説明

ドラムユニット及び孔版印刷装置

【課題】如何なる画像を印刷する際にも適切にインキ供給を行うことが可能な孔版印刷装置を提供する。
【解決手段】内部にインキローラ15とドクターローラ16とを有する回転自在な版胴9を有し、孔版印刷装置1の装置本体8に着脱自在なドラムユニット21において、インキローラ15とドクターローラ16との間に形成されるインキ溜まり18のインキを版胴9の軸線方向に分割して複数のインキ溜まりブロック53a〜53eを形成し、各インキ溜まりブロック53a〜53eのインキ量を個々に検知する複数のインキ量検知手段54a〜54eを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、版胴の外周面にマスタを巻装して印刷を行う孔版印刷装置に関し、詳しくは版胴内周面にインキを供給するインキ供給手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡便な印刷方法としてデジタル式感熱孔版印刷が知られている。これは、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせたマスタに微細な発熱素子を複数有するサーマルヘッドを接触させ、この発熱素子に対しパルス的に通電を行いながらマスタをプラテンローラ等の搬送手段で搬送することにより、マスタの熱可塑性樹脂フィルムに画像情報に基づいた穿孔画像を熱溶融穿孔製版した後、この穿孔製版されたマスタを多孔性円筒状の版胴に巻装させ、プレスローラ等の押圧手段によって用紙を版胴外周面に押圧させることで版胴内周面に供給されたインキを版胴開孔部及びマスタ穿孔部から滲出させ、このインキを用紙に転移させることにより用紙上に印刷画像を得るものである。
【0003】
上述した孔版印刷を行う孔版印刷装置において、版胴の内周面にその周面を近接配置されたインキローラ及びインキローラの周面にその周面を近接配置されたドクターローラを版胴内部にそれぞれ回転自在に配設し、インキローラとドクターローラとの近接部にインキを補給して断面楔形状のインキ溜まりを形成し、インキ溜まりのインキをインキローラとドクターローラとの隙間を通過させることによりインキローラの周面に所定の層厚で供給し、版胴が押圧手段によって押圧された際にインキローラの周面に供給されたインキが版胴内周面に供給されるという構成が一般的に採用されている。インキ溜まりには、版胴外部に設けられたインキパック内からインキポンプの作動によって吸引されたインキが複数のインキ供給孔を有するインキ供給パイプを介して供給される。これらインキローラ、ドクターローラ、インキ供給パイプ等によって版胴内周面にインキを供給するインキ供給手段が構成される。
【0004】
従来の孔版印刷装置では、インキ溜まりのインキが版胴軸線方向に流出することを防止するため、インキローラの両端近傍の位置にインキ流出防止のための仕切り板が配設されている。この仕切り板は、インキ溜まりを形成するインキがその孔版印刷装置で印刷可能な最大サイズの画像領域を全てカバーすることが可能となる位置に設けられている。従って、図8に示すように最大でA3サイズの印刷が可能な孔版印刷装置においてA4サイズの用紙に印刷を行う場合には、センター基準の孔版印刷装置であればインキ溜まりの両端に画像が形成されない(マスタに穿孔が行われない)領域が生じ、この領域にもインキが供給されることとなる。孔版印刷装置の排版動作ではマスタ1版が廃棄されるため、画像が形成されない部分に供給された余計なインキも排版動作によって廃棄されることとなり、インキ消費量が増大してしまうという問題があった。
この問題点を解決すべく、使用する用紙サイズに応じてインキ溜まりの軸線方向長さを可変し、用紙サイズに対応した最小限のインキ供給量とすることによりインキ消費量を低減させる技術が、例えば「特許文献1」に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−62536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のインキ供給手段では、図8,9に示すようにインキ溜まりにインキ量を検知する検知針を複数本設け、この検知針の検知結果に基づいてインキポンプの動作制御を行っている。すなわち検知針によってインキなしが検知されるとインキポンプを作動させてインキ溜まりにインキを供給し、インキ溜まりのインキが所定量に達するとインキポンプの作動を停止させるという動作を繰り返して行っている。従ってベタ画像等の画像が多い場合にはインキ消費量が多いために上述したサイクルが速くなり、画像が少ない場合にはインキ消費量が少ないために上述したサイクルが遅くなる。
【0007】
ここで、従来のインキ供給手段ではインキ溜まり全体のインキ量を複数本(図示の例では2本)の検知針で検知しているため、図10に示すように検知針の近傍にのみ画像の多い部分が存在する場合にはこれに合わせてインキ供給が行われて画像の少ない部分において過剰なインキ供給となり、図11に示すように検知針の近傍にのみ画像の少ない部分が存在する場合には画像の多い部分においてインキが不足する。インキ供給が過剰となるとインキが仕切り板を乗り越えてインキ漏れが発生する虞があり、インキ供給が不足するとインキ供給が間に合わず画像不良が発生する虞がある。
本発明は上述した各問題点を解決し、如何なる画像を印刷する際にも適切にインキ供給を行うことが可能な孔版印刷装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、内部にインキローラとドクターローラとを有する回転自在な版胴を有し、孔版印刷装置の装置本体に着脱自在なドラムユニットにおいて、前記インキローラと前記ドクターローラとの間に形成されるインキ溜まりのインキを前記版胴の軸線方向に分割して複数のインキ溜まりブロックを形成し、前記各インキ溜まりブロックのインキ量を個々に検知する複数のインキ量検知手段を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のドラムユニットにおいて、さらに前記各インキ溜まりブロックを区切る仕切り板を有し、前記仕切り板は相隣る前記インキ溜まりブロック同士を遮断しないことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のドラムユニットを有する孔版印刷装置であることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の孔版印刷装置において、さらに前記各インキ溜まりブロックにインキを補給するインキ補給手段を有し、前記各インキ量検知手段の検知結果に基づいて前記各インキ溜まりブロックへのインキ補給を個別に制御することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の孔版印刷装置において、さらに前記制御は印刷される画像に基づいて行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インキ溜まりが複数のインキ溜まりブロックに分割され、各インキ溜まりブロックのインキ量を個々に検知する複数のインキ量検知手段を有しているので、インキ量検知手段の近傍にのみ画像の多い部分が存在する場合あるいはインキ量検知手段の近傍にのみ画像の少ない部分が存在する場合においてもインキ溜まりブロック毎にインキ量を検知することができ、インキが過剰に供給されることによるインキ漏れの発生及びインキの供給が不足することによる画像不良の発生を確実に防止することにより良好な印刷を継続的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を適用可能な孔版印刷装置の概略正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いられる印刷部要部の概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いられるドラムユニットの概略図である。
【図4】本発明の一実施形態を採用したインキ溜まりの概略図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるインキ供給制御のブロック図である。
【図6】本発明の他の実施形態におけるインキ供給制御のブロック図である。
【図7】本発明の他の実施形態における動作を説明するフローチャートである。
【図8】従来の問題点を説明するインキ溜まりの概略平面図である。
【図9】従来の問題点を説明するインキ溜まりの概略正面図である。
【図10】従来の問題点を説明するインキ溜まりの概略正面図である。
【図11】従来の問題点を説明するインキ溜まりの概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態を採用した孔版印刷装置を示している。同図において孔版印刷装置1は、印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、画像読取部7等を有している。
【0016】
装置本体8のほぼ中央に配設された印刷部2は、図2に示すように版胴9及びプレスローラ10を有している。版胴9は、インキ供給パイプを兼ねた支軸11に支持された一対のフランジ12と、各フランジ12の外周面に巻装された多孔性支持板9aとから主に構成されており、図示しない版胴駆動手段の作動によって図1において時計回り方向に回転駆動される。支軸11には版胴9の内部にインキを供給するための小さな孔が多数穿設されており、各フランジ12は図示しない軸受を介して支軸11にそれぞれ回転自在に取り付けられている。
【0017】
ステンレスの薄板等で形成される多孔性支持板9aは、多数の孔9bが穿設された開孔部と非開孔部とを有しており、非開孔部には版胴9の一母線と平行な平面を有するステージ部13が設けられ、ステージ部13上にはクランパ14が開閉自在に設けられている。多孔性支持板9aの外側には、ポリエステルあるいはステンレスの細線等からなる図示しないメッシュスクリーンが1〜3層程度巻装されている。
【0018】
版胴9の内部であって支軸11の下方に位置する部位には、インキローラ15及びドクターローラ16等を有するインキ供給手段17が配設されている。インキローラ15は各フランジ12間の支軸11上に固着された図示しない一対の側板間に回転自在に支持されており、図示しない駆動手段からの駆動力によって版胴9と同方向に回転する。ドクターローラ16はその周面とインキローラ15の周面との間に僅かな隙間が生じる位置において前記側板間に回転自在に支持されており、図示しない駆動手段からの駆動力によってインキローラ15とは逆方向に回転する。支軸11より供給されたインキはインキローラ15とドクターローラ16との近接部においてインキ溜まり18を形成し、このインキ溜まり18のインキがインキローラ15とドクターローラ16との近接部を通過してインキローラ15の周面に層状に供給される。インキローラ15の周面に供給されたインキは、後述するプレスローラ10によって版胴9の外周面が押圧された際に版胴9の内周面とインキローラ15とが接触することにより版胴9の内周面に供給され、多孔性支持板9aの孔9bより滲出して用紙へと転写される。インキ溜まり18の構成については後述する。
【0019】
各フランジ12の外方には、図3に示すように版胴9を持ち運ぶためのほぼコ字形状を呈した取手19が、版胴9を軸方向に跨ぐように取り付けられている。取手19は、本体19a、側板19b,19c等から一体的に構成されており、各側板19b,19cが支軸11にそれぞれ取り付けられている。本体19aは、その側板19b側の端部に一対のコロ19dを有しており、各コロ19dを装置本体8設けられた図示しないレール部材に係合させることで装置本体8に対して着脱自在に構成されている。装置奥側に位置する側板19bには支軸11が貫通しており、側板19bより突出した支軸11の先端部は装置本体8に設けられた図示しない位置決め部材に対して係脱自在に支持されている。装置手前側に位置する側板19cには、支軸11へインキを補給するインキ供給ポンプ及び内部にインキを貯容したインキパック等を有するインキ補給手段20が設けられている。インキ補給手段20については後述する。上述した版胴9及び取手19及びインキ補給手段20によってドラムユニット21が構成され、ドラムユニット21は一体的に装置本体8に対して着脱される。
【0020】
版胴9の下方には、一対のアーム部材22によってその支軸両端を回転自在に支持されたプレスローラ10が配設されている。プレスローラ10は、各アーム部材22が図示しない揺動手段によって揺動されることにより、図1に示す版胴9の外周面より離間した離間位置と版胴9の外周面に所定の圧接力で圧接する圧接位置とを選択的に占める。
【0021】
装置本体8の右上部には製版部3が配設されている。製版部3は、マスタ保持部材23、プラテンローラ24、サーマルヘッド25、マスタ切断手段26、マスタ搬送ローラ対27,28等を有している。
マスタ保持部材23は製版部3の図示しないユニット側板に取り付けられており、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせてなるマスタ29をロール状に巻成したマスタロール29aの芯部を回転自在かつ着脱自在に支持する。
【0022】
マスタ保持部材23の左方に配設されたプラテンローラ24は製版部3の図示しないユニット側板に回転自在に支持されており、ステッピングモータ30によって回転駆動される。プラテンローラ24の下方に位置し複数の発熱素子を有するサーマルヘッド25は図示しないユニット側板に支持されており、図示しない付勢手段の付勢力によってその発熱素子面をプラテンローラ24の周面に圧接されている。サーマルヘッド25は、マスタ29の熱可塑性樹脂フィルム面に接触しつつ各発熱素子を選択的に発熱させ、マスタ29を穿孔製版する。
【0023】
プラテンローラ24及びサーマルヘッド25の左方にはマスタ切断手段26が配設されている。図示しないユニット側板に固設された固定刃と、この固定刃に対して移動自在に支持された可動刃とを有するマスタ切断手段26は、図示しないモータの駆動により固定刃に対して可動刃が回転移動あるいは上下動することによってマスタ29を切断する。
【0024】
マスタ切断手段26の左方にはマスタ搬送ローラ対27,28が配設されている。各マスタ搬送ローラ対27,28は図示しないユニット側板にそれぞれ回転自在に支持された駆動ローラと従動ローラとを有しており、それぞれ図示しない駆動手段によって同期して回転駆動される。
【0025】
製版部3の下方には給紙部4が配設されている。給紙部4は、給紙トレイ31、給紙ローラ32、分離ローラ対33、レジストローラ対34等を有している。
上面に多数の用紙Pを積載可能な給紙トレイ31は装置本体8に上下動自在に支持されており、図示しない昇降手段によって上下動される。給紙トレイ31の上面には用紙Pの幅方向の揃えを行う一対のサイドフェンス35が配設されており、各サイドフェンス35は用紙幅方向に向けて互いに同期して移動可能に構成されている。
【0026】
給紙トレイ31の左端上方には、表面に高摩擦抵抗部材を有する給紙ローラ32が配設されている。給紙ローラ32は装置本体8に揺動自在に支持された図示しないブラケットに回転自在に支持されており、給紙トレイ31が上昇した際に所定の圧接力で給紙トレイ31上の最上位の用紙Pに圧接する。給紙ローラ32は給紙モータ36によって回転駆動される。
【0027】
給紙ローラ32の左方には分離ローラ対33が配設されている。分離ローラ対33はそれぞれ表面に高摩擦抵抗部材を有する2つのローラによって構成されており、給紙ローラ32と同期して給紙モータ36によって回転駆動され、用紙Pを分離給送する。
【0028】
分離ローラ対33の左方には、駆動ローラと従動ローラとを有するレジストローラ対34が配設されている。各ローラは装置本体8の図示しない側板間に回転自在に支持されており、図示しない版胴駆動手段からの回転駆動力を図示しない駆動力伝達手段を介して伝達されることにより、版胴9と同期して回転駆動される。
【0029】
装置本体8の左上部には排版部5が配設されている。排版部5は、上排版部材37、下排版部材38、排版ボックス39、圧縮板40等を有している。
上排版部材37及び下排版部材38は、共に駆動ローラ、従動ローラ、無端ベルト等を有しており、図示しない排版駆動手段によって駆動ローラが回転駆動されることにより無端ベルトが移動する。また、下排版部材38は図示しない移動手段によって移動自在に構成されており、図に示す初期位置と無端ベルトが版胴9の外周面に当接する剥離位置とを選択的に占める。
【0030】
内部に使用済みマスタを貯容する排版ボックス39は、装置本体8に対して着脱自在に構成されている。上排版部材37と下排版部材38とによって運ばれた使用済みマスタを排版ボックス39の内部に押し込む圧縮板40は装置本体8に上下動自在に支持されており、図示しない昇降手段によって上下動される。
【0031】
排版部5の下方には排紙部6が配設されている。排紙部6は、剥離爪41、用紙搬送手段42、排紙トレイ43等を有している。
剥離爪41はその基端を装置本体8に揺動自在に支持されており、図示しない爪揺動手段によって揺動されることにより、鋭角状に形成されたその自由端が版胴9の外周面に近接する位置と、クランパ14等の障害物を回避するために版胴9の外周面より離間する離間位置とを選択的に占める。
【0032】
剥離爪41の左下方に配設された用紙搬送手段42は、駆動ローラ、従動ローラ、無端ベルト、吸引ファン等を有しており、図示しない排紙駆動手段によって駆動ローラが回転駆動すると共に吸引ファンが作動することにより、無端ベルト上に用紙Pを吸引しつつ左方へと搬送する。
【0033】
用紙搬送手段42の左方には排紙トレイ43が配設されている。用紙搬送手段42によって搬送される印刷済みの用紙Pが多数積載される排紙トレイ43は、その上面に用紙Pの揃えを行うための1つのエンドフェンス44と一対のサイドフェンス45とを有している。エンドフェンス44は用紙搬送方向と同方向に移動自在であり、各サイドフェンス45は用紙幅方向と同方向に、互いに接離自在に構成されている。
【0034】
装置本体8の上部には画像読取部7が配設されている。画像読取部7は、原稿を載置するコンタクトガラス46、コンタクトガラス46に対して接離自在な圧板47、原稿画像を走査して読み取る走査ユニット48、走査された画像を集束するレンズ49、集束された画像を処理するCCD等の画像読取センサ50等を有している。
【0035】
ここで、本発明の特徴部であるインキ溜まり18の構成について説明する。インキローラ15とドクターローラ16との近接部に形成される断面楔形状のインキ溜まり18は、図4に示すように2枚の流出防止板51によって版胴9の軸線方向に対してインキが流出しないように構成されており、さらに複数(本実施形態では4枚)の仕切り板52によって複数(本実施形態では5個)のインキ溜まりブロック53a〜53eに分割されている。各仕切り板52の下端は流出防止板51のようにインキ溜まり18の底部にまでは到達しておらず、各インキ溜まりブロック53a〜53eは下部において互いに連絡されており、個々が完全には遮断されないように形成されている。各インキ溜まりブロック53a〜53eにはインキ量を検知するインキ量検知手段としての検知針54a〜54eがそれぞれ配設されており、各検知針54a〜54eからのインキ量検知信号は図5に示すインキ供給制御手段55に送られる。
【0036】
インキ補給手段20は、1つの図示しないインキパックと、このインキパックに接続された図5に示す5個のインキ供給ポンプ56a〜56eとを有している。各インキ供給ポンプ56a〜56eはそれぞれ支軸11に接続されており、インキ供給ポンプ56aからのインキはインキ溜まりブロック53aに、インキ供給ポンプ56bからのインキはインキ溜まりブロック53bに、インキ供給ポンプ56cからのインキはインキ溜まりブロック53cに、インキ供給ポンプ56dからのインキはインキ溜まりブロック53dに、インキ供給ポンプ56eからのインキはインキ溜まりブロック53eにそれぞれ供給される。
【0037】
上述の構成に基づき、以下に孔版印刷装置1の動作を説明する。
オペレータによりコンタクトガラス46上に印刷すべき原稿が載置された後、圧板47が閉じられた状態で図示しない製版スタートキーが押下されると、画像読取部7において原稿画像の読取動作が行われる。画像の読み取りは走査ユニット48で原稿画像を走査することにより行われ、読み取られた画像はレンズ49で集束された後に画像読取センサ50に送られる。画像読取センサ50に送られた後に光電変換された画像データ信号は図示しないサーマルヘッドドライバに送られ、この信号に基づいてサーマルヘッド25の各発熱素子が選択的に作動してマスタ29に対する熱溶融穿孔製版が行われる。
【0038】
画像読取動作と並行して、排版部5では版胴9の外周面上から使用済みマスタを剥離する排版動作が行われる。図示しない製版スタートキーが押下されると、図示しない版胴駆動手段が作動して版胴9が回転を開始し、版胴9が所定の排版位置に到達するとその回転が停止する。そして、下排版部材38が作動すると共に剥離位置に移動し、下排版部材38によって版胴9上の使用済みマスタがすくい上げられる。その後、版胴9が回転駆動されると共に上排版部材37が作動し、版胴9上の使用済みマスタは各排版部材37,38によって搬送されて排版ボックス39内に貯容される。その後、圧縮板40が作動して排版ボックス39内の使用済みマスタが圧縮されると共に版胴9が所定の給版位置まで回転して停止し、クランパ14が開放されて孔版印刷装置1は給版待機状態となる。
【0039】
排版動作と並行して、製版部3では製版動作が行われる。図示しない製版スタートキーが押下されると、プラテンローラ24、各マスタ搬送ローラ対27,28がそれぞれ回転し、マスタロール29aよりマスタ29が引き出される。引き出されたマスタ29はサーマルヘッド25を通過する際に穿孔され、その熱可塑性樹脂フィルム面に製版画像を形成されつつ印刷部2へと搬送される。そしてマスタ29の先端がクランパ14によって保持可能な位置まで搬送されたと判断されるとクランパ14が閉じられ、製版されたマスタ29はその先端部を版胴9の外周面上に保持される。その後、版胴9がマスタ29の搬送速度と同じ周速度で回転し、マスタ29の版胴9への巻装動作が行われる。そして1版分のマスタ29が製版されると、プラテンローラ24及び各マスタ搬送ローラ対27.28の作動が停止されると共にマスタ切断手段26が作動してマスタ29が切断される。切断されたマスタ29は版胴9の回転によって製版部3より引き出され、マスタ29の巻装後に版胴9がホームポジションで停止することにより製版動作及び給版動作が完了する。
【0040】
給版動作に引き続き版付け動作が行われる。版胴9がホームポジションで停止すると、給紙ローラ32及び分離ローラ対33が回転して給紙トレイ31上より最上位の用紙Pが引き出されると共に、版胴9が図1において時計回り方向に低速で回転駆動される。引き出された用紙Pは1枚だけ分離給送され、その先端をレジストローラ対34に挟持される。そして、版胴9に巻装されたマスタ29の版胴回転方向における画像領域先端部がプレスローラ10との接触部に到達する所定のタイミングでレジストローラ対34が回転し、用紙Pが版胴9とプレスローラ10との接触部に向けて給送される。レジストローラ対34の回転とほぼ同時に図示しない揺動手段の作動によりプレスローラ10がその周面を版胴9の外周面に圧接させ、給送された用紙Pが版胴9上のマスタ29に圧接される。この押圧動作によりプレスローラ10と用紙Pとマスタ29と版胴9とが圧接し、インキローラ15によって版胴9の内周面に供給されたインキが多孔性支持板9aの孔9bより滲出し、マスタ29の多孔性支持体に充填された後にマスタ29の穿孔部を介して用紙Pに転写され、いわゆる版付けが行われる。
【0041】
版付けによって画像を転写された用紙Pは、剥離爪41によって版胴9の外周面より剥離され、下方へと落下して用紙搬送手段42へと送られた後、用紙搬送手段42によって吸引搬送されて排紙トレイ43上に排出される。その後、版胴9が再びホームポジションまで回転して停止し、版付け動作を終えて孔版印刷装置1は印刷待機状態となる。
【0042】
孔版印刷装置1が印刷待機状態となった後、図示しない操作パネル上において各種印刷条件が入力された後に図示しない試し刷りキーが押下されると、版胴9が版付け時よりも高速である設定された印刷速度に応じた周速度で回転すると共に給紙部4より用紙Pが1枚だけ給送され、版付け時と同様に試し刷りが行われる。試し刷りによって画像位置及び画像濃度等が確認され、図示しない操作パネル上において印刷枚数が設定された後に図示しない印刷スタートキーが押下されると、給紙部4から用紙Pが連続的に給送されて試し刷り時と同様に印刷動作が行われる。そして設定された印刷枚数が消化されると、版胴9がホームポジションで停止して孔版印刷装置1は再び印刷待機状態となる。
【0043】
上述した版付け時及び試し刷り時及び印刷時において、インキ溜まり18のインキはインキローラ15の周面、版胴9の内周面、マスタ29を介して用紙Pへと転写されて消費されることとなる。このインキ消費時において、インキ溜まり18が複数のインキ溜まりブロック53a〜53eに分割され、各インキ溜まりブロック53a〜53eのインキ量を個々に検知する検知針54a〜54eを有しているので、検知針の近傍にのみ画像の多い部分が存在する場合あるいは検知針の近傍にのみ画像の少ない部分が存在する場合においてもインキ溜まりブロック53a〜53e毎にインキ量を検知することができ、インキが過剰に供給されることによるインキ漏れの発生及びインキの供給が不足することによる画像不良の発生を確実に防止することにより良好な印刷を継続的に行うことができる。また、各インキ溜まりブロック53a〜53eが仕切り板52によって完全には遮断されていないので、隣接するインキ溜まりブロック間における極端な画像品質の低下を防止することができる。
【0044】
図6は、本発明の他の実施形態に用いられる制御ブロック図を示している。図6において、スキャナ57は原稿画像を読み取り画像データを出力する機能を有し、画像処理IC58はスキャナ57によって読み取られた画像データに対して変倍、フィルタ、誤差拡散、ディザ処理等の各種画像処理を施す機能を有していて、共に上述した孔版印刷装置1の画像読取部7に設けられる。画像処理IC58では、各インキ溜まりブロック53a〜53eに対応した画像領域における穿孔画像をカウントする機能を有している。各インキ溜まりブロック53a〜53eに対応した画像領域における穿孔画像をカウントした値は、内部レジスタに保存されて孔版印刷装置1を制御する制御手段59が有するCPU60から読み出しが可能に構成されている。穿孔画像のカウンタは製版開始前にリセット(0に設定)され、原稿読取中には原稿の穿孔画像に応じたカウントアップ動作を行う。原稿読取後もそのカウント値は内部レジスタに保持され、印刷時におけるインキ供給パラメータとして用いられる。
【0045】
プロッタ61は、画像処理されたデータを元にサーマルヘッド等を用いてマスタに穿孔製版を行う機能を有し、上述した孔版印刷装置1の製版部3に設けられる。制御手段59を構成するCPU60はインキ供給制御手段55に接続されており、画像処理ICの内部レジスタに保存された各インキ溜まりブロック53a〜53eの穿孔画像パラメータ(カウンタ値)と各インキ溜まりブロック53a〜53eからのインキ量検知情報を元に総合的な判断を行い、各インキ供給ポンプ56a〜56eを適宜に駆動して各インキ溜まりブロック53a〜53eに対するインキ供給を個別に行う機能を有する。以下、この実施形態における孔版印刷装置の動作を図7に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0046】
図示しない製版スタートキーが押下されると(ST1)、プロッタ61において図示しない白基準板の読み取りが行われ(ST2)た後に画像処理ICの内部レジスタがリセットされる(ST3)。その後、スキャナ57において原稿の読取動作が行われ(ST4)、各インキ溜まりブロック53a〜53eに対応した画像領域における穿孔画像をカウントした値が内部レジスタに保持される(ST5)。制御手段59は各検知針54a〜54eからのインキ量検知信号に基づいて各インキ溜まりブロック53a〜53eのインキ量を検知し(ST6)、各インキ溜まりブロック53a〜53eのインキ量と内部レジスタに保持された穿孔画像カウント値とを元に各インキ供給ポンプ56a〜56eの作動を個別に制御して各インキ溜まりブロック53a〜53eへのインキ供給を行う(ST7)。そして、設定された印刷枚数の出力が完了すると印刷動作が完了する(ST8)。
【0047】
上述の構成によれば、画像読取の段階でマスタへの穿孔状況を把握して前もって各インキ溜まりブロック53a〜53eに対するインキ供給量を制御することができ、画像読取に連動してインキ供給量を制御することにより製版画像に応じたインキ消費に対して柔軟な対応を行うことで印刷画像品質を向上することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 孔版印刷装置
8 装置本体
9 版胴
15 インキローラ
16 ドクターローラ
18 インキ溜まり
20 インキ補給手段(再給紙レジストローラ)
21 ドラムユニット
52 仕切り板
53a〜e インキ溜まりブロック
54a〜e インキ量検知手段(検知針)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にインキローラとドクターローラとを有する回転自在な版胴を有し、孔版印刷装置の装置本体に着脱自在なドラムユニットにおいて、
前記インキローラと前記ドクターローラとの間に形成されるインキ溜まりのインキを前記版胴の軸線方向に分割して複数のインキ溜まりブロックを形成し、前記各インキ溜まりブロックのインキ量を個々に検知する複数のインキ量検知手段を有することを特徴とするドラムユニット。
【請求項2】
請求項1記載のドラムユニットにおいて、
前記各インキ溜まりブロックを区切る仕切り板を有し、前記仕切り板は相隣る前記インキ溜まりブロック同士を遮断しないことを特徴とするドラムユニット。
【請求項3】
請求項1または2記載のドラムユニットを有することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項4】
請求項3記載の孔版印刷装置において、
前記各インキ溜まりブロックにインキを補給するインキ補給手段を有し、前記各インキ量検知手段の検知結果に基づいて前記各インキ溜まりブロックへのインキ補給を個別に制御することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項5】
請求項4記載の孔版印刷装置において、
前記制御は印刷される画像に基づいて行われることを特徴とする孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−162799(P2010−162799A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7981(P2009−7981)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)