説明

トンネル壁面の撮影方法及びトンネル壁面撮影装置、並びに、トンネルボーリングマシン

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、トンネル壁面画像を撮影するトンネル壁面の撮影方法およびトンネル壁面撮影装置、並びに、上記トンネル壁面撮影装置が搭載されたトンネルボーリングマシン(以下、TBMと略称する)に関する。
【0002】
【従来の技術】TBM等によってトンネルを掘削する場合に、トンネルの壁面の状態を撮影して記録したり、この記録を調べて岩盤の良否判定を行ったりしている。従来、トンネル壁面を撮影する場合には、以下のような方法によって行っている。
(1)トンネルの壁面に向けてセットしたカメラを、360度回転させながら撮影する。
(2)トンネル軸上を移動する球面や円錐の凸面鏡に映るトンネル壁面映像を、トンネル軸上に上記凸面鏡に向けてセットされたカメラで撮影する(特公平8−2562059号公報)。
【0003】(1)の方法は、具体的には以下のように行う。すなわち、トンネル軸上にトンネルの壁面に向けてCCDカメラ等をセットする。そして、上記CCDカメラを360度回転させながらトンネル壁面を撮影し、壁面画像と回転角度とをVTRまたは磁気テープに記録する。展開画像への変換に際しては、画像上のトンネル軸方向にスキャンライン(直線)を設け、所定角度毎に1ラインずつ切り取って展開画像として貼り付ける。
【0004】また、(2)の方法は、具体的には以下のように行う。すなわち、図10に示すように、外筒2を有する撮像装置1をTBMの後方に取り付けて、トンネル軸上を前進させる。そして、外筒2の側面に設けられた透明窓3から透過するトンネル壁面からの光を球面4で上記トンネル軸の方向に反射し、上記トンネル軸上に設置された電子カメラ5で撮影して記録する。こうして得られた円形の画像の展開画像への変換に際しては、画像上にスキャンライン(円形)を設け、所定距離毎に1ラインずつ切り取って展開画像として貼り付ける。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のトンネルの壁面に向けてセットしたカメラを360度回転させながら撮影する第1の方法や、トンネル軸上を移動する球面や円錐の凸面鏡に映るトンネル壁面映像をカメラで撮影する第2の方法には、以下のような問題がある。
【0006】先ず、第1の方法においては、上記カメラを360度回転させる1回の撮影には3〜5分を要する。そして、その間は、振動等による撮影誤差が生ずる可能性があるために、上記カメラ等の機器の設置や撤去および撮影中は、他の作業を停止しておく必要がある。したがって、トンネルの掘削作業に支障を来すという問題がある。また、上記カメラを所定角度ずつ回転させながら撮影を繰り返す必要があるために、個々の撮影の間にカメラとトンネル壁面との間に作業者や障害物や粉塵等が介在して画像の欠落部が生じたり、照明状態の変化が生じたりし易いという問題もある。
【0007】また、上記第1,第2の方法に共通の問題として、トンネルの断面形状は円形であり、カメラや撮像装置1等の機器の設置位置はトンネル軸上であるという条件を満たす必要がある。もし、上記2つの条件を満たさない場合には、トンネル壁面の展開画像に歪みが生じてしまうために、非円形(例えば、幌型,馬蹄型,複合型等)の断面形状を呈するトンネルには適用できないという問題がある。
【0008】そこで、この発明の目的は、カメラを回転することなくトンネル壁面を短時間に撮影でき、断面形状が非円形のトンネルであっても歪みのない展開画像を得ることができるトンネル壁面の撮影方法、および、トンネル壁面撮影装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に係る発明のトンネル壁面の撮影方法は、超広角の側方映像を取りこむ光学系が装備された電子カメラをトンネル軸方向に向けてトンネル壁面を撮像し、得られたディジタル画像データを画像記憶部に記憶し、上記ディジタル画像データの画素データに対して,この画素データに基づく画像に係るトンネル壁面と上記光学系との距離に応じた処理を行って,トンネルの周方向に渡ってトンネル軸方向に同じ幅のトンネル壁面に係るディジタル画像データを同一画素数の画素データで成した広方位画像を得るようにしたことを特徴としている。
【0010】上記構成によれば、超広角の側方映像を取りこむ光学系を装備した電子カメラをトンネル軸方向に向け、上記光学系および電子カメラが上記トンネル軸方向に所定距離前進した時にトンネル壁面を撮像するので、トンネル壁面の広方位画像が瞬時に且つ連続して撮像される。さらに、得られる広方位画像は、上記光学系の位置が上記トンネル軸からずれていても、トンネルの周方向に渡ってトンネル軸方向に同じ幅のトンネル壁面に係るディジタル画像データが同一画素数の画素データで成された広方位画像である。したがって、断面形状が非円形のトンネルであっても歪みのない展開画像が得られる。
【0011】また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明のトンネル壁面の撮影方法において、上記電子カメラによる撮影は少なくとも2箇所で実施し、上記電子カメラによる撮影毎に同一断面付近のトンネル壁面に係る広方位画像を得、その後に、上記各撮影毎に得られた同じトンネル壁面に係る広方位画像のディジタル画像データを繋ぎ合わせて一つの広方位画像を得ることを特徴としている。
【0012】上記構成によれば、1台の電子カメラに装備された光学系の視野角中にトンネル壁面からの光を遮る物体がある場合には、当該電子カメラによって得られた上記広方位画像中の上記物体のディジタル画像データを、他の電子カメラによって得られた上記広方位画像中の上記物体の位置に相当する位置のトンネル壁面のディジタル画像データで置き換えられて、上記物体が存在しない広方位画像が得られる。
【0013】また、請求項3に係る発明のトンネル壁面撮影装置は、超広角の側方映像を取りこむ光学系が装備された電子カメラと、上記電子カメラをトンネル軸方向に向けて撮像されたトンネル壁面のディジタル画像データを記憶する画像記憶部と、上記ディジタル画像データの画素データに対して,この画素データに基づく画像に係るトンネル壁面と上記光学系との距離に応じた処理を行って,トンネルの周方向に渡ってトンネル軸方向に同じ幅のトンネル壁面に係るディジタル画像データを同一画素数の画素データで成した広方位画像を得る画像処理部を備えたことを特徴としている。
【0014】上記構成によれば、請求項1に係る発明の場合と同様に、トンネル壁面の広方位画像が瞬時に且つ連続して撮像される。さらに、断面形状が非円形のトンネルであっても歪みのない展開画像が得られる。
【0015】また、請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明のトンネル壁面撮影装置において、上記電子カメラによる撮影は少なくとも2箇所で実施し、上記画像処理部は、同一断面付近のトンネル壁面に係る広方位画像を上記電子カメラによる撮影毎に得た後、上記各撮影毎に得られた同じトンネル壁面に係る広方位画像のディジタル画像データを繋ぎ合わせて一つの広方位画像を得るようになっていることを特徴としている。
【0016】上記構成によれば、請求項2に係る発明の場合と同様に、1台の電子カメラに装備された光学系の視野角中にトンネル壁面からの光を遮る物体があっても、他の電子カメラによって得られた上記広方位画像中のディジタル画像データに基づいて、上記物体が存在しない広方位画像が得られる。
【0017】また、請求項5に係る発明のTBMは、請求項3あるいは請求項4に係る発明のトンネル壁面撮影装置が搭載されたことを特徴としている。
【0018】上記構成によれば、トンネルを掘削しつつ、上記トンネルの周方向に渡ってトンネル軸方向に同じ幅のトンネル壁面に係るディジタル画像データを同一画素数の画素データと成す広方位画像が撮影される。こうして、トンネル掘削直後の非円形トンネル壁面の歪みの無い画像が、トンネル掘削作業を中断することなく容易に撮像される。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。図1は、本実施の形態のトンネル壁面撮影装置が搭載されたTBMの縦断面図である。TBM11は、掘削手段12とスキンプレート13a,13bとビーム体14を有している。掘削手段12は、ビーム体14の先端に設けられたローラビット15を有するカッタ板16等で構成され、カッターモータ17で駆動される。また、スキンプレート13a,13bは、掘削手段12の後方に位置してビーム体14を覆う外殻体を構成している。そして、前部(スキンプレート13a側)に設けられたフロントグリッパ18と後部(スキンプレート13b側)に設けられたリアグリッパ19とによって交互に地山で反力を取りながら、両グリッパ18,19間に配設された推進ジャッキ20を伸縮させながらトンネルを掘り進む。
【0020】上記ビーム体14における後端は、スキンプレート13bの後端から推進ジャッキ20の略1ストローク分だけ外側に突出して、地山21に面している。尚、ビーム体14より後方のトンネル壁面には所定間隔で鋼製支保工22,22,…が配列され、各鋼製支保工22の間のトンネル壁面にはコンクリート23が吹き付けられている。
【0021】上記ビーム体14の後端部には、全方位撮影用レンズ24が取り付けられたカメラ25が設置されている。そして、全方位撮影用レンズ24は、スキンプレート13bと吹き付けコンクリート23の間から露出している地山(トンネル壁面)21に面しており、所定の視野角αで全方位360度から取り込まれるトンネル壁面21からの光をカメラ25に送出する。カメラ25はCCDやメモリを内蔵し、上述のようにして得られたトンネル壁面21の全方位映像をディジタル画像データに変換して画像処理部31に送出する。
【0022】図2は、上記全方位撮影用レンズ(株式会社立山アールアンドディー製のPAL360)24の概略構成図を示す。この全方位撮影用レンズ24は、蓋付き御椀のような形状を有している。そして、蓋に相当する一側部26の頂部26aは内側に凸な反射面を構成する一方、反射面26aの周囲は光を透過する屈折面26bを構成している。これに対して、上記御椀に相当する他側部27の底部27aは縁に平行な屈折面を構成する一方、屈折面27aの周囲は外側に凸な反射面27bを構成している。
【0023】上記全方位撮影用レンズ24の屈折面26bから視野角αで取り込まれたトンネル壁面21からの光は、他側部27の反射面27bおよび一側部26の反射面26aで反射され、他側部27の屈折面27aを透過してカメラ25に導かれる。そして、レンズ28によってCCD29上に結像するのである。こうして、視野角αで屈折面26bから取り込まれたトンネル壁面からの光に基づいて、全方位撮影用レンズ24における反射面(頂部)26a側の画像(つまり、トンネル前方の画像)が中心側(イ)に位置する一方、屈折面(底部)27a側の画像(つまり、トンネル後方の画像)が周囲側(ロ)に位置する同心円状の全方位画像30が撮像されて、画像処理部31によってモニタ32に表示される。また、全方位画像30のディジタル画像データが、画像記憶部33に記憶されるのである。
【0024】ところで、上述のように、本実施の形態における全方位撮影用レンズ24は、全方位のトンネル壁面21からの光を一定の視野角αで取り込むようになっている。したがって、全方位撮影用レンズ24がトンネル軸上に位置していればトンネル壁面21の全周において同じ幅の画像が取り込まれる。ところが、図3に示すように、全方位撮影用レンズ24がトンネル軸上からずれた位置にある場合には、全方位撮影用レンズ24から遠いトンネル壁面21の撮像範囲Yが全方位撮影用レンズ24から最も近いトンネル壁面21の撮像範囲Xより広くなる。その結果、図4に示すように、撮像範囲Yには、撮像範囲Xにない撮影範囲Za,Zbが含まれることになる。
【0025】一方において、上記全方位撮影用レンズ24の特性上、撮像範囲Xの画像も撮像範囲Yの画像も図2R>2に示す同心円状の全方位画像30中における(イ)から(ロ)までの同じ範囲に表示されることになる。つまり、図3における両撮像範囲X,Yの画像は、全方位画像30中において同じ数の画素で表示されるのである。ここで、以下の説明を簡単にするために上記画素数はであるとし、図4に示すように、撮影範囲Xはa〜hの8個の画素で表示される一方、撮影範囲YはA〜Hの8個の画素で表示されるものとする。尚、上記画素a〜h,A〜Hの全方位画像30上における位置は、図5に示すようになる。
【0026】ここで、上述したごとく、上記撮像範囲Yには、撮像範囲Xにはない撮影範囲Za,Zbが含まれている。つまりは、全方位に渡って同じ幅のトンネル壁面が撮影されてはいないことになる。そこで、本実施の形態においては、画像記憶部33に格納されているディジタル画像データに基づいて、撮影範囲Yを表示している画素A〜Hのうち余分な領域Za,Zbを表示している画素A,B,G,Hの画素データを削除するのである。同様の操作を、各方位毎に、視野角αで取り込まれる撮影範囲と上記撮影範囲Xとのずれの度合いに応じて行うことによって、全方位に渡って同じ幅のトンネル壁面が撮影された全方位画像を得ることができる。
【0027】ところが、上述のようにして得られた全方位画像によれば全方位に渡って同じ幅でトンネル壁面が撮影された画像は得られるものの、任意の方位におけるトンネル壁面21の画像の中心側(イ)と外側(ロ)とが全方位撮影用レンズ24からの距離に応じて削除された非同心円状の画像(図5において破線で示す画像30a)となってしまう。そこで、本実施の形態においては、撮影範囲Yに係る4個の画素C〜Fが表示している画像を8画素の画像に拡大するのである。その拡大は、図6に示すように、4個の画素C〜Fを拡大率に応じてコピーすることによって行う。その結果、概念的には、撮影範囲Yに係る4個の画素C〜Fの配列が、C,D,E,FからC,C,D,D,E,E,F,Fとなる。
【0028】上記領域Za,Zbに対応する画素数や上記拡大の率は、例えば、全方位撮影用レンズ24からトンネル壁面21までの距離と、全方位撮影用レンズ24からトンネル壁面21までの最小距離の関数として表して、テーブルとして画像処理部31の内部メモリに格納しておく。尚、全方位撮影用レンズ24のトンネル軸からのずれの量は、外部から変更可能な定数として上記内部メモリに格納しておけばよい。また、以上の説明においては、非同心円状の全方位画像30aにおける半径方向の拡大処理について説明しているが、周方向にも全方位撮影用レンズ24の光軸からの距離に応じて同様の拡大処理を行う必要がある。
【0029】本実施の形態においては、上述したような画像処理を、画像処理部31によって、各方位毎に、全方位撮影用レンズ24のトンネル軸上からのずれの度合いに応じて行うのである。そうすることによって、全方位撮影用レンズ24の位置がトンネル軸上からのずれていても、全方位に渡って同じ幅のトンネル壁面が撮影された同心円状の全方位画像30が得られるのである。
【0030】尚、上記画像処理部31による実際の画像処理の対象となる画素数は非常に多い。そのため、トンネルの直径に対する全方位撮影用レンズ24のトンネル軸からのずれ量の比にもよるが、上記コピーが行われる画素数の全画素数に対する割合は非常に少ない。したがって、上記コピー処理による画像の不鮮明さは無視できるのである。
【0031】上述のように、本実施の形態においては、TBM11におけるビーム体14の後端部には、全方位撮影用レンズ24が取りつけられたカメラ25を設置している。そして、全方位撮影用レンズ24は、トンネル壁面21に面して、一定の視野角αで取り込んだトンネル壁面21からの光をカメラ25に導く。そして、カメラ25によって同心円状の全方位画像30を得て画像記憶部33に記憶するようになっている。
【0032】その場合、上記全方位撮影用レンズ24がトンネル軸上からずれた位置にある場合には、全方位撮影用レンズ24から遠いトンネル壁面21の撮像範囲Yが全方位撮影用レンズ24から最も近いトンネル壁面21の撮像範囲Xよりも広い全方位画像30となる。そこで、画像処理部31によって、画像記憶部33に記憶されたディジタル画像データに基づいて撮影範囲Yのうち撮像範囲Xよりも広い余分な画像を画素単位で削除し、残った画像を画素単位でコピーして撮影範囲Xと同じ画素数の画像に拡大するのである。こうして、全方位に渡って同幅のトンネル壁面が撮影された同心円状の全方位画像30を得るのである。したがって、全方位撮影用レンズ24は、必ずしもトンネル軸上に設置する必要は無く、全方位撮影用レンズ24およびカメラ25の設置位置に対する制限が無くなる。
【0033】したがって、上記トンネル壁面の撮影方法は、図7(c)に示すような円形断面のトンネルのみならず、図7(a)および図7(b)に示すような馬蹄型や、図7(d)に示すような幌型等の断面形状が非円形のトンネル壁面の撮影にも適用できるのである。
【0034】すなわち、本実施の形態によれば、上記カメラ25を回転することなくトンネル壁面21を短時間に撮影できる。したがって、トンネル壁面の画像をトンネル掘削作業を中断することなくトンネル掘削直後に迅速に取得することができ、不安定な地山の露出時間を短時間にして、トンネル掘削およびトンネル壁面の撮影を安全に行なうことができる。さらに、断面形状が非円形のトンネルであっても歪みのない展開画像を得ることができる。また、全方位撮影用レンズ24によって視野角αで取り込まれるトンネル壁面21のトンネル軸方向への撮像範囲の最大値を推進ジャッキ20の1ストローク分に設定しておけは、TBM11のトンネル掘削動作と連動してトンネル壁面の全方位画像を推進ジャッキ20の収縮中に1回の動作で撮影することも可能である。
【0035】ところで、上述したような同心円状の全方位画像は、図2に示すような構造の全方位撮影用レンズ24のみならず、図8に示すような球面鏡35を用いても同様に得られる。そして、この場合も全方位撮影用レンズ24の場合と同様に、球面鏡35がトンネル軸上からずれた位置にある場合には、球面鏡35から遠いトンネル壁面21の撮像範囲が最も近いトンネル壁面21の撮像範囲よりも広い全方位画像となる。したがって、画像処理部31によって、全方位撮影用レンズ24を用いた場合と同様の画像処理を行なうことによって、断面形状が非円形のトンネルであっても歪みのない展開画像を得ることができる。尚、上記球面鏡35に換えて円錐鏡を用いることもできる。
【0036】尚、上述の説明では、全方位に渡って同じ幅のトンネル壁面が撮影された全方位画像30を得るに際して、全方位撮影用レンズ24から遠いトンネル壁面21の撮像範囲Yのうち全方位撮影用レンズ24から最も近いトンネル壁面21の撮像範囲Xよりも広い余分な画像を画素単位で削除した後の、撮像範囲Yの画像を画素単位でコピーして撮影範囲Xと同じ画素数8の拡大画像を得るようにしている。しかしながら、この発明は、これに限定されるものではなく、撮像範囲Xの画像を画素単位で間引いて、余分な画像を画素単位で削除した後の撮像範囲Yと同じ画素数4の縮小画像を得るようにしても差し支えない。あるいは、全方位撮影用レンズ24からトンネル壁面21までの基準距離を設定し、全方位撮影用レンズ24からトンネル壁面21までの距離が上記基準距離を越える場合には上記コピー処理を行う一方、上記基準距離を越えない場合には上記間引き処理を行うようにしてもよい。尚、上記間引き処理の変わりに平均処理を行ってもよい。
【0037】ところで、図1に示すトンネル壁面撮影装置の場合には、全方位撮影用レンズ24及びカメラ25はビーム体14の上面に取り付けられている。したがって、トンネルの下側の壁面の一部がビーム体14によって遮られて撮影できない。そこで、他の実施の形態においては、図9に示すように、二箇所以上(図9では二箇所)で撮影する。すなわち、ビーム体41の両側で、撮影用レンズ設置位置42,43に全方位撮影用レンズ(あるいは、球面鏡や円錐鏡)およびカメラを設置して撮影する。そうすることによって、第1撮影用レンズ設置位置42によるトンネル周方向の撮影範囲Laと第2撮影用レンズ設置位置43によるトンネル周方向の撮影範囲Lbとをオーバーラップさせることができる。したがって、後に画像処理部31によって、例えば第1撮影用レンズ設置位置42による全方位画像の欠落部を、第2撮影用レンズ設置位置43による全方位画像に基づいて埋め合わせることによって、完全な全方位画像を得ることができるのである。
【0038】尚、上記の各実施の形態においては、全方位撮影用レンズ(または、球面鏡や円錐鏡)およびカメラをTBMに一体に設置している。しかしながら、この発明はこれに限定されるのもではなく、全方位撮影用レンズ(または、球面鏡や円錐鏡),カメラ,画像処理装置,画像記憶部およびモニタを一つの函体に収納して、単独のトンネル壁面撮影装置としても差し支えない。また、上述の効果は、必ずしも全方位を撮像できる全方位撮影用レンズや球面鏡や円錐鏡を用いなくとも、ある程度の広い方位を一度に撮影できるレンズや鏡体等を用いても得ることができる。また、上記実施の形態における全方位撮影用レンズとして、株式会社立山アールアンドディー製のPAL360を例に説明したが、同じ機能を有するレンズであれば他のレンズを用いても差し支えない。
【0039】
【発明の効果】以上より明らかなように、請求項1に係る発明のトンネル壁面の撮影方法は、超広角の側方映像を取りこむ光学系を装備した電子カメラをトンネル軸方向に向けてトンネル壁面を撮像し、得られたディジタル画像データを画像記憶部に記憶するので、上記光学系及び電子カメラを上記トンネル軸方向に所定距離前進した時にトンネル壁面を撮像することによって、トンネル壁面の広方位画像を瞬時に連続して撮像できる。したがって、トンネルの掘削作業に支障を来すことなく、且つ、上記電子カメラとトンネル壁面との間に作業者や障害物や粉塵等が介在して画像が欠落したり、照明状態が変化したりすることなく、トンネル壁面の広方位画像を得ることができる。
【0040】さらに、上記ディジタル画像データの画素データに対して、この画素データに係るトンネル壁面と上記光学系の距離に応じた処理を行って、トンネルの周方向に渡ってトンネル軸方向に同じ幅のトンネル壁面に係るディジタル画像データを同一画素数の画素データで成した広方位画像を得るようにしたので、断面形状が非円形のトンネルであっても歪みのない展開画像を得ることができる。
【0041】また、請求項2に係る発明のトンネル壁面の撮影方法は、上記電子カメラによる撮影は少なくとも2箇所で実施し、上記電子カメラによる撮影毎に同一断面付近のトンネル壁面に係る広方位画像を得、その後、上記各撮影毎に得られた同じトンネル壁面に係る広方位画像のディジタル画像データを繋ぎ合わせて一つの広方位画像を得るので、1台の電子カメラに装備された光学系の視野角中にトンネル壁面からの光を遮る物体がある場合には、当該電子カメラによって得られた上記広方位画像中の上記物体のディジタル画像データを、他の電子カメラによって得られた上記広方位画像中の上記物体の位置に相当するトンネル壁面のディジタル画像データで置き換えて、上記物体が存在しない広方位画像を得ることができる。
【0042】また、請求項3に係る発明のトンネル壁面撮影装置は、超広角の側方映像を取りこむ光学系を装備した電子カメラをトンネル軸方向に向けて撮像されたトンネル壁面のディジタル画像データを画像記憶部に記憶し、上記ディジタル画像データの画素データに対して、画像処理部によって、この画素データに係るトンネル壁面と上記光学系との距離に応じた処理を行って、トンネルの周方向に渡ってトンネル軸方向に同じ幅のトンネル壁面に係るディジタル画像データを同一画素数の画素データで成した広方位画像を得るので、請求項1に係る発明の場合と同様に、トンネル壁面の広方位画像を瞬時に且つ連続して撮像することができる。したがって、トンネルの掘削作業に支障を来すことがなく、且つ、上記電子カメラとトンネル壁面の間に作業者や障害物や粉塵等が介在して画像が欠落したり、照明状態が変化したりすることなく、トンネル壁面の広方位画像を得ることができる。さらに、断面形状が非円形のトンネルであっても歪みのない展開画像を得ることができる。
【0043】また、請求項4に係る発明のトンネル壁面撮影装置は、上記電子カメラによる撮影は少なくとも2箇所で実施し、上記画像処理部は、同一断面付近のトンネル壁面に係る広方位画像を上記電子カメラによる撮影毎に得た後、上記各撮影毎に得られた同じトンネル壁面に係る広方位画像のディジタル画像データを繋ぎ合わせて一つの広方位画像を得るので、請求項2に係る発明の場合と同様に、1台の電子カメラに装備された光学系の視野角中にトンネル壁面からの光を遮る物体があっても、他の電子カメラによって得られた上記広方位画像中のディジタル画像データに基づいて上記物体が存在しない広方位画像を得ることができる。
【0044】また、請求項5に係る発明のTBMは、請求項3あるいは請求項4に係る発明のトンネル壁面撮影装置を搭載しているので、非円形断面のトンネルを掘削しつつ、上記トンネルの周方向に渡ってトンネル軸方向に同じ幅のトンネル壁面に係るディジタル画像データを同一画素数の画素データと成す広方位画像を撮影できる。したがって、トンネル掘削直後の非円形トンネル壁面の歪みの無い画像を、トンネル掘削作業を中断することなく容易に撮像できる。こうして、トンネル壁面の画像をトンネル掘削直後に迅速に取得することによって、不安定な地山の露出時間を短時間にでき、トンネル掘削およびトンネル壁面の撮影を安全に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のトンネル壁面撮影装置が搭載されたTBMの縦断面図である。
【図2】 図1における全方位撮影用レンズの概略構成図である。
【図3】 全方位撮影用レンズがトンネル中心軸上からずれた位置にある場合の撮像範囲の説明図である。
【図4】 図3に示す撮像範囲と画素との関係を示す図である。
【図5】 図4に示す画素の全方位画像上における位置を示す図である。
【図6】 図1における画像処理部による画素のコピーの説明図である。
【図7】 この発明のトンネル壁面の撮影方法が適用できるトンネル断面形状の一例を示す図である。
【図8】 図1における全方位撮影用レンズに換えて球面鏡を用いる場合の説明図である。
【図9】 全方位撮影用レンズを二つ用いる場合のTBMの横断面概略図である。
【図10】 従来のトンネル壁面撮影方法に用いられる撮像装置の断面図である。
【符号の説明】
11…TBM、 12…掘削手段、13…スキンプレート、 14,41…ビーム体、21…トンネル壁面、 24…全方位撮影用レンズ、25…カメラ、 26…一側部、26a,27b…反射面、 26b,27a…屈折面、27…一側部、 30…全方位画像、31…画像処理部、 32…モニタ、33…画像記憶部、 35…球面鏡、42,43…撮影用レンズ設置位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 超広角の側方映像を取りこむ光学系が装備された電子カメラをトンネル軸方向に向けてトンネル壁面を撮像し、得られたディジタル画像データを画像記憶部に記憶し、上記ディジタル画像データの画素データに対して、この画素データに基づく画像に係るトンネル壁面と上記光学系との距離に応じた処理を行って、トンネルの周方向に渡ってトンネル軸方向に同じ幅のトンネル壁面に係るディジタル画像データを同一画素数の画素データで成した広方位画像を得るようにしたことを特徴とするトンネル壁面の撮影方法。
【請求項2】 請求項1に記載のトンネル壁面の撮影方法において、上記電子カメラによる撮影は少なくとも2箇所で実施し、上記電子カメラによる撮影毎に同一断面付近のトンネル壁面に係る広方位画像を得、その後、上記各撮影毎に得られた同じトンネル壁面に係る広方位画像のディジタル画像データを繋ぎ合わせて一つの広方位画像を得ることを特徴とするトンネル壁面の撮影方法。
【請求項3】 超広角の側方映像を取りこむ光学系が装備された電子カメラと、上記電子カメラをトンネル軸方向に向けて撮像されたトンネル壁面のディジタル画像データを記憶する画像記憶部と、上記ディジタル画像データの画素データに対して、この画素データに基づく画像に係るトンネル壁面と上記光学系との距離に応じた処理を行って、トンネルの周方向に渡ってトンネル軸方向に同じ幅のトンネル壁面に係るディジタル画像データを同一画素数の画素データで成した広方位画像を得る画像処理部を備えたことを特徴とするトンネル壁面撮影装置。
【請求項4】 請求項3に記載のトンネル壁面撮影装置において、上記電子カメラによる撮影は少なくとも2箇所で実施し、上記画像処理部は、同一断面付近のトンネル壁面に係る広方位画像を上記電子カメラによる撮影毎に得た後、上記各撮影毎に得られた同じトンネル壁面に係る広方位画像のディジタル画像データを繋ぎ合わせて一つの広方位画像を得るようになっていることを特徴とするトンネル壁面撮影装置。
【請求項5】 請求項3あるいは請求項4に記載のトンネル壁面撮影装置が搭載されたことを特徴とするトンネルボーリングマシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図10】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【特許番号】特許第3426519号(P3426519)
【登録日】平成15年5月9日(2003.5.9)
【発行日】平成15年7月14日(2003.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−341678
【出願日】平成10年12月1日(1998.12.1)
【公開番号】特開2000−160992(P2000−160992A)
【公開日】平成12年6月13日(2000.6.13)
【審査請求日】平成13年2月22日(2001.2.22)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【参考文献】
【文献】特開 平6−74764(JP,A)
【文献】特公 平7−15383(JP,B2)
【文献】特公 平7−37890(JP,B2)
【文献】特許2562059(JP,B2)