説明

ドライのネブライザ要素の識別

液体がネブライザ要素に接触しているかを決定するための種々の装置が開示される。ネブライザ要素は、測定周波数の電気信号で通電されうる。ネブライザ要素のインピーダンスが測定され、これにより、測定されたインピーダンス値が獲得されうる。このインピーダンス値は、記憶されたインピーダンス値と比較されうる。この比較に基づき、液体がネブライザ要素に接触しているかが決定されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で示される態様はネブライザに関する。本明細書で示される態様は、特に、ネブライザ要素が液体に接触しているかを決定すべくそのネブライザ要素のインピーダンスを測定することに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤を患者に送達するべく、多種多様な方法が提案されてきた。いくつかの薬剤送達(ドラッグデリバリー)方法では、薬剤は液体であって、患者による吸入のため細かい液体飛沫の形状で投薬される。患者は、肺組織を通じた吸収のため薬剤を吸入しうる。そうしたミストは、ネブライザにより形成されうる。液体が存在しない状態でネブライザを作動させることは、そのネブライザに損傷を与えるおそれがある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【図1】ネブライザの一実施形態を例示する図。
【図2】コントロールモジュールにより制御されるネブライザの一実施形態を例示する図。
【図3】種々の周波数における、ウエット状態のネブライザ要素およびドライ状態のネブライザ要素のインピーダンスのグラフ。
【図4】液体がネブライザ要素に接触しているか否かを決定する方法の一実施形態を例示する図。
【図5】液体がネブライザ要素に接触しているか否かを決定する方法の他の実施形態を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0004】
液体がネブライザ要素に接触しているかを決定すべく、インピーダンス測定が用いられうる。ネブライザ要素は、測定周波数の電気信号で通電されうる。ネブライザ要素のインピーダンスが測定され、これにより、測定されたインピーダンス値が獲得されうる。測定されたインピーダンス値は、記憶されたインピーダンス値と比較されうる。この比較に基づき、液体がネブライザ要素に接触しているかが決定されうる。
【0005】
いくつかの実施形態では、液体がネブライザ要素に接触しているかを決定する方法が存在する。この方法は、測定周波数の電気信号でネブライザ要素に通電する工程を含む。この方法は、ネブライザ要素のインピーダンスを測定し、これにより測定されたインピーダンス値を獲得する工程をさらに含む。この方法は、さらに、測定されたインピーダンス値を、記憶されたインピーダンス値と比較する工程を含む。また、この方法は、測定されたインピーダンス値と記憶されたインピーダンス値との間の比較を用いて、液体がネブライザ要素に接触しているかを決定する工程を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、上述した測定周波数は、液体を霧化すべくネブライザ要素に通電される霧化周波数とは異なる。いくつかの実施形態では、上述した方法は、測定周波数の電気信号でネブライザ要素が通電されるのと同時に、1または複数の霧化周波数の電気信号でネブライザ要素に通電する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、ネブライザ要素のインピーダンスが測定されている間、液体を霧化する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、上述した方法は、ネブライザ要素が液体に接触していない旨決定される場合に、ネブライザ要素が霧化周波数の電圧で通電されないようにネブライザ要素を無効にする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、ネブライザが液体に接触している旨決定される場合に、霧化周波数の電気信号でネブライザ要素に通電する工程をさらに
含む。いくつかの実施形態では、測定周波数の電圧でのネブライザ要素への通電に先立ち、霧化周波数の電気信号でネブライザ要素に通電する工程;および、測定周波数の電気信号でのネブライザ要素への通電に先立ち、霧化周波数の電気信号でのネブライザ要素への通電を中止する工程をさらに含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、液体がネブライザ要素に接触している時に該ネブライザ要素に通電するシステムが存在する。このシステムは、ネブライザを含む。ネブライザは、液体を収容するように構成されたタンクを含みうる。タンクは、ネブライザ要素に液体を供給するように構成されうる。ネブライザは、ネブライザ要素をさらに含む。ネブライザ要素は、霧化周波数で通電される時に、該ネブライザ要素に接触する液体を霧化するように構成されうる。このシステムは、コントロールモジュールをさらに含みうる。コントロールモジュールは、ネブライザ要素に通電すべく霧化周波数の電気信号を出力するように構成されうる。コントロールモジュールは、ネブライザ要素に通電すべく測定周波数の電気信号を出力するように構成されうる。コントロールモジュールは、ネブライザ要素のインピーダンスを測定し、これにより、測定されたインピーダンス値を獲得するように構成されうる。コントロールモジュールは、さらに、測定されたインピーダンス値を記憶されたインピーダンス値と比較するように構成されうる。また、コントロールモジュールは、測定されたインピーダンス値と記憶されたインピーダンス値との間の比較を用いて、液体がネブライザ要素に接触しているかを決定するように構成されうる。
【0008】
いくつかの実施形態では、非一時的なプロセッサ可読媒体に存在するとともにプロセッサ可読命令を含むコンピュータプログラム製品が存在する。この命令は、実行される時、プロセッサに次の各処理を実行させうる。すなわち、ネブライザ要素が測定周波数の電気信号で通電される処理;ネブライザ要素のインピーダンスが測定され、これにより、測定されたインピーダンス値を獲得する処理;測定されたインピーダンス値を、記憶されたインピーダンス値と比較する処理;測定されたインピーダンス値と記憶されたインピーダンス値との間の比較を用いて、液体が前記ネブライザ要素に接触しているかを決定する処理である。
【0009】
以下の図面を参照することにより、本発明の特徴および利点のさらなる理解が得られうる。
液体が存在しない状態でネブライザを運転させることは、そのネブライザおよび/またはネブライザ要素に損傷を与えるおそれがある。したがって、ネブライザ要素がドライ(dry)であるときには、そのネブライザ要素に通電させないようにすることが望ましい。ネブライザ要素が液体に接触しているのか(ネブライザ要素がウエット(wet)か)、またはネブライザ要素が液体に接触していないのか(ネブライザ要素がドライ(dry)か)を決定するため、種々の実施態様が示される。
【0010】
より詳細には、本発明はネブライザ要素のインピーダンスを測定すること、その測定値を、所定のインピーダンス値と比較することとを含む。この比較は、ネブライザ要素が液体に接触しているか否かを決定するために用いられる。ネブライザ要素のインピーダンスが1以上の周波数において測定されることにより、ネブライザ要素に液体が接触しているかどうか決定されうる。
【0011】
ネブライザ要素がドライで作動されうる可能性のある状況としては種々のものがある。例えば、ネブライザ要素に液体(例えば、アミカシンなどの液剤)がそれまで接触していたが、液体の供給がなくなることがある。特定の用量のそうした液剤が、患者への送達のために霧化されるべくネブライザ要素に供給されうる。その用量の最後には、その液剤の全用量が霧化されたにもかかわらず、ネブライザ要素が通電され続けることがあり、これにより、ドライのネブライザが通電される結果となる。他の例としては、ネブライザ要素
に液体を接触させることなく意図せずにネブライザ要素が通電されることがある。これらの例の両方とも、ネブライザおよび/またはその要素がドライで通電されることにより損傷を受けるおそれがある。
【0012】
図1は、ネブライザ100の一実施形態を例示している。ネブライザ100は、ネブライザ要素110、薬剤タンク120、ヘッドスペース130、インターフェイス140、およびキャップ150を含みうる。ネブライザ要素110は、電気信号が印加される時に拡張または収縮する圧電リングから構成される。圧電リングは、有孔膜に取り付けられることができる。この有孔膜は、その膜を貫通する複数の孔を有しうる。圧電リングに電気信号が印加されると、これにより膜が動き(move)、および/または曲がる(flex)。液体に接触した状態での膜のそうした動きにより、液体の霧化が起こり、これにより、液体粒子のミストが形成される。ネブライザ要素110は、振動する開口プレートであってもよい。
【0013】
液体の供給物、通例、液剤(その例は本明細書で後述する)は、薬剤タンク120に収容されうる。図1に例示されるように、薬剤タンク120は、部分的にのみ液剤で満たされる。液剤が霧化されるにつれて、薬剤タンク120に残留する液剤の量は低下しうる。薬剤タンク120中の液剤の量に依存して、タンクの一部分のみ液剤で満たされうる。薬剤タンク120の残りの部分は、空気などの気体で満たされうる。この空間がヘッドスペース130と呼ばれる。インターフェイス140は、薬剤タンク120とネブライザ要素110との間で液剤を移送するために機能しうる。
【0014】
ネブライザ、およびネブライザに関連した技術は、広く、米国特許第5,164,740号;5,938,117号;5,586,550号;5,758,637号;6,014,970号;6,085,740号;6,235,177号;6,615,824号;7,322,349号明細書で示されており、それらの全体の開示内容は、すべての目的のために引用により援用される。
【0015】
ネブライザ100などのネブライザは、図2で例示されるようなコントロールモジュールに接続されうる。図2は、ネブライザ100に連結されるネブライザコントロールモジュールの一実施形態200の簡略化されたブロック図を例示する。図2のネブライザ100は、図1のネブライザ100、または引用された出願で示されたものなどいくつかの他のネブライザを表しうる。ネブライザ100は、ワイヤ230を介してコントロールモジュール210に接続されうる。ワイヤ230は、ケーブルであっても良い。このワイヤ230により、コントロールモジュール210は、様々な周波数および様々な電圧の電気信号を、ネブライザ100に対してワイヤ230を通じて送信することができる。コントロールモジュール210は、このコントロールモジュール210に対して直流電圧および/または交流電圧を供給することのできる電圧サプライ215に接続されうる。
【0016】
コントロールモジュール210は、種々の構成要素を含みうる。コントロールモジュール210のいくつかの実施形態では、プロセッサ211、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体212、電気信号出力モジュール213が存在する。プロセッサ211は、汎用のプロセッサであっても良いし、コントロールモジュール210で機能するために特別に設計されたプロセッサであっても良い。プロセッサ211は、ソフトウェアまたはファームウェアとして記憶された命令を実行するように機能することができる。そうした命令は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体212に記憶されうる。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体212は、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ、ハードドライブ、または、命令を記憶することのできる何らかの他の保存媒体であって良い。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体212により記憶された命令は、プロセッサ211により実行されることができ、命令の実行により、電気信号出力モジュール213は、様々な周波数およ
び/または様々な電圧の電気信号を発生させ、ワイヤ230を介してネブライザ100のネブライザ要素に対して出力する。電気信号出力モジュール213による信号出力は、1以上の周波数を含みうる。例えば、電気信号出力モジュール213は、電気信号を断続的に、または同時に発生しうる。電気信号は、ネブライザ要素のインピーダンスを測定すべく1以上の周波数でネブライザ要素に通電するために用いられるとともに、液体を霧化すべく1以上の周波数でネブライザ要素に通電するために用いられる。
【0017】
図3は、図1のネブライザ要素110などのネブライザ要素のインピーダンスが、印加される電気信号の周波数に依存して、および、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかに依存してどのように変化しうるかについての一実施形態のグラフ300を示している。ライン310は、ウエット時のネブライザ要素における種々の周波数でのインピーダンスを表している。ライン320は、ドライ時のネブライザ要素における種々の周波数でのインピーダンスを表している。印加される電気信号の周波数に依存して、ウエットのネブライザ要素は、ドライのネブライザ要素と比較して、より高い、より低い、または同じインピーダンスを有しうる。ネブライザ要素が液体に接触しているかどうか(例えば、ウエットおよびドライのどちらであるか)を決定すべく、ウエット状態とドライ状態との間でインピーダンスが大きく相違する周波数が分析されうる。例えば、およそ122kHzの周波数が用いられうる。領域350において、およそ122kHzでは、ウエットのネブライザは、およそ280オームのインピーダンスを有する。領域350は、ウエット状態とドライ状態との間でネブライザのインピーダンスが大きく変化する周波数の範囲として、点線の囲みにより表されている。同じ周波数において、液体に接触していないネブライザ要素は、10,000オームを超えるインピーダンスを有する。異なるネブライザおよび/またはネブライザ要素に対して異なる結果が得られうることは、当業者には理解されるだろう。そのため、異なるネブライザおよび/またはネブライザ要素については、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかを決定するために異なる周波数が好ましいことがある。点330は、本実施形態のネブライザ要素が液体を霧化するために通常印加される周波数(および関連するインピーダンス)を表しうる。このように、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかを決定すべく用いられる周波数は、液体を霧化するために用いられる周波数とは異なる周波数でありうる。要素がウエットおよびドライのどちらであるかを決定すべく用いられる1以上の周波数を特定するため、およびウエット状態およびドライ状態に関連するインピーダンス値を決定するため、ネブライザおよび/またはネブライザ要素のそれぞれの設計のためにこうしたグラフが作成されうる。
【0018】
図3のグラフを作成するために用いられたネブライザ要素では、このネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかを決定すべく、およそ周波数120kHzでそのインピーダンスが測定されうる。インピーダンスは、図4の方法400などの方法を通じて監視される。図4は、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかを決定する方法の一実施形態を例示している。方法400は、図1のネブライザ100などのネブライザ、および、図2のコントロールモジュール210などのコントロールモジュールを用いて実行されうる。ブロック410では、コントロールモジュールにより発生される周波数の電気信号でネブライザ要素が通電されうる。例えば、図3のグラフを作成するために用いられたネブライザ要素など、通電されるネブライザ要素の特性が、種々の電圧および周波数においてすでに分析されていることがある。そのため、どの周波数(1または複数)および/または電圧において、ウエット時のネブライザ要素のインピーダンスがドライ時のネブライザ要素のインピーダンスに対して大きく異なるのかすでに知られていることがある。例えば、方法400を実行する際に用いられるネブライザ要素が、図3を作成するために用いられたネブライザ要素である場合には、およそ120kHzの測定周波数で通電されうる。この周波数は、ドライ時と比較してウエット時のネブライザ要素のインピーダンスが大きく異なるという理由から選択されうる。
【0019】
ブロック410において、測定周波数の電気信号でネブライザ要素が通電されると、ネブライザ要素のインピーダンスがブロック420において測定されうる。測定周波数は、液体を霧化すべくネブライザ要素を励振するために用いられる周波数と同じであっても良いし異なっていても良い。これらの周波数が異なる場合には、コントロールモジュールは、ネブライザ要素を霧化周波数で励振することを一時的に停止することができる。いくつかの実施形態では、ネブライザ要素は、霧化周波数および測定周波数で同時に励振されうる。いくつかの実施形態では、1以上の霧化周波数および/または1以上の測定周波数で同時に励振されうる。インピーダンスは、図2のコントロールモジュール210などのコントロールモジュールにより測定されうる。この測定されるインピーダンス値は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体212またはいくつかの他の記憶装置を用いてコントロールモジュールにより記憶されうる。
【0020】
続いて、測定されたインピーダンス値は、ブロック430において、所定のインピーダンス値と比較されうる。この所定のインピーダンス値は、ウエット時およびドライ時のネブライザ要素の特性にかかる先の分析を通じて実験的に決定されうる。例えば、方法400において、図3のグラフを作成するために用いられたネブライザ要素が用いられていると再び仮定すると、所定のインピーダンス値は閾値、例えば、周波数122kHzに対して1100オームなどでありうる。したがって、この周波数において測定インピーダンスが1100オームよりも大きいと決定される場合には、ネブライザ要素はおそらくドライである。また、この周波数において測定されたインピーダンスが1100オームよりも小さい旨決定される場合には、ネブライザ要素はおそらくウエットである。
【0021】
ブロック440において、ブロック430での比較に基づき、液体がネブライザ要素に接触しているか否かが決定されうる。そうした決定に基づき、異なった実行方針がとられうる。例えば、ネブライザ要素がドライである旨決定される場合には、ネブライザ要素への通電が中止されうる。これにより、ネブライザ要素の損傷の可能性が防止されうる。ネブライザ要素がウエットである旨決定される場合には、液体を霧化すべく用いられる周波数の電気信号でのネブライザ要素への通電が継続される。これにより、患者による吸入のための薬剤の用量をもたらすように、ネブライザ要素による液体の霧化が継続される。
【0022】
こうした処理は、ネブライザ運転中のどの時点においても、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかを決定すべく用いられうる。例えば、最初の通電に際して、液体がネブライザ要素に接触しているかを決定すべく方法400などの方法が用いられうる。このように、ネブライザのタンクに人が液体を加えないでいたような場合にネブライザ要素が最初に通電されるのを防止すべく、上述した処理が用いられうる。いくつかの実施形態では、ネブライザにおける液体の供給がなくなったかを決定すべく、定期的に、または断続的に、方法400が実行されうる。
【0023】
1つの周波数においてインピーダンスを測定するだけではなく、1以上の所定のインピーダンス値との比較のために1以上の周波数において複数の異なるインピーダンス値を測定することにより、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかについての決定が、より正確に実行されうる。図5は、複数の周波数においてネブライザ要素のインピーダンスが測定される場合の方法500を例示する。これら種々の周波数における測定値から平均インピーダンスが算出される。そして、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらでありそうかを決定すべく、平均インピーダンスが所定のインピーダンス値と比較されうる。
【0024】
ブロック510において、図1および図2のネブライザ100などのネブライザの通常運転が、図2のコントロールモジュール210などにより無効にされる。この運転の無効
化は、液体を霧化するために用いられる1以上の周波数の電気信号でのネブライザ要素への通電を中止することを含む。これは、ブロック510に先立ってネブライザ要素が液体を霧化していた場合に必要になりうる。起動時すぐなど、ネブライザが液体の霧化をまだ開始していない場合には、ブロック510は必要ではないことがある。いくつかの実施形態では、ネブライザ要素は、インピーダンスを測定するために用いられる周波数(例えば、測定周波数)と、液体を霧化するために用いられる周波数(例えば、霧化周波数)とにより同時に励振されうる。そうした場合、霧化の無効化は必要ではないこともある。ブロック520において、ネブライザ要素は、所定の電圧および/または1以上の所定の周波数の電気信号で通電されうる。例えば、方法500で用いられるネブライザ要素が図3のグラフ300を作成するために用いられたネブライザ要素と同一であると仮定すると、用いられる電圧は5Vであり、用いられる最初の周波数は118kHzであることができる。
【0025】
ブロック530において、ネブライザ要素のインピーダンスが測定されうる。このインピーダンス値は、図2のコントロールモジュール210などのコントロールモジュールにより測定されるとともに、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体212を用いて記憶されうる。
【0026】
ブロック540において、1以上の測定されたインピーダンス値を1以上の所定のインピーダンス値と比較することに先立ち、他のインピーダンス測定値が収集されるかが決定されうる。答えがYESの場合には、ブロック520に戻り(図示された点線の経路を経由)、ネブライザ要素は、次のインピーダンス測定を処理するために必要な周波数の電気信号を用いて、直ちに通電されうる。いくつかの実施形態では、ネブライザ要素は、ブロック520で用いられた同一の周波数で通電されて同一の測定が繰り返される。いくつかの実施形態では、異なる周波数が用いられる。
【0027】
あるいは、いくつかの実施形態では、ブロック550において、ネブライザの通常運転が再開され、霧化周波数で液体が霧化されうる。通常運転を実行して一定期間後に(例えば、10分の1秒、数秒、1分など)、ブロック510において、通常運転が再び無効にされ(例えば、霧化周波数の電気信号でのネブライザ要素への通電を中止する)、ブロック520において、次のインピーダンス測定のために必要な電圧および周波数でネブライザ要素が通電される。ここで、周波数は、ブロック520で先に用いられた周波数と同じ測定周波数であっても良いし、異なる測定周波数であっても良い。
【0028】
通常運転の期間は、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかについてどれほど頻繁に決定されることが望ましいかによって決定されうる。例えば、所定のインピーダンス値との比較の前に、合計6つの周波数測定値が収集される場合、かつ、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかをネブライザユニットが10秒ごとに決定することが望まれている場合を考える。これは、インピーダンスの各測定の間に通常運転の期間がある場合に、1つの周波数でのネブライザ要素のインピーダンスが少なくとも1.6秒ごとに収集されることが必要であることを意味する。1)異なる電圧および/または周波数で直ちに通電すること、または、2)通常運転を再開して異なる電圧および/周波数で通電すること、のこうしたループが、異なる電圧および/または周波数での所定数のインピーダンス値が収集されるまで継続しうる。例えば、図3のグラフを作成するために用いられたネブライザ要素について再び言及すると、118kHzに加えて、インピーダンス測定が、119.5kHz、121kHz、122.5kHz、124kHz、および125.5kHzでも収集されうる。
【0029】
ブロック540において、異なる電圧および/または周波数におけるインピーダンス値について、追加の測定値が収集されない旨決定されると、処理はブロック570に進みう
る。ブロック570において、種々の周波数において収集されたインピーダンス値が、測定されたインピーダンスの平均値を算出するために用いられうる。ブロック580において、この測定されたインピーダンスの平均値が、記憶された所定の平均インピーダンス値と比較されうる。比較は、測定されたインピーダンス値の平均値が所定のインピーダンス値よりも大きいか、等しいか、または小さいかを決定することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、測定されたインピーダンス値の平均値を、記憶された平均インピーダンス値と比較するのではなく、測定されたインピーダンス値の個々の値が、記憶されたインピーダンス値の個々の値と、周波数ごとに比較されうる。これらの比較の大部分が、ネブライザ要素がウエットである旨示す場合には、ネブライザ要素はウエットであると識別されうる。上述した比較の大部分が、ネブライザ要素がドライである旨示す場合には、ネブライザ要素はドライであると識別されうる。
【0031】
ブロック585において、ネブライザ要素がドライである旨決定される場合には、ブロック590において、ネブライザ要素は無効にされうる。この無効化には、1以上の周波数でのネブライザ要素への通電を中止することを含みうる。その時点まで、ネブライザ要素が通常運転を通じて液剤を霧化していた場合には、ネブライザ要素がドライである旨決定されることは、薬剤の全用量が送達されたことを示しうる。
【0032】
ブロック585において、ネブライザ要素がドライではない場合(例えば、ウエットである場合)、ブロック550において、ネブライザ要素の通常運転が再開されて、1以上の周波数でネブライザ要素が通電されうる。通常運転は、所定の期間継続し、その後、方法500が繰り返されて周波数のそれぞれで新たなインピーダンス測定が処理されうる。ブロック585においてネブライザ要素がドライである旨決定されるまで、あるいは、何らかのイベントの介入によってネブライザの運転が中止するまで、方法500は継続的に繰り返しうる。いくつかの実施形態では、所定の期間の満了、または使用者の入力を受信することなど、他の処理によりネブライザが無効になることもある。
【0033】
当業者には理解されるように、インピーダンスは、電圧と電流の比に関連する。電流か電圧かどちらかが知られている場合には、測定された電圧か測定された電流かどちらかをそれぞれ用いて、インピーダンスが決定されうる。例えば、先に述べたネブライザ要素であって、印加される電圧が一定である場合、または、知られた値であると推定される場合には、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかを決定すべく電流測定値が用いられうる。同様に、先に述べたネブライザ要素であって、印加される電流が一定である場合、または、知られた値であると推定される場合には、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかを決定すべく電圧測定値が用いられうる。さらに、印加される電圧および電流の関係が知られている場合、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかを決定すべく、電流測定値のみまたは電圧測定値のみが用いられうる。さらに、いくつかの実施形態では、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかを決定すべく、ネブライザ要素によって消費される電力量が用いられうる。図4および図5の方法400および方法500は、一定の電流または一定の電圧がネブライザ要素に印加されるようにそれぞれ適合されており、結果として生じる電流、電圧、または電力が測定される。ドライのネブライザ要素、およびウエットのネブライザ要素について、その測定される電流、電圧、または電力がどれほどの大きさで相違するかを決定すべく、グラフ300で表されるような情報が、種々の印加される一定電圧、または一定電流について収集されうる。そのように、本発明の実施形態は、インピーダンスのみではなく、電圧、電流、および/または電力の測定値に依存して存在する。さらに、いくつかの実施形態では、複数の異なる値の測定値(一定の電流が印加される時の電圧測定値、一定の電圧が印加される時の電流測定値など)が取得されうる。複数の測定を用いることにより、ネブライザ要素がウエットおよびドライのどちらであるかを決定する精度が向上されうる。例
えば、ネブライザ要素がドライである旨決定するとともにネブライザ要素の通電を中止するためには、両方の測定が、ネブライザがドライであると一致することが必要であり、そうでなければ、ネブライザ要素は継続して通電されうる。
【0034】
多種多様な薬剤、液体、液剤、および液体に溶解した薬剤がエアロゾル化されることができ、以下はエアロゾル化されうる広範囲の例を提供する。追加の例は、米国特許出願第12/341,780号明細書において提供されており、その全体の開示内容は、すべての目的のために本明細書に援用される。ほぼすべての抗グラム陰性、抗グラム陽性の抗生物質、またはそれらの混合物が使用されうる。さらに、抗生物質は、広範囲の抗菌スペクトルの効果を持つもの、または混合された抗菌スペクトルの効果を持つものを含みうる。ポリエン系物質、特に、アンフォテリシンBなどの抗真菌薬もまた、ここでの使用に適している。抗グラム陰性抗生物質またはそれらの塩の例は、アミノグリコシドまたはそれらの塩を含むが、これらに限定されない。アミノグリコシドまたはそれらの塩は、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パラメシン、トブラマイシン、それらの塩、およびそれらの混合物を含む。例えば、硫酸ゲンタマイシンは、ミクロモノスポラ・プルプレア(Micromonospora
purpurea)の増殖により産生される抗菌物質の硫酸塩、またはそうした塩の混合物である。硫酸ゲンタマイシン、米国薬局方(USP)は、フジアン・フカング・ファーマスーティカル社(Fujian Fukang Pharmaceutical Co.,LTD;フーチョウ(Fuzhou)、中国)から入手可能である。アミカシンは、典型的には硫酸塩として供給され、例えば、ブリストル−マイヤーズ・スクイブ(Bristol−Myers Squibb)から入手可能である。アミカシンは、カナマイシンのような関連物質を含みうる。
【0035】
抗グラム陽性抗生物質またはそれらの塩の例は、マクロライドまたはそれらの塩を含むが、これに限定されない。マクロライドまたはそれらの塩の例は、バンコマイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、それらの塩、およびこれらの混合物を含むが、これに限定されない。例えば、塩酸バンコマイシンは、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)(ストレプトミセス・オリエンタリス(Streptomyces orientalis)と以前は呼ばれていた)のある菌株から生産される抗生物質であるバンコマイシンの塩酸塩である。塩酸バンコマイシンは、主にバンコマイシンB一塩酸塩からなる関連物質の混合物である。すべてのグリコペプチド抗生物質のように、塩酸バンコマイシンは、中心コアのヘプタペプチドを含む。塩酸バンコマイシン、米国薬局方(USP)は、アルファーマ(Alpharma;コペンハーゲン、デンマーク国)から入手可能である。
【0036】
いくつかの実施形態では、組成物は、抗生物質と、1以上の追加の活性作用物質(active agent)とを含む。本明細書で示される追加の活性作用物質は、作用物質(agent)、薬剤(drug)、または化合物(compound)を含み、これらは、薬理的な、多くの場合有益な、効果をもたらす。これは、食品、栄養補助食品、栄養剤、薬剤、ワクチン、ビタミン、および他の有益な作用物質を含む。本明細書で用いられるように、これらの用語は、さらに、患者の局所的または全身的な効果をもたらす生理的または薬理的な活性物質を含む。本明細書で示される医薬調合物に混合される活性作用物質は、無機または有機化合物であって、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン受容体、骨格筋、心臓血管系、平滑筋、血管系、シナプス部位(synoptic sites)、神経効果器接合部位(neuroeffector junctional sites)、内分泌およびホルモン系、免疫系、生殖器系、骨格系、局所ホルモン(autacoid)系、消化および排泄系、ヒスタミン系、および中枢神経系に作用する薬剤を含みうるが、これに限定されない。
【0037】
追加の活性作用物質の例は、抗炎症剤、気管支拡張剤、およびそれらの混合物を含むが、これに限定されない。
気管支拡張剤の例は、ベータ作用薬、抗ムスカリン剤、ステロイド、およびそれらの混合物を含むが、これに限定されない。例えば、ステロイドは、硫酸アルブテロールなどのアルブテロールを含みうる。
【0038】
活性作用物質は、例えば、催眠薬および鎮静剤、精神賦活薬(エネルガイザー)、精神安定剤(トランキライザー)、呼吸器薬、抗てんかん薬(anticonvulsants)、筋弛緩剤、抗パーキンソン薬(ドーパミンアンタゴニスト)、鎮痛剤、消炎剤、抗不安薬(antianxiety drugs;anxiolytics)、食欲抑制剤、抗偏頭痛薬、筋肉収縮剤(muscle contractants)、追加の抗感染症薬(抗ウイルス、抗菌、ワクチン)、抗関節炎薬、抗マラリア薬、制吐剤、抗てんかん薬(anepileptics)、サイトカイン、成長因子(growth factors)、抗癌剤、抗血栓剤、降圧剤、心臓血管薬、抗不整脈薬、抗酸化剤、抗喘息薬、避妊薬を含むホルモン剤、交感神経興奮薬、利尿剤、脂質調節剤、抗アンドロゲン剤、抗寄生虫薬、抗凝固剤、腫瘍薬(neoplastics)、抗腫瘍薬、血糖降下剤、栄養剤やサプリメント、成長サプリメント(growth suppliments)、抗腸炎剤、ワクチン、抗体、診断薬、および造影剤を含む。活性作用物質は、吸入によって投与される場合、局所的、または全身的に作用することができる。
【0039】
活性作用物質は、複数の構造クラスの1つに分類されることができ、これは、小分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ステロイド、生理的効果を誘発するタンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂肪、電解質等を含むが、これに限定されない。
【0040】
本発明の使用に適する活性作用物質の例は、下記のものを含むが、これに限定されない。すなわち、1以上のカルシトニン、アムホテリシンB、エリスロポエチン(EPO)、第VIII因子、第IX因子、セレデース、セレザイム、シクロスポリン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、トロンボポエチン(TPO)、α−1プロテアーゼインヒビター、エルカトニン、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、成長ホルモン、ヒト成長ホルモン(HGH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ヘパリン、低分子量ヘパリン(LMWH)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン−1受容体、インターロイキン−2、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−6、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、第IX因子、インスリン、プロインスリン、インスリン類似物(例えば、米国特許第5,922,675号明細書で示されるモノ−アシル化インスリンであって、その全体が引用により本明細書に援用される)、アミリン、C−ペプチド、ソマトスタチン、オクトレオチドを含むソマトスタチン類似物、バソプレッシン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、インスリン様成長因子(IGF)、インスリントロピン、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、神経成長因子(NGF)、組織成長因子、ケラチノサイト成長因子(KGF)、グリア成長因子(GGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、内皮細胞増殖因子、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン様ペプチド、チモシンα1、IIb/IIIaインヒビター、α−1アンチトリプシン、ホスホジエステラーゼ(PDE)化合物、VLA−4インヒビター、ビスホスホネート、RSウイルス(Respiratory syncytial virus)抗体、嚢胞性繊維症膜透過性調節因子(CFTR)遺伝子、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)、殺菌性/透過性増強タンパク質(BPI)、抗CMV抗体、13−cis−レチノイン酸、オレアンドマイシン、トロレアンドマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、ダベルシン(davercin)、アジスロマイシン、フルリスロマイシン、ジリスロマイシン、ジョサマイシン、スピロマイシン、ミデカマイシン、ロイコマイシ
ン、ミオカマイシン、ロキタマイシン、アンダジスロマイシン、およびスウィンホリドA(swinolide A);フルオロキノロン、例えば、シプロフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、トロバフロキサシン、アラトロフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、グレパフロキサシン、ガチフロキサシン、ロメフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、ペフロキサシン、アミフロキサシン、フレロキサシン、トスフロキサシン、プルリフロキサシン、イルロキサシン、パズフロキサシン、クリナフロキサシン、およびシタフロキサシン、テイコプラニン、ラモプラニン、ミデプラニン、コリスチン、ダプトマイシン、グラミシジン、コリスチメタート、ポリミキシン、例えばポリミキシンB、カプレオマイシン、バシトラシン、ペネム;ペニシリナーゼ感受性剤を含むペニシリン、例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、ペニシリナーゼ耐性剤、例えば、メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フロキサシリン、ナフシリン等;グラム陰性微生物活性作用物質、例えば、アンピシリン、アモキシシリン、およびヘタシリン、シリン(cillin)、およびガランピシリン(galampicillin);抗緑膿菌ペニシリン類、例えば、カルベニシリン、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、およびピペラシリン;セファロスポリン、例えば、セフポドキシム、セフプロジル、セフトブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セファロチン、セファピリン、セファレキシン、セフラドリン(cephradrine)、セフォキシチン、セファマンドール、セファゾリン、セファロリジン、セファクロール、セファドロキシル、セファログリシン、セフロキシム、セホラニド、セホタキシム、セファトリジン、セファセトリル、セフェピム、セフィキシム、セホニシド、セホペラゾン、セホテタン、セフィネタゾール(sefinetazole)、セフタジジム、ロラカーベフ(loracarbef)、およびモキサラクタム、モノバクタム、例えば、アズトレオナム;およびカルバペネム、例えば、イミペネム、メロペネム、ペンタミジンイセチオネート(isethiouate)、リドカイン、硫酸メタプロテレノール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン(beclomethasone diprep
ionate)、トリアムシノロンアセトアミド、ブデソニドアセトニド、フルチカソン(fluticasone)、イプラトロピウムブロミド、フルニソリド、クロモリンナトリウム、酒石酸エルゴタミン、および、適切な場合には、上記の類似物、アゴニスト、アンタゴニスト、インヒビター、および薬理的に許容される塩の形態である。ペプチドおよびタンパク質に関し、本発明は、合成、天然、グリコシル化、非グリコシル化、ペグ化(pegylated)された形態、および、生理学に活性のあるそれらのフラグメント、誘導体、および類似物を包含することを意図する。
【0041】
本発明での使用のための活性作用物質は、さらに、核酸、例えば、裸の核酸分子、ベクター、会合ウイルス粒子、プラスミドDNA若しくはRNAまたは他のトランスフェクション若しくはトランスフォーメーションに好適な、すなわち、アンチセンスを含む遺伝子治療に好適な形式の他の核酸構造を含む。さらに、活性作用物質は、ワクチンの使用に好適な弱毒化ウイルスまたは死滅ウイルスを含みうる。他の有用な薬剤には、医師用卓上便覧(Physician’s Desk Reference)(最新版)に列挙されたものが含まれ、その全体が引用により本明細書に援用される。
【0042】
医薬調合物中の抗生物質または活性作用物質の量は、所望の結果を得るべく、単位投与当たり、治療または予防に有効な量の活性作用物質を送達するために必要な量である。実際には、これは、特定の作用物質、その活性、治療される容体の重篤さ、患者集団、投与要件、および所望の治療効果に応じて大きく変化するものである。上記組成物は、一般的に、約1質量%〜約99質量%の範囲、例えば、約2質量%〜約95質量%の範囲、または約5質量%〜85質量%の範囲の活性作用物質を含み、また、組成物に含まれる添加剤の相対量に依存するものである。本発明の組成物は、0.001mg/日〜100mg/日の用量で、例えば、0.01mg/日〜75mg/日の用量で、または0.10mg/日〜50mg/日の用量で送達される活性作用物質のために特に有用である。本明細書で
説明される調合物には1種を超える活性作用物質が包含されうること、「作用物質(agent)」との用語の使用が、2以上のそうした作用物質の使用を排除するものでは全くないことが理解されるべきである。
【0043】
一般に、上記組成物には、過度の賦形剤は含まれない。1以上の実施形態では、水性組成物は、基本的に、アミカシンおよびゲンタマイシンの少なくとも一方および/またはそれらの塩と、水とからなる。
【0044】
さらに、1以上の実施形態では、水性組成物は、防腐剤を含まない(防腐剤フリー)。この点に関して、水性組成物は、メチルパラベン・フリーおよび/またはプロピルパラベン・フリーでありうる。さらに、水性組成物は、塩分(saline)フリーでありうる。
【0045】
1以上の実施形態では、組成物は、抗感染薬および賦形剤を含む。薬剤に許容される賦形剤またはキャリアであって、その対象(subject)、特に対象の肺への重大な副作用、毒性作用なく肺に取り込まれうるものを、組成物は含みうる。活性作用物質に加え、医薬調合物は、経肺投与に好適な1以上の薬剤賦形剤を任意で含みうる。これらの賦形剤は、存在する場合、通常、意図される機能を果たすために十分な量で組成物中に存在する。意図される機能とは、安定性、表面修飾、効果増強、または組成物の送達等である。従って、存在する場合、賦形剤は、約0.01質量%〜約95質量%の範囲、例えば、約0.5質量%〜約80質量%、約1質量%〜約60質量%の範囲でありうる。好ましくは、そうした賦形剤は、活性作用物質のより効果的および再現可能な送達を提供することにより、および/または、製造を促進することにより、活性作用物質組成物の特徴を増大させるように、ある程度は機能するものである。調合物中の活性作用物質の濃度を低下させることが望まれる場合、1以上の賦形剤が、増量剤として機能するように提供されることもありうる。
【0046】
例えば、組成物は、1以上の重量オスモル濃度(osmolality)調整剤、例えば塩化ナトリウムなどを含みうる。例えば、塩化ナトリウムは、溶液の重量オスモル濃度(浸透圧)を調整すべく、塩酸バンコマイシンの溶液に添加されうる。1以上の実施形態では、水性組成物は、基本的に、塩酸バンコマイシンなどの抗グラム陽性抗生物質、重量オスモル濃度調整剤、および水からなる。
【0047】
本発明の医薬調合物に有用な医薬賦形剤および添加剤は、これに限定されないが、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、非生物学的ポリマー、生物学的ポリマー、炭水化物類、例えば、糖類、糖誘導体、例えば、アルビトール、アルドン酸、エステル化糖類、および糖ポリマーを含み、これらは単独で、または組み合わせで存在しうる。
【0048】
例示的なタンパク質賦形剤には、アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、組み換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼイン、ヘモグロビン等が含まれる。好適なアミノ酸(本発明のジロイシル−ペプチド以外)は、緩衝能としても機能することができ、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテーム、チロシン、トリプトファン等が含まれる。好適なのは、分散剤として機能するアミノ酸およびポリペプチドである。こうしたカテゴリーに入るアミノ酸には、疎水性アミノ酸、例えば、ロイシン、バリン、イソロイシン、トリプトファン、アラニン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスタジン、プロリンが含まれる。
【0049】
本発明での使用に適する炭水化物賦形剤には、例えば、単糖類、例えばフルクトース、
マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボース等;二糖類、例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース等;多糖類、例えば、ラフィノース、メレチトース、マルトデキストリン、デキストラン、スターチ等;およびアルジトール、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトール等が含まれる。
【0050】
医薬調合物は、緩衝剤またはpH調整剤も含むことができ、これは、典型的には、有機酸または塩基から調製される塩である。代表的な緩衝剤には、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、またはフタル酸の有機酸塩や、トリス、トロメタミン塩酸塩、またはリン酸緩衝液が含まれる。
【0051】
医薬調製物は、ポリマー賦形剤/添加剤も含むことができ、これは、例えば、ポリビニルピロリドン、セルロース、およびセルロース誘導体、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース、フィコール(Ficoll)(登録商標)(ポリマー糖)、ヒドロキシエチルスターチ、デキストレート(dextrate)(例えば、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン等のシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、およびペクチンである。
【0052】
医薬調合物は、さらに、着香剤、矯味剤、無機塩(例えば、塩化ナトリウム)、抗微生物剤(例えば、ベンザルコリウムクロリド)、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN20」および「TWEEN80」等のポリソルベート)、ソルビタンエステル、脂質( 例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファ
チジルエタノールアミン等のリン脂質)、脂肪酸および脂肪酸エステル、ステロイド(例えば、コレステロール)、およびキレート剤(例えば、EDTA、亜鉛および他の好適なカチオン)を含みうる。本発明にかかる組成物の使用に好適な他の医薬賦形剤および/または添加剤は、「レミントン:薬剤学の科学と実際(Remington:The Science & Practice of Pharmacy)」第19版、ウイリアムス・アンド・ウイリアムス(1995)、および、「医師用卓上便覧(Physician’s Desk Reference)」第52版、メディカル・エコノミクス(Medical Economics)、モントベール、ニュージャージー(1998)に列挙されており、これらの両方について、それらの全体が、引用により本明細書に援用される。
【0053】
上述した方法、システム、および装置は、単なる例である旨意図されていることに注意されるべきである。種々の実施形態は、種々の方法または構成要素を、必要に応じて省略し、置き換え、または追加しうることが強調されなければならない。例えば、代替の実施形態において、上述されたものと異なる順序で上記方法が実行されることができること、種々の工程が加えられ、省略され、または組み合わされることができることが理解されるべきである。また、ある実施形態に関して説明された特徴は、種々の他の実施形態において組み合わされうる。別の態様および実施形態の要素は、同様の方法で組み合わされうる。また、技術は進化するため、要素の多くは例であることが強調されるべきであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0054】
実施形態の完全な理解を提供すべく、特定の詳細が本明細書において与えられている。しかし、上記実施形態は、これら特定の詳細なく実行されうることが当業者により理解されるだろう。例えば、実施形態を不明瞭にすることを避けるため、周知の処理、アルゴリズム、構造、技術については、不必要な詳細をなくして示されている。こうした説明は、例としての実施形態を提供しているにすぎず、本発明の特許請求の範囲、適用、または構
成を限定することが意図されているわけではない。むしろ、実施形態の先の説明は、本発明の実施形態を実施するための必要な説明を当業者に提供するものである。様々な変更は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置において行われることができる。
【0055】
さらに、先の説明は、主に、液剤をエアロゾル化することについて詳述している。しかし、液剤以外の液体が、同様の装置および方法を用いてエアロゾル化されうることが理解されるべきである。
【0056】
また、実施形態は、フロー図またはブロック図として示されている処理として示されうることに注意されるべきである。それぞれ、逐次処理としての演算(operation)が説明されているが、それら演算の多くは、平行してまたは同時に実行されうる。また、これら演算の順序を並び替えることもできる。1つの処理は、図に含まれていない追加の工程を持つことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体がネブライザ要素に接触しているかを決定する方法であって、
測定周波数の電気信号で前記ネブライザ要素に通電する工程と、
前記ネブライザ要素のインピーダンスを測定し、これにより測定されたインピーダンス値を獲得する工程と、
前記測定されたインピーダンス値を、記憶されたインピーダンス値と比較する工程と、
前記測定されたインピーダンス値と前記記憶されたインピーダンス値との間の前記比較の結果を用いて、前記液体が前記ネブライザ要素に接触しているかを決定する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記測定周波数は、前記液体を霧化すべく前記ネブライザに通電される霧化周波数とは異なる
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定周波数の電気信号で前記ネブライザ要素が通電されるのと同時に、1または複数の霧化周波数の電気信号で前記ネブライザ要素に通電する工程をさらに含む
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ネブライザ要素のインピーダンスが測定されている間、前記液体を霧化する工程をさらに含む
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ネブライザ要素が液体に接触していない旨決定される場合に、前記電気信号での前記ネブライザ要素への通電を中止する工程をさらに含む
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ネブライザが前記液体に接触している旨決定される場合に、霧化周波数の電気信号で前記ネブライザ要素に通電する工程をさらに含む
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記測定周波数の電気信号での前記ネブライザ要素への通電に先立ち、前記霧化周波数の電気信号で前記ネブライザ要素に通電する工程と、
前記測定周波数の電気信号での前記ネブライザ要素への通電に先立ち、前記霧化周波数の電気信号での前記ネブライザ要素への通電を中止する工程とをさらに含む
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
液体がネブライザ要素に接触している時に前記ネブライザ要素に通電するシステムであって、
前記システムは、ネブライザと、コントロールモジュールとを含み、
前記ネブライザは、前記液体を収容するように構成されたタンクと、前記ネブライザ要素とを備え、
前記タンクは、前記ネブライザ要素に前記液体を供給するように構成されており、
前記ネブライザ要素は、霧化周波数の電気信号で通電される時に、該ネブライザ要素に接触する前記液体を霧化するように構成されており、
前記コントロールモジュールは、前記ネブライザ要素に通電すべく前記霧化周波数の電気信号を出力し、
前記ネブライザ要素に通電すべく測定周波数の電気信号を出力し、
前記測定周波数での前記ネブライザ要素のインピーダンスを測定し、これにより、測定されたインピーダンス値を獲得し、
前記測定されたインピーダンス値を記憶されたインピーダンス値と比較し、
前記測定されたインピーダンス値と前記記憶されたインピーダンス値との間の前記比較の結果を用いて、前記液体が前記ネブライザ要素に接触しているかを決定するように構成されている、システム。
【請求項9】
前記測定周波数は、前記霧化周波数とは異なる
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントロールモジュールは、前記測定周波数の電気信号で前記ネブライザ要素が通電されるのと同時に、前記霧化周波数の電気信号で前記ネブライザ要素に通電するようにさらに構成されている
請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記ネブライザ要素は、該ネブライザ要素のインピーダンスが測定されている間、前記液体を霧化するようにさらに構成されている
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記ネブライザが前記液体に接触していない旨前記コントロールモジュールにより決定される場合に、前記コントロールモジュールは、前記霧化周波数の電気信号での前記ネブライザ要素への通電がなされないように、該ネブライザ要素を無効にするように構成されている
請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記ネブライザ要素が前記液体に接触している旨前記コントロールモジュールにより決定される場合に、前記コントロールモジュールは、前記霧化周波数で前記ネブライザ要素に通電するように構成されている
請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントロールモジュールは、前記測定周波数の電気信号での前記ネブライザ要素への通電に先立ち、前記霧化周波数の電気信号で前記ネブライザ要素に通電するように構成されており、
前記コントロールモジュールは、前記測定周波数の電気信号での前記ネブライザ要素への通電に先立ち、前記霧化周波数の電気信号での前記ネブライザ要素への通電を中止するように構成されている
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
非一時的なプロセッサ可読媒体に存在するとともにプロセッサ可読命令を含むコンピュータプログラム製品であって、
前記プロセッサ可読命令は、
ネブライザ要素が測定周波数の電気信号で通電される処理と、
前記ネブライザ要素のインピーダンスが測定され、これにより、測定されたインピーダンス値を獲得する処理と、
前記測定されたインピーダンス値を、記憶されたインピーダンス値と比較する処理と、
前記測定されたインピーダンス値と前記記憶されたインピーダンス値との間の前記比較の結果を用いて、液体が前記ネブライザ要素に接触しているかを決定する処理とを、
プロセッサに実行させるように構成されている、コンピュータプログラム製品。
【請求項16】
前記測定周波数は、前記液体を霧化すべく前記ネブライザ要素が通電される霧化周波数とは異なる
請求項15に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
前記プロセッサ可読命令は、
前記ネブライザ要素が、前記測定周波数の電気信号で通電されるのと同時に、霧化周波数の電気信号で通電される処理を、プロセッサに実行させるようにさらに構成されている
請求項15に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
前記プロセッサ可読命令は、
前記ネブライザ要素のインピーダンスが測定されている間に該ネブライザ要素により前記液体が霧化される処理を、プロセッサに実行させるようにさらに構成されている
請求項15に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項19】
前記プロセッサ可読命令は、
前記ネブライザ要素が前記液体に接触していない旨決定される場合に、霧化周波数の電気信号での前記ネブライザ要素への通電を中止する処理を、プロセッサに実行させるようにさらに構成されている
請求項15に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項20】
前記プロセッサ可読命令は、
前記ネブライザ要素が前記液体に接触している旨決定される場合に、霧化周波数で前記ネブライザ要素に通電する処理を、プロセッサに実行させるようにさらに構成されている
請求項15に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項21】
液体がネブライザ要素に接触しているかを決定する方法であって、
測定周波数の電気信号で前記ネブライザ要素に通電する工程と、
前記ネブライザ要素の電気特性を測定し、これにより、測定された電気特性値を獲得する工程と、
前記測定された電気特性値を、記憶された電気特性値と比較する工程と、
前記測定された電気特性値と前記記憶された電気特性値との間の前記比較の結果を用いて、前記液体が前記ネブライザ要素に接触しているかを決定する工程とを含む、方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−517099(P2013−517099A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550081(P2012−550081)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2011/021671
【国際公開番号】WO2011/091002
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(597148884)ネクター セラピューティクス (30)