説明

ドラム式洗濯機

【課題】吊り上げ時の受筒ユニットのバランス取りが容易であり、組み立て時の作業性を向上させたドラム式洗濯機を提供すること。
【解決手段】洗濯水が供給される受筒ユニット3と、前記受筒ユニット3の上部に設けられ、フックを引掛ける引掛け部52とを備え、引掛け部52は、受筒ユニット3の重心点Aの鉛直平面上に設けることによって、吊り上げ時の受筒ユニット3のバランス取りが容易であり、組み立て時の作業性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽内に配設した洗濯槽又は回転ドラムを回転駆動することにより洗濯、すすぎ、脱水の各工程を実施する洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドラム式洗濯機は、回転ドラムの回転軸を略水平または傾斜させて配設している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来例を図4を用いて説明する。図4は、従来のドラム式洗濯機の断面図である。受筒ユニット95は、水槽93内に回転ドラム92を収容し、回転ドラム92の回転軸92aを水槽93の背面に設けられた軸受68で軸支すると共に回転軸92aにドラム駆動モータ97を連結して構成されている。受筒ユニット95は洗濯機筐体96内に前上がりの状態に傾斜させて配設され、洗濯機筐体96の基底部に取り付けられた左右一対の防振ダンパー70によって、その重量が支持されている。受筒ユニット95は、その背面側に軸受68やドラム駆動モータ97などの重量の大きな構成要素が取り付けられているため、重心位置は背面寄りにあり、防振ダンパー70は受筒ユニット95をその重心位置より正面側寄りの下方で支持している。更に、水槽93の上部に固定された上部支持金具75と洗濯機筐体96の上面との間に第1のコイルバネ71が架設され、受筒ユニット95を正面側及び上方側に向けて付勢している。コイルバネ71aの架設により重心位置より正面側寄りで防振ダンパー70により支持された受筒ユニット95が背面側に倒れる状態になるのが補正される。コイルバネ71aに加えて受筒ユニット95の防振ダンパー70による支持高さ位置より下方の背面と、洗濯機筐体96の背面との間にコイルバネ71bを架設することで、受筒ユニット95が背面側に倒れる状態をより確実に補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−137643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなドラム式洗濯機の製品組立工程においては、受筒ユニットを本体へ設置する際に、受筒ユニットをクレーン等により吊り上げて本体内へ装着する。しかしながら、前記従来構成のドラム式洗濯機の場合、重量の大きな構成要素が取り付けられているため、重心位置が背面寄りにあり、吊り上げた際のバランスが取れず受筒が傾いてしまう。そのため、本体への取り付け作業が困難であるという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、吊り上げ時の受筒ユニットのバランス取りが容易であり、組み立て時の作業性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明のドラム式洗濯機は、洗濯水が供給される受筒ユニットと、前記受筒ユニットの上部に設けられ、フックを引掛ける引掛け部とを備え、前記引掛け部は、前記受筒ユニットの重心点の鉛直平面上に設けたものである。
【0008】
これによって、吊り上げ時の受筒ユニットのバランス取りが容易であり、組み立て時の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドラム式洗濯機は、受筒吊り上げ式の組み立て工程において、受筒ユニットのバランス取りを容易に行えるので、組み立て時の作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1のドラム式洗濯機の断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1の受筒ユニットの上面図(b)本発明の実施の形態1の受筒ユニットの側面図
【図3】(a)本発明の実施の形態2の受筒ユニットの上面図(b)本発明の実施の形態2の受筒ユニットの側面図
【図4】(a)本発明の実施の形態3の受筒ユニットの上面図(b)本発明の実施の形態3の受筒ユニットの側面図
【図5】従来のドラム式洗濯機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明のドラム式洗濯機は、洗濯水が供給される受筒ユニットと、前記受筒ユニットの上部に設けられ、フックを引掛ける引掛け部とを備え、前記引掛け部は、前記受筒ユニットの重心点の鉛直平面上に設けたものである。
【0012】
このような構成により、吊り上げ時の受筒ユニットのバランス取りが容易であり、組み立て時の作業性を向上させることができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明のドラム式洗濯機は、前記受筒ユニットが上部に錘を備え、前記錘に引掛け部を設けたものである。このような構成により、スペース、受筒ユニット成形の金型構成等の都合により、受筒ユニットの本体部に引掛け部を設けることが困難な際にも、受筒ユニットに引掛け部を形成することができる。また、受筒ユニット本体部が樹脂成形されている場合に引掛け部を形成すると、強度が不十分になる可能性があるが、錘に引掛け部を取り付けることで、引掛け部の破壊に対する安全率を向上させることができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1または2の発明のドラム式洗濯機は、前記引掛け部を複数備えたものである。このような構成により、部品、或いは組立てのバラツキによって生じる傾きを、複数の引掛け部で微調整することにより、同様の傾き角度を維持することができる。また、複数の引掛け部を設けているので、それぞれの引掛け部に加わる応力を分散することができ、引掛け部の破壊に対する安全率を向上させることができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態1〜3について、図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1のドラム式洗濯機の断面図を示すものである。
【0017】
洗濯槽である回転ドラム5と、回転ドラム5を収容する受筒ユニット3とを水平方向から前面上向き方向に角度θで傾斜させて洗濯機筐体2内に配設している。洗濯機筐体2の正面を傾斜させた傾斜面に設けられた扉体8から回転ドラム5内への洗濯物の出し入れを容易にした斜めドラム形式のドラム式洗濯機1に構成されている。
【0018】
回転ドラム5は、有底円筒形の開口部側を洗濯機筐体2の正面側に、底面側を洗濯機筐体2の背面側にして受筒ユニット3内に回転可能に収容されている。回転ドラム5の回転軸心Rは正面側から背面側に向けて角度θで下向き傾斜となっており、受筒ユニット3内は回転ドラム5とほぼ同角度で配置されている。
【0019】
回転軸15は受筒ユニット3の背面に設けられた軸受16で軸支されている。回転軸15には従動プーリ18が装着され、受筒ユニット3の下面に取り付けられたドラム駆動モータ4の回転駆動軸に装着された駆動プーリ17との間に駆動ベルト19が架設されたベルト駆動構造に構成され、ドラム駆動モータ4によって回転ドラム5は回転駆動される。
【0020】
回転ドラム5の周面には多数の透孔20が形成されて受筒ユニット3内との間で水の通水および空気の通気ができるように構成されている。回転ドラム5の内周面の複数位置には撹拌突起21が設けられ、回転ドラム5の回転により洗濯物を上方に持ち上げ、上方から落下させる叩き洗いの作用がなされるように構成されている。
【0021】
また、受筒ユニット3は、本体3aと蓋体3bとを連結した構造に形成され、軽量化を図ると同時に様々な構成要素の構築及び接続が容易に行い得るように樹脂成形によって形成されている。
【0022】
受筒ユニット3は、図示しないサスペンション構造により洗濯機筐体2内に支持される。洗濯機筐体2を構成する側板6は制振鋼板等により形成されている。洗濯機筐体2は要所に補強部材、制振部材などを配している。側板6は樹脂成形されている台枠25上に配設されており、また、受筒ユニット3は台枠25上にダンパ(図示せず)を介して揺動可能に配設されている。台枠25は防振機能を備えた複数の防振支持脚24を底部に設けている。
【0023】
図2(a)は、本発明の実施の形態1の受筒ユニットの上面図である。図2(b)は、本発明の実施の形態1の受筒ユニットの側面図である。
【0024】
図2において受筒ユニット3の上部には、フックを引掛ける引掛け穴52が設けられている。引掛け穴52は受筒ユニット3の重心点Aの鉛直平面上に位置している。
【0025】
本発明の実施の形態1によれば、上記構成により、受筒ユニット3を吊り上げた状態においても、製品状態での受筒ユニット3の傾き角度と同様の傾き角度を維持することができる。よって、組み立て時において本体に設置する際のサスペンション等の接続において、容易に作業遂行ができるので作業性を向上させることができる。
【0026】
また、受筒ユニット3は吊り上げ時の受筒ユニットのバランス取りが容易であり、本体への配置時にフック50が外れて落下してしまうなどの危険を回避することができる。
【0027】
(実施の形態2)
図3(a)は、本発明の実施の形態2の受筒ユニットの上面図である。図3(b)は、本発明の実施の形態2の受筒ユニットの側面図である。
【0028】
洗濯水が供給される受筒ユニット63の上部には鋳物である錘51が設けられている。錘51には、吊り上げ用の引掛け穴62(引っ掛け部)が、受筒ユニット63の重心点Aの鉛直平面上に前後に2箇所設けられている。引掛け穴62aは受筒ユニット63の重心点の鉛直上に、引掛け穴62bは、錘51の背面側に設けられている。
【0029】
以上のように構成された受筒ユニット63においては、スペース、受筒ユニット63の成形の金型構成等の都合により、受筒ユニット63本体に穴を設けることが困難な際にも、受筒ユニット63の引掛け穴62を形成することができる。
【0030】
また、樹脂成形されている受筒ユニット本体部に引掛け穴を形成すると、フック60a、60bにより吊り上げた場合、強度が不十分となり、受け筒ユニットのバランスが崩れたり、引掛け穴が破壊したりする可能性がある。錘51に引掛け部を取り付けることで、引掛け部の破壊に対する安全率を向上させることができる。
【0031】
なお、実施の形態2においては、錘に引掛け穴62を設けた場合を例に説明したが、錘51に限られず、その他の部品に引掛け穴を設けてもよい。
【0032】
(実施の形態3)
図4(a)は、本発明の実施の形態3の受筒ユニットの上面図である。図4(b)は、本発明の実施の形態3の受筒ユニットの側面図である。
【0033】
洗濯水が供給される受筒ユニット73の上部には、フックを引掛ける引掛け穴72が設けられている。引掛け穴72は、受筒ユニット73の重心点Aの鉛直平面上に2箇所設けられている。引掛け穴72aは受筒ユニット73の重心点Aの鉛直上に、引掛け穴72bは引掛け穴72aよりも背面側に設けられている。
【0034】
本発明の実施の形態3によれば、上記構成により、受筒ユニット73を吊り上げた状態においても、部品、或いは組立てのばらつきによって生じる傾きを、フック70bにより微調整することができる。このような構成により、精密に製品状態での受筒ユニット73の傾き角度と同様の傾き角度を維持することができる。これによって本体に設置する際のサスペンション等の接続において、容易に作業遂行ができる。
【0035】
また、引掛け穴72が複数設けられているため、引掛け穴72に加わる応力を分散することができ、引掛け穴72の破壊に対する安全率を向上させることができる。
【0036】
また、受筒ユニット73の吊り上げ状態でのバランスが取れているため、本体への配置時にフック70aおよび70bが外れて落下するなどの危険を回避することができる。
【0037】
なお、本発明の実施の形態3では、引掛け穴72を2つとしたが、これに限られるものではなく、要は受筒ユニット73のバランスが取りやすければよいので、3つ以上の引掛け穴を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明にかかる電解装置は、安価に構成できるので家庭用の洗濯機、食器洗い機などの洗浄機器に登載可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ドラム式洗濯機
2 洗濯機筐体
3、63、73 受筒ユニット
3a 本体
3b 蓋体
5 回転ドラム
6 側板
8 扉体
15 回転軸
16 軸受
17 駆動プーリ
18 従動プーリ
19 駆動ベルト
20 透孔
21 撹拌突起
50、60a、60b、70a、70b フック
52、62、62a、62b、72、72a、72b 引掛け穴(引掛け部)
51 錘
A 重心点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯水が供給される受筒ユニットと、
前記受筒ユニットの上部に設けられ、フックを引掛ける引掛け部とを備え、
前記引掛け部は、前記受筒ユニットの重心点の鉛直平面上に設けたドラム式洗濯機。
【請求項2】
前記受筒ユニットは上部に錘を備え、
前記錘に引掛け部を設けた請求項1に記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
前記引掛け部を複数備えた請求項1または2に記載のドラム式洗濯機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−217532(P2012−217532A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84274(P2011−84274)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】