説明

トンネル用架線支持装置

【課題】比較的小さな左右方向への変位で、架線のカント角調整を行え、トンネル壁面と架線支持金具との絶縁離隔を確保しやすい架線支持装置を提供する。
【解決手段】トンネル用架線支持装置1は、トンネルTの天井の下面に上部を固定される一対の柱状碍子4と、それの下端間を結合する碍子支持板5と、それの中央上部に台座7を介して支持される架線支持板6と、碍子支持板5、台座7および架線支持板6を締め付けるボルト7とを具備する。碍子4は架線の延線方向に所定の相互間隔を置いて設けられる。台座7は、上面が架線の延線方向に軸心を沿わせた円柱面7aとされる。架線支持板6は、中央部を台座7上に支持され、架線の延線直交方向である左右に延び、左右対称位置の下部にそれぞれ剛体架線41を支持する。架線支持板6は、台座7の円柱面7aに面接触する円弧凹面6aを有すると共に、締め付けボルト8を遊びを持って貫通させるボルト孔6cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、狭小なトンネル内で、所要の高さ、壁面との離隔および水平に対する角度を確保しつつ架線を支持する支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル内の狭小空間に十分な絶縁間隔をとって2条の剛体架線を支持し、その支持位置の微調整を容易にする架線支持装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。これを図4、図5に示す。
この架線支持装置31においては、トンネルTの天井にアンカボルト32によって、受け座金具33とベース金具34が固定される。ベース金具34の下に碍子35が固定され、その下に架線支持金具36が固定される。架線支持金具36には、剛体架線41が支持される。剛体架線41は、アルミ架台42と、トロリ線43を具備する。ベース金具34には、アンカボルト32を遊びをもって貫通させるボルト挿通孔34aが設けられる。受け座金具33は下面が円柱面33aに形成される。ベース金具34には、受け座金具33の円柱面33aに面接触する円弧凹面34bが設けられ、ボルト挿通孔34aとアンカボルト32との相対遊動範囲において受け座金具33に対する固定角度を円柱面33a周りに調整可能である。架線支持金具36をベース金具34と一体に受け座金具33に対して角度調整することにより、一対の剛体架線41の支持位置を受け座金具33の円柱面33a周りに調整可能とする。
【特許文献1】特開2005−8040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の架線支持装置においては、架線のカント角の調整を、天井直近の受け座金具33とベース金具34との間の相対回転によって行う。トロリ43は、当該相対回転部位から、碍子35を介在させる相当の間隔を置いた下方位置にある。このため、カント角の調整に際しての架線支持金具36の回転半径が比較的大きなものとなり、架線支持金具36の左右横方向への変位が大きくなる。狭小トンネルでは、横方向の変位が大きくなると、トンネル壁面と架線支持金具36との絶縁離隔を確保することができなくなる。
また、架線支持金具36は、剛体架線41を押さえるために形状が複雑となり、切削加工ではコストが高くなる。このため、製造コストを考慮して鋳造で製作される。鋳造のため、設置現場の状況に応じて架線支持金具36の形状が変わる度に木型から製作する必要があり、コスト上昇と製作期間長期化の一因となっている。
したがって、この出願に係る発明は、架線支持金具の比較的小さな左右方向への変位で、カント角の調整を行うことができ、トンネル壁面と架線支持金具との絶縁離隔を確保しやすいと共に、比較的安価に製作できるトンネル用架線支持装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するためのこの発明に係るトンネル用架線支持装置は、トンネルTの天井の下面に上部を固定される一対の碍子4と、これら一対の碍子4の下端間を結合する碍子支持板5と、この碍子支持板5の中央上部に台座7を介して支持される架線支持板6と、碍子支持板5、台座7および架線支持板6を貫通してこれらを締め付ける締め付けボルト8とを具備する。一対の碍子4は、柱状で、天井から下方へ延びるように架線の延線方向に所定の相互間隔を置いて設けられる。台座7は、架線支持板6を載せ受ける上面が、架線の延線方向に軸心を沿わせた円柱面7aとされる。架線支持板6は、中央部を碍子支持板5上の台座7に支持され、架線の延線直交方向である左右に延び、左右対称位置の下部にそれぞれ剛体架線41を支持する。架線支持板6は、台座7の円柱面7aに面接触する円弧凹面6aを有すると共に、締め付けボルト8を遊びを持って貫通させるボルト孔6cを有する。したがって、架線支持板6は、ボルト孔6cと締め付けボルト8との相対遊動範囲において台座7に対する固定角度を円柱面7a周りに調整可能であり、それによって、左右一対の剛体架線41の支持位置を台座7の円柱面7a周りに角度調整可能である。
碍子支持板5は、平板状で両端部に、碍子4の下面に固定ボルト9にて固定される取り付け部5aを有し、中間部に、当該取り付け部5aと平行で高さが異なる受座部5bを有するものとし、さらにこの受座部5bは、プレス成形にて形成可能に構成することができる。
【発明の効果】
【0005】
この出願に係る発明の装置によれば、碍子4の下方に架線支持板6と台座7との相対回転部が配置されるから、カント角の調整に際しての架線支持板6の回転半径が比較的小さく、したがって、左右横方向への変位が小さくてすみ、狭小トンネルT内で、トンネル壁面と架線支持金具6との絶縁離隔を比較的容易に確保することができる。
また、碍子支持板5を、平板状の部材で構成し、碍子4の下面に固定ボルト9にて固定される取り付け部5aを両端部に設け、当該取り付け部5aと平行で高さが異なる受座部5bを中間部に設ける構成とすれば、受座部5bの高さの異なるものをプレス成形にて比較的安価に製作できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図は本発明に係るトンネル用架線の支持装置を示すもので、図1は正面図、図2は側面図、図3は図2におけるIII−III断面図である。
【0007】
架線支持装置1は、トンネルTの天井に架線の延線方向(電車の進行方向)に相互間隔をおいて複数固定される。これら複数の支持装置1に沿って、当該各支持装置1における延線直交方向である図1における左右の両側下部に一対の剛体架線41が支持される。剛体架線41は、長手方向端部において互いに電気的に接続される長尺の型材であるアルミ架台42と、これら各アルミ架台42に沿って、その下部に把持されるトロリ線43とからなる。
【0008】
架線支持装置1は、トンネルTの天井に、アンカボルト3により固定される碍子取り付け金具2、碍子取り付け金具2に上端を支持される一対の柱状碍子4、碍子4の下端間を連結する碍子支持板5、碍子支持板5上に台座7を介して取り付けられ剛体架線41を支持する架線支持板6、碍子支持板5、台座7および架線支持板6を貫通してこれらを締め付ける締め付けボルト8を具備する。
【0009】
一対の碍子4は、架線の延線方向に所定の相互間隔を置いて碍子取り付け金具2に支持され、下端に固定フランジ4aを有する。
【0010】
碍子支持板5は、細長矩形の平板材を屈曲成形してなり、図2に示すように、架線の延線方向に延びるように配置される。碍子支持板5は、両端部に平板状の取り付け部5aを有すると共に、中間部に、取り付け部5aより下位で、これと平行な平板状の受座部5bを有する。取り付け部5aと受座部5bとの間に、プレス成形にて形成される屈曲部5cが設けられる。すなわち、受座部5bは、設置場所の条件に対応して高さ位置を変えて、プレス成形にて形成可能に構成される。碍子支持板5は、両端の取り付け部5aにおいて、碍子のフランジ4aの下面に固定ボルト9にて固定される。
【0011】
架線支持板6は、図1に示すように、中央部において、碍子支持板5の受座部5b上に台座7を介して支持され、左右に延び、左右対称位置の下部にそれぞれ剛体架線41を支持する。
【0012】
台座7は、碍子支持板5の受座部5b上に重なる下面が平板状で、上面が、架線の延線方向に軸心を沿わせた円柱面7aとされる。
【0013】
架線支持板6は、図1に示すように、台座7の円柱面7aに面接触する円弧凹面6aとその反対側の円弧凸面6bを有すると共に、締め付けボルト8を遊びを持って貫通させるボルト孔6cを有し、ボルト孔6cと締め付けボルト8との相対遊動範囲において台座7に対する固定角度を円柱面7a周りに仮想線で示すように調整可能である。架線支持板6の台座7に対する固定角度を円柱面7a周りに調整することで、架線のカント角を調整することができる。
【0014】
架線支持板6の円弧凸面6bに面接触する円弧凹面10aを有する抑え座金10が架線支持板6の円弧凸面6b上に重ねられ、架線のカント角調整を行った後、締め付けボルト8で、碍子支持板5、台座7、架線支持板6と共に締め付けボルト8で締め付け固定される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るトンネル用架線支持装置の正面図である。
【図2】図1のトンネル用架線支持装置の側面図である。
【図3】図2におけるIII−III断面図である。
【図4】従来のトンネル用架線支持装置の正面図である。
【図5】図4のトンネル用架線支持装置の側面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 架線支持装置
2 碍子取り付け金具
3 アンカボルト
4 碍子
4a フランジ
5 碍子支持板
5a 取り付け部
5b 受け座部
6 架線支持板
6a 円弧凹面
6b 円弧凸面
6c ボルト孔
7 台座
7a 円柱面
8 締め付けボルト
9 固定ボルト
10 抑え座金
41 剛体架線
42 アルミ架台
43 トロリ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの天井の下面に上部を固定され、下方へ延びるように架線の延線方向に所定の相互間隔を置いて設けられる一対の柱状碍子と、
これら一対の碍子の下端間を結合する碍子支持板と、
この碍子支持板の中央上部に、台座を介して中央部を支持され、架線の延線直交方向である左右に延び、左右対称位置の下部にそれぞれ剛体架線を支持する架線支持板と、
前記碍子支持板、前記台座および前記架線支持板を貫通してこれらを締め付ける締め付けボルトとを具備し、
前記台座は、上面が、架線の延線方向に軸心を沿わせた円柱面とされ、
前記架線支持板は、前記締め付けボルトを遊びを持って貫通させるボルト孔を有すると共に、前記台座の円柱面に面接触する円弧凹面を有し、ボルト孔と締め付けボルトとの相対遊動範囲において台座に対する固定角度を円柱面周りに調整可能であり、
それによって、前記一対の剛体架線の支持位置を前記台座の円柱面周りに角度調整可能であることを特徴とするトンネル用架線支持装置。
【請求項2】
前記碍子支持板は、平板状で両端部に、前記碍子の下面に固定ボルトにて固定される取り付け部を有すると共に、中間部に、当該取り付け部と平行で高さが異なる受座部を有し、この受座部はプレス成形にて形成可能に構成され、
この受座部上に、前記台座を介して前記碍子支持板が配置されることを特徴とする請求項1に記載のトンネル用架線支持装置。
【請求項3】
前記碍子支持板は、矩形平板材を屈曲成形してなり、架線の延線方向に長く延長し、両端部に、前記碍子の下面に固定ボルトにて固定される取り付け部を有すると共に、中間部に、当該取り付け部より下位で、取り付け部と平行な受座部を有し、この受座部はプレス成形にて形成可能に構成され、
この受座部上に、前記台座を介して前記碍子支持板が配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のトンネル用架線支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−137811(P2010−137811A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318382(P2008−318382)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)