説明

ドレープ

【課題】医療施設において清潔領域を不潔領域から隔離することができるとともにドレープの引き裂きを容易とする。
【解決手段】ドレープのドレープ本体2は、第1シート41および第2シート42が積層された2層構造であり、第1シート41に形成された複数の貫通切り込み411の一方の開口を第2シート42により閉塞することにより、複数の非貫通の切り込み251が形成される。ドレープ本体2では、断続的かつ線状に配列された複数の切り込み251である切り込み線25が非貫通切り込み部23に設けられており、ドレープを患者上から撤去する際には、当該非貫通切り込み部23が切り込み線25に沿って引き裂かれる。これにより、医療処置時において医療施設内の清潔領域を、不潔領域である患者の体表から隔離することができるとともに医療処置後におけるドレープの引き裂きを容易とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療施設内において患者または医療用物品である被覆対象を覆うシート状のドレープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、手術室や病室等の医療施設内において医療処置が行われる際には、不潔領域と規定される患者の体表や医療装置等の医療用物品の表面を医療用のドレープにて覆い、清潔領域を当該不潔領域から隔離することが行われている。
【0003】
患者を覆うドレープでは、患者の処置対象部位をドレープから露出させるための開口が設けられている。例えば、特許文献1の医療用のドレープでは、基布の孔(開口)を覆う開窓蓋が基布に固着されており、当該開窓蓋に設けられた矩形枠状のミシン目に沿って開窓蓋の一部を切り離すことにより患者の体表が部分的に露出する。
【0004】
一方、特許文献2では、眼の周囲においてまぶたに貼付される眼科用のドレープが開示されており、当該ドレープのシートには眼球を露出させる開口部が設けられている。当該ドレープでは、シートの開口からシート端部まで伸びる2本のミシン目が形成されており、ミシン目に沿ってシートを2つに分割して上下のまぶたにそれぞれ貼付することにより、患者の目の大きさや形状に合わせてシートが適切に配置される。
【特許文献1】特開2004−81566号公報
【特許文献2】特表2001−517532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、医療処置が終了すると、患者を覆っているドレープが患者上から撤去されるが、例えば、硬膜外麻酔や中心静脈カテーテル処置等、患者の体内にチューブ等を挿入した状態で処置を終了する場合、チューブがドレープの開口を介して体内に留置されているため、このままの状態ではドレープを撤去することが困難である。
【0006】
そこで、開口部から周縁部までハサミを用いてドレープを切り裂いた後、チューブが切り裂き部を通過するようにドレープを撤去することが行われている。しかしながら、ハサミを用いてドレープを切り裂く作業は、ドレープ自体が大きく、さらに、ドレープの下の患者をハサミで傷つけることがないように注意する必要もあるため、作業者(すなわち、施術者)の負担が大きくなってしまう。また、ドレープの撤去に要する時間も増大してしまう。
【0007】
一方、ハサミを用いずにドレープを容易に切り裂く方法として、特許文献1および特許文献2に示すようなミシン目を予めドレープに形成しておき、ドレープを撤去する際に、当該ミシン目に沿ってドレープを手で引き裂くことが考えられる。しかしながら、特許文献2に記載されているように、ミシン目はシートを貫通して形成されるため、ミシン目を介して不潔領域と清潔領域とが連通してしまい、医療処置時における清潔領域の不潔領域からの隔離が困難となる恐れがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、清潔領域を不潔領域から隔離することができるとともにドレープの引き裂きを容易とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、医療施設内において患者または医療用物品である被覆対象を覆うシート状のドレープであって、一方の面に断続的に形成された複数の非貫通の切り込みである切り込み線を有する非貫通切り込み部と、前記非貫通切り込み部の両側に連続して広がり、前記非貫通切り込み部と共に被覆対象を覆う被覆部とを備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のドレープであって、前記切り込み線が、前記非貫通切り込み部のシート端部から内側に向かって設けられる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のドレープであって、前記被覆対象を部分的に露出させる開口が形成されており、前記非貫通切り込み部が、前記シート端部から前記開口に向かって伸びる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のドレープであって、前記被覆対象に対向する面上において前記開口の周囲に配置された粘着層をさらに備え、前記切り込み線が、前記非貫通切り込み部の前記被覆対象とは反対側の面に形成されており、前記粘着層が、前記切り込み線に重なって断続的に形成された複数の切り込みを有する。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載のドレープであって、前記被覆対象に対向する面上において前記開口の周囲に配置された粘着層をさらに備え、前記切り込み線が、前記非貫通切り込み部の前記被覆対象に対向する面に形成されており、前記粘着層が設けられる領域において前記切り込み線が前記粘着層を貫通する切り込みにて形成されている。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載のドレープであって、前記非貫通切り込み部が、断続的かつ線状に配列された複数の貫通切り込みが形成された第1シートと、前記第1シートに積層されて前記複数の貫通切り込みの一方の開口を閉塞することにより前記切り込み線を形成する第2シートとを備える。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のドレープであって、前記非貫通切り込み部が、前記第1シートに積層されて前記複数の貫通切り込みの他方の開口を閉塞する第3シートをさらに備える。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載のドレープであって、前記非貫通切り込み部が、プラスチックフィルムにより形成される。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載のドレープであって、前記被覆部が、無延伸プラスチックフィルムにより形成される。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載のドレープであって、前記被覆部が、透明または半透明である。
【0019】
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載のドレープであって、前記切り込み線が有する非貫通の各切り込みが、前記非貫通切り込み部の引き裂き時に、直前に引き裂かれる切り込みから伸びる開裂が到達する予定の範囲を横断する。
【0020】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のドレープであって、前記切り込み線が、互いに平行な第1切り込み列および第2切り込み列を有し、前記第1切り込み列が、開裂の進行方向に向かうとともに前記第2切り込み列に向かって傾斜する切り込みの配列であり、前記第2切り込み列が、前記進行方向に向かうとともに前記第1切り込み列に向かって傾斜する切り込みの配列である。
【0021】
請求項13に記載の発明は、請求項1ないし12のいずれかに記載のドレープであって、前記被覆対象が、医療処置が行われる患者である。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、清潔領域を不潔領域から隔離することができるとともにドレープの引き裂きを容易とすることができる。請求項4および5の発明では、開口が被覆対象からずれることを防止しつつ非貫通切り込み部の引き裂きの容易さを確保することができる。請求項6の発明では、ドレープの製造を容易とすることができる。
【0023】
請求項7の発明では、ドレープからのリントの発生を防止することができる。請求項8の発明では、ドレープを引き裂く際のリントの発生を防止することができる。請求項11および12の発明では、ドレープを引き裂く際に、開裂が切り込み線から逸れることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る医療用のドレープ1を示す平面図である。ドレープ1は、滅菌処理が施されたシート状部材であり、手術室や病室等の医療施設内において手術等の医療処置が行われる患者を覆うことにより、不潔領域である患者の体表から清潔領域を隔離する。
【0025】
図1に示すように、ドレープ1は、略中央に円形の開口20が形成された矩形状のドレープ本体2、および、ドレープ本体2の患者に対向する面21(すなわち、不潔領域に対向する側の面であり、以下、「下面21」と呼ぶが、使用時に物理的に下方を向いている必要はない。)において開口20の周囲に形成された粘着層3を備える。ドレープ1により患者を覆う際には、開口20が医療処置が行われる部位(以下、「処置対象部位」という。)上に位置するようにドレープ本体2が配置された状態で、粘着層3が当該処置対象部位の周囲の皮膚に貼付されることにより、処置対象部位がドレープ本体2から露出する。換言すれば、ドレープ1により患者が覆われた状態では、開口20を介して患者の体表が部分的に露出しており、当該開口20を介することにより、患者の処置対象部位に容易にアクセスすることができる。
【0026】
ドレープ本体2では、開口20を通る矩形状の細長い領域230(図1中において二点鎖線にて囲んで示す。)において、患者とは反対側の面22(すなわち、施術者が立つ清潔領域に対向する側の面であり、以下、「上面22」と呼ぶが、使用時に物理的に上方を向く必要はない。)に、下面21に非貫通とされる2本の切り込み線25a,25b(すなわち、開口20から上下に伸びる切り込み線)が形成される。以下の説明では、ドレープ本体2の上記領域230に含まれる部位を、「非貫通切り込み部23」と呼び、ドレープ本体2の非貫通切り込み部23以外の部位24(すなわち、図1中の非貫通切り込み部23の左右両側において非貫通切り込み部23に連続して広がる部位)を、「被覆部24」と呼ぶ。
【0027】
各切り込み線25a,25bは、上面22に形成された複数の非貫通の切り込みが断続的かつ線状に配列されることにより形成されている。図1では、図示の都合上、切り込み線25a,25bを破線の集合として簡略化して描いているが、実際の切り込み線25a,25bの複数の切り込みの形状は、図1に示すものとは異なる(図4においても同様)。切り込み線25a,25bの複数の切り込みの詳細な形状については後述する。
【0028】
ドレープ本体2の非貫通切り込み部23では、一方の切り込み線25aが、ドレープ1のシート端部(すなわち、ドレープ本体2の外周エッジ)から開口20に向かって(すなわち、ドレープ本体2の内側に向かって)直線状に伸びている。また、他方の切り込み線25bは、開口20の切り込み線25aとは反対側において、切り込み線25aの延長上に配置され、ドレープ1のシート端部から開口20に向かって直線状に伸びている。医療施設内では、ドレープ1のドレープ本体2(すなわち、非貫通切り込み部23および被覆部24)により患者が覆われており、開口20を介して医療処置が行われた後、ドレープ1が患者上から撤去される。
【0029】
ところで、例えば、硬膜外麻酔や中心静脈カテーテル処置等、患者の体内にチューブ等を挿入した状態で処置を終了する場合、当該チューブがドレープ1の開口20を介して体内に留置されているため、このままの状態ではドレープを撤去することが困難である。このような場合、ドレープ1の患者上からの撤去時には、ドレープ本体2の非貫通切り込み部23が、施術者の手によりハサミ等の器具を利用することなく切り込み線25a,25b(以下、「切り込み線25」と総称する。)のいずれか一方(あるいは、双方)に沿って引き裂かれる。このとき、非貫通切り込み部23は通常、開口20側からドレープ1のシート端部に向けて引き裂かれる。以下の説明では、各切り込み線25に沿って開口20側からシート端部に向かう方向(すなわち、非貫通切り込み部23の引き裂き時に開裂が伸展する方向)を、各切り込み線25または開裂の「進行方向」という。
【0030】
図2は、ドレープ1の図1中における上側の切り込み線(すなわち、切り込み線25a)近傍の部位を拡大して示す平面図である。以下、図2を参照しつつ切り込み線25の複数の切り込みの形状および配置について説明する。なお、図1中における下側の切り込み線(すなわち、切り込み線25b)では、複数の切り込みの形状および配置は、切り込み線25aと180°向きが異なる点を除いて同様である。
【0031】
図2に示すように、切り込み線25の複数の切り込み251は、それぞれが切り込み線25の進行方向(すなわち、図2中の上向きの方向)に対して一方側(すなわち、図2中における時計回りの方向)に所定の角度だけ傾く直線状の複数の第1切り込み(以下、符号「251a」を付す。)、および、複数の第1切り込み251aの図2中における右側に配置され、それぞれが当該切り込み線25の進行方向に対して他方側(すなわち、図2中における反時計回りの方向)に所定の角度だけ傾く直線状の複数の第2切り込み(以下、符号「251b」を付す。)を含む。
【0032】
各第1切り込み251aおよび各第2切り込み251bの進行方向に対する傾きの大きさは等しく、本実施の形態では、それぞれ時計回りに約45°、および、反時計回りに約45°とされる。すなわち、各第1切り込み251aは、進行方向側の端部が複数の第2切り込み251bに近づく方向に傾いており、各第2切り込み251bは、進行方向側の端部が複数の第1切り込み251aに近づく方向に傾いている。
【0033】
切り込み線25では、複数の第1切り込み251aが切り込み線25の進行方向に平行な3列に配列されおり、複数の第2切り込み251bも、第1切り込み251aの各配列に隣接するように切り込み線25の進行方向に平行に3列に配列されている。以下の説明では、第1切り込み251aの3つの配列を、それぞれ「第1切り込み列252a」といい、第2切り込み251bの3つの配列を、それぞれ「第2切り込み列252b」という。第1切り込み列252aと第2切り込み列252bとは、第1切り込み列252aの進行方向に向かって右側に必ず第2切り込み列252bが存在するように、切り込み線25の幅方向に交互に配置される。換言すれば、図2中の左側から右側に向かって、3組の第1切り込み列252aおよび第2切り込み列252bの組合せが幅方向に配列される。
【0034】
第1切り込み列252aおよび第2切り込み列252bの各組合せでは、複数の第1切り込み251aが、開裂の進行方向に向かうとともに第2切り込み列252bに向かって傾斜しており、複数の第2切り込み251bが、開裂の進行方向に向かうとともに第1切り込み列252aに向かって傾斜している。また、第1切り込み列252aに含まれる複数の第1切り込み251aはそれぞれ、第2切り込み列252bに含まれる複数の第2切り込み251bと幅方向において隣接しており、1組の隣接する第1切り込み251aおよび第2切り込み251bは、「ハ」の字状となっている。
【0035】
各第1切り込み列252aでは、複数の第1切り込み251aの進行方向側の端部、および、進行方向とは反対側の端部がそれぞれ進行方向に平行な直線上に位置しており、各第2切り込み列252bでも同様に、複数の第2切り込み251bの進行方向側の端部、および、進行方向とは反対側の端部がそれぞれ進行方向に平行な直線上に位置している。
【0036】
また、第1切り込み列252aにおいて、第1切り込み251aの進行方向側の端部から当該端部近傍の傾きに沿って延長された延長線254(図2中において、破線にて示す。)は、進行方向側に配置される第2切り込み251bと交差する(第2切り込み列252bにおいても同様)。第1切り込み列252aおよび第2切り込み列252bをこのように配置することにより、例えば、一の第1切り込み251aから若干左側に傾きつつ引き裂き時の開裂が進んだとしても次の第1切り込み251aへと到達し、若干右側に傾きつつ開裂が進んだとしてもいずれかの第2切り込み251bへと到達することとなる。このように、切り込み線25の第1切り込み列252aおよび第2切り込み列252bの各組合せでは、複数の切り込み251が、非貫通切り込み部23の引き裂き時に直前に引き裂かれる切り込み251から伸びる開裂が到達する予定の範囲を横断するように配置される。
【0037】
図3.Aは、ドレープ1を図1および図2中のA−Aの位置にて切断した断面を示す図である。図3.Aでは、切り込み線25近傍の断面を示しており、図示の都合上、各切り込み251の幅を実際よりも大きく描いている。図3.Aに示すように、ドレープ本体2は、2枚のシート状部材41,42が積層された2層構造であり、以下の説明では、患者とは反対側のシート状部材を「第1シート41」、患者に対向するシート状部材を「第2シート42」と呼ぶ。第1シート41には、断続的かつ線状に配列された複数の貫通切り込み411が形成されており、平滑な(すなわち、切り込みが形成されていない)第2シート42が第1シート41の一方の面上に押出ラミネート等により積層されて複数の貫通切り込み411の一方(すなわち、下側)の開口を閉塞することにより、切り込み線25の複数の切り込み251が形成される。
【0038】
第1シート41および第2シート42は、好ましくは、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系のプラスチックフィルムにより形成され、本実施の形態では、透明または半透明の無延伸フィルムにより形成されている。第1シート41および第2シート42の合計厚さ(すなわち、ドレープ本体2の厚さ)は、好ましくは、60μm〜100μmである。ドレープ本体2の厚さが60μm以上とされることにより、ドレープ1の強度を十分に確保することができ、ドレープ本体2の厚さが100μm以下とされることにより、ドレープ1の風合いを柔らかくしてドレープ1の患者に対する密着性を向上することができる。
【0039】
また、第1シート41および第2シート42には、帯電防止処理が施されている。このため、空気中に浮遊する繊維片(いわゆる、リント)や埃等を吸着してしまうことを防止することができる。帯電防止処理は、例えば、第1シート41および第2シート42の元部材となるプラスチックフィルムを形成する際に、プラスチック材料に帯電防止材料(例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤)を含有させることにより行われる。また、当該プラスチックフィルムの表面に帯電防止材料をコーティングすることにより、帯電防止処理が行われてもよい。
【0040】
図3.Bは、ドレープ1を図1および図2中のB−Bの位置にて切断した断面を示す図である。図3.Bでは、切り込み線25近傍の断面を示している。図3.Bに示すように、粘着層3は、平面視においてドレープ本体2の切り込み線25の一部(すなわち、平面視において粘着層3と重なっている複数の切り込み251)に重なって断続的に形成された複数の切り込み261である粘着層切り込み線26を非貫通切り込み部23に有する。図3.Bでは、図示の都合上、各切り込み261の幅を実際よりも大きく描いている。複数の切り込み261は、粘着層3を貫通して形成されており、当該複数の切り込み261の一方の開口(すなわち、図3.B中の上側の開口)はドレープ本体2により閉塞される。
【0041】
図1に示すドレープ1の非貫通切り込み部23が引き裂かれる際には、ドレープ本体2および粘着層3が、開口20のエッジから切り込み線25および粘着層切り込み線26(図3.B参照)に沿って引き裂かれ、粘着層3の端部に到達した後は、ドレープ本体2のみが切り込み線25に沿って引き裂かれる(図2参照)。
【0042】
以上に説明したように、ドレープ1では、複数の切り込み251である切り込み線25がドレープ本体2の非貫通切り込み部23に設けられており、ドレープ1を患者上から撤去する際には、必要に応じて、当該非貫通切り込み部23が切り込み線25に沿って引き裂かれる。また、非貫通切り込み部23では、切り込み線25の複数の切り込み251がドレープ本体2に対して非貫通とされる(すなわち、複数の切り込み251がドレープ本体2の上面22に形成されて下面21に対して非貫通とされる)。これにより、医療処置時において医療施設内の清潔領域を不潔領域である患者の体表から隔離することができるとともに医療処置後におけるドレープ1の引き裂きを容易とすることができる。その結果、ドレープ1の撤去を容易かつ迅速に行うことができる。ドレープ1では、切り込み線25が、複数の切り込み251を断続的に配列することにより形成されているため、ドレープ1の強度を十分に確保することができる。
【0043】
医療処置が行われる際には、患者の負担軽減等の観点から、医療処置に要する時間は可能な限り短縮されることが好ましい。上述のように、ドレープ1は、切り込み線25に沿って容易に引き裂くことができ、撤去を迅速に行って医療処置に要する時間を短縮することができるため、医療施設内において医療処置が行われる患者の被覆に特に適している。また、ドレープ1は、切り込み線25を非貫通とすることにより清潔領域を不潔領域から隔離することができるため、発汗等により不潔領域となりやすい患者の体表を覆うドレープに特に適している。
【0044】
ドレープ1では、ドレープ本体2の下面21において、開口20の周囲に粘着層3が配置されており、粘着層3に、ドレープ本体2に形成された切り込み線25と重なる粘着層切り込み線26が形成されることにより、開口20が患者の処置対象部位からずれることを防止しつつ、粘着層3が設けられる部位においても非貫通切り込み部23の引き裂きの容易さを確保することができる。
【0045】
ところで、シート状の基材にミシン目等の切り込み線を形成する方法として、外側面に複数の切断刃が設けられた円筒状のロールカッタを回転させた状態で、シート状の基材を、ロールカッタの外側面と支持部材との間を通過させることにより、複数の切断刃により基材の複数箇所に小さな貫通切り込みを形成する方法が知られている。この方法において、切り込み線をシート状の基材に対して非貫通とする場合、ロールカッタの切断刃とシート状の基材との間の距離を精度良く制御する必要がある。特に、シート状の基材が薄い場合には、当該距離に対してさらに高精度な制御が求められる。
【0046】
これに対し、ドレープ1では、ドレープ本体2が第1シート41および第2シート42の2層構造とされ、第1シート41の複数の貫通切り込み411の一方の開口が、第2シート42により閉塞されることにより、ドレープ本体2に対して非貫通である切り込み線25の複数の切り込み251が形成される。ドレープ1の製造では、第1シート41の複数の貫通切り込み411は、上述のロールカッタを利用する方法により容易に形成される。したがって、単層構造のドレープ本体に非貫通の切り込みを形成する場合に比べて、切り込み線25を容易かつ確実に形成することができ、ドレープ1を容易に製造することができる。
【0047】
なお、ドレープ1では、ドレープ本体2の非貫通切り込み部23のみを、第1シート41および第2シート42により構成される2層構造とし、被覆部24を単層構造とした場合であっても、上記と同様に、非貫通の切り込み線25を容易かつ確実に形成することができ、ドレープ1を容易に製造することができる。
【0048】
上述のように、切り込み線25では、複数の切り込み251のそれぞれが直線状とされる。このため、上述のロールカッタの外側面に設けられる複数の切断刃の形状を簡素なものとすることができ、ドレープ1の製造に係るコストを低減することができる。
【0049】
切り込み線25の第1切り込み列252aおよび第2切り込み列252bの各組合せでは、各切り込み251が、非貫通切り込み部23の引き裂き時に直前に引き裂かれる切り込み251から伸びる開裂が到達する予定の範囲を横断するように配置される。これにより、ドレープ1の非貫通切り込み部23を引き裂く際に、開裂が切り込み線25から逸れて進行方向とは異なる方向に伸展してしまうことを防止することができる。
【0050】
また、第1切り込み列252aおよび第2切り込み列252bの各組合せでは、複数の第1切り込み251aが、開裂の進行方向に向かうとともに第2切り込み列252bに向かって傾斜しており、複数の第2切り込み251bが、開裂の進行方向に向かうとともに第1切り込み列252aに向かって傾斜している。このため、開裂が第1切り込み251aまたは第2切り込み251bに到達すると、当該開裂は、第1切り込み251aまたは第2切り込み251bにより第1切り込み列252aと第2切り込み列252bとの間の領域に向かって導かれる。これにより、ドレープ1の非貫通切り込み部23を引き裂く際に、開裂が切り込み線25から逸れてしまうことをさらに確実に防止することができる。
【0051】
さらには、切り込み線25が、各第1切り込み251aおよび各第2切り込み251bの進行方向側の端部を近づけて隣接して配置される第1切り込み列252aおよび第2切り込み列252bの組み合わせを3組有するため、ドレープ1の非貫通切り込み部23を引き裂く際に、開裂が切り込み線25から逸れてしまうことをより一層確実に防止することができる。
【0052】
ドレープ1では、ドレープ本体2(すなわち、第1シート41および第2シート42)がプラスチックフィルムにより形成されているため、ドレープ1の非貫通切り込み部23を引き裂く際のリント(すなわち、繊維片)の発生を防止することができる。特に、本実施の形態では、ドレープ本体2の全体が無延伸プラスチックフィルムにより形成されているため、ドレープ1の風合いを柔らかくすることができ、その結果、ドレープ1の患者に対する密着性を向上して患者をより確実に覆うことができる。
【0053】
なお、ドレープ1では、ドレープ本体2の非貫通切り込み部23のみがプラスチックフィルムにより形成され、被覆部24が他の材料により形成されている場合であっても、上記と同様に、ドレープ1の非貫通切り込み部23を引き裂く際のリントの発生を防止することができる。また、ドレープ本体2では、被覆部24の面積が非貫通切り込み部23に比べて大きいため、上記とは逆に、被覆部24のみが無延伸プラスチックフィルムにより形成され、非貫通切り込み部23が他の材料により形成されている場合であっても、ドレープ1の風合いを柔らかくすることができ、ドレープ1の患者に対する密着性を向上して患者をより確実に覆うことができる。
【0054】
上述のように、ドレープ1では、ドレープ本体2(すなわち、非貫通切り込み部23および被覆部24)が透明または半透明とされるため、ドレープ1を介して患者や手術台等のドレープ1に覆われている被覆対象を容易に視認することができる。その結果、医療処置中の患者の様子を容易に確認するすることができるとともに、医療処置後の患者上からのドレープ1の撤去を容易とすることができる。また、医療処置前に患者をドレープ1により覆う際にも、当該被覆を容易とすることができる。なお、ドレープ本体2では、被覆部24の面積が非貫通切り込み部23に比べて大きいため、被覆部24のみが透明または半透明とされ、非貫通切り込み部23が不透明とされる場合であっても、医療処置中の患者の様子を容易に確認するすることができるとともに、医療処置後の患者上からのドレープ1の撤去を容易とすることができる。
【0055】
次に、第2の実施の形態に係るドレープについて説明する。図4は、第2の実施の形態に係るドレープ1aを示す平面図であり、図5は、ドレープ1aを図4中のC−Cの位置にて切断した断面の一部を拡大して示す図である。図4および図5に示すように、ドレープ1aでは、ドレープ本体2の非貫通切り込み部23の下面21に非貫通の切り込み線25が形成される。その他の構成は、図1ないし図3.Bに示すドレープ1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0056】
図5に示すように、ドレープ1aのドレープ本体2は、第1の実施の形態と同様に、第1シート41および第2シート42を備える2層構造とされる。ドレープ1aでは、第2シート42に断続的かつ線状に配列された複数の貫通切り込み411が形成されており、平滑な第1シート41により複数の貫通切り込み411の一方の開口が閉塞されることにより、切り込み線25の複数の非貫通の切り込み251が形成される。なお、図5では図4に示す粘着層3も示されている。
【0057】
ドレープ1aでは、第1の実施の形態と同様に、複数の非貫通の切り込み251である切り込み線25がドレープ本体2の非貫通切り込み部23に設けられることにより、医療処置時において医療施設内の清潔領域を、不潔領域である患者の体表から隔離することができるとともに医療処置後におけるドレープ1aの非貫通切り込み部23の引き裂きを容易とすることができる。その結果、ドレープ1aの撤去を容易かつ迅速に行うことができる。
【0058】
図5に示すように、ドレープ1aでは、粘着層3が、ドレープ本体2の切り込み線25の一部(すなわち、平面視において粘着層3と重なっている複数の切り込み251)に重なって断続的に形成された複数の切り込み261を有する。換言すれば、粘着層3が設けられる領域において、切り込み線25は粘着層3を貫通する切り込みにて形成されている。これにより、第1の実施の形態と同様に、開口20が患者の処置対象部位からずれることを防止しつつ、粘着層3が設けられる部位においても非貫通切り込み部23の引き裂きの容易さを確保することができる。
【0059】
第2の実施の形態に係るドレープ1aでは、特に、粘着層3が設けられる領域において、複数の切り込み251と複数の切り込み261とを同時に(すなわち、一の切り込み工程により)形成することができる。このため、図3.Bに示すドレープ1のように切り込み線25が、ドレープ本体2の粘着層切り込み線26が形成される側とは反対側の上面22に形成される場合に比べて、ドレープ1aの製造を容易とすることができる。
【0060】
一方、第1の実施の形態に係るドレープ1では、図3.Aおよび図3.Bに示すように、切り込み線25がドレープ本体2の非貫通切り込み部23の上面22に形成されているため、図5に示すように切り込み線25がドレープ本体2の下面21に形成される場合に比べて、施術者による切り込み線25の視認を容易とすることができ、非貫通切り込み部23の引き裂きをより容易とすることができる。
【0061】
次に、第3の実施の形態に係るドレープについて説明する。図6は、第3の実施の形態に係るドレープ1bの一部を示す断面図であり、図3.Bおよび図5に対応する部位を示す。図6に示すように、ドレープ1bは、第1シート41の第2シート42とは反対側に積層される第3シート43を備える。その他の構成は、図1ないし図3.Bに示すドレープ1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0062】
図6に示すように、ドレープ1bのドレープ本体2は、第1シート41、第2シート42および第3シート43を備える3層構造とされる。ドレープ1bでは、第1シート41に形成されている複数の貫通切り込み411の第2シート42とは反対側の開口が第3シート43により閉塞される。これにより、ドレープ本体2の内部に(すなわち、ドレープ本体2の下面21と上面22との間に)、それぞれが密閉された微小空間である複数の非貫通の切り込み251が形成される。
【0063】
ドレープ1bでは、第1の実施の形態と同様に、複数の非貫通の切り込み251である切り込み線25がドレープ本体2の非貫通切り込み部23に設けられることにより、医療処置時において医療施設内の清潔領域を、不潔領域である患者の体表から隔離することができるとともに医療処置後におけるドレープ1bの非貫通切り込み部23の引き裂きを容易とすることができる。その結果、ドレープ1bの撤去を容易かつ迅速に行うことができる。
【0064】
図6に示すように、ドレープ1bでは、粘着層3が、ドレープ本体2の切り込み線25の一部(すなわち、平面視において粘着層3と重なっている複数の切り込み251)に重なって断続的に形成された複数の切り込み261を有する。これにより、第1の実施の形態と同様に、開口20が患者の処置対象部位からずれることを防止しつつ、粘着層3が設けられる部位においても非貫通切り込み部23の引き裂きの容易さを確保することができる。
【0065】
第3の実施の形態に係るドレープ1bでは、特に、第1シート41の両面が第2シート42および第3シート43により覆われ、さらに、複数の切り込み251が密閉されるため、当該複数の切り込み251の形成時に発生した微小な切削屑が切り込み251内や第1シート41の表面に付着していた場合であっても、これらの切削屑が医療施設内に浮遊してリントとなること(すなわち、ドレープ1bからのリントの発生)を防止することができる。
【0066】
なお、複数の切り込み251の形成時に発生した切削屑が第1シート41に付着する場合、切削屑の付着領域は切り込み線25の近傍(すなわち、非貫通切り込み部23)となる可能性が高い。したがって、ドレープ本体2の非貫通切り込み部23のみを、第1シート41、第2シート42および第3シート43により構成される3層構造とし、被覆部24を単層構造とした場合であっても、上記と同様に、ドレープ1bからのリントの発生を防止(あるいは、抑制)することができる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0068】
例えば、上記実施の形態に係るドレープが患者上から撤去される際には、非貫通切り込み部23が、ドレープのシート端部から開口20に向けて引き裂かれてもよい。この場合であっても、複数の切り込み251が、直前に引き裂かれる切り込み251から伸びる開裂が到達する予定の範囲を横断するように配置されているため、引き裂き時の開裂が切り込み線25から逸れて進行方向とは異なる方向に伸展してしまうことを防止することができる。
【0069】
上記実施の形態にかかるドレープの非貫通切り込み部23では、粘着層切り込み線26の複数の切り込み261は、必ずしも切り込み線25の複数の切り込み251に重なって形成される必要はなく、切り込み線25の切り込み251と異なる形状の切り込み261が粘着層3に形成されてもよい。例えば、進行方向に平行な直線状の複数の切り込みが、粘着層3において進行方向に沿って直線状に配列されて形成されることにより、非貫通切り込み部23に粘着層切り込み線26が設けられてもよい。
【0070】
上記実施の形態にかかるドレープの切り込み線25では、3組の第1切り込み列252aおよび第2切り込み列252bの組み合わせが幅方向に配列されているが、1組または2組の第1切り込み列252aおよび第2切り込み列252bの組み合わせが切り込み線25とされてもよい。あるいは、切り込み線25は、4組以上の第1切り込み列252aおよび第2切り込み列252bの組み合わせを備えていてもよい。
【0071】
切り込み線25の複数の切り込み251の形状および配置は、上記実施の形態において説明されたものには限定されない。図7.Aないし図7.Gは、切り込み線25の他の好ましい例を示す図である。図7.Aないし図7.Gでは、非貫通切り込み部23の引き裂き時に、図中の下側から上側に向かって開裂が伸展する。すなわち、図中の下側から上側に向かう方向が開裂の進行方向となっている。なお、図7.Bないし図7.Eでは、図中の上側から下側に向かう方向が開裂の進行方向とされてもよい。図7.Aないし図7.Gに示す切り込み線25では、非貫通の各切り込みが、非貫通切り込み部23の引き裂き時に、直前に引き裂かれる切り込みから伸びる開裂が到達する予定の範囲を横断する。
【0072】
図7.Aの切り込み線25では、図2と同様の直線状の複数の第1切り込み251cおよび第2切り込み251dが開列の進行方向に沿って交互に配置される。各第1切り込み251cは、進行方向に向かうとともに進行方向にて隣接する切り込み251dに向かって傾斜しており、各第2切り込み251dは、開列の進行方向に向かうとともに進行方向にて隣接する第1切り込み251cに向かって傾斜している。
【0073】
図7.Bの切り込み線25では、開裂の進行方向に関して線対称に配置された半円弧状の切り込み251e,251fが、両側の端部を互いに対向させつつ進行方向に沿って複数配列される。図7.Cの切り込み線25では、図7.Bと同様の半円弧状の複数の切り込み251eが、複数の切り込み251fに対して進行方向にずれて配列されており、さらに、各切り込み251eの端部が、幅方向において各切り込み251fの端部と重なっている。
【0074】
図7.Dの切り込み線25では、開裂の進行方向に関して線対称に配置された2つの直線部からなる折れ線状(いわゆる、くの字状)の切り込み251g,251hが、両側の端部を互いに対向させつつ進行方向に沿って複数配列される。図7.Eの切り込み線25では、図7.Dと同様の折れ線状の複数の切り込み251gが、複数の切り込み251hに対して進行方向にずれて配列されており、各切り込み251gの端部が、幅方向において各切り込み251hの端部と重なっている。
【0075】
図7.Fの切り込み線25では、逆Y字状の複数の切り込み251iが進行方向に沿って配列される。図7.Gの切り込み線25では、図7.Fに示す切り込み251iの進行方向と反対側の2つの直線部を半円弧状に変更した形状を有する切り込み251jが進行方向に沿って配列される。図7.Fの切り込み線25では、切り込み251iを180°回転させた切り込み(すなわち、Y字状の切り込み)が、複数の切り込み251iに隣接して複数配置されてもよい。これにより、図中の上側から下側に向けて引き裂かれる場合であっても、引き裂き時の開裂が切り込み線25から逸れて進行方向とは異なる方向に伸展してしまうことを防止することができる(図7.Gにおいても同様)。
【0076】
また、切り込み線25では、進行方向に平行な直線状の複数の切り込みが、進行方向に沿って直線状に配列されてもよく、当該切り込みの列が、幅方向に2列以上配列されてもよい。また、平面視において円形の複数の微小凹部が、切り込み線25の複数の非貫通の切り込みとされてもよい。ドレープ1では、1本のみまたは3本以上の切り込み線25がドレープ本体2に設けられてもよい。
【0077】
非貫通切り込み部23では、切り込み線は、必ずしもドレープのシート端部から設けられる必要はなく、例えば、シート端部よりも内側から開口20に向かって直線状に伸びるように設けられてもよい。また、切り込み線は、必ずしも直線状とされる必要はなく、例えば、ドレープのシート端部と開口20との間で蛇行するように設けられてもよい。
【0078】
上記実施の形態に係るドレープでは、ドレープ本体2は必ずしも2層構造または3層構造とされる必要はなく、例えば、プラスチックフィルムを4層以上積層することによりドレープ本体2が形成されてもよい。また、切り込み線25の複数の切り込み251の深さを高精度に制御して非貫通とすることができる場合には、ドレープ本体2は単層構造とされてもよい。
【0079】
ドレープ本体2は、必ずしも、押出ラミネートにより形成される必要はなく、例えば、複数の貫通切り込みが形成された単層(または、積層構造)のプラスチックフィルムに、当該複数の貫通切り込みの一方または双方の開口を閉塞する帯状の粘着テープ等が貼付されることにより形成されてもよい。また、複数の貫通切り込みが形成された単層(または、積層構造)のプラスチックフィルムに対して、一方または双方の主面に樹脂等がコーティングされることにより、非貫通の切り込み線25を有するドレープ本体2が形成されてもよい。
【0080】
ドレープ本体2は、必ずしも、プラスチックフィルムにより形成される必要はなく、例えば、不織布により形成されてもよい。非貫通切り込み部23を引き裂く際のリントの発生を防止するという観点から、非貫通切り込み部23がプラスチックフィルムにより形成され、被覆部24が不織布により形成されてもよい。
【0081】
上記実施の形態に係るドレープでは、開口20は必ずしもドレープ本体2の中央に形成される必要はなく、医療処置の内容に応じてドレープ本体2の様々な位置に設けられてよい。また、開口20の形状も円形には限定されず、医療処置の内容に応じて楕円形や矩形等、様々な形状とされてよい。
【0082】
図8は、ドレープの他の好ましい例を示す平面図である。図8に示すドレープ1cでは、ドレープ本体2が、円形の開口20が形成された矩形状のプラスチックフィルム11、および、プラスチックフィルム11の3辺に連続する不織布12を備え、プラスチックフィルム11には、開口20から直線状に伸びる2本の非貫通の切り込み線25a,25bが非貫通切り込み部23に形成されている。切り込み線25aは、ドレープ1cのシート端部から開口20に向かって伸びており、ドレープ1cが患者上から撤去される際には、切り込み線25aが開口20側またはシート端部側から引き裂かれる。
【0083】
図9は、ドレープの他の好ましい例を示す平面図である。図9に示すドレープ1dでは、円周状の複数の非貫通切り込み部23aがドレープ本体2上において同心円状に設けられており、各非貫通切り込み部23aの外側および内側(すなわち、両側)の部位が被覆部24となる。ドレープ1dにより患者が覆われる際には、処置対象部位の大きさに合わせていずれか一の非貫通切り込み部23aが引き裂かれ、当該非貫通切り込み部23aの内側の部位がドレープ本体2から除去されることにより開口が形成される。なお、ドレープ1dでは、非貫通切り込み部23aは、環状に設けられるのであれば、矩形枠状等の他の形状とされてもよい。
【0084】
上記実施の形態に係るドレープは、必ずしも、医療処置が行われる患者の被覆に利用される必要はなく、医療施設内に配置されている医療装置等の医療用物品がドレープの被覆対象とされてもよい。ドレープにより医療装置が被覆される場合、当該医療装置の操作部等が開口20を介して露出されてもよい。また、医療用物品を部分的に露出させる必要がない場合、ドレープは開口を有さない構造とされる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】第1の実施の形態に係るドレープの平面図である。
【図2】ドレープの一部を拡大して示す平面図である。
【図3.A】ドレープの断面図である。
【図3.B】ドレープの断面図である。
【図4】第2の実施の形態に係るドレープの平面図である。
【図5】ドレープの断面図である。
【図6】第3の実施の形態に係るドレープの断面図である。
【図7.A】切り込み線の他の例を示す図である。
【図7.B】切り込み線の他の例を示す図である。
【図7.C】切り込み線の他の例を示す図である。
【図7.D】切り込み線の他の例を示す図である。
【図7.E】切り込み線の他の例を示す図である。
【図7.F】切り込み線の他の例を示す図である。
【図7.G】切り込み線の他の例を示す図である。
【図8】ドレープの他の例を示す図である。
【図9】ドレープの他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1,1a〜1d ドレープ
3 粘着層
20 開口
21 下面
22 上面
23,23a 非貫通切り込み部
24 被覆部
25,25a,25b 切り込み線
41 上層シート
42 下層シート
251,251a〜251j 切り込み
251a 第1切り込み
251b 第2切り込み
261 切り込み
411 貫通切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療施設内において患者または医療用物品である被覆対象を覆うシート状のドレープであって、
一方の面に断続的に形成された複数の非貫通の切り込みである切り込み線を有する非貫通切り込み部と、
前記非貫通切り込み部の両側に連続して広がり、前記非貫通切り込み部と共に被覆対象を覆う被覆部と、
を備えることを特徴とするドレープ。
【請求項2】
請求項1に記載のドレープであって、
前記切り込み線が、前記非貫通切り込み部のシート端部から内側に向かって設けられることを特徴とするドレープ。
【請求項3】
請求項2に記載のドレープであって、
前記被覆対象を部分的に露出させる開口が形成されており、
前記非貫通切り込み部が、前記シート端部から前記開口に向かって伸びることを特徴とするドレープ。
【請求項4】
請求項3に記載のドレープであって、
前記被覆対象に対向する面上において前記開口の周囲に配置された粘着層をさらに備え、
前記切り込み線が、前記非貫通切り込み部の前記被覆対象とは反対側の面に形成されており、
前記粘着層が、前記切り込み線に重なって断続的に形成された複数の切り込みを有することを特徴とするドレープ。
【請求項5】
請求項3に記載のドレープであって、
前記被覆対象に対向する面上において前記開口の周囲に配置された粘着層をさらに備え、
前記切り込み線が、前記非貫通切り込み部の前記被覆対象に対向する面に形成されており、前記粘着層が設けられる領域において前記切り込み線が前記粘着層を貫通する切り込みにて形成されていることを特徴とするドレープ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のドレープであって、
前記非貫通切り込み部が、
断続的かつ線状に配列された複数の貫通切り込みが形成された第1シートと、
前記第1シートに積層されて前記複数の貫通切り込みの一方の開口を閉塞することにより前記切り込み線を形成する第2シートと、
を備えることを特徴とするドレープ。
【請求項7】
請求項6に記載のドレープであって、
前記非貫通切り込み部が、前記第1シートに積層されて前記複数の貫通切り込みの他方の開口を閉塞する第3シートをさらに備えることを特徴とするドレープ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のドレープであって、
前記非貫通切り込み部が、プラスチックフィルムにより形成されることを特徴とするドレープ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載のドレープであって、
前記被覆部が、無延伸プラスチックフィルムにより形成されることを特徴とするドレープ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載のドレープであって、
前記被覆部が、透明または半透明であることを特徴とするドレープ。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載のドレープであって、
前記切り込み線が有する非貫通の各切り込みが、前記非貫通切り込み部の引き裂き時に、直前に引き裂かれる切り込みから伸びる開裂が到達する予定の範囲を横断することを特徴とするドレープ。
【請求項12】
請求項11に記載のドレープであって、
前記切り込み線が、互いに平行な第1切り込み列および第2切り込み列を有し、
前記第1切り込み列が、開裂の進行方向に向かうとともに前記第2切り込み列に向かって傾斜する切り込みの配列であり、
前記第2切り込み列が、前記進行方向に向かうとともに前記第1切り込み列に向かって傾斜する切り込みの配列であることを特徴とするドレープ。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載のドレープであって、
前記被覆対象が、医療処置が行われる患者であることを特徴とするドレープ。

【図1】
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【図2】
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【図3.A】
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【図3.B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7.A】
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【図7.B】
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【図7.C】
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【図7.D】
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【図7.E】
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【図7.F】
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【図7.G】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−154902(P2008−154902A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349098(P2006−349098)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000122896)岡田紙業株式会社 (10)
【出願人】(000122900)岡田紙工株式会社 (7)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)