説明

ナノスケールマスコンベヤー

ソース粒子(source particles)から帯電可能な(chargeable)原子または分子を個々に送達するための物質輸送(mass transport)方法およびデバイスを開示する。それは、チャネル;チャネルの表面にその長さに沿う位置で固定された少なくとも1つの帯電可能材料のソース粒子;チャネルを加熱する手段;およびチャネルに沿ってコントロール可能な電場をかける手段を含み、それによってデバイスは原子または分子を、印加電場に応じて、チャネルに沿って輸送する。好ましい実施態様において、物質輸送デバイスは多層カーボンナノチューブ(multiwalled carbon nanotube, MWNT)を含むが、その他の1次元構造を用いてもよい。材料の原子が滑らかであるため、MWNTまたはその他の構造は、個々または小集合の原子のためのチャネルとして働く。また、ソース粒子はインジウムのような金属であることが好ましい。粒子は、小さなユニット(一部の例では、個々の原子)への解離によって動く。粒子は100nm未満のサイズであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は2004年3月22日に提出された仮特許出願60/555,458、2004年4月7日に提出された仮特許出願60/560,492、および2005年3月21日に提出された出願(出願番号未定)に対し優先権を主張する。これらの出願は言及することにより、本出願に包含される。
【0002】
政府サポートのステートメント
本発明は、コントラクトNo.DE−AC03−76SF00098の下、米国エネルギー省(US Department of Energy)によってサポートされた研究においてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列表またはコンパクトディスクのリファレンス
なし
【0004】
発明の背景
発明の分野
本発明は、小スケールの物質輸送(mass transport)の分野、および所定のチャネルに沿って原子をコントロールして動かす電圧差の印加に関する。
【背景技術】
【0005】
関連技術
ナノテクノロジーは原子スケールのアセンブリのためにこれまでにも提案されてきた。目覚ましいナノ二次加工能力が、クリーンな表面上での原子2−5および分子4,6のプローブマニピュレーション(probe manipulation)をスキャンすることによって実証されてきた。しかしながら、二次加工ツールとしては、走査トンネル(scanning tunneling)顕微鏡および原子間力顕微鏡はどちらもローディングの不足に悩まされる。それらはすでに存在する原子を操作できるが、原子をワークエリア(work area)に効率よく送達することができない。中空コアおよび大きなアスペクト比を有するカーボンナノチューブは、ナノスケール量の材料のための有効な導管として提案されてきた7,8。すでに多大な努力がナノチューブの充填8−11およびその適用12,13に注がれてきた。さらに、カーボンナノチューブはプローブ顕微鏡をスキャンするプローブとして用いられてきた14−16。プローブ顕微鏡をスキャンすることによって既に実証されている原子配置およびマニピュレーション性能をナノチューブ送達システムと組み合わせることができれば、極めて優れたナノアセンブリツールが得られる。
【0006】
本発明はさらに、半導体産業において非常に重要な現象であるエレクトロマイグレーション(electromigration)に関する17,18。エレクトロマイグレーションは高度集積電子回路の金属コンポーネントの障害を引き起こす。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の概要
本発明は、個々の原子または分子を所定の場所へ送達する物質輸送デバイスに関する。該デバイスは、
(a)原子的に滑らか(atomically smooth)で原子レベルの物質輸送を可能にするチャネル;
(b)チャネルの表面にその長さに沿う位置で固定された少なくとも1つの帯電可能な(chargeable)原子のソース;
(c)アレイ粒子(arrayed particle)から原子が自由に移動できることを十分に確実にするためのオプションのチャネル加熱手段;および
(d)チャネルの一端に動作可能につなげられた電極、および粒子のもう一方のサイド上に動作可能につなげられたすぐ近くの対電極(これはチャネルの他方の端に付けられていてもよい)、
を含み、
両電極はコントロール可能な電圧源に取り付けられるように適合しており、
これにより、該デバイスは印加電圧に応じて、対電極へ、もしくは対電極から、チャネルに沿って、原子を輸送する。
【0008】
本発明のチャネルは200ナノメーター未満の直径(または幅)およびその幅の少なくとも10倍の長さ(長さが幅を大きく超えているという局面から、「準一次元的(quasi-one dimesional)」と言及されるコンディション)を有していてもよい。チャネルはナノチューブ(単層もしくは多層)、ナノロッド、ワイヤ、または化学的もしくは物理的手段(すなわち、制約されない2次元表面拡散にバリアをつくる表面処理によって)で規定される2次元表面上の準一次元的経路であることが好ましい。それは、粒子をチャネル上またはチャネルに隣接した規定のポイントに送達するために位置指定可能(positionable)であってもよい。
【0009】
さらに本発明のチャネルは、その上に、分散された粒子のコーティングを少なくとも1つ有しているのが好ましい。これらの粒子は輸送種(transport species)(すなわち、送達されるべき帯電可能な原子または分子)を含む。チャネルは、顕微鏡マニピュレーションステージ(microscopic manipulation stage)の先端を含む電極から電流を流せるように作られていることが好ましい。
【0010】
チャネルは10ミクロンと10ナノメーターの間の長さ、ならびに0.5nmと100nmの間の直径で最適特性を示し得る。当技術分野で公知のように、カーボンナノチューブは3〜10nmの直径および200nmまでの長さを有するものであってもよい。チャネルに沿った物質輸送をもたらすためには、チャネルが、原子移動が起こるように十分に温まっている必要があり、また電場をそこにかけて原子移動を起こすことができるようになっている必要がある。これら2つの要件が、チャネルに電流を流すことによって同時に達成される場合(印加電圧が電場と加熱を両方確立する。これはチャネル内の電流によって起こる)、チャネルが20マイクロアンペアより高い電流を運ぶことができるのが好ましい。また、輸送されるべき材料がその融点付近で低い蒸気圧を有していることが好ましく、そうでない場合は、材料が失われてしまう可能性がある。輸送材料を提供する粒子は、好ましくは、インジウム、タリウム、ガリウム、スズ、チタン、鉛、水銀、金、銀、アルミニウム、白金、銅、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの混合物などの金属を含む。さらに粒子は、帯電可能な有機分子、ポリマー、アミノ酸、ペプチドまたは炭水化物を含んでいてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
好ましい実施態様の詳細な説明
定義
本明細書において、用語「チャネル」は、もっとも一般的な意味で、材料がそれに沿って、またはそれを通って流れる固形の支持体(support)として用いられる。本明細書において、それはナノスケールで用いられ、ナノチューブ(単層または多層で、炭素または窒化ホウ素などの様々な材料からなるもの)、ナノロッド、ナノワイヤ、電気的、化学的もしくは物理的手段(すなわち、制約されない2次元表面拡散にバリアをつくる表面処理によって)で規定される2次元表面上の準一次元的経路などをカバーすることが意図される。
【0012】
チャネルは実質的に、原子的に滑らかであり、この用語は材料科学の分野で理解されているような意味である。本明細書で用いられているように、また一般的に理解されているように、「原子的に滑らか」とは、汚染物質、欠陥、または、極めて滑らかな表面を提供する秩序原子構造(ordered atomic structure)を乱すその他のバリア、キャビティもしくは欠陥がないことを意味する。原子的滑らかさについての記述は、Kochら、”Modelling of HREM and nanodiffraction for dislocation kinks and core reconstruction”, J. Phys.: Condens. Matter 12:10175-10183 (2000)において見られる。用語「原子的に滑らか」は、本発明のデバイスの文脈において、本発明のデバイスにおけるチャネルが、原子(または原子クラスター)がチャネル上で引っかかったり、失われたり、脇にそれたりすることなく、チャネルに沿って原子の輸送ができる能力を言う。
【0013】
用語「帯電可能な」とは、印加電圧に応じて、材料が物理的運動を示すことを意味する。「帯電可能な」原子は、強磁性、金属性、または帯電した動き(charged behavior)(例えば、電気泳動ゲルを通る移動)を示すことが可能な生物学的分子であってもよい。「帯電可能」であるという特質は、インジウム、タリウム、ガリウム、スズ、チタン、鉛、水銀、金、銀、アルミニウム、白金もしくは銅、またはこれらの金属を含む合金などの金属によって例示される。DNA、有機分子、ポリマー、アミノ酸、ペプチド、炭水化物およびタンパク質などの生物学的分子もこの特質を例示し、それはゲル電気泳動におけるそれらの移動によっても明らかである。
【0014】
用語「強磁性」は、鉄のように、特定の温度(キューリー点)より下の温度で外部の磁場の非存在下で磁性を有することができる物質を意味し、またそれに関するものである。すなわち、原子の磁気モーメントが整列しているような物質を意味し、またそのような物質に関するものである。
【0015】
用語「原子」は、もっとも一般的な意味において用いられ、原子、分子、あるいは10未満の原子または分子のクラスターを言う。輸送されるべき「原子」は「ソース」粒子から供給され、該粒子は何百万という「原子」を含んでいてもよい。
【0016】
本発明における原子のソース粒子は、直径が1〜10000nmの間、好ましくは直径が5〜500nmの間、最も好ましくは直径(幅)が5〜100nmの間であり、電場に応じて移動できるように帯電可能である原子からなる。
【0017】
「物質輸送(mass transport)」とは、非常に小さなスケールで原子を、群(流体力学的流動の法則によって動く液滴(droplet)または流れ(stream))としてというよりももっぱら個々に(表面拡散として)動かすことによってデバイスが働くことを意味する。使用する原子の帯電可能な性質によって、物質輸送は、チャネル温度および印加電場の組み合わせに従って、原子をチャネルに沿って電極から対電極に向けて動かす。原子を動かすためには十分に高い温度が必要とされ、また原子の動きをチャネルに沿って一方または他方へ導くために電場(印加電圧によって生じる)が必要とされる。
【0018】
一般的方法および装置
好ましいチャネルは多層カーボンナノチューブ(MWNT)である。これらのナノチューブは、継ぎ目のないチューブに巻き込まれた(rolled into)炭素原子に結合したsp3のシートに類似した、ほとんど完全な炭素細管構造を有する。これらは通常、3つの方法、すなわち、電気アーク放電(electric arc discharge)、レーザーアブレーション(laser ablation)および化学蒸着のうちの1つによって製造される。アーク放電法には、ヘリウム雰囲気下における、2つのグラファイト電極間の電気的アークの発生が含まれ、2つの電極のうち1つは触媒金属粉末(例えば、鉄、ニッケル、コバルト)で通常満たされている。レーザーアブレーション法はレーザーを用いて、同じく触媒金属粉末で通常満たされているグラファイトターゲットを蒸着させる。アーク放電およびレーザーアブレーション法は、ナノチューブ(30〜70%)、アモルファス炭素および炭素粒子(通常、クローズドケージド(closed-caged)のもの)を含む炭素材料の集合体(ensemble)をつくる傾向がある。次いで、ナノチューブを、特定の用途のための位置へと操作する前に、何らかの形態の精製プロセスによって抽出しなければならない。化学蒸着プロセスは、金属触媒のナノ粒子を使用して、500〜900℃の温度で、炭化水素ガスと反応させる。これの改良として、プラズマエンハンスト化学蒸着(plasma enhanced chemical vapor deposition)があり、該方法では、垂直配向のカーボンナノチューブが容易に成長できる。これらの化学蒸着プロセスにおいて、触媒は炭化水素ガスを分解し、炭素および水素をつくる。炭素は粒子に溶け、その周囲からカーボンチューブとして沈殿する。よって、触媒は「テンプレート(template)」として作用し、そこからカーボンナノチューブが形成される。そして、触媒サイズおよび反応時間をコントロールすることによって、ナノチューブの直径および長さを、それぞれ適するように容易に調整することができる。グラファイトシートのフィラメントが形成されると、それは構造中に大きな割合の「エッジ(edge)」原子を含むので、カーボンチューブは固形のカーボンフィラメントとは対照的に、触媒粒子が50nm以下である場合に形成される傾向がある。
【0019】
均一な機械的性質を有し、輸送されるべき原子に対し化学的に不活性である限り、その他の形態のナノチューブを用いてもよい。例えば、Zettl, “Non-Carbon Nanotubes”, Adv. Mat. 8(5):443-445 (1996)に記載されているような、BC2NまたはBNナノチューブである。一般的なチャネルの意味において、ナノチューブが公知技術によって元々支持体内に形成され、支持体内に原子(例えば、炭素、シリコン、ホウ素)の原子配列を生じ、MWNT sp構造におけるように、規則正しく共有結合した、グラファイト様配列構造を規定してもよい。
【0020】
さらに、本発明のチャネルは、その他の原子を含むように共有結合的に修飾されたナノチューブであってもよい。本発明のチャネルは、例えば、2004年8月17日にオンラインで公開されたXiaら, J. Am. Chem. Soc.(http://dx.doi.org/10.1021/ja0446224)に記載されているような、白金ナノワイヤを含んでいてもよい。ナノチューブチャネルは、例えば、2002年1月10日に公開されたGaoらのUS PUB2002/0004135(言及することにより本明細書に包含される)に記載されているように、導電性の充填材で充填されていてもよい。ナノチューブチャネルは、2002年12月5日に公開されたDaiらのUS PUB2002/0179434(言及することにより本明細書に包含される)に記載されているように、2つの導電性エレメント間に電流を通すようになっていてもよく、また2003年4月10日に公開されたDaiらのUS PUB2003/0068432(言及することにより本明細書に包含される)に記載されているように、電気的接触を提供するためのシリコン支持体上に配置されてもよい。
【0021】
チャネルはまた支持体内に形成されたカーボンナノ構造であってもよい。すなわち、本明細書において開示されたナノチューブ、ナノワイヤ、ナノファイバーなどは支持体内に形成されていてもよい。US特許No.5,413,866(Bakerら)は、(i)約50m/g〜800m/gの表面積;(ii)約0.3.mu.ohm.multidot.m〜0.8.mu.ohm.multidot.mの電気抵抗;(iii)約5%〜約100%の結晶化度(crystallinity);(iv)約1.mu.m〜約100.mu.mの長さ;および(v)分岐(branched)、スパイラル(spiral)およびヘリカル(helical)からなる群より選択される形状を有することを特徴とするカーボンナノ構造を教示している。これらのカーボンナノ構造は、少なくとの1つのIB族金属および少なくとの1つのその他の金属を含む触媒を適切な耐火性支持体上に堆積し、次いで炭素含有ガスの熱分解温度から触媒の失活温度で、触媒処理された支持体を炭素含有ガスに供することにより調製されると教示されている。US特許No.5,458,784(同じくBakerら)は、US特許No.5,413,866のカーボンナノ構造を用いて液体流および気体流から混入物(contaminants)を取り除くことを教示し、またUS特許No.5,653,951および6,159,538(Rodriguezら)は、(i)結晶領域(crystalline regions);(ii)間隔が約0.335nm〜0.67nmである結晶領域内の結晶格子間間隔(interstices);および(iii)結晶格子間間隔を規定するナノ構造の表面(該表面は水素に対して化学吸着性を有する)を有することを特徴とする積層ナノ構造材料に水素を取り込ませる方法を開示および特許請求している。上述したすべての米国特許は言及することにより本明細書に包含される。
【0022】
電極は、チャネルの周辺において、ソース粒子のどちらか一方のサイドに動作可能につなげられているが、実施態様によっては、チャネルに物理的に付けられている必要はない。つまり、原子を動かすのに十分な電場がチャネルを囲む媒体(例えば、空気)中に発生していてもよく、チャネルは電極以外の手段によって加熱されてもよい。例示した実施態様において、1つの電極が実際にナノチューブの端にあり、もう一方の電極は微細に調節可能なマニピュレーターによってナノチューブの先端と接触するようになっている。
【実施例1】
【0023】
実施例1:物質輸送装置の製造
多層カーボンナノチューブ(MWNTs)のサンプルを最初に以下のようにして製造した:希薄雰囲気(rarified atmosphere)において、電気アークをグラファイト電極間につくった。得られたブール(boule)を断面にし、高いナノチューブ含有量を有するファイバーをツイーザー(tweezer)で抽出した。マニピュレーションステージに取り付けるために、個々のファイバーを、(導電性の)銀ペイントでPt/Irワイヤに接着した。
【0024】
次に、ex situでインジウム金属を、前記の通りに製造したMWNT上に熱蒸着させ(thermally evaporated)、ナノチューブを単離したインジウムナノ結晶で装飾した。これは以下の装置において以下の条件で行った:ナノチューブサンプルを熱蒸着器に取り付け、蒸着チャンバーの空気を抜いて2マイクロトール以下の圧力にした。次いで、99%より高い純度のインジウム金属をサンプル上に熱で蒸着させた。蒸着させたインジウム金属の量は25nmの均一な厚みに相当し、この厚みはin situ結晶厚モニターによって測定された。しかし、MWNT上のインジウムのぬれ性のため、インジウムフィルムの形態は連続被覆(continuous coverage)層というより個々の(discrete)粒子の形態であった。
【0025】
次いで、コートされたサンプルを、TEMステージのサンプル側へ固定した。
【実施例2】
【0026】
実施例2:電極の活性化および操作
ナノチューブアセンブリを、圧電駆動の(piezo-driven)ナノマニピュレーションステージを装備したJEOL−2010透過型電子顕微鏡(TEM)(JEOL-USA, Inc., Peabody MA)の中に準備した。TEMの内部で、高真空状態下、個々のナノチューブまたはバンドル(bundle)が、ナノマニピュレーター上に取り付けられた、新しくエッチングされたタングステンチップに近づき、チップとナノチューブの遊離端との間を物理的に接触させた。チップとサンプルホルダー間の印加電圧により、対象チューブを介した電気回路をつくり、熱エネルギーをジュール加熱を介してシステムに投入する。印加電圧を上げることによって、局所温度が、チューブを装飾しているインジウム粒子の融点を超えて容易に上昇する。電圧のさらなるマニピュレーションにより、これらのナノ粒子間で劇的な物質輸送が起こる。そして、これらは物質容器(mass reservoirs)として働く。輸送プロセスはリアルタイムTEMビデオイメージングを用いて記録された。
【0027】
0.1〜500μAのアンペア数が、一方の端ではタングステンチップを、もう一方の端では支持体(その上にMWNTが置かれている)を介した電気接続によって、ナノチューブに流された。
【0028】
図1A−Dは、輸送プロセスを表す連続ビデオ画面を示す。図1は、1分ごとに空間を空けた、4つのTEMビデオイメージから取ったもので、シングルMWNT上における左から右へのインジウム輸送を示すものである。チップ(アノード)は左へ視界からはずれており、サンプル電極(カソード)は右に視界からはずれている。測定された回路抵抗は〜49kオームで、そのほとんどはチップ−MWNT接点に集中していると思われる。シングルMWNTはインジウム粒子が存在する以外に汚れはなく、イメージの左から右へ広がっている。示された3分間の間には、〜40μAがMWNTを流れている。図1の第1画像は、約100nmずつ離れている3つの大きなインジウム粒子と、いくつかの小さい粒子を示す。濃いコントラストおよびほぼ円形の形状は粒子が溶融されていることを表している。実験が進むにつれ、左側の粒子が概して小さくなっていくのに対し、右側の粒子は大きくなっている。特に、真ん中の大きな粒子を追ってみると、第1画像と第2画像の間で拡大しているのがわかる(図1A、1B)。それに対し、その左側にもまだ粒子があるものの、その後縮小している(図1C、1D)。定性検査により、左側の物質放出(mass losses)と右側の物質増加(mass gain)との間のほとんど均一に近い相関関係が示唆される。
【0029】
図1に示したものと同様の輸送プロセスを、図2に示すように、より大きな長さのスケールで行うことができる。図2A−Cは、2ミクロンより長い距離のリバーシブルなインジウム輸送を示す、時系列の3つのTEMビデオイメージを表す。写されたカーボンナノチューブに適切な電流を印加することによって、インジウムを左(A)から右(B)へ動かし、また戻した(C)。矢印は該当粒子を指している。
【0030】
ここで、タングステンチップはイメージの一番左に見え、突起(protruding)(インジウム修飾されたMWNT)を有するサンプルブールは一番右に見える。チップ−ブールギャップ全域は3.3μmの長さのMWNTバンドルである。図2Aはチップ近辺の対象バンドル上の丸いインジウム粒子を示す。チップとサンプルホルダーとの間に1.8Vを印加すると、バンドルに〜50μAが流れ、その結果が図2Bに示されている:チップ近辺の粒子は消え、2μm以上離れて2つの新しいインジウム粒子が現れた。
【0031】
ナノチューブに沿って物質輸送を駆動するのは温度勾配ではないことが示された。図1、図2Aおよび図2Bでは、推定された高抵抗点(または「ホットスポット(hot spot)」)がイメージの左側にある。よってこれらの図では、物質は連続してより冷たい場所に向かって動いている。この仮説を試験するため、供給電流の向きを逆にした(ジュール加熱IRのおかげで温度勾配は同様に保てる)。図2Cは結果を示す:2つの新しい粒子が消失し、チップ近辺の元の粒子が再出現し、元のサイズ(図2Aに示されている)よりも大きくなっている。よって、熱勾配ではなく電圧勾配が物質輸送の方向を決めている。したがって、輸送されるべき原子は電圧勾配に応じて動き、勾配の変化に素早く反応する。温度は、輸送されるべき原子に一定の可動性(mobility)を与えるために、重要なだけである。しかしながら、輸送されるべき原子は、液状中にある必要はない。原子(およびそれによる粒子)は、チャネルに沿った電圧勾配の起電力によって動かされる。
【0032】
発明者自身の設計した自動イメージプロセスルーチンを、National Instrument’s Vision Builder Programを用いて、上記実験のビデオデータに適用し、抽出粒子エリアを抽出し、また粒子を球状とみなし、それによりそれらの質量を定量的に求めた(質量=(7g/cm)(4π/3)(面積/π)3/2)。これにより、全インジウム質量が輸送プロセス中、高い正確性(±5%)で保たれることが示された。実際、質量保存ができないのは、常に、十分に幅広い視界(すなわち、関係する全ての粒子が含まれるようなもの)を用いなかったことに起因する。
【0033】
物質輸送の速度および方向の両方が外部からの電気的駆動によるものであるため、物質分布の正確なコントロールが可能である。
【実施例3】
【0034】
実施例3:電圧に応じた物質移動(図3)
図3は、コントロール可能な、リバーシブルインジウム輸送を示すグラフである。パネル(A)は時間に応じたコントロール電圧(±1.3V)を示す。パネル(B)は時間に応じた粒子質量を示す。MWNTバンドル上では、粒子1(P1)が粒子2(P2)よりもチップに近い位置にある。
【0035】
パネルAは、約+1.3Vおよび−1.3Vの間の二乗関数として電圧を示している。周波数(frequency)は負電圧で約15秒、正電圧で約15秒である。実際の操作においては、電圧および時間は、逆方向の物質輸送の観察を容易にするため、適度な値で維持された。しかしながら、1メガヘルツまでの周波数(frequency)およびそれを超える周波数も、適切な解析と併せて可能である。より高い周波数では、粒子は素早くサイズを変えることができる。物質輸送の速度はチャネル上の粒子の拡散定数(diffusion constant)によって制限される。この定数は、温度を上げることによって(蒸発に対する質量損失が許容できなくなるまで)、または電場を増大することによって(高電圧または絶縁破壊が制限要素となるまで)上げることができる。
【0036】
2つのインジウム粒子を、下向きの三角P1および上向きの三角P2(黒)によって、図3Bに表す。粒子は約1〜10原子のオーダーである。粒子1の質量は約5fg〜約14fgに増加し、次いで、電圧の変化を追って、約1fgに下がる。すなわち、正電圧の下では、粒子2から材料を受け取るので、粒子は成長する。粒子P2は、粒子1と物質を交換するので、逆の効果を示す。
【0037】
よって、図3は、どのようにしてMWNTバンドル上の2つのインジウム粒子(P1およびP2)が、矩形波強制関数(square-wave forcing function)に応じて質量を交換するにつれ、交互に拡大したり縮小したりするのかを表している。インジウム輸送の方向は再びカソードに向かう。簡便性のため、矩形波コントロールを本明細書で示したが、物質移動速度は電圧を調整することによっていかなる所望のレベルにでも調節できる。ナノチューブは熱伝導性が高いため、電圧を0にすると物質輸送は急速に抑えられる。質量は、最終の、前もって定められていた粒子サイズになるまで、アトムバイアトム(atom by atom)の原理で送達することができる。これが、例えば、光学的、電気的、または機械的用途のためのナノスケール質量分布を調整するために重要なことであるのは明らかである。材料をその端に送達することにより、ナノチューブを「ナノはんだごて(nano soldering iron)」として用いることができる。
【0038】
特定の所定ポイントへの送達は、チャネル/ナノチューブにおいて、原子が輸送されるための核形成サイトとして働く所定ポイントに欠陥(defect)を備えることによって達成される。核形成サイトは、チャネルを加熱して欠陥構造(すなわち、原子的に滑らかな表面を乱すもの)へと変化させることによって、チャネルに組み込まれてもよい。化学的または電気的手段を用いて、チャネルに欠陥を組み込むこともできる。電子ビームによる照射を原子が送達されるべき特定のスポットにかけてもよい。化学物質、または酸化によって核生成サイトをつくってもよい。あるいは、材料をチャネルの所望の核生成サイトへ加えることもできる。粒子の核生成を開始するための適切な耐火材料は金属酸化物である。
【0039】
本発明者らは、本発明デバイスの操作の1つの理論に拘束されることを望んではいないが、1つの例示的なモデルによれば、インジウム原子がナノチューブ表面上の2次元ガスの構成要素として粒子間を移動することが示されている。所定の温度で、インジウム粒子はその付着点においてホストナノチューブ上の平衡インジウム表面濃度を保つ。ナノチューブ上で、金属原子は熱活性化された拡散プロセスにおいて移動するが、これは電場をかけることにより供給される有力な方向バイアスを伴うものである。それ故に、電場によって、所定のサイトにおいて熱力学的平衡点の上または下で、インジウムの表面濃度がシフトされ得、それにより、粒子がそのサイトにおいて拡大するか、または縮小するかが決まる。同様に、近隣の粒子(物質源およびシンク(sinks)として作動するもの)は、所定の位置における粒子がどうなるかについて影響を与える。
【実施例4】
【0040】
実施例4:TEMによって観察される粒子サイズ変化に応じた物質輸送
一定の出力(power)をかけたときの、容器から容器へ(reservoir-to-reservoir)の輸送を、図4(A)および4(B)に図解し、図4(C)に実際のデータのグラフとして示す。4(A)は、輸送プロセスのためのコンベヤーアナロジーを示す。3つの物質容器は温度勾配の順に、T>T>Tである。コンベヤーはスループット(throughput)J(質量/時間の単位で表したもの)で物質を運ぶ。J12はJ23より大きいため、輸送方向が図に示した通りである場合、第2容器は第1容器が空になるまで物質を蓄積する。輸送方向が逆転した場合、第2容器はその近隣の状況に関わらず物質を失う。4(B)は実験的セットアップの概略図である。ナノチューブ支持体上に分配された4つのインジウム粒子が、電流がタングステンチップから支持体を通って流れるにつれて拡大し、そして縮小している。左側には非常に細いタングステンチップがあり、TEMの内部でナノチューブと接触するように操作される。ナノチューブは右側、サンプルホルダーの方へ伸びている。図のように電圧が印加され、次いで粒子が左から右へ(カソードに向かって)移動する。グラフ4(C)は時間に応じた粒子質量を示す。実験的に測定された4つの粒子の質量は、凡例に示した記号で表されている。一定の質量移動速度および質量保存(mass conservation)を推測するモデルによって実線の曲線(solid curves)が作られる。
【0041】
図4Aは、本発明の物質輸送システムがアナロジーで示されることを理解するための、もう1つのモデルを表す。局所温度T(TおよびT)におけるインジウム粒子を表す物質容器は、物質コンベヤーJ12およびJ23によってつながっている。各々のコンベヤーは、電場および温度の関数である固定速度Jijで物質を移動する。ホットスポットにより近いコンベヤーは物質をより速く動かす。「ホットスポット」は高抵抗点である。この実施において、原子を動かすために必要な加熱と電場は、両方とも印加電圧によって供給される。サンプル電極とチップ電極との間の電圧が電場をつくる。チャネルを通る完全な電気回路があるため、この電圧によってもまた電流が流れる。回路における抵抗によってジュール加熱がつくられ、これは最も高い抵抗点において集まる。もし、例えば、ナノチューブと実験的に用いた移動可能なタングステンチップとの間の電気接触が弱い場合、高い抵抗が生じ、それにより大量の局部熱浪費がそこに生じる。よって用語「ホットスポット」が用いられる。ここで留意すべきは、放射線、マイクロ波、またはその他の抵抗性加熱といった、その他の加熱源を別の実施態様において供給することができるということである。そのような場合、物質輸送をもたらすには、チャネルに沿って電圧差をつくれば十分である。チャネルに電流を通す必要はない。よって、電気絶縁のチャネルを用いることが可能である。
【0042】
物質が温度勾配の下流へ移動する場合、ソースコンベヤーが物質を提供する方がドレーン(drain)コンベヤーが物質を取り除くよりも速いので、中間容器(intermediate reservoir)がいっぱいになる。上流容器(upstream reservoir)が空になると、中間容器は、ドレーンコンベヤーによって設定された速度で排出し始める。原子は粒子に交わることなく粒子を越えて拡散する可能性があるので、個々の容器において「バイパス」確率(bypass probability)も許容される(バイパスは図4Aには示されていない)。
【0043】
図4Bは上述したものと同様の実験を図解的に表したもので、物質コンベヤーモデルの有用性を実証するものである。チップエクステンションが小さなナノチューブバンドルに触れ、該バンドルは続いてインジウム粒子を4つの異なるポジションI−IVにおいて支持する。最初、インジウムは粒子Iに集まっている。サンプル電極に近い方の粒子がチップに近い方の粒子を使って大きくなるにつれて、チップ電圧はサンプルブールに対して1.7Vに上がり、物質が左から右へ移動し始める。電圧が上がった後、かけた出力は一貫して〜45μWである。このようにして動く粒子を撮ったビデオは、それらが記載したように縮小したり拡大したりするのを示している。
【0044】
図4Cを参照すると、質量対時間のグラフが、移動プロセスにおける所定の時間にナノチューブに沿って配列されたサンプル粒子(例えばインジウム)について示されている。実施例2に関連して記載された質量決定ルーチンを用いて、粒子I−IVについて図4Bに示したように質量対時間プロットを生成した。これも観察された結果に応じたものである。関連データを別々の記号で示し、図4Bの左から右に粒子I−IVに対応してIからIVとラベルする。データにおけるギャップは、TEMデータビデオが高倍率で撮られ、視野が大きすぎて1つまたは2つの粒子ポジションしか同時に含むことができないために、起こるものである。データセットは、その断片的な性質にも関わらず、かなり明瞭である。例えば、曲線は著しく直線的なセグメントで構成されている。これらの質量変化率の不変性(constancy)は、粒子半径によって異なる22表面エネルギーが、輸送プロセスを少なくともフェムトグラムレベル(1fgインジウム=5,000,000原子=30nm半径球)に至るまで行う際に、重要な役割を果たしていないということを示唆している。同様に、インジウム濃度は双方向(binary sense)における移動速度に影響を及ぼすのみである。すなわち、粒子のサイズではなく、粒子の存否がその近隣の成長に影響を与えている。よって、時間t=14秒付近における粒子IIの消失によって、粒子IIIの拡大率が正値から負値に変化するが、そのゆっくりした縮小には影響がない。
【0045】
質量コンベヤーモデルの予測と図4Cの実験データを比較するため、7つの非ゼロインプットパラメーターが必要とされる。これらのパラメーターのうち4つ(粒子Iの初期質量ならびに粒子I、IIおよびIIIの質量損失率(mass loss rate))は、データの適切なセクションへ直線を適合(fit)させることによって求められる。残りの3つのインプット(粒子II、IIIおよびIVのバイパス確率)は最小二乗最小化(least squares minimization)によって設定される。そして、曲線のその他の局面(例えば、成長率(growth rate)、軸切片(axis intercept)、およびターンオーバー点)は質量保存から直接得られる。図4Cにおける実線は、これらのインプットを伴う物質コンベヤーモデルの予測である。モデル曲線とデータとの間の一致はすばらしい。粒子IIIの質量曲線中、t=5秒において、およびt=14秒において劇的に見られるように、別の粒子が消える度に、粒子成長率におけるねじれ(kinks)が予測されている。さらに、この適合によって、粒子II、IIIおよびIVにおけるベストな値がそれぞれ11、14および15%であるため、このシステムにおける粒子をバイパスする確率が小さいことがわかった。
【0046】
コンベヤーアナロジーにより、さらに、印加電圧が逆転する際の、このマルチ容器システム(multi-reservoir system)の動きが予測される。電圧が逆転するとき、コンベヤーは物質を逆向きに動かす。しかし、温度勾配が変化しないため、チップに近い方のコンベヤーは高スループットを有し続ける。これにより、中間粒子は満たされるより速く取り除かれるので、大きくならない。同様に、チップに近い方の粒子はより遠くの粒子よりも速く消失する。ビデオS1においては、電圧が逆転したときに、これらの動きがこの通りに観察された。粒子IIIは粒子IVより先に消失し、物質は粒子Iの初期ポジションの近くに再凝縮する(re-condenses)。
【0047】
様々な支持体状況下で観察された、粒子成長の好ましい位置の存在は、興味深いことを提起している。粒子成長はシードインジウム(seed indium)を有する位置で最も再現性があるが、すべてのインジウムが使い果たされたところでも再生が起こる。このような核生成サイトは、酸化インジウムのような耐火片(refractory debris)か、またはナノチューブに固有の点欠陥(point defects)を主体としていてもよい。欠陥はこれらのアーク成長MWCNTsにおいて比較的まれであり、そのため、ナノチューブ表面上に連続した優先経路をつくる可能性は低い。もし、高品質MWCNTsのインターカレーションがその構造的完全性(structural integrity)の重大な劣化(serious degradation)を要するのであれば23、カーボンナノチューブを介したインジウムの層間輸送(interlayer transport)は除外してもよい。(ナノチューブのフープ応力(hoop stress)に対する抵抗により、グラファイトよりもインターカレートがはるかに難しくなる。) 輸送プロセスの間に、例えば、解析能力を有するTEMを用いて、ナノチューブに沿ったインジウム濃度を測定することは興味深いことである。実験的に用いられたナノマニピュレーションステージは分析用TEMのために作られたものではないので、本明細書中で説明された原理に基づいた代替デザインがそのような測定には必要となるであろう。
【0048】
モデルの成功にもかかわらず、駆動メカニズムの正確な性質については疑問が残る。本明細書において示したデータは、表面エネルギー(オストワルド熟成(Ostwald ripening)24を起こすもの)、熱勾配(サーモマイグレーション(thermomigration)を駆動するもの25)は電磁力にとってさして重要ではないことを立証している。様々な著者がカーボンナノチューブにおいて外部種(external species)と電流とを合わせようと考えてきた26−28。電場を最も見込みのある候補ドライバーとして特定することによって、エレクトロマイグレーションの公知の物理学と有用な比較ができるようになった。エレクトロマイグレーションパラダイムにおいて、インジウム原子から支持体ナノチューブへの電子移動のため、観察された輸送方向になる。よって、電場からの「直接(direct)」力(force)が、電荷キャリアとの運動量交換によりつくられる「回転(wind)」力よりも優先される。インジウムはバルク中でアノードへエレクトロマイグレーションする(electromigrates)一方で、シリコン表面上でカソードに移動する29,30。これらはおそらく類似(analogous)している。本明細書の教示によれば、ナノチューブに沿った電磁場による原子電荷の移動方向は、ルーチン実験、すなわち物質輸送の方向を観察することにより決定され得る。カソードへ動く材料があれば、アノードへ動く材料もある。移動方向はさらに、ナノチューブまたはチャネルが何からできているかによって決まる。エレクトロマイグレーションの理論では、これは電荷付与(charge donation)の方向によって説明される。すなわち、もし輸送されるべき原子が1つの電子をチャネルに与えた場合、(正に帯電しているので)カソードに向けて動く。同様に、1つの(または2以上か、あるいは1つの一部の)電子を受け取った場合、負帯電されないので、アノードへ動く。
【0049】
いずれの場合でも、適切な電極/対電極 カソード/アノードの組み合わせを選択することにより、所望の方向へ材料を動かすことができる。
【0050】
本実施例、方法、手順、特定の化合物および分子は、本発明を例示および図解することを意図したものであり、添付の請求の範囲によって定義される、本発明の範疇を制限するものでは決してない。本明細書において言及したあらゆる特許または公開公報は、該特許が関連する技術分野において通常の知識を有する者のレベルを示すもので、言及することにより、それらは言及により具体的に1つ1つ包含されているのと同程度に、言及された方法または材料を説明し、実施可能にするために、本明細書に包含される。
【0051】
参照
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【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1A−Dは、多層カーボンナノチューブ上の個々の点におけるインジウム球を示す、顕微鏡写真からの連続ビデオ画面である。
【図2】図2A−Cは、タングステンチップに触れている多層カーボンナノチューブ上のインジウム球を示す、顕微鏡写真からの連続ビデオ画面である。
【図3】図3は、電圧および物質輸送を示すグラフである。
【図4】図4Aは、本発明の物質輸送のコンベヤーアナロジーの概略図である。図4Bは、顕微鏡によって示された構造の略図である。図4Cは、図4Bに示した構造の、質量対時間のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース粒子(source particle)から原子を送達する物質輸送(mass transport)デバイスであって、
(a)原子的に滑らかな(atomically smooth)表面を有するチャネル;
(b)チャネルの表面にその長さに沿う位置で固定された少なくとも1つのソース粒子;および
(c)ソース粒子の一方のサイド上でチャネルに動作可能につなげられた電極、およびソース粒子のもう一方のサイド上でチャネルに動作可能につなげられた対電極
を含み、
該電極はコントロール可能な電圧源に取り付けられるように適合しており;
それによって、該デバイスは印加電圧に応じて、一方の電極からもう一方の電極へ、チャネルに沿って、ソース粒子から原子を輸送するものである、デバイス。
【請求項2】
チャネルが多層カーボンナノチューブ(multiwalled carbon nanotube)である、請求項1に記載の物質輸送デバイス。
【請求項3】
多層カーボンナノチューブがアーク放電(arc discharge)法によって製造される、請求項2に記載の物質輸送デバイス。
【請求項4】
チャネルが支持体中に形成されたカーボンナノチューブである、請求項1に記載の物質輸送デバイス。
【請求項5】
チャネルが、長さ50〜5000ナノメーターおよび直径5nm〜50nmのナノチューブである、請求項1に記載の物質輸送デバイス。
【請求項6】
ナノチューブが約20〜1000マイクロアンペアの電流を運ぶ、請求項5に記載の物質輸送デバイス。
【請求項7】
ソース粒子が溶融金属である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
ソース粒子が、インジウム、タリウム、ガリウム、スズ、チタン、鉛、水銀、金、銀、アルミニウム、白金または銅を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
粒子が、アミノ酸、ペプチド、または炭水化物の分子の形態で原子を放出する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
ソース粒子から原子を送達する物質輸送デバイスであって、
(a)原子的に滑らかな表面を有するナノチューブチャネル;
(b)チャネルの表面にその長さに沿う位置で固定された少なくとも1つの金属ソース粒子;および
(c)該ソース粒子に作用する電場を提供する手段
を含み、
それにより、該デバイスは電場に応じて、チャネルに沿って、ソース粒子から原子を輸送するものである、デバイス。
【請求項11】
原子を伝導するためのチャネル上のロケーションへ帯電可能な(chargeable)原子を送達する方法であって、該チャネルが電圧勾配をチャネルに沿って作るためのカソードおよびアノードに、動作可能につなげられたものであり、
(a)原子的に滑らかな表面を有するチャネルを提供すること;
(b)10マイクロメーターより小さい少なくとも1つの帯電可能な粒子をチャネルの表面に適用すること;および
(c)チャネルの長さに沿って電圧勾配を提供すること、
を含む方法。
【請求項12】
チャネルが、支持体中に形成されたカーボンナノ構造または、ナノワイヤ、単層(single walled)カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ(MWNT)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに、アーク放電法によってMWNTを製造する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
さらに、顕微鏡マニピュレーションステージ(microscopic manipulation stage)の先端に電荷をかけて前記アノードエンド(anode end)を提供する工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
チャネルが、50〜5000ナノメーターの長さおよび5nm〜50nmの直径を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ナノチューブに20〜1000マイクロアンペアの電流をもたらす電圧を提供する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
粒子が、インジウム、タリウム、ガリウム、スズ、チタン、鉛、水銀、金、銀、アルミニウム、白金または銅を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
粒子が、アミノ酸、ペプチド、または炭水化物の分子の形態で原子を放出する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
粒子がナノチューブのカソードエンドに向けて原子を放出する、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
さらにナノチューブを加熱する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
ナノチューブ上の原子が、アノードがカソードにおよびカソードがアノードになるように電圧を変えることによって双方向に動かされ、それによって、粒子が電圧の極性変化によって縮小または拡大し、異なる方向において、ナノチューブの反対側へと向かう物質輸送が可能となる、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−532324(P2007−532324A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505093(P2007−505093)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/009489
【国際公開番号】WO2005/092053
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(304056899)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (9)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【住所又は居所原語表記】1111 Franklin Street, Oakland, CA 94607−5200, United States of America
【Fターム(参考)】