説明

トンネル入口部の照明装置

【課題】電力使用量の削減を図ることができ、しかも照明具の照射量を無段階式に調光することができるトンネル入口部の照明装置を提供する。
【解決手段】トンネル入口から一定距離の区間において、入口側の野外輝度に対応した明るさからトンネル奥側の基本照明の明るさまで照明具の照射量を徐々に落とすように調光可能としたトンネル入口部の照明装置であって、トンネル外部に輝度計を設け、またトンネル入口部内に複数個のLED照明具を設けて、前記輝度計とLED照明具とを制御器を介して接続するとともに、この制御器から発せられる野外輝度に対応した出力信号によりLED照明具の照射量を無段階式に調光するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力使用量の削減を図ることができ、しかも照明具の照射量を無段階式に調光することができるトンネル入口部の照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本の高速道路は山岳部を通過する路線が多いため必然的にトンネルも多く、一般的にはトンネルは屋外の道路に比べると多くの設備が設置されることから省エネルギー化が重要な課題となっている。特に、トンネルの中心的設備である照明装置については、省エネタイプで環境にやさしい照明システムの開発が求められている。
【0003】
前記トンネルの照明装置として、例えば、特許文献1や特許文献2に示されるように、入口部照明と称される入口部に設けられる照明装置がある。これは、昼間にドライバーがトンネルに侵入した際に生じる急激な輝度の変化と、侵入直後から起きる眼の順応の遅れを緩和するために設置される装置であり、入口から一定距離の間をドライバーの眼に違和感が生じないように輝度を徐々に落としていくよう調光した照明を行っている。
【0004】
また、前記トンネル入口部の照明装置の光源としては、高圧ナトリウムランプやセラミックメタルハライドランプ等の高圧金属蒸気放電ランプが広く用いられている。この高圧金属蒸気放電ランプは、消灯後は一定時間を経過するまでは再点灯できないため、突然のにわか雨などで野外輝度が低下した場合にこの輝度に合わせて照明具を消灯すると、直後に晴れて輝度が上がった場合は、点灯信号が出力されても照明具を即座に点灯することができず、入口照明の明るさが野外輝度に追従しなくなるという問題があった。また、消費電力が大きいという問題もあった。
【0005】
一方、従来の高圧金属蒸気放電ランプや蛍光灯などを使用した場合における照明量の調光方法は、一例をあげると、4本の電源ラインを用意しておき、野外輝度に応じて、4本の電源ラインの全部を点灯、1本の電源ラインを消灯し3本の電源ラインを点灯、2本の電源ラインを消灯し2本の電源ラインを点灯、1本の電源ラインのみを点灯というように4段階のうちの何れかを選択するように制御を行い、選択した条件に従って明るさを変化させるという制御手段が採用されていた。
【0006】
即ち、この場合の調光は、電源ラインのスイッチオン・オフによりそのラインに接続してある全ランプの点灯・消灯を行い、4段階のうちの何れかを選択する制御方法であり、各制御レベル間の照射量の変化量が大きいものであった。この結果、制御レベルの切り換時にはドライバーに違和感を与えることとなって走行環境が低下するという問題があった。更には、例えば51%の点灯量が必要な場合、制御条件としてはそれを下回らないレベルである75%点灯(1本の電源ラインを消灯し3本の電源ラインを点灯)の指令が出るため、電力使用量が10%以上もオーバーした状態で点灯することになるという問題があった。
【0007】
また、これを避けるために制御条件を細かくして各レベル間における段階的な変化量を小さくすることが考えられるが、制御条件が複雑化し、また構造も複雑で設備コストが高くなるという問題があった。また、ランプのオンオフ制御のためランプの点灯を俊敏に追従させることが難しいという問題も残っていた。更には、従来の高圧金属蒸気放電ランプや蛍光灯等では、スイッチのオン・オフ制御であるためランプの照射量を無段階式に変化させることができず、ドライバーに違和感を与えることのないランプの照射量の無段階式の調光方法の開発が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−225559号公報
【特許文献2】特開平5−135880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような問題点を解決して、野外輝度に対応させて照明具の照射量を最適に制御することができて電力使用量の削減を図ることができ、また照明具の照射量を無段階式に調光することができてドライバーに違和感のない走行環境を提供することができるトンネル入口部の照明装置を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明のトンネル入口部の照明装置は、トンネル入口から一定距離の区間において、入口側の野外輝度に対応した明るさからトンネル奥側の基本照明の明るさまで照明具の照射量を徐々に落とすように調光可能としたトンネル入口部の照明装置であって、トンネル外部に輝度計を設け、またトンネル入口部内に複数個のLED照明具を設けて、前記輝度計とLED照明具とを制御器を介して接続するとともに、この制御器から発せられる野外輝度に対応した出力信号によりLED照明具の照射量を無段階式に調光するようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
前記輝度計にレベル選択盤と電磁開閉器が接続され、この電磁開閉器に複数の電源ラインが接続されているとともに、各電源ラインに沿って複数個のLED照明具が配設されており、これらのLED照明具が制御器を介して輝度計に連結されているものが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、トンネル外部に輝度計を設け、またトンネル入口部内に複数個のLED照明具を設けて、前記輝度計とLED照明具とを制御器を介して接続するとともに、この制御器から発せられる野外輝度に対応した出力信号によりLED照明具の照射量を無段階式に調光するようにしたので、トンネル入口部の明るさが入口側から奥側に向けて徐々に落ちてゆくとともに、トンネル入口部の明るさは野外輝度に対応して自動的に変動することとなる。しかも、従来の高圧金属蒸気放電ランプなどのオンオフによる段階式の制御と異なり、LED照明具の照射量を野外輝度に対応させて調光するため、無段階式の制御が可能となり、ドライバーがトンネルに侵入した場合に何の違和感も覚えることがなく自然にトンネル内の明るさに順応できることとなる。しかも、LED照明具の照射量を無段階式に制御して野外輝度に対応した最適値とするので、従来のように過剰な照射量になることがなく、電力消費量を大幅に改善することが可能となる。
【0013】
また、請求項2に係る発明では、輝度計にレベル選択盤と電磁開閉器が接続され、この電磁開閉器に複数の電源ラインが接続されているとともに、各電源ラインに沿って複数個のLED照明具が配設されており、これらのLED照明具が制御器を介して輝度計に連結されているものとしたので、従来の照明装置を利用してよりキメの細かい制御を行い、LED照明具の照射量を野外輝度に対応した最適値に制御できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】野外輝度を説明するための概略図である。
【図2】本発明の照明具の回路図である。
【図3】本発明の照明具と制御器の連結イメージを示す概略図である。
【図4】本発明におけるトンネル入口部の距離と路面輝度の関係を示すグラフである。
【図5】従来例の照明具と制御器の連結イメージを示す概略図である。
【図6】従来例におけるトンネル入口部の距離と路面輝度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ本発明について説明する。
本発明は、トンネル入口から一定距離の区間において、入口側の野外輝度に対応した明るさからトンネル奥側の基本照明の明るさまで照明具の照射量を落とすように制御するトンネル入口部の照明装置である。
【0016】
前記野外輝度とは、図1に示すように、トンネル20の入口手前150mの地点、地上1.5mからトンネル坑口20aを見たときの、トンネル坑口20aを中心とした視角20度の円形視野内の平均輝度を意味する。
また、基本照明とは、トンネルを走行する運転者が障害物を安全な視野距離から視認するために必要な明るさを確保するための照明であり、トンネル全長に渡って照明具を原則として一定間隔に配置する。また、入口部照明とは、昼間、運転者がトンネルに接近する際に生じる急激な輝度の変化と、進入直後から起きる眼の順応の遅れを緩和するための照明であり、前記基本照明と入口照明を加えたものをいう。なお、トンネルの設計上、明るさは路面輝度(cd/m)を意味している。
【0017】
本発明では、トンネル外部に輝度計を設け、またトンネル入口部内に複数個のLED照明具を設けて、前記輝度計とLED照明具とを制御器を介して接続するとともに、この制御器から発せられる野外輝度に対応した出力信号によりLED照明具の照射量を無段階式に調光する構造となっている。
図2にこの照明具の回路図の一例を示す。図において、1はLED照明具、2はトンネル入口側の屋外にセットされる輝度計、3はLED照明具1と輝度計2の間に設置する制御器である。なお、この照明装置の電源は、交流電圧で送電されている商用電力を使用する。また、4は基本照明を制御するためのレベル選択盤、5はこのレベル選択盤4からの制御指令に従って電源を開閉する電磁開閉器であり、従来と同様のものである。
【0018】
LED照明具1は、発光ダイオードからなる照明具のことであり、P型半導体とN型半導体を接合したPN接合構造で作られており、原理的には電子の持つエネルギーを光エネルギーに変換することで発光するものである。このLED照明具1は、トンネル入口側から奥側に向けて徐々に個数が減っていくように配設されている。また、輝度計2は従来から使用されている一般的な野外用の輝度計である。
【0019】
本発明では、このLED照明具1と輝度計2とを制御器3を介して接続するとともに、この制御器3から発せられる野外輝度に対応した出力信号によりLED照明具1の照射量を無段階式に調光する点に特徴を有する。
即ち、輝度計2で計測した輝度信号は制御器3に入力されると、信号変換基板3aを経てLED調光制御装置3bに入力される。このLED調光制御装置3bは、野外輝度に対応してLED照明具1の照明量を最適なものとする制御信号を出力するようにプログラムされており、この信号に対応してLED照明具1の照明量が決定される。
また、このLED照明具1は、従来の高圧金属蒸気放電ランプと異なり、照射量をオンオフ制御でなく供給される電力に応じて無段階式に変化するので、前記LED調光制御装置3bからの信号に従い供給する電力をコントロールすることや、LED照明具1の配置位置、個数等を調整することによって、路面輝度を5〜100%の範囲で無段階式かつ自由に調整することが可能である。この結果、従来のように無駄に明るい照射をすることなく任意の最適照射量に調整することが可能で、電力使用量の大幅な削減を図ることができ、またドライバーに対しても優しい照明となる。更には、屋外輝度が頻繁に変化してもタイムラグがなく即座に追従して最適照射量とすることができるので、安全性の高い照明を確保することができる。
【0020】
このように、本発明の照明装置は、輝度計とLED照明具と制御器を組み合わせ、制御器から発せられる野外輝度に対応した出力信号によりLED照明具の照射量を無段階式に調光するようにした点に特徴を有するものであるが、輝度計にレベル選択盤と電磁開閉器が接続され、この電磁開閉器に複数の電源ラインが接続されているとともに、各電源ラインに沿って複数個のLED照明具が配設されており、これらのLED照明具が制御器を介して輝度計に連結されている構造とすることもできる。
【0021】
図3は、本発明を4本の電源ラインを有する従来の照明装置に適用した場合における照明具と制御器の連結イメージを示す概略図である。図において、■は基本照明1aを示し、□は入口照明のLED照明具1を示している。この基本照明1aは常時点灯させており、従来の蛍光灯を用いている。
【0022】
前記LED照明具1は、電磁開閉器5に接続された4本の電源ラインにそれぞれ取り付けられており、図中の上の電源ラインから下の電源ラインへ向かって徐々に取り付け個数が減少し、かつトンネル入口側から奥側に向けて徐々に個数が減っていくパターンで配置されている。この配設パターンについては、トンネルの長さ、高さ、巾、傾斜度、曲がり具合等の条件に応じて任意に設計することができる。
前記4本の電源ラインを、例えば、上から順にレベル1、レベル2、レベル3、レベル4とする。これらの電源ラインは、レベル選択盤4、及び電磁開閉器5に接続されており、輝度計2からの出力信号に従って、晴天の場合はレベル1〜4の全てを点灯、明るい曇りの場合はレベル1を消灯しレベル2〜4を点灯、暗い曇りの場合はレベル1〜2を消灯しレベル3〜4を点灯、雨降り及び夕方の場合はレベル1〜3を消灯しレベル4のみを点灯するように制御されている。
【0023】
更に、前記レベル1〜4の全てのLED照明具1は、各レベル毎のLED照明具を一つのグループとして4本のケーブルにより制御器3に接続されている。この制御器3は、輝度計2からの出力信号を受け、また、LED照明具1の配置位置、個数等を調整することによって、路面輝度を5〜100%の範囲で無段階式かつ自由に調光するように制御するものである。従って、LED照明具1は、前述したレベル1〜4の4段階の制御に加えて、制御器3による無段階式の制御により照射量がコントロールされることとなり、キメの細かい制御が行われることとなる。
【0024】
上記のような構造とした本発明の照明装置におけるトンネル入口部の距離と路面輝度の関係を図4のグラフに示す。このグラフの上から1番目の線(輝度2400cd/m)、5番目の線(輝度1800cd/m)、9番目の線(輝度1200cd/m)、13番目の線(輝度600cd/m)が前述したレベル1〜4に相当する線である。
本発明では、LED照明具1の照射量を制御器3により各レベル間を更に4等分し細かく制御しているので、よりキメの細かい制御が行われることが判る。この結果、LED照明具の照射量を野外輝度に対応した最適値に制御できるので、従来のように過剰な照射量になることがなく、電力消費量を大幅に改善することが可能となる。しかも、LED照明具を使用するため、屋外輝度が頻繁に変化してもタイムラグがなく即座に追従して最適照射量とすることが可能である。
【0025】
なお、図3ではレベル1〜4の4本の電源ラインを有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意の本数の電源ラインとすることができることは勿論である。また、LED照明具の照射量は制御器により各レベル間を4等分するように制御している場合について説明したが、更に細かい数に等分してよいことは勿論であり、最終的には無段階式に制御することが好ましい。
【0026】
(比較例)
図5は、従来例における照明具と制御器の連結イメージを示す概略図であり、図6は、この場合のトンネル入口部の距離と路面輝度の関係を示すグラフである。図中の各番号は図3と同じであるが、比較例では、照明具は高圧金属蒸気放電ランプや蛍光灯を用いている。
比較例のものでは、照射量の制御は電磁開閉器5に接続される4本の電源ラインの選択のみで行われるため、キメの粗い制御となり、制御レベル間の照射量の変化量が大きく、制御レベルの切り換時にはドライバーに違和感を与えることがわかる。また、照射量も制御も粗いため、電力使用量がかなりオーバーした状態で点灯する場合がある。更には、ランプのオンオフ制御のためランプの点灯を俊敏に追従させることが難しいものである。
【0027】
以上に説明したように、本発明ではトンネル外部に輝度計を設け、またトンネル入口部内に複数個のLED照明具を設けて、前記輝度計とLED照明具とを制御器を介して接続するとともに、この制御器から発せられる野外輝度に対応した出力信号によりLED照明具の照射量を無段階式に調光するようにしたので、屋外輝度に追従して最適な照射量をキメ細かく設定することができる。
また、従来の高圧金属蒸気放電ランプ等の場合、野外輝度の急激な変化があると即座に点灯することができず、入口照明の明るさを野外輝度に追従させることが難しかったが、本発明ではLED照明具を使用しているので野外輝度の急激な変化にも即座に対応することが可能である。しかも、LED照明具は照射量を無段階式にコントロールできるので最適な照明量に制御して無駄な電力の使用を削減することができる。更には、制御器を介在させるというシンプルな構造で設備費を安価にできるという効果や、省エネ効果を高めることができる等の種々の効果も発揮できることとなる。
【符号の説明】
【0028】
1 LED照明具
1a 基本照明
2 輝度計
3 制御器
3a 信号変換基板
3b LED調光制御装置
4 レベル選択盤
5 電磁開閉器
20 トンネル
21a トンネル坑口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル入口から一定距離の区間において、入口側の野外輝度に対応した明るさからトンネル奥側の基本照明の明るさまで照明具の照射量を徐々に落とすように調光可能としたトンネル入口部の照明装置であって、トンネル外部に輝度計を設け、またトンネル入口部内に複数個のLED照明具を設けて、前記輝度計とLED照明具とを制御器を介して接続するとともに、この制御器から発せられる野外輝度に対応した出力信号によりLED照明具の照射量を無段階式に調光するようにしたことを特徴とするトンネル入口部の照明装置。
【請求項2】
輝度計にレベル選択盤と電磁開閉器が接続され、この電磁開閉器に複数の電源ラインが接続されているとともに、各電源ラインに沿って複数個のLED照明具が配設されており、これらのLED照明具が制御器を介して輝度計に連結されている請求項1に記載のトンネル入口部の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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