説明

ドビーのシフト・クラッチのための制御装置

【課題】織機のヘルドシャフトの駆動に使用されるドビーのシフトクラッチの制御装置を提供する。
【解決手段】ドビーのクラッチアセンブリの制御装置53は、電磁石37により駆動される選択フィンガ28を有する。選択フィンガは、湾曲した部分と直線部分とを有するアーマチュア47に剛性接続される。磁気回路の適切に湾曲した磁極45と共に、湾曲したアーマチュア部分は、選択フィンガのピボット位置によって影響されないエアギャップ48を形成する。電磁石37の他の磁極46は直線のエアギャップ49を形成し、このエアギャップは可変であり、選択フィンガのピボット位置の関数であるサイズを有する。既存のてこ比により、台形のギャップの最大幅は、2つの選択位置間の選択フィンガ28の外端の経路よりも実質的に小さい。ピボット中心32及び可変エアギャップ49間の距離Aは、選択フィンガ28の長さよりも実質的に小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機のヘルドシャフトを駆動するために使用されるようなドビーのシフト・クラッチの制御のための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなドビーは、例えば、独国特許第69701619T2号明細書によって示された制御装置を備えたシフト・クラッチから構成される。この制御装置は、振動するように駆動されるキャリアを有する。旋回軸上で支持されたシフトフィンガが、キャリア上に設けられる。第1のピボット位置において、このフィンガが1つのロッカー・アームを作動させ、一方で第2のロッカー・アームは停止したままである。その第2のピボット位置において、選択フィンガが第2のロッカー・アームを作動させ、一方で第1のロッカー・アームは停止したままである。こうしたロッカー・アームは、特定のヘルドシャフトを偏心駆動させることが一回転(半回転)を実行することであるかを定義するために、シフト・クラッチを制御するように使用される。
【0003】
電磁石が、選択フィンガにヒンジ式に取り付けられる電気子(アーマチュア)を有するシフトフィンガを移動させるために備えられる。アーマチュアの自由端は、電磁石に当接し、それによって三角形状のエアギャップの境界を画定する。選択フィンガの作動は圧縮バネの力に抗して発生し、前記圧縮バネは電磁石から離れて2つのシフト位置の1つに選択フィンガを押し込む。電磁石がこの圧縮バネの力に抗してアーマチュアを引きつける場合、選択レバーはその他の可能なピボット位置で回転する。
【0004】
この設計は、比較的少数の被移動部品及び比較的高い磁界強度を必要とする。
【特許文献1】独国特許第69701619T2号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このことを考慮し、本発明の目的は、ドビーのシフト・クラッチに対し、簡略化され且つ改良されたシフト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による制御装置は、動作中に振動するように駆動されるキャリアを有する。その際に、該キャリアは短い作動ストロークを実行してもよい。その場合、この作動ストロークは、直線動作又は回転動作を描くことがある。
【0007】
キャリア上、又はキャリアにおいて、選択フィンガが、ピボット中心の回りに旋回可能であるように支持される。このピボット中心は、例えば選択フィンガの開口内を延出するピンとして構成される。磁気導電性のアーマチュア(回転子)は、軟質磁性材料、例えば鉄、鉄粉で充てんされるプラスチック材料、若しくはフェライトから構成される。選択フィンガの近傍において、電磁石がキャリアに固定的に支持され、この電磁石は2つのポール(磁極)を有する。第1の磁極はアーマチュアでエアギャップの境界を画定し、前記エアギャップは円弧として構成され、ピボット中心に対して一定の半径Rで湾曲される。第2の磁極は、選択フィンガの旋回動作の関数であるサイズにエアギャップの境界を画定する。エアギャップのサイズは、アーマチュアの表面及び第2の磁極の表面間の距離によって画定される。
【0008】
好ましくは、アーマチュアはピボット中心のすぐ近傍に配置され、そのため、選択フィンガの旋回動作によって生じられるエアギャップのサイズ変化は最小限のままである。この結果として、電磁石はその作業ストロークの初めに既に大きな引力を示し、またその結果として、選択フィンガは急速に加速され、非常に動的な方法で切り換えることができる。さらに、比較的強い戻しバネが使用され得るので、戻りストロークも短期間のシフト中に完了される。
【0009】
本発明による制御装置は、極めて少数の可動部品、即ち、1つだけの選択フィンガと1つだけのベアリングから構成される。このベアリングは選択フィンガのピボット中心を画定する。したがって、最小の摩擦のみが生成される。2つのエアギャップの少なくとも1つが湾曲する結果として、選択フィンガが例えば動作不能位置に旋回されるときの磁気抵抗の増加が回避でき、このことは引力の増加に役立つ。
【0010】
本発明による制御装置を用いて、特に短期間のシフトと、従って織機の高速度の回転を実施することができる。
【0011】
第1の湾曲したエアギャップは、選択フィンガの旋回動作に影響されない一定のエアギャップとして構成されるのが好ましい。その際に、このエアギャップの磁気抵抗は、選択フィンガのピボット位置に関係なく一定のままである。サイズに関して、第2のエアギャップ、即ちアーマチュアの表面から第2の磁極の表面までの距離は選択フィンガのピボット位置の関数であること、従って、第2のエアギャップの磁気抵抗は選択フィンガのピボット位置の関数であることが好ましい。好ましくは、第2のエアギャップは、第1のエアギャップの半径とほぼ同じ長さを有するピボット中心からの半径を有する地点から開始する。こうした地点から開始すると、エアギャップは、湾曲した第1のエアギャップに対してほぼ接線の方向にパラレルギャップ若しくは台形ギャップとして延出し得る。
【0012】
この構成は、簡単で且つしっかりした作りであり、さらに効率的である。
【0013】
一方、上述の実施の形態における第2のエアギャップがそのギャップ長さに関して可変であり、そのため、選択フィンガが電磁石によって引きつけられるときに第1のギャップを短くすることによって磁気抵抗が減少する一方で、第2のエアギャップをその長さが一定のままであるように構成することも可能である。磁気抵抗は、選択フィンガが旋回されるとき、エアギャップ面積の増減のために変化する。このことは、たとえば第2のエアギャップに適用され、一方で第1のエアギャップの長さと面積は上記に説明したように選択フィンガのピボット位置とは無関係でもよい。しかしながら、例えばより大きな駆動トルクを生成するために選択レバーのピボット位置に応じて、第1のエアギャップと、ゆえにこのギャップによって定義される磁気抵抗を構成することもまた可能である。
【0014】
単純な実施の形態を参照すると、選択フィンガは、この選択フィンガを動作不能位置に押し込むバネ手段と関連付けられる。電磁石は、選択フィンガをバネ手段の力に対して別のピボット位置へと引き付ける。停止手段が、選択フィンガの2つのピボット位置に対して設けられることもある。たとえば、電磁石が励磁されてないとき、選択フィンガによって取られる1つのピボット位置のための停止手段は振動減衰バッファであってもよい。電磁石が励磁されるとき、選択フィンガによって取られる吸引位置のための停止手段は、アーマチュアが当接する電磁石の磁極であってもよい。磁気接着効果を回避するために、磁極には、プラスチックフィルム又は別の減衰中間層が設けられることもある。
【0015】
選択フィンガによる作動に対して選択されるシフトレバーに設けられる適切な当接面として停止手段を構成することもまた可能である。これにより、選択フィンガが、その代替的ピボット位置の両方において、2つのシフトレバーのそれぞれ1つと適切に係合することが自動的に保証されるという利点がある。さらに、アーマチュアが電磁石の磁極に接触しないことから、上記の接着効果を回避することが保証される。
【0016】
2つの電磁石を選択フィンガに配置することもまた可能であり、これら電磁石はともに、同一方向における駆動効果を表示するために配置されて、駆動トルクを2倍にすることによってシフト時間を軽減することになる。しかしながら、反対方向に作動する電磁石を提供することもまた可能であり、これら磁石はもう1つの方法として励磁されて、選択フィンガを一方若しくは他方の位置に旋回させることになる。この実施の形態は、選択フィンガの両方の旋回方向に対する両方のシフト時間が必然的にほぼ同一であるという効果を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態の更なる詳細を以下に図面を説明して述べる。以下の説明及び図面は、発明の根本的な形態と要素、及び種々雑多の状況の説明のためのものに過ぎない。更なる詳細は、図面から明らかである。
【0018】
添付図面は、発明の例示的実施の形態を示す。
【0019】
図1は織機のヘルドシャフト1を示す。このヘルドシャフトが作動中に垂直振動運動を行うが、これは矢印2によって示される。ドビー3は駆動手段として使用され、このドビー3は、ジョイント・バー6、7及びアングル・レバー8、9を備えたバー・リンクを介してヘルドシャフト1を駆動するために出力としての機能を果たす振動リンク4を有する。ドビー3は、中央シャフト10の回転を振動リンク4の振動動作に変換する。このことは偏心カム及びディスクカムによって達成され、これらカムは図2に示されるように、シフト可能なクラッチアセンブリ11を介して駆動される。クラッチアセンブリ11は、例えば、回転ディスクによって支持され、クラッチディスクにおける対応する凹部15、16と関連付けられる少なくとも1つの突起13、14を有するロッカ12を有する。突起13、14及び凹部15、16の係合及び解除を実現するために、ロッカ12は、対応するピボット軸20、21回りに回転可能であるように支持されるシフトレバー18、19の対応するシフト表面を回避するようにシフトローラ17を有する。図2において概略図示されるバネ手段22、23は、シフトレバー18、19を互いに対し弾性的に回避するように使用される。結合されるディスクは、ロッカ12を支持する少なくとも1つのディスクを、シフトレバー18、19の対応するシフト表面間で回転させる。
【0020】
さらに、クラッチアセンブリは、矢印25によって示される振動動作を実行するキャリア24を有する。これを達成するために、上記キャリアは、レバー26を介してディスクカム27によって駆動されてもよく、このディスクカムはシャフト10によって駆動される。
【0021】
選択フィンガ28はキャリア24上で旋回可能に支持され、この選択フィンガはシフトレバー18、19へ向かう方向に突出する延出部29を有する。その際に、選択フィンガ28は、シフトレバー18、19間で移動するディスクから離れるように、キャリア24の動作のサイクルと一致して、シフトレバー18、19のいずれか1つを代替的に回転させるために、シフトレバー18、19のレバーアーム30、31と交差する。
【0022】
そのために、選択フィンガ28は、特に図3のより詳細な説明図から明らかであるように、キャリア24に接続されたピン33から構成されるピボット中心32の回りに旋回可能であるようにキャリア24上で支持される。選択フィンガ28の旋回動作は、図3の矢印34の記号で示される。延出部29は、レバーアーム30の当接面35若しくはレバーアーム31の当接面36を代替的に押圧する。当接面35、36は、レバーアーム30、31の端部における凹部の範囲を定める。これら当接面は、旋回動作中に延出部29と低摩擦転がり係合を定義するために丸みを付けてもよい。動作不能位置において、レバーアーム30、31は相互に向き合うように密着して位置付けられる。前記レバーアームの端部に設けられる2つの凹部は、共有スペースの範囲を定め、この内部を延出部29が前後運動の際に通過し得るので、当接面35、あるいはまたこの当接面36とは隙間分だけ離れている当接面36のいずれかと代替的に係合するようになる。
【0023】
ピボット中心32又はピン33のすぐ近傍において、キャリア24は、例えばバネ手段38の力に抗して選択フィンガ28を具体的に移動させるように配置される電磁石37を支持する。バネ手段38は種々の要素を有し得る。本件の例示的な実施の形態において、前記バネ手段は圧縮バネ39として構成され、その一端は選択フィンガ28に当接し、他端は、キャリア24に設けられる受け面40に当接する。
【0024】
電磁石37は、好ましくは、鉄、フェライト、又は他の軟磁性材料からなるコア41と、互いに一端で接続され磁気回路の一部である2つのリム42、43とを有する。リム42、43の少なくとも一方は、磁気コイル44を有する。磁極45、46は、リム42、43の端部に形成される。第1の磁極45は、ピボット中心32回りの円弧に続く端面によって範囲が定められる。リム43上の第2の磁極46は平坦面でもよい。
【0025】
例えば鉄又はフェライトなどの軟磁性導電材料から構成されるのが好ましいアーマチュア47は、選択フィンガ28上に剛性的に支持される。第1の磁極45の近傍において、アーマチュア47には円弧状に湾曲した表面が設けられ、この表面はピボット中心32に対して一定の半径を有する。さらに、アーマチュア47の対応する湾曲外部は、円周方向に磁極45の端部を越えて延出する。アーマチュア47と磁極45との間には、円弧状に湾曲した狭いエアギャップ48があり、このエアギャップは、ピボット中心32に対して一定の半径Rを有する。
【0026】
アーマチュア47の好ましい直線的リムは、例えば平坦な端面を有する第2の磁極46へと延出する。これに対応するように、アーマチュア47は、この領域において平坦面を有し、第2の磁極46でエアギャップ49の範囲を定める。エアギャップの長さ、アーマチュア47の反対面の距離、及び磁極46の表面は、選択フィンガ28のピボット位置の関数である。この位置は、選択フィンガ28がバネ手段38の力に抗してレバーアーム30と係合した状態で、図3に示す左側面位置にあるときに、その最小限又はゼロになる。この位置は、選択フィンガ28が図3の右側に旋回されレバーアーム31と係合状態になるときに最大限になる。
【0027】
選択フィンガ28は、停止又はストローク制限手段50と関連付けられることがある。これは、選択フィンガ28に設けられるサウンド減衰バッファ51、及びキャリア24上に設けられる適切な受面52をさらに有する。バッファ51及び/又は受面52は、例えば、内部摩擦の高い合成材料などの振動抑制減衰材料から構成され得る。キャリア24、このキャリアに配分される駆動、さらには選択フィンガ28、及び電磁石37は、クラッチ・アセンブリ11に対する制御装置53を構成する。この制御装置53は以下のように動作する。
【0028】
動作中、キャリア24は、矢印25によって識別されるような振動運動を実行する。この動作の間に、延出部29は、上記キャリアによって選択されるピボット位置に応じて、当接面35あるいは当接面36のいずれかに突き当たる。電磁石37が励磁されないとき、バネ手段38は選択フィンガ28を動作不能位置に押し込む。この選択フィンガは、バッファ51が受面52に当接するようになる位置に回転する。ここで、キャリア24が下方に移動すると、延出部29がレバーアーム31の当接面36に突き当たる。この状態で、エアギャップ48は、このギャップの長さと幅の関数である一定の抵抗を示す。エアギャップ49は、基本的に選択フィンガ28の位置の関数である磁気抵抗を示し、この抵抗は、第2の磁極46からのアーマチュア47の距離により2つの値の大きいほうを有する。
【0029】
その振動の際に、キャリア24がレバーアーム30、31から離れた上方位置にあるとき、電磁石37を励磁することができる。磁極46はここで、アーマチュア47を引きつけ、その結果として、図4に示すように、選択フィンガ28は左側の位置に回転し、エアギャップ49、及び反対側のアーマチュア面と磁極表面との距離は減少される。その一方、エアギャップ48は変化しない。エアギャップ49の磁気抵抗はここで2つの値の低いほうをとる。キャリア24が下方に移動すると、延出部29は図4で示されるように、当接面35を押圧しシフトレバー18を回転させる。そして、延出部29は、レバーアーム30の当接面35と係合状態になる。
【0030】
第1のエアギャップ48の磁気抵抗が一定のままである限りは、選択フィンガ28のピボット位置に関係なく、開放したエアギャップ49で磁界を極度に弱化することが阻止されている。それゆえ、電磁石37は最初の磁界強度が相対的に高く、選択フィンガ28を非常に急速に加速させる。このことはまた、第2の磁極46が、ピボット中心32からの距離A(図4)が半径Rにほぼ対応する地点から開始するという事実によって促進される。
【0031】
多数の変更を可能にする発明の例示的実施の形態に関する。たとえば、選択フィンガ28の一方に配置された停止/ストローク制限手段50に加えて、対応する停止/ストローク制限手段を他方に設けることも可能である。あるいはまた、停止/ストローク制限手段を省略することもできる。このことは、特にキャリア24のストロークが非常に小さいので延出部29が当接面35、36によって範囲が定められる凹部から完全に退出しないときに可能である。この場合、延出部29にほぼ平行に延出する当節面35、36の一部が停止/ストローク制限手段としての機能を果たすことがある。
【0032】
さらにまた、電磁石37の磁極46が停止/ストローク制限手段としての機能を果たすこともある。この場合、電磁石37が吸引モードにあって、選択フィンガ38がそれによって回転するときに、エアギャップ49の長さはゼロに移動する。磁極46及び/又はアーマチュア47上に、例えばプラスチック材料、真鍮、アルミニウムなどの非磁気スペーサ要素を設けることが可能であるために、電磁石37が励磁されるときに残りのエアギャップを維持することになる。
【0033】
図5は、一部変更した実施の形態を示す。その説明に関して、同一参照番号に関しては上述の説明を参照されたい。さらに、図5による制御装置53は、選択フィンガ28に剛性接続されるアーマチュァ47’に関連付けられる第2の電磁石37’を有する。このように設計されたピボット駆動装置は、アーマチュア47及び電磁石37を有する駆動装置と同じようにして構成される。アポストロフィを付けた同じ参照番号を用いて、上述の説明が参照され、これを同じように適用する。両方の駆動装置(電磁石37とアーマチュア47、及び電磁石37’とアーマチュア47’)は同一方向に駆動するように配置される。それらの電磁石37、37’が励磁されると、両方の駆動装置は、バネ手段38の力に対抗するトルクを生成する。
【0034】
しかしながら、別の変更例を参照すると、バネ手段38を省略することも可能である。図6はこのような制御装置53を示す。この装置を参照すると、キャリア24は、電磁石37及びアーマチュア47を有する駆動装置を支持し、これは上記の実施の形態に関連して既に述べた。さらに、第2の駆動装置が設けられ、この装置は電磁石37”及びアーマチュア47”を有する。最後に述べる駆動装置は、最初に述べた駆動装置に対して鏡面対称的に設計されることにより、これとは別に上記したことが適用する。最初に述べた駆動装置(図6における左側)は選択フィンガ28を時計回り方向に回転させる一方、次に述べた駆動装置(図6における右側)は、選択フィンガ28を反時計回りに回転させる。選択フィンガ28の前後方向の回転は、代替的にコイル44又は44”を励磁することによって達成される。
【0035】
上述の例示的な実施の形態が選択フィンガ28のための駆動装置を説明し、それにより、選択フィンガ28に対する駆動力がエアギャップの長さを変化させることによって達成される一方、図7及び図8による実施の形態では、エアギャップの領域の大きさの変化が選択フィンガ28を駆動するために使用されることになる例を示している。構成及び機能が上記の実施の形態と同様若しくは同一であるという程度まで、対応する参照番号が使用され、上述の説明が参照される。
【0036】
図7による例示的実施の形態を参照すると、第1の磁極45上に形成される第1のエアギャップ48は、さらに選択フィンガ28の位置とは無関係である。また、第2のエアギャップ49はここでは半径Rに湾曲される。しかしながら、アーマチュア47は、磁極46の一部のみと重なり合い、そのために、この重なり部分が、選択フィンガ28のピボット動作とともに増減する。エアギャップ面積はそれに応じて変化する。反対側において、エアギャップ49”が設けられ、このギャップのサイズは、エアギャップ49のそれとは反対の方向に変化する。アーマチュア47は、磁極46から磁極45を超えて磁極46”まで延出する。図7における左側コイル44が通電されると、選択フィンガ28が反時計回りに回転するのは、生成された磁気回路の磁力がアーマチュア47と磁極46との重なり部分を増加させる傾向があるからである。したがって、選択フィンガ28は、右側コイル44”のみが通電されると時計回り方向に回転する。磁力の動作原理は、磁極46の表面と磁極46”の表面、ならびにアーマチュア47の表面に凹部や高所を有することにおいて強められることができる。これらの表面は、歯状表面の形状を有し、それによって、高度又は歯の形状は矩形、台形、若しくは異なる形状を有してもよい。歯状表面を設けることによって、アーマチュア47のピボット中心の外側に作用する磁力ラインの数は増加し、それゆえアーマチュア47のトルクは強化される。
【0037】
図8は、図7の実施の形態に基づく別の変更された実施の形態を図示するが、この場合、右側コイル44”が省略されている。さらに、アーマチュア47は、磁極45の近くに凹部54を有するので、このアーマチュア47は磁極45及び磁極46を一部分だけ被覆することになる。この点で、エアギャップ48に加えてエアギャップ49も同じ意味で変化される可能性がある。コイル44が通電されると、磁気回路によって生成された磁力は、アーマチュア47の磁極45との重なり部分とともに、アーマチュア47の磁極46との重なり部分を増加しなければならない。その結果、選択フィンガ28は右側に回転する。さらに、バネ手段38はリセットするために使用することができる。
【0038】
ドビーのシフト・クラッチ11として設計されるクラッチアセンブリのための制御装置53は、電磁石37によって駆動される選択フィンガ28を有する。この選択フィンガは、湾曲したアーマチュア部分と直線アーマチュア部分を有するアーマチュア47に剛性接続される。磁気回路の適切に湾曲した磁極45とともに、湾曲したアーマチュア部分は、好ましくは選択フィンガのピボット位置によって影響されないエアギャップ48を構成する。電磁石37の他の磁極46は好ましくは直線のエアギャップ49を構成し、このエアギャップは可変であり、選択フィンガのピボット位置の関数であるサイズを有する。既存のてこ比によって、台形のギャップの最大幅は、その2つの選択位置間の選択フィンガ28の外端部の経路よりも実質的に小さい。ピボット中心32及び可変エアギャップ49の間の距離Aは、選択フィンガ28の長さよりも実質的に小さい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】シャフトドライブを備えたヘルドシャフトの概略説明図である。
【図2】発明による制御装置を含む、シャフトドライブの部品であるクラッチアセンブリを示す図である。
【図3】一つの位相の動作中のクラッチアセンブリの制御装置を示す概略拡大図である。
【図4】別の位相の動作中の図3による制御装置を示す図である。
【図5】制御装置の修正された実施の形態の概略説明図である。
【図6】発明による制御装置の更なる実施の形態の概略説明図である。
【図7】発明による制御装置の更なる実施の形態の概略説明図である。
【図8】発明による制御装置の更なる実施の形態の概略説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ヘルド
2 矢印
3 ドビー
4 リンク
5 バーリンク
6、7 ジョイント・バー
8、9 アングルレバー
10 シャフト
11 クラッチアセンブリ
12 ロッカ
13、14 突起
15、16 凹部
17 ローラ
18、19 シフトレバー
20、21 ピボット軸
22、23 バネ手段
24 キャリア
25 矢印
26 レバー
27 ディスク・カム
28 選択フィンガ
29 延出部
30、31 レバーアーム
32 ピボット中心
33 ピン
34 矢印
35、36 当接面
37 電磁石
38 バネ手段
39 圧縮バネ
40 受面
41 コア
42、43 リム
44 コイル
45、46 磁極
47 アーマチュア
48、49 エアギャップ
R 半径
50 停止又はストローク制限手段
51 バッファ
52 受面
53 制御装置
A 距離
54 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア(24)と、
ピボット中心(32)の回りに回転可能であるようにキャリア(24)に支持され、磁気導電性のアーマチュア(47)を含む、選択フィンガ(28)と、
前記キャリア(24)上に固定支持され、第1の磁極(45)と第2の磁極(46)を持つコア(41)を有する電磁石(37)と、
を有する、ドビーのシフトクラッチ(11)のための制御装置(53)であって、
前記第1の磁極(45)は、前記アーマチュア(47)と共に、第1のエアギャップ(48)を画定し、前記第1のエアギャップ(48)が、前記ピボット中心(32)に対して一定の半径(R)を有する円弧形状に湾曲され、
前記第2の磁極(46)は、前記アーマチュア(47)と共に、第2のエアギャップ(49)を画定し、該第2のエアギャップ(49)が、前記選択フィンガ(28)のピボット動作の関数であるサイズを有する、
前記制御装置。
【請求項2】
前記第1のエアギャップ(48)が、前記選択フィンガ(28)のピボット動作によって影響されない一定のエアギャップとして構成される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第2のエアギャップ(49)が前記選択フィンガ(28)のピボット位置の関数であるギャップ長を有し、それによって、前記ギャップ長が、前記第2の磁極(48)及び前記アーマチュア(47)間の距離として測定される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第2のエアギャップ(49)が台形の断面を有する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第2のエアギャップ(49)が前記選択フィンガ(28)のピボット位置の関数であるギャップ幅を有し、それによって、前記ギャップ幅が、前記第2のエアギャップ(49)の平行な境界線を示す前記第2の磁極(46)と前記アーマチュア(47)のそれぞれの表面間で測定される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記選択フィンガ(28)が、該選択フィンガ(28)を電磁石(37)の磁力に対して付勢し、前記選択フィンガ(28)を前記電磁石(37)が励磁されないときに動作不能位置に押し込むように、バネ手段(38)に関連付けられる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記選択フィンガ(28)が、前記電磁石(37)が励磁されるときに前記選択フィンガ(28)を定義された動作位置に保持するために停止手段(50)と関連付けられる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記選択フィンガ(28)が、該選択フィンガ(28)を駆動するために第2の電磁石(37’、37”)と関連付けられる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記第2の電磁石(37’、37”)が、前記第1の電磁石(37)と同一駆動方向に前記選択フィンガ(28)を駆動する、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記第2の電磁石(37’、37”)が、前記第1の電磁石(37)とは異なる駆動方向に前記選択フィンガ(28)を駆動する、請求項8に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−19322(P2009−19322A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176784(P2008−176784)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(304012943)グローツ−ベッカート コマンディトゲゼルシャフト (46)