説明

トンネル内の架線支持装置用碍子取り付け金具

【課題】 碍子数の異なる2つの別方式の架線支持装置に共用でき、またロックボルトのような打設位置にばらつきの生じるアンカボルトに柔軟に対応できる碍子取り付け金具を提供する。
【解決手段】 碍子取り付け金具1は、碍子接続部6を有するベース金具2と、これを架線の延長方向の両側部においてトンネルTの天井面に固定する一対のアンカボルト3とを具備する。ベース金具2は、両側部にアンカボルト3を挿通させるボルト孔列4,5を有する。各ボルト孔列4,5を構成する複数のボルト孔4a,5aは、架線の延長方向に相互間隔を置いて設けられ、一方のボルト孔4aは、架線の延長直交方向に長い長孔であり、他方のボルト孔5aは、架線の延長直交方向に長い長孔である。ベース金具2は、ボルト孔4a,5aの間に、架線の延長方向に相互間隔を置いて並ぶ3つの碍子接続部6を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気鉄道の架線を支持する碍子を吊り止めるために、トンネルの天井に固定される碍子取り付け金具に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル内に設備される架線支持装置の碍子取り付け金具として、従来、例えば特許文献1に記載されたベース金具が知られている。この架線支持装置は、単一の碍子で架線を支持するものである。ベース金具は、トンネル用剛体電車線の支持装置に用いられるもので、一対のアンカボルトにより、受け座金具を介してトンネルの天井に固定される。ベース金具には、アンカボルトを十分な遊びをもって貫通させる一対のボルト挿通孔が設けられる。受け座金具は下面が円柱面とされ、ベース金具の円弧凹面と面接触し、相互の固定角度を円柱面周りに調整可能とされる。
【特許文献1】特開2005−8040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
トンネル内の架線支持装置には、延線方向に並ぶ2個の碍子で架線を支持するものと、特許文献1に記載されるように、単一の碍子で架線を支持するものとがある。従来は、それぞれの方式ごとに異なる碍子取り付け金具が用意され、設置されている。これは部材の管理上も施工上も非効率的であるし、設備更新時に方式変更を要する場合には、新たに別の碍子取り付け金具を設置しなければならないという問題点がある。
また、例えば、古いトンネルには、レンガ覆工のものがあるが、そのようなトンネルの壁面に直接アンカボルトを打設すると、十分な固定強度を確保できない場合がある。この場合、レンガ覆工を貫通して地山に達する比較的深く、大径の孔(例えば、深さ1〜4m、直径50〜60mm)をボーリングマシンで削孔し、これにロックボルトと称される特殊なアンカボルトを挿入し、水圧膨張やモルタル充填の手法で地山に定着させることが行われている。このように施工されるロックボルトは、壁面に直接打設する通常のアンカボルトと比較して施工精度が低いし、下孔の掘削ポイントを選定するのレンガの目地を避けたり、地山の状態を考慮したりする必要から、相互間のピッチや中心位置に比較的大きなばらつきを生じる。このため、上記従来のベース金具では、ロックボルトのピッチや中心位置の大きなばらつきに対応することができない。
したがって、この発明は、一種類のもので、碍子数の異なる2つの方式に対応でき、またロックボルトのような打設位置にばらつきの生じるアンカボルトに柔軟に対応することができる碍子取り付け金具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明に係る碍子取り付け金具1は、碍子接続部6を有するベース金具2と、このベース金具2を架線の延長方向の両側部においてトンネルTの天井面に固定する一対のアンカボルト3とを具備する。ベース金具2は、両側部にアンカボルト3を挿通させるボルト孔4a,5aを有すると共に、当該両側部のボルト孔4a,5aの間に、架線の延長方向に相互間隔を置いて並ぶ3つの碍子接続部6を有する。
ベース金具2は、両側部に、それぞれアンカボルト3を選択的に挿通させるための第1および第2の2組のボルト孔列4,5を有するものとし、各ボルト孔列4,5を構成する複数のボルト孔4a,5aは、架線の延長方向に相互間隔を置いて設け、少なくとも一方のボルト孔列4を構成するボルト孔4aは、架線の延長直交方向に長い長孔とすることができる。
また、少なくとも一方のボルト孔列5を構成するボルト孔5aは、架線の延長方向に長い長孔とすることができる。
以上添付図面の符号を参照して説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0005】
この出願に係る発明の装置によれば、架線を2つの碍子で支持する方式と、単一の碍子で支持する方式の2方式に一種類の碍子取り付け金具で対応でき、設備更新時に方式の変更を要する場合にも、新たな碍子取り付け金具の追加的設置を要しないという効果がある。
またロックボルトのような、打設位置にばらつきの生じるアンカボルトに柔軟に対応することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は架線の延長方向から見た架線支持装置の一部を切り欠いた正面図、図2は架線の延長直交方向から見た架線支持装置の一部を切り欠いた側面図、図3は図1におけるIII−III断面図、図4は碍子取り付け金具の正面図、図5は碍子取り付け金具の底面図、図6は図4におけるVI−VI断面図である。
【0007】
図1ないし図4に示すトンネル内の架線支持装置21は、延線方向に並ぶ2個の碍子22で架線(剛体電車線23)を支持するものである。2個の碍子22は、下端において碍子支持プレート24で連結される。碍子支持プレート24の中央部に、架線の延線直交方向に延びるように剛体支持プレート25が結合され、その下に左右一対の剛体電車線23が支持される。碍子22は、上端において、本発明に係る碍子取り付け金具1に吊り止められる。
【0008】
碍子取り付け金具1は、ベース金具2と、これを架線の延長方向の両側部においてトンネルTの天井面に固定する一対のアンカボルト3とを具備する。
【0009】
ベース金具2は、架線の延長方向に長い細長板状の部材で、長手方向の両側部に、アンカボルト3を選択的に挿通させるための第1および第2の2組のボルト孔列4,5を有する。各ボルト孔列4,5を構成する複数のボルト孔4a,5aは、長手方向(架線の延長方向)に相互間隔を置いて設けられる。一方のボルト孔列4を構成するボルト孔4aは、架線の延長直交方向に長い長孔として形成され、他方のボルト孔列5を構成するボルト孔5aは、架線の延長方向に長い長孔として形成される。
【0010】
ベース金具2は、ボルト孔列4,5の間に、架線の延長方向に相互間隔を置いて並ぶ3つの碍子接続部6を有する。碍子接続部6は、ベース金具2の底面側に設けられ、碍子22の上端のT型の接続部22aを係合させる対向一対の係合部6aを有する。碍子22の接続部22aは、一対の係合部6a間に挿入して軸周りに90°回転させることによって、碍子接続部6に係合させることができる。
【0011】
碍子取り付け金具1をトンネルTの天井面に取り付ける場合には、予めトンネルTの天井に一対のアンカボルト3を打設しておく。このアンカボルト3をボルト孔4a,5aに通してナットで締め付けることにより、ベース金具2を天井面に固着する。トンネルTがレンガ覆工である場合などには、先に説明したように、ロックボルトと称される特殊なアンカボルトが用いられる。この場合、アンカボルト3のピッチや中心位置に大きなばらつきが生じていることがあるが、複数設けられているボルト孔4a,5aのいずれかを選び、かつその長孔の範囲で適宜ベース金具2の位置を調整することで容易にこれに対応して、アンカボルト3をボルト孔4a,5aに通すことができる。
【0012】
図7,8には、単一の碍子22で架線を支持するトンネル内の架線支持装置31を示す。この架線支持装置31においては、碍子22の下端に、架線の延線直交方向に延びるように剛体支持プレート26が結合され、その下に左右一対の剛体電車線27が支持される。この剛体電車線27は、先の実施形態における剛体電車線23とは形式の異なるものである。碍子22は、上端において、先の実施形態におけると同一の碍子取り付け金具1の中央の碍子接続部6に吊り止められる。すなわち、本発明に係る碍子取り付け金具1は、単一の碍子22で架線を支持する架線支持装置にも共用することができる。したがって、それぞれの方式ごとに異なる碍子取り付け金具が用意する必要がない。設備更新時に架線の支持方式の変更を要する場合にも、新たに別の碍子取り付け金具を設置する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】架線の延長方向から見た架線支持装置の一部を切り欠いた正面図である。
【図2】架線の延長直交方向から見た架線支持装置の一部を切り欠いた側面図である。
【図3】図1におけるIII−III断面図である。
【図4】ベース金具の正面図である。
【図5】ベース金具の底面図である。
【図6】図4におけるVI−VI断面図である。
【図7】架線の延長方向から見た他の実施形態の架線支持装置の正面図である。
【図8】架線の延長直交方向から見た他の実施形態の架線支持装置の側面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 碍子取り付け金具
2 ベース金具
3 アンカボルト
4 ボルト孔列
4a ボルト孔
5 ボルト孔列
5a ボルト孔
6 碍子接続部
6a 係合部
21 架線支持装置
22 碍子
22a T型の接続部
23 架線(剛体電車線)
24 碍子支持プレート
25 剛体支持プレート
26 剛体支持プレート
27 剛体電車線
31 架線支持装置
T トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの天井に固定され、架線を支持する碍子を下方に吊り止めるための金具であって、
碍子接続部を有するベース金具と、このベース金具を架線の延長方向の両側部においてトンネルの天井面に固定する一対のアンカボルトとを具備し、
前記ベース金具は、両側部にアンカボルトを挿通させるボルト孔を有すると共に、当該両側部のボルト孔の間に、架線の延長方向に相互間隔を置いて並ぶ3つの碍子接続部を有することを特徴とするトンネル内の架線支持装置用碍子取り付け金具。
【請求項2】
前記ベース金具は、両側部に、それぞれアンカボルトを選択的に挿通させるための第1および第2の2組のボルト孔列を有し、各ボルト孔列を構成する複数のボルト孔は、架線の延長方向に相互間隔を置いて設けられ、少なくとも一方のボルト孔列を構成するボルト孔は、架線の延長直交方向に長い長孔であることを特徴とする請求項1に記載のトンネル内の架線支持装置用碍子取り付け金具。
【請求項3】
前記ベース金具は、両側部に、それぞれアンカボルトを選択的に挿通させるための第1および第2の2組のボルト孔列を有し、各ボルト孔列を構成する複数のボルト孔は、架線の延長方向に相互間隔を置いて設けられ、少なくとも一方のボルト孔列を構成するボルト孔は、架線の延長方向に長い長孔であることを特徴とする請求項1に記載のトンネル内の架線支持装置用碍子取り付け金具。
【請求項4】
前記ベース金具は、両側部に、それぞれアンカボルトを選択的に挿通させるための第1および第2の2組のボルト孔列を有し、各ボルト孔列を構成する複数のボルト孔は、架線の延長方向に相互間隔を置いて設けられ、一方のボルト孔列を構成するボルト孔は、架線の延長方向に長い長孔であり、他方のボルト孔列を構成するボルト孔は、架線の延長方向に長い長孔であることを特徴とする請求項1に記載のトンネル内の架線支持装置用碍子取り付け金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−137810(P2010−137810A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318381(P2008−318381)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)