説明

トンネル等の高速走行洗浄方法とトンネル等の高速走行洗浄装置

【課題】 通行規制がなく、環境汚染がない、法定最低走行速度で走行して、トンネルの路面上のレインマーカ等を洗浄可能なトンネルの高速走行洗浄方法と高速走行洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 トンネルTn内を含む道路上を走行しながら該トンネルTn内の道路を含む道路を洗浄する高速走行洗浄方法であって、少なくとも法定最低走行速度以上で走行できる車体1Aに搭載され路面に向かって配置されている少なくとも1つの高圧洗浄ノズル21から気泡を含む高圧温水を噴射可能な高圧洗浄装置20を有し、この高圧洗浄ノズル21が路面に道路の長手方向に沿ってひかれたレインマーカを洗浄するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路用トンネルの壁面や路面を高速で走行しながら洗浄する、トンネル等の高速走行洗浄方法とトンネル等の高速走行洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路のトンネル内壁の表面には、排気ガス中の炭素粒等が付着する。従って、内壁に埋設されている照明器具表面のガラス面もまた前記炭素粒等によって汚され、時間の経過とともに照明器具の照度が低下してしまう。
【0003】
また、同様にトンネル内の側壁や歩道(緊急避難用の歩道を含む)に隣接して、走行車線の端を示すための白線(レインマーカとも言う)が道路の長手方向に沿って引かれている。
【0004】
これら照明器具や前記レインマーカは、トンネル内を車両が安全に走行するために必要なものであることから、照明器具による照明が所定以下にならないように、またレインマーカが見えなくならないように、所定時間毎に、これらの洗浄作業がおこなわれている。
【0005】
現在、前記洗浄作業は回転ブラシ装置を備えた清掃作業車両がゆっくりとした速度(具体的には2〜15km/h程度)で走行しながら、前記照明器具や白線を洗浄する。また、清掃作業車両のない箇所や、前記清掃作業車両のブラシによる洗浄作業では落ちないような汚れのひどい箇所は、人手により洗浄がおこなわれる。そして、これら洗浄には、洗浄液を含んだ洗浄水が使用されている。
【0006】
前述のように現在の洗浄作業の場合、一つには、車線規制をおこなっての洗浄作業になることから、交通渋滞の原因になり、従って、交通渋滞が起こりにくい時間帯を選んで作業することが強いられている。また、二つ目には、洗浄剤を含む洗浄水を使用した洗浄となることから環境汚染の点において好ましくなく、且つ洗浄作業のコストを上昇させている。
【0007】
なお、本出願人の一人は、既に高圧ノズルからスラリーが混入した壁面の塗膜除去を容易に実現できる塗膜剥離装置を提供している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−77746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みて行われたもので、通行規制をすることなく、また、作業時間帯に制限を受けない、且つ、環境汚染を起こすことのないような、少なくとも法定最低走行速度で走行しながら、トンネル等の照明器具や壁面、路面上のレインマーカ等を容易に洗浄することが可能なトンネル等の高速走行洗浄方法とトンネル等の高速走行洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記本発明の目的は、以下の構成からなるトンネル等の高速走行洗浄方法とトンネル等の高速走行洗浄装置によって解決することができる。
【0010】
本第1の発明にかかるトンネルの高速走行洗浄方法は、トンネル内を高速で走行しながら洗浄するトンネルの高速走行洗浄方法であって、
少なくとも法定最低走行速度以上で走行できる車体に搭載され高圧洗浄ノズルから高圧温水を噴射可能な高圧洗浄装置を、予め洗浄しようとするトンネルのデータを記憶した制御装置が、該データに基づいて、トンネル内の洗浄対象物に対して、該高圧洗浄装置の高圧洗浄ノズルの噴射方向を合わせるとともに、該高圧洗浄ノズルと該洗浄対象物との距離を所定範囲に保つように、制御して、高圧洗浄ノズルから気泡を含む高圧温水を噴射して洗浄することを特徴とする。
【0011】
本第2の発明にかかるトンネル内の道路を含む道路の高速走行洗浄方法は、道路上を高速で走行しながら洗浄する道路の洗浄方法であって、
少なくとも法定最低走行速度以上で走行できる車体に搭載され路面に向かって配置されている少なくとも1つの高圧洗浄ノズルから気泡を含む高圧温水を噴射可能な高圧洗浄装置を有し、この高圧洗浄ノズルが路面に道路の長手方向に沿ってひかれたレインマーカを洗浄するよう構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本第3の発明にかかるトンネルの高速走行洗浄装置は、前記第1の発明にかかるトンネルの高速走行洗浄方法を実施するためのトンネルの高速走行洗浄装置であって、
この高速走行洗浄装置が、
先端から気泡を含んだ高圧温水を噴射可能で且つ伸縮可能になった高圧洗浄ノズルと、
前記高圧洗浄ノズルの上下方向の傾斜角を変更可能な傾斜装置と、
前記高圧洗浄ノズルの噴射方向を水平方向において旋回可能に該高圧洗浄ノズルを載置する旋回装置と、
前記傾斜装置および旋回装置の動作を制御可能な制御装置と、
前記高圧洗浄ノズルへ高圧水を供給する高圧ポンプと、
前記高圧洗浄ノズルへ供給する高圧水にキャビテーションをおこさせるために加温する温水器と、
噴射する水を蓄えるタンクと、
前記高圧洗浄ノズル、傾斜装置、旋回装置、制御装置、高圧ポンプ、温水器およびタンクを搭載して、少なくとも法定最低走行速度以上で走行できる車体とを具備することを特徴とする。
【0013】
また、本第4の発明にかかるトンネル内の道路を含む道路の高速走行洗浄装置は、前記本第2の発明にかかる高速走行洗浄方法を実施するための高速走行洗浄装置であって、
路面に向けて車両の側端部にやや外側方を向けて配置された少なくとも1つの高圧洗浄ノズルを具備し気泡を含んだ高圧温水を噴射する高圧洗浄装置を有し、
前記高圧洗浄ノズルが路面に道路の長手方向に沿ってひかれたレインマーカを洗浄するよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
前述のような構成からなる本第1の発明にかかるトンネルの高速走行洗浄方法によれば、予めそのトンネルのデータを記憶した制御装置の制御によって、トンネル壁面に付着している、排気ガス中の炭素粒等を含む汚染物(汚染箇所)に対して、高圧洗浄ノズルを向けて、該高圧洗浄ノズルから気泡を含む高圧温水を噴射することによって、車体が少なくとも法定最低走行速度で走行していても、且つ洗浄剤を含まない水を使用しても、キャビテーション効果を有する高圧温水による洗浄作用により、容易にトンネルの汚れを洗い流すことが可能となる。しかも、走行している隣接の車線には、前記噴射した水は、水煙状に全く舞い上がることがなく、該隣接の車線を走行する車両の視界を全く妨げることはない。
【0015】
このため、走行規制することなく、トンネル内の汚れを高速で走行しながら洗浄することが可能となる。従って、トンネルの洗浄作業のために交通渋滞が生じるようなことはない。従って、洗浄作業の時間的制約もなくなる。
また、このように容易にトンネル内の汚れを洗浄することができることから、単位期間当たりの洗浄頻度を多くすることができ、従って、トンネル内の照度を所定以上に維持する条件下においても、各照明器具の照度を常に所定以上に確保することができるため、照度の低下を見越して余分に配設されている照明器具を削減することができ、従って、照明に要する費用を削減することが可能となる。つまり、照明に関して所謂「省エネ」をおこなうことができる。
【0016】
また、本第2の発明にかかるトンネル内の道路を含む道路の高速走行洗浄方法によれば、道路上を走行するときに目安となるレインマーカを常に見易い状態に維持することができる。そして、該第2の発明にかかる洗浄方法も、前記第1の洗浄方法の場合と同じく、走行している隣接の車線には、前記噴射した水は、水煙状に全く舞い上がることがなく、該隣接の車線を走行する車両の視界を全く妨げることはない。
【0017】
また、前記第3と第4のトンネル等の高速走行洗浄装置によれば、前記第1と第2のトンネル等の洗浄方法を実行することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
また、前記トンネルの高速走行洗浄方法において、前記高圧洗浄装置は、旋回自在な旋回装置によって前記高圧洗浄ノズルが旋回可能に構成されるとともに、昇降可能な昇降装置によって該高圧洗浄ノズルが昇降可能に構成されており、且つ前記高圧洗浄ノズルが伸縮自在に構成されており、
前記制御装置が前記データに基づいて、この旋回装置を旋回させあるいは昇降装置を昇降させ、また必要に応じて高圧洗浄ノズルを伸縮させることによって、
前記洗浄をおこなうよう構成されていると、汚れている部分に対して高圧洗浄ノズルを制御装置の制御によって最適な方向を向け且つ適切な距離を保つことができるため、好ましい実施形態となる。
【0019】
また、前記トンネルの高速走行洗浄方法において、前記洗浄対象物が、トンネル壁面に配設された照明器具であっても、該照明器具を傷めることなく、照明器具の表面に付着している汚れを効果的に洗浄することが可能となる。
【0020】
また、前記第3の発明にかかるトンネルの高速走行洗浄装置において、前記制御装置が記憶装置を具備し、この記憶装置内に、洗浄しようとするトンネルのデータが記憶されており、このデータに基づいて該制御装置が、前記高圧洗浄ノズルの方向を洗浄対象物に向けて高圧温水を噴射して洗浄するよう構成されていると、洗浄しようとする箇所に高圧洗浄ノズルを正確に向けて洗浄することが容易にできる点で好ましい実施形態となる。
【0021】
また、前記トンネルの高速走行洗浄装置において、前記洗浄装置が、所定の対象物までの距離を測定する測距装置を具備し、この測距装置で測定した距離に基づいて、前記制御装置が前記傾斜装置、旋回装置を制御して、洗浄対象物を洗浄するよう構成されていると、さらに、洗浄しようとする箇所に高圧洗浄ノズルを正確に向けて洗浄することが容易にできる点で好ましい実施形態となる。
【0022】
また、前記第4の発明にかかるトンネル内の道路を含む道路の高速走行洗浄装置において、前記高圧洗浄ノズルが少なくとも2つ配置され、この2つの高圧洗浄ノズルのうちの一方が走行方向対して斜め前方を向けて配置されるとともに、他の一方が走行方向に対して斜め後方を向けて配置されていると、斜め前方を向けて配置されている高圧噴射ノズルによって車速を利用した効果的な洗浄ができるとともに、斜め後方を向けて配置されている高圧噴射ノズルによって落ちた汚れを効果的に除去して、レインマーカを有効に洗浄することができる。
【0023】
また、前記高速走行洗浄装置において、前記斜め前方を向けて配置されている高圧洗浄ノズルから噴射される高圧温水と、斜め後方を向けて配置されている高圧洗浄装置から噴射される高圧温水とが、互いに干渉しないように配置されていると、互いの高圧洗浄ノズルから噴射される洗浄水(高圧温水)が有効に洗浄作用に寄与する好ましい実施形態となる。
【実施例1】
【0024】
以下、本願発明の実施例にかかるトンネル等の高速走行洗浄方法とトンネル等の高速走行洗浄装置を、図面を参照しながら、以下、具体的に説明する。
【0025】
図1は本発明の一実施例にかかるトンネル等の高速走行洗浄装置の全体の概略の構成を示した全体側面図である。
【0026】
図1において、1は車体1Aを有する車両(トラック)で、この車体1A上には、高圧洗浄装置20が配設されている。この車両1は、車体1A上に種々の搭載物(例えば、本洗浄装置20、コンテナ、あるいは散水タンク等)が選択的に搭載することができるよう構成されており、また、道路上を、法定最低走行速度以上(高速、例えば、高速道路の場合50km/h以上)の速度で走行する能力を有する。
そして、前記高圧洗浄装置20は、先端から気泡を含んだ高圧温水を噴射することができ且つテレスコピック式に伸縮自在になった高圧洗浄ノズル21と、この高圧洗浄ノズル21を上下方向の傾斜角αを任意に変更することができるアクチュエータを備えた傾斜装置22と、この高圧洗浄ノズル21と傾斜装置22とを載置して昇降可能なアクチュエータを備えた昇降装置23と、本実施例ではこの昇降装置23の下方に配置されこれら昇降装置23およびその上の高圧洗浄ノズル21と前記傾斜装置22とを水平面において旋回可能なアクチュエータとを備えた旋回装置24と、前記高圧洗浄ノズル21へ気泡を含んだ高圧温水を供給するための水を貯える図4に図示するタンクT、高圧ポンプ25、温水器26、アキュムレータ27とを具備している。
また、この実施例では、図1に図示するように、前記高圧洗浄ノズル21を車体1Aの前部と後部に二つ備えている。なお、前記前部の高圧洗浄ノズル21を符号「21A」で、後部の高圧洗浄ノズル21を符号「21B」で表す。
さらに、車体1Aの後端部の下端部に噴射口が下方を向いた別の形態の複数の高圧洗浄ノズル28を具備している。この高圧洗浄ノズル28のうち、車両1の走行方向前端に位置する第1の高圧洗浄ノズル28aは、走行方向対して斜め前方(約20度)を向けて配置され、それに続く二つの高圧洗浄装置28b、28cは走行方向に対して約真下を向いて配置され、後端の高圧洗浄ノズル28dは、走行方向対して斜め後方(約20度)を向けて配置されている。そして、これら高圧洗浄ノズル28は、図2に図示するように、いずれも、車両1のやや外側方を向けて配置されている。角度的には、外側方へ20度〜30度程度傾けて配置されている。
そして、前記高圧洗浄ノズル21および高圧洗浄ノズル28は、図4に図示するように、前記タンクTと、高圧ポンプ25、温水器26、アキュムレータ27とそれらを接続する管路29を経て接続されている。そして、前記高圧洗浄ノズル21および高圧洗浄ノズル28からは、温度が70℃〜100℃で、圧力が400kg/cm2 〜700kg/cm2 の高圧温水、好ましくは、温度が80℃〜90℃で、圧力が500kg/cm2 〜600kg/cm2 の高圧温水が噴射される。
【0027】
そして、前記高圧洗浄ノズル21A,21B、該高圧洗浄ノズル21A,21Bの各傾斜装置22、昇降装置23、旋回装置24、および前記高圧洗浄ノズル28は、図3に図示するように各制御線によって、制御装置31にそれぞれ接続されている。この制御装置31は、記憶装置31mを具備し、また、外部からのデータを読み取る読み取り装置(図示せず)を具備している。
また、前記制御装置31には、マニュアル設定等できる操作盤32、距離センサー(音あるいはレーザ光等を用いた距離センサーであってよい)33、所定範囲内の最も強い光方向を検知できる光センサー34、走行速度を検知する速度検知装置35、任意の方向を写すことができる映写方向が変更可能なカメラ1、カメラ2、および照度センサー(照度計)36が接続されている。また、この制御装置31は、前記カメラ1、カメラ2の映像をモニタリングするためのモニタ37と接続されている。
前記操作盤32は、オペレータ近傍(例えば、車両の助手席近傍)に配置され、前記高圧ポンプ25の吐出圧力の設定や温水器26の温度設定や、前記高圧洗浄ノズル21A,21Bや高圧洗浄ノズル28の開閉バルブのON−OFFの設定、あるいはこれらのノズルの方向、前記カメラ1、カメラ2の方向やそのON−OFF等をマニュアルで設定できるよう構成されている。
また、前記距離センサー33は、車体1AとトンネルTnの垂直に立設されている側壁40との距離を測定(測距)できるよう構成されている。
また、前記光センサー34は、ある所定範囲(任意の照明器具が配置されている領域)において最も明るい方向を検知できるよう構成されている。
さらに、前記カメラ1、カメラ2は、レンズが向いている方向の映像を写すことができるものである。
さらに、照度センサー36は、ある方向の照度(明るさ)、具体的には上方からの照明の照度を検知することができるよう構成されている。
また、前記速度検知装置35は、車両1の走行速度を検知することができるよう構成されており、実際には車両1の速度計を利用することができる。
【0028】
しかして、このように構成された本トンネルの高速走行洗浄装置によれば、以下のように作用して高速で走行しながらトンネルの洗浄を実施することができる。
【0029】
あるトンネル、例えば高速道路の特定のトンネル(例えば、名神高速道路の天王山トンネル)の天井にトンネルの長手方向に沿って列設された照明器具44を高速で走行しながら洗浄しようとする場合、そのトンネルの長さやそのトンネル内の照明器具44の配置位置に関するデータが、予めデータとして記憶している前記記憶装置31mから読み出される。このデータに基づいて、路面を走行する既知の寸法の本車両1上の前記高圧洗浄ノズル21A,21Bから、当該照明器具44への角度が制御装置31内で演算され、この演算結果に基づいて、前記制御装置31は、前記高圧洗浄ノズル21A,21Bの伸縮程度、傾斜装置22、昇降装置23、旋回装置24、および高圧ポンプ25の吐出圧力等を設定する。かかる場合、この演算の条件として、この車両1が、トンネル側端のレインマーカ45(図2参照)から50cm程度離れた位置を該レインマーカ45に沿って走行するものとして、演算される。前記「50cm」という数値には、特に限定されものではなく、0cmであっても、あるいは30cmであっても、あるいは60cmであってもよい。また、レインマーカ45を基準としているが、トンネルTnの側壁40を基準としてもよく、あるいは歩道の縁石部分を基準としてもよい。
【0030】
そして、前記光センサー34、カメラ1(あるいはカメラ2)および照度センサー36は、前記洗浄対象物であるその照明器具44の方向を向いた状態に、前記制御装置31は、それらの方向を変更できるそれらの各アクチュエータに対して制御動作をおこなわせる。
【0031】
かかる場合に、オペレータは、前記操作盤32を操作して、前記制御装置31の設定条件を設定することができ、また前記制御装置31が設定した設定値を変更することが可能となる。
【0032】
そして、このような状態で、運転者が、車両1をトンネルTnの側壁40から所定距離だけ離れた状態で、つまり、前記レインマーカ45から約50cm離れた状態で該レインマーカ45に沿って走行させる。この際、前記距離センサー33がトンネルTnの側壁40からの距離を検知して、そのデータが前記制御装置31に送られる。制御装置31は、この検知した距離に関するデータと予めレインマーカ45から50cm離れて走行したときの距離に関する誤差を算出して、この誤差分だけ、前記高圧洗浄ノズル21A,21Bの伸縮程度、傾斜装置22の傾斜角度、昇降装置23の昇降程度、あるいは旋回装置23の旋回程度を修正して、該高圧洗浄ノズル21A,21Bが最適な状態となるよう補正する。また、前記光センサー34も、目標としている照明器具44の方向を光によって検知して、前記傾斜装置22、昇降装置23、あるいは旋回装置23等の修正に反映させる。
また、車両1は所定の速度、例えば、法定最低走行速度である50km/hで走行しているとの前提で、前記高圧ポンプ25や温水器26とを動作させているが、実際の走行速度が異なる場合がある。このため、前記速度検知装置35が車両1の走行速度を検知して、その速度に関する検知データを制御装置31に伝達すると、制御装置31は、前記法定最低走行速度である50km/hと検知した走行速度に合わせて前記高圧ポンプ25の回転数を制御して、速度に見合った量の高圧水が供給されるように制御される。また、その際、前記温水器26の加温状態も前記供給する高圧温水の量に合わせて制御されることになる。具体的には、55km/hで走行している場合には、前記高圧ポンプ25の回転数をその分上昇させ、また温水器26の加熱程度を上昇させる。また、必要に応じて、前記高圧洗浄ノズル21の方向等を変更する。
このような補正は、洗浄作業が終了するまで、適宜間隔(例えば、1/10秒ごと)におこなわれる。従って、前記高圧洗浄ノズル21A,21Bは、常に目標とする照明器具44の部分を適正に洗浄することができることになる。
そして、前記洗浄の状況は、前記カメラ1(あるいはカメラ2)によって捉えれた映像が前記モニタ37に映し出されることから、オペレータは洗浄の状況を視認することができる。かかる場合、オペレータは車両1の運転手でなく、洗浄作業専用のオペレータであることが望ましい。しかし、運転手がオペレータであってもよい。
さらには、前記照度センサー36が、洗浄後の照明器具44の照度を計測して、洗浄効果について確認することができるよう構成されている。つまり、このトンネルに必要な照度が確保されているか否かチェックすることができる。従って、洗浄後の照度が所望の状態でない場合には、オペレータは、前記操作盤32を操作することによって、マニュアルで上記高圧ポンプ25の回転数や傾斜角度、昇降程度、旋回方向等を変更して、手動による補正ができる。
【0033】
また、トンネルTnの前記レインマーカ45を洗浄する場合には、前記高圧洗浄ノズル28を作動させて、前記照明器具の洗浄の場合と同様に高圧温水によって洗浄することができる。かかる場合にも、与えられたデータと、前記距離センサー33、光センサー34からの検出データは、同様に補正に寄与することとなる。そして、かかる場合、前記カメラ2を車両1の後方を映し出すようにセットしておくことによって、前記レインマーカ45の洗浄状況を同様にモニタ37上で視認することができる。そして、かかる場合、前述したように、走行方向に対して、前方から後方を向くように角度を変えて複数の前記高圧洗浄ノズル28が、配置されているため、効果的に洗浄することが可能となっている。
また、前記いずれの洗浄の場合にも、高圧洗浄ノズル21,28からは気泡を含んだ高圧温水が噴射されるため、キャビテーション効果によって、洗剤等を用いなくとも、効果的に洗浄することが可能となる。
【0034】
また、前記高圧洗浄ノズル21,28のノズルの噴射口48の形状としては、図5に図示するような正面視において長方形状のものが、また、この噴射口48の上流側には隣接して絞り部(ベンチュリー部:通路断面積にして約10%〜25%程度の絞り、この実施例では約20%の絞り)が形成されることによって、幅広くしかも距離が離れても拡散しない高圧温水の噴射が可能なものが採用されている。この結果、高圧温水をより効果的に洗浄対象物に対して噴射・洗浄することができる。
【0035】
ところで、前記カメラ1、カメラ2は、高圧洗浄装置20上の適宜位置、例えば、カメラ1は高圧洗浄装置20の天井面20uの前端部に、カメラ2は高圧洗浄装置20の天井面20uの後端部に配置するのが好ましい。しかし、その他の位置であってもよい。
また、前記距離センサー33は、高圧洗浄装置20の側面に配置するのが好ましく、前記光センサー34は、高圧洗浄装置20の天井面20u上に配置すれのが好ましく、前記照度センサー36は、高圧洗浄装置20の天井面20u上の後端に配置するのが好ましい。しかし、その他の位置であってもよい。
【0036】
ところで、この実施例では、照明器具44の洗浄とレインマーカ45との洗浄を別々におこなっているように説明したが、勿論同時におこなうことも可能である。
【0037】
また、この実施例では、高圧洗浄ノズル21を、二つ配置した実施例について説明したが、勿論1つ配置した構成であってもよい。また、前記高圧洗浄ノズル21を3つ、あるいはそれ以上の数だけ配置したような洗浄装置であってもよい。
【0038】
また、高圧洗浄ノズル28についても、前記実施例に限定されるものでなく、他の実施形態、例えば、4本に限定されるものでなく、2本であってもあるいは1本であってもよく、あるいは4本以上の数であってもよい。
【0039】
また、高速走行洗浄装置としては、レインマーカ45の洗浄を専用におこなうような高速走行洗浄装置であってもよく、かかる場合には、レインマーカはトンネル内の道路に限定されるものでなく、トンネル外の道路のレインマーカをも高速で走行しながら容易に洗浄することが可能であり、従って、ここでレインマーカに関する洗浄に関する限り、トンネル内およびトンネル外の道路のレインマーカの洗浄をおこなうものである。また、この明細書および特許請求の範囲において、レインマーカとは狭義のレインマーカの他にセンターライン等のマーカをも含むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本願発明にかかるトンネル等の高速走行洗浄方法および高速走行洗浄装置は、道路のトンネル等の内壁や照明器具や道路上のレインマーカ等の洗浄に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例にかかるトンネルの高速走行洗浄装置の全体の概略の構成を示した全体側面図である。
【図2】図1に示す高速走行洗浄装置の背面から見た構成とトンネルを示す図である。
【図3】図1に示す高速走行洗浄装置の制御装置と該制御装置によって制御される構成および制御装置へデータ等を入力する構成を示す概略のブロック図である。
【図4】図1に示す高速走行洗浄装置の高圧洗浄ノズルへ気泡を含む高圧温水を供給するための構成を示す概略の構成図である。
【図5】照明器具等を洗浄するための高圧洗浄ノズルの噴射口の概略の形状を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
Tn…トンネル
1A…車体
20…高圧洗浄装置
21…高圧洗浄ノズル
31…制御装置
44…照明器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内を走行しながら洗浄するトンネルの高速走行洗浄方法であって、
少なくとも法定最低走行速度以上で走行できる車体に搭載され高圧洗浄ノズルから高圧温水を噴射可能な高圧洗浄装置を、予め洗浄しようとするトンネルのデータを記憶した制御装置が、該データに基づいて、トンネル内の洗浄対象物に対して、該高圧洗浄装置の高圧洗浄ノズルの噴射方向を合わせるとともに、該高圧洗浄ノズルと該洗浄対象物との距離を所定範囲に保つように、制御して、高圧洗浄ノズルから気泡を含む高圧温水を噴射して洗浄することを特徴とするトンネルの高速走行洗浄方法。
【請求項2】
前記高圧洗浄装置は、旋回自在な旋回装置によって前記高圧洗浄ノズルが旋回可能に構成されるとともに、昇降可能な昇降装置によって該高圧洗浄ノズルが昇降可能に構成されており、且つ前記高圧洗浄ノズルが伸縮自在に構成されており、
前記制御装置が前記データに基づいて、この旋回装置を旋回させあるいは昇降装置を昇降させ、また必要に応じて高圧洗浄ノズルを伸縮させることによって、
前記高圧温水による洗浄をおこなうことを特徴とする請求項1記載のトンネルの高速走行洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄対象物が、トンネル壁面に配設された照明器具であることを特徴とする請求項1又は2記載のトンネルの高速走行洗浄方法。
【請求項4】
トンネル内を含む道路上を走行しながら該トンネル内の道路を含む道路を洗浄する高速走行洗浄方法であって、
少なくとも法定最低走行速度以上で走行できる車体に搭載され路面に向かって配置されている少なくとも1つの高圧洗浄ノズルから気泡を含む高圧温水を噴射可能な高圧洗浄装置を有し、この高圧洗浄ノズルが路面に道路の長手方向に沿ってひかれたレインマーカを洗浄するよう構成されていることを特徴とする洗浄方法。
【請求項5】
前記請求項1〜3のいずれかのトンネルの高速走行洗浄方法を実施するためのトンネルの高速走行洗浄装置であって、
この高速走行洗浄装置が、
先端から気泡を含んだ高圧温水を噴射可能で且つ伸縮可能になった高圧洗浄ノズルと、
前記高圧洗浄ノズルの上下方向の傾斜角を変更可能な傾斜装置と、
前記高圧洗浄ノズルの噴射方向を水平方向において旋回可能に該高圧洗浄ノズルを載置する旋回装置と、
前記傾斜装置および旋回装置の動作を制御可能な制御装置と、
前記高圧洗浄ノズルへ高圧水を供給する高圧ポンプと、
前記高圧洗浄ノズルへ供給する高圧水にキャビテーションをおこさせるために加温する温水器と、
噴射する水を蓄えるタンクと、
前記高圧洗浄ノズル、傾斜装置、旋回装置、制御装置、高圧ポンプ、温水器およびタンクを搭載して、少なくとも法定最低走行速度以上で走行できる車体とを具備することを特徴とするトンネルの高速走行洗浄装置。
【請求項6】
前記制御装置が記憶装置を具備し、この記憶装置内に、洗浄しようとするトンネルのデータが記憶されており、このデータに基づいて該制御装置が、前記高圧洗浄ノズルの方向を洗浄対象物に向けて高圧温水を噴射して洗浄するよう構成されていることを特徴とする請求項5記載のトンネルの高速走行洗浄装置。
【請求項7】
前記高速走行洗浄装置が、所定の対象物までの距離を測定する測距装置を具備し、この測距装置で測定した距離に基づいて、前記制御装置が前記傾斜装置、旋回装置を制御して、洗浄対象物を高圧温水で洗浄するよう構成されていることを特徴とする請求項5又は6記載のトンネルの高速走行洗浄装置。
【請求項8】
前記請求項4記載の高速走行洗浄方法を実施するためのトンネル内の道路を含む道路を洗浄する高速走行洗浄装置であって、
路面に向けて車両の側端部にやや外側方を向けて配置された少なくとも1つの高圧洗浄ノズルを具備し気泡を含んだ高圧温水を噴射する高圧洗浄装置を有し、
前記高圧洗浄ノズルが路面に道路の長手方向に沿ってひかれたレインマーカを洗浄するよう構成されていることを特徴とする高速走行洗浄装置。
【請求項9】
前記高圧洗浄ノズルが少なくとも2つ配置され、この2つの高圧洗浄ノズルのうちの一方が走行方向対して斜め前方を向けて配置されるとともに、他の一方が走行方向に対して斜め後方を向けて配置されていることを特徴とする請求項8記載の高速走行洗浄装置。
【請求項10】
前記斜め前方を向けて配置されている高圧洗浄ノズルから噴射される高圧温水と、斜め後方を向けて配置されている高圧洗浄装置から噴射される高圧温水とが、互いに干渉しないように配置されていることを特徴とする請求項8記載の高速走行洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−138703(P2007−138703A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23253(P2007−23253)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【分割の表示】特願2004−317955(P2004−317955)の分割
【原出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(598153032)株式会社テクナム (6)
【出願人】(391051326)ヤマモトロックマシン株式会社 (17)