説明

ドロワのための閉鎖デバイス

所与の距離で移動されるときに、その所与の距離未満で付勢部材の端部が移動されるようになるという機械的利点に影響するように歯車を使用するラッチ部材を有する閉鎖デバイス。
付勢部材は、第2のドロワスライド部材に対して相対的に第1のドロワスライド部材を閉鎖位置まで移動させるのに使用され、また、歯車を使用することおよび得られる機械的利点により、第1のドロワスライド部材が閉鎖デバイスに係合されたり閉鎖デバイスから離されたりするときの移行がよりスムーズになる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、2009年11月4日に出願された米国仮特許出願第61/257,927号の優先権を主張する、2010年10月28日に出願された米国非仮特許出願第12/914,519号の優先権を主張するものであり、その開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は、概して、自己閉鎖ドロワスライドとしても知られるドロワスライドにしばしば組み込まれる閉鎖デバイスに関する。このようなドロワスライドは、キャビネット本体内の完全閉鎖位置までドロワを移動させるのを補助するために、キャビネット組立体などの家具の物品内で使用される傾向がある。
【背景技術】
【0003】
[0003]キャビネット組立体などの、ドロワを有する家具の物品は、通常、ドロワをキャビネット組立体に装着するための、さらには、キャビネット本体内の完全閉鎖位置とドロワがキャビネット本体から外側に延在する状態の開位置との間でドロワを移動させるのを可能にするための、ドロワスライドを有する。標準的なドロワスライドは、各々1つがドロワの左外面および右外面に置かれるような対の形態で、または、ドロワの外側左縁部および外側右縁部のそれぞれの下方でそれらに沿うようなアンダーマウント形式の対の形態で、装着される傾向がある。このような構成では、ドロワの各側において、一方のドロワスライド部材がキャビネット本体に取り付けられ、もう一方のドロワスライド部材がドロワに取り付けられる。キャビネット本体に対して相対的にドロワを滑らかに移動させるために、通常、玉軸受またはころ軸受などの軸受がドロワスライド部材の間に配置される。軸受は軸受リテーナ内で構成されてその中に配置されてよい。さらに、対応する追加の軸受セットを用いて、第1のドロワスライド部材と第2のドロワスライド部材との間でそれらに結合される第3のドロワスライド部材が存在してよく、それによりドロワをキャビネット本体からさらに離れるように延伸することが可能となる。
【0004】
[0004]標準的な構成およびアンダーマウント構成では共に、ドロワを閉鎖する際に使用者を補助すること、ドロワが反発するのを防止すること、および、ドロワを閉鎖位置で保持する傾向があること、が所望される。閉鎖されるときにキャビネット面から所定の距離に達すると係合されるような設計の自己閉鎖ドロワスライドが多数ある。このようなデバイスは、しばしば、ドロワを完全閉鎖位置まで引いたり押したりするのを補助するためのばねを組み込んでいる。これらのデバイスは、ドロワの予め選択された移動範囲内でキャビネット本体に対するドロワの相対的な移動を制御するのに使用されるラッチ部材を有するのが一般的である。このような従来技術のデバイスは、しばしば、ラッチ部材を掛合位置から非掛合位置までまたはその逆で非ラッチ位置からラッチ位置まで移動させるためにラッチ部材に係合するピンまたはタブを有する。したがって、通常、ラッチ部材またはピンのいずれかがドロワ側またはスライド部材のうちの1つに連結され、対応するもう一方の構成要素が別のドロワスライド部材に連結される。
【0005】
[0005]このようなラッチ部材とピンとの組立体はそれらの意図された目的のために機能するが、これらの組立体は、ラッチ部材が係合されたり切り離されたりするときの切換時に使用者にかなり強い力を伝達する傾向があり、これは、ばねの影響下でドロワが開位置に向かって外側方向に移動されてラッチ部材の移動範囲の端部に達したときに解放されるときに起こるか、または、ドロワが閉鎖位置に向かって内側方向に移動して最初に係合されるときに起こる。従来技術のデバイスは、ラッチ部材の移動と実質的に1対1の比率で移動される端部を具備するばねを有する傾向があり、その場合、ばねによって発生する力は、ラッチ部材がドロワと共に外側に移動されるに従って線形的に増加し、これはラッチ部材が解放されて準備位置(armed position)で停止されるまで継続する。これにより、操作時に、ばねの影響により、ラッチ部材が準備位置に入ったり準備位置から出たりするときにオン−オフの感覚すなわちガタつきの感覚が出る。
【0006】
[0006]したがって、従来技術の閉鎖デバイスでは、一般に、ドロワの開放に抵抗するばねの力は、ラッチ部材がその移動範囲の端部に到達してドロワを解放するまで一定に増加していき、それにより、ドロワの開放に抵抗して引っ張り力が最大にかかっている状態からドロワのさらなる開放に対して全く抵抗がない状態へと急激に移行することになる。この構成ではガタつき動作が起こる傾向があり、このようなガタつき動作は使用者を不安にさせ、また、ドロワの中身を急激に移動させる可能性がある。同様に、ドロワを閉鎖する場合では、ラッチ部材の再係合時の初期段階および掛合位置からの解放時に最大の力が加えられるときに、ばねの影響を急激に受けるようになる。
【0007】
[0007]このような望ましくない移行は、部分的に、ドロワが完全閉鎖位置の近傍にある場合でもばねがばねの力を十分なレベルに維持しなければならないことが原因であり、これは、ドロワを完全に閉鎖するのを可能にすること、および、ドロワが勢いよく閉鎖されたりするときに内側に急激に押される場合に反発して開位置に戻るのを防止することを目的としている。さらに、ラッチ部材の解放時および再係合時の強いばねの力は、ラッチ部材を準備位置へと急激に移動させたり準備位置から出るように急激に移動させたりすることが原因で、さらには、ラッチ部材により、別のドロワスライド、ドロワまたはキャビネット部材の相補的な構成要素に伝達される力の強さが原因で、望ましくないノイズを発生させる可能性がある。
【0008】
[0008]ドロワが閉鎖されているときの第1の位置からドロワが完全開位置に向かって移動されているときの第2の位置までラッチ部材が移動されているときにばねの力が一定に増加していくようなラッチ部材を使用する自己閉鎖ドロワスライドの考えられる欠点を回避して、ドロワスライドに組み込まれ得る、ドロワのための閉鎖デバイスを提供することが望まれる。上述の概説および以下の詳細な説明の両方が、例示的なもので、単に説明のために提示されており、特許請求される本開示を限定しないことを理解されたい。好適な実施形態の以下の説明および添付の特許請求の範囲より、本開示の別の特徴および目的がより明確となる。
【0009】
[0009]好適の実施形態の説明では添付図面を参照するが、ここでは、同様の部品は同様の参照符号を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】[0010]閉鎖デイバスの第1の実施例を含むドロワスライド組立体を示す上面図である。
【図2】[0011]図2Aは、完全閉鎖位置にある図1のドロワスライド組立体の内側端部を示す上面図である。
【0011】
[0012]図2Bは、閉鎖デバイスが係合されているがドロワスライドが完全に閉鎖されていない位置にある状態で、第1のドロワスライド部材を示している、図1のドロワスライド組立体の内側端部を示す上面図である。
【0012】
[0013]図2Cは、閉鎖デバイスに係合されておらず、閉鎖デバイスの影響外の動作範囲にある状態で、第1のドロワスライド部材を示している、図1のドロワスライド組立体の内側端部を示す上面図である。
【図3】[0014]図3Aは、閉鎖位置にある図1の閉鎖デバイスを示す分解斜視上面図(perspective exploded top view)である。
【0013】
[0015]図3Bは、閉鎖位置にある図1の閉鎖デバイスを示す分解斜視底面図(perspective exploded bottom view)である。
【図4】[0016]図4Aは、閉鎖位置にある図1の閉鎖デバイスを示す斜視底面図(perspective bottom view)である。
【0014】
[0017]図4Bは、ラッチ部材が準備位置にある、図1の閉鎖デバイスを示す斜視底面図である。
【図5】[0018]図5Aは、閉鎖位置にある図1の閉鎖デバイスを示す底面図である。
【0015】
[0019]図5Bは、ラッチ部材が閉鎖位置と準備位置との間の位置にある、図1の閉鎖デバイスを示す底面図である。
[0020]図5Cは、ラッチ部材が準備位置である、図1の閉鎖デバイスを示す底面図である。
【図6】[0021]図6Aは、閉鎖位置にある第2の例示の閉鎖デイバスを示す斜視底面図である。
【0016】
[0022]図6Bは、ラッチ部材が準備位置にある、図6Aの閉鎖デバイスを示す斜視底面図である。
【図7】[0023]図7Aは、閉鎖位置にある図6Aの閉鎖デイバスを示す斜視分解上面図である。
【0017】
[0024]図7Bは、閉鎖位置にある図6Aの閉鎖デイバスを示す斜視上面図である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
[0025]これらの図面が正確な縮尺ではなく、実際の実施形態が異なってよいことを理解されたい。さらに、特許請求の範囲が、示される特定の実施例およびそれらの組み合わせのみに限定されず、ドロワのための種々の構成の閉鎖デバイスを包含することを理解されたい。
【0019】
[0026]以下では、ドロワスライド部材のうちの1つに結合されるラッチ部材の線形移動と比較して、安定して一定に増加することがない付勢力を加えることができるという機械的利点を有する、改善された閉鎖デイバスの実施例を開示する。したがって、ラッチ部材の切り離し時/係合時に付勢力を一定の線形的な割合で継続して増加させる代わりに、開示される例示の閉鎖デイバスは付勢部材を有し、さらには、付勢部材の伸長の割合と同じ割合で移動しないようなラッチ部材を有するように構成される。ここでは、ラッチ部材が準備位置に到達するまでドロワスライドが外側に継続して移動する際の付勢力の増加の割合は移動の単位長さ毎に減少していく。
【0020】
[0027]本開示は、望ましくない移行力(transition force)を軽減しながら一般的な付勢部材を使用するのを可能にするという機械的利点をラッチ部材の移動時に享受できる閉鎖デバイスの改善された使用法を提供する。本開示は、ドロワスライド組立体に結合されたドロワを捕捉するために、および、閉鎖デバイスがドロワが完全閉鎖位置へ緩やかに移動するのを補助するのを可能にするために、閉鎖位置に移動される際のドロワスライド部材の急激な移動を緩衝するのを補助するために任意選択で含まれ得る緩衝装置を提供する。したがって、本開示は、ドロワと共に使用される閉鎖デバイスの静かで滑らかな動作を可能にしながら、従来技術の自己閉鎖ドロワスライド組立体の欠点に対処する。
【0021】
[0028]第1の態様では、本開示は、ベースと、ベースに摺動可能に係合するラックに結合されるラッチ部材と、ベースに結合されかつラックに係合される歯車と、ベースに結合される第1の端部および歯車に結合される第2の端部を有する付勢部材と、を有する閉鎖デバイスを提供し、ここでは、付勢部材は伸長されるときに付勢力を発生させ、また、ラックと歯車との係合により、ラッチ部材の移動に線形的に対応しない形でラッチ部材に加えられる付勢力が変化する、という機械的利点が得られる。
【0022】
[0029]第2の態様では、本開示は、第2のドロワスライド部材に摺動可能に結合される第1のドロワスライド部材を有するドロワスライド内で使用される閉鎖デバイスを提供する。この閉鎖デバイスは、第2のドロワスライド部材に接続可能であるベースと、ベースに摺動可能に結合されるラッチ部材とを有し、このラッチ部材は準備位置および閉鎖位置を有する。ラッチ部材はベースに摺動可能に係合されるラックに結合され、閉鎖デバイスは、ベースに枢動可能に結合されかつラックに係合される歯車と、ベースおよび歯車に結合される付勢部材とをさらに有し、この付勢部材は、ラッチ部材を閉鎖位置まで駆動させるために歯車を枢動させるように付勢するように適合される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0030]以下では、ドロワスライドに結合されるドロワと共に使用されて示される例示の閉鎖デバイスが開示されるが、当業者であれば、本開示の教示が、示される特定の実施例のみに限定されないことを認識するであろう。むしろ、本開示の教示が代替の構成および環境でも実施され得ることが企図される。また、本明細書で説明される例示の閉鎖デバイスは特定の構成のドロワスライド組立体と共に示されるが、当業者であれば、例示の閉鎖デバイスの構成要素がサイドマウント構成およびアンダーマウント構成のいずれのドロワスライドでも使用され得るかまたはドロワスライドとは別個に装着されてもよいことを容易に認識するであろう。
【0024】
[0031]図1〜5Cを参照すると、本開示の第1の例示の閉鎖デイバスの全体が、自己閉鎖ドロワスライド、および/または、ドロワキャビネット組立体を有する家具の物品などの、ドロワスライド組立体に組み込まれ得るデバイス内で多数の構造で具体化され得ることが認識される。したがって、本明細書で開示される装置、製造物および方法は、有利には、キャビネット組立体内のドロワスライドまたはドロワの閉鎖フィーチャを機能強化するようにまたは改善するように適合され得、ここでは、「キャビネット組立体」という用語は、キャビネット、デスク、または、少なくとも1つのドロワを有する家具構造であってよい家具の物品を示すのに使用される。したがって、以下の開示では、キャビネット組立体という用語が使用され、ドロワスライド組立体を介して装着されるドロワと共に使用される閉鎖デバイスおよびその使用方法の実施例を説明するが、当業者であれば、開示される実施例がこのような閉鎖デバイスおよび/またはその使用方法を実施するための唯一の方法ではないことを容易に認識するであろう。
【0025】
[0032]図1〜5Cの好適な実施形態を参照すると、一形態の自己閉鎖ドロワスライドに組み込まれた第1の例示の閉鎖デバイス10が示されている。この閉鎖デバイス10は、従来の手段によりドロワ(図示せず)に取り付けられる第1のドロワスライド部材14と、第1のドロワスライド部材14に結合されかつ摺動可能に係合する第2のドロワスライド部材16と、従来の手段によりキャビネット組立体(図示せず)のキャビネット本体に取り付けられるための、第2のドロワスライド部材16に結合されかつ摺動可能に係合する第3のドロワスライド部材18と、を有するドロワスライド12に結合されて示されている。中間の第2のドロワスライド部材16を使用することにより、完全開位置においてドロワをキャビネットの面からより遠くに延伸させることが可能となり、このタイプのドロワスライドはしばしば完全延伸ドロワスライド(full extension drawer slide)と称される。しかし、好適な実施形態の閉鎖デバイス10は、完全延伸型のサイドマウントタイプのドロワスライド12に結合されるように構成されるが、本開示の第1の例示のドロワ閉鎖デバイスの構成要素が、2つまたは3つのスライド部材を有するドロワスライドに組み込まれるか、サイドマウントタイプまたはアンダーマウントタイプのドロワスライドに組み込まれるか、あるいは、何らかのドロワスライド部材に組み込まれることなくドロワまたはキャビネット本体への直接の取付具に組み込まれるかのいずれかの形で、別の構成に組み込まれてもよいことを認識されたい。
【0026】
[0033]第1の例示の閉鎖デバイス10の場合、個別の第1のドロワスライド部材14と第2のドロワスライド部材16との間での摺動可能な係合、さらには、個別の第2のドロワスライド部材16と第3のドロワスライド部材18との間での摺動可能な係合は、軸受(図示せず)を使用することなく達成される。この実施形態では、図示しないが、軸受は好適には従来の鋼構成の玉軸受タイプであり、これはリテーナ組立体内で保持される。しかし、摺動可能な係合がころ軸受などの別のタイプの軸受または別の摺動要素を用いても達成され得ること、および、代替の構成要素がプラスチックまたは金属合金などの様々な別の適切な材料で作られてもよいことを認識されたい。同様に、個別のドロワスライド部材14および16の間での摺動可能な係合、ならびに、ドロワスライド部材16および18の間での摺動可能な係合は同じタイプの係合であってよいが、同じである必要はない。
【0027】
[0034]図1の第1の実施例で特に詳細に示されるように、閉鎖デバイス10は、本明細書では近位端と称される第1の端部18’の近くで第3のドロワスライド部材18に結合される。第3のドロワスライド部材18の第1の端部18’は、通常、キャビネット本体の内側側壁表面に沿ってその側壁の後部近くに設置されることになる。それにより、使用者から見られないような特にコンパクトな装着構成が得られ、ここでは、第3のドロワスライド部材18はキャビネット本体に装着され、ドロワは第1のドロワスライド部材14に装着される。図2A〜5Cで最もよく分かるように、閉鎖デバイス10は、好適には、ベース30と、ラッチ部材40と、ラック50と、付勢部材60と、歯車70と、緩衝装置80とを有し、これらは、近位側の第1の端部14’のところで第1のドロワスライド部材14に結合されるまたはそれに組み込まれて形成される対応する作動部材90とラッチ部材40を介して相互作用するように構成される。ベース30、ラッチ部材40、ラック50および歯車70は好適には成形プラスチックで構成され、これらは各々、示されるように単一部片で形成されるか、または、複数の構成要素の組立体であってよい。付勢部材60は、線形的な割合で延伸する(linear rate extension)コイル状のばねの形態で示されており、この付勢部材60さらにはドロワスライド部材14、16および18は、好適には、鋼または別の適切な材料で構成される。閉鎖デバイス10の各々の構成要素を以下で説明し、さらにその後、それらの動作可能な結合および機能を説明する。
【0028】
[0035]第1の例示のデバイス10では、ベース30はスライド部材18に結合される。付勢部材60が、付勢部材60の第1の端部分62を受けるためにその近位端のところにソケット31を有するベース30を介して、第1の端部のところでスライド部材12に結合される。ベース30は、スライドチャネル32内でラッチ部材40を摺動可能に受ける。スライドチャネル32はその遠位端の近傍に切欠き32’を有する。ベース30は、緩衝装置80を受ける緩衝装置ホルダ33をさらに有する。ベース30はその中央領域に平坦区間34を有し、止め壁35が外側縁部36に沿ってこの平坦区間34から突出している。ポスト37が歯車70に枢動可能に結合されるために平坦区間34から延在し、止め壁35が歯車70の枢動を制限するのに使用され得る。スライドレール38が、ラック50と摺動可能に相互作用するために緩衝装置ホルダ33に沿って延在する。
【0029】
[0036]この第1の実施例では、ベース30は、その近位端18’の近くで第3のスライド部材18に容易に取り付けられ得るように構成され、それにより、単純で迅速かつ確実な装着が促進され、さらにそれにより、組立体の別の構成要素に干渉する可能性が軽減される。例えば、ベース30は種々の構成の配置用部材39を有し、これらの配置用部材39は、ベース30が第3のスライド部材18内にスナップ嵌めされるのを可能にするように外側に延在する。しかし、当業者であれば、ベース30が、分離した留め具、接着剤、または、ベースまたはスライド部材上にある別の相互係止フィーチャを使用することを含めた、別の多くの手法で、第3のスライド部材18に結合され得ることを認識するであろう。
【0030】
[0037]ラッチ部材40は、ラック50に枢動可能に結合されることを介して第3のスライド部材18に摺動可能に係合される。というのは、ラック50が、第3のスライド部材18に結合されているベース30に摺動可能に係合されるからである。例えば、ラッチ部材40は、スライドチャネル32内で摺動可能に受けられる中央本体42を有する。ラッチ部材40がスライドチャネル32の遠位端に到達するときに切欠き32’に係合されるために、フック部分44が中央本体42の遠位端から延在する。
【0031】
[0038]ラッチ部材40はまた、第1のドロワスライド部材14に選択的に結合され得る。このことは、ラッチ部材40が、直立する突出部として形成されかつ作動部材90に結合されたり作動部材90から切り離されたりするように構成されるピン46を有するという事実から確認することができ、作動部材90は第1のドロワスライド部材14の近位端のところに配置される湾曲したスロットの形態で示されている。ラッチ部材40は、ラック50に枢動可能に結合されるために、中央本体42の下側表面内にアパーチャ48をさらに有する。これらの構造が、対向する部材上のピンおよび湾曲したスロットの配置を基準にして反転され得ることを理解されたい。
【0032】
[0039]この第1の例示の閉鎖デバイス10では、ラック50は、歯車70の歯に係合されるための直線状の細長い歯付き区間54がそこから延在する平坦本体52を有することから、歯車70に係合され得る。ラック50はまた、ラッチ部材40内のアパーチャ48によって受けられる直立ポスト56を有し、それによりこれらの2つの構成要素の上述した枢動可能な結合が影響を受ける。さらに、ラック50内には、本明細書で後で説明するように、緩衝装置80をラック50に結合させるための直立ハブ58が含まれる。
【0033】
[0040]付勢部材60は線形的な割合で延伸するコイル状のばねとして示されているが、別の付勢部材および構成が使用されてもよいことを理解されたい。付勢部材60は、ソケット31内に挿入されることによりベース30に結合されるための細い区間を介してベース30に結合される第1の端部分62と、歯車70に結合されるループの形態の第2の端部分64とを有する。付勢部材60の長さを適切に選択することにより、ドロワが閉鎖位置にあるときにラッチ部材40がその移動範囲の近位端のところで維持されるようになり、別の構成要素との接触を回避することが促進され、接触に付随するノイズも回避される。
【0034】
[0041]この実施例では、歯車70は、ラック50の細長い歯付き区間54に係合されるための弓形の歯付き区間72を有する比較的平坦な扇形形状となるように構成される。歯車70は、ベース30の平坦区間34上のポスト37に枢動可能に結合されるためのアパーチャ74を有する。歯車70はまた、付勢部材60の第2の端部分64のループに結合されるためのタブ76を有する。
【0035】
[0042]緩衝装置80は、緩衝装置ホルダ33内でベース30によって受けられる外側ハウジング82を有する。作動ロッド84が緩衝装置80の遠位端から延在していてよく、この作動ロッド84は、直立ハブ58に結合されることを介してラック50に結合される。緩衝装置作動ロッド84とラック50のハブ58とがこのように結合されることにより、ラッチ部材40が、ラック50に結合されるときに緩衝されながら線形移動する。緩衝装置80は好適には閉鎖方向すなわち引込方向のみで緩衝効果を有するが、緩衝装置80が引込方向および延伸方向の両方で緩衝動作を行ってもよいことを理解されたい。
【0036】
[0043]この第1の実施例は、留め具94により第1のドロワスライド部材14の第1の端部14’に結合されるプラスチック挿入物92内に形成される湾曲したスロットとして構成される作動部材90を具備して示されている。スロットが別法として第1のスライド部材14内に直接に形成されるかまたは別個の部片を介して設けられてもよいこと、および、このような部片が、機械的留め具、プレス嵌め、接合剤のうちの1つまたは複数を使用することなどの、構成要素の適当な結合手法により、第1のスライド部材14に結合され得ること、を理解されたい。作動部材90はラッチ部材40上のピン46と相互作用し、また、上述したように、それぞれの構造は反転され得る。
【0037】
[0044]本開示によると、ベース30と、ベース30に摺動可能に係合するラック50に結合されるラッチ部材40と、ベース30に結合されかつラック50に係合される歯車70と、ベース30に結合される第1の端部62および歯車70に結合される第2の端部64を有する付勢部材60と、を有する閉鎖デバイス10が提供され、ここでは、付勢部材60は伸長されるときに付勢力を発生させ、また、ラック50と歯車70との係合により、ラッチ部材40の移動に線形的に対応しない形でラッチ部材40に加えられる付勢力が変化する、という機械的利点が得られる。
【0038】
[0045]本開示は、第2のドロワスライド部材18に摺動可能に結合される第1のドロワスライド部材14を有するドロワスライド12内で使用されるための閉鎖デバイス10をさらに提供する。この閉鎖デバイス10は、第2のドロワスライド部材18に接続され得るベース30と、ベース30に摺動可能に結合されるラッチ部材40を有し、このラッチ部材40は、準備位置および閉鎖位置を有する。ラッチ部材40はベース30に摺動可能に係合されるラック50に結合され、また、この閉鎖デバイスは、ベース30に枢動可能に結合されかつラック50に係合される歯車70と、ベース30および歯車70に結合される付勢部材60と、をさらに有し、この付勢部材60は、ラッチ部材40を枢動させさらにそれによりラッチ部材40を閉鎖位置へと移動させるために歯車70を付勢するように適合される。
【0039】
[0046]次に構成要素の動作可能な結合および機能を説明する。第3のドロワスライド部材18がキャビネット本体(図示せず)のキャビネット側壁の内側表面に結合されかつ第1のドロワスライド部材14がドロワ側壁(図示せず)の外側表面に結合された状態で、閉鎖デバイス10は、ドロワの最後の閉鎖動作を制御するのに使用される。図2A〜2Cは、閉鎖位置から開位置に移動されるときの、連続位置にある閉鎖デバイス10および第1のドロワスライド部材14の動作を示している。説明のために、このデバイスの下側は図5A〜5Cの対応する位置で示されるが、ラッチ部材40が作動部材90に係合されるときの位置を越えてドロワが移動されるときでも常に、図5Cに示される位置が維持されることを理解されたい。
【0040】
[0047]ラック50に枢動可能に結合されるラッチ部材40は、図2A、3A、3B、4Aおよび5Aではその移動範囲の近位端のところで示される。この位置では、歯車70の弓形の歯付き区間72が一方の端部においてラック50の細長い歯付き区間54に係合される。歯車70は、その枢動範囲を制限するように扇形の歯車70の一方側に沿って止め壁35に面して配置され、ここでは、歯車70の弓形の歯付き区間72の一方の端部のところの歯が、ラック50の細長い歯付き部分54の遠位端部のところにある歯に位置合わせされ、したがって、歯付き区間54、72が噛合されることにより移動されるようになる。この位置では、付勢部材60が、たるむのを回避するためにさらにはドロワを閉鎖位置に維持するために、相対的にほとんどまたは全く張力を有さない第1の位置にあり、ラッチ部材40が、スライドチャネル32内で移動範囲の近位端のところにある。緩衝装置ロッド84は緩衝装置80内の引込位置にあり、ラック50のハブ58に結合されている。
【0041】
[0048]図2Bおよび5Bは、開位置に向かう移動の初期段階、すなわち閉鎖位置に向かう移動の終了段階の、第1のドロワスライド部材14の位置を示している。示されるように、ラッチ部材40上のピン46が、遠位方向に移動されるように作動部材90の壁によって押圧されている。これによりラッチ部材40がスライドチャネル32に沿って移動するように押圧され、ラック50がスライドレール38に沿って摺動するように押圧される。ラック50が移動されるとき、歯車70の歯に係合されることで、歯車70が枢動するように押圧される。歯車70が枢動することにより、タブ76がポスト37を中心に円弧を通過するように移動され、それにより付勢部材60の第2の端部分64のところにあるループが移動され、それにより付勢部材60の長さが変化する。歯車70が枢動することで、付勢部材60の伸びに対するラック50の線形移動の比が変化するという機械的利点が得られる。
【0042】
[0049]第1のドロワスライド部材14が開位置に向かって継続して移動すると、作動部材90の湾曲したスロットがピン46を横方向に押圧し、それによりラッチ部材40上のフック部分44がスライドチャネル32の切欠き32’に入るようになり、それにより図2Cおよび5Cに示されるような掛合位置すなわち準備位置に到達する。図2Cは、実際に、掛合位置すなわち準備位置にある作動部材40と、ドロワの開位置に向かってさらにわずかに移動されて閉鎖デバイス10の影響下にはない第1のドロワスライド部材14と、を示している。また、ラッチ部材40が準備位置まで移動することにより、ラック50およびその細長い歯付き区間54がスライドレール38に沿って前進される。さらに、ラック50が歯車70の弓形の歯付き区間72に係合されていることにより、歯車70が止め壁35に面する位置まで枢動され、そこで歯車70の枢動が制限される。移動範囲の端部は、スライドレール38に沿ったラック50の移動範囲の端部および/またはスライドチャネル32内でのラッチ部材40の移動範囲によって同時または別個に制限され得る。
【0043】
[0050]歯車70上のタブ76は以下のような形態になるように位置決めされる:ラッチ部材40上のフック部分44が切欠き32’に到達して準備位置に入るときに、付勢部材60がベース30に対する歯車70の枢動可能な結合部分すなわち上死点を通過せずに、代わりに、張力を受ける状態を維持されて、ドロワの閉鎖位置に連係する戻り位置に向かうように枢動させるように歯車70を継続して付勢する、形態。
【0044】
[0051]ラッチ部材40が準備位置までさらに移動されると、歯車70が枢動することにより付勢部材60がさらに伸長されるが、この伸長の割合は、ラッチ部材40に枢動可能に結合されたラック50の線形移動の割合より低い。開示されるこの配置構成が有する機械的利点により、第1のドロワスライド部材14がラッチ部材40を準備位置の方に移動させるとき加えられるばねの力の増加率を効果的に低下させながら、線形ばね(linear rate spring)を有する付勢部材60を使用することが可能となる。この配置構成により、ドロワを移動させて閉鎖した状態で維持するための十分な付勢力を有し、さらに同時に、ドロワがドロワ閉鎖デバイスから切り離されたりドロワ閉鎖デバイスに再係合されたりする時点での最終的な付勢力を従来技術のデバイス(閉鎖要素が移動する割合と同じ割合で、付勢力が継続して増加する)と比較して低減させるような閉鎖デバイス10が得られる。その結果、使用者は、ドロワが閉鎖デバイス10の影響下にある状態とドロワが閉鎖デバイス10の動作範囲を超えて自由に移動できる状態との間での移行をより容易に行うことができるようになる。
【0045】
[0052]ドロワおよび第1のスライド部材14が開位置から閉鎖位置に向かって移動するとき、第1のドロワスライド14の近位端14’のところにある作動部材90が、ラッチ部材40上のピン46に再係合され、ラック50のポスト56を中心に枢動させるようにラッチ部材40を押圧し、それにより、スライドチャネル32の端部のところにある切欠き32’からフック部分44が引っ込められる。フック部分44が掛合を外された状態では、張力を受けている付勢部材60が歯付き歯車70を枢動させ、それにより歯付きラック50がベース30のスライドレール38に沿って摺動するようになる。ラック50がラッチ部材40に枢動可能に結合されることにより、ラッチ部材40およびドロワが閉鎖位置まで引っ張られる。
【0046】
[0053]したがって、ドロワがキャビネット本体内で閉鎖位置に向かって前進されると、第1のドロワスライド部材14の近位端14’が、例えばドロワスライド12の移動範囲の最後の5.08cm(2インチ)内といったような、第3のドロワスライド部材18の近位端18’の近傍の選択された動作範囲内で、移動される。この実施例では、第1のドロワスライド部材14の端部にある作動部材90のスロット内の湾曲部は、ラッチ部材40上のピン46を捕捉したり解放したりするのを補助するように構成される。作動部材90の湾曲したスロットとピン46との間での相互作用により、ベース30のスライドチャネル32内の切欠き32’に選択的に係合したり切欠き32’から選択的に外したりするようにフック44を押圧するためのラッチ部材40の枢動が制御され、それにより、ラッチ部材40が掛合されたり外されたりする。ピン46が別の適当な形態または形状で構成されてもよいこと、ならびに、部分的に修正されることにより、ピンスロット係合部品が反転されたり、別の適当な手法でドロワスライド、ドロワおよび/またはキャビネットに組み入れられてもよく、あるいは、ラッチ部材および作動部材が別の形態で構成されてもよいこと、を理解されたい。
【0047】
[0054]図6A〜7Bを参照すると、ドロワスライドに組み入れられ得る、または、ドロワおよびキャビネット組立体を有する家具の物品に組み入れら得る、第2の例示の閉鎖デバイス110が示されている。この第2の実施例は第1の実施例に実質的に類似しており、同様の形で作動する。したがって、第2の実施例は、第1の実施例との主要な相違点に焦点を当て、また、参照を容易にするために第1の実施例に対応する数値の順番を使用して、ある程度短縮した形で説明される。
【0048】
[0055]第2の例示の閉鎖デバイス110は、第1の例示のデバイス10に関連して上述した場合と同様の形で使用されるように適合され得る。したがって、第2の例示のデバイス10は、図1および2A〜2Cに示されるようなドロワスライドに組み入れられ得る。したがって、本明細書では、図1および2A〜2Cは、第2の例示の閉鎖デバイス110がドロワスライド12に結合されるものとしても参照される。閉鎖デバイス110は、好適には、ベース130と、ラッチ部材140と、ラック150と、付勢部材160と、歯車170と、緩衝装置180と、を有し、これらは、近位側の第1の端部14’のところで第1のドロワスライド部材14に結合されるまたはそれに組み込まれて形成される対応する作動部材90とラッチ部材140を介して相互作用するように構成される。ベース130、ラッチ部材140、ラック150および歯車170は、好適には、第1の例示のデバイス10を参照して上で考察した材料と同様の材料で構成される。
【0049】
[0056]この第2の例示の閉鎖デバイス110では、ベース130は第3のスライド部材18に結合される。付勢部材160が、付勢部材160の第1の端部分162を受けるためにその近位端のところにソケット131を有するベース130を介して、第1の端部のところでスライド部材12に結合される。付勢部材160は、線形的な割合で延伸するコイル状のばねの形態で示されており、この付勢部材160は好適には鋼または別の適切な材料で構成される。
【0050】
[0057]ベース130は、スライドチャネル132内でラッチ部材140を摺動可能に受ける。スライドチャネル132はその遠位端の近傍に切欠き132’を有する。ベース130は、緩衝装置180を受ける緩衝装置ホルダ133をさらに有する。第2の例示のデバイス110の緩衝装置180および対応する緩衝装置ホルダ133は、第1の例示のデバイス10の緩衝装置80および緩衝装置ホルダ33より細い。ベース130はその中央領域に平坦区間134を有し、止め壁135が外側縁部136に沿ってこの平坦区間134から突出している。ポスト137が歯車170に枢動可能に結合されるために平坦区間134から延在し、止め壁135が歯車170の枢動を制限するのに使用され得る。第2の例示のデバイス110の歯車170は第1の例示のデバイス10の歯車70より大きい半径を有する。スライドレール138が、ラック150と摺動可能に相互作用するために緩衝装置ホルダ133に沿って延在する。
【0051】
[0058]第1の例示のデバイスと同様に、第2の例示のデバイス110のベース130は、その近位端18’の近くで第3のスライド部材18に容易に取り付けられ得るように構成され、それにより、単純で迅速かつ確実な装着が促進され、さらにそれにより、組立体の別の構成要素に干渉する可能性が軽減される。ベース130は種々の構成の配置用部品139を有し、これらの配置用部品139は、ベース130が第3のスライド部材18内にスナップ嵌めされるのを可能にするように外側に延在する。第2の例示のデバイス110内の外側縁部136に沿った配置用部材139は第1の例示のデバイス10の配置用部材39に非常に類似するが、これらはわずかに異なる形で離間される。第1の例示のデバイス10の場合と同様に、ベース130が別の多くの手法で第3のスライド部材18に結合され得ることを認識されたい。
【0052】
[0059]ラッチ部材140は、ラック150に枢動可能に結合されることを介して第3のスライド部材18に摺動可能に係合される。というのは、ラック150が、第3のスライド部材18に結合されているベース130に摺動可能に係合されるからである。例えば、ラッチ部材140は、スライドチャネル132内で摺動可能に受けられる中央本体142を有する。ラッチ部材140がスライドチャネル132の遠位端に到達するときに切欠き132’に係合されるために、フック部分144が中央本体142の遠位端から延在する。ラッチ部材140はまた、第1のドロワスライド部材14に選択的に結合され得る。このことは、ラッチ部材140が、直立する突出部として形成されかつ作動部材90に結合されたり作動部材90から切り離されたりするように構成されるピン146を有するという事実から確認することができ、作動部材90は第1のドロワスライド部材14の近位端のところに配置される。ラッチ部材140は、ラック150に枢動可能に結合されるために、中央本体142の下側表面内に、図7Aには示されないが、図3Bに示されるアパーチャ48と同様のアパーチャをさらに有する。
【0053】
[0060]第1の実施例と同様に、第2の例示のデバイス110では、ラック150は、歯車170の歯に係合されるための直線状の細長い歯付き区間154がそこから延在する平坦本体152を有することから、歯車170に係合され得る。ラック150はまた、ラッチ部材140の下側表面(図示せず)内のアパーチャによって受けられる直立ポスト156を有し、それによりこれらの2つの構成要素の上述した枢動可能な結合が影響を受ける。さらに、ラック150内には、本明細書で後で説明するように、緩衝装置180をラック150に結合させるための直立ハブ158が含まれる。平坦本体152およびハブ158は第1の例示のラック50の平坦本体52およびハブ58とわずかに異なる形状を有するが、上述した機能と同じ機能を果たす。
【0054】
[0061]付勢部材160は、ソケット131内に挿入されることを介してベース130に結合されるための細い区間を有する第1の端部分162と、歯車170に結合されるためのループの形態の第2の端部分164とを有する。付勢部材160の長さを適切に選択することにより、ドロワが閉鎖位置にあるときにラッチ部材140がその移動範囲の近位端のところで維持されるようになり、別の構成要素との接触を回避することが促進され、接触に付随するノイズも回避される。
【0055】
[0062]第2の実施例では、やはりわずかに大きい半径を有する歯車170は、ラック150の細長い歯付き区間154に係合されるための弓形の歯付き区間172を有する比較的平坦な扇形形状となるように構成される。歯車170は、ベース130の平坦区間134上のポスト137に枢動可能に結合されるためのアパーチャ174を有する。歯車170はまた、付勢部材160の第2の端部分164のループに結合されるためのタブ176を有する。歯車およびラックを使用することにより得られる機械的利点が所望通りに選択され得ることを認識されたい。例えば、第2の例示の閉鎖デイバス110の大きい歯車170により、ラッチ部材140の移動と付勢部材160の伸長との間での延伸の比率が変化し、第1の例示の閉鎖デバイス10の構成要素と比較して、ばねの変位に対するラッチ部材の移動を約15パーセント増加させることができる。
【0056】
[0063]緩衝装置180は、緩衝装置ホルダ133内でベース130によって受けられる外側ハウジング182を有する。作動ロッド184が緩衝装置180の遠位端から延在していてよく、この作動ロッド184は、直立ハブ158を介してラック150に結合される。緩衝装置作動ロッド184とラック150のハブ158とがこのように結合されることにより、ラッチ部材140が、ラック150に結合されていることから、緩衝されながら線形移動するようになる。緩衝装置180は好適には閉鎖方向すなわち引込方向のみで緩衝効果を有するが、緩衝装置180が引込方向および延伸方向の両方で緩衝動作を行ってもよいことを理解されたい。
【0057】
[0064]この第2の例示のデバイス110は、留め具94により第1のドロワスライド部材14の第1の端部14’に結合されるプラスチック挿入物92の形態の湾曲したスロットとして構成される作動部材90を有する同じドロワスライド部品を具備して示されている。上で考察したように、これらの構造には代替の構成が存在してもよいことを認識されたい。いずれの場合も、作動部材90がラッチ部材140上のピン146と相互作用する。
【0058】
[0065]第2の例示のデイバス110の構成要素の動作可能な結合および機能に関して、第2の例示のデバイス110が第1の例示のデバイス10と本質的に同じ形で動作することを認識されたい。したがって、第3のドロワスライド部材18がキャビネット本体(図示せず)のキャビネット側壁の内側表面に結合されかつ第1のドロワスライド部材14がドロワ側壁(図示せず)の外側表面に結合された状態で、ドロワ閉鎖デバイス110は、ドロワの最後の閉鎖動作を制御するのに使用される。第2の閉鎖デバイス110の動作は、図2A〜2Cおよび図5A〜5Cで第1の例示のデバイスに関連して示されて説明された動作に類似する。
【0059】
[0066]したがって、ラック150に枢動可能に結合されるラッチ部材140は、図6Aおよび7Aではその移動範囲の近位端のところで示される。この位置では、歯車170の弓形の歯付き区間172が一方の端部においてラック150の細長い歯付き区間154に係合される。歯車170は、その枢動範囲を制限するように扇形の歯車170の一方側に沿って止め壁135に面して配置され、ここでは、歯車170の弓形の歯付き区間172の一方の端部のところの歯が、ラック150の細長い歯付き部分154の遠位端のところにある歯に位置合わせされ、したがって、歯付き区間154、172が噛合されることにより移動されるようになる。この位置では、付勢部材160が、たるむの回避するためにさらにはドロワを閉鎖位置に維持するために、相対的にほとんどまたは全く張力を有さない第1の位置にあり、ラッチ部材140が、スライドチャネル132内で移動範囲の近位端のところにある。緩衝装置ロッド184は緩衝装置180内で引込位置にあり、ラック150のハブ158に結合されている。
【0060】
[0067]図6Bは、第1のドロワスライド部材14が開位置に向かって移動されてラッチ部材140から切り離されているときの、第2の例示のデバイスの位置を示している。したがって、この位置に到達する前に、ラッチ部材140上のピン146が、遠位方向に移動されるように作動部材90の壁によって押圧されている。これによりラッチ部材140がスライドチャネル132に沿って移動するように押圧され、ラック150がスライドレール138に沿って摺動するように押圧される。ラック150が移動されるとき、歯車170の歯に係合されることで、歯車170が枢動するように押圧される。歯車170が枢動することにより、タブ176がポスト137を中心に円弧を通過するように移動され、それにより付勢部材160の第2の端部分164のところにあるループが移動され、それにより付勢部材160の長さが変化する。歯車170が枢動することで、付勢部材160の伸びに対するラック150の線形移動の比率が変化するという機械的利点が得られる。
【0061】
[0068]第1のドロワスライド部材14が開位置に向かって継続して移動すると、作動部材90の湾曲したスロットがピン146を横方向に押圧し、それによりラッチ部材140上のフック部分144がスライドチャネル132の切欠き132’に入るようになり、それにより図6Bに示されるような掛合位置すなわち準備位置に到達する。したがって、図6Bは、第1のドロワスライド部材14がドロワの開位置に向かってさらにわずかに移動されて作動部材140がドロワ閉鎖デバイス110の影響下から外れたときに見られるような、掛合位置すなわち準備位置にある作動部材140を示している。また、ラッチ部材140が準備位置まで移動することにより、ラック150およびその細長い歯付き区間154がスライドレール138に沿って前進される。さらに、ラック150が歯車170の弓形の歯付き区間172に係合されていることにより、歯車170が止め壁135に面する位置まで枢動され、そこで歯車170の枢動が制限される。移動範囲の端部は、スライドレール138に沿ったラック150の移動範囲の端部および/またはスライドチャネル132内でのラッチ部材140の移動範囲によって同時にまたは別個に制限され得る。
【0062】
[0069]第1の例示のデバイス10と同様に、第2の例示のデバイス110では、歯車170上のタブ176は以下のような形態になるように位置決めされる:ラッチ部材140上のフック部分144が切欠き132’に到達して準備位置に入るときに、付勢部材160がベース130に対する歯車170の枢動可能な結合部分すなわち上死点を通過せずに、代わりに、張力を受ける状態を維持されて、ドロワの閉鎖位置に連係する戻り位置に向かって枢動させるように歯車170を継続して付勢する、形態。
【0063】
[0070]ラッチ部材140が準備位置までさらに移動されると、歯車170が枢動することにより付勢部材160がさらに伸長されるが、この伸長の割合は、ラッチ部材140に枢動可能に結合されたラック150の線形移動の割合より低い。開示されるこの配置構成が有する機械的利点により、第1のドロワスライド部材14がラッチ部材140を準備位置の方に移動させるときに加えられるばねの力の増加率を効果的に低下させながら、線形ばねを有する付勢部材160を使用することが可能となる。この配置構成により、ドロワを移動させて閉鎖した状態に維持するための十分な付勢力を有し、さらに同時に、ドロワがドロワ閉鎖デバイスから切り離されたりドロワ閉鎖デバイスに再係合されたりする時点での最終的な付勢力を従来技術のデバイス(閉鎖要素が移動する割合と同じ割合で、付勢力が継続して増加する)と比較して低減させるような閉鎖デバイス110が得られる。その結果、使用者は、ドロワが閉鎖デバイス110の影響下にある状態とドロワが閉鎖デバイス110の動作範囲を超えて自由に移動できる状態との間での移行をより容易に行うことができるようになる。
【0064】
[0071]ドロワおよび第1のスライド部材14が開位置から閉鎖位置に向かって移動するとき、第1のドロワスライド14の近位端14’のところにある作動部材90が、ラッチ部材140上のピン146に再係合され、ラック150のポスト156を中心に枢動させるようにラッチ部材140を押圧し、それによりスライドチャネル132の端部のところにある切欠き132’からフック部分144が引っ込められる。フック部分144が掛合を外された状態では、張力を受けている付勢部材160が歯付き歯車170を枢動させ、それにより歯付きラック150がベース130のスライドレール138に沿って摺動するようになる。ラック150がラッチ部材140に枢動可能に結合されることにより、ラッチ部材140およびドロワが閉鎖位置まで引っ張られる。
【0065】
[0072]したがって、ドロワがキャビネット本体内で閉鎖位置に向かって前進されると、第1のドロワスライド部材14の近位端14’が、例えばドロワスライド12の移動範囲の最後の5.08cm(2インチ)内といったような、第3のドロワスライド部材18の近位端18’の近傍の選択された動作範囲内で、移動される。この実施例では、第1のドロワスライド部材14の端部にある作動部材90のスロット内の湾曲部は、ラッチ部材140上のピン146を捕捉したり解放したりするのを補助するように構成される。作動部材90の湾曲したスロットとピン146との間での相互作用により、ベース130のスライドチャネル132内の切欠き132’に選択的に係合させたり切欠き132’から選択的に外したりするようにフック144を押圧するためのラッチ部材140の枢動動作が制御され、それにより、ラッチ部材140が掛合されたり外されたりする。ピン146が別の適当な形態または形状で構成されてもよいこと、ならびに、部分的に修正されることにより、ピンスロット係合部品が反転されたり、別の適当な手法でドロワスライド、ドロワおよび/またはキャビネットに組み入れられてもよく、あるいは、ラッチ部材および作動部材が別の形態で構成されてもよいこと、を理解されたい。
【0066】
[0073]本開示によるドロワ閉鎖デバイスが種々の構成で提供され得ることを認識されたい。エンドユーザーの特定のニーズおよび要求を満たすために、構成要素に対して、任意の多様な、適切な、材料構成、構造、形状およびサイズが使用されてよく、または、任意の多様な、適切な、構成要素の結合方法が使用されてよい。本開示の範囲および精神から逸脱することなく、緩衝装置が使用されるか否かに関わらず、このようなドロワ閉鎖デバイスの設計および構成において種々の修正が行われ得ること、および、特許請求の範囲が、示されている好適な実施形態のみ限定されないことは、当業者には明白であろう。
【0067】
[0074]本開示は例示のドロワ閉鎖デバイスを示して説明しているが、これらの実施例は単に例示的なものであり、限定的なものであるとはみなされない。本開示の範囲および精神から逸脱することなく、種々の閉鎖デバイスが多様な形態のドロワスライドまたはキャビネット組立体に設置されるように構成され得ることは、当業者には明白であろう。したがって、本明細書では例示の方法、装置および製造物を説明してきたが、本発明の適用範囲はそれらのみに限定されない。逆に、本発明は、文字通りのまたは均等論に従う添付の特許請求の範囲内に確実にあるすべての方法、装置および製造物を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖デバイスであって:
ベースと;
前記ベースに摺動可能に係合されるラックに結合するラッチ部材と;
前記ベースに結合されかつ前記ラックに係合される歯車と;
前記ベースに結合される第1の端部および前記歯車に結合される第2の端部を有する付勢部材と
を有し、
前記付勢部材が伸長されるときに付勢力を発生させ、また、前記ラックと前記歯車との係合により、前記ラッチ部材の移動に線形的に対応しない形で前記ラッチ部材に加えられる前記付勢力が変化する、という機械的利点が得られる、
閉鎖デバイス。
【請求項2】
前記ベースに対する前記ラッチ部材の所与の距離の線形移動により、前記付勢部材の前記第2の端部が、前記付勢部材の前記第1の端部に対して、前記ラッチ部材が移動する前記所与の距離より短い距離だけ移動される、請求項1に記載の閉鎖デバイス。
【請求項3】
前記ラッチ部材がフック部分を有し、前記ベースが前記フック部分を受けるように構成される切欠き部分を有する、請求項1に記載の閉鎖デバイス。
【請求項4】
前記歯車が弓形の歯付き区間を有し、前記ラックが前記歯車に係合する細長い歯付き区間を有する、請求項1に記載の閉鎖デバイス。
【請求項5】
前記歯車が扇形形状である、請求項1に記載の閉鎖デバイス。
【請求項6】
前記歯車が前記ベースに枢動可能に結合される、請求項1に記載の閉鎖デバイス。
【請求項7】
前記歯車が移動することならびに前記付勢部材の前記第2の端部が前記歯車に結合されることが制限されており、それにより、前記付勢部材が前記ベースに対する前記歯車の枢動可能な結合部分を通過することが防止される、請求項6に記載の閉鎖デバイス。
【請求項8】
前記ベースがスライドチャネルをさらに有し、前記ラッチ部材が前記スライドチャネルに摺動可能に係合される、請求項1に記載の閉鎖デバイス。
【請求項9】
前記付勢部材がコイルばねの形態である、請求項1に記載の閉鎖デバイス。
【請求項10】
少なくとも1つの方向において前記ラッチ部材の移動を緩衝する緩衝装置をさらに有する、請求項1に記載の閉鎖デバイス。
【請求項11】
前記緩衝装置が前記ベースに結合されるハウジングを有する、請求項10に記載の閉鎖デバイス。
【請求項12】
前記緩衝装置が前記ラックに結合されるロッドを有する、請求項10に記載の閉鎖デバイス。
【請求項13】
第2のドロワスライド部材に摺動可能に結合される第1のドロワスライド部材を有するドロワスライド内で使用される閉鎖デバイスであって、前記閉鎖デバイスが:
前記第2のドロワスライド部材に接続可能であるベースと;
前記ベースに摺動可能に結合されるラッチ部材であって、前記ラッチ部材が準備位置および閉鎖位置を有し、前記ラッチ部材が前記ベースに摺動可能に係合されるラックに結合される、ラッチ部材と;
前記ベースに枢動可能に結合されかつ前記ラックに係合される歯車と;
前記ベースおよび前記歯車に結合される付勢部材であって、前記付勢部材が、前記歯車を枢動させるように付勢しそれにより前記ラッチ部材を閉鎖位置まで駆動させる、ように適合される、付勢部材と
を有する、閉鎖デバイス。
【請求項14】
前記付勢部材が、ある構成で前記ベースおよび前記歯車に結合され、この構成では、前記ベースに対する前記ラッチ部材の所与の距離の摺動可能な移動により、前記ラッチ部材が移動する前記所与の距離に等しくない距離で前記付勢部材の長さが変化する、請求項13に記載の閉鎖デバイス。
【請求項15】
前記歯車が歯をさらに有し、前記ラックが前記歯車の前記歯に係合する歯をさらに有する、請求項13に記載の閉鎖デバイス。
【請求項16】
前記歯車の前記枢動可能な移動および前記歯車に対する前記付勢部材の前記結合が制限され、それにより、前記付勢部材が前記歯車に付勢力を加え、それにより前記歯車が一方向に回転するように継続して付勢される、請求項13に記載の閉鎖デバイス。
【請求項17】
前記歯車の前記枢動可能な移動および前記歯車に対する前記付勢部材の前記結合が制限され、それにより、前記付勢部材が前記ベースに対する前記歯車の枢動可能な結合部分を通過することが防止される、請求項13に記載の閉鎖デバイス。
【請求項18】
前記ラッチ部材に結合されて一方向において前記ラッチ部材の移動を緩衝する緩衝装置をさらに有する、請求項13に記載の閉鎖デバイス。
【請求項19】
前記緩衝装置が前記ベースに結合されるハウジングおよび前記ラックに結合されるロッドをさらに有する、請求項18に記載の閉鎖デバイス。
【請求項20】
前記ラッチ部材が前記第1のドロワスライド部材によって着脱自在に係合されるように構成される、請求項13に記載の閉鎖デバイス。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2013−509953(P2013−509953A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537944(P2012−537944)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/055124
【国際公開番号】WO2011/056792
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(512116033)ネイプ・アンド・フォークト・マニュファクチュアリング・カンパニー (1)
【Fターム(参考)】