説明

ナットランナ

【課題】構造が簡単で、低コストのナットランナを提供する。
【解決手段】ナットランナ1は、モータ3と、締付力伝達機構2を備えている。締付力伝達機構2は、モータ3の駆動軸4に取付けたウォーム5と、ウォーム5と噛合う第1及び第2ウォームホイール7,8と、一端に第1及び第2ウォームホイール7,8を、他端に第1及び第2可動ウォーム11、12を取付けた第1及び第2回転軸9,10と、第1及び第2可動ウォーム11、12に当接する第1及び第2遮断機構13,14と、第1及び第2可動ウォーム11、12と噛合う第3及び第4ウォームホイール17、18を備えている。第1及び第2可動ウォーム11,12を第1及び第2遮断機構13,14のバネ15のバネ力に抗して移動させることにより、モータ3から第1及び第2出力軸19,20への駆動力の伝達を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動によりボルト、ナット等のネジ部品を締付けるナットランナに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エンジン、トランスミッション、デファレンシャルギア、サスペンションなどの自動車部品の組立において、ナットランナを使用してボルト、ナット等のネジ部品の締付が行われている。ナットランナでは、締付トルクが規定値に達したとき、モータと出力軸との連結を遮断することにより、ボルト、ナットを規定のトルクで締付けることができる。この連結を遮断させる方法としては、例えば、ナットランナに取付けられたトルクセンサが一定以上のトルクを検出したとき、モータと出力軸とを遮断するものが公知である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された多軸ナットランナは、減速ギアに取付けられたトルクセンサが、出力軸に加わるトルクが一定値に達したことを検出すると、電磁クラッチが作動して、モータと出力軸とを遮断する。また、ボールカムクラッチ等の機械的クラッチを使用して、モータと出力軸とを遮断する構造のものも公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−262454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された多軸ナットランナでは次のような問題がある。締付トルクが規定値に達したとき、モータと出力軸とを遮断するために、電磁クラッチ、又は、ボールカムクラッチ等の機械的クラッチを使用するので、構造が複雑で、製造コストも高くなる。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、構造が簡単で、製造コストが低いナットランナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、モータの駆動力を歯車を介して出力軸に伝達してネジ部品を締付けるナットランナにおいて、前記歯車は、噛合い位置と非噛合い位置との間で移動可能で、かつ、締付けの反力によって非噛合い位置へ移動する力が作用する可動歯車を含み、前記可動歯車を噛合い位置に向って付勢するバネ手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構造が簡単で、製造コストが低いナットランナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るナットランナの概略構造を示す正面図である。
【図2】図1に示す締付力伝達機構の平面図である。
【図3】規定トルクを超えた遮断機構の平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るナットランナの概略構造を示す正面図である。
【図5】図4に示す締付力伝達機構の平面図である。
【図6】図4に示す可動平歯車の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施形態を図1、図2及び図3に基づいて詳細に説明する。
【0011】
本発明の第1実施形態に係るナットランナの概略構造の正面図を図1に示し、平面図を図2に示す。図1及び図2に示すように、ナットランナ1は、ボルト、ナット等のネジ部品を規定のトルクで締付けるためのものであって、動力を与えるモータ3と、モータ3の回転を減速して2つの第1及び第2出力軸19,20に動力を伝達して必要な締付トルクを得る締付力伝達機構2と、これらを収容するハウジング6とを備えている。
【0012】
ハウジング6に取付けられたモータ3の駆動軸4には、ウォーム5が取付けられている。また、駆動軸4は、ハウジング6内まで延びている。
【0013】
締付力伝達機構2は、ウォーム5と、第1、第2、第3及び第4ウォームホイール7,8,17,18と、第1及び第2回転軸9,10と、第1及び第2可動ウォーム11,12と、第1及び第2遮断機構13,14とを備えており、これらは、ハウジング6内で回転可能に支持されている。
【0014】
モータ3の駆動軸4に取付けられたウォーム5は、第1及び第2ウォームホイール7,8と噛合っている。第1及び第2ウォームホイール7,8は、ウォーム5を挟んで互いに平行に配置されている。第1及び第2ウォームホイール7,8は、それぞれ第1及び第2回転軸9,10の一端部に取付けられている。第1及び第2回転軸9,10は、モータ3の駆動軸4に垂直で互いに平行に配置され、互いに反対方向に延びている。
【0015】
第1及び第2回転軸9,10の他端部には、それぞれ第1及び第2可動ウォーム11、12が取付けられている。第1及び第2ウォームホイール7,8は、それぞれ第1及び第2回転軸9,10に対して共に回転するように固定されているのに対して、第1及び第2可動ウォーム11,12は、それぞれ第1及び第2回転軸9,10に対して、回転方向に固定され、かつ、軸方向に沿って移動可能に取付けられている。ここで、第1及び第2可動ウォーム11,12と第1及び第2回転軸9,10とは、例えばスプライン、ボールスプライン等によって結合することができる。
【0016】
第1可動ウォーム11は、第3ウォームホイール17と噛合い、また、その端部が第1遮断機構13に当接しており、第2可動ウォーム12は、第4ウォームホイール18と噛合い、また、その端部が第2遮断機構14に当接している。第3及び第4ウォームホイール17,18は、それぞれ第1及び第2出力軸19,20の一端部に取付けられている。第1及び第2出力軸19,20は、第1及び第2回転軸9,10に垂直で互いに平行に配置され、他端側がハウジング6の外部に延出している。第1及び第2出力軸19,20の外部に延出された先端部には、ボルト、ナット等のネジ部品に応じた工具(図示せず)が取付けられるようになっている。
【0017】
第1及び第2遮断機構13,14は、それぞれ、圧縮コイルバネであるバネ15と、当接部材16とで構成され、バネ15のバネ力により当接部材16を付勢して、第1及び第2可動ウォーム11,12の端部に押圧している。第1及び第2遮断機構13,14のバネ15は、バネ力が調整可能となっている。なお、バネ15は、コイルバネのほか、他のバネ手段としてもよい。
【0018】
モータ3の駆動軸4を回転させ、ウォーム5及びこれと噛合う第1及び第2ウォームホイール7,8を介して第1及び第2回転軸9,10を一定方向に回転駆動し、更に、第1及び第2回転軸9,10に取付けられた第1及び第2可動ウォーム11,12及びこれと噛合う第3及び第4ウォームホイール17,18を介して第1及び第2出力軸19,20を回転駆動する。ここで、第1及び第2出力軸19,20をネジ部品の締付け方向(一般的には、右回り)に回転させたとき、締付けの反力により、第1及び第2可動ウォーム11,12には、それぞれ第1及び第2遮断機構13,14のバネ15のバネ力に抗して移動する方向(図1及び図2の矢印参照)の軸力が作用するように各ウォーム及びウォームホイールの歯すじの方向が設定されている。
【0019】
また、締付けの反力によって第1及び第2可動ウォーム11,12に作用する軸力が第1及び第2遮断機構13,14のバネ15のバネ力を超えたとき、第1及び第2出力軸19,20、及び、第3及び第4ウォームホイール17,18の回転が停止し、第1及び第2可動ウォーム11,12は、図3に示すように(図3には、第2可動ウォーム12側のみを示す)、第1及び第2遮断機構13,14のバネ15のバネ力に抗して軸方向に移動し、第3及び第4ウォームホイール17,18との噛合いが外れる。すなわち、第1及び第2可動ウォーム11,12が第3及び第4ウォームホイール17,18との噛合い位置から非噛合い位置に移動して、モータ3の駆動力の第1及び第2出力軸19,20への伝達を遮断する。
【0020】
以上のように構成した本実施形態の動作について次に説明する。
第1及び第2出力軸19,20の先端部に、締付けるボルト、ナット等のネジ部品に応じた工具を装着してネジ部品の締付を行なう。モータ3の駆動軸4の回転によりウォーム5、第1及び第2ウォームホイール7,8、第1及び第2回転軸9,10、第1及び第2可動ウォーム11,12、並びに、第3及び第4ウォームホイール17、18を介して第1及び第2出力軸19,20を回転駆動してネジ部品の締め付けを行なう。このとき、これらのウォーム及びウォームホイールの減速によりモータ3のトルクを増幅して必要な締付けトルクを得る。
【0021】
そして、第1及び第2出力軸19,20の締付トルクが規定の締付トルクに達すると、第1及び第2可動ウォーム11,12が、第1及び第2遮断機構13,14のバネ15のバネ力に抗し軸方向に移動することにより、第1及び第2出力軸19,20の回転が停止する。その後、図3に示すように(図3には、第2可動ウォーム12側のみを示す)、第1及び第2可動ウォーム11,12が軸方向に更に移動して、第1及び第2可動ウォーム11,12と第3及び第4ウォームホイール17,18との噛合いが外れ、モータ3からの第1及び第2出力軸19,20への駆動力の伝達が遮断される。このようにして、ネジ部品を規定の締付トルクで締付けることができる。規定の締付トルクは、第1及び第2遮断機構13,14のバネ15のバネ力を変更することにより調整することができる。
【0022】
本実施形態に係るナットランナ1では、第1及び第2可動ウォーム11,12を第1及び第2遮断機構13,14のバネ15のバネ力に抗して、噛合い位置から非噛合い位置に移動させることにより、モータ3から第1及び第2出力軸19,20への駆動力の伝達を遮断しているので、別途機械的なクラッチ機構を設ける必要がなく、構造が簡単で製造コストも安価である。
【0023】
次に、本発明の第2実施形態について、図4、図5及び図6を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態に対して、同様の部分には同じ参照符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0024】
本発明の第2実施形態に係るナットランナの概略構造の正面図を図4に示し、平面図を図5に示す。図4及び図5に示すように、本実施形態のナットランナ1Aの締付力伝達機構2Aは、上記第1実施形態のウォーム及びウォームホイールの代りに第1、第2及び第3平歯車21,22,23と、第1及び第2可動平歯車24,25とを備えている。
【0025】
第1平歯車21は、モータ3の駆動軸4に取付けられ、第2平歯車22は、第1出力軸19に取付けられ、第3平歯車23は、第2出力軸20に取付けられている。そして、第1平歯車21と、第2平歯車22及び第3平歯車23との間に、それぞれ第1及び第2可動平歯車24,25が噛合わされている。第1可動平歯車24及び第2可動平歯車25は、第1平歯車21の直径方向に対して反対側に配置されている。第1可動平歯車24は、軸方向の一端部が第1平歯車21に噛合わされ、他端部が第2平歯車22に噛合わされている。第2可動平歯車25は、第1可動平歯車24と同様に、軸方向の一端部が第1平歯車21に噛合わされ、他端部が第3平歯車23に噛合わされている。
【0026】
第1可動平歯車24は、第1平歯車21及び第2平歯車22との噛合い位置から離間して非噛合い位置に移動できるように、その回転軸26が水平方向に沿って移動可能に案内されており、また、第2可動平歯車25は、第1平歯車21及び第3平歯車23との噛合い位置から非噛合い位置に移動できるように、その回転軸26が水平方向に沿って移動可能に案内されている。
【0027】
第1可動平歯車24は、図6に示すように、その回転軸26に取付けられた略コの字形の支持部材27を介して、バネ15によって第1及び第2平歯車21,22との噛合い位置に向って付勢されている。また、同様に、第2可動平歯車25は、支持部材27を介して、バネ15によって第1及び第3平歯車21,23との噛合い位置に向って付勢されている。
【0028】
そして、モータ3の駆動軸4を回転させ、第1平歯車21、第1可動平歯車24及び第2平歯車22を介して第1出力軸19を駆動し、また、第1平歯車21、第2可動平歯車25及び第3平歯車23を介して第2出力軸20を駆動する。ここで、第1及び第2出力軸19,20をネジ部品の締付け方向(一般的には、右回り)に回転させたとき、締付けの反力により、第1及び第2可動平歯車24,25に、バネ15の付勢力に抗して、第1及び第2平歯車21,22、及び、第1及び第3平歯車21,23との噛合い外れる方向(図5の矢印参照)の力が作用するようにモータ3の回転方向が設定されている(図中の矢印参照)。また、バネ15のバネ力は調整可能となっている。
【0029】
この締付けの反力によって第1及び第2可動平歯車24,25に作用する力がバネ15のバネ力を超えたとき、第1及び第2可動平歯車24,25がバネ15のバネ力に抗して、噛合い位置から非噛合い位置に移動し、第1及び第2平歯車21,22、及び、第1及び第3平歯車21,23との噛合いから外れて、モータ3から第1及び第2出力軸19,20への駆動力の伝達を遮断する。
【0030】
このように構成したことにより、モータ3の駆動軸4の回転より、第1平歯車21、第1可動平歯車24及び第2平歯車22を介して第1出力軸19を駆動し、また、第1平歯車21、第2可動平歯車25及び第3平歯車23を介して第2出力軸20を駆動して、ネジ部品の締め付けを行なう。そして、締付トルクが規定トルクに達すると、第1及び第2可動平歯車24,25が、バネ15のバネ力に抗して移動して、第1及び第2平歯車21,22、及び、第1及び第3平歯車21,23との噛合いから外れて、モータ3から第1及び第2出力軸19,20への駆動力の伝達を遮断する。これにより、ネジ部品を規定のトルクで締付けることができる。
【0031】
なお、上述した第1及び第2実施形態において、第1及び第2出力軸19,20の一方が規定の締付トルクに達して駆動力の伝達を遮断した後、他方が引続き締付けを行い、規定の締付トルクに達したとき、駆動力の伝達を遮断して締付けを完了する。
【符号の説明】
【0032】
1…ナットランナ、3…モータ、5…ウォーム(歯車)、7…第1ウォームホイール(歯車)、8…第2ウォームホイール(歯車)、11…第1可動ウォーム(可動歯車)、12…第2可動ウォーム(可動歯車)、13…第1遮断機構(バネ手段)、14…第2遮断機構(バネ手段)、17…第3ウォームホイール(歯車)、18…第4ウォームホイール(歯車)、19…第1出力軸、20…第2出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動力を歯車を介して出力軸に伝達してネジ部品を締付けるナットランナにおいて、前記歯車は、噛合い位置と非噛合い位置との間で移動可能で、かつ、締付けの反力によって非噛合い位置へ移動する力が作用する可動歯車を含み、前記可動歯車を噛合い位置に向って付勢するバネ手段を備えていることを特徴とするナットランナ。
【請求項2】
前記歯車は、ウォーム及びウォームホイールであることを特徴とする請求項1に記載のナットランナ。
【請求項3】
前記歯車は、平歯車であることを特徴とする請求項1に記載のナットランナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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