説明

ドライビングポジション検証装置

【課題】実用性の高いドライビングポジション検証装置を提供する。
【解決手段】ベース32と、そのベース上に配設される支持台34と、ステアリングホイール78と、そのステアリングホイールを保持した状態で車両用シートに向かって延び出すようにして支持台に支持されるステアリングコラム80と、ステアリングコラムの下方において支持台に支持されるアクセルペダル140およびブレーキペダル142とを備えるドライビングポジション検証装置において、ステアリングホイールと支持台との相対位置を変更可能に構成するとともに、アクセルペダルとブレーキペダルとの各々と支持台との相対位置を変更可能に構成する。このような構成により、1台の検証装置によって、様々な種類の車両に組み付けられるシートの検証を行うことが可能となり、検証装置の実用性を高くすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライビングポジション検証装置、詳しくは、車両用シートへの運転者の着座時におけるドライビングポジションを検証するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、シート,ステアリング装置,サスペンション装置等の様々な製品が車体に組み付けられることで製造されている。それら様々な製品の各々は、車体に組み付けられる前に、性能,動作,耐久性,使用感等の検証がなされており、特に、各製品の開発段階においては、様々な検証が行われている。下記特許文献1には、ステアリング装置の動作等を検証するための装置に関する技術が記載されており、ステアリング装置以外にも様々な製品に応じた検証装置が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−155337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車体に組み付けられる様々な製品には、各製品への要求に応じた検証がなされており、上記特許文献1に記載の検証装置では、ステアリング装置におけるチルト動作およびテレスコピック動作に関する検証を行うことが可能とされている。また、ステアリング装置以外の製品、具体的には、例えば、車両用シートにおいては、乗り心地等の使用感に関する要求だけでなく、適切なドライビングポジションの確保、つまり、車両用シートに運転者が着座した際の運転者の適切な運転姿勢を確保することも求められており、ドライビングポジションを検証するための装置も存在している。
【0005】
具体的なドライビングポジション検証装置としては、例えば、図19に示すものが存在している。このドライビングポジション検証装置220は、運転席222および助手席224が配置される台座部226と、運転席222および助手席224と向かい合うように台座部226に立設される立設部228と、その立設部228の上端から運転席222および助手席224に向かって延び出す延出部230とから構成されるモックアップ本体232を備えている。そして、ドライビングポジション検証装置220は、さらに、運転席222に向かって延び出すように延出部230の下面側に設けられるステアリング装置234と、台座部226の立設部228に連続する部分に設けられるアクセルペダル236およびブレーキペダル238とを備えている。それらステアリング装置234,アクセルペダル236,ブレーキペダル238の各々は、実際の車両に対応する位置において、モックアップ本体232に固定されており、運転席222への着座者のドライビングポジションを適切に検証することが可能となっている。
【0006】
一方で、上記ドライビングポジション検証装置220のような従来の検証装置では、ステアリング装置234,アクセルペダル236,ブレーキペダル238の各々はモックアップ本体232に固定されているが、実際の車両において、ステアリング装置等は、車両の種類に応じて、配設位置が微妙に異なっている。このため、ドライビングポジションを適切に検証するためには、車両の種類毎にドライビングポジション検証装置を準備する必要があり、非常に無駄が多い。また、従来のドライビングポジション検証装置では、モックアップ本体にステアリング装置等だけでなく、シートをも設けているため、モックアップ本体が大型化してしまい、小回りの利かない検証装置となっている。
【0007】
このようにドライビングポジションを検証するための装置には、実用性を改善する余地が多分に残されており、種々の改善を施すことでドライビングポジション検証装置の実用性を向上させることが可能となる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いドライビングポジション検証装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のドライビングポジション検証装置は、(a)ベースと、(b)そのベース上に配設される支持台と、(c)ステアリングホイールと、そのステアリングホイールを保持した状態で車両用シートに向かって延び出すようにして前記支持台に支持されるステアリングコラムと、前記ステアリングホイールと前記支持台との相対位置を変更可能なステアリングホイール位置変更機構とを有するステアリング装置と、(d)そのステアリング装置の下方において前記支持台に支持されるアクセルペダルと、そのアクセルペダルの隣において前記支持台に支持されるブレーキペダルと、前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの各々と前記支持台との相対位置を変更可能なペダル位置変更機構とを有するペダルユニットとを備えるように構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドライビングポジション検証装置においては、ステアリングホイール,アクセルペダル,ブレーキペダルの位置調整を行うことが可能となる。これにより、1台のドライビングポジション検証装置によって、様々な種類の車両に組み付けられるシートの検証を行うことが可能となる。また、例えば、車両用シートをベース上に配置せずに、ベースとは異なるものに配置すれば、ベースを小型化することが可能となり、小回りの利く検証装置を実現することが可能となる。したがって、本発明のドライビングポジション検証装置によれば、実用性の高いドライビングポジション検証装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例のドライビングポジション検証装置を示す模式図である。
【図2】図1のドライビングポジション検証装置の備える検証装置本体を斜め後方からの視点において示す図である。
【図3】図1のドライビングポジション検証装置の備える検証装置本体を斜め前方からの視点において示す図である。
【図4】検証装置本体を側方からの視点において示す模式図である。
【図5】検証装置本体を車両用シートの側からの視点において示す模式図である。
【図6】検証装置本体を車両用シートとは反対の側からの視点において示す模式図である。
【図7】検証装置本体の有する支持台を上下方向に移動させるための機構を示す模式図である。
【図8】検証装置本体の有する支持台を前後方向に移動させるための機構を示す模式図である。
【図9】検証装置本体の有するステアリング装置を前後方向に移動させるための機構を示す模式図である。
【図10】検証装置本体の有するステアリング装置を上下方向に移動させるための機構を示す模式図である。
【図11】ステアリング装置を斜め後方からの視点において示す模式図である。
【図12】図11に示すAA線における断面図である。
【図13】図9および図10に示すBB線における断面図である。
【図14】ペダルユニットを斜め後方からの視点において示す図である。
【図15】検証装置本体の有するペダルユニットを前後方向に移動させるための機構を示す模式図である。
【図16】検証装置本体の有するペダルユニットを上下方向に移動させるための機構を示す模式図である。
【図17】ペダルユニットの有するストッパ機構を示す模式図である。
【図18】ドライビングポジション検証装置を斜め後方からの視点において示す模式図である。
【図19】従来のドライビングポジション検証装置を斜め後方からの視点において示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0012】
図1に、本発明の実施例のドライビングポジション検証装置(以下、「検証装置」と略す場合がある)10を示す。検証装置10は、車両用シート12への運転者の着座時におけるドライビングポジションを検証するための装置であり、検証装置本体20と車両用シート12が配置される台座22とによって構成されている。
【0013】
台座22には、1対の車両用シート12(図18参照)が左右方向に並ぶように配置されており、それら1対の車両用シート12の各々は、スライド機構(図示省略)によって前後方向の位置を調整することが可能となっている。また、1対の車両用シート12の各々は、シートクッション24とシートバック26とヘッドレスト28とによって構成されており、リクライニング装置(図示省略)によってシートバック26のシートクッション24に対する傾斜角度を変更することが可能とされている。つまり、1対の車両用シート12は、車体に組み付けられる状態と同じ状態で、台座22に取り付けられている。なお、台座22の下面には、複数の車輪30が設けられており、台座22を容易に移動させることが可能となっている。
【0014】
また、検証装置本体20は、図2ないし図6に示すように、ベース32と、そのベース32上に配設される支持台34と、その支持台34によって支持されるステアリング装置36と、支持台34によって支持されるペダルユニット38とによって構成されている。ちなみに、本明細書では、図4における左右方向を前後方向と、図5における左右方向を左右方向と称し、説明を行う。つまり、車両用シート12に接近離間する方向を前後方向と称し、その前後方向に水平面において垂直な方向を左右方向と称し、説明を行う。また、図4における左側に向かう方向を前方,右側に向かう方向を後方と、図5における右側に向かう方向を右方,左側にむか方向を左方と称し、説明を行う。
【0015】
検証装置本体20を構成するベース32は、台車40と、支持台34が配設される載置台42と、それら台車40と載置台42との間に設けられるリフト機構44とを備えており、そのリフト機構44によって支持台34を上下方向に移動させることが可能とされている。詳しく言えば、リフト機構44は、図7に示すように、Xリンク機構46と油圧ジャッキ48とを有しており、油圧ジャッキ48の一端部が台車40に揺動可能に連結され、他端部がXリンク機構46に揺動可能に連結されている。油圧ジャッキ48は、台車40の前端部に設けられたペダル50の踏み込みによって、伸長する構造とされており、支持台34を上方に移動させることが可能とされている。また、台車40の把持部52に設けられた解除レバー(図2,3参照)54の操作によって油圧ジャッキ46は収縮する構造とされており、支持台34を下方に移動させることが可能とされている。なお、台車40の下面には、複数の車輪56が設けられており、検証装置本体20を容易に移動させることが可能となっている。
【0016】
ベース32は、さらに、支持台34の前後方向の位置を調整するための支持台位置調整機構60を備えている。支持台位置調整機構60は、図8に示すように、支持台34の前後方向の位置を調整する際に操作されるクランクハンドル62と、載置台42上面に固定されるラック64と、そのラック64に噛合する平歯車66と、クランクハンドル62の回転操作を平歯車66に伝達するリンク機構68とを有している。リンク機構68は、前後方向に延びるように配設される第1シャフト70と、その第1シャフト70の後端に固定される第1かさ歯車72と、その第1かさ歯車72に噛合する第2かさ歯車74と、その第2かさ歯車74が上端に固定された状態で上下方向に延びるように配設される第2シャフト76と、その第2シャフト76の下端に固定される第3かさ歯車(図示省略)と、その第3かさ歯車に噛合する第4かさ歯車(図示省略)と、その第4かさ歯車が右端に固定された状態で左右方向に延びるように配設される第3シャフト(図示省略)とによって構成されており、その第3シャフトの左端に平歯車66が固定されるとともに、第1シャフト70の前端部にクランクハンドル62の回転軸部が連結されている。ちなみに、2本のシャフト70,76の各々は、支持台34によって各々の軸心回りに回転可能に保持されている。このような構造によって、クランクハンドル62が回転操作されると、平歯車66がラック62に噛合した状態で回転し、支持台34の前後方向の位置が調整されるのである。なお、クランクハンドル62は、第1シャフト70に着脱可能とされており、後に説明する他の位置調整機構に利用される。
【0017】
また、ステアリング装置36は、ステアリングホイール78と、そのステアリングホイール78を保持するステアリングコラム80とを備えている。そのステアリングコラム80は、コラムブラケット82(図10参照)によって前後方向に移動可能な状態で保持されており、支持台34に設けられた第1コラム位置調整機構84(図9参照)によって、前後方向の位置を調整することが可能とされている。また、コラムブラケット82は、支持台34によって上下方向に移動可能に支持されており、支持台34に設けられた第2コラム位置調整機構86(図10参照)によって、上下方向の位置を調整することが可能とされている。
【0018】
詳しく説明すれば、第1コラム位置調整機構84は、図9に示すように、上記クランクハンドル62と、前後方向に延びるように配設されるねじロッド88と、そのねじロッド88と螺合するナット90とを有しており、ボールねじ機構によって構成されている。ねじロッド88は、支持台34によって軸心回りに回転可能に保持されるとともに、後端部において、クランクハンドル62に着脱可能に連結されている。そのねじロッド88に、複数のベアリングボール92を介して、ナット90が螺合しており、中空形状とされたステアリングコラム80の前端部に固定的に嵌入されている。このような構造によって、クランクハンドル62が回転操作されると、ねじロッド88が軸心回りに回転し、ナット90が前後方向に移動することで、ステアリングコラム80、つまり、ステアリング装置36の前後方向の位置が調整されるのである。
【0019】
また、第2コラム位置調整機構86は、図10に示すように、上記クランクハンドル62と、上下方向に延びるように配設されるねじロッド94と、そのねじロッド94と螺合するナット96と、クランクハンドル62の回転操作をねじロッド94に伝達するリンク機構98とを有している。リンク機構98は、前後方向に延びるように配設される連結シャフト100と、その連結シャフト100の後端に固定される第1かさ歯車102と、その第1かさ歯車102に噛合する第2かさ歯車104とによって構成されており、その第2かさ歯車104にねじロッド94の下端部が固定されている。そのねじロッド94と連結シャフト100との各々は、支持台34によって各々の軸心回りに回転可能に保持されており、連結シャフト100は、後端部において、クランクハンドル62に着脱可能に連結され、ねじロッド94は、複数のベアリングボール106を介して、ナット96が螺合している。そのナット96は、ステアリングコラム80を保持するコラムブラケット82に固定されている。このような構造によって、クランクハンドル62が回転操作されると、リンク機構98を介して、ねじロッド94が軸心回りに回転し、ナット96が上下方向に移動することで、ステアリングコラム80、つまり、ステアリング装置36の上下方向の位置が調整されるのである。
【0020】
検証装置10では、上述したように、ステアリング装置36を上下方向および前後方向の任意の位置に移動させることが可能となっているが、さらに、チルト動作およびテレスコピック動作を行うことも可能となっている。ステアリング装置36のステアリングコラム80は、図11に示すように、ステアリングホイール78に連結されるステアリングシャフト110と、そのステアリングシャフト110を保持するコラム本体112とによって構成されており、コラム本体112によるステアリングシャフト110の保持角度を変更することで、チルト動作が行われる。
【0021】
詳しく言えば、コラム本体112の後端部の上面には凹部114が形成されており、その凹部114にステアリングシャフト110の前端部が挿入されている。そのステアリングシャフト110の前端部には、図11のAA線における断面図である図12に示すように、ねじ穴116が形成されており、そのねじ穴116に対応するようにコラム本体112に貫通穴118が形成されている。ねじ穴116には、貫通穴118を挿通した状態でねじ120が締結されており、そのねじ120の頭部にロックレバー122が固定されている。
【0022】
このような構造により、ねじ120を締結する方向にロックレバー122を操作することで、ねじ120の頭部とステアリングシャフト110との挟持力によって、コラム本体112によるステアリングシャフト110の保持角度が維持される。一方、ねじ120の締結を解除する方向にロックレバー122を操作することで、挟持力が解除され、ステアリングシャフト110の保持角度を変更することが可能となる。つまり、ねじ穴116,貫通穴118,ねじ120,ロックレバー122等によってチルト機構124が構成されており、チルト動作を行うことが可能とされている。
【0023】
また、ステアリングシャフト110は、図9,10に示すように、ステアリングホイール78に連結されるアッパシャフト130と、コラム本体112に連結されるロアシャフト132とによって構成されており、アッパシャフト130が、それの軸線方向に移動可能な状態でロアシャフト132に嵌入されている。つまり、ステアリングシャフト110は、伸縮可能な構造とされており、ステアリングシャフト110を伸縮させることで、テレスコピック動作が行われる。
【0024】
詳しく言えば、アッパシャフト130のロアシャフト132に嵌入されている前端部には、図9,10のBB線における断面図である図13に示すように、ねじ穴134が形成されており、そのねじ穴134に対応するようにロアシャフト132に長穴136が形成されている。長穴136は、ロアシャフト132の軸線方向に延びるように形成されており、その長穴136を挿通した状態で、ねじ138がねじ穴134に締結されている。
【0025】
このような構造により、ねじ138を締め付けることで、ねじ138の頭部とアッパシャフト130との挟持力によって、アッパシャフト130とロアシャフト132との相対移動が禁止される。つまり、ステアリングシャフト110の伸縮が禁止される。一方、ねじ138の締結を緩めることで、挟持力が解除され、ステアリングシャフト110を伸縮させることが可能となる。つまり、ねじ穴134,長穴136,ねじ138等によってテレスコピック機構139が構成されており、テレスコピック動作を行うことが可能とされている。
【0026】
さらに、ステアリング装置36では、ステアリングホイール78がアッパシャフト130に着脱可能とされており、ステアリングホイール78を容易にアッパシャフト130から取り外すことが可能とされている。そして、ステアリング径,ステアリングの形状等の異なる複数のステアリングホイールが用意されており、それら複数のステアリングホイールのうちから任意のものに交換することも可能とされている。
【0027】
また、ペダルユニット38は、図14に示すように、アクセルペダル140と、ブレーキペダル142と、それらアクセルペダル140およびブレーキペダル142を保持するユニット本体144とを備えている。そのユニット本体144は、ペダルユニットブラケット146(図16参照)によって上下方向に移動可能な状態で保持されており、支持台34に設けられた第1ペダルユニット位置調整機構148(図15参照)によって、前後方向の位置を調整することが可能とされている。また、ペダルユニットブラケット146は、支持台34によって上下方向に移動可能に支持されており、支持台34に設けられた第2ペダルユニット位置調整機構150(図16参照)によって、上下方向の位置を調整することが可能とされている。なお、図14には、カバーが取り外された状態のペダルユニット38が図示されている。
【0028】
第1ペダルユニット位置調整機構148は、図15に示すように、上記クランクハンドル62と、前後方向に延びるように配設されるねじロッド152と、そのねじロッド152と螺合するナット154とを有しており、ボールねじ機構によって構成されている。ねじロッド152は、支持台34によって軸心回りに回転可能に保持されるとともに、後端部において、クランクハンドル62に着脱可能に連結されている。そのねじロッド152に、複数のベアリングボール156を介して、ナット154が螺合しており、ユニット本体144の前端部に固定されている。このような構造によって、クランクハンドル62が回転操作されると、ねじロッド152が軸心回りに回転し、ナット154が前後方向に移動することで、ユニット本体144、つまり、ペダルユニット38の前後方向の位置が調整されるのである。
【0029】
また、第2ペダルユニット位置調整機構150は、図16に示すように、上記クランクハンドル62と、上下方向に延びるように配設されるねじロッド160と、そのねじロッド160と螺合するナット162と、クランクハンドル62の回転操作をねじロッド160に伝達するリンク機構164とを有している。リンク機構164は、前後方向に延びるように配設される連結シャフト166と、その連結シャフト166の後端に固定される第1かさ歯車168と、その第1かさ歯車168に噛合する第2かさ歯車170とによって構成されており、その第2かさ歯車170にねじロッド160の上端部が固定されている。そのねじロッド160と連結シャフト166との各々は、支持台34によって各々の軸心回りに回転可能に保持されており、連結シャフト166は、後端部において、クランクハンドル62に着脱可能に連結され、ねじロッド160に、複数のベアリングボール172を介して、ナット162が螺合している。そのナット162は、ユニット本体144を保持するペダルユニットブラケット146に固定されている。このような構造によって、クランクハンドル62が回転操作されると、リンク機構164を介して、ねじロッド160が軸心回りに回転し、ナット162が上下方向に移動することで、ユニット本体144、つまり、ペダルユニット38の上下方向の位置が調整されるのである。
【0030】
検証装置10では、上述したように、ペダルユニット38を上下方向および前後方向の任意の位置に移動させることが可能となっているが、さらに、アクセルペダル140およびブレーキペダル142の各々を個別に移動させることも可能となっている。具体的にいえば、ユニット本体144は、図14に示すように、ペダルユニットブラケット146に保持される連結部材174と、その連結部材174の上面に左右方向に延びるようにして固定される左右方向ガイド板176と、その左右方向ガイド板176に、左右方向スライド機構178を介して、前後方向に延びるようにして設けられる1対の前後方向ガイド板180と、それら1対の前後方向ガイド板180に、前後方向スライド機構182を介して、上下方向に延びるようにして設けられる1対の上下方向ガイド板184とを有している。
【0031】
左右方向スライド機構178は、左右方向ガイド板176の上面に左右方向に延びるようにして設けられる左右方向ガイドレール186と、1対の前後方向ガイド板180の下面に設けられる1対の左右方向スライド体188とを有しており、それら1対の左右方向スライド体188が左右方向ガイドレール186に摺動可能に嵌合されている。また、前後方向スライド機構182は、1対の前後方向ガイド板180の上面に前後方向に延びるようにして設けられる1対の前後方向ガイドレール190と、1対の上下方向ガイド板184の側面に設けられる1対の前後方向スライド体192とを有しており、それら1対の前後方向スライド体192が1対の前後方向ガイドレール190に摺動可能に嵌合されている。
【0032】
そして、1対の上下方向ガイド板184に、上下方向スライド機構194を介して、アクセルペダル140およびブレーキペダル142が設けられている。上下方向スライド機構194は、1対の上下方向ガイド板184の側面に上下方向に延びるようにして設けられる1対の上下方向ガイドレール196と、それら1対の上下方向ガイドレール196に摺動可能に嵌合される1対の上下方向スライド体198とを有しており、1対の上下方向スライド体198に、アクセルペダル140およびブレーキペダル142が連結されている。このような構造によって、アクセルペダル140およびブレーキペダル142の各々を、上下方向,左右方向,前後方向のいずれの方向にも移動させることが可能となっている。
【0033】
また、各スライド機構178,182,194は、各ガイドレール186,190,196と各スライド体188,192,198との相対移動を禁止するストッパ機構200,202,204を有している。各ストッパ機構200,202,204は、ほぼ同じ構造であることから、左右方向スライド機構178の有するストッパ機構200を代表して説明する。ストッパ機構200は、図17に示すように、軸体206と、その軸体206を挿通させた状態で左右方向ガイドレール186を挟持する1対の挟持リング208と、軸体206の一端に取り付けられたレバー210とを有しており、レバー210の操作によって1対の挟持リング208が接近離間する構造とされている。そして、ストッパ機構200が左右方向スライド体188に固定されている。このような構造によって、1対の挟持リング208が離間する方向にレバー210を操作することで、左右方向スライド体188の移動を許容することが可能となっており、1対の挟持リング208が接近する方向にレバー210を操作することで、左右方向スライド体188の移動を禁止することが可能となっている。
【0034】
アクセルペダル140およびブレーキペダル142の各々は、さらに、踏み込み量を変更することが可能となっている。つまり、実際の車両に取り付けられているペダルのように、操作することが可能となっている。詳しく言えば、アクセルペダル140およびブレーキペダル142の各々は、上端部において、上下方向スライド体198に軸支されており、その軸支されている部分にペダル140,142を上下方向スライド体198から離間させる方向に付勢するねじりバネ(図示省略)が設けられている。そして、そのねじりバネの弾性力に抗して、ペダル140,142の上下方向スライド体198からの離間を規制する調整ねじ(図示省略)が、ペダル140,142の上端部に設けられている。このような構造によって、アクセルペダル140およびブレーキペダル142の各々を、操作者が踏み込むことができるようになっている。なお、調整ねじの調整によって、操作者による踏み込み前のペダル位置を変更することも可能となっている。
【0035】
上述したような構造によって、検証装置10においては、ステアリング装置36およびペダルユニット38の各々を上下方向,前後方向のいずれの方向にも移動させることが可能となっており、さらに、アクセルペダル140およびブレーキペダル142の各々を上下方向,前後方向,左右方向のいずれの方向にも移動させることが可能となっている。これにより、ステアリング装置,アクセルペダル,ブレーキペダルの配設位置の異なる複数の車両におけるドライビングポジションの検証を、1台の検証装置10で行うことが可能となる。また、チルト動作,テレスコピック動作,アクセルペダル140等の踏み込み動作も可能とされており、より精度の高いドライビングポジションの検証を行うことが可能となっている。
【0036】
また、検証装置10では、ステアリング装置36およびペダルユニット38を支持する支持台34をも、上下方向,前後方向のいずれの方向にも移動させることが可能となっており、ステアリング装置36およびペダルユニット38を大きく移動させることが可能となっている。これにより、極端にドライビングポジションの異なる複数の車両であっても、1台の検証装置10で検証を行うことが可能となる。具体的にいえば、トラックのドライビングポジションの検証と、スポーツカーのドライビングポジションの検証とを1台の検証装置10で行うことが可能となる。また、このように車種が極端に異なるような場合には、ステアリング径が異なっていたり、アクセルペダル140等の踏み込み前の位置が異なっていることが多い。このような場合であっても、検証装置10では、上述したように、ステアリングホイールを交換することも可能であり、アクセルペダル140等の踏み込み前の位置を調整することも可能となっている。
【0037】
さらに、検証装置10では、ステアリング装置36およびペダルユニット38は検証装置本体20に設けられており、車両用シート12は台座22に設けられている。そして、検証装置本体20には、車輪56が付設されている。これにより、図18に示すように、検証装置本体20を1対の車両用シート12のうちの左側に配置されたものの正面に容易に設置することが可能である。つまり、検証装置10では、左ハンドルの車両におけるドライビングポジションをも検証することが可能となっている。また、検証装置10を、検証装置本体20と台座22とに分離することで、検証装置本体20のコンパクト化を図ることが可能となり、非常に小回りの利く検証装置が実現されている。
【0038】
ちなみに、上記実施例において、検証装置10は、ドライビングポジション検証装置の一例であり、その検証装置10を構成する台座22,ベース32,支持台34,ステアリング装置36,ペダルユニット38は、台座,ベース,支持台,ステアリング装置,ペダルユニットの一例である。ベース32の有するリフト機構44および支持台位置調整機構60は、支持台移動機構の一例であり、複数の車輪56は、ベースに付設される複数の車輪の一例である。ペダルユニット38を構成するアクセルペダル140,ブレーキペダル142は、アクセルペダル,ブレーキペダルの一例であり、第1ペダルユニット位置調整機構148,第2ペダルユニット位置調整機構150,左右方向スライド機構178,前後方向スライド機構182,上下方向スライド機構194は、ペダル位置変更機構の一例である。ステアリング装置36を構成するステアリングホイール78,ステアリングコラム80,ステアリングシャフト110は、ステアリングホイール,ステアリングコラム,ステアリングシャフトの一例であり、第1コラム位置調整機構84,第2コラム位置調整機構86,チルト機構124,テレスコピック機構139は、ステアリングホイール位置変更機構の一例である。
【0039】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。具体的には、例えば、ステアリング装置36,ペダルユニット38を移動させるための機構としてボールねじ機構が、支持台34を前後方向に移動させるための機構としてラックピニオン機構が、支持台34を上下方向に移動させるための機構としてXリンク機構が、アクセルペダル140等を移動させるための機構としてスライド機構が、それぞれ採用されているが、各機構は、現在採用されている機構以外の様々な機構を採用することが可能である。また、上記実施例では、各機構はクランクハンドルの操作、つまり、手動で作動するように構成されていたが、電磁モータ等を採用し、電動で作動するように構成されてもよい。
【0040】
また、上記実施例では、検証装置10を、検証装置本体20と台座22とに分離しているが、検証装置本体のみで検証装置を構成してもよい。つまり、検証装置本体のベースとして、支持台だけでなく車両用シートも配置可能な大きなベースを採用し、その大きなベース上に支持台とともに車両用シートを配置してもよい。このように構成する場合には、支持台を左右方向に移動させるための機構を支持台移動機構として採用することで、左ハンドルの車両のドライビングポジションを検証することが可能となる。
【0041】
また、上記実施例では、ペダルユニット38にアクセルペダル140とブレーキペダル142とが設けられていたが、さらに、クラッチペダル,パーキングブレーキペダル等を設けてもよい。そして、クラッチペダル等を、アクセルペダル140と同様に、スライド機構等を利用して位置調整可能な構造としてもよく、踏み込み量を変更可能な構造としてもよい。
【0042】
また、スピードメータ,タコメータ等の配置されたインストルメントパネルの一部をユニット化し、そのメータユニットをステアリングコラム80に取り付けてもよく、ワイパースイッチレバー,ライトコントロールレバー等を備える操作スイッチユニットをステアリングコラム80に取り付けてもよい。そして、それらメータユニット等も、位置調整可能な構造としてもよい。
【0043】
以下、本発明の諸態様について列記する。
【0044】
(1)車両用シートへの運転者の着座時におけるドライビングポジションを検証するための装置であって、
ベースと、
そのベース上に配設される支持台と、
ステアリングホイールと、そのステアリングホイールを保持した状態で車両用シートに向かって延び出すようにして前記支持台に支持されるステアリングコラムと、前記ステアリングホイールと前記支持台との相対位置を変更可能なステアリングホイール位置変更機構とを有するステアリング装置と、
そのステアリング装置の下方において前記支持台に支持されるアクセルペダルと、そのアクセルペダルの隣において前記支持台に支持されるブレーキペダルと、前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの各々と前記支持台との相対位置を変更可能なペダル位置変更機構とを有するペダルユニットと
を備えたドライビングポジション検証装置。
【0045】
(2)前記ステアリングホイール位置変更装置は、
前記ステアリングコラムを車両用シートに接近離間させる方向に移動させて、前記ステアリングホイールと前記支持台との相対位置を変更する(1)項に記載のドライビングポジション検証装置。
【0046】
(3)前記ステアリングホイール位置変更装置は、
前記ステアリングコラムを上下方向に移動させて、前記ステアリングホイールと前記支持台との相対位置を変更する(1)項または(2)項に記載のドライビングポジション検証装置。
【0047】
(4)前記ステアリングコラムは、
前記ステアリングホイールに連結されるステアリングシャフトを有し、
前記ステアリングホイール位置変更装置は、
前記支持台に対する前記ステアリングシャフトの角度を変更して、前記ステアリングホイールと前記支持台との相対位置を変更する(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のドライビングポジション検証装置。
【0048】
(5)前記ステアリングコラムは、伸縮可能な構造とされ、
前記ステアリングホイール位置変更装置は、
前記ステアリングコラムを伸縮させて、前記ステアリングホイールと前記支持台との相対位置を変更する(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載のドライビングポジション検証装置。
【0049】
(6)前記ペダル位置変更装置は、
前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの各々を車両用シートに接近離間させる方向に移動させて、前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの各々と前記支持台との相対位置を変更する(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載のドライビングポジション検証装置。
【0050】
(7)前記ペダル位置変更装置は、
前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの各々を水平面における前記接近離間させる方向に垂直な方向に移動させて、前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの各々と前記支持台との相対位置を変更する(6)項に記載のドライビングポジション検証装置。
【0051】
(8)前記ペダル位置変更装置は、
前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの各々を上下方向に移動させて、前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの各々と前記支持台との相対位置を変更する(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載のドライビングポジション検証装置。
【0052】
(9)前記ベースは、
下部に付設された複数の車輪を有する(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のドライビングポジション検証装置。
【0053】
(10)前記ベースは、
前記支持台を前記ベース上で移動させる支持台移動機構を有する(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載のドライビングポジション検証装置。
【0054】
(11)前記支持台移動機構は、
前記支持台を車両用シートに接近離間させる方向に移動させる(10)項に記載のドライビングポジション検証装置。
【0055】
(12)前記支持台移動機構は、
前記支持台を上下方向に移動させる(10)項または(11)項に記載のドライビングポジション検証装置。
【0056】
(13)当該ドライビングポジション検証装置は、
さらに、車両用シートが配置される台座を備えた(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載のドライビングポジション検証装置。
【0057】
(14)前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの各々は、
その各々の踏み込み量を変更可能に前記支持台に支持される(1)項ないし(13)項のいずれか1つに記載のドライビングポジション検証装置。
【符号の説明】
【0058】
10:ドライビングポジション検証装置
12:車両用シート
22:台座
32:ベース
34:支持台
36:ステアリング装置
38:ペダルユニット
44:リフト機構(支持台移動機構)
56:車輪
60:支持台位置調整機構(支持台移動機構)
78:ステアリングホイール
80:ステアリングコラム
84:第1コラム位置調整機構(ステアリングホイール位置変更機構)
86:第2コラム位置調整機構(ステアリングホイール位置変更機構)
110:ステアリングシャフト
124:チルト機構(ステアリングホイール位置変更機構)
139:テレスコピック機構(ステアリングホイール位置変更機構)
140:アクセルペダル
142:ブレーキペダル
148:第1ペダルユニット位置調整機構(ペダル位置変更機構)
150:第2ペダルユニット位置調整機構(ペダル位置変更機構)
178:左右方向スライド機構(ペダル位置変更機構)
182:前後方向スライド機構(ペダル位置変更機構)
194:上下方向スライド機構(ペダル位置変更機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートへの運転者の着座時におけるドライビングポジションを検証するための装置であって、
ベースと、
そのベース上に配設される支持台と、
ステアリングホイールと、そのステアリングホイールを保持した状態で車両用シートに向かって延び出すようにして前記支持台に支持されるステアリングコラムと、前記ステアリングホイールと前記支持台との相対位置を変更可能なステアリングホイール位置変更機構とを有するステアリング装置と、
そのステアリング装置の下方において前記支持台に支持されるアクセルペダルと、そのアクセルペダルの隣において前記支持台に支持されるブレーキペダルと、前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの各々と前記支持台との相対位置を変更可能なペダル位置変更機構とを有するペダルユニットと
を備えたドライビングポジション検証装置。
【請求項2】
前記ステアリングホイール位置変更装置は、
前記ステアリングコラムを車両用シートに接近離間させる方向と上下方向との少なくとも一方の方向に移動させて、前記ステアリングホイールと前記支持台との相対位置を変更する請求項1に記載のドライビングポジション検証装置。
【請求項3】
前記ペダル位置変更装置は、
前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの各々を車両用シートに接近離間させる方向と、水平面における前記接近離間させる方向に垂直な方向と、上下方向との少なくとも1つの方向に移動させて、前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの各々と前記支持台との相対位置を変更する請求項1または請求項2に記載のドライビングポジション検証装置。
【請求項4】
前記ベースは、
前記支持台を前記ベース上で移動させる支持台移動機構を有する請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のドライビングポジション検証装置。
【請求項5】
当該ドライビングポジション検証装置は、
さらに、車両用シートが配置される台座を備えた請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載のドライビングポジション検証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−242116(P2012−242116A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109424(P2011−109424)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)