説明

ドリッパー

【課題】熱湯の注ぎ入れに十分な開口を形成するとともに、カップの大きさが異なっても、載置時における安定性を確保することができる組立て容易なドリッパーを提供する。
【解決手段】両側縁の折り畳み線31に沿って折り畳まれると共に、上端の開口縁12を開口した状態でカップ5に載置される支持用紙体11と、支持用紙体11の内側に配設され、支持用紙体11の開口縁12外側に貼着された濾過用袋体41とを備えたドリッパー1,2において、支持用紙体11の両側縁の折り畳み線31が、逆ハの字状に形成されており、支持用紙体11の下縁両端部に形成され、カップ5の上縁に係止する所定幅の切欠部25,58と、支持用紙体11から長手方向に直交する外方に展開し、カップ5の上縁に当接するベース片20,51とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を抽出するためにカップ等に載置されるドリッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コーヒー等の飲料を簡便に抽出するものとして、濾過用の袋体を厚手の紙体に固定して支持する使い捨てのドリッパーが利用されている。例えば、特許文献1では、展開した矩形状支持体の蓋部を除去してから濾過袋を開封し、矩形状支持体の左右両側の一定領域を折り曲げて支持脚片とした状態でカップ等のカップに載置するコーヒー用の濾過器が開示されている。また、特許文献2では、ドリッパーの前後両面の上縁中央をそれぞれ指で掴んで外側に引っ張って袋体を開封し、筒状紙体の左右両側にある折込部を内方に折り込んで筒状紙体を変形させることで、袋体を開口状態にすることができるドリッパーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−52888号公報
【特許文献2】特開2008−245894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の濾過器では、カップに載置する前に、支持体の展開、蓋部の除去、濾過袋の開封、支持脚の形成という複数の手順を経ることが必要なため、組立てが簡便でないという問題がある。一方、上記特許文献2のドリッパーでは、簡易に組み立てることが実現されているものの、筒状紙体の変形が小さく前後方向へ大きく膨出することがないため、袋体が十分に開口せず、熱湯の注ぎ入れが困難であるという問題がある。また、上記特許文献2のドリッパーをカップへ載置するには、係合フラップをカップの上縁部分に沿わせることになるが、上記特許文献2に開示された構成では、その位置をカップのサイズに対応させて変更することができないため、カップのサイズによっては、係合フラップを上縁部分に沿わせることができず、載置時にドリッパーがカップの上で動いてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、熱湯の注ぎ入れに十分な開口を形成するとともに、カップの大きさが異なっても、載置時における安定性を確保することができる組立て容易なドリッパーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、
両側縁の折り畳み線に沿って折り畳まれると共に、上端の開口縁を開口した状態でカップに載置される支持用紙体と、前記支持用紙体の内側に配設され、前記支持用紙体の開口縁外側に貼着された濾過用袋体と、を備えたドリッパーにおいて、
前記支持用紙体の両側縁の折り畳み線が、逆ハの字状に形成されており、前記支持用紙体の下縁両端部に形成され、前記カップの上縁に係止する所定幅の切欠部と、
前記支持用紙体から長手方向に直交する外方に展開し、前記カップの上縁に当接するベース片と、
を設けたものである。
【0007】
前記構成により、支持用紙体の折り畳み線が、逆ハの字状に形成されているので、支持用紙体の開口面積を大きくし、安全、かつ確実にドリッパーに、例えば熱湯を注ぐことができる。支持用紙体の下縁両端部に、カップの上縁に係止する切欠部を形成したので、切欠部と切欠部との間の間隔が長くなり、支持用紙体をカップに安定的に載置することができる。また、切欠部が所定幅を有するので、カップの寸法が異なっても切欠部をカップの上縁に係止することができる。カップの上縁には、切欠部と共にベース片が支持用紙体の長手方向に直交する外方で当接するので、より安定的に支持用紙体をカップに載置することができる。
【0008】
具体的な1つの手段として、前記ベース片が前記切欠部の内側に位置し、半楕円形であることが好ましい。
他の手段として、前記ベース片が、前記支持用紙体の下方に形成された折り線を中心に外方に展開する三角形であり、前記ベース片が展開されることにより、前記折り線が前記切欠部の上縁を形成してもよい。
【0009】
前記支持用紙体の開口縁両端部に、上方に向かって突出する保形用突片を設け、
前記支持用紙体の開口縁が開口した状態で、前記保形用突片が内方に折れ曲がることが好ましい。
内方に折れ曲がった保形用突片が、折り畳み線に沿って支持用紙体の両側縁が折り畳まれるのを防止するので、支持用紙体の開口状態を保持し、熱湯の注ぎ入れに十分な開口を形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持用紙体の折り畳み線が、逆ハの字状に形成されているので、支持用紙体の開口面積を大きくし、安全、かつ確実にドリッパーに、例えば熱湯を注ぐことができる。支持用紙体の下縁両端部に、カップの上縁に係止する切欠部を形成したので、切欠部と切欠部との間の間隔が長くなり、支持用紙体をカップに安定的に載置することができる。また、切欠部が所定幅を有するので、カップの寸法が異なっても切欠部をカップの上縁に係止することができる。カップの上縁には、切欠部と共にベース片が支持用紙体の長手方向に直交する外方で当接するので、より安定的に支持用紙体をカップに載置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)本発明の第1実施形態に係るドリッパーの正面図、(b)は(a)の背面図。
【図2】図1のドリッパーを構成する支持用紙体の展開図。
【図3】図1のドリッパーをカップに載置して使用する状態の斜視図。
【図4】(a)本発明の第2実施形態に係るドリッパーの正面図、(b)は(a)の背面図。
【図5】図4のドリッパーを構成する支持用紙体の展開図。
【図6】図4のドリッパーをカップに載置して使用する状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
図1(a)および図1(b)に、本発明の第1実施形態であるドリッパー1を示す。本実施形態のドリッパー1は、両側縁の折り畳み線31に沿って折り畳まれると共に、上端の開口縁12を開口した状態でカップに載置される支持用紙体11と、支持用紙体11の内側に配設され、開口縁12の外面に貼着された濾過用袋体41とを備えている(図3参照)。
【0014】
支持用紙体11は、図2に示すように、湾曲する開口縁12を有する前面板13と、前面板13の一方の側部に折り畳み線31を介して連接し、湾曲する開口縁12を有する背面板14と、前面板13の他方の側部に折り畳み線31を介して連接する扇形の貼付板15とからなる。前面板13と背面板14とは略同一形状である。
【0015】
折り畳み線31の半径方向外側には、開口縁12から外方に突出する保形用突片17が設けられている。保形用突片17は略楕円形状であり、その中央に延在する折り畳み線31に沿って、支持用紙体11と共に折り畳むことができる。また、保形用突片17の半径方向内側には、内方に向かって湾曲し、折り畳み線31と交差する山折り線32が刻設されている。保形用突片17は、この山折り線32を介して支持用紙体11と連接している。
【0016】
前面板13と背面板14との半径方向内側縁部には、中心に向かって突出する半楕円形状のベース片20が設けられている。ベース片20の内部は、支持用紙体11に至るまで切り抜かれた窓部21が形成されている。ベース片20の根元には、窓部21の縁から斜めに延びる谷折り線33が刻設されており、谷折り線33の端部から半径方向内側に向かって、ベース片20と支持用紙体11とを分離する分離線34が刻設されている。ドリッパー1を使用する際、ベース片20は、谷折り線33を中心に図中、手前側に向かって展開され、分離線34により支持用紙体11と切り離される。
【0017】
ベース片20の根元の両外側には、前面板13と背面板14との半径方向内側縁部から内方に向かって突出する内側突起23が形成されている。また、折り畳み線31の半径方向内側には、内側突起23から所定間隔離れ、支持用紙体11から内方に向かって突出する外側突起24が設けられている。外側突起24は、その中央に延在する折り畳み線31に沿って、支持用紙体11と共に折り畳むことができる。内側突起23と外側突起24との間には、直線状の所定幅を有する切欠部25が形成されている。
【0018】
濾過用袋体41は濾紙からなり、内部にレギュラーコーヒ、緑茶や紅茶の茶葉など、被抽出成分を含有する内容物を充填収納している。図3に示すように、濾過用袋体41の上縁中央部には、外側に折り曲げられ、開口縁12の外面に貼着される貼着部42が形成されている。
【0019】
前記構成の支持用紙体11と濾過用袋体41とを用いて、本実施形態のドリッパー1を組み立てるには、まず、支持用紙体11の折り畳み線31に沿って、前面板13と背面板14とが重なるように折り畳む。そして、図1(b)に示すように、貼付板15を背面板14の裏側に位置するように、折り畳み線31に沿って折り畳み、背面板14と貼付板15とをのり等で貼り合わせる。
【0020】
前述のように組み立てられた支持用紙体11に、内容物を充填収納した濾過用袋体41を組み付けるため、支持用紙体11の開口縁12から濾過用袋体41を挿入する。そして、濾過用袋体41の貼着部42を外側に折り曲げ、開口縁12の外面に貼着することにより、図1(a)に示すドリッパー1とすることができる。
【0021】
ドリッパー1を使用するには、開口縁12の中央を指で掴んで前面板13と背面板14とをそれぞれ、反対方向外側に引っ張り、支持用紙体11と濾過用袋体41を開封する。次に、保形用突片17を山折り線32に沿って内方に折り曲げ、支持用紙体11を漏斗状に保形させる。このとき、内方に折れ曲がった保形用突片17が、前面板13と背面板14との両側縁上部を支持し、折り畳み線31に沿って支持用紙体11が折り畳まれるのを防止する。従って、支持用紙体11の開口状態を保持し、熱湯の注ぎ入れに十分な開口を形成することができる。
【0022】
そして、前面板13と背面板14とのベース片20をそれぞれ、谷折り線33を中心に反対方向外側に展開する。谷折り線33は、内側が下方に位置するように水平方向に対し斜めに延びているので、ベース片20を展開すると、ベース片20は中心線を対称に下方に湾曲する。次に、カップ5の上縁を切欠部25に係止させると共にベース片20をカップ5の上縁に載置して、ドリッパー1のカップ5へのセットを完了する。このとき、支持用紙体11の下縁両端部に切欠部25を形成したので、切欠部25と切欠部25との間の間隔が長くなり、ドリッパー1をカップ5に安定的に載置することができる。また、切欠部25が所定幅を有するので、カップ5の寸法が異なっても切欠部25をカップ5の上縁に係止することができる。カップ5の上縁には、切欠部25と共に、ベース片20が支持用紙体11の長手方向に直交する外方で当接するので、より安定的にドリッパー1をカップ5に載置することができる。更に、ベース片20が中心線を対称に下方に湾曲しているので、ベース片20の内側がカップ5に載置され、安定的にドリッパー1をカップ5に載置することができる。最後に、濾過用袋体41の開口部より熱湯を注ぎ入れて、所望量の抽出液をカップ5内に流下させる。
【0023】
図4(a)および図4(b)に、本発明の第2実施形態であるドリッパー2を示すが、図1の第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0024】
図5に示すように、ドリッパー2の前面板13と背面板14との半径方向内側には、略三角形状のベース片51が設けられている。このベース片51と、前面板13および背面板14との間には、窓部21の両側縁から延び、半径方向外側に向かって屈曲する第1分離線52と、この第1分離線52から斜めに延びる谷折り線53(折り線)と、谷折り線53から半径方向内側に向かって延びる第2分離線54とが刻設されている。ベース片51と支持用紙体11とは、谷折り線53を介して連接されている。ドリッパー2を使用する際、ベース片51は、谷折り線53を中心に図中、手前側に向かって展開され、第1および第2分離線52、54により支持用紙体11と切り離される。
【0025】
前面板13と背面板14との半径方向内側縁には、第1分離線52に区切られることで、窓部21に隣接して半径方向内側に突出する突出片56が形成されている。また、第2分離線54に区切られることで、半径方向内側に向かって突出する突起57が形成されている。この突起57は、その中央に延在する折り畳み線31に沿って、支持用紙体11と共に折り畳むことができる。ベース片51が展開されると、突出片56と突起57との間には、谷折り線53により直線状の所定幅を有する切欠部58が形成される(図6参照)。
【0026】
前記構成のドリッパー2を使用するには、図6に示すように、開口縁12の中央を指で掴んで、支持用紙体11と濾過用袋体41を開封する。次に、保形用突片17を内方に折り曲げ、支持用紙体11を漏斗状に保形させる。そして、前面板13と背面板14とのベース片51をそれぞれ、谷折り線53を中心に反対方向外側に展開する。次に、カップ5の上縁を切欠部58に係止させると共にベース片51をカップ5の上縁に載置して、ドリッパー2のカップ5へのセットを完了する。以上のように、第1実施形態のドリッパー1と同様に、切欠き部58とベース片51とを用いて、安定的にドリッパー2をカップ5に載置することができる。また、谷折り線53、すなわち切欠部58は、内側が下方に位置するように水平方向に対して斜めに形成されているので、切欠部58を介してカップ5に載置されたドリッパー2は、カップ5の上縁により中心に向かって付勢され、安定している。
【0027】
本発明は、前記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
切欠部25、58の所定幅に関しては、切欠部25、58が種々の寸法からなるカップ5の上縁に係止し、ドリッパー1、2をカップ5に安定的に載置できる限り、特に限定されない。
ベース片20、51の形状に関しては、半楕円形や三角形状を用いたが、これに限定されず、カップ5の上縁に当接し、ドリッパー1、2をカップ5に安定的に載置できる限り、特に限定されない。
【符号の説明】
【0028】
1 ドリッパー(第1実施形態)
2 ドリッパー(第2実施形態)
5 カップ
11 支持用紙体
12 開口縁
17 保形用突片
20 ベース片
25 切欠部
31 折り畳み線
41 濾過用袋体
51 ベース片
53 谷折り線(折り線)
58 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側縁の折り畳み線に沿って折り畳まれると共に、上端の開口縁を開口した状態でカップに載置される支持用紙体と、前記支持用紙体の内側に配設され、前記支持用紙体の開口縁外側に貼着された濾過用袋体とを備えたドリッパーにおいて、
前記支持用紙体の両側縁の折り畳み線が、逆ハの字状に形成されており、前記支持用紙体の下縁両端部に形成され、前記カップの上縁に係止する所定幅の切欠部と、
前記支持用紙体から長手方向に直交する外方に展開し、前記カップの上縁に当接するベース片と、
を設けたことを特徴とするドリッパー。
【請求項2】
前記ベース片が前記切欠部の内側に位置し、半楕円形であることを特徴とする請求項1に記載のドリッパー。
【請求項3】
前記ベース片が、前記支持用紙体の下方に形成された折り線を中心に外方に展開する三角形であり、
前記ベース片が展開されることにより、前記折り線が前記切欠部の上縁を形成することを特徴とする請求項1に記載のドリッパー。
【請求項4】
前記支持用紙体の開口縁両端部に、上方に向かって突出する保形用突片を設け、
前記支持用紙体の開口縁が開口した状態で、前記保形用突片が内方に折れ曲がることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のドリッパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−75048(P2013−75048A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217013(P2011−217013)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】