説明

ドアミラーの取付構造

【課題】アウタパネル等の寸法誤差の影響を受けることがないとともに、ドアミラーの支持剛性を確保できるドアミラーの取付構造を提供する。
【解決手段】ドア11のアウタパネル12に取付板15を固定する。取付板15にはドアミラーを取り付けるとともに、ブラケットアーム31を取り付ける。ブラケットアーム31をネジ33及びナット30によりドア11内の連結金具28に固定する。ブラケットアーム31と連結金具28との間には、連結金具28に対するブラケットアーム31の固定位置をドア11の厚み方向において調節するための長孔32よりなる調節構造を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車において、ドアミラーをフロントドアの外側面に取り付けるためのドアミラーの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のドアミラーの取付構造としては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、図5に示すように、フロントドア41にアウタパネル42とインナパネル43とが備えられている。フロントドア41内において、アウタパネル42の内側面には取付板44が接着剤45により固定されるとともに、インナパネル43の内側面には取付板44に接合する補強板46が溶接固定されている。取付板44と補強板46との接合部の外側面には、ドアミラー47がブラケット48を介して複数のネジ49及びナット50により取り付けられている。そして、アウタパネル42に接着固定されているミラー取付用の取付板44が、補強板46との接合固定によって補強されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58−196248公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の構造においては、アウタパネル42とインナパネル43との間の間隔寸法にバラつきが生じたり、金属板からの取付板44及び補強板46のプレス成型時に、取付板44及び補強板46のドア厚み方向の高さ寸法にバラつきが生じたりする。しかしながら、前記従来構成においては、それらのバラつきを考慮することなく補強板46がインナパネル43に溶接固定されるともに、ミラー取付用の取付板44がアウタパネル42に接着固定された状態で、その補強板46に対して接合固定されている。
【0005】
このため、両パネル42,43間の間隔寸法にバラツキが生じたり、取付板44及び補強板46の高さ寸法にバラツキが生じたりしていると、両パネル42,43間で取付板44と補強板46とを接合固定したとき、インナパネル43よりも板厚の薄いアウタパネル42に外側への膨らみや内側への凹みが生じて、車両の外観を損ねたり、アウタパネル42に対するミラーの位置がバラついたりするという問題があった。これを防止するためには、ミラーをアウタパネルのみに支持して寸法バラツキの影響を受けないようにする構成が考えられる。しかしながら、この構成においては、ミラーの支持剛性が低く、小さな外力でアウタパネルが変形してしまうおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、パネル寸法等のバラツキの影響を受けることがないとともに、ミラーを支持するための剛性を確保することができるドアミラーの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、ドアのアウタパネルの内側面に取付板を固定し、その取付板にはアウタパネルの外側面に位置するドアミラーを取り付けるとともに、ブラケットアームを取り付け、そのブラケットアームをドア内の強度メンバーに固定するとともに、ブラケットアームと強度メンバーとの間には、強度メンバーに対するブラケットアームの固定位置をドアの厚み方向において調節するための調節手段を設けたことを特徴としている。
【0008】
ここで、強度メンバーとはアウタパネルとインナパネルとの間においてドア内に固定されたウィンドウガラスの枠やサイドインパクトビーム等を指す。
従って、この発明のドアミラーの取付構造においては、調節手段により強度メンバーに対するブラケットアームの固定位置をドアの厚み方向に調節しながら、アウタパネルに固定されたミラー取付用の取付板をブラケットアームにより強度メンバーに連結固定することができる。このため、アウタパネルとインナパネルとの間の間隔寸法や、取付板のドア厚み方向の高さ寸法にバラツキが生じている場合でも、強度メンバーに対するブラケットアームの固定位置の調節により、それらの寸法のバラツキを吸収することができる。また、ドアミラーを強度メンバーに支持することになるため、ドアミラーの支持剛性を向上することができる。
【0009】
前記の構成において、前記強度メンバーは、ドアウィンドウのガラス板の枠であることが好ましい。
前記の構成において、前記調節手段として前記ブラケットアームにドアに厚み方向に延びる長孔を設け、その長孔を通るネジによりブラケットアームを前記枠に固定することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、この発明によれば、パネル寸法等のバラツキの影響を受けることがないとともに、ドアミラーを支持するための剛性を確保することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態のドアミラーの取付構造を備えたフロントドアの要部斜視図。
【図2】図1の2−2線における部分断面図。
【図3】図1の3−3線における部分断面図。
【図4】フロントドアのインナパネルを取り除いた状態を示す要部内側面図。
【図5】従来のドアミラーの取付構造を示すフロントドアの横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、この発明を具体化したドアミラーの取付構造の一実施形態を、図1〜図4に従って説明する。
図1及び図2に示すように、車両の前部両側に取り付けられるフロントドア11には、アウタパネル12及びインナパネル13が備えられている。ここで、アウタパネル12は薄く形成され、インナパネル13はアウタパネル12より厚く形成されている。フロントドア11の上部前端位置において、アウタパネル12の外側面にはドアミラー(サイドミラー)14を取り付けるための凹部12aが形成されている。アウタパネル12の凹部12aの内側面には、取付板15がスポット溶接により固定されている。取付板15の外周縁とアウタパネル12の内側面との間には、それらの間をシールするためのマスチック樹脂、接着剤等よりなるシーリング材16が介在されている。
【0013】
図1及び図2に示すように、前記ドアミラー14はミラー板17aが設けられたミラー本体17を備え、そのミラー本体17の前側にはウインカー18が設けられている。ミラー本体17の下面にはミラーステー19が突出形成され、そのミラーステー19には複数本(実施形態では3本)のスタッドボルト20が突設されている。前記ミラー本体17及びミラーステー19内には、ミラー本体17を図2に示す後方を視認可能な突出位置とアウタパネル12に沿う折りたたみ位置との間で回動させるモータや、ミラー板17aの角度を調節するためのモータ等の電気機器(図示しない)が内蔵されている。ミラーステー19の外周には、ステーカバー21が被覆装着され、その端部にはアウタパネル12との間の隙間内に位置するゴム等の弾性材よりなるガスケット37が貼着されている。図4に示すように、前記取付板15には、ミラーステー19上のスタッドボルト20を挿通するための複数の挿通孔22が形成されている。取付板15の中央部には、ミラー本体17のウインカー18や前記モータ等の電気機器から延びるワイヤハーネス(図示しない)を導くための透孔23が形成されている。
【0014】
そして、前記ドアミラー14のミラーステー19がアウタパネル12の凹部12a内に配置されるとともに、凹部12aに形成した透孔12bを通って取付板15上に設置されている。そして、各ミラーステー19のスタッドボルト20が取付板15の各挿通孔22に挿通された状態で、それらのスタッドボルト20にナット24が螺合されることにより、ドアミラー14が取付板15に固定されている。なお、図2に示すように、インナパネル13には、スタッドボルト20にナット24を螺合させる際に工具を挿入することに用いられる開口25が形成されている。
【0015】
図3及び図4に示すように、前記フロントドア11内においてインナパネル13には、フロントドアのガラス板26の縁部を開閉移動可能に収容するためのチャネル状の枠27が固定されている。この枠27が強度メンバーを構成している。枠27の車両前方側の部分には、チャネル状の連結金具28が溶接固定されている。連結金具28には挿通孔29が形成され、その挿通孔29と対応する連結金具28の側面にはナット30が溶接固定されている。
【0016】
前記取付板15の内側前部には、ブラケットアーム31が車両の前方側に延びるように溶接固定されている。ブラケットアーム31の先端部には、連結金具28に固定可能な折曲部31aが形成されている。ブラケットアーム31の折曲部31aには、調節手段を構成する長孔32がフロントドア11の厚み方向に延びるように形成されている。そして、このブラケットアーム31の長孔32及び連結金具28の挿通孔29を介して、前記ナット30にネジ33が螺合されることにより、ブラケットアーム31が連結金具28に対して固定されている。この場合、連結金具28に対するブラケットアーム31の固定位置が、長孔32の長さの範囲内でドアの厚み方向へ調節できるようになっている。そして、アウタパネル12に固定されたミラー取付用の取付板15が、ブラケットアーム31を介してフロントドア11内の連結金具28に連結固定されることによって枠27に補強状態で固定されている。
【0017】
なお、図3に示すように、インナパネル13には、ナット30にネジ33を螺合させる際に工具を挿入するのに用いられる開口34が形成されている。開口34には、その開口34を塞ぐようにゴム製のキャップ35が取り付けられている。
【0018】
以上のように構成されたドアミラーは以下のようにして組み付けられる。
まず、あらかじめ連結金具28を溶接した枠27がインナパネル13に固定されるとともに、ガラス板26が組み付けられる。一方、別工程においてアウタパネル12の凹部12aの内側面に対し、シーリング材16を介して取付板15がスポット溶接される。その後、図3の右側に示すように、アウタパネル12がその端縁のかしめによってインナパネル13に組み付けられる。
【0019】
次いで、インナパネル13の開口34を介してネジ33をナット30に締め付けることにより、ブラケットアーム31が連結金具28に固定され、開口34をキャップ35によって閉鎖する。この場合、アウタパネル12と枠27との間の寸法誤差やブラケットアーム31の長さの誤差等は、ネジ33に対する長孔32の位置が張設されて吸収される。最後に、ドアミラー14をアウタパネル12の凹部12a内にセットして、インナパネル13の挿通孔22にドアミラー14のスタッドボルト20を挿通させてナット24を締め付けることにより、アウタパネル12の外側にドアミラー14が組み付けられる。
【0020】
その後、アウタパネル12の室内側の面にドアトリム(図示しない)が取り付けられる。
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0021】
(1) このドアミラーの取付構造においては、フロントドア11のアウタパネル12の内側面に取付板15が固定され、その取付板15にはドアミラー14が取り付けられるとともに、ブラケットアーム31が取り付けられている。そして、そのブラケットアーム31がドア11内の連結金具28に固定されるとともに、ブラケットアーム31と連結金具28との間には、連結金具28に対するブラケットアーム31の固定位置をドア11の厚み方向において調節するための調節構造が設けられている。
【0022】
このため、連結金具28に対するブラケットアーム31の固定位置をドア11の厚み方向に調節することができ、言い換えればミラー取付用の取付板15の位置をドア11の厚み方向に調節できる。よって、アウタパネル12とインナパネル13との間の間隔寸法や、取付板15のドア厚み方向の高さ寸法にバラツキが生じている場合でも、連結金具28に対するブラケットアーム31の固定位置の調節により、それらの寸法のバラツキを吸収することができる。その結果、前記各寸法のバラツキの影響を受けることをなくし、アウタパネル12に固定された状態にあるミラー取付用の取付板15を、そのアウタパネル12に外側への膨らみや内側への凹みが生じることなく取り付けることができるとともに、ミラー板17aとアウタパネル12との位置関係を一定にできる。その結果、ドアミラー部を外観品質に優れたものとすることができる。
【0023】
(2) このドアミラーの取付構造においては、ドアミラー14が取付板15,ブラケットアーム31及び連結金具28を介して支持枠27に支持される。このため、ドアミラー14をアウタパネル12のみに支持した場合と異なり、ドアミラー14の支持剛性を向上できる。従って、アウタパネル12が変形したり、ドアミラー14の位置がずれたりすることを防止できる。
【0024】
(3) このドアミラーの取付構造においては、ミラー取付用の取付板15がアウタパネル12に固定されているため、アウタパネル12とインナパネル13との間の間隔寸法にバラツキが生じている場合でも、ドアミラー14のステーカバー21の端縁とアウタパネル12の外側面との間隔36を一定の小間隔に維持することができる。よって、外観品質に優れるとともに、その間隔36を塞ぐ弾性材を省略することも可能となる。ちなみに、実施形態とは異なり、ミラー取付用の取付板15がインナパネル13側に固定されている場合には、アウタパネル12とインナパネル13との間の間隔寸法のバラつきに伴って、ドアミラー14のステーカバー21の端縁とアウタパネル12の外側面との間隔36が変化する。このため、ステーカバー21の端縁とアウタパネル12の外側面との間にゴム製の弾性材を介在させる必要性が高いものであった。
【0025】
(4) このドアミラーの取付構造においては、前記ブラケットアーム31がネジ33及びナット30により連結金具28に固定されるとともに、前記調節構造がネジ33を挿通させるようにブラケットアーム31に形成された長孔32から構成されている。このため、調節構造が簡単であるとともに、連結金具28に対するブラケットアーム31の固定位置を容易に調節することができる。
【0026】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ ブラケットアーム31を枠27以外の補強メンバー、例えばサイドインパクトビームに固定すること。
【0027】
・ ステーカバー21の端部のガスケット37を省略すること。このように構成しても、前記実施形態ではステーカバー21とアウタパネル12との間の隙間を小さくできるため、問題ない。
【符号の説明】
【0028】
11…フロントドア、12…アウタパネル、13…インナパネル、14…ドアミラー、15…取付板、17…ミラー本体、19…ミラーステー、20…スタッドボルト、24…ナット、26…ガラス板、27…枠、28…強度メンバー、30…ナット、31…ブラケットアーム、32…調節手段としての調節構造を構成する長孔、33…ネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアのアウタパネルの内側面に取付板を固定し、その取付板にはアウタパネルの外側面に位置するドアミラーを取り付けるとともに、ブラケットアームを取り付け、そのブラケットアームをドア内の強度メンバーに固定するとともに、ブラケットアームと強度メンバーとの間には、強度メンバーに対するブラケットアームの固定位置をドアの厚み方向において調節するための調節手段を設けたことを特徴とするドアミラーの取付構造。
【請求項2】
前記強度メンバーは、ドアウィンドウのガラス板の枠であることを特徴とする請求項1に記載のドアミラーの取付構造。
【請求項3】
前記調節手段として前記ブラケットアームにドアに厚み方向に延びる長孔を設け、その長孔を通るネジによりブラケットアームを前記枠に固定したことを特徴とする請求項2に記載のドアミラーの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−82300(P2013−82300A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222981(P2011−222981)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)