説明

ドーム型構造体

【課題】構造用要素が相互依存的に連結することで形成する構造体において、幾何学的構造の原理を内包する構造体を提供する。
【解決手段】第一工程では、平行四辺形の面を構成要素とする凸型のゾーン多面体Aを核とする。第二工程では、該核の外殻に規則的に立体状構成要素Dを配置し、該立体状構成要素を抽出することでゾーン多軸体Eを形成する。この第一及び第二工程で目的とする構造体が幾何学的構造の原理を内包することになる。第三工程では、前記立体状構成要素が互いに交差する箇所を保持する上で、その外方延長部を任意の箇所にて切断して取り除き、残る内方側の立体状構成要素を構造用要素Jへと転換する。そして該構造用要素が互いに交差する箇所を接続することを可能とする手段を有することで中空状構造体Kを形成する。最終工程では、該中空状構造体の主要な構造用要素によってドーム型構造体Lを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、構造用要素が相互依存的に連結することによって形成するドーム型の構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内部支持体を必要としないドーム状建築物の典型的なものにジオデシックドームがある。このドームは、1950年代中頃、R.Buckminster Fuller(バックミンスター・フラー)により発明され、フラードームとも呼ばれている(特許文献1および非特許文献1を参照)。
【0003】
また1970年代初頭、Zone System(ゾーンシステム)に基づいてドーム状の構造やトラス構造を構築する方法がSteve Baer(ステーブ・ベイヤー)により発明された。この方法は31ゾーンシステムといい、そのシステムによって構築するドームは“Zomes”(ゾーム)と呼ばれている(特許文献2および非特許文献2を参照)。以下、このZomesをゾームという。
【0004】
なお、この31ゾーンシステムは、Zonohedron(ゾーン多面体または菱形多面体)を形成するゾーンシステムの一部である。以下、このZonohedronをゾーン多面体という(詳しくは非特許文献3を参照)。
【0005】
ジオデシックドームとゾームの明確な違いは、その設計思想から形成する形態にある。前者は球形多面体による構造を特徴とし、球形の単体が主な形態である。
【0006】
それに対し、後者の形態はゾーンシステムに基づき多種多様性に富んでいる。例えばその形態が比較的多数の面を有する場合、球形に近似する多面体となり、ジオデシックドームに類似する形態となる。また、多面体の備えている座標軸に対して形態を平行移動したり連結したりすることで形態を変容することができる。更に、最終構築物への適用においては、立地面に対して垂直となる構造用要素を延長し、それを柱状材とすれば自立可能となる構造を構成することができ、その点が便宜な利得となっている。
【0007】
両者にはこの様な違いはあるが、その設計思想の原点においては幾何学的要素としての共通点が存在する。それはプラトン立体(正多面体)の備えている回転対称軸を基軸において基本形態を形成している点である。両者の相違の始まりは、この回転対称軸に対する観点にあり、この観点の相違によって両者は対極の関係にあるといえる。
【0008】
前者は、回転対称軸に基づいて球面の細分化を行ない、その細分化の拡大を目指している。しかし後者は、回転対称軸の構成自体に自由度を持たせることで多様な形態の形成を行ない、その多様化の拡大を目指している。
【0009】
具体的に説明すると、ジオデシックドームは、回転対称軸の交点を球の中心とし、それぞれの軸に対応した測地線を球面上に描き、その測地線の交差によって形成する格子を基本構造に用いている。そしてそれら格子を球面幾何学によって細分化することで球面を総三角形のグリットで覆う、いわゆる球面分割方法によってドーム構造を構築している(詳しくは非特許文献4を参照)。
【0010】
それに対しゾームを構築するゾーンシステムは、回転対称軸の交差する角度を有する菱形格子を各回転対称軸に対応する測地線上に規則的に連結させることで格子の連結帯を形成し、その帯の相互連結によって構造を構成している。さらにその回転対称軸を任意に構成することで、多様な形態を形成することが可能である(詳しくは非特許文献4を参照)。
【0011】
1970年代以降、このゾーンシステムの幾何学的研究は展開を見せることになる。しかしその一方、ゾームというドーム型構造物はジオデシックドームに比べて際立った展開は見らなかった。むしろそのシステムや原理の応用は、建造物より教材模型や組み立て玩具への開発へと展開していった。例えば、ゾームツール(”Zometool“/Biocrystal,Inc./Boulder,Colorado)などがその典型である(非特許文献5参照)。
【0012】
また、ゾームにおけるフレーム構造に関しては、その技術的限界と問題が指摘されている。システム上、その構造は菱形格子によって構成するため構造上剛性に劣る点が挙げられている。そのため、菱形格子の対角線上に補強となる支持部材を加えて三角形の格子を形成する方法が取られている。その場合、フレーム構造の頂点にあたるコネクタには複数の支持部材の端部が集中しコネクタの形状は複雑となる。それによってコネクタは高価となる上に、構築の際には多大な労力を費やしてしまう。なお、この様な点はフレーム構造のジオデシックドームにおいても同様の問題となっている。
【0013】
2000年初頭、Florian Tuczek(フロリアン・ツゼック)は、ゾームのフレーム構造の最終構築物への適用において前述の限界を指摘し、パネル構造によって新たなゾーン多面体構造の構築を可能とする構造システムを発表した(特許文献3および非特許文献6参照)。
【0014】
その特徴は、システムによって形成するゾーン多面体を直行3座標軸空間に組み込むことができるものでもある。すなわち、そのシステムによって構築する構造を容易に都市空間に組み入れることが可能となることを彼は提案している。
【0015】
さらに彼は、ジオデシックドームのフレーム構造における限界および単体としてのドーム型形態の自由度に建築上の限界を指摘し、パネル構造による球面分割方法に改良を加えたジオデシックドームを発表した(特許文献4参照)。
【0016】
従来のジオデシックドームは、ごく一般の直方体構造の建造物に連結することが困難であった。しかし彼は、ドーム構造を直行3座軸方向に球面分割する方法を見出すことで、それを直方体構造の建築物に接続することを可能とし、ひいてはそれを都市空間の中に組み込みやすくした。
【0017】
以上述べた様に、プラットン立体を基軸として構築するジオデシックドームおよびゾームは、システムやパネル構造に改良を加えることによって、建築への適用の範囲を広げる可能性を有している。
【0018】
一方、先に述べたフレーム構造におけるコネクタの複雑化という問題点に対して、パネル構造によらない従来とは異なる発想による格子構造が1998年に発表され、同年その構造を構成するモジュールが考案された(特許文献5参照)。
【0019】
従来のフレーム構造は、複数の支持部材のジョイント部分が一つのコネクタを介して接続する一極集中形式といえる。それに対しこのモジュールは、支持部材の端部が他の支持部材の任意の箇所に接続し、コネクタが常に二つの支持部材同士をつなぐ、相互依存形式といえる。
【0020】
このモジュールの考案者であるOlivier Baverel(オリバー・バベレル)は、ジオデシックドームのフレーム構造におけるコネクタの複雑化は、高い技術力を必要とすることで高価な部材となり、そのトラス構造に関しては剛性には優れているが柔軟性で劣るという問題点を指摘している。すなわち、支持部材が単に引っ張りと圧縮を受ける構造となっていることで、その荷重はコネクタおよびジョイントに極所的に集中し、その箇所は自重や外力に対して弱い箇所となっている。
【0021】
そして彼は、前記モジュールを連結することで、コネクタの軽量化と単純化を図るとともに、支持部材の柔軟性を生かした構造を構成することが可能であることを提案している(非特許文献7ならびに非特許文献8参照)。その構造は、“Multi−reciprocal grid”(マルチレシプロカルグリット)構造と呼ばれており、以下それをMRG構造という。
【0022】
この構造は、地震等の地盤変動があったとしても全体的な倒壊の恐れがない点で極めて注目すべきものであり、最終的にはドーム型の構造体を形成することができる。その更なる特徴として、3次元格子構造による空間構成の多様性や工期短縮・組み立ての容易さ・従来の伝統的なフレームの連結に勝る経済性・幅広い構成材料の選択の可能性を挙げることができる。
【0023】
なお、このMRG構造を構成するモジュールの発想は、Reciprocal Frame(レシプロカルフレーム)という単一のフレーム構成を発展させたものである。そのフレーム構成は、1987年、Graham Brown(グラハム・ブラウン)により考案されている(特許文献6および非特許文献9参照)。その構成は、複数の支持部材が相互依存形式で放射状に接続し、円錐形の形態を成しているため主にドーム型の屋根に用いられている。
【0024】
更に前記MRG構造の発想は、そのモジュールの考案者であるBaverel(バルベル)自身によるものではなく、すでに15世紀のイタリアにおいて、発明家レオナルド・ダ・ビンチによって図案化されている。彼の残したスケッチブック(アトランティコ手稿)には、その発想が幾何学的ルーフィングシステムを示すスケッチとして描かれている。(非特許文献10参照)
【0025】
なお、このルーフィングシステムを示す格子構造はダビンチ・グリットといわれており、今日ノルウェーの彫刻家Rinus Roelofs(リンナス・ロエロフス)他、イタリアの建築グループによって研究されている(非特許文献11および非特許文献12参照)。
【特許文献1】米国特許2682235号(発明者:R・B・Fuller)1954
【特許文献2】米国特許3722153号(発明者:Steve Baer)1973
【特許文献3】米国特許6282849号(発明者:Florian Tuczek)2001
【特許文献4】独逸国特許DE19911543号(発明者:Florian Tuczek)2000
【特許文献5】英国特許GE2328696号(発明者:Olivier Baverel)1998
【特許文献6】英国特許GE2235479号(発明者:Graham Brown)1989
【非特許文献1】著者:R・B・フラー/ロバート・W・マークス、「バックミンスター・フラーのダイマキシオンの世界」、出版社:鹿島出版会 p204
【非特許文献2】著者:Steve Baer、「Zome Primer」、出版社:Zometool,Inc.
【非特許文献3】著者:宮崎興二、「建築のかたち百科」、出版社:彰国社、ゾーン多面体pp.88−91
【非特許文献4】著者:宮崎興二、「多面体と建築」、出版社:彰国社、昭和54年第1版(ゾーン多面体の特徴pp176−178,ゾーン多面体の形成方法pp172−176,ジオデシック理論pp.58−62)
【非特許文献5】URL:http://www.zometool.com
【非特許文献6】URL:http://www.domescape.de
【非特許文献7】「Investigation into New Type of Multi−resiprocal Grid] InterNational Journal of Space Structures Vol.13,NO.4,pp215−218,1998
【非特許文献8】「Nexorades] InterNational Journal of Space Structures Vol.15,NO.2,pp155−159,2000
【非特許文献9】O.Popovic,The reciprocal frame.PhD Thesis University of Nottingam,School of Architecture,UK, 1996
【非特許文献10】The Codex Atlanticus,p899v
【非特許文献11】URL:http://www.rinusroelofs.nl/davinci
【非特許文献12】URL:http://www.kimwilliamsbook.com/leonardo
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
ジオデシックドームやゾームのフレーム構造における自重や外力は、主にジョイントやコネクタに極所的に集中することになる。それに加え、支持部材には主に引っ張りと圧縮の力が掛かるため、剛性に対して強度はあるが柔軟性には乏しいという問題点がある。またコネクタは、数本の支持部材が集中して結合するため複雑な形状となる他、荷重に耐えるだけの剛性が必要となるため、重量があり高価なものとなっている。
【0027】
Florian Tuczek(フロリアン・ツゼック)は、この点をパネル構造によって回避すると共に、従来の幾何学的システムに形態の自由度を有する仕組みを組み込み、それによって建築への適用の範囲を従来よりも広げた。
【0028】
一方、それに対して新たなフレーム構造に注目したOlivier Baverel(オリバー・バベレル)は、剛性を有しつつも柔軟性のある構造を構成するため、従来とはまったく異なるフレーム構造によるモジュールを考案し、それによってドーム型の構造を形成することができるMRG構造を提案した。
【0029】
しかし、この構造はジオデシックドームやゾームのように構造を構築するための幾何学的原理を内包するものではない。そのため設計する際の幾何解析は困難であり、接地面と支持部材の位置関係は改良型のジオデシックドームやゾームと比べ不規則となり、基礎部の施工にコストがかかるという問題点を有している。
【0030】
またそのルーフィングにおいては、支持部材が交差することによって板状の屋根材を敷くことは設計や施工において困難な点がある。その代わりに柔軟なシート状の幕を張ることを提案していが、それによって恒久建築物への適用には限界があるという問題点を有している。
【0031】
そこで上記MRG構造の事情を鑑み、本発明の目的は、その構造の利点を生かしつつも、幾何学的構造の原理を内包することにより幾何解析および設計を容易とすることができるドーム型の構造体を提供することにある。
本発明の他の目的は、最終構築物の形態に自由度を有するドーム型の構造体を提供することにある。
本発明の他の目的は、自立型で安定した設置が可能となるドーム型の構造体を提供することにある。
本発明の更なる目的は、最終構築物の構造用要素がフレームによるものだけでなく、パネル材や立体トラスによっても形成することのでき、それによって恒久的建築物への適用範囲を広げることができるドーム型の構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
ゾーンシステムとは、ゾーン多面体を形成する体系であり、多面体幾何学の系譜においては20世紀中期以降知られる存在である。
かかる技術的な課題は、そのゾーン多面体を核とし、その外殻に立体状の構成要素を規則的に配置し、それを抽出して新たな体を形成し、この体を構造用に用いることで達成することができる。それによって幾何学的構造の原理を内包する構造体を導くことができる。
【0033】
そして前記新たな体の構成要素を目的とする構築体の構造用要素に転換し、且つその構造用要素が相互に連結する手段を備えることで中空状の構造体を形成し、その主要な構造用要素を抽出することでドーム型の構造体を形成することになる。
【0034】
本発明の構造体が内包する幾何学的構造の原理には、核となるゾーン多面体および軸状の構成要素からなる体の二つの体が存在する。そして本発明の要は、それら二つの体における互いの接点を見出し、新たな体を形成する点にある。
そこで、課題を解決するための手段を述べる前に、それら二つ体について説明し、それを基にこの新たな体の形成原理、すなわち幾何学的構造の原理について具体的に説明する。また、それに伴って必要となる幾何学的用語である、座標軸およびゾーン多面体・ゾーン・立体状構成要素の概念についても述べる。
【0035】
以下、第一の体であるゾーン多面体およびその体を形成するシステムについて説明する。この多面体の構造理論は、幾何学者H.S.M.Coxeter(H・S・M・コクセター)によって1960年代に発表された。しかしそれ以前、この多面体は単に菱形多面体の範疇として断片的に発見されていたにすぎなかった。
【0036】
そして1970年代初頭、この多面体の理論は建築家Steve Baer(スティーブ・ベイヤー)によって開発され、構造システムとして発表されることになる。スティーブ・ベイヤーは、この構造システムをゾーンシステムと名付けるとともに、このシステムを用いて構築するドーム状の構造物をゾームとも名付けた。
【0037】
その後ゾーン多面体の形成方法は拡大し、今日に至っては幾何学者であり彫刻家のGeorge W.Hart(ジョージ・ハート)がこの形成方法を体系化している(非特許文献13参照)。
【0038】
ゾーン多面体とは、一般的に平行四辺形からなる凸型多面体を示して言うが、厳密には、この多面体を名付けた幾何学者コクセターにより、以下のように定義付けされている。
【0039】
「ゾーン多面体とは、平行2m角形(平行多角形:二つずつの辺が平行な多角形)の面から成る凸型多面体であり、その面の数はn(n−1)である。ここでnは、多面体において互いに平行となる稜線の異なる方向の数である。」(非特許文献14参照)。なお、この定義の中で稜線の異なる方向の数とは、後に説明することになるゾーン多面体を形成する基となる座標軸の数と同じことを指している。
【0040】
また、ゾーン多面体の特質として体を一回りして連結する平行四辺形の帯がその形成に関わっている。その帯は、環状を成してゾーン多面体を形成していることからZoneと呼ばれている(以下、ゾーンという)(非特許文献15および16参照)。
【0041】
次に第二の体は、軸状の構成要素からなる体である。この体の概念には、先の背景技術の項で取り上げた格子構造(MRF構造)も含まれている。さらに、この体は今日建築以外にも様々な技術分野において応用されている。例えば、化学繊維の立体織およびランプシェード・木組みの立体パズル等の分野においてである(特許文献7および非特許文献17,18,19参照)。
【0042】
それぞれの分野においては適宜な名称で呼んでいるが、幾何学の分野においては、発展途上の段階に位置しているため、明確な概念化と名称は定まってはいない。ただし近年、宮崎興二は建築における構造として多線体と呼び(非特許文献20参照)、岡利一郎は論文において多軸体と命名している(非特許文献21参照)。
【0043】
本件発明者は、永年の幾何学に関する研究を通して多面体に対応するものついては多軸体と呼ぶことが適切であると判断し、以下この幾何学的観点から多軸体という。
なお、ゾーン多面体ならびに多軸体の形成原理の詳細については、本件発明者による特許文献の「幾何学的構造に関する説明」の項において詳しく述べられている(特許文献7参照)。
【0044】
そこで以下、幾何学的構造の原理について図面を参照に具体的に説明する。
本発明の構成要素である新たな体は、ゾーン多面体を核と設定し、それに対応する多軸体を形成することによってできる。
【0045】
一例としてごく一般的なゾーン30面体(菱形30面体)を核として用いた場合を示す。図1はその多面体A1の斜視図を示している。この多面体は、同形状の菱形面30枚が連結して球形状の形態となっている。矢印の一点破線は、この多面体を形成する基軸となる座標軸である。
【0046】
ゾーン多面体は、その体を形成する基軸となる座標軸を備えており、その座標軸は主に正多面体が備えている回転対称軸を用いている。その理由は幾何解析の簡便性にある。当該例の場合、正二十面体が備えている回転対称軸を抽出し、その軸構成に基づき体が形成されている。なお、ゾーン多面体の形成原理に基づけば、座標軸の構成が任意選択によるものでも体の形成は可能である。
【0047】
図2は正二十面体のフレーム構造1を示している。体の原点2を貫通する軸線方向から見て、その軸線を中心に形状を回転することで元の形状に重なり一致する場合、この軸線を回転対称軸という。ここでは正二十面体の各頂点と原点2とを結ぶ線が回転対称軸(B10〜B15)となっている。また、一回転の内、同形状となって重なる回数を数で示すことで、他の回転対称軸と区別している。当該例の場合は、一回転の内、五回形状が重なるので五回転対称軸となる。
【0048】
この回転対称軸を抽出し、これを座標軸と見なし、この座標軸を基にゾーン30面体は形成されている。そして、その形成過程においてはゾーンという概念が必要となってくる。この概念は後に説明する新たな体を形成する際にも必要となるため、次にこのゾーンについて説明する。
【0049】
図3はゾーンを示す概念図である。ここではゾーンを単純化して示すため、前記座標軸の内、2本の座標軸(B10,B11)のみを抽出して示す。これらの座標軸が球を貫通する軸とみなした場合、その座標軸に対してゾーンは常に直角に位置する大円上の環状帯とみなすことができる。図中、鉛直の座標軸B10に対応するゾーンにあたる大円上の帯C10は、この座標軸に対して水平に位置し、実際のゾーン多面体においては菱形面の陵が互いに共有して連結する環状帯となる。
【0050】
その実際のゾーンを次の図4で示す。ゾーン30面体A1に鉛直に通る座標軸B10に対して直角に位置するゾーンC10は、斜線で示した面の連結帯であり、それは体を一回りして繋がっている。
【0051】
次にこの繋がりをより明確に示すため、このゾーンC10および全ての座標軸を抽出し、座標軸B10の方向より見るこのゾーンを平面図で示す。
図5はその平面図であり、図の中心に位置する座標軸B10に対応するゾーンC10が多角形の輪郭を描き、該座標軸を中心に環状に位置していることが理解できる。
なお、この図においてゾーンC10は多角形を見せており、その頂点は図4で示すゾーンC10の稜線である。この稜線は、当該ゾーンに対応する座標軸に対して常に平行に位置していることもゾーンの特徴である。
【0052】
また、図3に戻って、第二の座標軸B11に対応するゾーンは、その座標軸に対して直角に位置する大円上の帯C11である。実際のゾーン多面体においては、図6で示すように、図中斜線で示す菱形面の連結帯であるゾーンC11となる。
以上説明したように、ゾーン多面体は、その体の備える座標軸を基軸にゾーンを形成し、それらのゾーンが互いに重なり合うことによって体全体が形成されている。
【0053】
次に、ゾーン多面体に対応する多軸体の形成を説明する。その形成は、ゾーン多面体を核と見なし、その外殻に多軸体の構成要素を規則的に配置することで可能となる。
その構成要素は一般的に軸状を成すが、その形状は必ずしも軸状に限定せずとも立体であれば体を形成することができる。よって、以下この構成要素を立体状構成要素という。
【0054】
立体状構成要素の配置を平面図で示すと、図7は、図5で示したゾーンC10に対応する立体状構成要素の配置を示している。この図において立体状構成要素D10は、ゾーンC10に外接し、その断面を円とすれば、それは円柱状の軸となる。
【0055】
その配置設定として、先ずゾーンにおける一つおきの面に対して外方側に立体状構成要素を規則的に配置していく。またその際、この立体状構成要素は対応するゾーンの稜ならびに座標軸に対して平行に位置する。
【0056】
次に、この立体状構成要素の配置をすべてのゾーンに対して同様に設定を施す。その際、ゾーンの一つの面は二つのゾーンに含まれているため、ゾーンの一つの面には二つの立体状構成要素が配置することもありえる。その場合、ゾーンの他の一つの面には立体状構成要素が配置しないことになる。
そのため、ゾーンの一つの面には常に一つの立体状構成要素が対応するという前提を設ける。それによって全てのゾーン面に立体状構成要素を配置することが可能となる。
【0057】
この様にして配置する立体状構成要素の想定を次の図8で示す。その配置を端的に示すため立体状構成要素の長さは短縮し、またその方向は矢印で示している。各ゾーンの一つ置きの面上の立体状構成要素は、同一方向に配置している。その方向は、それが属するゾーンに対応する座標軸に対して平行に位置している。
例えば、座標軸B10に対応するゾーンの一つ置きの面には立体状構成要素D10が配置しており、それら複数の立体状構成要素は当該座標軸B10に対して平行に並列することになる。
【0058】
なお、図7に戻ってゾーン上の立体状構成要素の配置箇所を逆に他方の一つ置きの面に設置すれば、図9で示すように立体状構成要素の延長方向の織りなす旋回は逆向きとなる。よって、その旋回方向は2種類あることが理解できる。
【0059】
立体状構成要素の配置が定まった段階を経て、次の段階でその構成を行う。各立体状構成要素を延長していくが、それらが互いに接するか、あるいはそれらが互いに貫通するかの設定を行なう。
【0060】
そしてその想定段階から進展した立体状構成要素の構成を図10で示す。各立体状構成要素を互いに接する範囲で最短に延長することで、それらは互い違いに交差して構成をし、核であるゾーン多面体A1を内包する多軸体E1を形成することになる。
そしてこの構成のみを抽出することで、図11で示す新たな体E1を形成することになる。
【0061】
このようにゾーン多面体を核として成り立つ多軸体は、ゾーンシステムの性質を部分的にも引き継ぐことになり、後の実施例で示す様に形態の多様性を展開することができる。そのため多軸体の範疇において、他の多軸体(非特許文献19,20,21参照)と区別する必要性が生じてくる。
そこで以下、ゾーン多面体を核として成り立つ多軸体をゾーン多軸体いい。他の多軸体との違いを明確にする。
【0062】
なお、このゾーン多軸体を形成する際、すべてのゾーン多面体が核として適用できるわけではない。ゾーン多面体の一部においては、前述の設定によって立体状構成要素の配置構成をすることができず、体を形成することができないものがある。一つは平行四辺形以外の平行多角形の面を有するもの、もう一つは凹面を有するものである。
【0063】
平行四辺形以外の平行多角形の面を有するゾーン多面体の数例を示せば、切頂8面体および斜方切頂立方8面体、斜方切頂20・12面体等である。これらの多面体に共通する点は、ゾーン面の二面角が水平へと変化し、立体状構成要素の配置が不可能となってしまうことである。
【0064】
その点について具体的に一例を用いて示す。図12は切頂8面体3の斜視図であり、ゾーン多面体の顕著な特徴である平行四辺形の構成とは若干異なって見える。しかしゾーンシステムの理論に従えば、この体もゾーン多面体の範疇に入ることになる。
【0065】
次の図13は、その理論に従ってゾーン構成面を浮き上がらせた切頂8面体を示している。六角形の面は三つの平行四辺形が連結して平面を形成し、その内の二つの平行四辺形が正方形と連結して体を一回りするゾーンを形成していることが分かる。そして、六角形内の二つの平行四辺形が稜線を介して織りなす角度は水平となっている。先に示した配置設定に従えば、この面上に配置する立体状構成要素は互いに貫通することになり、目的とする相互依存形式による構成は不可能となってしまう。
【0066】
より具体的に図面を参照に示せば、図14はその立体状構成要素の配置を想定した図である。この図からその立体状構成要素を延長していくことを想定すれば、六角形の平面上に配置する三本の立体状構成要素が互いに貫通することが理解できる。
【0067】
また、複数のゾーン多面体を連結することで凹面を有する形態もゾーン多面体の範疇に含まれている。しかし、これらの多面体においてもその凹面部への立体状構成要素の配置は、その構成要素が相互に貫通しあうことになり、相互依存形式によって構成することは不可能となる。よってゾーン多面体を核と設定した場合、その構成面は平行四辺形のみからなり、また該ゾーン多面体は凸型面からなることを条件とする。
【0068】
以上、幾何学的構造の原理について述べた。
そこで以下、これをふまえ、課題を解決する手段について述べる。
本発明は、構造用要素が相互依存的に連結することで形成する構造様式を用いており、それによって主にドーム型の構造体を形成するものである。
【0069】
かかる技術的な問題は、この構造様式にいかに幾何学的なしくみを組み込むかにある。本件発明者はその手段として、ゾーン多面体の幾何学的な性質をその構造に取り入れることを見いだした。以下、それによって形成するドーム型構造体Lについて請求項に即して述べる。
【0070】
本発明のドーム型構造体Lは、四つの工程から段階的に成り立っている。先ず、請求項1に関わるドーム型構造体Lから説明する。第一工程は、ゾーン多面体Aを核と設定するが、その条件として平行四辺形の面を構成要素とする凸型のゾーン多面体Aを核とする。
【0071】
第二工程は、この核の外殻に立体状構成要素Dを規則的に配置することで可能となるゾーン多軸体Eの形成である。
その形成の第一段階として、前記立体状構成要素Dが規則的に配置する空間を定めるため、ゾーン延長面による構成Gを形成する(なお、先に説明した幾何学的構造の原理の項では、その原理を端的に示すため、このゾーン延長面による構成Gの形成は省略し、直接ゾーン多軸体Eを導いている)。
【0072】
このゾーン延長面による構成Gは、ゾーン多面体の各ゾーンCにおける一つ置きの面をその一つ置きの面が属するゾーンCに対応する座標軸Bに対して平行に延長することで形成する。しかし、ゾーンの一つの面は二つのゾーンCを含んでいるため、この一つの面は二つのゾーン延長面Fを形成する場合もありえる。その場合、他のゾーンの一つの面にはゾーン延長面Fが存在しないことにもなり、前述のゾーン延長面による構成Gを形成することは不可能となる。
【0073】
そこで設定に、各ゾーンCにおける一つの面は一つのゾーン延長面Fに対応するという条件を加える。それによって各ゾーンを構成する面、すなわちゾーン多面体Aの各面にはゾーン延長面Fを形成することができる。ひいてはゾーン多面体の外殻にゾーン延長面による構成Gを形成することになる。
【0074】
第二段階では、このゾーン延長面による構成Gをゾーン多面体Aの備えている各座標軸Bの方向から見て、各座標軸Bに平行に位置するゾーン延長面Fの断面にあたる線とその両端に位置する他のゾーン延長面Fにあたる線によって囲む空間を立体状構成要素の貫通空間Hとする。そしてこの空間内に立体状構成要素Dの断面が位置するよう定める。
【0075】
第三段階では、この断面をこの断面の垂直方向、すなわち当該座標軸B方向に平行移動することで立体となり、立体状構成要素Dを形成することになる。これによってゾーン多面体の外殻に立体状構成要素Dが囲むようにして配置することになる。
そして最後の段階で、この立体状構成要素Dを抽出することによって、換言すれば、核であるゾーン多面体Aを取り除くことによってゾーン多軸体Eを形成することになる。
【0076】
第三工程は、中空状構造体Kの形成である。前記立体状構成要素Dの互いに交差する箇所を保持する上で、その外方延長部を任意の箇所にて切断して取り除く。それによって理論上無限に延長する立体状構成要素Dの範囲を定めることになる。そして、残る内方側の立体状構成要素Dを、ドーム型構造体Lを形成するための構造用要素Jに転換し、その構造用要素Jを互いに接続することによって中空状構造体Kを形成する。
【0077】
構造用要素Jの材料としては、木材や各種鋼材・鋼管パイプ等を選択することができる。またその他、立体トラス用フレームやパネル材によっても構造用要素Jを形成することができる。そしてこの構造用要素Jが互いに交差する箇所にて接続する手段を有することで中空状構造体Kを形成することになる。
【0078】
構造用要素の接続手段Mは、構造用要素Jが柱状の形状であれば、コネクタを介して接続してもよいし、フレーム材やパネル材を用いる場合ならば、接合箇所に貫入部を設けてボルト等によって固定すればよい。
【0079】
第四工程は、前記中空状構造体Kから導くドーム型構造体Lの形成である。中空状構造体Kは、その構造用要素Jによって閉じた空間を形成している。そのためその主要な構造用要素J、すなわち天蓋部および支柱となりえる構造用要素Jを抽出することでドーム型構造体Lを形成する。
【0080】
請求項2に関わるドーム型構造体Lは、先に示した第二工程における立体状構成要素Dの断面の位置を定める範囲が請求項1の場合とでは異なっている。請求項1においては、その断面の全てが立体状構成要素の貫通空間H内に収まる設定となっている。しかし、その断面の一部分が前記貫通空間H内に収まっていてもゾーン多軸体Eを形成することは可能である。
【0081】
そこで、ゾーン多面体Aの備えている各座標軸Bの方向から見るゾーン延長面の構成Gにおいて、立体状構成要素の貫通空間Hにゾーン多軸体の立体状構成要素Dの断面の一部分が位置することを定める。
【0082】
これにより、立体状構成要素の貫通空間Hの大きさがそれぞれ異なっている場合でも、同じ断面形状の立体状構成要素Dを形成することが容易となる。ひいては、あらかじめ量産により定められた寸法の構造用要素Jや単一形状の構造用要素Jを用いることが容易となる。
【特許文献7】特開2005−133029号公報(発明者:村田弘志)
【非特許文献13】著者:George W.Hart,「The Mathematica Journal,vol.7 no.3」,1999
【非特許文献14】著者:W.W.R.Ball and H.S.M.Coxeter,「Mathmatical Recreation and Essays,13th ed.」,出版社:Dover,New York,1987,pp 141−144
【非特許文献15】著者:H.S.M.Coxeter,「Regular Polytopes,3rd ed.」,出版社:Dover,New York,1973,pp27−30
【非特許文献16】著者:宮崎興二、「多面体と建築」、出版社:彰国社、昭和54年第1版(ゾーン多面体の特徴 pp176−178、ゾーン多面体の形成方法 pp172−176)
【非特許文献17】著者:Stewart T.Coffin,「The Puzzling World of Polyhedral Dissections」,出版社:Oxford University Press ,1990
【非特許文献18】著者:ジェリー・スローカム、ジャック・ボタマンズ、「Puzzles Old and New」p85、出版社:日本テレビ、1988年
【非特許文献19】著者:小川泰、手嶋吉法、渡辺慶規、「形とシンメトリーの饗宴」第2部幾何学的アートと形態学 26.(ロッドによる自己保持構造の幾何学と結晶学 pp258−266)、2003年
【非特許文献20】著者:宮崎興二、「建築のかたち百科」、出版社:彰国社、’00年第1版(多線体 pp94−95,日詰明男の立体組織およびアラン・ホールディングの星型多軸体p69の図9,日詰明男の立体組織 p94の図14)
【非特許文献21】「形の文化誌4」、出版社:工作舎(生命の形と球と秩序構造―黄金軸と多軸体 pp118−127)
【発明の効果】
【0083】
MRG構造の特徴は、これまでの伝統的なスペースフレームの連結に勝る経済性、柱のない大空間の実現、工期短縮、組み立ての容易さ、剛性を有しつつも柔軟な構造を有する点にある。
本ドーム型構造体は、前記特徴を有するのみならず、以下に示す効果ならびに利点を有している。
【0084】
MRG構造によるドームにおいては、連結する支持材の幾何解析は容易ではなく、構造全体の設計には困難を要していた。しかし本ドーム型構造体は、その形成のしくみが幾何学的構造の原理を内包するものであり、これを基に最終構築物の構造体を構築することができるため幾何解析および設計が容易となる。
【0085】
また、その容易性によって幅広い構造用要素の材料選択が可能となる。すなわち、従来のように軸状の構造用要素によるものだけでなく、立体トラスやパネル材によるものを用いることができる。その結果としてドームの屋根をパネル材によって覆うことができ、恒久的な建築物を提供することができる。
【0086】
更なる効果として、本ドーム型構造体は、その形成のしくみにゾーン多面体の特質を有し、その特質を活かすことによって形態の自由度を有する構造体を提供することができる。それによって建築への適用範囲を広げる可能性を有している。
【0087】
更に利点として、本ドーム型構造体の核であるゾーン多面体の備えている座標軸に平行な構造用要素を直立する支柱として据えることで、安定した立脚部およびその容易な施工性を実現することができる。それに加え、この直立する支柱に施す壁面ならびに開口部は、垂直に位置しているため、既製の開口部品の組み込みが設計上容易となる。
【0088】
他の利点として、本ドーム型構造体をパネル材による構造用要素によって構築すれば、その形態が凹凸面を成すことで、強風や台風による風の流れに対して効率よく乱流を生じさせることができ、風圧を軽減することができる。
以下、発明を実施する最良の形態ならびに実施例の様々な形態を示すことで、以上述べた効果ならびに利点のより一層の把握がなされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0089】
最良の形態では、第一工程において核として設定するゾーン多面体にゾーン90面体を用いる。
第二工程は、このゾーン多面体に基づくゾーン多軸体の形成である。その形成にはこのゾーン多面体の備えている座標軸およびゾーンを用いることになる。そこで先ず、この座標軸およびそのゾーンを明確に示すため、当該ゾーン多面体の形成から説明する。
【0090】
前記ゾーン多面体の備えている座標軸とは、ゾーン多面体を形成する基軸となる座標軸のことである。ゾーン多面体の形成原理に基づけば、任意設定した座標軸構成から体を形成することができるが、一般的なゾーン多面体は主に正多面体の備えている回転対称軸を座標軸に用いている。その理由としては幾何解析や設計が容易であるからである。
【0091】
ゾーン90面体も同様であり、正十二面体の備えている3回転対称軸を基軸に形成されている。図15は、その正十二面体4およびその多面体の備えている3回転対称軸(B20〜B29)を示している。なお、この回転対称軸という名称は正多面体に関わる場合のみ用い、本発明を構成する各工程においてはこれを座標軸と呼び区別する。
【0092】
ゾーン90面体は、これら10本から構成する回転対称軸を正十二面体から抽出し、これを座標軸とし、各座標軸に対応するゾーンの形成を行なうことでその体が形成される。
当該ゾーン多面体の形成過程を示すため、図中鉛直に位置する座標軸B20の方向より見るこの座標軸構成を図16で示す。この図においては、座標軸B20に対応するゾーンC20の形成が示されている。そして、他のすべての座標軸に対しても同様にゾーンの形成を行なうことで、図17で示すゾーン90面体A2が形成される。
【0093】
次に第二工程のゾーン多軸体の形成を説明する。この工程の初段階では、ゾーン多軸体を形成するための手段として、ゾーン延長面による構成を行う。その構成によって立体状構成要素の形状を定めることができる。すなわち、その構成によって立体状構成要素の断面が収まる位置を定める基準線が求められる。
図18は当該ゾーン多面体の一つの座標軸B20に対応するゾーンC20を平面図で示し、立体状構成要素が配置する位置を示している。その配置を定める基準線は、次に示す要領で求める。
【0094】
ゾーンの一つ置きの面をそのゾーンに対応する座標軸に対して平行に延長し、これをゾーン延長面とする。当該図面で示せば、円柱状の立体状構成要素(D20b,D20a)の内方に位置するゾーン構成面であり、この面を対応する座標軸B20に対して平行に延長する。図においてその断面は実線で示されている。
【0095】
そしてこの設定をすべてのゾーンに対しても同様に行うことで、ゾーン多面体の外殻をゾーン延長面によって構成する。図19はその延長面による構成G2を示すものである。
しかしゾーンを構成する一つの面は、二つゾーンにも含まれており、二つの座標軸にも対応している。よって、この設定に従えばゾーンの一つの面は二つの座標軸方向に対してもゾーン延長面を形成する場合もありえる。その場合、ゾーン延長面を形成しないゾーン構成面が生じることになる。
【0096】
そこで設定には、ゾーンの一つの面は一つのゾーン延長面に対応するという条件を加える。これによってゾーン上にゾーン延長面が互いに重なることなく配置することができる。
【0097】
次の段階では、このゾーン延長面による構成を基に立体状構成要素の断面の位置を定める。図18に戻って示すと、座標軸B20に平行に位置するゾーン延長面の断面である線とその両端に位置する他のゾーン延長面が示す線F2によって囲む空間に目的とする立体状構造要素の断面が位置する。すなわちこの図では立体状構成要素(D20b,D20a)の断面が位置する三角形の空間である。
【0098】
先に述べた幾何学的構造の原理の項では、ゾーン多軸体の構造原理を端的に示すため、この立体状構成要素を円柱状の軸で示した。しかしこの立体状構成要素は、目的とする最終構築物において構造用要素となり、その形態は角柱状や立体トラスのフレームワーク・パネル状・あるいはそれらのいずれかの組合せであっても可能となる。その具体例は実施例で示していくが、この最良の形態においてもゾーン多軸体の形成を端的に示す必要があるため、立体状構成要素の形状を円柱状の軸とする。
【0099】
立体状構成要素の断面の位置をより明確に図示するため、図18右下の2つの立体状構成要素(D20b,D20a)を拡大して説明する。
図20はその拡大図である。立体状構成要素(D20b,D20a)の断面は、ゾーン延長面によって囲む三角形の空間の三辺に内接する位置に置く。この図から分かるが、立体状構成要素(D20b,D20a)はその外方に交差して位置する他の立体状構成要素(D23a,D21a,D24b)と接することになる。
この様に断面の位置設定をすることで、各立体状構成要素は互いに点を介して接することになる。さらにそのドーム型構造体においては、この接点に接続手段としてコネクタ等を設けることによりその基本構造を固定することになる。
【0100】
そしてこの工程の第三段階では、前記立体状構成要素の断面をその垂直方向へと平行移動することによって円柱状の立体状構成要素を形成する。
【0101】
以上述べた設定に従って、当該ゾーンC20上に配置した立体状構成要素の斜視図を次の図21で示す。図中、鉛直に位置する座標軸B20に対応するゾーンC20は斜線で示している。そのゾーン上に位置する立体状構成要素(D20a,D20b)は、該立体状構成要素に対応する座標軸B20の方向に対して理論上無限に延長しているが、この構成を明瞭にするため、その交差箇所を除き延長部は省略して示している。
【0102】
立体状構成要素(D20a,D20b)は円柱状の形状であり、その断面は先の設定によってそれぞれ大きさが若干異なっている。それにより2種類の立体状構成要素からゾーン多軸体が成り立つことになる。この直径を同じ大きさに設定にして、一種類の直径の立体状構成要素からなるゾーン多軸体を形成すれば、それは単一形状の部材からなり経済的な効果を上げることができる。
その場合、立体状構成要素の断面位置設定において、その直径もしくは断面形状を統一し、且つ各立体状構成要素が互いに点もしくは面を介して接することができるように位置の調整を行えばよい。
【0103】
この立体状構成要素の断面位置設定を請求項1に照らし合わせて説明する。図を参照に示すと、図22は当該座標軸B20の方向から見た該座標軸に対応するゾーンC20上の立体状構成要素の位置範囲を示した平面図である。その設定は図中斜線で示す範囲、すなわち立体状構成要素を配置するゾーン構成面とその左右に位置するゾーン構成面の延長F2の線との交差によって形成する空間(H20a,H20b)を立体状構成要素が貫通する空間と設定すればよい。そしてこの空間内で各立体状構成要素の直径もしくは断面形状を統一し、各立体状構成要素が互いに交差する箇所に接続手段であるコネクタ等を設けることになる。なお以下、この立体状構成要素の貫通する空間を立体状構成要素の貫通空間Hという。
【0104】
次に、請求項2に照らし合わせて説明すれば、立体状構成要素の断面位置設定は必ずしもこの貫通空間内に限定するものではなく、その立体状構成要素の断面の一部分がその空間内に位置することによっても成り立つ。
例えば、当該円柱状の立体状構成要素の接続が点を介したものでなく、どちらかの立体状構成要素が他方の立体状構成要素を貫通して交差する場合である。
【0105】
具体的に図面を用いてその断面位置設定を説明するため、先の図20における立体状構成要素(D20a,D20b)の断面を拡大して示す。
図23は、その二つの断面を対応する座標軸方向から見た拡大平面図であり、その位置を個々に示したものである。同図(b)で示す立体状構成要素D20bの断面は立体状構成要素の貫通空間H20b内に収まっている。その直径と同じ大きさに他の立体状構成要素も統一すれば、同図(a)で示す立体状構成要素D20aの断面内方部分が立体状構成要素の貫通空間H20aを内方側に越えて位置することになる。それと同時に、この立体状構成要素D20aは、同図(b)で示す立体状構成要素D20bの外方に位置する立体状構成要素D21aと同形状であり、その内方に位置する立体状構成要素D20bと互いに双貫して交差することになる。
【0106】
当該設定では、双貫部6で示すように、立体状構成要素D21aがその内方に位置する立体状構成要素D20bによって貫通される場合であり、両立体状構成要素は双貫部における貫通面を介して互いに交差することになる。
【0107】
なお、当該例の立体状構成要素を角柱状の形状で示した場合、その交差箇所の形状は軸組工法に見られるような仕口加工となる。その最終構築物においては、その接続箇所に固定金物等を設け固定すればよい。
【0108】
そして前述の断面位置設定による立体状構成要素の形成を他の各立体状構成要素の貫通空間に対しても同様に行うことにより、ゾーン多面体の外殻に立体状構成要素を形成する。
【0109】
最後の段階では、それらの立体状構成要素を抽出することでゾーン多軸体を形成することになる。図24はそのゾーン多軸体E2を示す図である。円柱状の立体状構成要素の断面位置設定は、請求項1による設定に従っている。またその立体状構成要素は理論上無限延長の長さを有するが、当該ゾーン多軸体を明確に示すため相互に交差する箇所を残し、その外方延長部を切断して示している。
【0110】
第三工程においては、前記立体状構成要素の互いに交差する箇所を保持した上で、その外方延長部を任意の箇所にて切断して取り除き、残る内方側を目的とするドーム型構造体を構築する構造用要素に転換し、それらが互いに交差する箇所に接続する手段を設けることで中空状構造体を形成する。
【0111】
当該立体状構成要素は円柱状の形状であり、これを構造用要素とすることから、中空状構造体の形成にはパイプ状の鋼管材を用いることができる。その場合、接続手段としては仮設用鋼管パイプのクランプの様に互いの交差箇所を固定するコネクタを取り付けてもよいし、あらかじめ鋼管材に互いに接続するためのジョイント金具を設けておいてもよい。
なお当該中空状構造体を示す図は、先に示した図24の当該ゾーン多軸体を示す図により容易に理解できるため省略する。
【0112】
第四工程においては、このようにして形成する中空状構造体の主要な構造用要素を抽出して目的とするドーム型構造体を構築する。その主要な構造用要素とは、ドームの天蓋部およびそれを支える支柱部に該当する箇所である。更に、該構造用要素を任意箇所にて延長もしくは切断・削除、更に平行に反復追加することで目的とする構造体を変容することもできる。
【0113】
具体的に、そのドーム型構造体の一例を以下の図面で示す。図25で示すドーム型構造体L2aは、中空状の内部空間を有する自立可能な構造を示している。なお、各構造用要素を接続するコネクタの図示は省略する。
【0114】
このドーム型構造体L2aは、前記中空状構造体から天蓋部用の構造用要素ならびに立地面に垂直に位置して支柱となる構造用要素を抽出して成り立っている。その構築においては、鉛直に位置する座標軸B20に対応する構造用要素(J20a,J20b)を下方向に延長し、それらを設置面にて切断し、天蓋部を支える安定した支柱となしている。
【0115】
必要に応じ、天蓋部の高さを図が示すよりも高く設定するならば、支柱となる構造用要素(J20a,J20b)に対して斜めに接続する支持材を下方向に反復かつ平行に設置すれば構造としての安定を図ることができる。例えば図中二点破線で示した構造用要素7は、その上方に位置する構造用要素J24bの平行かつ反復を想定している。
【0116】
またこの構造体に対してより広い空間を得たいならば、任意の座標軸に対応する一組の構造用要素の中間部分を延長し、構造体内部の空間を広げることができる。
例えば、図中座標軸B24に対応する構造用要素(J24a,J24b)は、天蓋部中心を斜めに他の構造用要素と交差して連結しており、この構造用要素の中間部を延長することによってより広い内部空間形成することができる。
【0117】
図26はその拡大した構造体L2bを示している。この延長にともなって、構造用要素(J24a,J24b)の外方に交差して接続する他の構造用要素を平行かつ反復して追加接続することによって天蓋構造部のより一層の安定を図ることができる。そして立地面に垂直に位置する支柱となる構造用要素の延長部を接地面にて水平に切断することで、ドーム型構造体が自立可能となる。
【0118】
次に実施例1〜3を示すが、それらの実施例は、第一工程において核となるゾーン多面体の面数をより多くした場合のドーム型構造体を示すものである。その形成過程において、立体状構成要素および構造用要素の設定は先に示した「発明を実施する最良の形態」と同様である。
【実施例1】
【0119】
核として用いるゾーン多面体は132面からなる。このゾーン多面体は、切頭六面体(Truncated cube)の各頂点と体芯とを結ぶ12本の線からなる座標軸を基に形成されている。
図27でそのゾーン132面体A3を示す。そしてこの球形状の多面体を核とするドーム型構造体の形成を図28で示す。このドーム型構造体L3の内部には核としてのゾーン多面体を想定で示しており、その外殻に構造用要素が規則的に配置している様子が分かる。
【実施例2】
【0120】
核として用いるゾーン多面体は552面からなる。このゾーン多面体は、切頭立方8面体(Truncated cuboctahedron)の各頂点と体芯とを結ぶ24本の線からなる座標軸を基に形成されている。
図29でそのゾーン552面体A4を示す。そしてこの球形状の多面体を核とするドーム型構造体の形成を図30で示す。このドーム型構造体L4の内部には核としてのゾーン多面体を想定で示しており、その外殻に構造用要素が規則的に配置している様子が分かる。
【実施例3】
【0121】
核として用いるゾーン多面体は870面からなる。このゾーン多面体は、菱形12・20面体(Rhombicosidodecahedron)の各頂点と体芯とを結ぶ30本の線からなる座標軸を基に形成されている。
図31でそのゾーン870面体A5を示す。そしてこの球形状の多面体を核とするドーム型構造体の形成を図32で示す。このドーム型構造体L5の内部には核としてのゾーン多面体を想定で示しており、その外殻に構造用要素が規則的に配置している様子が分かる。
【実施例4】
【0122】
以上のドーム型構造体は、その構造用要素が円柱状の材料からなる場合であったが、 次に示す実施例はそれが角柱状の材料からなる場合である。その構造用要素は、その断面形状が矩形であることから、木材の他、H鋼によるものを想定することができる。
【0123】
核として、引き続き先に示したゾーン90面体を用いる。
第二工程ではゾーン多軸体を形成し、その立体状構成要素の断面は矩形をなすが、その配置設定については前実施例同様であるため説明は省略する。
よって第三工程より説明する。当該ゾーン多軸体に対応する中空状構造体K6を図33で示す。当該実施例においては、その構造用要素の断面が矩形であることから角材を用いることにする。なお、各構造用要素の延長部分は、その接続箇所より外方を斜めに切断して取り除いている。また当該図において、各構造用要素の互いに交差する箇所に施す接続手段はこの図面では示してはいない。
【0124】
構造用要素がこの様に角材である場合、それらを相互に連結する接続手段は、金属板による溶接成型あるいは鋳型成型によるコネクタを用い、これと材とをボルトで固定すればよい。当該実施例においてはこの接続手段をコネクタとする。そのコネクタを構造用要素に取り付けた一例を、図中2点破線の円形範囲8を拡大して示す。
【0125】
図34がその拡大図であり、各コネクタ(M6a,M6b,M6c)は、2本の構造用要素が交差する角度を固定し、ボルトによってコネクタ自身と材とを接続している。このコネクタの種類は構造用要素の交差する角度により異なり三種類となる。
更に、このコネクタおよび支持材の固定をより明瞭に示すため、図中上部に位置するコネクタM6cを代表にその細部について図面を参照に説明する。
【0126】
図35はコネクタM6cとそれを介して接続する2本の構造用要素を抽出した斜視図である。この図が示す様に、コネクタは金属板もしくは鋳型成型によるものでよく、設計は当該ゾーン多軸体の幾何解析に基づいて行う。また、このコネクタが示す様に、構造用要素の片側だけをコネクタのフランジ部分で受けてボルトによって固定することで、施工時における最終構築物の組立てを容易にすることができる。
【0127】
当該実施例の構造用要素を設計するには、第二工程における立体状構成要素を先に示した図22を参照に配置し、以下のように設定すればよい。
図36は、図33で示した中空状構造体が備えている一つの座標軸B20の方向から見る、該座標軸に対応する構造用要素を部分的に抽出した平面図である。前工程での立体状構成要素の貫通空間は2種類あり、それぞれ図36の(a),(b)で示している。
【0128】
この平面図で示す立体状構成要素の貫通空間(H20a,H20b)は、ゾーンC20におけるゾーン延長面F2が示す線およびその両端に位置する他のゾーン延長面F2が示す線との交差によって囲む空間である。この空間に立体状構成要素の断面全て、あるいはその部分が位置することになる。そして次の工程にてその立体状構成要素を構造用要素へと転換する。当該実施例においては、構造用要素の製造過程における経済性を高めるため、その断面形状を一種類に統一している。なお図中、この構造用要素に施す接続手段(M6a,M6b,M6c)はコネクタを示している。
【0129】
図37で示すドーム型構造体L6は、中空状の内部空間を有する自立可能な構造を示す一例である。図中鉛直に位置する座標軸B20に対応する全ての構造用要素(J60a,J60b)を設置面に向けて延長し、それらを接地水平面にて切断することで天蓋部分にあたる構造用要素を支える支柱を形成している。なお、この図面においてコネクタを示す箇所は省略する。
【0130】
この構造体の最終構築物への適用として、その組立ての簡易性からパーゴラ等に用いることができる他、構造体内側に天蓋シートを支持材から均等に張ることで簡易のドームが出来上がり、各種イベントや屋外見本市等に利用できる。更に、後に示す実施例では構造用要素をパネル化することで構築するドーム型構造体を示していくが、その骨組みとして利用することができる。
【実施例5】
【0131】
構造用要素の材料選択は、単に軸材とするだけではなく、パネル材にすることもでき、それによって最終構築物の適用範囲を広げることができる。加えてドームの天蓋部および壁面を総パネル化することで構築物としての恒久性を高めることができる。
次に示す実施例では、構造用要素にパネル材を用いた構造体を示す。その構造を端的に示すため、核として先の図1で示したゾーン30面体A1を用いることにする。
【0132】
第二工程であるゾーン多軸体の形成において、立体状構成要素の配置設定を行うためその手段としてゾーン延長面の構成を示す。各ゾーンにおける一つ置きの面を該ゾーンに対応する座標軸に平行に延長し、かつゾーンの一つの面が一つのゾーン延長面に対応する設定の下にゾーン延長面による構成を形成する。
図38はゾーン30面体を核とするゾーン延長面による構成G1を示している。図中、各延長面の両端は理論上外方に向って無限延長となるが、この延長面の構成を明瞭に示すためその両端は省略して示している。
【0133】
次に、ゾーン上に立体状構成要素の配置を定めるため、当該ゾーン多面体の一つのゾーン上におけるゾーン延長面をこの体より抽出して示す。
図39は、当該ゾーン多面体A1の一つのゾーンC10に配置するゾーン延長面(F10〜F15)を、対応する座標軸B10の方向から示した平面図である。この図においてゾーン多面体A1の輪郭は、座標軸B10に対応するゾーンC10である。立体状構成要素は、ゾーンの一つ置きの面に対して設置する。当該平面図においては、座標軸B10に平行に位置するゾーン延長面F10とその左右に位置する他のゾーン延長面(F11〜F15)が示す線によって囲む三角形の空間が立体状構成要素の貫通空間H10となる。
【0134】
当該実施例では、この空間内の外方2辺をパネル材の断面外方縁部とみなす。そしてこの断面を垂直方向に平行移動することによって目的とする立体状構成要素を形成する。
図40は、ゾーンC10に配置した全ての立体状構成要素を示している。座標軸B10に対応する立体状構成要素D70は、この平面図において断面を見せている。その両端に位置する他の立体状構成要素(D71〜D75)は、理論上外方に向かって無限の長さを有するが、図中その両側延長部は省略して示している。また、これらの構成を図41の斜視図で示すことで、その構成が立体的に把握されるであろう。
【0135】
そして前述の設定を全てのゾーンに対応する立体状構成要素の貫通空間に対しても同様に行なうことで、ゾーン多面体の外殻に立体状構成要素を形成し、さらにそれらを抽出することでゾーン多軸体を形成することになる。
図42はそのゾーン多軸体E7の斜視図を示している。この実施例では、山折り状の立体面からなる立体状構成要素から構成することになる。なお、この図においても構造を明確に示すため、各構成要素の無限延長部は省略して示している。また、以降に続く実施例の図面においても、ゾーン延長面および立体状構成要素の無限延長部は同様に省略する。
【0136】
第三工程である中空状構造体の形成においては、前記立体状構成要素を構造用要素とし、それらが互いに連結して構造体が形成する様、互いに交差する箇所を保持し、該構造要素の外方延長部を適宜な長さに調整をする。
【0137】
当該実施例では、先に示した図40における立体状構成要素の部分範囲9を拡大し、それを詳細に示していく。
図43は、その拡大図であり、立体状構成要素D70ならびにその両側に交差して重なる立体状構成要素(D72,D75)を示している。その切断線の設定を手前に位置する立体状構成要素D72を代表にして示す。先ず、その内方に接して交差する立体状構成要素D70との連結部10は保持する。そして立体状構成要素の貫通空間H10の外方頂点11を始点とする切断線12に沿って、当該立体状構成要素D72を切断し、その外方延長部を取り除く。その際、その切断面は前記立体状構成要素D70の延長方向に対して平行に切断する。
【0138】
そして、全ての立体状構成要素に対しても同様に切断設定を施し、残る内方側の立体状構成要素をパネル材による構造要素へと転換することで中空状構造体を形成することになる。
図44は、その中空状構造体K7の斜視図を示している。この様に立体状構成要素を最短に設定することで中空状構造体を形成し、それを変容させることでドーム型構造体へと導いていく。
【0139】
次に当該構造用要素のパネル化の詳細について図を参照に説明する。
最終構築物が比較的小規模ならば、パネルには板状の材料を用い金具等で連結すればよい。しかし、当該実施例では、恒久性および剛性を高めた住居を想定し、フレーム材を用いたパネルを用いる。
【0140】
図45は、当該パネルの分解斜視図を示すものである。この構造用要素は、稜線で縦に二分割して後に組み立てる設計となっている。また構造体を組み立てる前には既にパネル化しておく。そうすれば、施工時にそれらをつなぎ合わせることで構造体を容易に、かつ迅速に組み立てることができる。分割パネルには鋼鉄製フレーム13に鋼板14を張り合わせ、その張りあわせた部材は、分割パネル15で示している。両分割パネルは、組み立て施工時、フレームに穿たれた数箇所の孔を通してボルトで固定する。パネル相互の連結も同様にフレームをボルト等で固定すればよく、それによって構造体の剛性を高めることができる。なお、パネル同士の接合箇所には防水処置のため、ゴム製のパッキング等16をあらかじめ取り付けておけばよい。
【0141】
第四工程であるドーム型構造体を組立てる際、パネル長手両端は開口部となり、構造体の内部空間が外部空間とつながることになる。そのためこの開口部は構造体組立て後、鋼板を張り合わせ密閉板17とする。しかし、最終構築物の目的に応じて採光窓18として強化ガラスをはめ込むことも可能であり、或いは換気口19にすることもでき、この開口部はそれらの機能に転用することができる。
【0142】
前記パネルによって組み立てたドーム型構造体の斜視図を、次の図46において示す。このドーム型構造体L7は、前述の中空状構造体を基本構造とし、それに鋼鉄製の支柱部材20を設けて高床式に自立し、その構造体を二つ連結した構成となっている。その連結方向は、該構造体の備えている座標軸B11に平行となっている。二つのドーム型構造体において、該座標軸B11に対応する構造用要素が鋼鉄製の支持部材21によって繋がることで構造の安定を確保している。該支持部材21ならびに支柱部材20は、先に示した図43で示す様に、対応するパネル材の内方側にボルト等で固定すればよい。
【0143】
その他、このドーム型構造体の二次的機能として、パネルの開口部には最終構築物の目的に応じ適宜に採光窓18や換気口19を取り付けることができる。或いは密閉板17を取り付けて外壁面としてもよい。なお、構築物の側面に開閉窓を設けたいのであれば、図で示す様に鉛直に位置する構造用要素に取り付けることができる。
【0144】
ここで示したドーム型構造体は、内部に十分な床面積を得るため、内部空間の3分の1の高さに床を設置すればよい。また、両構造体の内部空間の連結手段として、該構造体における五つの構造用要素が交差する箇所を相互に貫通することで連結口を設けることができる。
【0145】
具体的に、その断面図を示すことで、その居住空間を把握することができるであろう。図47(a)は当該ドーム型構造体L7の内部空間を示した立面断面図であり、同図(b)は内部空間の床面位置での平面図を示している。
【0146】
この実施例では、基の中空状構造体の変容として構造用要素に柱状の延長部を加え、高床式のドーム型構造体を示した。しかし本発明のドーム型構造体には、この高床式構造をとらず、パネル材となる構造用要素を変容させることで自立する構造も選択することができる。次の実施例ではその一例を示す。
【実施例6】
【0147】
目的とする構造体は、図44で示した中空状構造体K7を用いて形成する。図中鉛直に位置する座標軸B10に対応する構造用要素J70を設置面方向に延長し、設置面で直立する構造体を形成する。
図48はそのドーム型構造体L8を示している。図中二点破線で示す構造用要素を取り除くことにより、該ドーム型構造体L8は、内部空間が立地面向けて開放し、立地面より立ち上がるドーム状の空間を形成することになる。
【0148】
構造体の天蓋部を支える各構造用要素J80の間にはドームの内から外へと通じる空間が生じる。このため、必要に応じて構造体の剛性を高めるのであれば、図49で示す様に、補助パネル22ならびに小片パネル23を用いてその空間を閉じ補強をすればよい。なお、最終構築物の意匠性を考慮するならば、構造体の側面に位置する構造用要素端部の切断設定は切断線24の位置で行うことで、切断面をその内方に重なる他の構造用要素のパネル側面と面を一つにすることができる。
【0149】
その設定の詳細を先に示した図43の部分拡大図で示す。そして立体状構成要素D72で切断設定を説明する。切断線24は、立体状構成要素の貫通空間H10の外方頂点11を始点に立体状構成要素D70の外方側面に対して水平に設定する。この設定に従う立体状構造用要素D72の切断面は、その内方に位置する立体状構成要素D70の側面と一つになる。
この切断設定を施すことで、図50の補助パネル23が示す様に、その切断面と側面とが一つの面として収まるようになる。それにより天蓋部と側壁面との形状を明確に区分でき、側壁面の上昇する形態を意匠的に強調することができる。なお、この側壁パネルには入り口や窓を施せばよい。
【実施例7】
【0150】
次にゾーン20面体を核として形成するドーム型構造体を示す。このゾーン多面体を核とするゾーン多軸体は、20本の立体状構成要素から成り立っている。そのため、その中空状構造体における構造用要素を軸状の材とすれば、それに対して内部空間は比較的狭くなり、建築物への適用は困難となってしまう。むしろその構造用要素はパネル材あるいは後に示す立体トラスによって形成することが好ましい。当該実施例では先の実施例5同様にパネル材によって形成する場合を示す。
【0151】
図51で示すゾーン20面体A9はその核である。
第二工程においては、この多面体の外殻に立体状構成要素を配置するため、その手段としてゾーン延長面による構成を行ない、それによって立体状構成要素が配置する空間および断面位置の設定を行なう。
【0152】
その設定を明確に示すため、先ず一つのゾーンを抽出して説明する。図52は、当該ゾーン多面体の一つのゾーンC90に配置する立体状構成要素を該ゾーンに対応する座標軸方向より見る平面図である。この図において設定のための基準線を求めるには、該ゾーン上の一つ置きの面をその面に対応する座標軸B90の方向に延長することでゾーン延長面F90を形成する。さらにその両端に位置するゾーン面もそれに対応する座標軸の方向に延長することでゾーン延長面を形成する。そして、それらのゾーン延長面によって示す線によって囲まれる空間が立体状構成要素の貫通空間(H90a,H90b)となる。
【0153】
構造用要素をパネル材とするには、この貫通空間(H90a,H90b)の外方辺をパネル材の断面外方辺とすればよい。当該立体状構成要素(D90a,D90b)は、そのパネル化を想定した形状となっている。また、これらの構成要素を図53の斜視図で示すことで、その配置構成が立体的に把握されるであろう。
【0154】
そして以上の設定を全てのゾーンに対して同様に行なう。またその際、前記ゾーン延長面による構成を形成する前にはあらかじめ、ゾーンの一つの面は一つのゾーン延長面に対応する設定を行っておく。それによってゾーン上の各立体状構成要素が互い違いに交差して重なる様になる。
そして全ての立体状構成要素を抽出することで、図54で示すゾーン多軸体E9を形成することになる。
【0155】
第三工程である中空状構造体の形成においては、前記立体状構成要素が互いに交差して重なる箇所を保持した上で、その外方延長部を切断して取り除き、その内方側の立体状構成要素を構造用要素に転換し、それらが互いに連結して構造体が形成する様に、それに接続手段を設けることによって中空状構造体を形成する。
【0156】
図55で示す当該中空状構造体K9は、先に示した実施例5同様のパネル材による構造用要素からなるものである。この図が示す様に、各構造用要素の切断は、その内方に交差して接続する他の構造用要素の該側面に対してこの切断面が水平となる様に設定してもよい。
【0157】
その場合、図56のドーム型構造体L9で示す様に、この切断開口部を新たにパネル材等によって覆えば、構造用要素の側面部と切断開口部の面とを共有する一つの面を形成することができる。そして、この開口部側のパネルは側面パネルを形成する際にそれと同一のパネルにすることができ、それによって構築用部材をより少なくすることができる。
【0158】
このドーム型構造体L9を形成するには、鉛直に位置する座標軸B90に対応する構造用要素(J90a,J90b)を該座標軸に対して平行に延長して支柱材を形成する。そして中空状構造体の下方を構成する構造用要素を取り除き、天蓋部分に当たる構造用要素を用いる。
図57は、このドーム型構造体によって構築する最終構築物を示している。この構造の側面開口部は、当該中空状構造体の面に沿って外壁面を施せば調和した形態を形成することができる。なお、窓や出入り口等はこの開口側に施すことが好ましい。
【実施例8】
【0159】
次に示す実施例は、軸材を構造用要素とする構造体であるが、その立体状構成要素の貫通空間に軸材が2本通る場合である。実施例1〜3で示したドーム型構造体の内部空間は広くドームとしての有用性は高い。しかし核となるゾーン多面体の面数が比較的少ない場合、立体状構成要素の貫通空間内において前実施例同様に単軸を形成すれば、その内部空間は比較的狭くなり、その有効性は低くなってしまう。
【0160】
例えば、ゾーン30面体とゾーン90面体のそれぞれを核とするゾーン多軸体(図11ならびに図24を参照)において、その立体状構成要素を単一の軸状とした場合、ゾーン多軸体の内部空間は前者の方が後者よりも狭くなることが分かる。
【0161】
この様な比較的面数の少ないゾーン多面体を核として用い、かつ軸材を構造用要素とし、そのドーム型構造体において有効的な空間を形成したい場合は、その立体状構成要素の貫通空間内に複数の軸状の立体状構成要素を配置設定すればよい。
以下、この複数の軸を複軸といい、この複軸によって構築するドーム型構造体の詳細を説明する。なお、核としてはゾーン30面体を用いる。また、ゾーン多軸体を形成するためのゾーン延長面による構成は実施例5で示した通りである。よってこの構成による立体状構成要素の設定段階より説明する。
【0162】
先ず、その立体状構成要素の貫通空間を図示する。先に示した実施例5はゾーン30面体を核としていたのでその図面を用いると、図40はゾーン30面体の外殻に設定された立体状構成要素の貫通空間を示している。そしてより詳細に図示する為、その部分範囲9を拡大して示す。
【0163】
図58はその範囲を拡大し、立体状構成要素の貫通空間H10における複軸の断面位置設定を示している。この貫通空間H10内に複軸の断面位置を設定するには、その左右に交差して重なる他の立体状構成要素(D105,D102)を配置し、それらと接続可能となる様に左右に分かれて位置する二本の立体状構成要素D100を配置すればよい。当該例ではその第二工程であるゾーン多軸体の形成を端的に示すため、この立体状構成要素を円柱状の軸で示している。
【0164】
この設定によって形成するゾーン多軸体E10を次の図59で示す。当該実施例のドーム型構造体は、その構造用要素が角柱状の材からなり、その材の外殻をパネルで覆う構造とする。そこで次にこのゾーン多軸体の立体状構成要素の形状を角柱状に置き換える設定を示す。
【0165】
図60は立体状構成要素の貫通空間H10を拡大した図であり、その空間に位置する角柱状およびパネル形状の構造用要素の断面を示している。立体状構成要素D100aの断面は円柱状に代わり角柱状を示している。それに加え、その外方に位置する山形の断面を示す第二の立体状構成要素D100bは、前記立体状構成要素の外殻を覆うパネル形状となっている。
【0166】
これら2種類の立体状構成要素から形成するゾーン多軸体および第三工程に形成する中空状構造体の図示は省略する。
第四工程においては、目的とするドーム型構造体の構造用要素が角柱状の材からなり、それを骨組みとする。そこで先ず、その骨組み構造について図面を参照に説明する。
【0167】
図61で示す構造がその構造用要素から構築するドーム型構造体L10aの骨組みである。なお各構造用要素の相互連結は、実施例4で示した構造体と同様の要領によるコネクタを介して行なっている。
【0168】
次に、この骨組みに第二の構造用要素であるパネル材を取り付けることで最終的なドーム型構造体を形成する。そこで当該ゾーン多軸体ならびに中空状構造体を形成する工程において、その立体状構成要素を以下の様に設定する。
【0169】
先に示した図60に戻って、その設定について説明する。先ず、図が示す第一の立体状構成要素(D105a,D102a)の外方延長部を切断線26によって切断して取り除く。またこれと並んで、図面では省略するが、その外方に接続することになるパネル材による第二の構造用要素の外方延長部も切断線26によって切断して取り除く。その際、その切断面側は開口部となるが、その部分にはその内方に接続するパネル材による構造用要素の側面と面を一つにするパネル材を施す。それによって、ドーム天蓋部を全てパネルで覆うことになる。
【0170】
その第二のドーム型構造体L10bを図62で示す。この実施例が示す様にその最終構築物の基本構造が第一の構造用要素である骨組によって形成している場合、第二の構造用要素であるパネル材は、実施例5のパネル材による構造要素の様に必ずしも相互に重なって連結する必要はない。むしろ、この第二の構造用要素は恒久的な構築物を目的とするドーム型構造体の屋根や外壁の形態と見なすことができる。
【0171】
よって外部を覆うパネルを製造する場合、図63で示す様にその部分的パネルは集約して三つのパーツに集約してもよい。各パネルパーツは図62と照らし合わせれば、構造用要素J10aが三角形の輪郭を形成している箇所であり、構造用要素J10bは先に述べた切断面側のパネルを含む形状である。また構造用要素J10cは五角形を形成する箇所である。
【実施例9】
【0172】
本発明のドーム型構造体は、その骨組みを短軸や複軸といった軸材によって構築する他に、以下に示す実施例のごとく立体トラスによっても構築することができる。その構造は、軸材による骨組み構造よりも剛性が高いため、目的とする最終構築物の規模が比較的大きく恒久性を必要とする場合に適している。
【0173】
以下、図面を参照にその具体例を説明する。核としては図17で示したゾーン90面体A2を用いることにする。この多面体から形成するゾーン延長面による構成は図19によって示されており、その構成を基に立体状構成要素を定めていく。
そして図22においては、その立体状構成要素の貫通空間(H20a,H20b)を示しており、この空間が立体状構成要素の断面となる。
【0174】
次に、この断面位置設定による立体状構成要素の配置を図示する。図64は、その配置を端的に図示するため、座標軸B20に対応するゾーンに配置する立体状構成要素を示している。この配置を全ての座標軸に対応するゾーンにおいても同様に行ない、かつゾーンの一つの面には一つのゾーン延長面ひいては一つの立体状構成要素が対応する設定によって、核の外殻を立体状構成要素が規則的に覆うことになる。そして全ての立体状構成要素を抽出することで、次の図65で示すゾーン多軸体E11aを形成することになる。
【0175】
第三の工程ではこの立体状構成要素を構造用要素へと転換することによって中空状構造体を形成する。
その工程の第一段階としては、各立体状構成要素が互いに交差して重なる箇所を保持し、その外方延長部を切断することで第二のゾーン多軸体を形成する。
【0176】
その切断設定を、座標軸B20に対応するゾーンに配置する立体状構成要素を示す平面図を用いて示す。
図66はその平面図であり、座標軸B20に対して平行に位置する立体状構成要素(D110a,D110b)はその断面を見せており、その両側に控える他の立体状構成要素(D111〜D119)を用いて切断設定を示す。
【0177】
先ず、前記立体状構成要素(D110a,D110b)の断面形状である三角形の外方二辺の延長線27を切断線とし、次にその両側に控える立体状構成要素(D111〜D119)をこの切断線に沿って、その切断面がその内方に重なる立体状構成要素の側面と平行になる様に切断して取り除く。
次の段階で、この切断設定を他の立体状構成要素に対しても同様に行なうことで、次の図67で示す第二のゾーン多軸体E11bを形成することになる。
【0178】
各立体状構成要素の切断面は、その内方に交差して重なる他の立体状構成要素の側面と面を一つに成している。それによって、後にこの面を中空状構造体においてパネル形状の構造用要素へと転換し、パネル構成の集約化を成す。
【0179】
そしてこの工程の第二段階として、前記立体状構成要素の立体トラスへの転換を示すため、図67で示した第二のゾーン多軸体の立体状構成要素を単体で取り出し、その転換を説明する。
その単体を図68で示すと、当該ゾーン多軸体は二種類の立体状構成要素(D11a,D11b)から成り立っており、その長手両端の側面は切断面28である。図中、下段は、その両立体状構成要素の形状を有する立体トラスからなる構造用要素(J11a,J11b)を示している。この構造用要素は、前記立体状構成要素の陵を金属フレームとし、他の構造用要素と接続することを可能とする金属フレームを備えることで、図が示す様に立体トラスを形成することになる。各構造用要素の接続は、金属フレームに穿った孔を通してボルト締めすることで可能となる。
【0180】
この構造用要素からなる中空状構造体を次の図69で示す。中空状構造体K11の下方に図示する構造用要素(J11a,J11b)は、該中空状構造体におけるその位置関係を示している。
【0181】
第四工程においては、このようにして形成する中空状構造体の主要な構造用要素を抽出して目的とするドーム型構造体を形成する。そのドーム型構造体は、前記中空状構造体の天蓋部にあたる構造用要素を抽出し、そして該中空状構造体を鉛直に通る座標軸B20に対して平行に位置する構造用要素を設置面方向に延長して支柱とすることによって形成する
【0182】
図70で示すドーム型構造体L11aはその外観を示している。この構造体は目的とする最終構築物の骨組みとなる。
一方、この骨組みを覆うパネル形状の構造用要素は、この骨組みを組み立てた後に取り付けることが施工上好ましい。
【0183】
そこでこのパネル形状の構造用要素の形成を、図67に戻ってゾーン多軸体E11bを参照に説明する。
先にも説明した様に、このゾーン多軸体E11bの各立体状構成要素の切断面は、その内方に重なる他の立体状構成要素の側面と面を一つに成すことができる。この面を一つのパネルと見なせば、当該立体トラスの骨組み構造を覆うパネル材を集約化することができ、図71で示す集合パネルによる構造用要素を形成することになる。
【0184】
これらの構造用要素は、五枚一組からなる構造用要素J11cおよび三枚一組からなる構造用要素J11d、六枚一組からなる構造用要素J11eの三種類となる。あるいはその最終構築物の規模に合わせて、それら集合パネルを細分化して組み立ててもよい。
【0185】
これらの集合パネルを先に示した第一のドーム型構造体である骨組み構造に取り付けることで、次の図72で示す第二のドーム型構造体L11bを形成することになる。なお、支柱用の立体トラスには、個別のパネル材を取り付ければよい。更に、最終構築物を構築する際は、その目的に合わせて構造体の支柱間の開口部に補助的に骨組みを施し、支柱の骨組み同様に個別のパネルを取り付ければよい。次の図73においてその一例を示す。
【0186】
当該ドーム型構造体の凹凸面を有する形態は、先の実施例においても示したごとく、パネル材によって構築するドーム型構造体には共通の特徴となっている。そしてその形態は、強風や台風による風圧を抑えることができるという機能を有している。
【0187】
流体力学の観点から、その点をゴルフボールに設けたディンプルに譬えて説明することができる。ボールの表面にディンプルを設けると気流の流れの中に強制的に乱れを誘発し、乱流拡散を促進し、流れに対して抵抗は小さくなるといわれている。
それと同様、強風時においてこの凹凸面の周りの風の流れは乱流状態となり、この形態が気流の抵抗を抑えることになる。
【実施例10】
【0188】
前述の実施例9で示した構造体を単体とすれば、次に示す実施例はその変容した形態である。その内部空間は拡大し、より大規模な構築物を目的とするにふさわしい構造体となる。以下、その変容について図面を参照に述べる。
【0189】
ゾーン多面体は、体を形成する座標軸構成に基づき、形態の相互連結や拡大が可能となる性質を有している。この性質は、本発明においてゾーン多面体のみならず、ゾーン多軸体・中空状構造体、さらにドーム型構造体においても引き継がれることになる。
【0190】
本実施例はこの性質を利用して前実施例9で示した構造体の変容例を示す。そこで第四工程であるドーム型構造体の形成段階よりその変容を説明する。
図70で示したドーム型構造体L11aにおいて、その構造体が当該ゾーン多面体より引き継いだ座標軸(B21,B27)に平行に位置する各構造用要素の中間部を延長することで内部空間の拡大を行なう。
【0191】
この延長によってその内部空間が拡大した構造体の平面敷地図を図74で示す。この図は、座標軸B20の方向より見る該座標軸に平行に位置する構造用要素、すなわち柱状立体トラスの設置を示している。この図から、座標軸B20を中心に単体のドーム型構造体L11aが座標軸B21の方向にその構造を延長し、さらにその延長構造が座標軸B27の方向に延長することによってその内部空間が拡大していることが理解できるであろう。
【0192】
そしてこの平面敷地図上に形成するドーム型構造体L12aを次の図75で示す。なお、構造体の拡大にともない、支柱となる構造用要素を設置面に向けて固定するため適宜延長する必要がある。また、補助的に構造用要素が必要ならば、例えば図の構造用要素(J129a,J125b)が示すように延長方向に同様の構造用要素を平行に備えつければよい。
【0193】
最後に、この様に形成する骨組みにパネル形状の構造用要素を備えた第二のドーム型の構造体L12bを図76で示す。
なお、この構造体から最終構築物を求めるならば、その開口部を覆うパネル形状はこの構造体の規則的な形態に調和することが好ましい。図77においてその一例を示す。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】ゾーン30面体を示した斜視図である。
【図2】正二十面体を示した斜視図である。
【図3】ゾーンを示した概念図である。
【図4】ゾーン30面体における一つのゾーンを示した斜視図である。
【図5】図4の一つの座標軸方向よりゾーンを示した平面図である。
【図6】ゾーン30面体における一つのゾーンを示した斜視図である。
【図7】図5のゾーンに配置する立体状構成要素の配置を示す平面図である。
【図8】ゾーン30面体の外殻に配置する立体状構成要素を示した斜視図である。
【図9】図8の立体状構成要素の配置が逆向きの場合を示した斜視図である。
【図10】ゾーン30面体の外殻に形成するゾーン多軸体を示した斜視図である。
【図11】ゾーン30面体を核として形成するゾーン多軸体を示した斜視図である。
【図12】切頭八面体を示した斜視図である。
【図13】切頭八面体におけるゾーン構成面を示した斜視図である。
【図14】切頭八面体のゾーンに配置する立体状構成要素を示した斜視図である。
【図15】正十二面体の備えている三回転対称軸を示した斜視図である。
【図16】図15の一つの回転対称軸に対応するゾーンを示した平面図である。
【図17】ゾーン90面体およびその体が備えている座標軸を示した斜視図である。
【図18】ゾーン90面体の一つのゾーンに配置する立体状構成要素の断面を示した平面図である。
【図19】ゾーン90面体の外殻に形成するゾーン延長面による構成を示した斜視図である。
【図20】図18の立体状構成要素を示した部分拡大図である。
【図21】ゾーン90面体の一つのゾーンに配置する立体状構成要素の断面を示した斜視図である。
【図22】図18の立体状構成要素の貫通空間を示した平面図である。
【図23】図22の立体状構成要素の貫通空間における立体状構成要素の断面を示した部分拡大図である。
【図24】ゾーン90面体を核として形成するゾーン多軸体を示した斜視図である。
【図25】ゾーン90面体を核として形成するドーム型構造体を示した斜視図である。
【図26】図25のドーム型構造体の変容を示した斜視図である。
【図27】ゾーン132面体を示した斜視図である。(実施例1)
【図28】ゾーン132面体を核として形成するドーム型構造体を示した斜視図である。(実施例1)
【図29】ゾーン552面体を示した斜視図である。(実施例2)
【図30】ゾーン552面体を核として形成するドーム型構造体を示した斜視図である。(実施例2)
【図31】ゾーン870面体を示した斜視図である。(実施例3)
【図32】ゾーン870面体を核として形成するドーム型構造体を示した斜視図である。(実施例3)
【図33】ゾーン90面体を核として形成する中空状構造体を示した斜視図である。(実施例4)
【図34】図33の部分拡大図である。(実施例4)
【図35】構造用要素の接続手段であるコネクタを示した斜視図である。(実施例4)
【図36】立体状構成要素の貫通空間における構造用要素の断面を示した平面図である。(実施例4)
【図37】ゾーン90面体を核として形成するドーム型構造体を示した斜視図である。(実施例4)
【図38】ゾーン30面体を核として形成するゾーン延長面による構成を示した斜視図である。(実施例5)
【図39】ゾーン30面体の一つのゾーンに位置する立体状構成要素の貫通空間を示した平面図である。(実施例5)
【図40】図39の立体状構成要素の貫通空間に位置する立体状構成要素の断面を示した平面図である。(実施例5)
【図41】ゾーン30面体の一つのゾーンに配置する立体状構成要素を示した斜視図である。(実施例5)
【図42】ゾーン30面体を核として形成するゾーン多軸体を示した斜視図である。(実施例5)
【図43】図40の部分拡大図である。(実施例5)
【図44】ゾーン30面体を核として形成する中空状構造体を示した斜視図である。(実施例5)
【図45】パネル材からなる構造用要素を示した分解図である。(実施例5)
【図46】連結型のドーム型構造体を示した斜視図である。(実施例5)
【図47】図46のドーム型構造体を示した立面図ならびに平面図である。(実施例5)
【図48】ゾーン30面体を核として形成するドーム型構造体を示した斜視図である。(実施例6)
【図49】図48のドーム型構造体の開口部に施すパネル材を示した斜視図である。(実施例6)
【図50】図48のドーム型構造体による最終構築物の一例を示した斜視図である。(実施例6)
【図51】ゾーン20面体およびその体が備える座標軸を示した斜視図である。(実施例7)
【図52】ゾーン20面体の一つのゾーンに配置する立体状構成要素を示した平面図である。(実施例7)
【図53】図52の立体状構成要素を示した斜視図である。(実施例7)
【図54】ゾーン20面体を核として形成するゾーン多軸体を示した斜視図である。(実施例7)
【図55】ゾーン20面体を核として形成する中空状構造体を示した斜視図である。(実施例7)
【図56】ゾーン20面体を核として形成するドーム型構造体を示した斜視図である。(実施例7)
【図57】図56のドーム型構造体による最終構築物の一例を示した斜視図である。(実施例7)
【図58】図39の立体状構成要素の貫通空間において複軸の立体状構成要素の配置を示した部分拡大図である。(実施例8)
【図59】複軸の立体状構成要素によるゾーン多軸体を示した斜視図である。(実施例8)
【図60】図58の立体状構成要素の貫通空間において角柱状ならびにパネル形状の立体状構成要素の配置を示した平面図ならびに断面図である。(実施例8)
【図61】角柱状の構造用要素からなるドーム型構造体を示した斜視図である。(実施例8)
【図62】図61のドーム型構造体を骨組みとし、その外殻にパネル形状の構造用要素を取り付けた第二のドーム型構造体を示した斜視図である。(実施例8)
【図63】図62のパネル形状の構造用要素を抽出して示した斜視図である。(実施例8)
【図64】ゾーン90面体の一つのゾーンに配置する立体状構成要素を示した斜視図である。(実施例9)
【図65】ゾーン90面体を核として形成するゾーン多軸体を示した斜視図である。(実施例9)
【図66】図64の座標軸方向より立体状構成要素を示し、その切断設定を示した平面図である。(実施例9)
【図67】図66の切断設定にしたがって形成する第二のゾーン多軸体を示した斜視図である。(実施例9)
【図68】図67の立体状構成要素を抽出し、それを基に形成する立体トラスからなる構造用要素を示した斜視図である。(実施例9)
【図69】図68の立体トラスからなる構造用要素から形成する中空状構造体を示した斜視図である。(実施例9)
【図70】図69の中空状構造体から形成する第一のドーム型構造体を示した斜視図である。(実施例9)
【図71】図70のドーム型構造体に取り付けるパネル形状の構造用要素を示した斜視図である。(実施例9)
【図72】図70のドーム型構造体にパネル形状の構造用要素を取り付けた第二のドーム型構造体を示した斜視図である。(実施例9)
【図73】図72のドーム型構造体による最終構築物の一例を示した斜視図である。(実施例9)
【図74】図70のドーム型構造体を延長し、その内部空間の拡大を示した敷地平面図である。(実施例10)
【図75】骨組みとなる第一のドーム型構造体を示した斜視図である。(実施例10)
【図76】図75のドーム型構造体にパネル形状の構造用要素を取り付けた第二のドーム型構造体を示した斜視図である。(実施例10)
【図77】第二のドーム型構造体による最終構築物の一例を示した斜視図である。(実施例10)
【符号の説明】
【0195】
A ゾーン多面体
B 座標軸
C ゾーン
D 立体状構成要素
E ゾーン多軸体
F ゾーン延長面
G ゾーン延長面による構成
H 立体状構成要素の貫通空間
J 構造用要素
K 中空状構造体
L ドーム型構造体
M 構造用要素の接続手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造用要素が相互依存的に連結することで形成する構造体であって、平行四辺形の面を構成要素とする凸型のゾーン多面体Aを核とする第一工程と、該ゾーン多面体Aの各ゾーンCにおける一つ置きの面を該一つ置きの面が属するゾーンCに対応する座標軸Bに対して平行に延長することでゾーン延長面Fを形成し、前記各ゾーンCの一つの面が一つのゾーン延長面Fに対応することで前記ゾーン多面体Aの外殻にゾーン延長面による構成Gを形成し、該ゾーン延長面による構成Gを前記ゾーン多面体Aの備えている各座標軸Bの方向から見て、該各座標軸Bに平行に位置するゾーン延長面Fの断面にあたる線と該ゾーン延長面Fの両端に位置する他のゾーン延長面Fにあたる線とによって囲む空間を立体状構成要素の貫通空間Hとし、該空間内に立体状構成要素Dの断面が位置し、その断面をその垂直方向に平行移動することによって立体状構成要素Dを形成し、該立体状構成要素Dを抽出することによってゾーン多軸体Eを形成する第二工程と、前記立体状構成要素Dが互いに交差する箇所を保持する上で、その外方延長部を任意の箇所にて切断して取り除き、残る内方側の立体状構成要素Dを構造用要素Jへと転換し、該構造用要素Jが互いに交差する箇所を接続することを可能とする手段を有することで中空状構造体Kを形成する第三工程と、その主要な構造用要素Jによってドーム型構造体Lを構築する第四工程の四つの工程からなるドーム型構造体L。
【請求項2】
請求項1記載のドーム型構造体Lにおいて、ゾーン延長面による構成Gをゾーン多面体Aの備えている各座標軸Bの方向から見て、立体状構成要素の貫通空間Hに立体状構成要素Dの断面の一部分が位置することを特徴とするドーム型構造体L。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【公開番号】特開2010−7289(P2010−7289A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165538(P2008−165538)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(505160452)