを抑制できる。
【0031】
また、汎用台車の前輪は、載置台の先端側に形成された浅溝状の窪み部に落とし込んだ状態となって保持されるため、トレーラの走行中に汎用台車が移動すること、すなわち汎用台車だけが置き去りになることを防止できる。また、汎用台車を載置台上に搬入させると、浅溝状の窪み部によって前輪が自然に保持されるため、前輪を制動するための特別な機構を備えることなく、確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0032】
このように、本発明のトレーラによれば、搬送物を汎用台車に乗せたまま、トレーラによって搬送することから、トレーラに対する搬送物の積み降ろし作業が極めて容易となり、多くの搬送物を速やかに且つ円滑に搬送することができる。また、作業者の労力や精神的な負担も軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態であるトレーラを具備する搬送システムについて、図1乃至図5に基づき説明する。図1は搬送システムの構成を示す斜視図であり、図2はトレーラを斜め上方から見た斜視図であり、図3はトレーラを斜め下方から見た斜視図であり、図4はトレーラの載置台を保持位置とした場合を示す断面図であり、図5はトレーラの載置台を乗降可能位置とした場合を示す断面図である。
【0034】
図1に示すように、本例の搬送システム1は、牽引車としても機能する無人搬送車2と、無人搬送車2の後側に連結された複数のトレーラ3とから構成されており、組立部品等の搬送物Hを、載置した状態で、複数の現場に順次搬送することを可能にしている。特に、本例のトレーラ3は、汎用台車4を載置させるための構造を具備しており、搬送物Hを汎用台車4に乗せたまま、積み降ろすことが可能になっている。以下、夫々の構成について詳細に説明する。
【0035】
無人搬送車2は、架台10と、架台10の底面に取付けられた前輪11及び後輪12と、前輪11または後輪12を駆動輪として動作させる駆動手段(図示しない)と、駆動手段に対して運転の開始及び停止を指示するための操作ボタン18と、前輪11を操舵する操舵手段(図示しない)と、走行床面に設けられた誘導線の位置を検出するセンサ(図示しない)と、操作ボタン18等に基づいて駆動手段を制御するとともに、センサの出力に基づいて操舵手段を制御し、架台10を誘導線に沿って走行させる走行制御手段(図示しない)と、を具備して構成されている。なお、架台10上には、充電器13が配設されており、充電器13から駆動手段及び走行制御手段に作動用電力が供給されるようになっている。また、充電器13の上方には、載置枠19が設けられており、搬送物H等を載置させることが可能になっている。
【0036】
一方、トレーラ3は、無人搬送車2または他のトレーラ3の後側に連結されて牽引されるものであり、図2及び図3に示すように、主に、車輪を有するトレーラ本体40と、トレーラ本体40に設けられ汎用台車4を載置可能とする載置台41と、載置台41を、軸心を中心として揺動可能に(すなわちシーソー状に)支持する支持手段42と、載置台41を略水平状態に保持するロック機構43と、を具備して構成されている。
【0037】
トレーラ本体40は、断面L形のアングル材を平面視コ字形に形成してなる本体枠45と、両端が本体枠45の底面に接合され本体枠45の前寄り部分において左右方向(進行方向に対して直角となる水平方向)に架け渡された前側横架材46と、本体枠45の後より部分において前側横架材46と並行になるように架け渡された後側横架材47とを備えている。つまり、本体枠45は、後端側が開放された状態で配置されるとともに、その左右両側を繋ぐ前側横架材46及び後側横架材47によって強度が保たれている。なお、前側横架材46は断面L形のアングル材で形成されており、一方の片が本体枠45の底面に接した状態で取付けられている。また、詳細は後述するが、この前側横架材46は支持手段42の構成要素としても機能している。一方、後側横架材47は、前側横架材46よりも前後方向の幅が広くなっており、両端部分には上方に折れ曲がる立壁47aとその上端から外方向に折れ曲がるフランジ47bとが形成されており、フランジ47bが本体枠45の底面に接合されている。つまり、後側横架材47において両端以外の部分は本体枠45の底面よりも下方に位置しており、載置台41を変位させる際に当接しないように載置台41との間に所定の隙間が形成されている。また、後側横架材47には、前縁と後縁とに夫々フランジ47cが折曲げ形成されており、後側横架材47が左右方向に湾曲しないように補強されている。なお、前縁のフランジ47cは下方に折曲げられているが、後縁のフランジ47cは上方に折り曲げられている。また、詳細は後述するが、この後側横架材47はロック機構43の構成要素としても機能している。
【0038】
また、トレーラ本体40の先端側には、正面視門形の前輪支持部材48がトレーラ本体40から前側に突出して設けられており、その内部に前輪49が支持されている。なお、前輪49は進行方向に転動するように水平軸を軸心として軸支されるとともに、その上方位置において、鉛直軸を軸心として旋回可能に軸支されている。なお、トレーラ本体40の先端側底面には、本体枠45の前縁部分と前側横架材46とに接合するとともに、本体枠45よりも前方に突出して配置された一対の取付部材52が対峙した状態で設けられており、その突出部分に、前輪支持部材48の下端フランジ48aが当接した状態で組付けられている。なお、一対の取付部材52及びその間の空間を覆うようにベース板53が組付けられている。また、前輪49の支持金具49aには、前輪49の中心から前方に突出し、前輪49の進行方向に従って向きを変化させるとともに上下方向に回動可能に支持された可動金具54aが設けられており、この可動金具54aから薄板状の前側連結部54が延出されている。
【0039】
また、トレーラ本体40の左右後端側には、側面視門形の後輪支持部材50が本体枠45から左右外側に突出して設けられており、その内部に後輪51が支持されている。なお、後輪51は進行方向に転動するように水平軸を軸心として軸支されているが、前輪49のように旋回することなく固定状態に取り付けられている。
【0040】
一方、載置台41は、汎用台車4を載置可能とするものであり、板状の鋼材で形成され、本体枠45に内部に配置されている。なお、載置台41は、後端側から後側横架材47までの上方に亘って配置され汎用台車4の前輪31を転動可能とする転動面59と、転動面59の先端側に接続されるとともにベース板53の左右両側に配置され、汎用台車4の前輪31を落し込ませた状態で保持する浅溝状の窪み部60とから構成されている。なお、図4に示すように、窪み部60における前後の側面は、なだらかな斜面となっており、搬入時には前輪31の回転を緩やかに制動させ、搬出時には後方への比較的弱い力(引き操作)で前輪31を脱出させることが可能となっている。
【0041】
また、載置台41は、支持手段42によって乗降可能位置(図5参照)と保持位置(図4参照)との間で変位可能に支持されている。ここで、乗降可能位置とは、汎用台車4を乗降させるのに適した位置であり、この位置に変位すると、載置台41の後端である乗降側端部62が走行床面Yに当接または近接させた下り傾斜状態となる。つまり、乗降可能位置になると、転動面59がスロープとなり、乗降側端部62から窪み部60に向かって汎用台車4を円滑に且つ容易に搬入させることが可能となる。
【0042】
一方、保持位置とは、汎用台車4の前輪31を保持することが可能となる位置であり、この位置に変位すると、乗降側端部62を走行床面Yから上昇させた略水平状態となる。このため、載置台41の前輪31を窪み部60によって保持するとともに、乗降側端部62を引き摺ることなく走行させることが可能になる。なお、保持位置では、窪み部60の前端部分が本体枠45の前縁部分に当接し、窪み部60の後端部分が前側横架材46の上面に当接するようになっている。つまり、汎用台車4の前輪31を受ける載置台41の窪み部60は、本体枠45及び前側横架材46に架け渡された状態で支持される。このため、支持手段42に荷重をかけることなく搬送することが可能となる。
【0043】
なお、支持手段42は、前側横架材46の長手方向に沿って並設された複数(例えば四個)のヒンジ61(蝶番)から構成され、夫々のヒンジ61における一方の片が前側横架材46の後面に固定され、他方の片が載置台41の底面に固定されている。つまり、夫々のヒンジ61は、軸心を中心として、載置台41を、保持位置である略水平状態と乗降可能位置である下り傾斜状態との間で、揺動可能に支持している。
【0044】
ところで、汎用台車4の前輪31を受ける窪み部60は、支持手段42よりも前側に配置されている。換言すれば、乗降側端部62を通って汎用台車4が窪み部60に搬入された際、汎用台車4の自重(搬送物Hの重量を含む)によって、載置台41が下り傾斜状態から略水平状態に変位するように、ヒンジ61の軸心に対する汎用台車4の荷重位置が設定されている。つまり、シーソー状に支持された載置台41の上を移動させることにより、載置台41に対する汎用台車4の加重位置が、載置台41の軸心位置を越えて変化することとなり、載置台41を下り傾斜状態から略水平状態に変位させることが可能になる。
【0045】
なお、載置台41における前後方向の長さは、汎用台車4の前後方向の長さよりも短くなるように設定されている。このため、汎用台車4の前輪31が窪み部60上に載置されると、汎用台車4の後輪32は載置台41の乗降側端部62よりも後方に位置することとなる(図4参照)。つまり、汎用台車4の後輪32を走行床面Y上で転動させながら、汎用台車4を運搬することとなるため、載置台41に加わる汎用台車4の荷重を少なくすることが可能になる。また、トレーラ3を小型化することができ、複数のトレーラを連結した場合でも長蛇となることを抑制できる。さらに、汎用台車4の運搬中においては、載置台41のうち窪み部60に対してのみ荷重が加わることから、載置台41を下り傾斜状態から略水平状態に確実に変位させることが可能になる。
【0046】
また、載置台41は、支持手段42から前側の部分よりも、支持手段42から後側の部分の方が、面積が大きくなっている。つまり、汎用台車4が載置されていない空の状態では、自重によって下り傾斜状態となるように、支点に対する載置台41の重心位置が設定されている。このため、動力源を用いることなく載置台41を昇降させることが可能になる。つまり、汎用台車4を搬入させる際には載置台41の自重によって乗降側端部62を降下させ、一方、汎用台車4を搬入させた後は汎用台車4の重みによって乗降側端部62を上昇させることが可能になる。
【0047】
さらに、本例のトレーラ3には、ロック機構43が備えられており、載置台41が下り傾斜状態から略水平状態に変位した際、載置台41を略水平状態に保持することを可能にしている。具体的には、図4及び図5の拡大図に示すように、載置台41における転動面59の下方には、W字形の係止部材64が、ヒンジ金具65を介して取付けられており、ヒンジ金具65の軸心を中心に、ロック位置(図4の拡大図参照)とロック解除位置(図5の拡大図参照)との間で変位させることが可能になっている。係止部材64は、ロック位置の際、載置台41の下面に当接する上側係止片67と、ロック位置の際、後側横架材47の上面に当接する下側係止片68と、上側係止片67及び下側係止片68を繋ぐ連結片69とを備えており、これらが載置台41と後側横架材47との間に配置されることにより、載置台41の下降を防止している。なお、下側係止片68の先端側には、錘71が取付けられており、載置台41と後側横架材47との間隔が所定の長さ以上になると、錘71が最下端に位置するように係止部材64が元の姿勢に復帰し、上側係止片67及び下側係止片68が載置台41と後側横架材47との間に入り込むようになっている。このため、載置台41が一旦略水平状態になるか、または乗降側端部62がそれ以上の高さまで持ち上がると、係止部材64によって載置台41を略水平状態にロックさせることが可能になる。
【0048】
また、上側係止片68の先端には、解除操作片70が折り曲げ形成されており、この解除操作片70は、載置台41に設けられた長孔状のスリット66を貫通して配置されている。特に、解除操作片70は、汎用台車4の前輪31の軌道上に突出して配置され、汎用台車4を搬出させる際、汎用台車4の前輪31によって押圧されるよう構成されている。そして、解除操作片70が押圧された場合には、係止部材64の回動によって、下側係止片68と後側横架材47との係止状態が解除される。そして、この状態では、載置台41は係止されなくなり、載置台41を下り傾斜状態とすることが可能になる。
【0049】
また、載置台41の後端側には、その中央部分から後方に延出して設けられた後側連結部63が設けられており、後続のトレーラを連結させることが可能になっている。つまり、複数のトレーラ3を直列に接続した状態で走行させることが可能になっている。また、後側連結部63は、載置台41における乗降側端部62から後方に延出されており、載置台41とともに支持手段42の軸心を中心として揺動するようになっている。このため、載置台41が乗降可能位置となり乗降側端部62が走行床面Yに対して当接または近接した状態になると、後側連結部63も乗降側端部62と同様の状態となる。この際、後側連結部63は薄板状で剛性を有する部材(例えば板バネ状の部材)からなるため、載置台41が乗降可能位置になると、走行床面Yに敷設した状態となり、走行床面Yから大きく突出することなく配置させることが可能になる(図5参照)。したがって、汎用台車4を乗降させる際に、後側連結部63の上を通過させることが可能になり、連結される複数のトレーラ3同士の間から(側方から)後側連結部63の上を通って、汎用台車4を出し入れすることが可能になる。
【0050】
また、図6に示すように、先行するトレーラ3の後側連結部63と、その後続のトレーラ3における前側連結部54とは、その端部側同士を上下方向に重ね合わせた状態で、鉛直軸を中心として回動可能に支持されている。具体的に説明すると、後側連結部63の後端側には貫通孔63aが穿設され、前側連結部54の先端側には貫通孔54aが穿設されており、互いに合致した状態で重ね合わせられている。そして、前側連結部54及び後側連結部63は、下側支持部材75及び上側支持部材76によって挟まれるとともに、下側支持部材75の中心から上方に突出する軸部75aが、貫通孔63a,54aに挿入されることにより回動可能に支持されている。なお、軸部75aの内部には雌ネジ部75bが形成されており、上方から螺合されたネジ77によって上側支持部材76と下側支持部材75とが一定の間隔を保った状態で固定されている。ここで、下側支持部材75、上側支持部材76、及びネジ77を組合せたものが本発明の回動支持手段に相当する。
【0051】
次に、搬送システム1におけるトレーラ3の使用方法について説明する。トレーラ3に汎用台車4を搬入する場合には、まず無人搬送車2を停止させ、トレーラ3を静止状態とする。その後、係止部材64の解除操作片70を足で踏込み、下方に押圧する。すると、係止部材64における下側係止片68と後側横架材47との係止状態が解除され、載置台41は、自重によって下り傾斜状態となる。つまり、乗降側端部62が走行床面Yに当接し、窪み部60が持ち上がった状態となる。このため、乗降側端部62を通って載置台41上に汎用台車4を容易に搬入させることが可能になる。
【0052】
そして、汎用台車4の前輪31が窪み部60まで到達すると、汎用台車4の自重によって、載置台41が下り傾斜状態から略水平状態に変位する。これにより、汎用台車4の前輪31が窪み部60によって保持されるとともに、乗降側端部62が走行床面Yから持ち上がり、引き摺ることなく走行することが可能になる。なお、汎用台車4の後輪32は、走行床面Yに接したままとなるが、後輪32は回転可能に支持されていることから、摩擦を発生させることなく運搬することができる。また、載置台41が略水平状態になると、錘71によって係止部材64の下側係止片68が元の位置に復帰し、後側横架材47に係止された状態となる。
【0053】
一方、トレーラ3から汎用台車4を搬出する際には、トレーラ3を静止させた状態で、汎用台車4の手押しフレーム33を握って汎用台車4を後方に引き出す。これによれば、汎用台車4の前輪31を窪み部60から脱出させ、転動面59上を乗降側端部62に向かって移動させることが可能になる。この際、前輪31の搬出軌道上には、解除操作片70が突出して配置されているため、解除操作片70は汎用台車4の前輪31によって下方に押圧される。すると、係止部材64における下側係止片68と後側横架材47との係止状態が再び解除され、載置台41は下り傾斜状態となる。このため、乗降側端部62から走行床面Y上に汎用台車4を円滑に搬出させることが可能になる。
【0054】
なお、汎用台車4を搬出した後のトレーラ3、すなわち載置台41が空の状態となったトレーラ3は、載置台41における窪み部60の部分を下方に押圧することによって、載置台41を略水平状態に戻すことができ、一旦この状態になると、ロック機構43によって水平状態に保持される。つまり、空の状態のまま走行させることが可能になる。
【0055】
ところで、本例の搬送システム1では、無人搬送車2に対して複数台のトレーラ3を直列に連結した場合でも、同じ走行軌跡を通りながら走行させることが可能となっている。図2及び図6に基づき具体的に説明する。上記したように、後側連結部63と前側連結部54との連結部分は鉛直軸を中心として互いに回動可能になっており、しかもトレーラ本体40に設けられた車輪は、旋回可能な一つの前輪49と、旋回不能で互いにリンクされていない一対の後輪51とから構成されているため、直線上での進行方向に対しトレーラ本体40の姿勢を変化させるような力、すなわちカーブする方向に引張られる力が作用すると、トレーラ本体40は、内側の後輪51を中心としてトレーラ本体40の姿勢が変位するとともに、前輪49がトレーラ本体40の向きに合わせて旋回することとなる。
【0056】
この際、トレーラ本体40は、内側の後輪51を中心として向きが変位することから、後輪51よりも前方に位置する前側連結部54と後輪51よりも後方に位置する後側連結部63とは、互いに反対方向に変位することとなる。例えば、直線上での進行方向に対し、前側連結部54を左側に変位させるような力が作用すると、前側連結部54及び前輪49は左側に変位し、後側連結部63は右側に変位することとなる。換言すると、無人搬送車2が左側にカーブすると、無人搬送車2に連結された1番目のトレーラ3の前側連結部54は右側に変位し、その後続となる2番目のトレーラ3の前側連結部54は、1番目のトレーラ3の後側連結部63の動きに従って左側に変位し、さらにその後続となる3番目のトレーラ3の前側連結部54は、2番目のトレーラ3の後側連結部63の動きに従って右側に変位する、というように、トレーラ本体40の姿勢が交互に反対方向を向くこととなる。すなわち、複数台のトレーラ3は、ジグザグ状になりながら所定の方向にカーブすることとなる。
【0057】
特に、1番目のトレーラ3は、一旦は無人搬送車2と反対側に姿勢が変化するものの、その後も無人搬送車2によって左側に引張られると、無人搬送車2に従って左側に移動することとなる。つまり、オーバーシュートしながら左側にカーブし、ひいては無人搬送車2と同じ軌道K上を走行させることが可能になる。また、同様に、2番目以降のトレーラ3に関しても先行するトレーラ3と同じ軌道K上を走行させることが可能になる。したがって、連結されるトレーラ3が長蛇となっても、カーブする際に後続のトレーラ3が曲線の内側に回りこむことを阻止することが可能になる。換言すれば、搬送経路Tにおけるコーナー部分のスペースが十分に確保することができない場合でも、設備等の障害物に接触することなく、円滑に走行させることが可能になる。
【0058】
以上のように、本例のトレーラ3によれば、搬送物Hを汎用台車4ごとトレーラ3の載置台41の上に搬入させることが可能になる。また、汎用台車4を載置台41の上に搬入すると、載置台41は保持位置となり、乗降側端部62を引き摺ることなく走行させることができる。したがって、トレーラ3に対する搬送物Hの積み降ろし作業が極めて容易となり、作業時間を大幅に短縮することができる。このため、各現場間で、多くの搬送物Hを速やかに且つ円滑に搬送することができ、ひいては生産性を高めることが可能となる。また、汎用台車4を容易に載置台41の上に搬入することができるため、作業者の労力や精神的な負担も軽減することができる。
【0059】
特に、乗降側端部62を通って載置台41の窪み部60に汎用台車4が搬入されると、汎用台車4の搬入操作に伴って、載置台41の位置が乗降可能位置から保持位置に自然に変化することから、適切なタイミングで載置台41の状態を切替えることが可能となり、使い勝手がよくなる。
【0060】
また、本例のトレーラ3によれば、複数のトレーラ3を直列に接続した状態で走行させることが可能になる。また、後側連結部63は、薄板状で剛性を有する部材からなり、載置台41とともに揺動するため、載置台41が乗降可能位置になると、走行床面Yに敷設した状態となり、その上を通って汎用台車4を出入りさせることが可能になる。つまり、夫々のトレーラ3の連結状態を解除しなくても、各トレーラ3の後方から汎用台車4を出し入れすることができる。
【0061】
また、本例のトレーラ3によれば、載置台41が下り傾斜状態から略水平状態に変位すると、ロック機構43によって載置台41は略水平状態に保持される。このため、走行中に乗降側端部62が走行床面Yに当接することを防止することができる。特に、ロック機構43の解除による略水平状態から下り傾斜状態への変化を、汎用台車4の搬出操作に従って自動的に行うため、汎用台車4を搬出させる際の作業性を著しく高めることができ、作業者の負担を一層軽減することができる。
【0062】
さらに、本例のトレーラ3によれば、汎用台車4の前輪31は、載置台41の先端側に形成された浅溝状の窪み部60に落とし込んだ状態となって保持されるため、トレーラ3の走行中に汎用台車4が移動すること、すなわち汎用台車4だけが置き去りになることを防止できる。また、汎用台車4を載置台41上に搬入させると、窪み部60によって前輪31が自然に保持されるため、前輪31を制動するための特別な機構を備えることなく、確実に保持することができる。
【0063】
以上、本発明を実施するための最良の形態を挙げて説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すように本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および設計の変更が可能である。
【0064】
すなわち、上記実施形態では、載置台41の長さを汎用台車4の長さよりも短くし、載置台41上に汎用台車4の前輪31のみを載置させるものを示したが、載置台41の長さを汎用台車4よりも長く形成し、汎用台車4全体を載置させるようにしてもよい。ただし、上記実施形態のように、載置台41を短く形成し、汎用台車4の後輪32を走行床面Y上で転動させながら運搬するようにすれば、トレーラ3を小型化でき、しかも載置台41の加わる荷重を少なくすることができる。また、トレーラ3の管理や取扱いが容易になるとともに、比較的安価に製造することが可能になる。さらに、複数のトレーラ3を連結した場合でも長蛇となることを抑制できる。
【0065】
また、上記実施形態では、複数台のトレーラ3を連結するものを示したが、無人搬送車2に対しトレーラ3を一台のみ接続するようにしてもよい。これによれば、後側連結部63が不要になるとともに、汎用台車4の搬入及び搬出操作を一層容易に行わせることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、錘71の重力によって係止部材71の姿勢をロック状態に復帰させるものを示したが、バネ部材によってロック位置に付勢するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、載置台41を下り傾斜状態とすることにより汎用台車4の搬入を可能とするものを示したが、載置台41全体を水平状態に維持したまま走行床面Yまで降下させるように構成してもよい。なお、この場合、電動機等の動力手段を設け、この動力手段の動力によって載置台41を昇降させるようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、汎用台車4の前輪31を窪み部60に落とし込むことによって汎用台車4の保持するものを示したが、ロック機能等、前輪31の動きを完全に制動する専用の機構を設けるようにしてもよい。
【0069】
さらに、上記実施形態では、転動面59と窪み部60とを別部材で形成し組付けるものを示したが、1枚の板材で一体成形するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施形態のトレーラを備えた搬送システムの構成を示す斜視図である。
【図2】トレーラを斜め上方から見た状態を示す斜視図である。
【図3】トレーラを斜め下方から見た状態を示す斜視図である。
【図4】トレーラの載置台を保持位置とした状態を示す断面図、及びその一部拡大図である。
【図5】トレーラの載置台を乗降可能位置とした状態を示す断面図である。
【図6】複数のトレーラを連結した場合における走行軌跡を説明するための説明図、及び連結部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0071】
H 搬送物
Y 走行床面
2 無人搬送車(牽引車)
3 トレーラ
4 汎用台車
40 トレーラ本体
41 載置台
42 支持手段
43 ロック機構
49 前輪(車輪)
51 後輪(車輪)
54 前側連結部
60 窪み部
62 乗降側端部
63 後側連結部
67 突出片(解除操作片)
75 下側支持部材(回動支持手段)
76 上側支持部材(回動支持手段)
77 ネジ(回動支持手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有するとともに牽引車に連結可能なトレーラ本体と、
該トレーラ本体に設けられ汎用台車を載置可能な載置台と、
該載置台を、前記汎用台車の乗降に適した乗降可能位置、及び前記汎用台車の前輪または後輪の少なくとも一方を保持する保持位置、の間で変位可能に支持する支持手段と
を具備し、
前記支持手段は、前記乗降可能位置では前記載置台における少なくとも乗降側端部を、走行床面に当接または近接させた状態とし、前記保持位置では前記昇降側端部を、前記走行床面から上昇させた状態とすることを特徴とするトレーラ。
【請求項2】
前記載置台は、軸心を中心に、前記保持位置である略水平状態と、前記乗降可能位置である下り傾斜状態との間で揺動可能に支持され、
前記乗降側端部を通って前記載置台上に前記汎用台車が搬入された際、該汎用台車の自重によって前記載置台が前記下り傾斜状態から前記略水平状態に変位するように、前記軸心に対する前記汎用台車の加重位置が設定されていることを特徴とする請求項1に記載のトレーラ。
【請求項3】
前記載置台における前記乗降側端部の中央部分から後方に延出して設けられ、後続のトレーラを連結するための後側連結部をさらに備え、
該後側連結部は、薄板状で且つ剛性を有する部材からなることを特徴とする請求項2に記載のトレーラ。
【請求項4】
前記載置台は、前記汎用台車が載置されていない空の状態では、自重によって前記下り傾斜状態となるように、前記軸心に対する前記載置台の重心位置が設定され、
前記載置台が前記下り傾斜状態から前記略水平状態に変位した際に、前記載置台を前記略水平状態に維持させるロック機構をさらに備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のトレーラ。
【請求項5】
前記ロック機構は、押圧されることによりロック状態を解除する解除操作片をさらに備え、
該解除操作片は、前記載置台における、前記汎用台車の搬出軌道上に突出して配置され、前記汎用台車の車輪によって押圧されるよう構成されていることを特徴とする請求項4に記載のトレーラ。
【請求項6】
前記トレーラ本体は、
前記牽引車として先行するトレーラの前記後側連結部に連結可能な前側連結部であって、且つ前記トレーラ本体から前方に延出して形成された前側連結部と、
先行する前記トレーラの前記後側連結部における後端側と前記前側連結部の先端側とを上下方向に重ね合わせた状態で、鉛直軸を中心として互いに回動可能に支持する回動支持手段と
をさらに備え、
前記トレーラ本体の前記車輪は、
前記トレーラ本体の前側に取付けられ鉛直軸を中心として旋回可能に支持された一つの前輪と、
前記トレーラ本体の後側に取付けられ、旋回しないように鉛直軸に対し固定状態で支持されるとともに、互いに独立して転動可能な一対の後輪と
からなり、
先行する前記トレーラの走行軌跡が直線上から所定の方向に変化した際、互いに連結された前記後側連結部及び前記前側連結部を介して、前記トレーラ本体の姿勢を前記所定方向とは反対側に変位させる
ことを特徴とする請求項3乃至請求項5の少なくともいずれか一つの記載のトレーラ。
【請求項7】
前記載置台は、前後方向の長さが、前記汎用台車の前後方向の長さよりも短く設定され、
前記載置台の先端側には、前記汎用台車の前輪を落し込ませた状態で保持する浅溝状の窪み部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の少なくともいずれか一つに記載のトレーラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−239019(P2008−239019A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84151(P2007−84151)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(395017173)エヌ・エス・ケイ株式会社 (2)