説明

ドラム式洗濯機

【課題】ベルトと駆動プーリーの摺動音低減と水分付着による「滑り」を防止する。
【解決手段】洗濯機本体31内に支持した水受け槽32内に回転自在に支持された回転ドラム33と、前記水受け槽32の外底部に固着したモータ20と、前記モータ20の軸端に構成した駆動プーリ―2と、前記回転ドラム33に一端を固着した回転軸35の他端には固設した従動プーリ―37と、前記モータ20の回転を前記従動プーリー37に伝達するベルト38とを備え、前記駆動プーリー2の外周を被覆する断面略コ字状の防水カバー1をモータ20に固着したことにより、駆動プーリー2とベルト38との摺動摩擦より発生する異音の拡散を防止するとともに、水分が駆動プーリー2とベルト38の摺動部に付着する事による「滑り」の発生を防止し、洗濯・脱水行程での回転数等の低下による性能低下を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム式洗濯機の回転ドラムを駆動するモータの駆動プーリーとベルトの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のドラム式洗濯機の回転ドラム駆動構成は、水受け槽外底部に固着したモータの回転をモータ軸に形成した駆動プーリーまたは、モータ軸に固着した駆動プーリーからベルトを介して回転ドラムに直結する従動プーリーに伝達するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、従来のドラム式洗濯機の縦断面図であり、図4に於いて、洗濯機本体31内部に、水受け槽32を配し、前記水受け槽32内部に回転軸35にて正転、逆転自在に回転ドラム33が回転自在に軸支される。前記回転ドラム33は外周壁に脱水運転時の多数の水抜き用の小孔41を設け、内周壁には複数個の衣類攪拌用バッフル36を構成し、洗濯行程では低速正逆回転(例えば50rpm)にて衣類の攪拌を、脱水行程では、高速一方向回転(例えば1000rpm)にて衣類からの水分の遠心分離を行う。
【0004】
前記回転ドラム33の図4で右端部には回転軸35を固着し、さらに回転軸35の右端には従動プーリー37を固着する。水受け槽32の外底部には整流子モータ20を配し、前記整流子モータ20のモータ軸39の軸端部に形成した複数条のV溝43と、前述の従動プーリー37間には、複数条のV状溝42を有すベルト38を張架する。
【0005】
洗濯機本体31の上方に、スイッチ(図示せず)等から入力信号を受けるマイコン(図示せず)等を組み込んだ制御手段34を配し、洗濯〜脱水等の一連の行程の制御等を行うと共に、前記整流子モータ20の洗濯低回転と脱水高回転の切替制御を行う。
【0006】
図5のモータ軸近傍の詳細図において、モータ軸39は強度や剛性を有する鋼材で加工し、モータ軸39の先端部外周には、ベルト38のV状溝42に対応する複数条のV溝43を加工する。前記複数条のV溝43の外径D2は、モータ軸39の直径D1に近似して加工し、別部材の駆動プーリー等を構成することなく、直径の小さい駆動側のプーリーを実現できるので、従動プーリー37の外径を大きくすることなく減速比を高めることができる。
【0007】
以上のように、整流子モータ20の回転数切り替え制御により、一つの減速比の回転伝達で洗濯、脱水により回転ドラム33の回転駆動を行う構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−78056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の構成では、減速比を大きくする為にモータ側の駆動プーリーの外径を小さく設定しなければならないが、この時ベルト38とモータ軸39のV溝43との周速度は高速となる。
【0010】
ベルトは一般に、耐熱、耐摩性等を有する合成ゴムを主体に構成されているため摩擦力が高く、ベルト38のV状溝42とモータ軸39の先端部外周V溝43とが高速の周速度で密着・離脱を繰り返する際に摺動音を発生し、運転時の異音として使用者に不快感を与えるという課題がある。
【0011】
また水受け槽32等に低温の洗濯水等が供給された場合、洗濯機本体31内部の空気に含まれる水分が水受け槽32等の外壁に凝結し、前記のV状溝42とV溝43の摺動部に滴下し付着する事がある。周速度が低い場合は若干の水分が付着しても回転伝達力には大きい影響を与えないが、従来例のような駆動側のプーリー径が小さく周速度が速いと滑り(スリップ)を発生し、正確な回転伝達ができなくなり、洗濯や脱水行程での性能が低下するという課題がある。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、ベルトと駆動プーリーの摺動音低減と、水分付着による滑り(スリップ)を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために、本発明のドラム式洗濯機は、洗濯機本体内に弾性的に支持した水受け槽と、前記水受け槽内に回転自在に支持された回転ドラムと、前記水受け槽の外底部に固着したモータと、前記モータの軸端に構成した駆動プーリ―と、前記回転ドラムに一端を固着した回転軸と、前記回転軸の他端に固設した従動プーリ―と、前記モータの回転を前記従動プーリ―に伝達するベルトとを備え、前記駆動プーリ―の外周を被覆する断面略コ字状の防水カバーを前記モータに固着したものである。
【0014】
これにより、駆動プーリーとベルトとの摺動摩擦より発生する異音の拡散を防止するとともに、水受け槽等外壁に凝結した水分が駆動プーリーとベルトの摺動部に付着する事による「滑り」の発生を防止し、洗濯・脱水行程での回転数等の変動による性能低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のドラム式洗濯機は、駆動プーリーとベルトの摺動音低減と、水滴付着を防止して滑り(スリップ)の発生による性能低下を解消ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態におけるドラム式洗濯機の縦断面図
【図2】同ドラム式洗濯機のモータ軸近傍の詳細図
【図3】同ドラム式洗濯機の図2におけるB方向からのC断面図
【図4】従来のドラム式洗濯機の縦断面図
【図5】同上ドラム式洗濯機のモータ軸近傍の詳細図
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、洗濯機本体内に弾性的に支持した水受け槽と、前記水受け槽内に回転自在に支持された回転ドラムと、前記水受け槽の外底部に固着したモータと、前記モータの軸端に構成した駆動プーリ―と、前記回転ドラムに一端を固着した回転軸と、前記回転軸の他端に固設した従動プーリ―と、前記モータの回転を前記従動プーリ―に伝達するベルトとを備え、前記駆動プーリ―の外周を被覆する断面略コ字状の防水カバーを前記モータに固着したことにより、駆動プーリーとベルトとの摺動摩擦より発生する異音の拡散を防止するとともに、水受け槽等外壁に凝結した水分が駆動プーリーとベルトとの摺動部に付着する事による「滑り」の発生を防止し、洗濯・脱水行程での回転数等の低下による性能低下を防ぐことができる。
【0018】
第2の発明は、特に、上記第1の発明の防水カバーを、内周部に吸音フェルトを装着したことにより、駆動プーリーとベルトとの摺動摩擦より発生する異音を吸音することにより、騒音発生を著しく低減する事が出来る。
【0019】
第3の発明は、特に、上記第2の発明の吸音フェルトの装着区域を、ベルトが通過する開口部を除く駆動プーリ―の周囲としたことにより、発生した異音をより効果的に吸収できるものである。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、従来例と同じ構成のものは同一符号を付して説明を省略する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態におけるドラム式洗濯機の縦断面図、図2は、モータ軸近傍の詳細図、図3は、図2におけるB方向からのC断面図を示すものである。
【0022】
図1の断面図において、回転ドラム33を回転自在に軸支した水受け槽32の外底部に配したモータ20の、モータ軸39(図1では図示せず)先端部には、防水カバー1を装着する。
【0023】
図2の詳細図に於いて、モータ軸39の先端部には、ベルト38を張架した多数のV溝43を有する駆動プーリー2を固着し、前記駆動プーリー2の外周には、駆動プーリー2の周囲を被覆する断面略コ字状の防水カバー1を配する。
【0024】
前記防水カバー1は、プラスチック成型部材等で構成し、ベルト38が通過する個所に開口3を有した断面略コ字状の円筒形状に形成する。この防水カバー1は、モータ20側において、複数個のL字状の爪片4を有し、この爪片4をモータ20の前板5の小孔8に係着し位置決めするようになっている。
【0025】
また円筒部1a外周のモータ20側においてには、複数個の取付座6を一体形成し、小ねじ7により、前記モータ20の前板5にねじ止めされる。
【0026】
さらに、円筒部1a内周部には、不織布等による吸音フェルト9が嵌め込みまたは、接着により装着されている。
【0027】
防水カバー1のコ字状の右辺(図2で右側面)には、前記ベルト38が通過する開口3に連なる側面開口10を形成し、この側面開口10側よりベルト38の駆動プーリー2への装着や、摺動状態の観察や、ベルト張力等の観察が可能なように構成している。
【0028】
図3の断面図に於いて、防水カバー1は、ベルト38が通過する開口3を断面図で上方の2か所形成し、吸音フェルト9の装着は、前記開口3の二か所を除く全内周面に行う。
【0029】
また、防水カバー1の前記ベルト38が通過する開口3の上方側面にはリブ体11をモータ軸39と同方向に一体形成し、上方から防水カバー1の上面12に滴下した水分が、開口3より内部の摺動部分に侵入しないように構成している。
【0030】
以上のように構成した洗濯機について、その動作、作用を説明する。
【0031】
モータ20の回転によりベルト38と駆動プーリー2との摺動部から発生した摺動異音は、駆動プーリー2の外周に構成した防水カバー1の遮音効果により、洗濯機本体31の外方に伝搬する量が著しく低減されるので、運転時の異音として使用者に不快感を与えることが無くなる。
【0032】
更に、防水カバー1の内周部には、吸音フェルト9を装着する事により、摺動異音を吸収、あるいは防水カバー1内方での反響音発生を防止するので、異音の外方への伝搬が著しく低減される。
【0033】
吸音フェルト9の装着範囲は、ベルト38が通過する開口3部を除きほぼ内周部の全周囲にわたり装着しているので、前記異音吸収、反響音発生防止の効果が著しく向上する構成である。
【0034】
また、ベルト38と駆動プーリー2との摺動部は、開口部3を除き周囲を防水カバー1にて被覆されているので、水受け槽32等の外壁に凝結し滴下した水分が、摺動部に侵入する危険性が著しく回避され、回転ドラム33の回転数を変動させることが無く、洗濯・脱水性能の低下を招く事がない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明にかかるドラム式洗濯機は、減速比の大きく設定し周速の早い駆動プーリーとベルトとの摺動異音の発生を、機器の外方に伝達する事を防止が可能となるので、減速比の大きい機器、例えば衣類乾燥機の減速機構として有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 防水カバー
2 駆動プーリー
3 開口部
9 吸音フェルト
10 側面開口
20 整流子モータ(モータ)
31 洗濯機本体
32 水受け槽
33 回転ドラム
35 回転軸
37 従動プーリー
38 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機本体内に弾性的に支持した水受け槽と、前記水受け槽内に回転自在に支持された回転ドラムと、前記水受け槽の外底部に固着したモータと、前記モータの軸端に構成した駆動プーリ―と、前記回転ドラムに一端を固着した回転軸と、前記回転軸の他端に固設した従動プーリ―と、前記モータの回転を前記従動プーリ―に伝達するベルトとを備え、前記駆動プーリ―の外周を被覆する断面略コ字状の防水カバーを前記モータに固着したドラム式洗濯機。
【請求項2】
防水カバーは、内周部に吸音フェルトを装着した請求項1記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
吸音フェルトの装着区域は、ベルトが通過する開口部を除く駆動プーリ―の周囲とした請求項2記載のドラム式洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−85838(P2012−85838A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235327(P2010−235327)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】