説明

ドラム式洗濯乾燥機

【課題】本体内のコンパクトなスペースで効率よく熱交換を行い、効果的に除湿する。
【解決手段】水受け槽23と連通するとともに熱交換部材47を有する熱交換経路42と、熱交換経路42と連通して排出された空気を送風手段38に導く送風経路39と、熱交換部材47に熱交換経路42内の空気を冷却するための水を給水する冷却給水手段48とを備え、水受け槽23は前部水受け槽と後部水受け槽とを有し、熱交換経路47は、熱交換部材47により仕切られた下部熱交換経路42aと上部熱交換経路42bとを有し、熱交換部材47は前部水受け槽と後部水受け槽との係合面に延設したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転ドラム内で洗濯、すすぎ、脱水、乾燥などの各行程を逐次制御するドラム式洗濯乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のドラム式洗濯乾燥機は図4に示すように構成していた。以下、その構成について説明する。図4に示すように、水受け槽101と連通し熱交換部材102を設けた熱交換経路103と、前記熱交換経路103と連通して排出された空気を前記送風手段104に導く送風経路105と、前記熱交換部材102に冷却水を給水する冷却水給水手段106を設け、前記熱交換経路103は、前記熱交換部材102により仕切られた下部熱交換経路103aと上部熱交換経路103bを有するとともに、前記熱交換部材102は、冷却水の流れる面の下流部に冷却水の流れを遅くする流速低下手段107を設けたものである。
【特許文献1】特開2007−111411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の構成では、熱交換部材が前部水受け槽の前端から後部水受け槽の中ほどまで延設して設けられていたので、冷却水が熱交換部材から落ち、下部熱交換経路に達するまでの時間が短かったため、冷却水と熱交換経路内の水との熱交換が十分に行われず、回転ドラムから排気された空気の除湿を十分に行いという課題を有していた。
【0004】
本発明の目的は上記従来の課題を解決するもので、コンパクトでかつ乾燥効率の高い熱交換器を設けたドラム式洗濯乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために本発明のドラム式洗濯乾燥機は、前記水受け槽は前部水受け槽と後部水受け槽とを有し、前記熱交換経路は、前記熱交換部材により仕切られた下部熱交換経路と上部熱交換経路とを有し、前記熱交換部材は前部水受け槽と後部水受け槽との係合面と略同一平面上まで延設したものである。
【0006】
これにより、冷却水が熱交換部材から落ち下部熱交換経路に達するまでの落下時間を十分に確保することができ、冷却水との熱交換が効率よく行われ、熱交換経路内での除湿性能も向上させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のドラム式洗濯乾燥機は、本体内のコンパクトなスペースで熱交換を行うことができるとともに、除湿性能の向上により乾燥効率が上がり、乾燥後の乾きむらを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、周壁に透孔が設けられた回転ドラムと、前記回転ドラムを内包する水受け槽と、前記回転槽内に風を送るための送風手段と、前記送風手段により送風される風を加熱する加熱手段と、前記水受け槽と連通するとともに熱交換部材を有する熱交換経路と、前記熱交換経路と連通して排出された空気を前記送風手段に導く送風経路と、前記熱交換部材に前記熱交換経路内の空気を冷却するための水を給水する冷却給水手段と、を備え
、前記水受け槽は前部水受け槽と後部水受け槽とを有し、前記熱交換経路は、前記熱交換部材により仕切られた下部熱交換経路と上部熱交換経路とを有し、前記熱交換部材は前部水受け槽と後部水受け槽との係合面と略同一平面上まで延設したことにより、冷却水が熱交換部材から落ち下部熱交換経路に達するまでの落下時間を十分に確保することができ、冷却水との熱交換が効率よく行われ、熱交換経路内での除湿性能も向上させることができる。
【0009】
乾燥行程時に、湿気を有する空気を除湿するために、従来以上の量の空気と接することで冷却水との熱交換作用が効率よく行われ、効率よく除湿されることにより、乾燥効率を上げるとともに、乾燥後の乾きむらを低減することができる。
【0010】
第2の発明は、特に、熱交換経路は、水受け槽と連通する排気口を熱交換部材の下方に設け、送風経路との接続部を前記熱交換部材の上方に設け、前記熱交換部材の上面および下面にて略U字状の経路を成す構成としたことにより、熱交換経路は、熱交換部材を挟んでその両側に略U字状に構成することができるので、限られたスペースを有効利用したコンパクトな構成とすることができる。
【0011】
第3の発明は、特に、板状の熱交換部材の上面には、冷却水が流れる方向に上端から下端にかけて凹状のスリット溝を形成したことにより、熱交換部材上に流れる冷却水の流速を低減させ、熱交換経路に飛散した冷却水の落下速度も遅くでき、湿った温風との接触時間を長くすることができるので、効率よく熱交換作用が行われ、効率よく除湿される。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態におけるドラム式洗濯乾燥機の縦断面図、図2は同ドラム式洗濯乾燥機の他の部位の縦断面図、図3は同ドラム式洗濯乾燥機の熱交換経路の斜視図である。
【0014】
図1に示すように、回転ドラム21は、有底円筒形に形成し外周部に多数の透孔22を全面に設け、水受け槽23内に回転自在に配設している。回転ドラム21の回転中心に傾斜方向に回転軸24を設け、回転ドラム21の軸心方向を正面側から背面側に向けて下向きに傾斜させて配設している。この回転軸24に、水受け槽23の背面に取り付けたモータ25を連結し、回転ドラム21を正転、逆転方向に回転駆動する。回転ドラム21の内壁面に数個の突起板26を設けている。
【0015】
水受け槽23の正面側の上向き傾斜面に設けた開口部を蓋体27により開閉自在に覆い、この蓋体27を開くことにより衣類出入口28を通して回転ドラム21内に洗濯物を出し入れできるようにしている。蓋体27を上向き傾斜面に設けているため、洗濯物を出し入れする際、腰を屈めることなく行うことができる。
【0016】
水受け槽23は本体29よりばね体30とダンパー31により揺動可能に吊り下げており、水受け槽23の下部に排水経路32の一端を接続し、排水経路32の他端を排水弁33に接続して水受け槽23内の洗濯水を排水するようにしている。給水弁34は給水経路35を通して水受け槽23内に水を給水するものである。水位検知手段36は水受け槽23内の水位を検知するものである。
【0017】
なお、本実施の形態では、回転ドラム21の回転中心に傾斜方向に回転軸24を設け、回転ドラム21の軸心方向を正面側から背面側に向けて下向きに傾斜させて配設している
が、回転ドラム21の回転中心に水平方向に回転軸24を設け、回転ドラム21軸心方向を水平方向に配設してもよい。
【0018】
図2において、図1とは別の断面図で乾燥機能の構成について説明する。乾燥機能は、ヒータ(加熱手段)37、送風ファン(送風手段)38、および、そのヒータ37と送風ファン38とを内部に収容するファンケース(送風経路)39を有し、ファンケース39は本体29に取り付けられている。水受け槽23には、水受け槽23内の空気を取り入れる温風取入れ口40を水受け槽23の胴部に設け、温風送風口41を水受け槽23の背面に設けている。また、水受け槽23は、前部水受け槽23aと後部水受け槽23bとに分割されており、それらを係合して作成されている。
【0019】
また、この水受け槽23には、一端が温風取入れ口40に連通するように熱交換経路42を一体に設け、その熱交換経路42の他端は、第1蛇腹ホース(送風経路)43を介してファンケース39の吸気端39aに接続されている。一方、ファンケース39の排気端39bは、一端が水受け槽23の温風送風口41に連通するように水受け槽23に一体に設けられた背面送風経路(送風経路)44の他端に第2蛇腹ホース45を介して接続されている。また、回転ドラム21の背面には、温風送風口41の対応位置に背面透孔46が設けられ、温風送風口41からの送風が、回転ドラム21内に送風されるよう構成されている。
【0020】
熱交換経路42には温風取入れ口40の上方に正面側から背面側に向けて下向きに傾斜させた板状の熱交換部材47が取り付けられており、熱交換経路42は、熱交換部材47により下部熱交換経路42aと上部熱交換経路42bに分割され、その下部熱交換経路42aと上部熱交換経路42bとは、連通口42cを介して熱交換部材47の下端部47b側で連通しており、その経路は、略U字状をなしている。冷却用給水弁(冷却水供給手段)48は、冷却水ホース49を介し給水口金部50から熱交換部材47の上端部47a側に冷却水を給水するもので、冷却用給水弁48と冷却水ホース49と給水口金部50とで冷却水給水手段を構成している。
【0021】
ここで、熱交換部材47は、前部水受け槽23aと後部水受け槽23bとの係合面と略同一平面上まで延設しているので、冷却水が熱交換部材47から落ち下部熱交換経路42aに達するまでの落下時間を十分に確保することができ、冷却水との熱交換が効率よく行われ、熱交換経路42内での除湿性能も向上させることができる。また、乾燥行程時に、湿気を有する空気を除湿するために、従来以上の量の空気と接することで冷却水との熱交換作用が効率よく行われ、効率よく除湿されることにより、乾燥効率を上げるとともに、乾燥後の乾きむらを低減することができる。
【0022】
図3は、熱交換部材47の断面図である。熱交換部材47の上面47cには、冷却水の流れる方向と略直角に複数本の所定の高さを有するリブ(流速低下手段)53を設けている。このリブ53は、熱交換部材47の冷却水の流れる上面47cから突出させて冷却水が衝突するように設けてあり、ここで冷却水の流れを遅くするとともに、リブ53に衝突した冷却水が上部熱交換経路42bへ飛散する。そして、この飛散した冷却水がファンケース(送風経路)39側へ吸込まれないように、給水口金部50から冷却水が供給される熱交換部材47の上端部47a側や中間部分にはリブ53は設けず、上面47cの下流部のみに設けている。
【0023】
すなわち、リブ(流速低下手段)53は、上面47cの下流部のみに設けているので、上部熱交換経路42bを通過した空気が流れるファンケース39の吸気端39aに接続されている第1蛇腹ホース(送風経路)43の入口から離れた位置に配設することができ、リブ53に衝突して上部熱交換経路42bへ飛散した冷却水が、上部熱交換経路42bを
通過する空気とともに、送風経路に入るのを防止することができるものである。
【0024】
上記構成になるドラム式洗濯乾燥機は、制御装置54による制御動作により洗濯行程、すすぎ行程、脱水行程および乾燥行程が実行される。
【0025】
上記構成において動作を説明する。なお、洗濯行程から脱水行程までの動作は従来例の動作と同じであるので説明を省略する。
【0026】
図2において、乾燥行程では、白抜き矢印で示すように、送風ファン38の回転により送風された空気は、ヒータ37によって所定温度に加熱され、第2蛇腹ホース45および背面送風経路44を介して、温風送風口41から水受け槽23内に送風され、さらに背面透孔46から回転ドラム21内に送風される。その加熱された温風は、回転ドラム21内の撹拌されている状態の湿った洗濯物から水分を奪い、湿気を有する温風となる。その後、湿気を有する温風は、回転ドラム21内から透孔22を通り、水受け槽23に排出され、さらに、温風取入れ口40から熱交換経路42に送風される。
【0027】
このとき、冷却用給水弁48はON状態となっており、冷却水は給水口金部50から熱交換部材47の上端部47a側に落下し、破線矢印のように熱交換部材47の上面47c下端部47bに向かって流れ、熱交換部材47の下端部47bの先端部から下部熱交換経路42a側に落下する。そして、その冷却水は下部熱交換経路42aの底面に設けられ水受け槽23と連通した水抜き穴52から水受け槽23内に排出され、排水経路32を介して機外に排出される。
【0028】
温風取入れ口40から熱交換経路42の下部熱交換経路42a内に送られた湿った温風は、まず、熱交換部材47の下面47dと接触する。このとき、熱交換部材47の上面47cを流れている冷却水により熱交換部材47の下面47dも冷却されているので、湿った温風とその熱交換部材47の下面47dとの間で熱交換作用が行われ、湿った温風は除湿される(第1除湿工程)。
【0029】
さらに、湿った温風は、連通口42cを介して熱交換部材47の下端部47b側で上部熱交換経路42bに送られるが、その際、湿った温風は、熱交換部材47の下端部47bから落下する冷却水を巻き上げて飛散させ、その飛散した冷却水と熱交換作用が行われ、湿った温風は除湿されることとなる(第2除湿工程)。
【0030】
その後、湿った温風は、上部熱交換経路42bに送られ、熱交換部材47の上面47cおよびそこを流れる冷却水と接触する。このとき、冷却水の流れる方向と湿った温風が流れる方向とは対向している。これにより、湿った温風は、熱交換部材47の上面47cおよびそこを流れる冷却水と熱交換作用が行われ、湿った温風は除湿されることとなる(第3除湿工程)。
【0031】
この第3除湿工程における熱交換部材47の上面47cの冷却水の流れを図3を用いて説明する。熱交換部材47の上端部47a側の上面47cに落下した冷却水は、矢印で示すように熱交換部材47の上面47cを下端部47bに向かって流れ落ちる。その際、熱交換部材47の上面47cの上端部47a側には、リブ53は設けていないので冷却水の流れる速度は速く、熱交換部材47の下端部47b近傍にはリブ53が設けられているので、流れ落ちる速度が遅くなる。
【0032】
湿った温風は、熱交換部材47の下端部47bから落下する冷却水を巻き上げて飛散させ、また、リブ53に衝突して飛散した冷却水と熱交換作用が行われので、そこでの速度が遅いため、湿った温風との接触時間を長くすることができ、その湿った温風は、そこを
流れる冷却水と効率よく熱交換作用が行われ、効率よく除湿される。
【0033】
このように、第1除湿工程、第2除湿工程および第3除湿工程の3つの除湿工程を経た湿った温風は、効率よく冷却され除湿された空気となり、第1蛇腹ホース43を介してファンケース39の吸気端39aからファンケース39内に送られ、送風ファン38に至ることとなる。
【0034】
上記のような空気の循環により、洗濯物は徐々に乾燥され、所定時間経過後、または、洗濯物が所定の乾燥度になると乾燥行程を終了する。
【0035】
このようにして、乾燥行程において、湿った温風は効率よく除湿されるので、乾燥行程の時間を短縮することができるとともに、乾燥後の乾きむらを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかるドラム式洗濯乾燥機は、本体内のコンパクトなスペースで効率よく熱交換を行うことができるとともに、除湿性能の向上により乾燥効率が上がり、乾燥後の乾きむらを低減することができるので、略水平方向または斜め方向に回転中心軸を有する回転ドラム内で洗濯、すすぎ、脱水、乾燥などの各行程を逐次制御するドラム式洗濯乾燥機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態のドラム式洗濯乾燥機の縦断面図
【図2】同ドラム式洗濯乾燥機の別の部位での縦断面図
【図3】同ドラム式洗濯乾燥機の熱交換経路の斜視図
【図4】従来のドラム式洗濯乾燥機の一部切欠斜視図
【符号の説明】
【0038】
21 回転ドラム
23 水受け槽
29 本体
37 ヒータ(加熱手段)
38 送風ファン(送風手段)
39 ファンケース(送風経路)
42 熱交換経路
47 熱交換部材
48 冷却用給水弁(冷却水供給手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁に透孔が設けられた回転ドラムと、前記回転ドラムを内包する水受け槽と、前記回転槽内に風を送るための送風手段と、前記送風手段により送風される風を加熱する加熱手段と、前記水受け槽と連通するとともに熱交換部材を有する熱交換経路と、前記熱交換経路と連通して排出された空気を前記送風手段に導く送風経路と、前記熱交換部材に前記熱交換経路内の空気を冷却するための水を給水する冷却給水手段と、を備え、前記水受け槽は前部水受け槽と後部水受け槽とを有し、前記熱交換経路は、前記熱交換部材により仕切られた下部熱交換経路と上部熱交換経路とを有し、前記熱交換部材は前部水受け槽と後部水受け槽との係合面と略同一平面上まで延設したドラム式洗濯乾燥機。
【請求項2】
熱交換経路は、水受け槽と連通する排気口を熱交換部材の下方に設け、送風経路との接続部を前記熱交換部材の上方に設け、前記熱交換部材の上面および下面にて略U字状の経路を成す構成とした請求項1に記載のドラム式洗濯乾燥機。
【請求項3】
板状の熱交換部材の上面には、冷却水が流れる方向に上端から下端にかけて凹状のスリット溝を形成した請求項1または2に記載のドラム式洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−94163(P2010−94163A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265054(P2008−265054)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】