説明

ドーム型スクリーン

【課題】ドーム型スクリーンにおいて、ドーム周辺部で反射してドーム中央部に向かう角度の大きい反射光の量を減衰し、もってドーム中央部に表示される画像のコントラストを向上させることが可能な技術を提供することを課題とする。
【解決手段】ドーム型スクリーン1は、半球形状であって、内側の表面に、プロジェクタ10から投射された画像光を反射して表示する反射部2と、この反射部2に、当該ドーム型スクリーンの水平方向に沿って間隔を空けて縞状に凸設され、反射部2で反射された反射光を遮光する遮光部3と、を備えて構成される。遮光部3は、反射部2に、例えば螺旋状に設けられている。また、遮光部3は、反射部2に、例えば当該ドーム型スクリーン1の底部の円周に対し同心円状に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プラネタリウム等の大画面表示に好適に用いられるドーム型スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラネタリウム等では、一台または複数台のプロジェクタから投射された画像を反射して表示する反射型のドーム型スクリーンが用いられている。例えば特許文献1には、複数の分割片を組み合わせることによってドーム状をなし、その内面にスクリーン塗料を塗布して表示面としたドーム型スクリーンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−276178号公報
【0004】
ここで図4に示すのは、ドーム型スクリーンの内部に設置されたプロジェクタから投射された画像の光がドーム型スクリーンの表示面で反射する様子を表す概念図である。図4では、プロジェクタから表示面に直接入射する画像の光を実線で示し、表示面で反射した反射光を破線で示している。
【0005】
図4に示すように、例えばプロジェクタからドーム型スクリーンのドーム周辺部(ここではA点、C点を指す。)の表示面に入射した画像の光は、表示面で反射して主にドーム型スクリーンの底部側に設けられた観客席側に向かうが、一部の反射光は、表示面におけるドーム中央部(ここでは、B点を指す。)に入射している。また、ドーム中央部に投影された画像の光(反射光)の一部は、表示面の他の部分に入射している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにドーム型スクリーンは、指向特性が広い、すなわち、プロジェクタから投射された光を広い範囲へ反射する構造となっている。そのため、大画面になるほど、画面上の他の部分で反射した反射光の影響を受けやすくなる。つまり、画面上のある部分で反射した反射光が他の部分に入射することで、その部分がいわゆる黒浮きしてしまう、換言すれば、白っぽくなってしまう現象がおきやすくなる。このように、画面が白っぽくなってしまうと、画面のコントラスト(明部と暗部の輝度の差)が低下してしまい、画質の劣化を招いてしまう。通常のテレビ受像機等の画面では、コントラストが1000対1以上得られるのに対し、ドーム型スクリーンの画面では、コントラストが10対1以下しか得られないのは、画面上の他の部分で反射した反射光の影響を受けやすいというドーム型スクリーンの構造上の性質によるところが大きい。
【0007】
ドーム型スクリーンは、観客席側から見たときに、特にドーム中央部に視線が集まりやすい構造となっているので、ドーム中央部に表示される画像のコントラストが低下すると、観客席側から見たときに画質の劣化が目立ちやすくなってしまう。このため、画質の劣化を防止するためには、ドーム中央部に表示される画像のコントラストの低下を防ぐことが必要となる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、スクリーン面で反射した反射光を遮光する構造となっていないため、ドーム周辺部で反射した角度の大きい反射光がドーム中央部に入射することにより、ドーム中央部に表示される画像のコントラストが大きく低下してしまうおそれがあった。
【0009】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、ドーム型スクリーンにおいて、ドーム周辺部で反射してドーム中央部に向かう角度の大きい反射光の量を減衰し、もってドーム中央部に表示される画像のコントラストを向上させることが可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決した請求項1に記載の発明は、プロジェクタから投射された画像光を反射して表示するドーム型スクリーンであって、当該ドーム型スクリーンの内側の面に、前記画像光を反射する反射部と、前記反射部に、当該ドーム型スクリーンの水平方向に沿って間隔を空けて縞状に凸設される遮光部と、を備え、前記遮光部は、前記反射部で反射された反射光を遮光することを特徴とする。
ここで、請求項1に記載のドーム型スクリーンにおいて、前記遮光部は、前記反射部に、螺旋状に設けられていてもよい。また、請求項1に記載のドーム型スクリーンにおいて、前記遮光部は、前記反射部に、当該ドーム型スクリーンの底部の円周に対し同心円状に設けられていてもよい。
【0011】
かかる構成によれば、ドーム型スクリーンの反射部に、当該ドーム型スクリーンの水平方向に沿って間隔を空けて縞状に凸設された遮光部によって、遮光部の間の反射部で反射した反射光を遮光することができる。
つまり、ドーム型スクリーンにおけるドーム周辺部で反射してドーム中央部に向かう反射光の一部を、ドーム周辺部に設けた遮光部で遮光することができるので、ドーム中央部に入射する反射光の量を効果的に減衰することができる。従って、ドーム中央部に表示される画像のコントラストおよび画質を向上することができる。また、ドーム中央部で反射されて画面の他の部分に向かう反射光により、他の部分に表示される画質が劣化するのを防止できる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のドーム型スクリーンにおいて、前記遮光部は、当該ドーム型スクリーンのドーム中央部における設置間隔が、ドーム周辺部における設置間隔よりも大きいことを特徴とする。
【0013】
ここで、ドーム型スクリーンのドーム周辺部で反射される反射光がそのままドーム中央部に入射すると、ドーム中央部のコントラストが低下してしまうため、この反射光を効果的に遮光することが必要となる。その一方で、ドーム型スクリーンのドーム中央部で反射される反射光は、ドーム型スクリーンの構造上、ドーム中央部にほとんど入射しない。
そこで、ドーム中央部に表示される画像のコントラストに影響を与えるドーム周辺部からの反射光を効果的に減衰するために、ドーム周辺部においては遮光部の設置間隔を小さくし、その一方で、ドーム中央部においては遮光部の設置間隔を大きくする。
【0014】
これにより、ドーム周辺部で反射されてドーム中央部に向かう角度の大きい反射光を効果的に遮光することができると共に、ドーム型スクリーンの構成を簡素化することができる。さらに、設置間隔は大きいが、ドーム中央部にも遮光部を設けているので、ドーム中央部で反射されて画面の他の部分に向かう反射光をある程度遮光することができる。このため、ドーム中央部以外の他の部分に表示される画像のコントラストの改善もなお期待できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
請求項1ないし請求項3に記載の発明によれば、ドーム型スクリーンの内側の面に設けた反射部に、ドーム型スクリーンの水平方向に沿って縞状に突出する遮光部を設けたので、ドーム型スクリーンにおけるドーム周辺部で反射してドーム中央部に向かう反射光を効果的に遮光することができる。これにより、ドーム中央部に表示される画像のコントラストを向上させることができ、ひいては、ドーム型スクリーンの全体に、高コントラストで高画質な画像を表示することができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1から請求項3に記載の発明の効果に加え、ドーム型スクリーンの構成を簡素化することができるのでドーム型スクリーンが安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るドーム型スクリーンの全体構成を示す図および一部を拡大した図である。
【図2】(a)は、図1に示すドーム型スクリーンを構成する基材を示す(b)は、(a)の基材をさらに拡大した図であり、(c)は、(b)をA方向から見た側面図である。
【図3】遮光部によって反射光を遮光する様子を説明するための概念図である。
【図4】従来のドーム型スクリーンにおいてプロジェクタから投射された画像光がスクリーン面において反射する様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るドーム型スクリーン1について図1および図2を参照して説明する。
図1に示すように、ドーム型スクリーン1は、半球形状であって、内側の表面に、プロジェクタ10から投射された画像光を反射して表示する反射部2と、この反射部2に、当該ドーム型スクリーンの水平方向に沿って間隔を空けて縞状に凸設され、反射部2で反射された反射光を遮光する遮光部3と、を備えて構成される。なお、ここでは2台のプロジェクタ10がドーム型スクリーン1の反射部2の異なる領域に対応する画像をそれぞれ投射する場合を例示しているが、プロジェクタ10の台数は、特に限定されるものではない。なお、図1の拡大図では、説明の便宜上、遮光部3を強調して拡大表示し、間隔も広くしている。
【0018】
ドーム型スクリーン1は、図2(a)に示すように、例えばアルミニウム等の金属製の小片状のスクリーンである基材1aを、ドーム型となるように、ドーム型の枠体(図示せず)の表面に複数枚隣接して並べ、それぞれの基材1aを、枠体(図示せず)にボルトやリベット等によって固定して構成されている。なお、図2(b)および(c)では、便宜上、基材1aを矩形状として示したが、実際の作製時には、ドーム型に対応させるために、基材1aを台形状等とすることはもちろんである。
【0019】
この基材1aは、例えば、アクリル、ポリエステル等から構成される可撓性を有するプラスチックフィルム等で形成してもよい。基材1aを、可撓性を有する素材で形成すると、枠体(図示せず)における湾曲した部分にも取り付けやすくなる。なお、基材1aの厚みは、スクリーンとしての強度等を考慮して適宜設定することができる。以下では、適宜図2(a)ないし(c)を参照して、基材1aを用いてドーム型スクリーン1の構成を説明する。
【0020】
反射部2は、プロジェクタ10から投射された画像光を反射して表示するものである。反射部2は、基材1aの一方の表面を、例えば、白色の塗料等(例えば、白インキ等)で塗装することによって形成することができる。
【0021】
遮光部3は、反射部2で反射された反射光を遮光するものであり、図1および図2(c)に示すように、反射部2に、ドーム型スクリーン1の水平方向に沿って間隔を空けて縞状に凸設されている。つまり、遮光部3は、反射部2を正面側から見たときに横筋状に延びて突出している。ここでは、図2(b)に示すように、ドーム型スクリーン1を正面側から見たときに反射部2と遮光部3が交互に並ぶように遮光部3を配置している。遮光部3は、例えば、反射部2にドーム型スクリーン1の底部の円周と同心円状に設けてもよいし、反射部2に螺旋状に設けてもよい。
【0022】
遮光部3は、例えば表面を黒色の染料等(例えば墨インキやブラックパウダー等)で塗装したケーブルを、反射部2に、ドーム型スクリーン1の水平方向に間隔を空けて縞状に複数並べて配置し、このケーブルを接着剤等でそれぞれ反射部2に固定することによって構成することができる。なお、図2(c)に示した例では、遮光部3の頂部を平坦な形状としているが、これに限られるものではなく、尖っていてもよいし、円弧状としてもよい。また、遮光部3の断面形状を矩形状としているが、これに限られるものではなく、適宜変更することができる。遮光部3の素材は、公知の材料から適宜選択することができるが、加工や取り付けの簡便さ、および、基材1aに遮光部3を取り付けた状態で枠体に取り付けたときに、基材1aが遮光部3の重みで撓んで変形することのないように、基材1aとのバランスを考慮することが必要である。
【0023】
次に、ドーム型スクリーン1の上下方向における遮光部3の設置間隔pは、観客がスクリーン上の画像を見るときに邪魔と感じられない程度に小さくする必要がある。例えば、直径40mのドーム型スクリーン1の天頂部と、当該ドーム型スクリーン1の底部の中央部に設けられた観客席に座っている観客との距離は、およそ10mである。また、このドーム型スクリーン1の天頂部と、当該ドーム型スクリーン1の底部の隅に設けられた観客席に座っている観客との距離は、最短では5m程度であるが、天頂部との距離は10m以上となる。なお、天頂部とは、ドーム型スクリーン1の頂上部分であり、ドーム型スクリーン1を地球の北半球に見立てたときの北極点の位置をいう。
【0024】
ここで、例えば視力1.0の人を基準とすると、視覚、すなわち、目から画面上の一部分を見込む角度1度あたりに線が60本あれば細かくてほとんど見えないと感じられるが、一方で、視覚1度あたりに線が8本であればはっきりと線があると感じられる。そして、観客席からドーム型スクリーン1の天頂部を見たときに線がほとんど見えないようにするためには、10m離れたところから見たときに、視覚1度あたり60本という条件は3mmとなる。
【0025】
これに鑑み、他の視力の人も考慮して、遮光部3の設置間隔pを2〜5mmとなるように設けると好ましい。遮光部3の設置間隔pが2mmより小さいと、必要以上に細かくなってしまい、ドーム型スクリーン1の作製が困難となることに加え、観客席から見たときに画面が暗く感じてしまうおそれがある。一方、遮光部3の設置間隔pが5mmより小さいと、間隔が広すぎてしまい、遮光部3が観客に見えて邪魔と感じられる可能性が増えてしまう。
【0026】
また例えば、直径20mのドーム型スクリーン1の半分(1周およそ60mであるので、30m)にスーパーハイビジョンの8K画像(画面水平に7680画素)を表示するとすれば、1画素の大きさが4mmとなるので、遮光部3の設置間隔pをその半分である2mm以下とすることが望ましい。このようにすると、ドーム型スクリーン1に8K画像を表示したときに、モアレなどを生じる可能性が低くなり、画質の劣化を防止することができる。
【0027】
上記のいずれの場合においても、遮光部3の高さHを1mm程度とすることが望ましい。遮光部3の高さHが大きすぎると画面全体が暗くなってしまうので好ましくない一方で、小さすぎると角度の大きい反射光が遮光部3の間をすり抜けてしまい、ドーム中央部に入射する反射光の量を効果的に減衰することができないおそれがあるためである。
【0028】
次に、ドーム型スクリーン1における遮光部3の設置間隔pと高さHが、遮光の性能に与える影響について説明する。
ここで、ドーム中央部(ここでは図1におけるB点)に投影された画像の光が観客席に到達するときのドーム中央部の面から見た角度は、ドーム型スクリーン1の構造上およそ±30度の範囲である。一方、ドーム周辺部(ここでは図1におけるA点またはC点)に投影された画像の光がドーム中央部に入射するときのドーム中央部の面から見た入射角は、ドーム型スクリーン1の構造上およそ45度である。
【0029】
なお、ここでは、ドーム周辺部とは、観客席に自然な姿勢で腰掛けているときに視界に入る壁部分をいう。ここでは、ドーム型スクリーン1を地球の北半球に見立てたときに赤道から北緯35度までの間の領域をドーム周辺部という。ドーム中央部とは、観客席の背もたれを後方へ倒したときに初めて視界に入る天井部分をいう。ここでは、ドーム型スクリーン1を地球の北半球に見立てたときに、北緯35度から北極点までの間の領域をドーム中央部という。
【0030】
ここで、遮光部3を設けないときに、反射角θの方向に反射される光量を1とし、遮光部3を設けたときに、反射角θの方向に反射される光量をRθとすると、遮光部3の設置間隔pと高さHとの間には、次の式(101)で示す関係が成立する。同様にして、遮光部3を設けたときに、反射角30度の方向に反射される光量R30と、遮光部3の設置間隔pと高さHとの間には、次の式(102)で示す関係が成立し、遮光部3を設けたときに、反射角45度の方向に反射される光量R45と遮光部3の設置間隔pと高さHとの間には、次の式(103)で示す関係が成立する。
【0031】
【数1】

【0032】
この式(103)によれば、遮光部3の高さHに対する設置間隔pの比を示すH/pを例えば0.5、つまり、遮光部3の高さHと設置間隔pを1:2とすると、遮光部3を設けたときに反射角45度の方向に反射される光量は、遮光部3を設けないときと比べて50パーセント減衰される。すなわち、遮光部3によって、ドーム周辺部からドーム中央部に向かう反射光の量が50パーセント減衰される。その一方で、式(102)によれば、遮光部3を設けたときに反射角30度の方向に反射される光量は、遮光部3を設けないときと比べて30パーセントしか減衰されない。つまり、ドーム中央部の輝度は、観客席の周辺においても70パーセントは確保される。
【0033】
また、式(101)によれば、H/Pが0.5のときに反射角63度以上でドーム中央部に向かう反射光は、遮光部3によって完全に遮断されてドーム中央部に入射されない。より詳しくは、式(101)において、H/Pが0.5でRθ=0となるときのtanθは、2となる。Rθ=0になるということは、遮光部3によって反射光が完全に遮断されることを意味する。そして、tanθ=2に対応する反射角は、おおよそ63度となる。
【0034】
このように、ドーム型スクリーン1の天頂部から54度(180度−63度−63度)以内の領域で反射された反射光、すなわち、ドーム中央部の面から見た角度が54度以内の領域で反射された反射光は、遮光部3によって完全に遮断されてドーム中央部に入射されないので、ドーム中央部に表示される画像のコントラストを高い状態で維持することができる。
【0035】
このようなドーム型スクリーン1によれば、ドーム周辺部で反射してドーム中央部に向かう角度の大きい反射光の一部を遮光部3によって遮光することができるので、ドーム中央部に入射する反射光の量を減衰することができ、これにより、ドーム中央部のコントラストの低下および画質の劣化を防止することができる。ひいては、画面全体に、高コントラストで高画質な画像を表示することができる。また、遮光部3を反射部2に取り付けるだけでよく、この遮光部3は、黒色のケーブル等の安価かつ簡素な素材で構成することができるので、ドーム型スクリーン1が安価となる。
【0036】
なおドーム型スクリーン1は、図示しないが、表面全体に音を吸収するための小孔を複数有していてもよい。基材1aが硬質のアルミニウム製などであると音声を反射しやすいので、例えばプラネタリウムのように、画像と連動してスピーカーで解説音声などを流す場合、観客が音声を聞き取りづらくなってしまうという問題があるが、これによれば、反射部2に向かった音の一部が小孔から背後に抜けるので、音の反射を低減することができる。
【0037】
以上説明した本発明のドーム型スクリーンは、前記した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0038】
前記した実施形態では、遮光部3を、ドーム型スクリーン1の反射部2の全体に略等間隔で設けていたが、これに限られるものではなく、場所に応じて設置間隔を変えてもよい。例えばドーム中央部の遮光部3の設置間隔を、それ以外の部分、つまり、ドーム周辺部の遮光部3の設置間隔よりも大きくしてもよい。
【0039】
ドーム型スクリーン1のドーム周辺部で反射される反射光がそのままドーム中央部に入射すると、ドーム中央部のコントラストが低下してしまうため、この反射光を効果的に遮光することが必要となる。その一方で、ドーム型スクリーン1のドーム中央部で反射される反射光は、ドーム型スクリーン1の構造上、ドーム中央部にほとんど入射しない。
【0040】
そこで、ドーム中央部に表示される画像のコントラストに影響を与えるドーム周辺部からの反射光を効果的に減衰するために、ドーム周辺部においては遮光部3の設置間隔を小さくする。その一方で、ドーム中央部からの反射光は、ドーム中央部に表示される画像コントラストにほとんど影響を与えないので、ドーム中央部においては遮光部3の設置間隔を大きくする。
【0041】
これにより、ドーム中央部に表示される画像のコントラストを向上させることができ、かつ、ドーム型スクリーン1の構成を簡素化することができるので、ドーム型スクリーン1が安価となる。さらに、設置間隔は大きいが、ドーム中央部にも遮光部3をある程度設けているので、ドーム中央部で反射されて画面の他の部分に向かう反射光をある程度遮光することができる。このため、ドーム中央部以外の他の部分に表示される画像のコントラストの改善も期待できる。
【0042】
また、前記した実施形態では、図2(b)に示すように、遮光部3を反射部2にドーム型スクリーン1の水平方向に沿って直線状に連続させて設けたが、これに限られるものではなく、例えば、遮光部を点状の突起として構成し、反射部2にドーム型スクリーン1の水平方向に沿って不連続に設けてもよい。
【0043】
なお、点状の突起とは、例えば、円筒状、円錐状、角柱状や球体状の突起を指すが、形状は特に限定されない。遮光部を点状の突起とするときは、反射部2に点状の突起を直接取り付けてもよいが、例えば表面に白色の塗装を施した紐やケーブルの上に、間隔を空けて、表面に黒色の塗装を施した点状の突起を接着剤等で取りつけ、この紐やケーブルを反射部2にドーム型スクリーン1の水平方向に沿って縞状に複数並べて接着剤等で反射部2に取り付けてもよい。このとき、同じライン上で隣り合う遮光部の間隔は、角度の大きい反射光が遮光部の間をすり抜けてしまわない範囲で適宜設定することができる。また、遮光部の高さ、ドーム型スクリーンの上下方向における設置間隔は、前記した遮光部3と同様にして設定することができる。
【0044】
さらに、前記した実施形態では、遮光部3の一例として、表面を黒色で塗装したケーブルを反射部2に接着剤等で固定することによって構成する例を示したが、これに限られるものではなく、基材1aの一方の表面に一方向(ここでは、長手方向)に沿って間隔を空けて溝を設けておき、この溝に、黒色の染料等で塗装したプレートを嵌合固定することによっても構成することができる。この場合、板材を溝に嵌合固定したときにプレートの頂部が溝の開口部から突出するように、溝の深さよりもプレートの高さを大きくする。このようにすると、予め設けた溝にプレートを嵌合するだけで遮光部3を構成することができるので、位置決めが容易となり、また、接着剤等を用いなくても反射部2に取り付けることができるため、取り付け工程が簡素化される。
【符号の説明】
【0045】
1 ドーム型スクリーン
1a 基材
2 反射部
3 遮光部
10 プロジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクタから投射された画像光を反射して表示するドーム型スクリーンであって、
当該ドーム型スクリーンの内側の面に、
前記画像光を反射する反射部と、
前記反射部に、当該ドーム型スクリーンの水平方向に沿って間隔を空けて縞状に凸設される遮光部と、を備え、
前記遮光部は、前記反射部で反射された反射光を遮光する
ことを特徴とするドーム型スクリーン。
【請求項2】
前記遮光部は、
前記反射部に、螺旋状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドーム型スクリーン。
【請求項3】
前記遮光部は、
前記反射部に、当該ドーム型スクリーンの底部の円周に対し同心円状に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のドーム型スクリーン。
【請求項4】
前記遮光部は、
当該ドーム型スクリーンのドーム中央部における設置間隔が、ドーム周辺部における設置間隔よりも大きい
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のドーム型スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−175022(P2011−175022A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37664(P2010−37664)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人情報通信研究機構、委託研究「革新的な三次元画像技術による超臨場感コミュニケーション技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】