説明

ドアクローザー

【課題】ドアを開いた時に、ドアの閉じる方向への作動を一時的に規制することができる、簡素な構成で、外観的に優れたドアクローザーを提供する。
【解決手段】ドアを閉じる方向に付勢するためのドアクローザーであって、ドアクローザーは、ドアに取付けられるドアクローザー本体3を具備し、ドアクローザー本体3は、油圧シリンダ11と、弾性体12に付勢されて油圧シリンダ11内に内装されると共に、外周部にギア部13が刻設されたピストン14と、油圧シリンダ11に枢支されると共に、ピストン14のギア部13と噛合してピストン14を摺動させるギア体15と、ドアが開いた時、ギア体13の回転を一時的に規制する規制手段21とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアを閉じる方向に付勢するためのドアクローザーに関し、特に、ドアを開いた時に、ドアの閉じる方向への作動を一時的に規制するように構成されたドアクローザーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアを閉じる方向に付勢するためのドアクローザーは、広く用いられており、此種ドアクローザーは、ドアを開いた後、ドアを閉じる方向に緩衝的に付勢して、ドアを自動的に且つ円滑に閉める機能を有するものである。
そして、従来のドアクローザーはドアが開いた後、直ちにドアを閉める構成になっており、或いは、ドアを開いた状態に固定でき、人がドアを閉じる方向に付勢すると、ドアクローザーが自動的にドアを閉める構成になっている。
【0003】
然しながら、例えば、荷物等の搬入時等、多人数で通行する場合等、或いは、車椅子等で通行する場合等、直ちにドアが閉まることは危険であり、或いは、ドアを開いた状態に固定する場合に於いても、ドア通過後、手動でドアを閉じる作業は、煩雑であり、この煩雑な作業を回避することが望まれている。又、ドアを閉じることを失念する虞もあり、ドアを全開状態で放置することは、セキュリティ上問題である。更に、ドアを全開状態で放置することは、冷暖房等の空調のロスを招き、冷暖房費等の費用増大となるばかりでなく、地球温暖化を促進する虞がある。
そこで、ドアを開いた時に、ドアの作動をロックすると共に、所定時間経過後にロックを解除してドアを自動的に閉じることができるドアクローザーが望まれていた。
【0004】
本願出願人はドアを開いた時に、ドアの作動をロックすると共に、所定時間経過後にロックを解除してドアを自動的に閉じることができるドアクローザーに関して、既に特願2005−308456及び特願2005−356164を出願している。
特願2005−308456は、遊星ギアユニット及びゼンマイ等を用いたディレイ機構をドアクローザーに設けることにより、ドアを開いてから所定時間経過後にドアを自動的に閉じるように構成したものである。
一方、特願2005−356164は、ソレノイド及びタイマー等を用いたディレイ機構をドアクローザーに設けることにより、ドアを開いてから所定時間経過後にドアを自動的に閉じるように構成したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、特願2005−308456及び特願2005−356164は、いずれもドアを開いた時に、ドアの作動をロックすると共に、所定時間経過後にロックを解除してドアを自動的に閉じることができるドアクローザーである。
特に、特願2005−356164は、前述の効果に加え、簡素、且つ、安価なドアクローザーを提供できる。
【0006】
然しながら、前記ドアクローザーは、従来のドアクローザーに付設してディレイ機構を設けるものであり、ディレイ機構が別に設けられることにより外観上も好ましくなく、又、ドアクローザー全体が比較的大きくなってしまうという問題がある。
【0007】
以上の現状に鑑み、本発明は、ドアを開いた時に、ドアの閉じる方向への作動を一時的に規制することができる、簡素な構成で、外観的に優れたドアクローザーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、ドアを閉じる方向に付勢するためのドアクローザーであって、前記ドアクローザーは、ドアに取付けられるドアクローザー本体を具備し、前記ドアクローザー本体は、油圧シリンダと、弾性体に付勢されて前記油圧シリンダ内に内装されると共に、外周部にギア部が刻設されたピストンと、前記油圧シリンダに枢支されると共に、前記ピストンのギア部と噛合して前記ピストンを摺動させるギア体と、ドアが開いた時、前記ギア体の回転を一時的に規制する規制手段とを備えたことを特徴とするドアクローザーを提供するものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記ドアクローザー本体に、前記ギア体に固着されたレバーの一端部が揺動自在に枢支され、前記レバーの他端部にアームの一端部が回転自在に枢支され、前記アームの他端部が壁に固定された壁固定用ステーに揺動自在に枢支されることを特徴とする請求項1記載のドアクローザーを提供するものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記規制手段は、前記ギア体に形成されたカム部と、弾性体に付勢され前記カム部を押圧する調整ピンと、前記弾性体を押圧することによって前記調整ピンの押圧力を調整する調整ネジとから成り、前記調整ネジの頭部が前記ドアクローザー本体の一端部に露出していることを特徴とする請求項1又は2記載のドアクローザーを提供するものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、2つの前記規制手段が前記調整ネジの頭部を前記ドアクローザー本体の左右端に夫々露出させて前記ドアクローザー本体の左右部に夫々設けられ、前記ドアクローザー本体の左右端のいずれからも前記調整ネジを調節自在に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のドアクローザーを提供するものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記規制手段は、前記油圧シリンダと併設されるサブ油圧シリンダと、弾性体に付勢されて前記サブ油圧シリンダ内に内装されると共に、外周部に前記ギア体と噛合自在の可動ギア部を備えたサブピストンと、前記サブ油圧シリンダ内に内装されると共に、弾性体に付勢されて前記油圧シリンダ内に突出自在のロックピンとを備え、前記ロックピンにカム部が形成され、前記サブピストンの先端部に、前記カム部に嵌入して前記ロックピンを押し戻す突出部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のドアクローザーを提供するものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記規制手段は、前記ピストンの後端部に設けられたロック溝と、前記油圧シリンダ後端を閉塞する蓋体に設けられると共に、弾性体に付勢されて前記ロック溝に嵌入自在のロックボールと、前記弾性体の押圧力を調整する調整ネジとを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のドアクローザーを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1記載の発明によれば、ドアを閉じる方向に付勢するためのドアクローザーであって、前記ドアクローザーは、ドアに取付けられるドアクローザー本体を具備し、前記ドアクローザー本体は、油圧シリンダと、弾性体に付勢されて前記油圧シリンダ内に内装されると共に、外周部にギア部が刻設されたピストンと、前記油圧シリンダに枢支されると共に、前記ピストンのギア部と噛合して前記ピストンを摺動させるギア体と、ドアが開いた時、前記ギア体の回転を一時的に規制する規制手段とを備えたので、ドアを開いた時に、ドアの閉じる方向への作動を一時的に規制することができる、簡素な構成で、外観的に優れたドアクローザーを提供することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、前記ドアクローザー本体に、前記ギア体に固着されたレバーの一端部が揺動自在に枢支され、前記レバーの他端部にアームの一端部が回転自在に枢支され、前記アームの他端部が壁に固定された壁固定用ステーに揺動自在に枢支されるので、請求項1記載の発明の効果に加え、前記ドアクローザー本体をドアに取付け、壁固定用ステーを壁に固定してドアクローザーを施工することができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、前記規制手段は、前記ギア体に形成されたカム部と、弾性体に付勢され前記カム部を押圧する調整ピンと、前記弾性体を押圧することによって前記調整ピンの押圧力を調整する調整ネジとから成り、前記調整ネジの頭部が前記ドアクローザー本体の一端部に露出しているので、請求項1又は2記載の発明の効果に加え、ドアクローザー本体の一端部から調整ネジを調整してギア体の回転を一時的に規制する規制力を調整することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、2つの前記規制手段が前記調整ネジの頭部を前記ドアクローザー本体の左右端に夫々露出させて前記ドアクローザー本体の左右部に夫々設けられ、前記ドアクローザー本体の左右端のいずれからも前記調整ネジを調節自在に構成されているので、請求項1乃至3のいずれか一に記載の発明の効果に加え、ドアクローザー本体の両端部のいずれかの調整ネジを調整してギア体の回転を一時的に規制する規制力を調整することができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、前記規制手段は、前記油圧シリンダと併設されるサブ油圧シリンダと、弾性体に付勢されて前記サブ油圧シリンダ内に内装されると共に、外周部に前記ギア体と噛合自在の可動ギア部を備えたサブピストンと、前記サブ油圧シリンダ内に内装されると共に、弾性体に付勢されて前記油圧シリンダ内に突出自在のロックピンとを備え、前記ロックピンにカム部が形成され、前記サブピストンの先端部に、前記カム部に嵌入して前記ロックピンを押し戻す突出部が形成されているので、請求項3記載の発明の効果と同様な効果が期待できる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、前記規制手段は、前記ピストンの後端部に設けられたロック溝と、前記油圧シリンダ後端を閉塞する蓋体に設けられると共に、弾性体に付勢されて前記ロック溝に嵌入自在のロックボールと、前記弾性体の押圧力を調整する調整ネジとを備えたので、請求項3記載の発明の効果と同様な効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1に於いて、1は、本発明のドアクローザーであり、ドアクローザー1は、ドア2に取付けられる本発明の第1実施例のドアクローザー本体3と、ドアクローザー本体3に揺動自在に枢支されるレバー4と、レバー4に回転自在に枢支されるアーム5と、壁6に取り付けられ、アーム5を揺動自在に枢支する壁固定用ステー7とを備えている。
【0021】
そして、図2に示す前記ドアクローザー本体3は、図3に示す如く、油圧シリンダ11と、弾性体12に付勢されて油圧シリンダ11内に内装されると共に、外周部にギア部13が刻設されたピストン14と、油圧シリンダ11に枢支されると共に、ピストン14のギア部13と噛合してピストン14を摺動させるギア体15と、ドア2が開いた時、ギア体15の回転を一時的に規制する後述する規制手段21とを備えている。
【0022】
更に詳細に説明すると、前記油圧シリンダ11には、その両端にドア2に取付けるためのネジ孔22,22が形成され、ボルト23,23によってドア2に取付けられるように構成されている。
又、前記油圧シリンダ11の側壁部には、前記ピストン14の先端側と後端側とを接続する油路24が形成され、油路24間に油路24を流れる油量を調節する油量調節ネジ25が設けられている。
【0023】
前記ピストン14の先端中央部にはピストン14の先端と後端とを貫通する貫通孔26が形成され、貫通孔26内にボール27が内装されており、貫通孔26内に於いて、ボール27が右方に移動すると貫通孔26を閉塞するように構成され、貫通孔26とボール27とによって逆止弁の機能を有している。
【0024】
前記ギア体15は、前記ギア部13に対向する略半外周部分にギア部13と噛合するギア部28が刻設されている。前記ギア体15の回転軸16は、前記ドアクローザー本体3外に突設し、レバー4に固着されている。
【0025】
前記規制手段21は、図3(b)に示す如く、前記ギア体15のギア部28が形成されていない他の半周部に形成されたカム部31と、弾性体32に付勢されカム部31を押圧する調整ピン33と、弾性体32を押圧することによって調整ピン33の押圧力を調整する調整ネジ34とから成り、前記調整ピン33と、弾性体32と、調整ネジ34とは前記ギア体15の図に於いて左方に設けられ、調整ネジ34の頭部35がドアクローザー本体3の左端部に露出している。
【0026】
前記カム部31は、前記ギア部28が形成されていない他の半外周部に時計周り方向に縮径部36から漸次拡径して拡径部37となるカム形状が形成されている。尚、拡径部37は、カム部31の回転上の終端近傍に形成されている。
【0027】
一方、図3(b)、(c)に示す如く、前記規制手段21と略同様の規制手段41が規制手段21の図に於いてやや前方側のギア体15の右方に設けられ、規制手段41は、前記カム部31が前記ギア体15の軸方向に延長して略同形状に形成されるカム部42と、弾性体43に付勢されカム部42を押圧する調整ピン44と、弾性体43を押圧することによって調整ピン43の押圧力を調整する調整ネジ45とから成り、調整ネジ45の頭部46がドアクローザー本体3の右端部に露出している。
前記カム部42にも、前記カム部31と同様に時計周り方向に縮径部47から漸次拡径して拡径部48となるカム形状が形成されている。尚、拡径部48は、カム部42の回転上の終端近傍に形成されている。
【0028】
従って、前記ドアクローザー本体3は、ドアクローザー本体3の左右端のいずれからも前記調整ネジ34又は45を調節して、前記ギア体15の回転速度を調節することができる。
【0029】
而して、前記ドアクローザー本体3の作動を説明すると、ドア2が開きドアクローザー本体3に対してレバー4が揺動することにより、ギア体15が回転すると、ギア体15のギア部28がピストン14のギア部13に噛合してピストン14を図3(b)に於いて右方に摺動させる。
この時、前記ボール27は左方向に移動して、ピストン14の摺動を妨げない。
又、調整ピン33はカム部31の縮径部36から拡径部37に順次当接し、調整ピン33が拡径部37に当接すると調整ピン33が拡径部37に押されて弾性体42の反力が高まり、ドア2の回転がやや重くなるが、ドア2は、略90度まで開くことができる。
【0030】
次に、ドア2が開いた状態でドアを開いた手が離されると、弾性体12の復元力によりピストン14が図に於いて左方向に移動し始める。この時、前記調整ピン33がカム部31の拡径部37に押されることにより、弾性体32の反発力がギア体15の回転抵抗となり、ギア体15の回転速度を規制する。従って、ギア体15の回転は減速され、ドア2の閉じる方向への回転を減速する。これによって、ドア2の閉じる時間を一時的に遅延させる。そして、カム部31の拡径部37が調整ピン33位置を通過すると、ギア体15は、減速状態を脱し、通常回転に戻り、ドア2も閉じる方向に通常速度で回転する。
【0031】
一方、ドア2が開きピストン14が図3(c)に於いて右方に摺動する時、調整ピン44はカム部42の縮径部47から拡径部48に順次当接し、調整ピン44が拡径部48に当接すると調整ピン33が拡径部37に押されて弾性体42の反力が高まり、ドア2の回転がやや重くなるが、ドア2は、略90度まで開くことができる。
【0032】
次に、ドア2が開いた状態でドアを開いた手が離され、弾性体12の復元力によりピストン14が図に於いて左方向に移動し始める時、前記調整ピン44がカム部42の拡径部48を押圧することにより、弾性体43の反発力がギア体15の回転抵抗となり、ギア体15の回転速度を規制する。従って、ギア体15の回転は減速され、ドア2の閉じる方向への回転を減速する。これによって、ドア2の閉じる時間を一時的に遅延させる。そして、調整ピン44に当接する部分がカム部42の拡径部48から縮径部47に移ると、ギア体15は、減速状態を脱し、通常に回転してドア2も閉じる方向に通常速度で回転する。
前記規制手段21と41とは、同時に作用させることもでき、調整ネジ34、45を調整することにより、どちらか一方のみを作用させることもできる。
【0033】
尚、ピストン14が図に於いて右方向に移動する時、前記ボール27は左方向に移動して、貫通孔26を閉塞することはなく、圧油は貫通孔26内を流れ、ピストン14は円滑に摺動することができる。
一方、ピストン14が図に於いて左方向に移動する時、前記ボール27は右方向に移動して、貫通孔26を閉塞し、ピストン14の摺動を妨げるが、圧油は前記油路24を通ってピストン14の先端側から後端側に流れピストン14は左方向に移動できる。但し、油量調節ネジ25を調節することにより油量を調節してピストン14の速度を制御することができる。
尚、前記ドアクローザー本体3に於いて、前記規制手段21及び42を設けたが、それらのうちの何れか1つを設けても良い。然る時も同様の効果が期待できる。但し、規制手段の調整ネジの調整は規制手段を設けたドアクローザー本体3の一端部側に限定される。
【0034】
図4に於いて、51は本発明の第2実施例のドアクローザー本体であり、ドアクローザー本体51は、第1実施例のドアクローザー本体(図2に於いて3)の前記規制手段(図3に於いて21及び41)に代えて図5及び図6に示す規制手段52を備えている。
【0035】
即ち、規制手段52は、前記油圧シリンダ11の下方に平行して併設されるサブ油圧シリンダ53と、弾性体54に付勢されてサブ油圧シリンダ53内に内装されると共に、外周部に前記ギア体15と噛合自在の可動ギア部55を備えたサブピストン56と、サブ油圧シリンダ53内に内装されると共に、弾性体57に付勢されて押し上げられ油圧シリンダ11内に突出自在のロックピン58とを備え、ロックピン58にカム部59が形成され、サブピストン56の先端部に、カム部59に嵌入してロックピン58を押し下げる(押し戻す)突出部60が形成されている。
【0036】
更に詳細に説明すると、前記ロックピン58は、サブ油圧シリンダ53内に図に於いて上方に向かって突設された保持体61に摺動自在に設けられ、保持体61に設けられた弾性体57によって上方に付勢されており、ロックピン58の上端は、サブ油圧シリンダ53から油圧シリンダ11に貫通して形成された貫通孔62から油圧シリンダ11内に突出自在に構成されている。尚、貫通孔62は、前記ピストン14の先端部の摺動右端近傍に形成されている。
【0037】
又、前記カム部59は、ロックピン58の側面にピストン56方向に凹状に開放する如く形成され、凹状の下側面が右下方向に向かって斜設されている。
一方、前記突出部60は、下側面が左上方向に向かって斜設されており、突出部60がカム部59に嵌入された時、突出部60の斜設された下側面が、カム部59の斜設された下側面を押し下げ、それによって、ロックピン58の上端部が油圧シリンダ11内に突出しないようにロックピン58を押し下げるように構成されている。
【0038】
更に、可動ギア部55は、板バネスリーブ63によって、上方に付勢されており、板バネスリーブ63は、図6(d)乃至(F)に示す如く、軸方向に切開された円筒状のスリーブ64の上端に板バネ65が突設するように切り込まれて形成されている。
【0039】
而して、前記ドアクローザー本体51の作動を説明すると、ドア2が開きドアクローザー本体51に対してレバー4が揺動することによりギア体15が回転すると、ギア体15のギア部28がピストン14のギア部13に噛合してピストン14を図5(a)に於いて右方に摺動させる。
この時、ギア体15に可動ギア部55も噛合しているので、サブ油圧シリンダ53内のサブピストン56も右方に摺動する。
又、ピストン14が右方に摺動すると、図5(b)に示す如く、前記ロックピン58の先端部58aが油圧シリンダ11内に突出する。
【0040】
次に、ドア2が開いた状態でドアを開いた手が離されると、弾性体12の復元力によりピストン14が図に於いて左方向に移動する。そして、一定寸法移動した位置でピストン14はロックピン58の先端部58aに当接して移動を停止する。
一方、サブピストン56も左方向に移動し、ピストン14が停止した後もサブピストン56の可動ギア部55が、ギア部28に押されて下方に移動することにより、即ち、可動ギア部55とギア部28との噛合が外れ、サブピストン56は左方に移動を継続し、サブピストン56の突出部60がカム部59に嵌入され、ロックピン58が押し下げられる(押し戻される)。それによって、ピストン11が左方に移動してギア体15も回転し、ドア2が閉じる。
従って、ピストン14が停止している時間は、前記ギア体15の回転が停止状態に規制され、前記ドア2も回転が一時規制される。
【0041】
図7に於いて、71は本発明の第3実施例のドアクローザー本体であり、ドアクローザー本体71は、図8に示すように、前記第1実施例のドアクローザー本体(図2に於いて3)の前記規制手段(図3に於いて21及び41)に代えて次に述べる規制手段72を備えている。
【0042】
即ち、規制手段72は、ピストン14の後端部に設けられたロック溝73と、油圧シリンダ11後端を閉塞する蓋体74に設けられると共に、弾性体75に付勢されてロック溝73に嵌入自在のロックボール76と、弾性体75の押圧力を調整する調整ネジ77とを備えている。
【0043】
更に詳細に説明すると、前記油圧シリンダ11は後端部が拡径されており、前記ピストン14の後端部も前記油圧シリンダ11の拡径された後端部に摺動自在に拡径されており、ピストン14の拡径された後端部の内壁面にロック溝73が環状に形成されている。
又、前記蓋体74は油圧シリンダ11の内方に突出して形成され、蓋体74の突出した先端部はピストン14の後端部の内壁面に摺動或いは隣接状態に挿入できる大きさに形成され、蓋体74の先端部の外周上に等間隔に4個のロックボール76,76…が配置され、ロックボール76,76…は、弾性体75,75…によって夫々放射方向に付勢されている。尚、前記ロックボール76,76…は、前記ピストン14が摺動右端近傍にある時、前記ロック溝73に嵌入する位置に設けられている。
【0044】
而して、前記ドアクローザー本体71の作動を説明すると、ドア2が開きドアクローザー本体71に対してレバー4が揺動することにより、ギア体15が回転すると、ギア体15のギア部28がピストン14のギア部13に噛合してピストン14を図8(a)に於いて右方に摺動させる。
この時、前記蓋体74の先端部がピストン14の拡径した後端部に挿入され、ロックボール76,76…がロック溝73に嵌入すると、ピストン14の移動が一時停止或いは減速し、ギア体15及びドア2の回転も停止或いは減速状態に規制される。
ドア2を開く力によって、ロックボール76,76…がロック溝73から脱出すると、ピストン14は、再び通常速度で右方に移動し、ギア体15が回転してドア2が略90度に開く。
【0045】
次に、ドア2が開いた状態でドア2を開いた手が離されると、弾性体12の復元力によりピストン14が図に於いて左方向に移動を開始する。そして、一定寸法移動した位置でロックボール76,76…がロック溝73に嵌入すると、ピストン14の移動が一時停止或いは減速し、ギア体15及びドア2の回転も停止或いは減速状態に規制される。そして、一定時間後、前記弾性体12の復元力によりロックボール76,76…がロック溝73から外れると、ピストン14は通常速度で左方向に移動再開し、同様に、ギア体15も回転を再開し、ドア2も閉じる方向に通常速度で回転する。
【0046】
尚、前記第3実施例のドアクローザー本体71に於いて、ドア2が90度開いた時に、丁度、前記ロックボール76,76…がロック溝73に嵌入するように構成されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施例のドアクローザーの取り付け状態を説明する斜視図である。
【図2】(a)本発明の第1実施例のドアクローザー本体の左側面図である。(b)本発明の第1実施例のドアクローザー本体の正面図である。(c)本発明の第1実施例のドアクローザー本体の右側面図である。
【図3】(a)図2のA−B断面図である。(b)図2のC−D−E−F断面図である。(c)図2のG−H−I−J断面図である。
【図4】(a)本発明の第2実施例のドアクローザー本体の左側面図である。(b)本発明の第2実施例のドアクローザー本体の正面図である。
【図5】(a)ドアが閉じた状態に於ける図4のA−B断面図である。(b)ドアが90度開いた状態に於ける図4のA−B断面図である。
【図6】(a)図4のC−D断面図である。(b)図4のE−F断面図である。(c)ドアが90度開いた状態に於ける図4の一部E−F断面図である。(d)図4の板バネスリーブの正面図である。(e)図4の板バネスリーブの側面図である。(f)図4の板バネスリーブの平面図である。
【図7】(a)本発明の第3実施例のドアクローザー本体の左側面図である。(b)本発明の第3実施例のドアクローザー本体の正面図である。(c)本発明の第3実施例のドアクローザー本体の右側面図である。
【図8】(a)図7のA−B断面図である。(b)前図(a)のC−D断面図である。(c)前図(a)のE部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ドアクローザー
2 ドア
3,51,71 ドアクローザー本体
4 レバー
5 アーム
6 壁
7 壁固定用ステー
11 油圧シリンダ
12 弾性体
13 ギア部
14 ピストン
15 ギア体
21,41,52,72 規制手段
31,42,59 カム部
32,43,54,57,75 弾性体
33,44 調整ピン
34,45,77 調整ネジ
35,46 頭部
53 サブ油圧シリンダ
55 可動ギア部
56 サブピストン
58 ロックピン
60 突出部
73 ロック溝
74 蓋体
76 ロックボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアを閉じる方向に付勢するためのドアクローザーであって、前記ドアクローザーは、ドアに取付けられるドアクローザー本体を具備し、前記ドアクローザー本体は、油圧シリンダと、弾性体に付勢されて前記油圧シリンダ内に内装されると共に、外周部にギア部が刻設されたピストンと、前記油圧シリンダに枢支されると共に、前記ピストンのギア部と噛合して前記ピストンを摺動させるギア体と、ドアが開いた時、前記ギア体の回転を一時的に規制する規制手段とを備えたことを特徴とするドアクローザー。
【請求項2】
前記ドアクローザー本体に、前記ギア体に固着されたレバーの一端部が揺動自在に枢支され、前記レバーの他端部にアームの一端部が回転自在に枢支され、前記アームの他端部が壁に固定された壁固定用ステーに揺動自在に枢支されることを特徴とする請求項1記載のドアクローザー。
【請求項3】
前記規制手段は、前記ギア体に形成されたカム部と、弾性体に付勢され前記カム部を押圧する調整ピンと、前記弾性体を押圧することによって前記調整ピンの押圧力を調整する調整ネジとから成り、前記調整ネジの頭部が前記ドアクローザー本体の一端部に露出していることを特徴とする請求項1又は2記載のドアクローザー。
【請求項4】
2つの前記規制手段が前記調整ネジの頭部を前記ドアクローザー本体の左右端に夫々露出させて前記ドアクローザー本体の左右部に夫々設けられ、前記ドアクローザー本体の左右端のいずれからも前記調整ネジを調節自在に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のドアクローザー。
【請求項5】
前記規制手段は、前記油圧シリンダと併設されるサブ油圧シリンダと、弾性体に付勢されて前記サブ油圧シリンダ内に内装されると共に、外周部に前記ギア体と噛合自在の可動ギア部を備えたサブピストンと、前記サブ油圧シリンダ内に内装されると共に、弾性体に付勢されて前記油圧シリンダ内に突出自在のロックピンとを備え、前記ロックピンにカム部が形成され、前記サブピストンの先端部に、前記カム部に嵌入して前記ロックピンを押し戻す突出部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のドアクローザー。
【請求項6】
前記規制手段は、前記ピストンの後端部に設けられたロック溝と、前記油圧シリンダ後端を閉塞する蓋体に設けられると共に、弾性体に付勢されて前記ロック溝に嵌入自在のロックボールと、前記弾性体の押圧力を調整する調整ネジとを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のドアクローザー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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