説明

ドレープおよび使い捨て医療機器セット

【課題】ドレープの排液管が手術の邪魔になることを抑制する。
【解決手段】ドレープ1は、手術部位を露出させるための開口110が設けられたドレープ本体11、ドレープ本体11に固定されるパウチ2、および、パウチ2に接続される2本の第2排液管31を備える。パウチ2のパウチ本体21に設けられた2つの排液口25からは2本の第1排液管24が突出しており、各第1排液管24に第2排液管31が接続されることにより排液管3が形成される。排液管3は、ドレープ本体11に設けられた貫通孔129を介してドレープ本体11の清潔面111側から不潔面112側へと延びる。これにより、排液管3の清潔面111側への露出を低減することができ、排液管3により施術者の動き等が阻害されること、すなわち、排液管3が手術の邪魔になることを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術の際に患者を覆うシート状のドレープ、および、当該ドレープを含む使い捨て医療機器セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、手術室において外科手術等の医療処置が行われる際には、不潔領域と定められる患者の体表を医療用のドレープにて覆い、清潔領域を当該不潔領域から隔離することが行われている。ドレープには、患者の手術部位を露出させるための開口が設けられる。
【0003】
内視鏡を利用した肩関節や膝関節等の手術では、手術部位に対して生理用食塩水等の灌流液を連続的あるいは断続的に付与しつつ手術が行われることがある。このような手術に利用されるドレープでは、手術部位から流れ落ちる灌流液、血液、体液等を受けて所定の廃液タンク等へと送る医療用パウチが、ドレープの開口近傍に取り付けられる。
【0004】
例えば、特許文献1では、肩関節外科手術用の受液パウチおよびドレープが開示されている。特許文献1のドレープでは、手術部位が露出する開窓部の左右両側に受液パウチのパウチ開口部が設けられ、受液パウチの左右の端部には、廃液を排出するための排出用チューブが接続される。排出用チューブは、ドレープの基布の清潔面側にて左右方向の外側に延びており、手術台の左右両側に垂れ下がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−72445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のようなドレープでは、排出用チューブがドレープの清潔面側に存在するため、施術者の動き等が排出用チューブにより阻害されてしまうおそれがある。また、施術者等が排出用チューブに触れてしまい、排出用チューブの先端が廃液タンク等から飛び出して周囲に廃液が飛び散るおそれもある。さらには、廃液タンク等が手術台の下方に配置される場合、手術台の左右両側から手術台の下方へと延びる排出用チューブにより、基布が手術台の下側に巻き込まれてしまい、手術台を囲む清潔面が減少してしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、排液管が手術の邪魔になることを抑制することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、手術の際に患者を覆うシート状のドレープであって、患者の手術部位を露出させる開口を有するドレープ本体と、前記ドレープ本体の清潔面上において前記開口近傍に固定され、前記手術部位からの液体を受液口にて受けて排液口から排出するパウチ本体と、前記排液口に接続され、前記ドレープ本体に設けられた貫通孔を介して前記ドレープ本体の前記清潔面側から不潔面側へと延びる排液管と、前記貫通孔において、前記排液管と前記ドレープ本体のとの間を封止する封止部とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のドレープであって、前記貫通孔が、前記排液口の近傍に位置する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のドレープであって、前記貫通孔が、前記ドレープ本体により患者を覆った際に、前記排液口よりも下方に位置する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のドレープであって、前記排液管が、前記清潔面側において、前記排液口から前記貫通孔に近づくに従って前記清潔面に漸次近づく。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のドレープであって、前記封止部が、前記貫通孔を覆い、前記排液管が挿入される伸縮性挿入口を有する伸縮性シートと、前記排液管に巻回される粘着テープとを備え、前記伸縮性シートの非伸長時に、前記伸縮性挿入口の面積が、前記排液管の断面よりも小さく、前記排液管が、前記伸縮性挿入口の周囲の孔周辺部を前記不潔面側へと押し出した状態で前記伸縮性挿入口に挿入されており、前記粘着テープが、前記不潔面側において前記孔周辺部上から前記排液管に巻回される。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載のドレープであって、前記ドレープ本体が、他の貫通孔を有し、前記貫通孔および前記他の貫通孔がそれぞれ、前記ドレープ本体の前記開口の左右方向の一方側および他方側に配置され、前記パウチ本体が、前記開口の前記左右方向の両側に位置するとともに他の排液口をさらに有し、前記排液口および前記他の排液口がそれぞれ、前記ドレープ本体の前記開口の前記左右方向の一方側および他方側に配置され、前記ドレープが、前記他の排液口に接続され、前記他の貫通孔を介して前記ドレープ本体の前記清潔面側から前記不潔面側へと延びる他の排液管と、前記他の貫通孔において、前記他の排液管と前記ドレープ本体との間を封止する他の封止部とをさらに備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のドレープであって、前記パウチ本体が、前記開口の前記左右方向の一方側から他方側へと前記開口の周囲に沿って連続して設けられる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載のドレープであって、前記排液管の先端と前記他の排液管の先端とに接続可能である、または、接続されており、前記排液管および前記他の排液管を通過した液体を送出する1つの共通排液口を有するコネクタをさらに備える。
【0016】
請求項9に記載の発明は、使い捨て医療機器セットであって、請求項1ないし8のいずれかに記載のドレープを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、排液管が手術の邪魔になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一の実施の形態に係る医療用ドレープの平面図である。
【図2】使い捨て医療機器セットの平面図である。
【図3】第1ドレープシートの平面図である。
【図4】第2ドレープシートの平面図である。
【図5】脇翼部の斜視図である。
【図6】ドレープの部分断面図である。
【図7】使用状態のドレープの斜視図である。
【図8】コネクタ近傍を示す図である。
【図9】他のドレープの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る医療用ドレープ1を示す図である。医療用ドレープ1(以下、単に「ドレープ1」という。)は、医療施設内において手術等の医療処置が行われる患者を覆うことにより、不潔領域である患者の体表から清潔領域を隔離するシート状の部材である。ドレープ1は、例えば、肩関節や膝関節の内視鏡手術等に利用される。本実施の形態では、肩関節の内視鏡手術に利用されるドレープ1について説明する。
【0020】
図2に示すように、ドレープ1は、医療処置の内容に合わせて用意された複数の使い捨ての医療機器のセットである使い捨て医療機器セット6に含まれている。ドレープ1は、折り畳まれた状態で、使い捨て医療機器セット6のトレイ61に収容され、トレイ61は、二点鎖線にて描く通気性を有する包装袋62内に収容される。
【0021】
図1に示すように、ドレープ1は、患者を覆うシート状のドレープ本体11、および、ドレープ本体11に固定される医療用パウチ2(以下、単に「パウチ2」という。)を備える。ドレープ本体11には、患者の手術部位を露出させるための開口110が設けられる。以下の説明では、ドレープ本体11の患者とは反対側の面を「清潔面111」といい、ドレープ本体11の患者側の面を「不潔面112」という。図1では、清潔面111を手前側にしてドレープ1を描いている。
【0022】
ドレープ本体11は、図3および図4に示す第1ドレープシート12および第2ドレープシート13を備える。第1ドレープシート12は、平面視において略矩形状であり、左右方向に垂直な長手方向の一方側のエッジ(図3中の下側のエッジ)の中央部から上向きに延びる帯状の切り欠き120が設けられる。切り欠き120の上側の端部は、上向きに凸となるように略半円状となっている。第2ドレープシート13も、平面視において略矩形状であり、長手方向の他方側のエッジ(図4中の上側のエッジ)の中央部から下向きに延びる帯状の切り欠き130が設けられる。切り欠き130の下側の端部は、下向きに凸となるように略半円状となっている。
【0023】
ドレープ1が使用される場合には、切り欠き120,130が重なるように、第2ドレープシート13上に第1ドレープシート12の一部が重ねられることにより、図1に示すドレープ本体11が形成される。図1では、第2ドレープシート13のうち、第1ドレープシート12の不潔面112側に位置する部位を太破線にて描いている。そして、切り欠き120,130により、略円形の開口110が形成される。ドレープ1の不潔面112には、開口110の周囲を囲む粘着層が設けられ、ドレープ1の使用時に、患者の手術部位の周囲に貼付される。これにより、開口110が手術部位からずれることが防止される。なお、開口110は、必要に応じて、長手方向に延びる長穴状に形成されてもよい。
【0024】
図3に示すように、第1ドレープシート12は、第1シート本体121、一対の脇翼部122、一対の横翼部123、第1吸収シート124および第1開口シート125を備える。第1シート本体121の長手方向の中央部には、左右両側のエッジから左右方向に平行に内側(すなわち、左右方向の中央側)へと延びる一対のスリット126が形成される。スリット126は、切り欠き120から長手方向に離間した位置に設けられる。
【0025】
図5は、脇翼部122の斜視図である。図5では、図1中の左側の脇翼部122を示す。図1中の右側の脇翼部122は、左側の脇翼部122と同様の構造を有し、ドレープ本体11の左右方向の中心にて長手方向に延びる中心線に関して線対称に配置される。脇翼部122は、図5に示すように、略矩形状のシート部材を対角線である折り畳み線1222にて2つ折りにしたものである。脇翼部122の図5中における上端部1221のうち、折り畳み線1222よりも奥側の部位が、第1シート本体121の図3中におけるスリット126の上側の部位に、スリット126に沿って接合される。また、図5に示す上端部1221のうち、折り畳み線1222よりも手前側の部位は、第1シート本体121の図3中におけるスリット126の下側の部位にスリット126に沿って接合される。
【0026】
一対の横翼部123は、長手方向に延びる帯状の部材であり、第1シート本体121の切り欠き120が設けられるエッジとは反対側のエッジから一対のスリット126まで、第1シート本体121の左右両側部に接合される。横翼部123は、さらに、図5に示す脇翼部122の折り畳み線1222よりも奥側の部位の側部に接合される。図3に示す第1吸収シート124は、略矩形状であり、第1シート本体121の清潔面111に接合される。第1吸収シート124は、第1シート本体121の左右方向の中央部、かつ、長手方向における一対のスリット126の切り欠き120とは反対側に位置する。第1開口シート125は、第1シート本体121の清潔面111において、切り欠き120が設けられる位置に接合され、切り欠き120は、第1シート本体121および第1開口シート125に形成される。
【0027】
図4に示すように、第2ドレープシート13は、第2シート本体131、第2開口シート132および第2吸収シート133を備える。第2開口シート132は、第2シート本体131の清潔面111において、切り欠き130が設けられる位置に接合され、切り欠き130は、第2シート本体131および第2開口シート132に形成される。第2吸収シート133は、第2開口シート132の外縁部を間に挟んで第2シート本体131に接合される。
【0028】
本実施の形態では、図3に示す第1ドレープシート12の第1シート本体121は、後述する貫通孔近傍の部位を除き、スパンレース不織布により形成され、脇翼部122および横翼部123も、スパンレース不織布により形成される。第1吸収シート124は、不織布の下側にプラスチックフィルムを積層することにより形成され、第1開口シート125として、ウレタン等により形成された伸縮性フィルムが利用される。図4に示す第2ドレープシート13の第2シート本体131は、スパンレース不織布により形成され、第2吸収シート133は、不織布の下側にプラスチックフィルムを積層することにより形成される。また、第2開口シート132として、ウレタン等により形成された伸縮性フィルムが利用される。
【0029】
図1に示すパウチ2は、手術部位からの液体を受ける、いわゆる受水袋である。肩関節の内視鏡手術では、患者の手術部位に対して生理用食塩水等の灌流液が連続的あるいは断続的に付与されており、パウチ2にて受ける液体とは、当該灌流液、あるいは、血液や体液等である。図1では、パウチ2の使用前(すなわち、未使用時)の状態を示している。なお、パウチ2よりも外側に流れた液体は、第1吸収シート124や第2吸収シート133により吸収される。
【0030】
図6は、図3に示す第1ドレープシート12をA−Aの位置にて切断した部分断面図である。図6に示すように、パウチ2は、パウチ本体21および略円筒状の2つの第1排液管24を備える。図1に示すように、パウチ本体21は、平面視において、第1ドレープシート12の切り欠き120と重なる部位が除かれた略六角形状であり、ドレープ本体11の清潔面111上において開口110近傍に固定される。具体的には、パウチ本体21は、開口110の左右方向の一方側から、開口110の長手方向の一方(図1中の上側)を経由して、左右方向の他方側へと開口110に沿って連続して設けられる。このため、手術部位から左右両側に流れる液体のみならず、長手方向へと流れる(本実施の形態では、患者の頭部側へと流れる)液体もパウチ2により受けることができる。
【0031】
図6に示すように、パウチ本体21は、第1パウチシート22および第2パウチシート23を備える。第1パウチシート22は、第1ドレープシート12の清潔面111上における開口110の周囲において、第1シート本体121に両面テープ等により固定される。また、第1パウチシート22の開口110側の端部近傍の部位は、上述の第1開口シート125と第1シート本体121との間に挟まれ、第1開口シート125にも接合される。図6では、図の理解を容易にするために、第1シート本体121、第1パウチシート22および第1開口シート125の接合部を上下方向に離間させて描いている。
【0032】
第2パウチシート23は、第1パウチシート22の第1ドレープシート12とは反対側に積層され、開口110から遠い方のエッジにおいて第1パウチシート22に連続する。第1パウチシート22および第2パウチシート23は、1枚のシート部材を2つ折りにしたものであってもよく、2枚のシート部材の縁部を接合したものであってもよい。第1パウチシート22および第2パウチシート23は、ポリエチレン等の透明または半透明の柔軟な樹脂材料により形成される。
【0033】
第2パウチシート23の開口110に近い方のエッジ231は、パウチ2の外形におよそ沿う形状であり、開口110から離間している。エッジ231には、ポリエチレン等の容易に塑性変形可能な(すなわち、形状が容易に変更可能な)樹脂により形成された帯状の保形部材232が設けられる。パウチ2では、保形部材232が塑性変形されることにより、図6中に二点鎖線にて描くように、第2パウチシート23のエッジ231が第1パウチシート22から大きく離れ、手術部位からの液体を受ける受液口210が形成される。
【0034】
パウチ本体21は、図1に示すように、開口110の左右両側(すなわち、左右方向の一方および他方)において、開口110からおよそ最も離れた部位に配置される2つの排液口25を有する。本実施の形態では、2つの排液口25は、略六角形状であるパウチ本体21の開口110から最も離れた2つの頂点近傍において、第1パウチシート22に形成される。排液口25は、受液口210からパウチ本体21内に流入した液体を排出する。図6に示すように、各第1排液管24は、パウチ本体21の排液口25から第1ドレープシート12に向けて突出する。
【0035】
ドレープ1は、パウチ2の2つの第1排液管24にそれぞれ接続される略円筒状の2つの第2排液管31をさらに備える。各第2排液管31は、第1排液管24の外側に嵌合する。以下の説明では、第1排液管24および第2排液管31をまとめて「排液管3」と呼ぶ。2つの排液管3は、パウチ本体21の2つの排液口25にそれぞれ接続される。
【0036】
図1および図6に示すように、ドレープ本体11では、第1ドレープシート12において、各排液口25の開口110とは反対側、かつ、各排液口25の近傍に、第2排液管31の外径よりも大きい貫通孔129が設けられる。本実施の形態では、貫通孔129は略円形である。貫通孔129と排液口25との間の最短距離は、好ましくは、10cm以下であり、より好ましくは、5cm以下である。開口110の左右両側(すなわち、左右方向の一方および他方)に配置された2つの貫通孔129はそれぞれ、ドレープ本体11の清潔面111に接合される2つの略矩形の貫通孔用シート128により覆われる。貫通孔用シート128は、伸縮性を有するシート部材であり、貫通孔用シート128の貫通孔129に対向する部位の中央部には、第2排液管31の外径よりも小さい十字状の切り込みが設けられている。なお、十字状の切り込みに代えて、例えば、第2排液管31の外径よりも小さい略円形の孔が貫通孔用シート128に設けられてもよい。
【0037】
ドレープ1では、図6に示すように、排液管3の第2排液管31が、貫通孔用シート128の上記切り込みに清潔面111側から挿入されることにより、切り込みが押し広げられて伸縮性挿入口127となる。貫通孔用シート128の上記切り込みを、貫通孔用シート128の非伸張時における伸縮性挿入口127と捉えると、非伸張時における伸縮性挿入口127の面積は、第2排液管31の断面よりも小さい。ドレープ1では、各排液管3が、貫通孔用シート128の伸縮性挿入口127に挿入され、ドレープ本体11の貫通孔129を介してドレープ本体11の清潔面111側から不潔面112側へと延びる。
【0038】
貫通孔用シート128の伸縮性挿入口127の周囲の部位である孔周辺部128aは、伸縮性挿入口127に挿入された第2排液管31により不潔面112側へと押し出されている。貫通孔用シート128の不潔面112側では、粘着テープ41が、貫通孔用シート128の孔周辺部128a上から第2排液管31に巻回される。これにより、排液管3がドレープ本体11に固定されるとともに貫通孔129が封止される。ドレープ1では、貫通孔用シート128および粘着テープ41により、貫通孔129において、排液管3とドレープ本体11との間の封止する封止部4が形成される。また、封止部4により、排液管3がドレープ本体11に固定される。
【0039】
パウチ本体21の左右の2つの排液口25に接続された2本の排液管3は、ドレープ本体11の清潔面111側において、排液口25から貫通孔129に近づくに従って清潔面111に漸次近づく。そして、2つの貫通孔129において、2つの封止部4により、2本の排液管3がドレープ本体11に固定されるとともに、排液管3とドレープ本体11との間が封止される。
【0040】
図7は、使用状態のドレープ1を示す斜視図である。ドレープ1が使用される際には、側臥位の患者の腕91がドレープ本体11の開口110に挿入された状態で、ドレープ1が患者にかけられ、ドレープ本体11により患者が覆われる。そして、第1ドレープシート12の第1シート本体121および一対の横翼部123が、一対のスリット126の位置(図3参照)にて曲げられ、第1シート本体121および横翼部123のうち、一対のスリット126の開口110とは反対側の部位(以下、「立ち上がり部14」という。)が上方に立ち上げられた状態で支持される。
【0041】
第1ドレープシート12および第2ドレープシート13の両側部は、手術台の左右において手術台の長手方向(ドレープ1の長手方向におよそ一致する。)に平行に垂れ下がる。また、パウチ2の両側部も、第1ドレープシート12と共に垂れ下がる。このとき、排液管3(図6参照)が挿入された貫通孔129は、排液口25よりも下方に位置する。
【0042】
第1ドレープシート12では、一対のスリット126は大きく開かれ、折り畳まれていた一対の脇翼部122が広がる。一対の脇翼部122は、手術台の左右両側において、立ち上がり部14から垂れ下がる。ドレープ1では、脇翼部122が設けられることにより、立ち上がり部14を立ち上げた状態であっても、立ち上がり部14近傍においてドレープ本体11が上方に引っ張られることが防止され、手術台の左右両側に大きな清潔領域を確保することができる。
【0043】
続いて、図6に示すパウチ2の保形部材232が塑性変形されて受液口210が形成される。そして、2本の排液管3の先端(すなわち、第2排液管31の第1排液管24に接続される側の端部とは反対側の端部であり、図6中では図示を省略している。)は、手術台の下方に配置された廃液タンク等の容器内に収容される。手術部位からの液体は、受液口210を介してパウチ2内に流入し、排液口25を介して排液管3に流入し、排液管3を通過して容器内に貯溜される。
【0044】
排液管3の先端は、手術台の下方の床に設けられた廃液吸引用の吸引口等に接続されてもよい。当該吸引口が1つしか設けられていない場合には、図8に示すように、Y字管であるコネクタ51の2つの開口52に2本の排液管3の先端が接続され、コネクタ51の残り1つの開口である共通排液口53が吸引口に接続されることにより、2本の排液管3を通過した液体が共通排液口53を介して吸引口へと送出される。2本の排液管3の先端に接続可能なコネクタ51は、一方の排液管3の先端に接続された状態で、図2に示す使い捨て医療機器セット6のトレイ61に収容されてもよく、あるいは、排液管3に接続されることなく、ドレープ1の一部としてトレイ61に収容されてもよい。
【0045】
以上に説明したように、ドレープ1では、パウチ本体21の排液口25に接続される排液管3が、ドレープ本体11に設けられた貫通孔129を介してドレープ本体11の清潔面111側から不潔面112側へと延びる。これにより、排液管3の清潔面111側への露出を低減することができ、排液管3により施術者の動き等が阻害されること、すなわち、排液管3が手術の邪魔になることを抑制することができる。また、封止部4により、排液管3がドレープ本体11に固定されるため、清潔面111側に露出している排液管3に施術者が触れた場合であっても、排液管3が大きく動いて手術の邪魔になることを抑制することができる。さらに、封止部4により、貫通孔129が封止されることにより、清潔面111と不潔面112との連通を防止することができる。
【0046】
上述のように、封止部4は、伸縮性を有する貫通孔用シート128および粘着テープ41を備える。そして、排液管3が、貫通孔用シート128の孔周辺部128aを不潔面112側へと押し出した状態で伸縮性挿入口127に挿入され、粘着テープ41が、不潔面112側において孔周辺部128a上から排液管3に巻回される。ドレープ1では、封止部4をこのような構造とすることにより、ドレープ1の清潔面111側の構造を簡素化することができる。
【0047】
ドレープ1では、貫通孔129が、排液口25の近傍に設けられることにより、排液管3の清潔面111への露出を、より低減することができる。これにより、排液管3が手術の邪魔になることを、さらに抑制することができる。本実施の形態では、上述のように、貫通孔129と排液口25との間の最短距離が10cm以下であるため、清潔面111側において排液管3に施術者の手・脚等が引っかかることを、より抑制することができる。排液管3に施術者の手・脚等が引っかかることをさらに抑制するという観点からは、上記最短距離が5cm以下であることが好ましい。
【0048】
また、上述のように、排液管3が、ドレープ本体11の清潔面111側において、排液口25から貫通孔129に近づくに従って清潔面111に漸次近づくことにより、排液管3が手術の邪魔になることを、より一層抑制することができる。さらに、貫通孔129が、排液口25の開口110とは反対側に位置しており、ドレープ本体11により患者を覆った際に、貫通孔129が排液口25よりも下方に位置することにより、排液口25を通過した液体が、排液管3内にて留まることなく、廃液タンク等へと容易に流れる。
【0049】
ドレープ1では、パウチ本体21は、開口110の左右方向の両側に位置し、パウチ本体21の2つの排液口25も、開口110の左右方向の両側に設けられる。そして、2つの排液口25に接続される2本の排液管3が、2つの貫通孔129を介してドレープ本体11の清潔面111側から不潔面112側へと延びる。このため、2本の排液管3の先端が、手術台の下方にて、互いに接続されたり、1つの廃液タンク等に収容される場合であっても、ドレープ本体11が排液管3により手術台の下側に大きく巻き込まれてしまうことが防止され、手術台を囲む清潔面111の面積を大きく維持することができる。また、ドレープ1がコネクタ51を備えることにより、2本の排液管3の先端を容易に接続することができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0051】
例えば、ドレープ1の清潔面111側の構造を簡素化する必要が特にない場合には、排液管3が、貫通孔用シート128の孔周辺部128aを清潔面111側へと押し出した状態で伸縮性挿入口127に挿入され、粘着テープ41が、清潔面111側において孔周辺部128a上から排液管3に巻回されてもよい。
【0052】
封止部4は、必ずしも、貫通孔用シート128および粘着テープ41により形成される必要はなく、例えば、粘着テープ41に代えて、ゴム等の弾性部材により形成された円筒部材が、貫通孔用シート128の孔周辺部128a上から第2排液管31に嵌められることにより、排液管3がドレープ本体11に固定されるとともに、貫通孔129において排液管3とドレープ本体11との間が封止されてもよい。
【0053】
第2排液管31は、例えば、小径部と大径部とを交互に有する蛇腹状であってもよい。この場合、貫通孔用シート128の非伸張時に第2排液管31の小径部よりも小さい直径の略円形の伸縮性挿入口127が貫通孔用シート128に形成され、押し広げられた伸縮性挿入口127のエッジ全周が、第2排液管31の一の小径部に密着することにより、排液管3がドレープ本体11に固定されるとともに、貫通孔129において、排液管3とドレープ本体11との間が封止されてもよい。この場合、貫通孔用シート128が封止部4の役割を果たす。
【0054】
上記実施の形態では、第2排液管31の排液口25近傍の部位および第1排液管24が、ドレープ本体11の清潔面111側に位置しているが、例えば、図9に示すドレープ1aのように、第1排液管24が貫通孔129を介してドレープ本体11の清潔面111側から不潔面112側へと延び、不潔面112側において第1排液管24と第2排液管31とが接続されてもよい。この場合、第1排液管24により不潔面112側へと押し出された貫通孔用シート128の孔周辺部128aは、第1排液管24と第2排液管31との間に挟まれる。このため、粘着テープ41が省略されたとしても、貫通孔用シート128により、排液管3がドレープ本体11に固定されるとともに、貫通孔129において、排液管3とドレープ本体11との間が封止される。ドレープ1aでは、第2排液管31の清潔面111側への露出を防止することにより、排液管3が手術の邪魔になることをさらに抑制することができる。
【0055】
排液管3とパウチ本体21の排液口25との接続は、必ずしも、パウチ2の第1排液管24を介して行われる必要はなく、様々な接続形態が採用されてよい。ドレープ本体11は、必ずしも、第1ドレープシート12と第2ドレープシート13とを組み合わせることにより形成される必要はなく、1枚のシート部材の中央部に開口110が形成されたものであってもよい。
【0056】
パウチ本体21は、必ずしも上記実施の形態にて説明した形状である必要はなく、他の様々な形状であってもよい。例えば、パウチ本体21は、ドレープ本体11の開口110の左右両側に個別に配置され、それぞれが排液口25を有する2つの袋部であってもよい。ドレープ1は、肩関節や膝関節の内視鏡手術以外の様々な手術に利用可能であり、利用態様に合わせて、1本の排液管3が排液口25に接続された1つのパウチ本体21のみが、ドレープ本体11の開口110近傍に固定されてもよい。
【0057】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0058】
1,1a ドレープ
3 排液管
4 封止部
6 医療機器セット
11 ドレープ本体
21 パウチ本体
25 排液口
41 粘着テープ
51 コネクタ
53 共通排液口
110 開口
111 清潔面
112 不潔面
127 伸縮性挿入口
128 貫通孔用シート
128a 孔周辺部
129 貫通孔
223 受液口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術の際に患者を覆うシート状のドレープであって、
患者の手術部位を露出させる開口を有するドレープ本体と、
前記ドレープ本体の清潔面上において前記開口近傍に固定され、前記手術部位からの液体を受液口にて受けて排液口から排出するパウチ本体と、
前記排液口に接続され、前記ドレープ本体に設けられた貫通孔を介して前記ドレープ本体の前記清潔面側から不潔面側へと延びる排液管と、
前記貫通孔において、前記排液管と前記ドレープ本体のとの間を封止する封止部と、
を備えることを特徴とするドレープ。
【請求項2】
請求項1に記載のドレープであって、
前記貫通孔が、前記排液口の近傍に位置することを特徴とするドレープ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のドレープであって、
前記貫通孔が、前記ドレープ本体により患者を覆った際に、前記排液口よりも下方に位置することを特徴とするドレープ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のドレープであって、
前記排液管が、前記清潔面側において、前記排液口から前記貫通孔に近づくに従って前記清潔面に漸次近づくことを特徴とするドレープ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のドレープであって、
前記封止部が、
前記貫通孔を覆い、前記排液管が挿入される伸縮性挿入口を有する伸縮性シートと、
前記排液管に巻回される粘着テープと、
を備え、
前記伸縮性シートの非伸長時に、前記伸縮性挿入口の面積が、前記排液管の断面よりも小さく、
前記排液管が、前記伸縮性挿入口の周囲の孔周辺部を前記不潔面側へと押し出した状態で前記伸縮性挿入口に挿入されており、
前記粘着テープが、前記不潔面側において前記孔周辺部上から前記排液管に巻回されることを特徴とするドレープ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のドレープであって、
前記ドレープ本体が、他の貫通孔を有し、
前記貫通孔および前記他の貫通孔がそれぞれ、前記ドレープ本体の前記開口の左右方向の一方側および他方側に配置され、
前記パウチ本体が、前記開口の前記左右方向の両側に位置するとともに他の排液口をさらに有し、
前記排液口および前記他の排液口がそれぞれ、前記ドレープ本体の前記開口の前記左右方向の一方側および他方側に配置され、
前記ドレープが、
前記他の排液口に接続され、前記他の貫通孔を介して前記ドレープ本体の前記清潔面側から前記不潔面側へと延びる他の排液管と、
前記他の貫通孔において、前記他の排液管と前記ドレープ本体との間を封止する他の封止部と、
をさらに備えることを特徴とするドレープ。
【請求項7】
請求項6に記載のドレープであって、
前記パウチ本体が、前記開口の前記左右方向の一方側から他方側へと前記開口の周囲に沿って連続して設けられることを特徴とするドレープ。
【請求項8】
請求項6または7に記載のドレープであって、
前記排液管の先端と前記他の排液管の先端とに接続可能である、または、接続されており、前記排液管および前記他の排液管を通過した液体を送出する1つの共通排液口を有するコネクタをさらに備えることを特徴とするドレープ。
【請求項9】
使い捨て医療機器セットであって、
請求項1ないし8のいずれかに記載のドレープを含むことを特徴とする使い捨て医療機器セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−380(P2013−380A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134934(P2011−134934)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)