説明

ドアミラーを備えたドア構造

【課題】ドアミラーがアウタパネルの外面位置に配設される車両において、組み付け作業性の良い構造により、ドアミラーの支持剛性を高めつつ調整可能とする。
【解決手段】アウタパネル2の内側にはこれを補強する補強部材21が設けられ、その外側にドアミラー5が前後の固定ボルト52F,52Rにより固定されている。アウタパネル2とインナパネル3との間に、窓ガラス41の上下移動をガイドするガラスランチャネル42が配設されている。補強部材21とガラスランチャネル42との間には補強ブラケットが配設されている。補強ブラケットは一端部6aが補強部材21側に対し前側の固定ボルト52Fに共締めで固定され、調整ねじ64の先端64aと他端部6c上の接触面62とで両者21,42に突っ張るようにしてドア内外方向に僅かに押し広げている。調整ねじ64のねじ込み量の増減により補強ブラケット6の張り力を調整可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアミラーがドアのアウタパネルの外面位置に配設される車両における、ドアミラーを備えたドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のフロントドア外側に設けられるドアミラーは、ドアのアウタパネルと窓枠との間の三角コーナー位置に配設されるものと、ドアのアウタパネルの外面位置に配設されるものとが存在する。このうち本発明の対象となる後者のドアミラーを備えた一般的なドア構造を図6に示した。同図に示すように、アウタパネル102の内側にはこれを補強する補強部材121が前後方向に亘って設けられており、ドアミラー105はアウタパネル102に設けられた開口を通じて、ミラーブラケット154を介してこの補強部材121に一体的に固定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−097120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行時において車両から上下方向の力が入力されると上記のアウタパネルの補強部材121にドアの内外方向に変形するような振動が発生し、これによりこの補強部材121に固定されたドアミラー105も共にドアの内外方向に振動するという問題があった。ここで、補強部材121自体にドアミラーの支持部として十分な剛性を与えると、その反面、形状の大型化や重量の増加を招いてしまうという不都合があり、ドアミラーの振動を抑える上での課題となっていた。
【0005】
この問題に鑑みて、上記の特許文献1に開示された技術においては、アウタパネルとインナパネルとの間に設けられたガラスランチャネル(同文献中のディビジョンバー)に、窓ガラスの開閉移動をガイドするために必要な高い剛性が与えられていることを利用して、ドアミラーが固定されるアウタパネルの補強部材の補強機能を向上させていた。この技術によれば、アウタパネルの補強部材をこのガラスランチャネルに対して結合部材を介して結合する構造とされていた。しかしながら、この結合部材は補強部材とガラスランチャネルのそれぞれに対して締結具により締結されていたため、既製の車両に後から組み付ける場合において、組み付け作業性が良くないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ドアミラーがアウタパネルの外面位置に配設される車両において、既製の車に後から組み付ける場合にも組み付け作業性が良く、かつ重量の大幅な増加を抑えた構造により、ドアミラーの支持剛性を調整可能に高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の発明に係るドアミラーを備えたドア構造は、アウタパネルとインナパネルとが間を空けて互いに張り合わされて成るドアを備え、ドアミラーが前記アウタパネルの外面位置に突設される車両におけるドアミラーを備えたドア構造であって、該ドアミラーは前記アウタパネルに取り付けられ、前記アウタパネルと前記インナパネルとの間に、窓ガラスの開閉移動をガイドするガラスランチャネルが固定された状態として配設され、前記ドアミラーをアウタパネルに取り付ける部位箇所と前記ガラスランチャネルとの間には該両者を互いにドア内外方向に押し広げる働きをなす張り部材が着脱可能に介装されており、該張り部材の張り力を調整することのできる調整機構が備えられていることを特徴とする。
この構成によれば、ドアミラーをアウタパネルに取り付ける部位箇所とガラスランチャネルとの間に介装された張り部材が、この両者を互いにドアの内外方向に押し広げるため、この両者がドアの内外方向に関して相対移動するのを規制できる。また、張り部材には該張り部材の張り力を調整することのできる調整機構が備えられている。このため、この張り部材によりドアミラーの支持剛性を調整可能に高めることができる。また、ドアミラーをアウタパネルに取り付ける部位箇所に対してのみドアミラー支持のための剛性を与える構成であるため、組み付け作業性が良く、重量の大幅な増加を抑えることができる。
【0008】
本発明の第2の発明に係るドアミラーを備えたドア構造は、第1の発明に係るドアミラーを備えたドア構造であって、前記張り力を調整する調整機構は調整ねじを備え、該調整ねじが回転されることにより、前記張り部材の張り力が調整されることを特徴とする。
この構成によれば、調整ねじが回転されることにより、前記張り部材の張り力が調整される。したがって、ドアミラーの支持剛性を調整可能とするにあたって、調整ねじの回転による簡単な操作で調整することができる。
【0009】
本発明の第3の発明に係るドアミラーを備えたドア構造は、第1又は第2の発明に係るドアミラーを備えたドア構造であって、前記着脱可能に介装される張り部材は、その一端が前記ドアミラーをアウタパネルに取り付ける部位箇所に着脱可能に結合されて一体的とされ、その他端が前記ガラスランチャネル側に面接触していることを特徴とする。
この構成によれば、張り部材の一端がドアミラーをアウタパネルに取り付ける部位箇所に着脱可能に結合されており、他端がガラスランチャネル側に面接触している。このため、ドアミラーの支持剛性を高めるにあたって、ガラスランチャネル側に締結等の結合を必要とせず、既製の車両に後から組み付ける場合にも組み付け作業性の良い構造とすることができる。
たとえば、ドアのインナパネルにおいてアウタパネル側まで通ずるサービスホールを設ける構成とした場合においては、このサービスホールを覆う内張りを取り外した後、前記張り部材をサービスホールからアウタパネル側まで差し入れ、工具を差し込んで組み付け作業を行うことが可能である。さらに、張り部材が前記調整ねじを備える場合においては、上記サービスホールからドライバ等を差し込んでこの調整ねじを回転調整可能である。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、ドアミラーの支持剛性を調整可能に高めることができる。
第2の発明によれば、ドアミラーの支持剛性を調整可能とするにあたって、調整ねじの回転による簡単な操作で調整することができる。
第3の発明によれば、ドアミラーの支持剛性を高めるにあたって、既製の車両に後から組み付ける場合にも組み付け作業性の良い構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る車両左前席用のフロントドアを示す側面図である。
【図2】本実施形態に係るフロントドアを、ドアミラーの固定箇所を通る図1のII−II線で鉛直に切断して示す断面図である。
【図3】本実施形態に係るフロントドアを、ドアミラーの固定箇所を通る図1のIII−III線で水平に切断して示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る補強ブラケットを示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係る補強ブラケットをアウタパネルの補強部材に固定した状態を、内側後方から見て示す斜視図である。
【図6】従来のフロントドアをドアミラーの固定箇所で水平に切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。図1に、車両左前席の乗降口を開閉するドア(フロントドア1)を示す。なお、図面には車両右前席用のフロントドアを示さないが、以下の説明は右前席用にも同様に適用される。また、フロントドア1に対する上下、前後、内外の各方向は、各図面において矢印で示す。
フロントドア1は、概して、下側においてパネル状のドア本体10と、上側において窓の開口4aを有する窓枠4とを備え、両者10,4が縦に一体的に結合されて構成されている。またフロントドア1には、前記の窓を開閉する窓ガラス41が、窓枠4側とドア本体10側に亘って上下(図2の矢印参照)に移動可能に設けられている。またドア本体10の外側には、車両後方を視認するためのドアミラー5が設けられている。
【0013】
図2に示されるように、ドア本体10は、金属板にて形成されたアウタパネル2とインナパネル3とが、間を空けた状態で互いに張り合わされて構成されている。ドア本体10の前後端及び下端においては、アウタパネル2とインナパネル3の縁がヘミング加工により一体的に結合されている(前端については図3参照)。ドア本体10の上端においては、アウタパネル2とインナパネル3の縁が互いに結合されず、前後に亘って細長い開口10aが形成されている。窓ガラス41の下部は、このドア本体10上端の開口10aを通して、アウタパネル2とインナパネル3との間に差し込まれた状態となっている。窓ガラス41は、図示されないスイッチの操作により電動で駆動され、上の窓枠4側に移動することで窓を閉め、下のドア本体10側に移動することで窓を開ける。なお図2に示す窓ガラス41の位置は、窓を閉めた状態の位置である。
【0014】
図1に示されるように、フロントドア1の前部と後部のそれぞれには、窓ガラス41の上下の移動を案内するガラスランチャネル42,43が設けられている。ガラスランチャネル42,43は、長尺の金属製部材であり、長手方向に沿って溝(前側のガラスランチャネル42については図3に符号42aで示す)を有する断面コ字状の部材である。前後のガラスランチャネル42,43は、窓枠4からドア本体10に亘って、上下方向に互いに平行に配設されている。窓ガラス41は、前後の縁がそれぞれこの前後のガラスランチャネル42,43の溝に嵌め込まれた状態で上下に移動する。
前後のガラスランチャネル42,43の上部は、窓枠4に固定されて窓の開口4aの前後の縁を形成している。各ガラスランチャネル42,43の下部は、図2に示されるように、ドア本体10上端の開口を通してアウタパネル2とインナパネル3との間に差し込まれており、下端がドア本体10に対して固定されている。以下の説明において、特に断らない限り、ガラスランチャネルは前側のガラスランチャネル42を指す。
【0015】
図2に示されるように、ドア本体10のアウタパネル2の内側には、このアウタパネル2の上部を補強する補強部材21が、ドア本体10の前後に亘って(図3参照)設けられている。この補強部材21の上縁21aは、ヘミング加工によりアウタパネル2の上縁2aと一体的に結合されている。インナパネル3の内側にも同様に、インナパネル3の上部を補強する補強部材31が設けられている。前記のガラスランチャネル42は、アウタパネル2とインナパネル3の双方の補強部材21,31の間を通って設けられており、固定ブラケット44(図3参照)によりインナパネル3側に固定されている。以下の説明において、特に断らない限り、補強部材21はアウタパネル2の補強部材21を指す。
【0016】
図1に示されるように、ドアミラー5は、鏡を有する本体部50とこの本体部50を上側に支持する基部51(ミラーベース)とを備える。ドアミラー5の本体部50は、基部51に対して首振り調整可能とされている。図2及び図3に示されるように、アウタパネル2とその補強部材21との間には、このドアミラー5を固定して支持するためのミラーブラケット54が設けられている。ミラーブラケット54は、アウタパネルの補強部材21の外側にスポット溶接により固定されている。アウタパネル2には、このミラーブラケット54の配設位置に合わせて貫通する開口2bが形成されており、この開口2bを通してドアミラー5の基部51がミラーブラケット54の外側に固定されている。
【0017】
ドアミラー5は、このミラーブラケット54に対して前側の1箇所及び後側の2箇所(図1においてドアミラーの基部51の位置に仮想的にこの3箇所を示す)で固定されている。図2及び図3に示されるように、ドアミラー5は、このミラーブラケット54における固定箇所に対応して、前側に1本(符号52F)、後側に2本(符号52R)の固定用ボルトを備えている。この固定用ボルトは両端側にねじが形成されたスタッドボルトである。各固定用ボルト52F,52Rの一端側は、ドアミラー5の基部51にねじ込まれて固定されている。一方、ミラーブラケット54と補強部材21には、ボルト孔(前側のボルト孔については符号55F)がこの両者54,21を連通して設けられ、各固定用ボルト52F,52Rの他端側は、このボルト孔に外側から差し込まれて、補強部材21の内側から固定用ナット53F,53Rがはめられている。このように、ミラーブラケット54と補強部材21は、ドアミラー5の基部51と固定用ナット53F,53Rとの間に締結されて固定されている。ただし前側の1箇所の固定箇所については、後述のように、補強部材21の内側に更に補強ブラケット6が共締めされて固定されている。アウタパネルの補強部材21、ミラーブラケット54、ドアミラー5の3部材は、以上のようにして互いに固定されている。
【0018】
図2及び図3に示されるように、インナパネル3及びその補強部材31には、上記の固定用ボルト52F,52Rの軸線延長位置にサービスホール32が設けられている。ドアミラー5の車両への組み付けや交換の際は、このサービスホール32に工具を差し込み上記の固定用ナット53F,53R等を操作することが可能となる。
【0019】
図5に示されるように、アウタパネルの補強部材21とガラスランチャネル42との間には、ドアミラー5の支持剛性を高めるための補強ブラケット6が配設されている。図4に示されるように、補強ブラケット6は概して板状の金属部品であり、その一端部6aから他端部6cにかけてを複数の平板部分に区分するように折り曲げ加工されている。図2及び図3に示されるように、補強ブラケット6は、アウタパネルの補強部材21とガラスランチャネル42との両者に跨って突っ張るように設けられており、この両者21,42を互いにドア内外方向に僅かに押し広げている。すなわちこの補強ブラケット6が本発明でいう「張り部材」に相当する。
【0020】
補強ブラケット6は、アウタパネルの補強部材21とガラスランチャネル42との両者のうち、補強部材21側に対して着脱可能に結合されている。補強ブラケット6は、一端部6aにその板状の厚みを貫通するボルト孔61(図4参照)が設けられており、前述のドアミラー5の固定に用いられる前側の固定用ボルト52Fを利用して、補強部材21の内側に共締めすることにより固定されている。すなわち補強ブラケット6はその一端部6aが補強部材21の内側に重ねられており、この状態でミラーブラケット54、補強部材21、補強ブラケット6の3者のボルト孔55F,61に外側から上記の前側の固定用ボルト52Fが挿通されて、内側で前記の固定用ナット53Fにより締結されている。
【0021】
一方、補強ブラケット6の他端部6cは、上述の一端部6aと異なり何ら締結等の結合を持たない。すなわち補強ブラケット6は、一端部6a側において片持ち状態で結合されているブラケットである。他端部6cには、ガラスランチャネル42の外側に対し押圧しながら面接触する接触面62が設けられている。この接触面62には、摩擦等による異音及び錆を防止するための保護テープが貼られている。また他端部6cには、補強ブラケット6が固定用ボルト52Fを中心に回転するのを防ぐ係止部65が設けられている。係止部65は、ガラスランチャネル42における固定用ボルト52Fの軸線から遠い側(前側)の面に対して接触ないし対面するように設けられている。
【0022】
また、図4に示されるように、補強ブラケット6の一端部6aと他端部6cとの間をつなぐ中間部6bには、ねじ用ナット63が2つ上下に並べて配設されている。このねじ用ナット63は、補強ブラケット6の中間部6bに溶接されて固定されたウェルドナットである。このねじ用ナット63には、補強ブラケット6の張り力を調整するための調整ねじ64が、内側から外側に向かってねじ込まれており、図3に示されるように、インナパネル3及びその補強部材31に設けられた前記のサービスホール32を通して、工具により回転調整が可能となっている。ねじ用ナット63と調整ねじ64との間には、公知の緩み止めの手段が講じられている。図3に示されるように、調整ねじ64の先端64aは、アウタパネルの補強部材21の内側面に対し、押圧しながら接触している。補強部材21の内側面における調整ねじ64の接触箇所には、異音及び錆を防止するための保護テープが貼られている。
【0023】
以上のように、調整ねじ64の先端64aがアウタパネルの補強部材21の内側面に対し、また補強ブラケット6の他端部6cがガラスランチャネル42の外側に対し、それぞれ押圧しながら接触している。これにより、補強ブラケット6は前述のようにこの両者21,42に跨って突っ張った状態となっている。
【0024】
以下に、補強ブラケット6のドア本体10への組み付け及び、調整ねじ64による補強ブラケット6の張り力の調整について説明する。なお、本実施形態の補強ブラケット6は、車両の製造段階で組み付けることも、既製の車両に後から組み付けることも可能である。以下の説明は既製の車両に組み付ける場合であるが、製造段階で組み付ける場合も同様である。
まず、窓ガラス41を最も上に移動させて窓を閉じ(図2の状態)、インナパネル3側に設けられたサービスホール32からアウタパネル2側の固定用ボルト52Fにアクセス可能な状態とする。次に、ドアミラー5をミラーブラケット54に固定している前側の固定用ナット53Fを取り外す。この前側の固定用ナット53Fを取り外しても、後側の固定用ナット53Rを残すためドアミラー5はミラーブラケット54から外れることはない。次に、インナパネル3側に設けられたサービスホール32から補強ブラケット6を差し入れ、その一端部6aのボルト孔61を前側の固定用ボルト52Fに差し込んで所定の向きにセットし、先程取り外した固定用ナット53Fで共締めする。この固定用ナット53Fを回し締める際には、補強ブラケット6の他端部6cに設けられた係止部65がガラスランチャネル42に引っ掛かるため補強ブラケット6がつられて回転することがない。
【0025】
次に、調整ねじ64を補強ブラケット6のねじ用ナット63にねじ込む。調整ねじ64を補強ブラケット6のねじ用ナット63にねじ込んで、その先端64aがアウタパネルの補強部材21をドア外側方向へ押圧するまで進めると、補強ブラケット6は調整ねじ64を介して補強部材21からその反力を受ける。前述のように補強ブラケット6は一端部6a側において片持ち状態でアウタパネルの補強部材21に対して結合されているため、これにより補強ブラケット6は一端部6aを固定端(支点)として僅かに弾性変形し、他端部6cが自由端としてドア内側方向へ移動する。
【0026】
このように調整ねじ64をねじ込んでいくと、他端部6c上に設けられた接触面62が、まずガラスランチャネル42との間に設けられた組み付けのためのクリアランスを詰めて、ガラスランチャネル42に当接する。これにより、車両ごとにアウタパネルの補強部材21とガラスランチャネル42との間隔にばらつきがあっても、調整ねじ64のねじ込みによりこのばらつきを吸収することができる。また、上下に配設された2つの調整ねじ64のねじ込み量を独立して調整すれば、上下でばらつき量が異なってもこれを吸収することができる。
【0027】
他端部6c上の接触面62がガラスランチャネル42に当接した状態から、さらに調整ねじ64をねじ込んでいくと、接触面62がガラスランチャネル42に接触したままドア内側方向へ押圧する。このようにして、補強部材21側に接触している調整ねじ64の先端64aから、ガラスランチャネル42側に接触している接触面62までの距離が広がるため、補強ブラケット6は補強部材21側とガラスランチャネル42側の両者を互いにドア内外方向に押し広げる働きをなす。すなわち、補強ブラケット6は、調整ねじ64の先端64aと他端部6cの接触面62とを両側の突っ張り端として、補強部材21とガラスランチャネル42の両者に対して張り力を与えながら突っ張った状態となる。このようにして、調整ねじ64をねじ込む方向に回転することで張り力を強め、この逆方向に回転することで張り力を弱めることができる。
【0028】
以上のように構成される車両のフロントドア1は、以下のような作用効果を奏する。
この構成によれば、アウタパネルの補強部材21とガラスランチャネル42との間に跨って突っ張るように設けられた補強ブラケット6が、この両者21,42を互いにドア内外方向に押し広げるため、この両者21,42がドア内外方向に関して相対移動するのを規制できる。このため、この補強ブラケット6によりドアミラー5の支持剛性を高めることができる。
さらにこの構成によれば、補強ブラケット6が備える調整ねじ64がねじ用ナット63にねじ込まれると、調整ねじ64の先端64aがドアミラー5側を外側へ押圧し、これにより補強ブラケット6はその反力を受けて、他端部6cに設けられた接触面62がガラスランチャネル42側を内側へ押圧する。これにより、調整ねじ64を回転してねじ込み量を増減することで、補強ブラケット6の張り力を調整することができる。
さらにこの構成によれば、補強ブラケット6の一端部6aがドアミラー5をアウタパネルの補強部材21に共締めされて固定されており、他端がガラスランチャネル42側に面接触している。すなわち、補強ブラケット6は一端部6a側において片持ち状態で結合されている。このため、ガラスランチャネル42側に締結等の結合を必要とせず、既製の車両に後から組み付ける場合にも組み付け作業性の良い構造とすることができる。
【0029】
なお、本発明に係るドアミラーを備えたドア構造は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その他各種の形態で実施できるものである。
まず、本実施形態の補強ブラケット6は、その一端部6aが固定端としてアウタパネルの補強部材21に対して固定されており、また、調整ねじ64の先端64aと他端部6c上に設けられた接触面62とが張り部材としての突っ張り端の機能を受け持っていた。しかし、このような突っ張り端とは別の固定端を持たず、突っ張り端の片側が固定端を兼ねるような構成としても良い。例えば、アウタパネルの補強部材側に調整ねじ用のナットを設け、このナットへのねじ込み量を増減することで張り力を調整可能とし、かつこのねじ込みによってアウタパネルの補強部材側に固定されているような構成の張り部材としても良い。
またこれとは逆に、ガラスランチャネル側に調整ねじ用のナットを設け、このナットへのねじ込み量を増減することで張り力を調整可能とし、かつこのねじ込みによってガラスランチャネル側に固定されているような構成の張り部材としても良い。この後者の例の張り部材とする場合、本実施形態とは異なり、アウタパネルの補強部材側に対しては締結等の結合を持たず、単に突っ張り端の片側として張り力を与えながら接触するのみの構成となる。
【0030】
また、本実施形態の補強ブラケット6は、他端部6c上の接触面62がガラスランチャネル42を直接押圧するものであった。しかし、ガラスランチャネル42をインナパネル3側に固定する固定ブラケット44がガラスランチャネル42自体と同等の剛性を有する部材である場合には、上記の接触面62がこの固定ブラケット44を介して間接的にガラスランチャネル42を押圧する構成としても良い。すなわち、補強ブラケット6が張り部材として、アウタパネルの補強部材21とガラスランチャネルの固定ブラケット44との間に跨って突っ張るように設けられる構成としても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 フロントドア
10 ドア本体
2 アウタパネル
21 アウタパネルの補強部材
3 インナパネル
31 インナパネルの補強部材
4 窓枠
41 窓ガラス
42,43 ガラスランチャネル
44 固定ブラケット
5 ドアミラー
50 本体部
51 基部
52F,52R 固定用ボルト
53F,53R 固定用ナット
54 ミラーブラケット
55F ボルト孔(前側)
6 補強ブラケット
6a 一端部
6b 中間部
6c 他端部
61 ボルト孔
62 接触面
63 ねじ用ナット
64 調整ねじ
65 係止部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネルとインナパネルとが間を空けて互いに張り合わされて成るドアを備え、
ドアミラーが前記アウタパネルの外面位置に突設される車両におけるドアミラーを備えたドア構造であって、
該ドアミラーは前記アウタパネルに取り付けられ、
前記アウタパネルと前記インナパネルとの間に、窓ガラスの開閉移動をガイドするガラスランチャネルが固定された状態として配設され、
前記ドアミラーをアウタパネルに取り付ける部位箇所と前記ガラスランチャネルとの間には該両者を互いにドア内外方向に押し広げる働きをなす張り部材が着脱可能に介装されており、
該張り部材の張り力を調整することのできる調整機構が備えられていることを特徴とするドアミラーを備えたドア構造。
【請求項2】
請求項1に記載のドアミラーを備えたドア構造であって、
前記張り力を調整する調整機構は調整ねじを備え、該調整ねじが回転されることにより、前記張り部材の張り力が調整されることを特徴とするドアミラーを備えたドア構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドアミラーを備えたドア構造であって、
前記着脱可能に介装される張り部材は、
その一端が前記ドアミラーをアウタパネルに取り付ける部位箇所に着脱可能に結合されて一体的とされ、
その他端が前記ガラスランチャネル側に面接触していることを特徴とするドアミラーを備えたドア構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−49370(P2013−49370A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188917(P2011−188917)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)