トレー
【課題】オイルパンを具備するワークをより好適に運搬することのできるトレーを提供する。
【解決手段】トレー1は、下面側にオイルパン14が装着されたエンジン11を載置可能な載置部2を備えている。載置部2は、エンジン11のオイルパン14以外の部位と当接して支持可能な支持部5、6、7、8を備えている。そして、エンジン11をオイルパン14の下面が下方を向く範囲で水平方向に対して傾斜させた姿勢として、トレー1の載置部2に載置することで、エンジン11が支持部5〜8のみで支持される。
【解決手段】トレー1は、下面側にオイルパン14が装着されたエンジン11を載置可能な載置部2を備えている。載置部2は、エンジン11のオイルパン14以外の部位と当接して支持可能な支持部5、6、7、8を備えている。そして、エンジン11をオイルパン14の下面が下方を向く範囲で水平方向に対して傾斜させた姿勢として、トレー1の載置部2に載置することで、エンジン11が支持部5〜8のみで支持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの運搬等に使用され、ワークを載置可能に構成されてなるトレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン等のワークを運搬等する場合にトレーを用いることが知られている(例えば、特許文献1等参照。)。また、特許文献1に記載の技術では、エンジンの下面側に装着されたオイルパンの上辺部から外周側に張出すようにして形成されている鍔を支持することで、オイルパンをトレーの底面から浮かせた状態で保持している。すなわち、オイルパンの肉厚は比較的薄いのが一般的であるため、オイルパンがトレーの底面に直接支持されるようにしてエンジンをトレーに載置してしまうと、特に運搬時にエンジンが上下に揺れた場合等に、オイルパンがエンジンの重みで押し潰されてしまうことが懸念される。これに対し、特許文献1に記載のように、オイルパンをトレーの底面から浮かせた状態で運搬等することによって、かかる不具合を回避することができるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−57255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、オイルパンの鍔を支持することでエンジン全体の重量を支える構成のため、鍔が変形したり損傷したりしてしまうことが懸念され、変形等が生じた場合には、オイル漏れを起こすおそれがある。また、オイルパンの表面に対して防錆等の目的で施されている塗装が、鍔等においてトレーと擦れることで剥がされてしまうことも懸念される。加えて、鍔の有無や、鍔の形状や、鍔とその他の部位との位置関係等によって、鍔を支持すること自体が不可能な場合もある。
【0005】
上記のような事情により、鍔に頼ることなく、オイルパン以外の部位を支えることでエンジンを支持することが望ましいのではあるが、その場合、エンジンをバランスよく支持できなくなってしまうことが懸念され、トレーの内側でエンジンが傾倒したり、がたついたりしてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は上記問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、オイルパンを具備するワークをより好適に運搬することのできるトレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0008】
手段1.下面側にオイルパンが装着されたワークの運搬に使用されるトレーであって、
前記オイルパンの下面が下方を向く範囲で水平方向に対して傾斜した姿勢にある前記ワークのうち前記オイルパン以外の部位と上下に当接する支持部を備え、前記支持部だけで前記ワークを支持可能に構成されていることを特徴とするトレー。
【0009】
手段1のように、ワークを傾けることで、ワークのうち鉛直方向下側からワークを視認した場合に視認可能な範囲、すなわち、ワークのうち支持部によって下側から支えることのできる部位が変化する。これによって、ワークのうち、オイルパン以外で、支持部によって下側から支えることのできる部位を増やすことができる。従って、オイルパン以外の部位だけを支持したとしても、ワークを比較的バランスよく保持することができるようになり、結果として、トレーに載置されたワークを安定状態で運搬等することができる。
【0010】
また、トレーは支持部によってオイルパン以外の部位を支持するだけでワークを支持可能であることから、オイルパンに対してトレーが一切触れないように構成することができる。このため、オイルパンがトレーと衝突して変形・損傷し、オイル漏れを引き起こしてしまうといった事態を回避することができる。さらに、表面に塗装が施されているオイルパンに関しては、オイルパンがトレーと擦れて塗装が剥がれてしまうといった事態を回避することができる。加えて、オイルパンの上部の開口周縁部から外方に延びる鍔の有無や、鍔の形状や、鍔とその他の部位との位置関係等によって、鍔を支持すること自体が不可能なワークでも確実に保持することができる。
【0011】
また、トレーに載置されたワークは、オイルパンの下面が下方を向く範囲で傾けられている。すなわち、ワークは、オイルパンの下面が鉛直下方に向く姿勢が基本姿勢であって、車載された状態でもかかる基本姿勢とされる。従って、ワークをトレーから取出して車載する際に、ワークの向きを大幅に変化させる等の余分な作業を行う必要がなく、作業効率の向上を図ることができる。さらには、オイルパンにオイルを充填した状態のワークについても、当該トレーを用いて、オイルの流出を防止しつつ、安定して運搬等することができる。
【0012】
尚、オイルパンが装着されたワークとしては、エンジンオイルを溜めることのできるオイルパンが装着されるクランクケース、クランクケースとシリンダとが一体となったエンジンブロック、エンジンブロックにエンジンヘッドを装着した状態のエンジンや、ギアオイルを溜めることのできるオイルパンが装着されたトランスミッション等が挙げられる。
【0013】
手段2.前記支持部は、前記ワークを少なくとも3点で当接支持するとともに、前記支持部に支持された前記ワークの重心を通る仮想鉛直線が、前記支持部による前記ワークの当接支持点の間を結ぶ仮想直線で囲まれる領域に位置するように配置されていることを特徴とする手段1に記載のトレー。
【0014】
手段2によれば、支持部によってワークをよりバランスよく支持することができ、がたつき等を防止しつつ、ワークをより安定して運搬等することができる。
【0015】
また、例えば、トレーに載置された状態のワークの重心を通る仮想鉛直線が、当接支持点間の仮想直線で囲まれる範囲を外れる場合、ワークの重心側への傾倒変位を防止するべく、支持部をアンダーカット形状にしてその下面にワークを当接させるようにすることが考えられる。しかしながら、この場合、ワークのトレーへの着脱作業が比較的面倒なものになる上、トレーの生産性の低下等を招くおそれがある。これに対し、本手段2では、支持部をアンダーカット形状にしなくても済むことから、かかる不具合を回避することができる。さらには、トレーにアンダーカット形状がないことによって、トレーをネスティング可能に構成することができる。
【0016】
尚、支持部がワークを少なくとも3点で当接支持するとは、当接支持点が完全に分離している場合(例えば、4つの突起の各先端部によって4つの支持部が構成されるような場合)だけではなく、トレー或いはワークの同一平面上に複数の当接支持点が存在する場合(例えば、支持部が2つの立方体で構成されるとともに、各立方体にワークが複数箇所で接触するような場合)や、支持部とワークとが面で当接し、当該当接面上に無数の当接支持点が存在するような場合も含む趣旨である。
【0017】
手段3.前記支持部には、トレー本体を構成する材料よりも削れにくい材料で構成される緩衝部材が取付けられていることを特徴とする手段1又は2に記載のトレー。
【0018】
手段3によれば、トレー本体の支持部を形成する部位がワークの角部で削れてしまうことを防止することができる。また、緩衝部材は、トレー本体の構成材料よりも削れにくい材料で構成されることから、削りカスがワークに付着してしまうといった事態を抑制することができる。さらに、トレー本体を構成する材料よりも弾性を有する材料で緩衝部材を構成することによって、ワークをトレーに載置した際の衝撃や、運搬に際して振動した場合の衝撃を緩和することができる。加えて、緩衝部材は別部材であることから、万一、緩衝部材が損傷した場合には、緩衝部材を交換するだけでトレーを再度使用することもでき、省資源化等を図ることができる。
【0019】
手段4.前記支持部、及び、前記ワークの前記支持部との当接面のうち少なくとも一方は、トレーの内周側に向けて下方傾斜していることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のトレー。
【0020】
手段4によれば、ワークをトレーに載置すると、ワークはトレーの内周側かつ下方に向けて案内されることとなる。すなわち、漏斗に対して漏斗の排出口よりも径の大きな物品を投入した場合のように、ワークは複数の支持部に当接して下方への変位が規制されるまで下方に変位すると、複数の支持部によって水平方向への相対変位についても規制された状態(水平方向に変位する余地がなくなった状態)とされる。これにより、ワークをトレーに載置する作業性の向上を図ることができるとともに、ワークのがたつきをより確実に防止することができ、オイルパンとトレーとが衝突するといった事態をより確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】トレーを上面側から見た斜視図である。
【図2】トレーの平面図である。
【図3】トレー及びワークの斜視図である。
【図4】トレー及びワークの斜視図である。
【図5】載置部の一方にワークを載置したトレーを示す平面図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】図5のB−B線断面図である。
【図8】図5のC−C線断面図である。
【図9】図5のD−D線断面図である。
【図10】ワークを下面側から見た斜視図である。
【図11】ワークを下面側から見た斜視図である。
【図12】載置姿勢にあるワークを鉛直方向下面側から見た図である。
【図13】載置姿勢にあるワークの側面図である。
【図14】載置部の両方にワークを載置したトレーを示す斜視図である。
【図15】図14に示されるトレーの側面図である。
【図16】別の実施形態におけるトレーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1〜図5等に示すように、トレー1は、ワークとしてのエンジン11の形状に合わせて凹凸形成され、エンジン11を載置可能な一対の(2つの)載置部2を備えている。本実施形態のトレー1はポリプロピレンによって一体的に形成されている。
【0023】
図13(a)に示すように、本実施形態のトレー1に載置され、トレー1とともに運搬されるエンジン11には、その下面側にオイルパン14が装着されている。さらに、オイルパン14にはエンジンオイルが充填されており、エンジン11は、そのまま車載できる状態にて、トレー1とともに運搬されるようになっている。加えて、本実施形態のオイルパン14は、上方に開口する略箱状をなしており、下面は平坦面となっている。さらに、オイルパン14の表面には、防錆のための塗装が施されている。また、エンジン11は、オイルパン14の下面が鉛直下方に向く姿勢(以下、「基本姿勢」と言う)で車載されることとなる。
【0024】
また、各載置部2は、図2の散点模様で示すように、エンジン11と上下に当接して、エンジン11をオイルパン14がトレー1から離間した状態で支持する第1支持部5、第2支持部6、第3支持部7、及び第4支持部8を備えている。これに対し、エンジン11は、図10、図11の散点模様で示すように、第1支持部5に支持される第1当接部15(図9参照)と、第2支持部6に支持される第2当接部16(図8参照)と、第3支持部7に支持される第3当接部17(図6参照)と、第4支持部8に支持される第4当接部18(図7参照)とを備えている。本実施形態の当接部15〜18は、いずれもオイルパン14以外の部位である。尚、本実施形態のトレー1は、支持部5〜8のみでエンジン11を支持するように構成されており、基本的に、トレー1に載置されたエンジン11に対して支持部5〜8以外の部位が接触しないようになっている。
【0025】
さて、本実施形態では、エンジン11は、トレー1に対して、オイルパン14の下面が水平に延びる基本姿勢で載置されるのではなく、図13(b)等に示すように、オイルパン14の下面が水平方向に対して30度傾いた姿勢(以下、「載置姿勢」と言う)で載置されるようになっている。
【0026】
すなわち、図12に示すように、第1当接部15、第2当接部16、第3当接部17、及び第4当接部18は、いずれも載置姿勢にあるエンジン11を鉛直方向下側から視認した場合に視認可能な部位、すなわち、下側から支持可能な部位である。また、第1当接部15及び第2当接部16と、第3当接部17の一部とに関しては、基本姿勢にあるエンジン11を鉛直方向下側から視認した場合においても視認可能な部位であるのに対し、第3当接部17の一部と第4当接部18とに関しては、基本姿勢にあるエンジン11を鉛直方向下側から視認しても視認不可能な部位であって、上記のようにエンジン11を傾けることによって鉛直方向下側から視認可能となる部位である。そして、各当接部15〜18が各支持部5〜8と上下に当接して支持されることで、エンジン11が上記の傾きで保持されるように構成されている。
【0027】
次に、図12を参照して、載置姿勢にあるエンジン11の重心位置と、支持部5〜8に支持される当接部15〜18との位置関係について説明する。尚、図12は、載置姿勢にあるエンジン11を鉛直方向下側から視認した図であり、点Xは載置姿勢にあるエンジン11の重心位置を示している。
【0028】
図12の左右方向(トレー1の長手方向)において、載置姿勢にあるエンジン11の重心Xに対し、第1当接部15は左側に位置し、第2及び第3当接部16、17は右側に位置し、第4当接部18はほぼ左側(一部重心Xと重なる)に位置する。さらに、図12の上下方向(トレー1の短手方向)において、載置姿勢にあるエンジン11の重心Xに対し、第1及び第2当接部15、16は図の下側に位置し、第4当接部18は図の上側に位置し、第3当接部17はほぼ図の上側(一部重心Xと重なる)に位置する。このため、図2に示すように、各当接部15〜18の任意の点の間を結ぶ仮想直線Yを引いた場合に、当該仮想直線Yで囲まれる領域に、載置姿勢にあるエンジン11の重心Xを通る仮想鉛直線が位置するようになっている。
【0029】
また、図1、図3等に示すように、エンジン11の第1当接部15を支持する第1支持部5の上面は、トレー1の長手方向中央部側に向けて下方傾斜している。加えて、第3当接部17は、エンジン11を基本姿勢から載置姿勢へと傾ける際の回転軸と同方向に延びる(トレー1の短手方向に沿って延びる)略円筒体の下面側の一部であり、当該第3当接部17を支持する第3支持部7の上面は、断面略円弧状をなしている。さらに、第3支持部7は、前記円筒体先端側のテーパ部にも当接して支持可能なように、トレー1の短手方向においてエンジン11の重心Xが載置される側に向けて下方傾斜している部位を備えている。また、第2支持部6は凹状をなしており、第2当接部16を下側から支持する部位と、第2当接部16の両側方に立設する部位とを備えている。
【0030】
加えて、図1、図2に示すように、1つのトレー1において一対で設けられる載置部2は、トレー1の中央部を中心として互いに点対称形状をなしている。そして、図14、図15に示すように、1つのトレー1に2つのエンジン11が向かい合わせで載置されるようになっている。さらに、各トレー1に載置されたエンジン11は、3つのトレー1を載置可能な図示しないパレットにトレー1ごと載せられて運搬されるようになっている。
【0031】
また、トレー1は、いずれの部位においても肉厚がほぼ一定であり、トレー1の外側形状と、トレー1の内側形状とがほぼ同じ形状をなしている上、トレー1は上下方向において適宜テーパ状をなしている。このため、複数のトレー1をその長手方向を揃えるようにして上下に積み重ねる(ネスティングする)ことができるようになっている。
【0032】
尚、トレー1は、図14等に示すように、当該トレー1に載置されたエンジン11の側面の大部分を側方から視認可能となるように構成されており、トレー1に載置されたエンジン11の側方から当該エンジン11の下側に作業用ロボットのアームや作業者の手を比較的容易に差し入れることができるようになっている。これにより、エンジン11をトレー1から取出したり、エンジン11をトレー1に設置したりする際の作業性の向上を図ることができる。
【0033】
以上詳述したように、本実施形態によれば、トレー1にエンジン11を載置すると、オイルパン14の下面が水平方向に対して30度傾いた載置姿勢となるように構成されている。このように、エンジン11を傾けることで、エンジン11のうち、オイルパン14以外の部位でエンジン11を下側から支持可能な部位を増やすことができる。本実施形態で言えば、第4当接部18を下側から支持可能にするとともに、第3支持部7を下側からより好適に(広い面積かつ広い角度で)支持可能にすることができる。従って、オイルパン14以外の部位だけを支持したとしても、エンジン11を比較的バランスよく保持することができるようになり、結果として、トレー1に載置されたエンジン11を安定状態で運搬等することができる。
【0034】
また、トレー1は第1〜第4支持部5〜8によってオイルパン14以外の部位を支持するだけでエンジン11を支持可能であることから、オイルパン14はトレー1のどこにも触れることなく、浮いた状態とされる。このため、オイルパン14がトレー1と衝突して変形・損傷し、オイル漏れを引き起こしてしまうといった事態を回避することができる。さらに、オイルパン14がトレー1と擦れてオイルパン14の表面に施された塗装が剥がれてしまうといった事態を回避することができる。
【0035】
また、トレー1に載置されたエンジン11は、オイルパン14の下面が下方を向く範囲で(30度程度)傾けられているため、エンジン11をトレー1から取出して車載する際に、エンジン11の向きを基本姿勢とするべく大幅に変化させる等の余分な作業を行う必要がなく、作業効率の向上を図ることができる。特に、本実施形態では、オイルパン14にエンジンオイルが充填された状態のエンジン11がトレー1に載置されるように構成されているが、上記のように、トレー1に載置されたエンジン11の傾きが30度程度であるため、当該トレー1を用いて、エンジンオイルの流出を防止しつつ、安定して運搬等することができる。
【0036】
さらに、本実施形態のトレー1は、各載置部2においてそれぞれエンジン11を支持する4つの支持部5〜8を備えており、載置姿勢にあるエンジン11の重心Xを通る仮想鉛直線が、各支持部5〜8の任意の点の間を結ぶ仮想線Yで囲まれる領域に位置するように構成されている。このため、支持部5〜8によってエンジン11をよりバランスよく支持することができ、がたつき等を防止しつつ、エンジン11をより安定して運搬等することができる。
【0037】
また、例えば、トレー1に載置された状態のエンジン11の重心Xを通る仮想鉛直線が、各支持部5〜8の任意の点を結ぶ仮想線Yで囲まれる領域を外れる場合、エンジン11の重心X側への傾倒変位を防止するべく、支持部をアンダーカット形状にしてその下面にエンジン11を潜り込ませるようにして当接させるようにすることが考えられる。しかしながら、この場合、エンジン11のトレー1への着脱作業が比較的面倒なものになる上、トレー1の生産性の低下等を招くおそれがある。これに対し、本実施形態では、支持部5〜8をアンダーカット形状にしなくても済むことから、かかる不具合を回避することができる。さらには、トレー1にアンダーカット形状がないことによって、トレー1をネスティング可能に構成することができる。
【0038】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0039】
(a)上記実施形態では、トレー1に載置されるワークとしてエンジン11が適用されているが、下面側にオイルパン14が装着されるその他のワークに適用することも可能である。例えば、クランクケース、クランクケースとシリンダとが一体となったエンジンブロック、エンジンオイルが充填されていない状態のエンジン、ギアオイルを溜めることのできるオイルパンが装着されたトランスミッション等が挙げられる。
【0040】
(b)上記実施形態では、エンジン11は、トレー1の第1〜第4支持部5〜8によって第1〜第4当接部15〜18において支持されているが、エンジン11のうちトレー1に支持される箇所の配置や数については特に限定されるものではない。但し、トレー1に載置されたエンジン11の安定化を図るべく、エンジン11はトレー1に3点以上で支持されることが望ましく、さらに、支持部5〜8の任意の点の間を結ぶ仮想線で囲まれる領域にエンジン11の重心Xを通る仮想鉛直線が位置するように構成されることがより望ましい。
【0041】
尚、上記実施形態では、第1〜第4支持部5〜8の高さ位置がいずれも異なっている上、エンジン11をトレー1に載置した状態でもエンジン11の側面の大部分が露出して視認可能に構成されている。これにより、エンジン11をトレー1に設置する際に、例えばエンジン11をトレーの枠状部位の内側に挿通させなくてはならないような構成のものに比べて作業性の向上を図ることができる上、トレーの枠状部位とエンジン11との間に隙間ができ、エンジン11の水平方向へのがたつきを招いてしまうといった事態を回避することができる。
【0042】
(c)上記実施形態では、エンジン11がトレー1に載置され、各支持部5〜8に支持されることで水平方向に対して30度傾けられるように構成されているが、特にかかる傾き具合に限定されるものではなく、トレー1に載置されるワークの形状やオイルの充填状況等に応じて適宜変更可能である。但し、エンジン11を傾けすぎてしまうと、取出し作業性の低下を招いたりする等の不具合を招くおそれがあるため、60度以下とするのが望ましく、さらには、45度以下とすることがより望ましい。
【0043】
また、上記実施形態では、1つのトレー1に2つのエンジン11を載置可能に構成されているが、1つのトレー1に載置可能なエンジン11の数は1つでもよいし、3つ以上でもよい。さらに、上記実施形態では、トレー1に載置される2つのエンジン11は、所定の面(載置姿勢とされることで若干下側を向くこととなる面)同士が向き合わせで(互いに水平に180度回転した向きで)載置されるが、特に当該構成に限定されるものではなく、例えば、同じ向きで載置されるように構成してもよい。加えて、上記実施形態では、トレー1はネスティング可能に構成されているが、ネスティングができない構成であってもよい。
【0044】
(d)上記実施形態において、支持部5〜8は、各載置部2の内周側に向けて下方傾斜していることとしてもよい。この場合、エンジン11をトレー1に載置すると、エンジン11は載置部2の内周側、かつ、下方へと案内されることとなる。そして、エンジン11は複数の支持部5〜8に当接して下方への変位が規制されるまで下方に変位すると、複数の支持部5〜8によって水平方向への相対変位についても規制された状態(水平方向に変位する余地がなくなった状態)とされる。これにより、エンジン11をトレー1に載置する作業性の向上を図ることができるとともに、エンジン11のがたつきをより確実に防止することができ、オイルパン14とトレー1とが衝突するといった事態をより確実に回避することができる。尚、支持部5〜8が上記のように傾斜していなくても、対応する当接部15〜18の当接面が載置部2の内周側に向けて下方傾斜していれば、同様の作用効果が奏される。
【0045】
加えて、エンジン11をトレー1に載置する際に、エンジン11をどの程度傾けるかを把握し易くするために、例えば、トレー1の側面にエンジン11の傾斜の程度を示すライン(斜めに延びる突状部)を形成してもよい。さらに、エンジン11をトレー1に載置する際に、エンジン11をどの向きで載置すればよいのかを把握し易くするために、例えば、エンジン11の形状の特徴部分を模倣したデザインをトレー1の側面に施してもよい。
【0046】
(e)また、図16に示すように、支持部5〜8の少なくとも1つ(望ましくは2つ、図16では第1支持部5及び第2支持部6)に対して、トレー1本体を構成する材料よりも削れにくい材料で構成される緩衝部材31を取付けることとしてもよい。この場合、トレー1本体の支持部5〜8を形成する部位がエンジン11の角部で削れてしまうことを防止することができる。また、緩衝部材31は、トレー1本体の構成材料よりも削れにくい材料で構成されることから、削りカスがエンジン11に付着してしまうといった事態を抑制することができる。さらに、トレー1本体を構成する材料よりも弾性を有するウレタンゴム等の材料で緩衝部材31を構成することによって、エンジン11をトレー1に載置した際の衝撃や、運搬に際して振動した場合の衝撃を緩和することができる。加えて、緩衝部材31は別部材であることから、万一、緩衝部材31が損傷した場合には、緩衝部材31を交換するだけでトレー1を再度使用することもでき、省資源化等を図ることができる。
【0047】
尚、緩衝部材31としては、ウレタンゴム等のゴム材料に限定されるものではなく、少なくともトレー1本体を構成する材料よりも削れにくい材料であればよい。例えば、ポリアセタール等の(摺動性に優れた)樹脂材料で構成することも可能である。また、緩衝部材31は、位置ずれ等を防止するべく、トレー1の本体に対してリベットやボルト等を用いて取付けられることが望ましい。
【0048】
(f)上記実施形態では、トレー1はポリプロピレンにより構成されているが、ポリエチレン、PET、ポリアミド等その他の樹脂材料によって構成されることとしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…トレー、2…載置部、5…第1支持部、6…第2支持部、7…第3支持部、8…第4支持部、11…エンジン、14…オイルパン、15…第1当接部、16…第2当接部、17…第3当接部、18…第4当接部、31…緩衝部材、X…重心。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの運搬等に使用され、ワークを載置可能に構成されてなるトレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン等のワークを運搬等する場合にトレーを用いることが知られている(例えば、特許文献1等参照。)。また、特許文献1に記載の技術では、エンジンの下面側に装着されたオイルパンの上辺部から外周側に張出すようにして形成されている鍔を支持することで、オイルパンをトレーの底面から浮かせた状態で保持している。すなわち、オイルパンの肉厚は比較的薄いのが一般的であるため、オイルパンがトレーの底面に直接支持されるようにしてエンジンをトレーに載置してしまうと、特に運搬時にエンジンが上下に揺れた場合等に、オイルパンがエンジンの重みで押し潰されてしまうことが懸念される。これに対し、特許文献1に記載のように、オイルパンをトレーの底面から浮かせた状態で運搬等することによって、かかる不具合を回避することができるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−57255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、オイルパンの鍔を支持することでエンジン全体の重量を支える構成のため、鍔が変形したり損傷したりしてしまうことが懸念され、変形等が生じた場合には、オイル漏れを起こすおそれがある。また、オイルパンの表面に対して防錆等の目的で施されている塗装が、鍔等においてトレーと擦れることで剥がされてしまうことも懸念される。加えて、鍔の有無や、鍔の形状や、鍔とその他の部位との位置関係等によって、鍔を支持すること自体が不可能な場合もある。
【0005】
上記のような事情により、鍔に頼ることなく、オイルパン以外の部位を支えることでエンジンを支持することが望ましいのではあるが、その場合、エンジンをバランスよく支持できなくなってしまうことが懸念され、トレーの内側でエンジンが傾倒したり、がたついたりしてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は上記問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、オイルパンを具備するワークをより好適に運搬することのできるトレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0008】
手段1.下面側にオイルパンが装着されたワークの運搬に使用されるトレーであって、
前記オイルパンの下面が下方を向く範囲で水平方向に対して傾斜した姿勢にある前記ワークのうち前記オイルパン以外の部位と上下に当接する支持部を備え、前記支持部だけで前記ワークを支持可能に構成されていることを特徴とするトレー。
【0009】
手段1のように、ワークを傾けることで、ワークのうち鉛直方向下側からワークを視認した場合に視認可能な範囲、すなわち、ワークのうち支持部によって下側から支えることのできる部位が変化する。これによって、ワークのうち、オイルパン以外で、支持部によって下側から支えることのできる部位を増やすことができる。従って、オイルパン以外の部位だけを支持したとしても、ワークを比較的バランスよく保持することができるようになり、結果として、トレーに載置されたワークを安定状態で運搬等することができる。
【0010】
また、トレーは支持部によってオイルパン以外の部位を支持するだけでワークを支持可能であることから、オイルパンに対してトレーが一切触れないように構成することができる。このため、オイルパンがトレーと衝突して変形・損傷し、オイル漏れを引き起こしてしまうといった事態を回避することができる。さらに、表面に塗装が施されているオイルパンに関しては、オイルパンがトレーと擦れて塗装が剥がれてしまうといった事態を回避することができる。加えて、オイルパンの上部の開口周縁部から外方に延びる鍔の有無や、鍔の形状や、鍔とその他の部位との位置関係等によって、鍔を支持すること自体が不可能なワークでも確実に保持することができる。
【0011】
また、トレーに載置されたワークは、オイルパンの下面が下方を向く範囲で傾けられている。すなわち、ワークは、オイルパンの下面が鉛直下方に向く姿勢が基本姿勢であって、車載された状態でもかかる基本姿勢とされる。従って、ワークをトレーから取出して車載する際に、ワークの向きを大幅に変化させる等の余分な作業を行う必要がなく、作業効率の向上を図ることができる。さらには、オイルパンにオイルを充填した状態のワークについても、当該トレーを用いて、オイルの流出を防止しつつ、安定して運搬等することができる。
【0012】
尚、オイルパンが装着されたワークとしては、エンジンオイルを溜めることのできるオイルパンが装着されるクランクケース、クランクケースとシリンダとが一体となったエンジンブロック、エンジンブロックにエンジンヘッドを装着した状態のエンジンや、ギアオイルを溜めることのできるオイルパンが装着されたトランスミッション等が挙げられる。
【0013】
手段2.前記支持部は、前記ワークを少なくとも3点で当接支持するとともに、前記支持部に支持された前記ワークの重心を通る仮想鉛直線が、前記支持部による前記ワークの当接支持点の間を結ぶ仮想直線で囲まれる領域に位置するように配置されていることを特徴とする手段1に記載のトレー。
【0014】
手段2によれば、支持部によってワークをよりバランスよく支持することができ、がたつき等を防止しつつ、ワークをより安定して運搬等することができる。
【0015】
また、例えば、トレーに載置された状態のワークの重心を通る仮想鉛直線が、当接支持点間の仮想直線で囲まれる範囲を外れる場合、ワークの重心側への傾倒変位を防止するべく、支持部をアンダーカット形状にしてその下面にワークを当接させるようにすることが考えられる。しかしながら、この場合、ワークのトレーへの着脱作業が比較的面倒なものになる上、トレーの生産性の低下等を招くおそれがある。これに対し、本手段2では、支持部をアンダーカット形状にしなくても済むことから、かかる不具合を回避することができる。さらには、トレーにアンダーカット形状がないことによって、トレーをネスティング可能に構成することができる。
【0016】
尚、支持部がワークを少なくとも3点で当接支持するとは、当接支持点が完全に分離している場合(例えば、4つの突起の各先端部によって4つの支持部が構成されるような場合)だけではなく、トレー或いはワークの同一平面上に複数の当接支持点が存在する場合(例えば、支持部が2つの立方体で構成されるとともに、各立方体にワークが複数箇所で接触するような場合)や、支持部とワークとが面で当接し、当該当接面上に無数の当接支持点が存在するような場合も含む趣旨である。
【0017】
手段3.前記支持部には、トレー本体を構成する材料よりも削れにくい材料で構成される緩衝部材が取付けられていることを特徴とする手段1又は2に記載のトレー。
【0018】
手段3によれば、トレー本体の支持部を形成する部位がワークの角部で削れてしまうことを防止することができる。また、緩衝部材は、トレー本体の構成材料よりも削れにくい材料で構成されることから、削りカスがワークに付着してしまうといった事態を抑制することができる。さらに、トレー本体を構成する材料よりも弾性を有する材料で緩衝部材を構成することによって、ワークをトレーに載置した際の衝撃や、運搬に際して振動した場合の衝撃を緩和することができる。加えて、緩衝部材は別部材であることから、万一、緩衝部材が損傷した場合には、緩衝部材を交換するだけでトレーを再度使用することもでき、省資源化等を図ることができる。
【0019】
手段4.前記支持部、及び、前記ワークの前記支持部との当接面のうち少なくとも一方は、トレーの内周側に向けて下方傾斜していることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のトレー。
【0020】
手段4によれば、ワークをトレーに載置すると、ワークはトレーの内周側かつ下方に向けて案内されることとなる。すなわち、漏斗に対して漏斗の排出口よりも径の大きな物品を投入した場合のように、ワークは複数の支持部に当接して下方への変位が規制されるまで下方に変位すると、複数の支持部によって水平方向への相対変位についても規制された状態(水平方向に変位する余地がなくなった状態)とされる。これにより、ワークをトレーに載置する作業性の向上を図ることができるとともに、ワークのがたつきをより確実に防止することができ、オイルパンとトレーとが衝突するといった事態をより確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】トレーを上面側から見た斜視図である。
【図2】トレーの平面図である。
【図3】トレー及びワークの斜視図である。
【図4】トレー及びワークの斜視図である。
【図5】載置部の一方にワークを載置したトレーを示す平面図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】図5のB−B線断面図である。
【図8】図5のC−C線断面図である。
【図9】図5のD−D線断面図である。
【図10】ワークを下面側から見た斜視図である。
【図11】ワークを下面側から見た斜視図である。
【図12】載置姿勢にあるワークを鉛直方向下面側から見た図である。
【図13】載置姿勢にあるワークの側面図である。
【図14】載置部の両方にワークを載置したトレーを示す斜視図である。
【図15】図14に示されるトレーの側面図である。
【図16】別の実施形態におけるトレーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1〜図5等に示すように、トレー1は、ワークとしてのエンジン11の形状に合わせて凹凸形成され、エンジン11を載置可能な一対の(2つの)載置部2を備えている。本実施形態のトレー1はポリプロピレンによって一体的に形成されている。
【0023】
図13(a)に示すように、本実施形態のトレー1に載置され、トレー1とともに運搬されるエンジン11には、その下面側にオイルパン14が装着されている。さらに、オイルパン14にはエンジンオイルが充填されており、エンジン11は、そのまま車載できる状態にて、トレー1とともに運搬されるようになっている。加えて、本実施形態のオイルパン14は、上方に開口する略箱状をなしており、下面は平坦面となっている。さらに、オイルパン14の表面には、防錆のための塗装が施されている。また、エンジン11は、オイルパン14の下面が鉛直下方に向く姿勢(以下、「基本姿勢」と言う)で車載されることとなる。
【0024】
また、各載置部2は、図2の散点模様で示すように、エンジン11と上下に当接して、エンジン11をオイルパン14がトレー1から離間した状態で支持する第1支持部5、第2支持部6、第3支持部7、及び第4支持部8を備えている。これに対し、エンジン11は、図10、図11の散点模様で示すように、第1支持部5に支持される第1当接部15(図9参照)と、第2支持部6に支持される第2当接部16(図8参照)と、第3支持部7に支持される第3当接部17(図6参照)と、第4支持部8に支持される第4当接部18(図7参照)とを備えている。本実施形態の当接部15〜18は、いずれもオイルパン14以外の部位である。尚、本実施形態のトレー1は、支持部5〜8のみでエンジン11を支持するように構成されており、基本的に、トレー1に載置されたエンジン11に対して支持部5〜8以外の部位が接触しないようになっている。
【0025】
さて、本実施形態では、エンジン11は、トレー1に対して、オイルパン14の下面が水平に延びる基本姿勢で載置されるのではなく、図13(b)等に示すように、オイルパン14の下面が水平方向に対して30度傾いた姿勢(以下、「載置姿勢」と言う)で載置されるようになっている。
【0026】
すなわち、図12に示すように、第1当接部15、第2当接部16、第3当接部17、及び第4当接部18は、いずれも載置姿勢にあるエンジン11を鉛直方向下側から視認した場合に視認可能な部位、すなわち、下側から支持可能な部位である。また、第1当接部15及び第2当接部16と、第3当接部17の一部とに関しては、基本姿勢にあるエンジン11を鉛直方向下側から視認した場合においても視認可能な部位であるのに対し、第3当接部17の一部と第4当接部18とに関しては、基本姿勢にあるエンジン11を鉛直方向下側から視認しても視認不可能な部位であって、上記のようにエンジン11を傾けることによって鉛直方向下側から視認可能となる部位である。そして、各当接部15〜18が各支持部5〜8と上下に当接して支持されることで、エンジン11が上記の傾きで保持されるように構成されている。
【0027】
次に、図12を参照して、載置姿勢にあるエンジン11の重心位置と、支持部5〜8に支持される当接部15〜18との位置関係について説明する。尚、図12は、載置姿勢にあるエンジン11を鉛直方向下側から視認した図であり、点Xは載置姿勢にあるエンジン11の重心位置を示している。
【0028】
図12の左右方向(トレー1の長手方向)において、載置姿勢にあるエンジン11の重心Xに対し、第1当接部15は左側に位置し、第2及び第3当接部16、17は右側に位置し、第4当接部18はほぼ左側(一部重心Xと重なる)に位置する。さらに、図12の上下方向(トレー1の短手方向)において、載置姿勢にあるエンジン11の重心Xに対し、第1及び第2当接部15、16は図の下側に位置し、第4当接部18は図の上側に位置し、第3当接部17はほぼ図の上側(一部重心Xと重なる)に位置する。このため、図2に示すように、各当接部15〜18の任意の点の間を結ぶ仮想直線Yを引いた場合に、当該仮想直線Yで囲まれる領域に、載置姿勢にあるエンジン11の重心Xを通る仮想鉛直線が位置するようになっている。
【0029】
また、図1、図3等に示すように、エンジン11の第1当接部15を支持する第1支持部5の上面は、トレー1の長手方向中央部側に向けて下方傾斜している。加えて、第3当接部17は、エンジン11を基本姿勢から載置姿勢へと傾ける際の回転軸と同方向に延びる(トレー1の短手方向に沿って延びる)略円筒体の下面側の一部であり、当該第3当接部17を支持する第3支持部7の上面は、断面略円弧状をなしている。さらに、第3支持部7は、前記円筒体先端側のテーパ部にも当接して支持可能なように、トレー1の短手方向においてエンジン11の重心Xが載置される側に向けて下方傾斜している部位を備えている。また、第2支持部6は凹状をなしており、第2当接部16を下側から支持する部位と、第2当接部16の両側方に立設する部位とを備えている。
【0030】
加えて、図1、図2に示すように、1つのトレー1において一対で設けられる載置部2は、トレー1の中央部を中心として互いに点対称形状をなしている。そして、図14、図15に示すように、1つのトレー1に2つのエンジン11が向かい合わせで載置されるようになっている。さらに、各トレー1に載置されたエンジン11は、3つのトレー1を載置可能な図示しないパレットにトレー1ごと載せられて運搬されるようになっている。
【0031】
また、トレー1は、いずれの部位においても肉厚がほぼ一定であり、トレー1の外側形状と、トレー1の内側形状とがほぼ同じ形状をなしている上、トレー1は上下方向において適宜テーパ状をなしている。このため、複数のトレー1をその長手方向を揃えるようにして上下に積み重ねる(ネスティングする)ことができるようになっている。
【0032】
尚、トレー1は、図14等に示すように、当該トレー1に載置されたエンジン11の側面の大部分を側方から視認可能となるように構成されており、トレー1に載置されたエンジン11の側方から当該エンジン11の下側に作業用ロボットのアームや作業者の手を比較的容易に差し入れることができるようになっている。これにより、エンジン11をトレー1から取出したり、エンジン11をトレー1に設置したりする際の作業性の向上を図ることができる。
【0033】
以上詳述したように、本実施形態によれば、トレー1にエンジン11を載置すると、オイルパン14の下面が水平方向に対して30度傾いた載置姿勢となるように構成されている。このように、エンジン11を傾けることで、エンジン11のうち、オイルパン14以外の部位でエンジン11を下側から支持可能な部位を増やすことができる。本実施形態で言えば、第4当接部18を下側から支持可能にするとともに、第3支持部7を下側からより好適に(広い面積かつ広い角度で)支持可能にすることができる。従って、オイルパン14以外の部位だけを支持したとしても、エンジン11を比較的バランスよく保持することができるようになり、結果として、トレー1に載置されたエンジン11を安定状態で運搬等することができる。
【0034】
また、トレー1は第1〜第4支持部5〜8によってオイルパン14以外の部位を支持するだけでエンジン11を支持可能であることから、オイルパン14はトレー1のどこにも触れることなく、浮いた状態とされる。このため、オイルパン14がトレー1と衝突して変形・損傷し、オイル漏れを引き起こしてしまうといった事態を回避することができる。さらに、オイルパン14がトレー1と擦れてオイルパン14の表面に施された塗装が剥がれてしまうといった事態を回避することができる。
【0035】
また、トレー1に載置されたエンジン11は、オイルパン14の下面が下方を向く範囲で(30度程度)傾けられているため、エンジン11をトレー1から取出して車載する際に、エンジン11の向きを基本姿勢とするべく大幅に変化させる等の余分な作業を行う必要がなく、作業効率の向上を図ることができる。特に、本実施形態では、オイルパン14にエンジンオイルが充填された状態のエンジン11がトレー1に載置されるように構成されているが、上記のように、トレー1に載置されたエンジン11の傾きが30度程度であるため、当該トレー1を用いて、エンジンオイルの流出を防止しつつ、安定して運搬等することができる。
【0036】
さらに、本実施形態のトレー1は、各載置部2においてそれぞれエンジン11を支持する4つの支持部5〜8を備えており、載置姿勢にあるエンジン11の重心Xを通る仮想鉛直線が、各支持部5〜8の任意の点の間を結ぶ仮想線Yで囲まれる領域に位置するように構成されている。このため、支持部5〜8によってエンジン11をよりバランスよく支持することができ、がたつき等を防止しつつ、エンジン11をより安定して運搬等することができる。
【0037】
また、例えば、トレー1に載置された状態のエンジン11の重心Xを通る仮想鉛直線が、各支持部5〜8の任意の点を結ぶ仮想線Yで囲まれる領域を外れる場合、エンジン11の重心X側への傾倒変位を防止するべく、支持部をアンダーカット形状にしてその下面にエンジン11を潜り込ませるようにして当接させるようにすることが考えられる。しかしながら、この場合、エンジン11のトレー1への着脱作業が比較的面倒なものになる上、トレー1の生産性の低下等を招くおそれがある。これに対し、本実施形態では、支持部5〜8をアンダーカット形状にしなくても済むことから、かかる不具合を回避することができる。さらには、トレー1にアンダーカット形状がないことによって、トレー1をネスティング可能に構成することができる。
【0038】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0039】
(a)上記実施形態では、トレー1に載置されるワークとしてエンジン11が適用されているが、下面側にオイルパン14が装着されるその他のワークに適用することも可能である。例えば、クランクケース、クランクケースとシリンダとが一体となったエンジンブロック、エンジンオイルが充填されていない状態のエンジン、ギアオイルを溜めることのできるオイルパンが装着されたトランスミッション等が挙げられる。
【0040】
(b)上記実施形態では、エンジン11は、トレー1の第1〜第4支持部5〜8によって第1〜第4当接部15〜18において支持されているが、エンジン11のうちトレー1に支持される箇所の配置や数については特に限定されるものではない。但し、トレー1に載置されたエンジン11の安定化を図るべく、エンジン11はトレー1に3点以上で支持されることが望ましく、さらに、支持部5〜8の任意の点の間を結ぶ仮想線で囲まれる領域にエンジン11の重心Xを通る仮想鉛直線が位置するように構成されることがより望ましい。
【0041】
尚、上記実施形態では、第1〜第4支持部5〜8の高さ位置がいずれも異なっている上、エンジン11をトレー1に載置した状態でもエンジン11の側面の大部分が露出して視認可能に構成されている。これにより、エンジン11をトレー1に設置する際に、例えばエンジン11をトレーの枠状部位の内側に挿通させなくてはならないような構成のものに比べて作業性の向上を図ることができる上、トレーの枠状部位とエンジン11との間に隙間ができ、エンジン11の水平方向へのがたつきを招いてしまうといった事態を回避することができる。
【0042】
(c)上記実施形態では、エンジン11がトレー1に載置され、各支持部5〜8に支持されることで水平方向に対して30度傾けられるように構成されているが、特にかかる傾き具合に限定されるものではなく、トレー1に載置されるワークの形状やオイルの充填状況等に応じて適宜変更可能である。但し、エンジン11を傾けすぎてしまうと、取出し作業性の低下を招いたりする等の不具合を招くおそれがあるため、60度以下とするのが望ましく、さらには、45度以下とすることがより望ましい。
【0043】
また、上記実施形態では、1つのトレー1に2つのエンジン11を載置可能に構成されているが、1つのトレー1に載置可能なエンジン11の数は1つでもよいし、3つ以上でもよい。さらに、上記実施形態では、トレー1に載置される2つのエンジン11は、所定の面(載置姿勢とされることで若干下側を向くこととなる面)同士が向き合わせで(互いに水平に180度回転した向きで)載置されるが、特に当該構成に限定されるものではなく、例えば、同じ向きで載置されるように構成してもよい。加えて、上記実施形態では、トレー1はネスティング可能に構成されているが、ネスティングができない構成であってもよい。
【0044】
(d)上記実施形態において、支持部5〜8は、各載置部2の内周側に向けて下方傾斜していることとしてもよい。この場合、エンジン11をトレー1に載置すると、エンジン11は載置部2の内周側、かつ、下方へと案内されることとなる。そして、エンジン11は複数の支持部5〜8に当接して下方への変位が規制されるまで下方に変位すると、複数の支持部5〜8によって水平方向への相対変位についても規制された状態(水平方向に変位する余地がなくなった状態)とされる。これにより、エンジン11をトレー1に載置する作業性の向上を図ることができるとともに、エンジン11のがたつきをより確実に防止することができ、オイルパン14とトレー1とが衝突するといった事態をより確実に回避することができる。尚、支持部5〜8が上記のように傾斜していなくても、対応する当接部15〜18の当接面が載置部2の内周側に向けて下方傾斜していれば、同様の作用効果が奏される。
【0045】
加えて、エンジン11をトレー1に載置する際に、エンジン11をどの程度傾けるかを把握し易くするために、例えば、トレー1の側面にエンジン11の傾斜の程度を示すライン(斜めに延びる突状部)を形成してもよい。さらに、エンジン11をトレー1に載置する際に、エンジン11をどの向きで載置すればよいのかを把握し易くするために、例えば、エンジン11の形状の特徴部分を模倣したデザインをトレー1の側面に施してもよい。
【0046】
(e)また、図16に示すように、支持部5〜8の少なくとも1つ(望ましくは2つ、図16では第1支持部5及び第2支持部6)に対して、トレー1本体を構成する材料よりも削れにくい材料で構成される緩衝部材31を取付けることとしてもよい。この場合、トレー1本体の支持部5〜8を形成する部位がエンジン11の角部で削れてしまうことを防止することができる。また、緩衝部材31は、トレー1本体の構成材料よりも削れにくい材料で構成されることから、削りカスがエンジン11に付着してしまうといった事態を抑制することができる。さらに、トレー1本体を構成する材料よりも弾性を有するウレタンゴム等の材料で緩衝部材31を構成することによって、エンジン11をトレー1に載置した際の衝撃や、運搬に際して振動した場合の衝撃を緩和することができる。加えて、緩衝部材31は別部材であることから、万一、緩衝部材31が損傷した場合には、緩衝部材31を交換するだけでトレー1を再度使用することもでき、省資源化等を図ることができる。
【0047】
尚、緩衝部材31としては、ウレタンゴム等のゴム材料に限定されるものではなく、少なくともトレー1本体を構成する材料よりも削れにくい材料であればよい。例えば、ポリアセタール等の(摺動性に優れた)樹脂材料で構成することも可能である。また、緩衝部材31は、位置ずれ等を防止するべく、トレー1の本体に対してリベットやボルト等を用いて取付けられることが望ましい。
【0048】
(f)上記実施形態では、トレー1はポリプロピレンにより構成されているが、ポリエチレン、PET、ポリアミド等その他の樹脂材料によって構成されることとしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…トレー、2…載置部、5…第1支持部、6…第2支持部、7…第3支持部、8…第4支持部、11…エンジン、14…オイルパン、15…第1当接部、16…第2当接部、17…第3当接部、18…第4当接部、31…緩衝部材、X…重心。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面側にオイルパンが装着されたワークの運搬に使用されるトレーであって、
前記オイルパンの下面が下方を向く範囲で水平方向に対して傾斜した姿勢にある前記ワークのうち前記オイルパン以外の部位と上下に当接する支持部を備え、前記支持部だけで前記ワークを支持可能に構成されていることを特徴とするトレー。
【請求項2】
前記支持部は、前記ワークを少なくとも3点で当接支持するとともに、前記支持部に支持された前記ワークの重心を通る仮想鉛直線が、前記支持部による前記ワークの当接支持点の間を結ぶ仮想直線で囲まれる領域に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のトレー。
【請求項3】
前記支持部には、トレー本体を構成する材料よりも削れにくい材料で構成される緩衝部材が取付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のトレー。
【請求項4】
前記支持部、及び、前記ワークの前記支持部との当接面のうち少なくとも一方は、トレーの内周側に向けて下方傾斜していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトレー。
【請求項1】
下面側にオイルパンが装着されたワークの運搬に使用されるトレーであって、
前記オイルパンの下面が下方を向く範囲で水平方向に対して傾斜した姿勢にある前記ワークのうち前記オイルパン以外の部位と上下に当接する支持部を備え、前記支持部だけで前記ワークを支持可能に構成されていることを特徴とするトレー。
【請求項2】
前記支持部は、前記ワークを少なくとも3点で当接支持するとともに、前記支持部に支持された前記ワークの重心を通る仮想鉛直線が、前記支持部による前記ワークの当接支持点の間を結ぶ仮想直線で囲まれる領域に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のトレー。
【請求項3】
前記支持部には、トレー本体を構成する材料よりも削れにくい材料で構成される緩衝部材が取付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のトレー。
【請求項4】
前記支持部、及び、前記ワークの前記支持部との当接面のうち少なくとも一方は、トレーの内周側に向けて下方傾斜していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトレー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−75689(P2013−75689A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217066(P2011−217066)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】
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