説明

ドア用養生材

【課題】
耐久性・耐水性に優れると共に、扉体に対する着脱が容易で、かつ、繰り返し使用が可能な養生材を提供する。
【解決手段】
扉体2の室外側の面部2aの所定部位を覆うプラスチックダンボール製の第1保護材3Aと、扉体2の室内側の面部2bの所定部位を覆うプラスチックダンボール製の第2保護材3Bと、第1保護材3A、第2保護材3Bで扉体2を挟んだ状態で、扉体2の戸先側の側面部2c、戸尻側の側面部2dのそれぞれを横切るように延出し、第1保護材3Aと第2保護材3B間に着脱自在に装着される伸縮可能な複数の固定バンド4と、からなるドア用養生材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア用養生材に係り、詳しくは、マンションや戸建住宅の建物開口部に扉体を吊り込んだ後〜引き渡すまでの間、扉体を保護するための養生材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンションや戸建住宅の玄関枠及びドアの取り付けは、建物開口部に玄関ドア枠を取り付け、内装工事を行い、内装工事がある程度終了した後に、玄関ドアを構成する扉体を玄関ドア枠に吊り込むようにして行われる。扉体は工場出荷時に紙製ダンボール養生をした状態で納入され、養生をしたまま吊り込まれる。当該ダンボールの主目的は、運搬時・搬入時の傷防止であるが、吊りこみ後においても、当該ダンボールをガムテープ等で固定することで、そのまま扉体の養生材としている。このようなダンボールからなるドア用養生材は特許文献1に記載されている。
【0003】
しかしながら、現行の紙製ダンボール養生は、凹みやこすり傷に耐えられる強度が低いので、扉吊り込み〜完工引渡しまでの期間に、工事業者が扉体にぶつかったり、脚立や腰道具等がぶつかったりすると、ドアに傷が付いてしまうおそれがある。
【0004】
また、引渡しまでの期間中に客先の検査、内覧会等養生を剥がす機会がしばしばあり、紙製ダンボールでは、一度剥がすと破れたりして見苦しいため、殆どが引き渡し前に破棄されてしまい、それ以降は養生が無い状態となって扉体に傷が付いてしまう場合がある。さらには、紙製ダンボールは水に弱いという欠点がある。特に、竣工近くになるとクリーニング業者が壁や床などを水洗いするため、紙製ダンボールが吸水することで扉体の表面材に悪影響を与えてしまうおそれもある。
【特許文献1】実用新案登録第2536664号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐久性・耐水性に優れると共に、扉体に対する着脱が容易で、かつ、繰り返し使用が可能な養生材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成するために本発明が採用したドア用養生材は、扉体の室外側の面部の所定部位を覆うプラスチックダンボール製の第1保護材と、扉体の室内側の面部の所定部位を覆うプラスチックダンボール製の第2保護材と、前記第1保護材と前記第2保護材間に着脱自在に装着される複数の固定バンドと、からなり、前記固定バンドは、前記第1保護材、前記第2保護材で扉体を挟んだ状態で、扉体の戸先側の側面部、戸尻側の側面部のそれぞれを横切るように延出すると共に、少なくとも戸先側の固定バンドは、長さ方向に伸縮可能である。上記「所定部位」とは、少なくとも扉体に傷が付き易い部位を含み、1つの態様では、扉体において、ドアスコープよりの下方部位であるが、「所定部位」は扉体の略全高を覆う部位であってもよい。
【0007】
本発明に係るドア用養生材が適用される扉体は、1つの態様では、いわゆる一般的な扉体であって、前記扉体の前記戸先側の側面部は平面状の見込み面のみからなる。他の態様では、前記扉体には、前記戸先側の側面部の室外側から扉体の見付け方向に延出する突片が扉体の高さ方向に亘って設けられており、扉体の閉鎖時には、前記伸縮可能な固定バンドが、ドア枠の戸先側縦枠と前記突片とに挟まれて変形可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の養生材に係る第1保護材、第2保護材は、プラスチックダンボールからなり、従来の紙製ダンボールに比べて耐久性・耐水性に優れる。したがって、本発明の第1保護材、第2保護材は、脱着を繰り返しても劣化することはなく、繰り返しの使用に耐え得るものであり、再利用が可能である。また、第1保護材、第2保護材が吸水して扉体の面部に悪影響を及ぼすこともない。本発明の第1保護材、第2保護材は、当該保護材に対して着脱可能な固定バンドを用いて、扉体に簡単に固定することができ、また、扉体からの取り外しも簡単である。
【0009】
第1保護材、第2保護材を扉体に固定するための少なくとも戸先側の固定バンドは長さ方向に伸縮可能であるので、固定バンドを適度に伸長させた状態で、第1保護材、第2保護材に固定しておけば、固定バンドが弛むことなく、しっかりと第1保護材、第2保護材を扉体に対して保持固定することができる。また、伸縮可能な固定バンドは、扉体の閉鎖時には、扉体の戸先側の側面部とドア枠の戸先側の縦枠との間に挟まれて、扉体の戸先側の側面部の形状、ドア枠の戸先側の縦枠の形状に沿って変形可能であり、扉体の戸先側の側面部を横切って延出する固定バンドによって、扉体の閉鎖に支障を来たすことがない。特に、前記扉体に、戸先側の側面部の室外側から扉体の見付け方向に延出する突片が扉体の高さ方向に亘って設けられている場合に、扉体の閉鎖時に、伸縮可能な固定バンドが、ドア枠の戸先側縦枠と前記突片とに挟まれて変形することで、扉体の閉鎖が良好に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、ドアの内観図及外観図であり、縦長方形状のドア枠1に対して、縦長方形状の扉体2が回動可能に取り付けられており、ドア枠1に対して扉体2を回動させることで、ドア枠1で形成された建物開口部を開閉する。ドア枠1は、上枠1a、下枠1b、戸先側縦枠1c、戸尻側縦枠1dから構成された四周枠である。扉体2は、室外側の面部2aと室内側の面部2bとを有しており、室外側面部2a、室内側面部2bが扉体2の見付け面を構成している。図6乃至図8に示すように、扉体2は、戸先側の側面部2cと戸尻側の側面部2dとを有しており、これらの側面部2c,2dが扉体2の見込み面を構成している。
【0011】
扉体2の室外側及び室内側の両方の面部2a,2bの高さ方向略中間位置には、戸先側に位置して取手2eが設けてある。扉体の室内側の面部2bの上方部位には、戸尻側に位置してドアクローザ2fが設けてある。扉体の戸尻側端部は、蝶番2gを介してドア枠に取り付けられており、扉体2は蝶番2gを回動支点として、ドア枠1に対して回動可能となっている。扉体2の室内外の面部2a,2bには、扉体2の幅方向の中間部位で、高さ方向の中間部位よりも上方に位置してドアスコープ2hが室内外の面部2a,2bを連通するように設けてある。
【0012】
本発明に係るドア用養生材は、扉体2の室外側の面部2aを覆うプラスチックダンボール製の第1保護材3Aと、扉体2の室内側の面部2bを覆うプラスチックダンボール製の第2保護材3Bと、第1保護材3A、第2保護材3Bで扉体2を挟んだ状態で、扉体2の戸先側の側面部2c、戸尻側の側面部2dをそれぞれ横切るように延出して、第1保護材3Aと第2保護材3B間を連結する固定バンド4とからなる。固定バンド4は長さ方向に伸縮可能であり、長さ方向一端側は、第1保護材3Aに、長さ方向他端側は、第2保護材3Bに、それぞれ着脱自在に固定される。
【0013】
第1保護材3Aの縁部は、上辺3aと、下辺3bと、戸先側の側辺3cと、戸尻側の側辺3dと、からなり、戸先側の側辺3cの上方部位は段部状となっている。すなわち、上辺3aの戸先側かつ戸先側の側辺3cの上方部位の角部は、取手2eに対応して切り欠かれている。
【0014】
第1保護材3Aの高さは、扉体2の下端からドアスコープ2hまでの高さより少し低い高さを有しており、第1保護材3Aの上辺3aは、ドアスコープの直ぐ下に位置して扉体2の幅方向に水平状に延出している。第1保護材3Aの幅寸法は、扉体2の面部2a,2bの幅寸法と略同じ寸法を有している。図示の実施形態では、第1保護材3Aの幅寸法は、扉体2の面部2a,2bの幅寸法より若干小さい寸法となっている。第1保護材3Aには、左右の側辺3c、3dに近接して、複数の面ファスナの雌部30が高さ方向に間隔を存して設けてある。
【0015】
第2保護材3Bは、第1保護材3Aと左右対称の形状を有している点を除き、同一の構成を有しており、同一の辺には共通の参照番号が付してあり、第1保護材3Aの説明を援用することができる。
【0016】
図5に示すように固定バンド4は、所定の長さを有する帯状部材であり、長さ方向両端部の裏面には、面ファスナの雄部4A,4Bがそれぞれ設けてある。一方の面ファスナの雄部4Aは、第1保護材3Aの面ファスナの雌部30に、他方の面ファスナの雄部4Bは、第2保護材3Bの面ファスナの雌部(図示せず)に、それぞれ着脱自在に固定される。固定バンド4は、織ゴムを主材としており、長さ方向に伸縮可能である。図示の例では、保護材3A,3B側に面ファスナの雌部が、固定バンド4側に面ファスナの雄部が形成されているが、保護材3A,3B側に面ファスナの雄部を、固定バンド4側に面ファスナの雌部を形成してもよい。
【0017】
図2、図3は本発明に係る養生材で養生付けされたドアを示す図である。図6は、図2の横断面図である。固定バンド4は、戸先側の側面部2c、戸尻側の側面部2dをそれぞれ横切るようにして、扉体2の保護材3A,3B間を架け渡すようにして固定される。第1保護材3Aには、左右の側辺3c、3dに近接して、複数の面ファスナの雌部30が高さ方向に間隔を存して設けてある。同様に、第2保護材3Bには、左右の側辺3c、3dに近接して、複数の面ファスナの雌部(図示せず)が高さ方向に間隔を存して設けてある。固定バンド4の面ファスナの雄部4A、4Bのいずれか一方を第1保護材3Aの面ファスナの雌部30、第2保護材3Bの面ファスナの雌部のいずれか一方に装着し、固定バンド4を扉体2の見込み面(側面部2c、2d)を横切るように架け渡して、他方の雄部と他方の雌部同士を装着する。上辺3aの戸先側と側辺3cの上方側とで形成される角部は、両面テープ5で扉体2の面部2a,2bに仮止めされる。第1保護材3A、第2保護材3Bは、扉体2の室外側の面部2a及び室内側の面部2bにおいて、ドアスコープ2hから下方の略全領域(取手2eに対応する部位を除いて)を覆って保護している。かかる部位は、傷が付き易い部位であり、かかる部位を第1保護材3A、第2保護材3Bで覆うことで、面部2a,2bを保護する。また、第1保護材3A、第2保護材3Bは、取手2e、ドアスコープ2hを覆うものでないので、第1保護材3A、第2保護材3Bによってドアの基本的な機能(取手2eによる扉体2の開閉操作、ドアスコープ2hを通した確認)が損なわれることがない。
【0018】
さらに、図6、図7に示すように、扉体2には、戸先側の側面2cの室外側から扉体2の見付け方向に延出する突片2Aが扉体2の高さ方向に全長に亘って設けられている。固定バンド4を扉体2の戸先側の側面部2cを横切って延出するようにして、第1保護材3A、第2保護材3B間に取り付けた場合には、図7の2点鎖線で示すように、固定バンド4は傾斜状に張られた状態となる。ここで、固定バンド4は長さ方向に伸縮可能なので、扉体2の閉鎖時には、傾斜状に張られた固定バンド4は、そのまま突っ張ることなく、ドア枠1の戸先側縦枠1cと突片2Aとの間で挟まれて扉体2の戸先側見込み面及びドア枠1の戸先側縦枠1cの形状に沿って変形することができ、扉体2の閉鎖に支障を来たすことがない。また、固定バンド4を適度に伸長させた状態で、第1保護材3A、第2保護材3Bに固定しておけば、固定バンド4が弛むことなく、しっかりと第1保護材3A、第2保護材3Bを扉体2に対して保持固定することができる。
【0019】
本発明に係る養生材を用いた養生について説明する。扉体2は、工場出荷時に紙製ダンボール養生をした状態で納入され、養生をしたままドア枠1に吊り込まれる。扉体2の吊り込み後、紙製ダンボール養生を取り外して、本発明に係るプラスチックダンボール製の第1保護材3A、第2保護材3Bを、固定バンド4を用いて、扉体2の面部2a,2bの所定部位(図示の例では、ドアスコープ2hより下方部位)を覆うように装着する。
【0020】
扉体2の吊り込み後、竣工引渡しまでの間には、各種検査実施や手直しが行われ得るが、その間は、衝撃に強いプラスチックダンボール製の第1保護材3A、第2保護材3Bによって、扉体2の面部2a,2bが保護されており、工事業者がドアにぶつかったり、脚立や腰道具等がぶつかったりしても、扉体2に凹みや傷が付くことがない。
【0021】
本発明に係る養生材は、第1保護材3A、第2保護材3Bを扉体2の室内外の面部2a,2bにあてがい、これらを複数本の固定ベルト4を用いて、面ファスナを介して取り付けるので、扉体2に対する取り付けが簡単である。また、第1保護材3A、第2保護材3Bは、取り付けのみならず取り外しも簡単であり、引渡しまでの期間中に客先の検査、内覧会等において第1保護材3A、第2保護材3Bを取り外す機会があっても、第1保護材3A、第2保護材3Bの脱着に手間がかからない。
【0022】
プラスチックダンボール製の第1保護材3A、第2保護材3Bは、紙製ダンボールに比べて耐久性に優れるので、引渡しまでの期間中に客先の検査、内覧会等において第1保護材3A、第2保護材3Bを繰り返し脱着しても、第1保護材3A、第2保護材3Bが劣化することがない。また、プラスチックダンボール製の第1保護材3A、第2保護材3Bは、紙製ダンボールに比べて耐水性に優れるので、壁や床などを水洗いした場合であっても、扉体の表面材に悪影響を与えるようなことがない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、ドアの養生に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ドアの内観図及外観図である。
【図2】本発明に係る養生材を取り付けた状態でのドアの外観図である。
【図3】本発明に係る養生材を取り付けた状態でのドアの内観図である。
【図4】第1保護材を示す図である。
【図5】固定バンドを示す図である。
【図6】図2の横断面図である。
【図7】図2の戸先側の部分拡大図である。
【図8】図2の戸尻側の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ドア枠
2 扉体
2A 突片
2a 室外側の面部
2b 室内側の面部
2c 戸先側の側面部
2d 戸尻側の側面部
3A 第1保護材
3B 第2保護材
30 面ファスナ雌部
4 固定バンド
4A 面ファスナ雄部
4B 面ファスナ雄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉体の室外側の面部の所定部位を覆うプラスチックダンボール製の第1保護材と、
扉体の室内側の面部の所定部位を覆うプラスチックダンボール製の第2保護材と、
前記第1保護材と前記第2保護材間に着脱自在に装着される複数の固定バンドと、
からなり、
前記固定バンドは、前記第1保護材、前記第2保護材で扉体を挟んだ状態で、扉体の戸先側の側面部、戸尻側の側面部のそれぞれを横切るように延出すると共に、少なくとも戸先側の固定バンドは、長さ方向に伸縮可能である、
ドア用養生材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−247304(P2007−247304A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73852(P2006−73852)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000177302)三和シヤッター工業株式会社 (173)