説明

ドロネダロン中間体の製造方法

2−(2−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノンをアシル化し、引き続いてこのエステルを塩基及びゼオライト(アルモシリケート)触媒で処理し、そして所望により、引き続いて脱メチル化することによって式(I)のドロネダロンの中間体を製造する方法。この方法は、ドロネダロンの製造のために使用することができる。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2−(2−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノンをアシル化し、引き続いてこのエステルを塩基及びゼオライト(アルモシリケート)触媒で処理し、そして所望により、引き続いて脱メチル化することによる式I:
【化1】

のドロネダロン中間体の製造方法。この方法はドロネダロンの製造のために使用することができる。
【0002】
この発明は、R1がOMeである、式Iの2−n−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(=式Iaの化合物)、並びにR1がOHである、式Iの2−n−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(=式Ibの化合物)の化学的製造方法に関し、
該化合物は、双方とも式II:
【化2】

のN−(2−n−ブチル−3−{4−[3−(ジブチルアミノ)−プロポキシ]−ベンゾイル}−ベンゾフラン−5−イル)−メタンスルホンアミド(ドロネダロン)の製造のためのキーとなる中間体である。
【背景技術】
【0003】
ドロネダロンは、不整脈の処置のための薬剤であり(特許文献1)、その製造のためのいくつかの従来技術方法が開示されている。こうした方法では、いくつかの中間体を介するステップワイズ手順が必要であり、そのうちの2つの例は、式IIIの2−n−ブチル−5−ニトロベンゾフランと式Iaの2−n−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフランである。
【0004】
【化3】

【0005】
式IIIの中間体は、特許文献1、並びに非特許文献1中の記載によれば4−ニトロフェノールから、又は特許文献2及び3中の記載によればサリチルアルデヒドから多段階のプロセスによって製造されている。
【0006】
式Iaの中間体は、塩化アニソイルと、特許文献4及びその中に記載されている他の引用文献中の記載によれば、ハロゲン化若しくは非ハロゲン化溶媒中、触媒として四塩化スズ又は塩化鉄(III)のような重金属のルイス酸を加え、フリーデル・クラフツベンゾイル化によって式IIIの中間体から製造されるのが通例である。式Ibの中間体は、式Iaの中間体から脱メチル化によって製造されるのが通例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5223510号
【特許文献2】WO 0128974
【特許文献3】WO 0129019
【特許文献4】WO 2007140989
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H.R.Horton 及び D.E. Koshland, J.Methods in Enzymology, Vol. 11, 556, (1967)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
商業上入手可能な原料から、及びそれ自身商業上入手可能な原料から容易に製造される、文献に既に記載されている化合物から出発して、単純であり、かつ環境的に適合性のある試薬及び溶媒を用いることによって、式Iのドロネダロンの中間体の新規な製造方法を提供し、生成物の総収率が高く、しかも十分な純度であることを可能にすることが、この発明の目的である。
【0010】
この上述の目的は、この発明に従って、4−メトキシアセトフェノン、4−クロロニトロフェノール及び吉草酸クロリド(ペンタノイルクロリド)などの商業的に入手可能な化合物から出発してドロネドロンに至る式Iの中間体を製造することによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、この発明の一局面は、式I:
【化4】

[式中、
R1は、メトキシ又はヒドロキシルである]
の化合物及びその塩を製造する方法であって、
スキーム1中に示されているように、
【化5】

a)式IVの2−(2−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノンを塩基Aの存在下で式VIの酸クロリドによってアシル化して、式VIIの新規なエステルを提供すること(工程1)と;
b)式VIIのエステルを、塩基B及びゼオライト(アルモシリケート)触媒と共に加熱して、式Iaのベンゾフランを提供すること(工程2)と;
c)場合により、式Iaのベンゾフランを塩基Bの存在下でHCl若しくはHBrと共に加熱するか、又はもう1つの選択肢として式Iaのベンゾフランをイオン液体C中でHCl若しくはHBrと共に加熱して、式Ibの化合物を提供すること(工程3)
を含んでなる、前記方法に関する。
【0012】
式IVの出発原料の製造は、文献(例えば、米国特許第3657350号、米国特許3577441、C. Majdik et al., Revistade Chimie 40 (6), 490-3 (1989) 及び 40 (8), 689-93 (1989) (Bukarest))に明確に記載されている。式VIの酸クロリドは商業的に入手可能である。
【0013】
下記に本発明のそれぞれの個別の方法工程をより詳細に述べる:
【0014】
工程1では、式IVの化合物を式VIの酸クロリドを加えてエステル化することが記載されているが、このエステル化にはエステル化工程において遊離する酸を中和するのに塩基Aが必要である。この目的には、HClを中和するどんな塩基でもとりうるので、その性質が決定的に重要な意味を持つわけではないが、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属アルコラート、第3級アミンなどを含んで少なくとも1当量(one equivalent)のこうした塩基が必要である。塩基Aの例には、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、NaOH、KOH、Na2CO3及びK2CO3がある。一実施態様では、塩基Aは好ましくはNa2CO3及びK2CO3である。
【0015】
特別の実施態様では、工程1は、スキーム2中で示されているように、まず、式Vの結晶ナトリウム又はカリウム塩を得るために上述の水酸化物又は炭酸塩(塩基A*)の1つを用いて式IVの化合物中の酸性OH部分を中和する、
【化6】

[式中、
Mは、Na又はKであり、そして塩基A*は、金属炭酸塩又は金属水酸化物、例えば、NaOH、KOH、Na2CO3及びK2CO3、好ましくは、Na2CO3及びK2CO3である]
ことを含んでなる。
【0016】
式Vのナトリウム又はカリウム塩は、安定な貯蔵形態(stable storage form)として使用することができる。
【0017】
例えば、式IVのフェノールは、最少量の水に分散することができ、そして0℃〜100℃、好ましくは、0℃〜50℃でおよそ1塩基当量(one base equivalent)の上記の塩基A*を用いて中和することができる。この結果生じる式Vのナトリウム又はカリウム塩は、それぞれ、例えば、沈殿によって単離することができ、そしてろ過し、その後乾燥することができる。あるいは、式Vの塩は、有機溶媒中、例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はアセトニトリル、好ましくはアセトン中、0℃〜100℃、好ましくは、0℃〜50℃、例えば、40〜50℃で水中の約1当量の前記塩基で中和することによって調製することができ、そして生成物を、例えば、溶媒を蒸発させることによって単離することができる。
【0018】
本発明の一実施態様では、式VIIのフェノールエステルは、式IVのフェノールを、−20℃〜+50℃、好ましくは、0℃〜20℃で、塩基Aを含む不活性有機溶媒中の1当量又はわずかな過剰量、例えば、1.0〜1.5当量の式VIの酸クロリドと混和することによって得ることができ、該不活性有機溶媒には、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、ジクロロメタン、メチル−イソブチルケトン、アセトニトリル、2−メチル−テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル又は酢酸イソプロピルがある。式VIIの生成物は、当技術分野の当業者に知られている方法で単離することができる。例えば、過剰の酸及び酸クロリドを希釈した塩基水溶液、例えば、NaHCO3又はKHCO3で洗い流し、過剰の塩基を希釈した酸水溶液、例えば、HCl、クエン酸又はNaH2PO4、好ましくはHClで洗い流し、この有機相を、例えば、MgSO4又はNa2SO4で乾燥し、そして溶媒を蒸発させることによって単離することができる。
【0019】
あるいは、式Vのそれぞれのナトリウム又はカリウム塩は、−20℃〜+50℃で、好ましくは、−10℃〜20℃で、揮発性の不活性有機溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、アセトン、ジクロロメタン、メチル−エチルケトン、メチル−イソブチルケトン、アセトニトリル、2−メチル−テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン、好ましくはアセトン中の式VIの約1当量の酸クロリドと化合する(combined)ことができる。この反応溶液は、その後の工程2に直接付すことができ、又はこの生成物は沈殿した塩化ナトリウム若しくは塩化カリウムからろ過し、そして溶媒を蒸発させることによって単離することができる。
【0020】
本明細書中で述べられている任意の手順によって、式VIIのエステルは次の反応工程2のための実質的に定量的な収率、かつ十分な純度で得ることができる。
【0021】
工程2は、式VIIのエステルを、溶媒中で塩基(塩基B)及びゼオライト(アルモシリケート)触媒と共に加熱して、式Iaのベンゾフランを生じさせることを含んでなる。この目的では、1当量又はわずかの過剰量、例えば、1.0〜2.0当量の塩基Bと共に、式VIIのエステルを、分散したゼオライトを含む不活性有機溶媒中、好ましくは最小量の不活性有機溶媒中、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチル−イソブチルケトン、メチル−エチルケトン、アセトニトリル、2−メチル−テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、N−メチル−ピロリドン、クロロベンゼン又はキシレン中、好ましくは、キシレン又はトルエン中に溶解又は懸濁する。
【0022】
所望のプロセスを行なう塩基Bの例には、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−プロピルアミンのような第三級アミン、N,N−ジメチルアニリン(N,N-dimethyaniline)、N,N−ジエチルアニリン、N−メチル−イミダゾール、N−エチル−イミダゾール、N−プロピル−イミダゾール、N−ブチル−イミダゾール、コリジン、2,6−ルチジン、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及びキヌクリジンが挙げられる。好ましい塩基Bは、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N−メチル−イミダゾール、N−エチル−イミダゾール、N−プロピル−イミダゾール、N−ブチル−イミダゾールの群より選択される。
【0023】
工程2におけるゼオライト触媒は、未修飾(天然若しくは合成)であっても、又は修飾したゼオライト触媒(modified zeolite catalyst)でもよく、又は前記触媒の混合物でもよい。
【0024】
所望のプロセスを行なうゼオライト触媒の例には、商業上入手可能であるか、あるいは当技術分野の当業者によって公知の手順により調製することができる、式M1xM2yM3z[(Al2312(SiO212](上式で、M1、M2及びM3は金属であり、そしてx/y/zは、アルミノ珪酸塩骨格の12の負電荷を補償するのに必要なそれぞれの金属カチオンの組成を示す)の天然及び合成アルモシリケートが含まれる。L.F. Fieser & M. Fieser, Reagents for Organic Synthesis, John Wiley & Sons, page 703-705 (1967)中に述べられているように、通例の金属カチオンMには、広範囲の可変組成でカリウム、ナトリウム、カルシウム及びマグネシウムが含まれており、そしていくつかの商業上入手可能なゼオライトは、均質な金属カチオン及び可変含水率を有しており、例えば、Sigma-Aldrichおよび他の供給者から商業上入手可能な0.4nm細孔径(pore size)を有する式Na12[(Al2312(SiO212]のモレキュラーシーブ(molecular sieves)がある。このプロセスを行なう天然ゼオライトの例には、同様な分子組成及びイオン交換特性を有するベントナイト及びモンモリロナイトが含まれる。
【0025】
所望のプロセスを行なうゼオライト触媒の更なるタイプには、式M1xM2yM3z[(Al2312(SiO212]のゼオライトにおいて含有されている少なくとも1つの金属カチオンを、他の任意の金属カチオンMによって、好ましくは可変量の鉄、マンガン、チタン、ジルコニウム、亜鉛又はスカンジウムで部分的に交換することによって調製されるアルモシリケートが含まれる。こうした修飾ゼオライトは、より低い反応温度で所望のプロセスを行なう際により高い触媒活性を提供して、そしてより短い反応時間で完全な変換を達成する。
【0026】
修飾ゼオライトは、商業的供給源から購入することができ、あるいはそれらは当技術分野の当業者により、例えば、以下に記載されている文献に従って、液相における簡単なイオン交換(simple ion exchange)によって、固体−固体−交換、昇華法(solid-solid-exchange, sublimation methods)によって、又は水熱合成によって、以下に記載されている文献に従って調製することができる。
【0027】
−Fe−ZSM−5のようなFe−ゼオライトについてのレビュー: G. Delahay et al., Current Topics in Catalysis (2007), 6, 19-33; 出版社: Research Trends;
−Fe,Ti−ゼオライトについてのレビュー: G.W.Skeels, E.M.Flanigan, ACS Symposium Series (1989), 398 (Zeolite Synth.), 420-435;
−Fe,Ti,Mn,Zn−ゼオライトについてのレビュー: J.B.Nagy et al., Molecular Sieves (2007), 5 (Characterization II), 365-478及びこの本における他の記事、出版社:Springer GmbH, Berlin, Heidelberg;
−Fe,Ti,Zr−ゼオライトについての記事: J.Weitkamp et al., Chem.-Ing.-Technik 58 (1986), 12, 969-971及びその中の参照文献;
−鉄、チタン、ジルコニウム、亜鉛でドープしたモンモリナイト触媒の調製;Preparation Fe-, Ti-, Zr-, Zn-doped montmorillonite catalysts: P. Lazlo, A.Mathy, Helv. Chim. Acta, vol. 70, 577-586 (1987)。
【0028】
こうした修飾又は非修飾ゼオライトは、粉末、ペレット又はスティックとして適用するのが好都合であり、そしてその製造手順に左右される可変含水率及び細孔径を有する。細孔径は通例、0.3nm〜15nmの範囲である。
【0029】
製造工程2の反応温度は、50℃〜250℃、好ましくは60℃〜140℃でありうる。
【0030】
工程2の反応速度(reaction rates)は、当業者が精通しているようにこのプロセスの場合に選択された塩基、ゼオライト触媒、溶媒及び温度に応じて変化しうる。塩基としてトリ−n−ブチルアミン、溶媒としてキシレン、そして市販の非修飾ゼオライト(例えば、0.5nmの細孔径のモレキュラーシーブ)を用いる場合の反応時間は通例、反応温度が140℃〜100℃の範囲であるときには、8〜16時間の範囲である。同じ塩基(トリ−n−ブチルアミン)、そしてFe3+イオンによる交換によって修飾された商業上入手可能なモレキュラーシーブを用いる場合の反応時間は通例、反応温度が110℃(トルエン中での還流温度)〜140℃(キシレン中での還流温度)の範囲であるときには、1時間〜15分の範囲である。この反応工程では、無水の試薬、とりわけ溶媒、塩基及びゼオライトが使用され、そして水を反応過程の間、共沸蒸留によって除去する際には、高いターンオーバー率で、高純度の生成物が得られる。
【0031】
式Iaのベンゾフランは、例えば、反応溶液を無機物(mineral)からろ過し、そして溶媒及び塩基を蒸発させることによって単離することができる。この方法で単離されるか、又は他の任意の手段によって調製される場合には、式Iaの化合物は、次の式Ibのフェノールへの脱メチル化反応を含む工程3に付すことができる。
【0032】
工程3は、式Iaのベンゾフランを溶媒中又は無溶媒中で塩基B及びHBr若しくはHClと共に加熱するか、又はもう1つの選択肢として式Iaのベンゾフランをイオン液体C中でHCl若しくはHBrと共に加熱して、式Ibの脱メチル化ベンゾフランを生ぜしめることを含んでなる。適切な溶媒及び塩基Bは、プロセスの工程2での定義と同じである。
【0033】
プロセスの工程3において使用される溶媒及び塩基Bは、互いに独立して、工程2において使用される溶媒及び塩基Bと同一であっても、又は相異なっていてもよく、好ましくは工程3では、工程2におけるのと同じ溶媒及び塩基Bが使用される。
【0034】
工程3に使用されるイオン液体Cの例には、式VIII又はIX:
【化7】

[式中、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、6若しくは7個の炭素原子を有するアルキルであり、R5、R6、R7、R8及びR9は、互いに独立して、H、又は1、2、3、4、5、6若しくは7個の炭素原子を有するアルキルであり、そしてXは、F、Cl、Br、I、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、トリフルオロメタンスルホナート又はヘキサフルオロアンチナートであり、好ましくは、Xは、F、Cl、Br、I又はテトラフルオロボラートである]の化合物がある。
【0035】
好ましくは、このイオン液体Cは、1−ブチル−4−メチルピリジニウム・テトラフルオロボラート、1−ブチル−ピリジニウムクロリド、3−ブチル−1−メチル−3H−イミダゾリウムクロリド、3−エチル−1−メチル−3H−イミダゾリウムクロリド、1−ブチル−2−メチルピリジニウム・テトラフルオロボラート、1−ブチル−3−メチルピリジニウム・テトラフルオロボラート、1−ブチル−ピリジニウム・テトラフルオロボラート、3−ブチル−1−メチル−3H−イミダゾリウム・テトラフルオロボラート及び3−エチル−1−メチル−3H−イミダゾリウム・テトラフルオロボラートの群より選択され、例えば、1−ブチル−4−メチルピリジニウム・テトラフルオロボラート、1−ブチル−ピリジニウムクロリド、3−ブチル−1−メチル−3H−イミダゾリウムクロリド及び3−エチル−1−メチル−3H−イミダゾリウムクロリドの群より選択される。式VIII又はIXの化合物は、商業上入手可能であるか、又は文献に記載されており、そして当技術分野の当業者によく知られているプロセスに従うか、あるいはそのプロセスと同様な方法で調製することができる。
【0036】
本発明の一実施態様では、式Iaの単離されたベンゾフランと、1.0〜10当量、好ましくは1.3〜3当量の塩基Bの塩酸塩又は臭化水素酸塩の混合物を、それぞれ、式Iaのベンゾフランが式Ibのフェノールに完全に変換するまで適切な温度で溶媒と共に、又は無溶媒で加熱する。この塩基Bの塩酸塩又は臭化水素塩は、HCl又はHBrを、それぞれ、塩基Bと混和することによって製造される。
【0037】
本発明の別の実施態様では、1.0〜10当量、好ましくは1.3〜3当量の塩基Bと、1.0〜10当量、好ましくは1.3〜3当量のHCl若しくはHBrを、式Iaの単離されたベンゾフランに加え、そしてこの混合物を、適切な温度で溶媒と共に、又は無溶媒で、式Iaのベンゾフランが式Ibのフェノールに完全に変換するまで加熱する。
【0038】
本発明の別の実施態様では、工程2から得られる反応混合物を、ろ過又は遠心分離によってゼオライト触媒から分離し、場合により、この溶媒を蒸発させ、続いて必要な量のガス状のHCl若しくはHBr(1.0〜10当量、好ましくは1.3〜3当量)を式Iaのベンゾフランから構成される残存する混合物と工程2からの塩基Bに加えると、塩基Bの塩酸塩又は臭化水素酸塩がインサイチュで提供される。続いてこの混合物を、式Iaのベンゾフランが式Ibのフェノールに完全に変換されるまで適切な温度で加熱する。
【0039】
上記に述べた実施態様では、プロセスの工程3における反応の適切な温度は、120℃〜250℃、好ましくは、140℃〜200℃でありうる。工程3の反応速度は、当業者が知っているように可変性であり、このプロセスの場合に選択される塩基Bのヒドロハライド塩(hydrohalide salt)及び温度に左右される。トリブチルアミン・塩酸塩(tributylamine-hydrochloride)を用いる際の反応時間は、通例、反応温度が200℃〜140℃の範囲であるとき、1時間〜12時間の範囲である。
【0040】
本発明の別の実施態様では、式Iaの単離ベンゾフランは、イオン液体C中で加熱し、そして1.0〜10当量、好ましくは1.3〜3当量のHCl若しくはHBrを加え、そしてこの混合物を式Iaのベンゾフランが式Ibのフェノールに完全に変換されるまで適切な温度で加熱する。この実施態様では、プロセスの工程3の反応の適切な温度は、130℃〜170℃、好ましくは、130℃〜145℃でありうる。工程3の反応速度は、当業者が知っているように可変性であり、このプロセスの場合に選択されるイオン液体C及び温度に左右される。イオン液体Cを用いる際の反応時間は通例、反応温度が130℃〜170℃の範囲であるときには、3時間〜20時間の範囲である。このイオン液体Cは、再び回収し、そして再利用することができる。
【0041】
式Ia及びIbのベンゾフランは、当技術分野の当業者に知られている方法で単離することができる。こうした手順には、この反応混合物を水溶性ワークアップ(aqueous work-up)すること、又はこの反応混合物をクロマトグラフィー処理することが含まれうる。簡便なワークアップ手順の例には、例えば、蒸留させることにより、あるいはこの混合物を酸水溶液で洗浄し、次いでメチル−tert−ブチルエーテル、へプタン、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン若しくはメタノールのような溶媒から又は溶媒の混合物から生成物を結晶化させることによって、過剰な塩基Bを取り除くことが必要である。あるいは、所望の生成物はクロマトグラフィー精製によって得ることができる。
【0042】
本発明の別の局面は、式Ia:
【化8】

の化合物及びその塩の製造方法であって、
スキーム3に示されているように、
【化9】

式VIIの化合物を塩基B及びゼオライト触媒と共に加熱することを含んでなる、前記方法を対象とする。
【0043】
このプロセスは、上記に述べられているスキーム1の工程2に該当し、それゆえ、上記に述べられているのと同じ反応条件を含んでなる。
【0044】
本発明の別の局面は、式Ib:
【化10】

の化合物及びその塩の製造方法であって、
スキーム4に示されているように、
【化11】

a)式VIIのエステルを塩基B及びゼオライト(アルモシリケート)触媒と共に加熱して、式Iaのベンゾフランを提供することと;
b)式Iaのベンゾフランを塩基Bの存在下でHCl若しくはHBrと共に加熱するか、又はもう1つの選択肢として式Iaのベンゾフランをイオン液体C中でHCl若しくはHBrと共に加熱して、式Ibの化合物を提供することを含んでなる、前記方法を対象とする。
【0045】
このプロセスは、上記に述べられているスキーム1の工程2及び3に該当し、それゆえ、上記に述べられているのと同じ反応条件を含んでなる。
【0046】
すなわち、この発明の別の局面は、式I:
【化12】

[式中、
R1は、メトキシ又はヒドロキシルである]
の化合物及びその塩の製造方法であって、
スキーム5に示されているように、
【化13】

a)式Vの化合物[式中、Mは、Na又はKである]を塩基Aの存在下で式VIの酸クロリドと反応させて、式VIIのエステルを提供することと;
b)式VIIのエステルを塩基B及びゼオライト(アルモシリケート)触媒と共に加熱して、式Iaのベンゾフランを提供することと;
c)場合により、式Iaのベンゾフランを塩基Bの存在下でHCl若しくはHBrと共に加熱するか、又はもう1つの選択肢として式Iaのベンゾフランをイオン液体C中でHCl若しくはHBrと共に加熱して、式Ibの化合物を提供すること
を含んでなる、前記方法に関する。
【0047】
このプロセスは、上記に述べられているスキーム1の工程1、2及び3に該当し、それゆえ、上記に述べられているのと同じ反応条件を含んでなる。
【0048】
この発明の別の局面は、式Ib:
【化14】

の化合物及びその塩の製造方法であって、
スキーム6に示されているように、
【化15】

式Iaのベンゾフランを、塩基Bの存在下でHCl若しくはHBrと共に加熱するか、又はもう1つの選択肢として式Iaのベンゾフランをイオン液体C中でHCl若しくはHBrと共に加熱して、式Ibの化合物を提供することを含んでなる、前記方法に関する。
【0049】
このプロセスは、上記に述べられているスキーム1の工程3に該当し、それゆえ、上記に述べられているのと同じ反応条件を含んでなる。
【0050】
式IV、V及びVIIの化合物は、それらをより精密に定義していない場合であっても、すべてのありうる互変異性体形態で存在することができる。
【0051】
例えば、式Vの化合物はまた、互変異性体(ケトまたはエノール型)として、又は互変異性体構造:
【化16】

の混合物として存在することもできる。
【0052】
この発明では、式I及びIV〜式VIIの化合物は、式I及びIV〜VIIのすべての誘導体、例えば、水和物及びアルコール付加物などの溶媒和物の形態で使用することができる。本発明は同様に、式I及びIV〜VIIの化合物の結晶改変体(crystal modifications)をすべて包含する。
【0053】
式I、IV及びVI〜VIIIの上記に述べた化合物は、それらの塩の形態で、又は塩ではない形態(salt free form)で、本発明によるプロセスにおいて使用することができ、及び/又はそれらの塩の形態で、又は塩ではない形態で、単離することができる。塩は慣例的な方法によって、例えば、溶媒中の酸又は塩基と反応させるか、又は他の塩から陰イオン交換又は陽イオン交換によって得ることができる。有用な酸付加塩には、例えば、ハロゲン化物、特に塩酸塩及び臭化水素酸塩、乳酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、リン酸塩、メチルスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、アジピン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロールリン酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩及びパモ酸塩、並びにトリフルオロ酢酸塩がある。式I、IV、VI及びVIIの化合物が、酸基を含んでいる場合には、それらは、例えば、アルカリ金属塩、好ましくはナトリウム又はカリウム塩のような、あるいはアンモニウム塩、例えば、アンモニア又は有機アミン又はアミノ酸との塩のような塩基との塩を形成することができる。それらはまた、双性イオンとして存在することができる。活性成分を製造する場合には、生理学的に許容される塩及び製薬学的に許容される塩が優先される。
【発明を実施するための形態】
【0054】
略語:
ca. 約
h 時間
i.vac. 真空中
LC−MS 液体クロマトグフラフィー−質量分析
Me メチル
MIBK メチル−イソブチルケトン
MTBE メチル−tert−ブチルエーテル
NMR 核磁気共鳴
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
t 保持時間
THF テトラヒドロフラン
【実施例】
【0055】
この発明を以下に続く実施例によってより詳細に述べる。こうした実施例は、本発明を説明するために明示されているが、その範囲を限定するものではない。この発明中で述べられている各方法工程は、バッチ方式、又は連続的プロセスとして、又は半連続方式として処理することができ、本明細書の記載と比較して、より多量で大規模に実現可能でありうる。
【0056】
NMRアサインメント(assignments)は、当技術分野の当業者によってなされる一次元1H NMRスペクトルの解析だけを基準にした説明のためである。スペクトルのより詳細な解析は、いくつかのNMRピークのマイナーリアサインメント(minor reassignments)に至ることができ、該解析では全体のアサインメントが変化しないのは自明なことである。1H NMRスペクトルは、すべて、500MHz計器で記録し、シフトはTMSと比較し([ppm]単位)、溶媒は、常にDMSO−d6である。
【0057】
実施例1:2−(2−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノンカリウム(式Vの化合物、M=K)塩の合成
文献の手順に(米国特許3657350、米国特許3577441、C. Majdik et al., Revistade Chimie 40 (6), 490-3 (1989) 及び 40 (8), 689-93 (1989) (Bukarest)中に記載されている)従って調製した、10.0g(34.8mmol)の2−(2−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノン(式IVの化合物)を、100mlのアセトン中に溶解し、そして20mlの蒸留水中の2.53g(18.3mmol)の炭酸カリウムの溶液を加えて40〜50℃で1時間撹拌した。この溶媒を蒸発させ、そして残存する黄色固体を真空中で乾燥すると、11.3g(99.8%)の表題化合物が生じた。
LC−MS 純度>98%(MH+287)。
1H NMRスペクトルによってケト型及びエノール型の混合物の存在が検出された。
3,80, 3,78 (2s, OMe), 3,93 (s, CH2 ケト型), 5,97 (d, =CH エノール型)。
【0058】
実施例2:2−(2−ペンタノイルオキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノン(式VIIの化合物)の合成
4.23g(35.0mmol)の吉草酸クロリド(式VIの化合物)を−10℃〜20℃で冷却しながら、50mlの乾燥アセトン中の11.3g(34.7mmol)の2−(2−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノンカリウム塩(実施例1)の撹拌懸濁液に加えた。30分後、反応が完結し(LC−MSによってモニタリング)、この混合物をセライト層に通してろ過して、沈殿した塩化カリウムを除去した。この溶液を蒸発・乾固すると9.23g(98%)の黄色油状物が得られ、これを室温で放置しながら徐々に結晶化させた。
1H NMR (DMSO-d6): 0.75 (t, 3H, CH3), 1.20, 1.45 (2 m, 4H, CH2CH2), 2.45 (t, 2H, CH2C=O エステル), 3.87 (s, 3H, OMe), 4.50 (s, 2H, CH2C=O ケトン), 7.07 及び 8.05
(2d, 4H, Ar-H), 7.47, 8.23, 8.35 (3 m, 3H, Ar-H)。
LC-MS: MH+ 372。
【0059】
実施例3:無修飾モレキュラーシーブ(unmodified molecular sieve)(Merck;0.5nm細孔;2mmビーズ)を用いる、2−n−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(式Iaの化合物)の合成
50mlの乾燥キシレン、2.10ml(8.89mmol)のトリ−n−ブチルアミン及び10gの商業上入手可能な無修飾モレキュラーシーブ(Merck;0.5nm細孔;2mmビーズ)を、ディーン・スターク凝縮器(Dean-Stark condenser)を用いて還流下で加熱した。5mlの乾燥キシレン中に溶解した2.20g(5.92mmol)の2−(2−ペンタノイルオキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノン(実施例2)を、この反応混合物に加えた。8時間後、LC−MS分析によって2−(2−ペンタノイルオキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノンが完全に消費されたことが示され、この反応混合物を室温に冷却した。このモレキュラーシーブをろ別し、そして有機層を25mlの1N HCl水溶液、10mlの水で1回洗浄し、そしてMgSO4上で乾燥した。溶媒を蒸発させた後、この生成物を放置して結晶化させると、1.86g(89%)の表題化合物が得られた。
1H NMR (DMSO-d6): 0.82 (t, 3H, CH3), 1.25 及び 1.68 (2 m, 4H, CH2CH2), 2.85 (t, 2H, CH2), 3.87 (s, 3H, OMe), 7.15 及び 7.85 (2d, 4H, Ar-H), 7.95 (m, 1H, Ar-H), 8.25 (m, 2H, Ar-H)。
LC-MS: MH+ 354。
【0060】
実施例4:無修飾モレキュラーシーブ(Riedel-de-Haen;0.4nm細孔;2mmビーズ(beads))を用いる、2−n−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(式Iaの化合物)の合成
50mlの乾燥キシレン、2.10ml(8.89mmol)のトリ−n−ブチルアミン及び10gの商業上入手可能な無修飾モレキュラーシーブ(Riedel-de-Haen;0.4nm細孔;2mmビーズ)を、ディーン・スターク凝縮器を用いて還流下で加熱した。5mlの乾燥キシレン中に溶解した2.20g(5.92mmol)の2−(2−ペンタノイルオキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノン(実施例2)をこの反応混合物に加えた。8時間後、LC−MS分析によって2−(2−ペンタノイルオキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノンの完全な消費が示され、そしてこの反応混合物を室温に冷却した。モレキュラーシーブをろ別し、そして有機層を、25mlの1N HCl水溶液、10mlの水で1回洗浄し、そしてMgSO4上で乾燥した。溶媒を蒸発させた後、生成物を放置して結晶化させると、1.80g(86%)の表題化合物が得られた。
【0061】
実施例5:回収したモレキュラーシーブを用いる、2−n−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(式Iaの化合物)の合成
50mlの乾燥キシレン、2.10ml(8.89mmol)のトリ−n−ブチルアミ
ン及び10gの実施例3から回収したモレキュラーシーブを、ディーン・スターク凝縮器を用いて還流下で加熱した。5mlの乾燥キシレン中に溶解した2.20g(5.92mmol)の2−(2−ペンタノイルオキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノン(実施例2)を、この反応混合物に加えた。8時間後、LC−MS分析によって2−(2−ペンタノイルオキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノンが完全に変換したことが示され、そしてこの反応混合物を室温に冷却した。このモレキュラーシーブをろ別し、そして有機層を、25mlの1N HCl水溶液、10mlの水で1回洗浄し、そしてMgSO4上で乾燥した。溶媒を蒸発させた後、生成物を放置して結晶化させると、1.62g(77%)の表題化合物が得られた。
【0062】
実施例7:200℃での、2−n−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(式Ibの化合物)の合成
200℃で、1.85g(5.25mmol)の2−n−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(実施例3から)を、5.84g(26.32mmol)のトリ−n−ブチルアミン・塩酸塩中に溶解した。4時間後、LC−MSによって出発物質の消費が完結したことが示され、そしてこの反応混合物を室温に冷却した。20mlの水及び50mlのMTBEを添加すると、相分離し、有機層を25mlの1M HCl及び20mlの水で1回洗浄し、MgSO4上で乾燥し、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィーに付すと、結晶化した表題化合物が得られ、1.50g(83%)が生じた。
1H NMR (DMSO-d6): 0.82 (t, 3H, CH3), 1.25 及び 1.68 (2 m, 4H, CH2CH2), 2.85 (t, 2H, CH2), 6.92 及び 7.75 (2d, 4H, Ar-H), 7.95 (m, 1H, Ar-H), 8.25 (m, 2H, Ar-H),
10.65 (s, 1H, OH)。
【0063】
実施例8:150℃での、2−n−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(式Ibの化合物)の合成
150℃で、1.50g(4.25mmol)の2−n−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(Ia)を、4.71g(21.2mmol)のトリ−n−ブチルアミン・塩酸塩中に溶解した。16時間後、LC−MS分析によって出発物質の消費が完結したことが示され、そしてこの反応混合物を室温に冷却した。20mlの水及び50mlのMTBEを添加すると、相分離し、有機層を、25mlの1M HCl及び20mlの水で1回洗浄し、MgSO4上で乾燥し、そして蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィーに付すと結晶化した表題化合物が得られ、1.10g(76%)が生じた。
【0064】
実施例9:2−n−ブチル−3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(式Ibの化合物)のワンポット合成
50mlの乾燥キシレン、2.1ml(8.9mmol)のトリ−n−ブチルアミン及び10gの実施例3から回収したモレキュラーシーブを、ディーン・スターク凝縮器を用いて還流下で加熱した。次いで5mlの乾燥キシレン中に溶解した2.20g(5.92mmol)の2−(2−ペンタノイルオキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノン(実施例2)を、この反応混合物に加えた。8時間後にLC−MS分析によって出発物質の消費が完結したことが示された。この反応混合物を室温に冷却し、そしてモレキュラーシーブをろ別した。溶媒を蒸発させた後、2.1ml(8.9mmol)のトリ−n−ブチルアミンを加え、引き続いて17.8mmolのガス状のHClを加えた。この結果生じた混合物を、LC−MS分析によって2−n−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフランの消費の完結が示されるまで200℃で4時間加熱した。この反応混合物を室温に冷却し、20mlの水及び50mlのMTBEを加えた。有機相を、25mlの1M HCl水溶液及び20mlの水で1回洗浄し、MgSO4上で乾燥し、そして濃縮・乾燥した。この残留物をフラッシュクロマトグラフィーに付すと、結晶化した純粋な表題化合物が直ちに提供され、1.30g(65%)が生じた。
【0065】
実施例10:Fe−BEA型ゼオライトを用いる2−n−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(式Iaの化合物)の合成
15mlの乾燥トルエン、2.10ml(8.89mmol)のトリ−n−ブチルアミン、並びに約10%Al23、約80%SiO2及び約10%Fe23(Fe−BEA型,粉末)から構成される1gの商業上入手可能な合成ゼオライトを、ディーン・スターク凝縮器を用いて還流下で加熱し、5mlの乾燥トルエン中に溶解した2.20g(5.92mmol)の2−(2−ペンタノイルオキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノン(実施例2)をこの反応混合物に加えた。24時間後に、LC−MS分析によって2−(2−ペンタノイルオキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノンが約95%変換されていることが示され、そしてこの反応混合物を室温に冷却した。このゼオライトをろ別し、そして有機層を、25mlの1N HCl水溶液、10mlの水で1回洗浄し、そしてMgSO4上で乾燥した。溶媒を蒸発させ、生成物を放置して結晶化させると、1.60g(76%)の表題化合物が得られた。
【0066】
実施例11:鉄ドープモンモリロナイト(iron-doped montmorillonite)触媒を用いる、2−n−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(式Iaの化合物)の合成
鉄でドープしたモンモリロナイト触媒を、Helv. Chim. Acta, vol. 70, 577-586 (1987)の記載と同様に調製した。乾燥トルエン(15ml)、2.10ml(8.89mmol)のトリ−n−ブチルアミン、及び0.5gの鉄ドープモンモリロナイト触媒を、ディーン・スターク凝縮器を用いて還流下で加熱し、そして5mlの乾燥トルエン中に溶解した2.20g(5.92mmol)の2−(2−ペンタノイルオキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノン(実施例2)を加えた。2.5時間後に、LC−MS分析によって2−(2−ペンタノイルオキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノンが100%変換されたことが示され、そしてこの反応混合物を室温に冷却した。触媒をろ別し、有機層を20mlの1N HCl水溶液、20mlの水で1回洗浄し、MgSO4上で乾燥した。表題化合物の収量:1.92g(92%)。
【0067】
実施例12:鉄、亜鉛又はチタンドープモレキュラーシーブを用いる、2−n−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(式Iaの化合物)の合成
a)鉄、亜鉛及びチタンでドープしたモレキュラーシーブの調製
Merck(Darmstadt, Germany;0.5nm細孔;2mmビーズ)から商業上入手可能なモレキュラーシーブを、鉄、亜鉛又はチタンでドープした。各5gの無修飾モレキュラーシーブの3つの試料を、0.40gのFeCl3、0.27gのZnCl2又は0.19gのTiCl4と共に、それぞれ、30mlの乾燥ジクロロメタン中で、12時間室温で撹拌した。引き続いて、各バッチをろ過し、50mlの乾燥ジクロロメタンで十分に洗浄し、そして真空中で乾燥した。
【0068】
b)2−n−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフランの合成
3mlの還流トルエン中の0.37g(1.00mmol)の2−(2−ペンタノイルオキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノン(実施例2)及び0.37g(2.00mmol)のトリ−n−ブチルアミンを含んでいる各3つのフラスコに、約100mgの鉄−、亜鉛−又はチタン−ドープモレキュラーシーブを入れ、そしてこの反応をLC−MSによってモニタリングした。30分後、標的化合物へほとんど完全な変換が鉄−及び亜鉛−ドープモレキュラーシーブを含んでいる双方のバッチで達成された(254ナノメーターで消費されていない出発物質と比較して、Fe 98%及びZn 90%の生成物の総ピーク面積(パーセント))が、これに反して、チタン−ドープモレキュラーシーブは最高70%までのよりゆっくりとした変換を示した(254ナノメーターで消費されていない出発物質と比較しての生成物の総ピーク面積(パーセント))。
【0069】
実施例13:イオン溶媒として1−ブチル−4−メチルピリジニウムテトラフルオロボラートを用い、試薬として乾燥塩化水素ガスを用いる、2−n−ブチル−3−(4−メトキシベンゾイル)−5−ニトロベンゾフラン(式Ibの化合物)の合成
30g(84.9mmol)の(2−ブチル−5−ニトロベンゾフラン−3−イル)(4−メトキシフェニル)メタノン(式Iaの化合物,HPLC−Rt:19.3分)を、150g(632.5mmol)の1−ブチル−4−メチルピリジニウム・テトラフルオロボラート中で150〜155℃に加熱した。この結果生じた溶液を乾燥ガス状のHClで燻蒸した。20時間後、HPLC分析によってこの反応の終結が示された(出発物質<1%)。この燻蒸を停止し、そしてこの反応混合物を80〜85℃に冷却した。残存する出発物質を80〜85℃で、トルエンで抽出した(4×120ml)。生成物を含んでいる相を真空のもとで蒸留し、トルエンの最後の痕跡を除去した。50〜60℃で、250mlの水を加え、その結果生じた溶液を1時間以内、20℃に冷却した。結晶化が40〜45℃で開始した。20〜25℃で1時間撹拌した後、この懸濁液を5℃まで冷却した。この生成物をろ別し、100mlの水で洗浄し、そして75gの酢酸中に懸濁した。70℃に加熱した後、32gの水をこの溶液に滴下した。この混合物を2時間以内で5℃に冷却した。この結果生じた懸濁液を5℃で更に2時間撹拌し、ろ過し、そして50mlの酢酸/水 1:1(v/v)で洗浄すると、21.5g(74.6%)が得られ、これはLCで純度99.5%であった。
【0070】
HPLC−Rt:17.5分
HPLC条件:カラム:HALOTM−RP−Amide
流速:0.8ml/分
検出:UV(275nm)
溶媒A:0.77g NH4OC(O)CH3+900ml 水+100ml アセトニトリル
溶媒B:100% アセトニトリル
【表1】

【0071】
実施例13と同様な方法で、1−ブチル−4−メチルピリジニウム・テトラフルオロボラートの代わりに、1−ブチル−ピリジニウムクロリド、3−ブチル−1−メチル−3H−イミダゾリウムクロリド及び3−エチル−1−メチル−3H−イミダゾリウムクロリド中で反応を行った。
【0072】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ia:
【化1】

の化合物及びその塩の製造方法であって、
【化2】

式VIIの化合物を塩基B及びゼオライト触媒と共に加熱することを含んでなる、上記方法。
【請求項2】
式Ib:
【化3】

の化合物及びその塩を製造する請求項1記載の方法であって、
【化3】

a)式VIIのエステルを塩基B及びゼオライト触媒と共に加熱して、式Iaのベンゾフランを提供することと;
b)式Iaのベンゾフランを、塩基Bの存在下でHCl若しくはHBrと共に加熱するか、又はもう1つの選択肢として式Iaのベンゾフランをイオン液体C中でHCl若しくはHBrと共に加熱して、式Ibの化合物を提供することを含んでなる、上記方法。
【請求項3】
式I:
【化5】

[式中、
R1は、メトキシ又はヒドロキシルである];
の化合物及びその塩を製造する請求項1又は2に記載の方法であって、
【化6】

a)式IVの2−(2−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−エタノンを塩基Aの存在下で式VIの酸クロリドによってアシル化して、式VIIの新規なエステルを提供することと;
b)式VIIのエステルを塩基B及びゼオライト触媒と共に加熱して、式Iaのベンゾフランを提供することと;
c)場合により、式Iaのベンゾフランを塩基Bの存在下でHCl若しくはHBrと共に加熱するか、又はもう1つの選択肢として式Iaのベンゾフランをイオン液体C中でHCl若しくはHBrと共に加熱して、式Ibの化合物を提供すること
を含んでなる、上記方法。
【請求項4】
式I:
【化7】

[式中、
R1は、メトキシ又はヒドロキシルである]
の化合物及びその塩を製造する請求項1又は2に記載の方法であって、
スキーム1に示すように、
【化8】

a)式Vの化合物[式中、Mは、Na又はKである]を塩基Aの存在下で式VIの酸クロリドと反応させて、式VIIのエステルを提供することと;
b)式VIIのエステルを塩基B及びゼオライト触媒と共に加熱して、式Iaのベンゾフランを提供することと;
c)場合により、式Iaのベンゾフランを塩基Bの存在下でHCl若しくはHBrと共に加熱するか、又はもう1つの選択肢として式Iaのベンゾフランをイオン液体C中でHCl若しくはHBrと共に加熱して、式Ibの化合物を提供すること
を含んでなる、上記方法。
【請求項5】
式Iaのベンゾフランの式Ibの化合物へのコンホメーションを、式Iaのベンゾフランを塩基Bの存在下でHCl又はHBrと共に加熱することによって行なう、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
式Iaのベンゾフランの式Ibの化合物へのコンホメーションを、式Iaのベンゾフランをイオン液体C中でHCl又はHBrと共に加熱することによって行なう、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
塩基Bが、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N−メチル−イミダゾール、N−エチル−イミダゾール、N−プロピル−イミダゾール、N−ブチル−イミダゾール、コリジン、2,6−ルチジン、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタン、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン及びキヌクリジンであり、
そして
ゼオライト触媒が、天然又は合成アルモシリケートである、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
塩基Bが、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N−メチル−イミダゾール、N−エチル−イミダゾール、N−プロピル−イミダゾール、N−ブチル−イミダゾール、コリジン、2,6−ルチジン、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタン、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン及びキヌクリジンであり
そして
ゼオライト触媒が鉄、マンガン、チタン、ジルコニウム、亜鉛又はスカンジウムの群より選択される、少なくとも1つの可変量の金属イオンを含む、改質アルモシリケートである、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
イオン液体Cが、式VIII又はIX:
【化9】

[式中、
R2、R3及びR4は、互いに独立して、1、2、3、4、5、6又は7個の炭素原子を有するアルキルであり;
R5、R6、R7、R8及びR9は、互いに独立して、H、又は1、2、3、4、5、6若しくは7個の炭素原子を有するアルキルであり;
そして
Xは、F、Cl、Br、I、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、トリフルオロメタンスルホナート又はヘキサフルオロアンチモナートである]
の化合物から選択される、
請求項2〜4又は6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
式Iaの化合物の式Ibの化合物への反応に使用される塩基Bが、式VIIの化合物の式Iaの化合物への反応に使用される塩基Bと同じである、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
式Iaの化合物を単離し、次いで請求項2、3、4、5又は6に記載されているように反応させて、式Ibの化合物にする、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
式Iaの化合物を単離せずにインサイチュで製造し、次いで請求項2、3、4又は5に記載されているように反応させて、式Ibの化合物にする、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−528115(P2012−528115A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512364(P2012−512364)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057272
【国際公開番号】WO2010/136502
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】