説明

トータルステーションによる測定方法

【課題】トータルステーションを使用して高速の測定を行う。
【解決手段】同一平面上にない既知の4点をトータルステーションから測定し、このトータルステーションの位置のずれ、または傾きの影響を補正するために座標変換係数を求め、その後の測定において求めた水平角、鉛直角、斜距離を、この座標変換係数を使用して修正して行うトータルステーションによる測定方法において、初めに全点を通常の測定、すなわち水平角(H)、鉛直角(V)、斜距離(L)を行う。各測点の斜距離(L)の情報を保持しておき、次に各点を測角のみを測定する。不足した斜距離データは、先だって測定して保持してある斜距離(L)データを採用し直交三次元座標に変換して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トータルステーションによる測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トータルステーションを利用した変状計測器が知られている。
この装置は、マトリクス演算を行うことで、トータルステーションの設置状態の微妙な変化に対応した三次元の座標変換を行い、常に安定した測定結果を提供することができる。
【特許文献1】特開平11−223527号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来のトータルステーションによる測定方法にあっては、次のような問題点がある。
<1> 精密な測定結果を求めることから、1測点の三次元測定値を得るために、1点当たり15秒から20秒程度の測定時間を要している。
<2> しかし例えば頻繁に車両が通過する鉄道における工事のように、その状況によっては、高速測量が求められる。
<3> そこで従来のトータルステーションの作動内容を分析すると、精密な距離の測定にその大半の時間を要していることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために、本発明のトータルステーションによる測定方法は、同一平面上にない既知の4点をトータルステーションから測定し、このトータルステーションの位置のずれを修正するために座標変換係数を求め、その後の測定において求めた水平角、鉛直角、斜距離を、この座標変換係数を使用して修正して行うトータルステーションによる測定方法において、初めに全点を通常の測定、すなわち水平角(H)、鉛直角(V)、斜距離(L)の測定を行い、各測点の斜距離(L)の情報を保持しておき、次に各点の測角のみを測定し、斜距離データは、先だって測定して保持してある斜距離(L)データを採用し直交三次元座標に変換して行う、トータルステーションによる測定方法を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のトータルステーションによる測定方法は以上説明したようにトータルステーションによる計測作業において、特に時間を要する精密な距離の測定を毎回行うことなく、1度行った距離測定の結果を次回から省略することによって、高速の鉛直角の測定が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0007】
マトリックス演算の座標変換アルゴリズムで用いるトータルステーション測定値は直交座標系のX、Y、Zである。
一般的に測量機は極座標系(水平角:H、鉛直角:V、斜距離:L)を測定しこれを直交座標に変換して用いる。
もし測角のみで測定したとすると、斜距離のデータがないのでそのままでは直交三次元座標には変換できない。
【0008】
ところで、トータルステーションで測定する対象は数十m先の構造物などの変位量であり、現場の状況によっては1〜2mm程度のわずかな沈下、隆起変化を常に計測する事が求められる。
わずかな量であっても、一般にトータルステーションから対象物までの距離はある程度大きいので、沈下、隆起が発生した場合その変化は鉛直角:V に大きく表れる。
一方、トータルステーションから対象物までの距離が大きいから、斜距離の変化量は、鉛直角の変化量に比較してその影響はきわめて小さい。
例えばトータルステーションの測距精度を±1mm、測角精度を±1 秒とすれば、100m先で1 秒の変化は0.5mmとして求められる値である。
このように測定分解能は、鉛直角の変化量の方が大きいから、斜距離の変化を無視しても問題は少ない。そのため新たな測角測定に対して、前回測定した斜距離データを用いても測定精度に大きな影響を与えないと判断することができる。
【0009】
そこで、初めに全点を通常の測定、すなわち水平角(H)、鉛直角(V)、斜距離(L)を行い、各測点の斜距離(L)の情報を保持しておき、次に高速測定が必要な時に各点を測角のみで測定し、不足した斜距離データは、それに先立って測定して保持してあるデータを採用し直交三次元座標に変換する方法を発明した。
【0010】
すなわち本発明の測定方法は、
1) まず通常の測定を行って、水平角(H)、鉛直角(V)、斜距離(L)を得る。前記したように、この測定においては、斜距離測定に費やす時間がそのほとんどを占めている。
2) そこで得られた斜距離(L)の情報を保持する。
3) 次に測角測定のみを行う。すなわち水平角(H)、鉛直角(V)を得るが、この測角測定作業は簡単であり、例えば1点を数秒(概ね1〜2秒)程度で行うことができる。
4) 測角測定で不足している斜距離(L)データは、以前に測定した斜距離(L)の数値を利用してマトリックス演算を行う。
5) 状況により使い分け高速化に対応する。
【0011】
なお、参考としてマトリックス演算の座標変換アルゴリズムを以下に説明しておく。
初期に基準点4点の測量する。その時の座標系は図1のxyz座標系で測定されている。
初期の基準点座標を(x1、y1、z1)、(x2、y2、z2)、(x3、y3、z3)、(x4、y4、z4)とする。
これらの4点座標は三次元直交座標が傾斜する前に測定されたものである。
数学的に三次元座標の回転と平行移動は、初期の座標系xyzから回転および平行移動したx‘y’z‘座標系への変換式は下記のように表せる。
【0012】
【数1】

【0013】
また以上式から
【0014】
【数2】

【0015】
以上のことを考えて初期状態から回転移動してしまった座標系で計測した値を元の座標系に変換するためには、
【0016】
【数3】

【0017】
Mを求めるため、いま回転移動したx‘y’z‘座標系で基準点4点の測定を行う。測定値を(x1’、y1’、z1’)、(x2’、y2’、z2’)、(x3’、y3’、z3’)、(x4’、y4’、z4’)とする。
【0018】
【数4】

【0019】
【数5】

【0020】
【数6】

【0021】
【数7】

【0022】
以上がマトリックス演算の座標変換アルゴリズムである。

【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】マトリックス演算において、基準点4点の測量した時の座標系を示す説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面上にない既知の4点をトータルステーションから測定し、
このトータルステーションの位置のずれを修正するために座標変換係数を求め、
その後の測定において求めた水平角、鉛直角、斜距離を、この座標変換係数を使用して修正して行うトータルステーションによる測定方法において、
初めに全点を通常の測定、すなわち水平角(H)、鉛直角(V)、斜距離(L)の測定を行い、各測点の斜距離(L)の情報を保持しておき、
次に各点の測角のみを測定し、
斜距離データは、先だって測定して保持してある斜距離(L)データを採用し直交三次元座標に変換して行う、
トータルステーションによる測定方法。

【請求項2】
トータルステーションの位置のずれ、または傾きの影響を補正するため
マトリックス演算によって座標変換係数を求めて行う、
請求項1記載の、トータルステーションによる測定方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−20213(P2008−20213A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189829(P2006−189829)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)