説明

ナノチューブおよびフラーレンを含むナノスケール物品の官能基化

本発明は、概して、炭素含有分子を含む組成物、および関連する方法を提供する。場合によって、本発明は、分子の非平面状部分を含む、分子の芳香族部分に結合した官能基を有する芳香族分子に関する。本発明の方法は、様々な官能基を炭素含有分子に導入することを可能にし得る。場合によって、本発明の方法は、比較的穏和な反応条件、例えば、比較的低い温度、低い圧力、および/または強酸または強塩基の不在下など、を用いて実施することができる。本発明は、光起電デバイス、センサー、電極(例えば、電気触媒作用のため)などの様々な用途において有用な分子の合成に対して、容易なモジュール式アプローチを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換された炭素含有分子を含む組成物、および関連する方法を提供する。
【0002】
関連出願
この出願は、米国特許法§119(e)の下、2007年3月7日に出願された、同時係属の米国仮出願第60/905,495号(この内容は、参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
カーボンナノチューブおよびフラーレンなどの非平面状炭素含有分子は、その独特な機械特性および電子特性、並びにナノテクノロジーにおける応用の可能性から、非常に注目を集めている。通常、このような分子は、グラファイト蒸発法およびアーク蒸発法など、高温を用いる方法によって得られる。さらに、これらの分子は、一般的に、低い溶解性を有している。しばしば、これらの分子の特性を最適化するために、カーボンナノチューブを共有結合性官能基化することが所望される場合がある。しかしながら、この目的のためには、カーボンナノチューブの表面へのカルベン、ナイトレン、またはジアゾニウム塩の付加など、ほんのいくつかの方法が開発されているだけである。さらに、カーボンナノチューブの官能基化は、アゾメチンイリドの1,3−双極付加環化を介して達成することもできる。しかしながら、公知の方法の多くは、高温、長い反応時間、および/または強塩基もしくは強酸を必要とする。
【0004】
したがって、改良された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記式を有する化合物を含む組成物に関する。
【0006】
【化1】

式中、Aは、非平面状芳香族部分を含む炭素含有分子であり、R、R、およびRは、同一かまたは異なっていてもよく、かつ、=O、ヒドロキシル、ハロゲン化物、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アリール、またはヘテロアリールであり、必要に応じて置換されていてもよく、
【0007】
【化2】

は、単結合もしくは二重結合である。
【0008】
さらに、本発明は下記式を有する化合物を含む組成物に関する。
【0009】
【化3】

式中、Aは、非平面状芳香族部分を含む炭素含有分子であり、R、R、およびRは、同一かまたは異なっていてもよく、それぞれが原子または化学基であり、ただし、R、R、およびRの少なくとも1つは、第二の原子もしくは化学基で置き換えることができるか、あるいはR、R、またはR以外の当該化合物の残りに対して非反応性である条件下で第二の原子もしくは化学基への結合に関与することができ、
【0010】
【化4】

は、単結合もしくは二重結合である。
【0011】
さらに本発明は、芳香族環の縮合網様構造が終結している境界を必要に応じて有する縮合網様構造と、当該網様構造の少なくとも2つの芳香族環の環員である2個の原子を介して当該網様構造に縮合している5員環の炭素環を含む官能基とを含む組成物に関する。
【0012】
さらに本発明は、アルキン、非平面状芳香族部分を含む炭素含有分子、および5.0より大きいpKを有する求核試薬であって5.0より大きいpKを有する共役酸を有する求核試薬を反応させて、置換された炭素含有分子を形成する工程を包含する、置換された炭素含有分子の合成方法に関する。
【0013】
さらに本発明は、アルキン、炭素含有分子、および求核試薬を100℃未満の温度かつ10,000気圧未満の圧力において反応させて、芳香族環の縮合網様構造と、少なくとも4個の環原子を有する環を含みかつ当該網様構造の少なくとも2つの芳香族環の環原子である2個の原子を介して当該網様構造に縮合している官能基とを含む置換された炭素含有分子である生成物を形成する工程を包含する、置換された炭素含有分子の合成方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の1つの実施形態による、官能基化された炭素含有分子の合成を示す。
【図2】本発明の1つの実施形態による、官能基化されたフラーレン分子の合成を示す。
【図3】本発明の1つの実施形態による、官能基化されたカーボンナノチューブの合成を示す。
【図4】本発明の1つの実施形態による、リンカーによって結合された2つの官能基を含む、多官能基化されたカーボンナノチューブの合成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の他の態様、実施形態、および特徴は、添付の図と関連して考察することにより以下の詳細な記述から明らかとなるであろう。添付の図は模式図であり、寸法通りには描かれているとは限らない。明瞭にするために、当業者に本発明を理解させるために図示する必要がない場合は、全ての図面で全ての要素が標識されているとは限らず、本発明の各々の実施形態の全ての要素が示されているとは限らない。参照により本明細書に援用される全ての特許出願および特許は、参照によりその内容全てが本明細書に援用されるものとする。その内容が本明細書の内容と相容れない場合には、定義を含む本明細書が優先する。
【0016】
詳細な説明
本発明は、概して、炭素含有分子を含む組成物、および関連する方法を提供する。
【0017】
場合によって、本発明は、分子の非平面状部分を含む、分子の芳香族部分に結合している官能基を有する芳香族分子、並びにそのような分子を合成する方法に関する。本発明の方法は、有利に、炭素含有分子を含む芳香族分子に様々な官能基を導入することを可能にし得る。場合によって、本発明の方法は、例えば、比較的低い温度、低い圧力、および/または強酸または強塩基の不在下といった比較的穏和な反応条件を用いて実施することができる。本発明は、光起電デバイス、センサー、バッテリー、電極(例えば、電気触媒作用のため)などの様々な用途において有用であり得る分子を合成するための、容易なモジュール式アプローチを提供する。
【0018】
いくつかの実施形態において、本発明は、置換もしくは官能基化された炭素含有分子を合成する方法を提供する。本明細書で使用される場合、「置換された」および「官能基化された」なる用語は、当技術分野におけるその通常の意味を与えるものであり、新たな官能基(例えば、原子または化学基)が結合するように変更された(例えば、反応させた)種を意味する。場合によって、当該官能基は、炭素含有分子の少なくとも1個の原子への結合を形成してもよい。場合によって、当該官能基は、炭素含有原子に既に結合している別の基、例えば水素原子など、と置き換わってもよい。場合によって、当該官能基(例えば、環)は、炭素含有分子の少なくとも2個の原子を介して当該炭素含有分子に縮合してもよい。本発明の方法は、様々な原子もしくは化学基を用いた、炭素含有分子の官能基化を可能にし得る。場合よって、本発明は、複数の基による官能基化、および/または炭素含有分子上の選択された位置での官能基化を可能にし得る。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態は、分子の芳香族部分に縮合した官能基を有する炭素含有分子の合成を包含し得る。当該官能基は、当該炭素含有分子および/または官能基にさらなる基を結合させるためにさらに反応し得る原子もしくは基を含み得る。すなわち、当該官能基は、炭素含有分子に結合させることができる様々なさらなる官能基のための前駆体として機能し得る。これにより、安定性、溶解性、混合性、生物学的適合性、光学特性、電子特性、結合特性、表面親和性などの炭素含有分子の様々な特性を簡単に調整することができる。
【0020】
本明細書に記載されているように、炭素含有分子は、通常、芳香族環などの環の縮合網様構造を含み得る。いくつかの実施形態において、当該炭素含有分子は、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、もしくは、場合によって少なくとも50個の芳香族環を含む。当該炭素含有分子は、実質的に平面状または実質的に非平面状であってもよく、あるいは、平面状部分または非平面状部分を含んでいてもよい。当該炭素含有分子は、縮合網様構造が終結している境界を含んでいてもよい。例えば、グラファイトのシートは、縮合網様構造が終結している境界を含む平面状炭素含有分子であり、一方、フラーレンはそのような境界を有さない非平面状炭素含有分子である。場合によって、当該境界は、水素原子で置換されていてもよい。場合によって、当該境界は、酸素原子を含む基(例えば、ヒドロキシル基)によって置換されていてもよい。他の場合において、当該境界は、本明細書に記載されているように置換されていてもよい。「縮合網様構造」なる用語は、例えば、2つのフェニル基が単結合によって結合しているが縮合はしていないビフェニル基などは含み得ない。場合によって、当該縮合網様構造は、実質的に炭素原子を含んでいてもよい。場合によって、当該縮合網様構造は、炭素原子およびヘテロ原子を含んでいてもよい。炭素含有分子のいくつかの例としては、グラファイト、カーボンナノチューブ(例えば、単層(single−walled)ナノチューブ、多層(multi−walled)ナノチューブなど)、およびフラーレンが挙げられる。
【0021】
当該炭素含有分子は、非平面状部分、例えば、凸表面および陥凹表面(このような場合、「表面」は、多環構造を特徴付ける分子もしくはシートの片面を定義する)を有する曲がった部分など、を含んでいてもよい。非平面状部分を含む炭素含有分子の例としては、フラーレン、カーボンナノチューブ、およびそれらの断片、例えばコランニュレンなど、が挙げられる。場合によって、当該非平面状芳香族部分は、sp2.xの混成を有する炭素原子を含んでいてもよく、この場合、xは1〜9であり、すなわち、当該炭素原子は、sp−とsp−との間の混成を有していてもよい。この場合、当該混成は、当業者に理解されているように、分子の非平面性の特徴である。これらの実施形態において、xはさらに、2〜8、3〜7、または4〜6であってもよい。通常、平面状芳香族基および多環式芳香族基(例えば、フェニル、ナフチルなど)は、sp混成を有する炭素原子を含み得るが、一方、非平面状基(例えば、アルキル基など)は、sp混成を有する炭素原子を含み得る。非平面状芳香族基、例えば炭素含有分子の非平面状部分など、における炭素原子では、sp混成した炭素原子は、炭素含有分子の非平面状部分または曲がった部分を形成するために歪められ(例えば、曲げられ)ている場合がある。理論に束縛されることは望まないが、この歪みは、角歪みの原因となり得、炭素原子の混成を変え得る。その結果、歪んだ炭素原子の反応性が高められ得る。
【0022】
場合によって、当該炭素含有分子はフラーレンである。本明細書で使用される場合、「フラーレン」なる用語は、当技術分野におけるその通常の意味を与えるものであり、実質的に球体状の、一般的に5員環および/または6員環の芳香族環による縮合網様構造を含む分子を意味する。例えば、C60は、サッカーボールの形状を模したフラーレンである。用語フラーレンは、さらに、楕円体などの球形に関連する形状を有する分子も含み得る。カーボンナノチューブが6員環以外の環を含み得ることは理解されるべきである。いくつかの実施形態において、フラーレンは、7員環もしくはそれ以上の環員の環を含み得る。フラーレンとしては、C36、C50、C60、C70、C76、C84などが挙げられる。
【0023】
場合によって、当該炭素含有分子はカーボンナノチューブである。本明細書で使用される場合、「カーボンナノチューブ」なる用語は、当技術分野におけるその通常の意味を与えるものであり、6員環の芳香族環による縮合網様構造を含む実質的に筒状の分子を意味する。場合によって、カーボンナノチューブは、継ぎ目のない円筒構造状に巻かれたグラファイトのシートに類似している場合がある。当然のことながら、カーボンナノチューブが、さらに6員環以外の環も含み得る。通常、カーボンナノチューブの少なくとも1つの端部は塞がれていてもよく、すなわち、曲がった芳香族基または非平面状芳香族基によって塞がれていてもよい。カーボンナノチューブは、ナノメートルオーダーの直径と、ミリメートルオーダーの長さとを有し得、そのために、100、1000、10,000、またはそれより大きいアスペクト比を有し得る。用語「カーボンナノチューブ」は、単層ナノチューブ(SWCNT)、多層ナノチューブ(MWCNT)(例えば、同心状のカーボンナノチューブなど)、それらの無機誘導体などを含む。いくつかの実施形態において、カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブである。場合によって、カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブ(例えば、二層カーボンナノチューブ)である。
【0024】
本発明は、炭素含有分子およびそれに結合した官能基を含む組成物を提供する。例えば、当該組成物は、芳香族環の縮合網様構造が終結している境界を必要に応じて含む当該縮合網様構造と、当該網様構造の少なくとも2つの芳香族環の環原子である2つの原子を介して当該網様構造に縮合している5員環である炭素環を含む官能基とを含む。いくつかの実施形態において、本発明は、下記式を有する化合物を含む組成物を提供する。
【0025】
【化5】

式中、Aは、非平面状芳香族部分を含む炭素含有分子であり、R、R、およびRは、同一かまたは異なっていてもよく、それぞれが原子または化学基であり、
【0026】
【化6】

は、単結合または二重結合である。場合によって、R、R、およびRは、=O、ヒドロキシ、ハロゲン化物、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アリール、またはヘテロアリールであり、必要に応じて置換されていてもよい。上記の構造において、5員環である炭素環は、当該構造が、下記基を含むように、Aの2つの原子を介してAに縮合していてもよい。
【0027】
【化7】

式中、
【0028】
【化8】

は、非平面状芳香族部分を含む。当該2つの原子は、縮合網様構造の少なくとも2つの芳香族環の環原子であってもよい。いくつかの実施形態において、当該化合物は、下記構造を含んでいてもよい。
【0029】
【化9】

式中、Rはエステルであり、Rは脱離基である。Rは、酸塩化物、カルボン酸もしくはその塩、エステル、アミド、またはこれらの置換誘導体であってもよい。
いくつかの実施形態において、Rは、下記構造を有する。
【0030】
【化10】

式中、Xは、H、OH、ハロゲン化物、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはこれらの塩であり、必要に応じて置換されていてもよく、Rは脱離基であり、Rは、=O、=S、または=NRである。Rは、酸塩化物、カルボン酸もしくはその塩、エステル、アミド、他のカルボニル基、またはこれらの置換誘導体であり得る。本明細書で使用される場合、「脱離基」は、有機合成化学の技術分野におけるその通常の意味を与えるものであり、求核試薬によって置き換えることのできる原子もしくは基を意味する。好適な脱離基の例としては、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、およびヨウ化物など)、アルカンスルホニルオキシ、アレーンスルホニルオキシ、アルキル−カルボニルオキシ(例えば、アセトキシ)、アリールカルボニルオキシ、メシルオキシ、トシルオキシ、トリフルオロメタン−スルホニルオキシ、アリールオキシ、メトキシ、N,O−ジメチルヒドロキシルアミノ、ピキシルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。場合によって、当該脱離基は、電子吸引基で置換されたアリールオキシ基である(例えば、2,−ニトロフェノキシ、2,4−ジニロトフェノキシなど)。脱離基のいくつかの具体例としては、下記構造が挙げられる。
【0031】
【化11】

1つの実施形態において、当該化合物は、下記構造を有していてもよい。
【0032】
【化12】

いくつかの実施形態において、当該化合物は、下記構造を有していてもよい。
【0033】
【化13】

式中、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはこれらの塩であり、必要に応じて置換されていてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、R、R、および/またはRは、結合して環を形成していてもよい。例えば、R、R、およびRの任意の2つが結合して環を形成していてもよい。当該環は、任意の数の環原子を含んでいてもよく、炭素原子、ヘテロ原子、金属などを含んでいてもよい。さらに、当該環は、本明細書に記載されているように、必要に応じて置換されていてもよい。いくつかの実施形態において、RおよびRは、結合して少なくとも6個の環原子を有する環を形成していてもよい。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態は、炭素含有分子に縮合した少なくとも2つ以上の官能基を包含し得る。場合によって、当該2つ以上の官能基は、リンカーによって結合されていてもよい。炭素含有分子は、下記式を有する少なくとも2つの基を含んでいてもよい。
【0036】
【化14】

式中、各官能基のRは、リンカーによって結合している。当該リンカーは、アルキル基もしくはヘテロアルキル基などの柔軟なリンカーであってもよく、あるいは当該リンカーは、アリール基、ヘテロアリール基、アルケン基、ヘテロアルケン基、アルキン基、もしくはヘテロアルキン基などの剛直なリンカーであってもよい。例えば、当該リンカーは、フェニル、ピリジニル、ピロリル、チオフェンイル、フラニル、ビフェニル、またはトリプチセニル、酒石酸エステル、アセチレン、アルケン、またはこれらの組み合わせなどであってもよい。場合によって、当該リンカーは、官能基に共有結合していてもよい。場合によって、当該リンカーは、官能基に非共有結合していてもよい。非共有結合の例としては、イオン結合、水素結合(例えば、ヒドロキシル基、アミン基、カルボキシル基、チオール基、および/または同様の官能基の間)、配位結合(例えば、金属イオンと一座配位もしくは多座配位の配位子との間の錯体形成またはキレート形成)などが挙げられる。さらに、非共有結合は、ファン・デル・ワールス相互作用を含み得る。図4において例示的な実施形態によって示されているように、化合物70は、2つの5員環を含むカーボンナノチューブであり、それぞれの5員環はカーボンナノチューブの異なる非平面状部分に縮合しており、当該2つの環がリンカーによって結合されている。
【0037】
本発明は、さらに、官能基化または置換された炭素含有分子を合成する方法も提供する。いくつかの実施形態は、アルキン、炭素含有分子、および求核試薬を反応させて、置換された炭素含有分子を生成する工程を包含し得る。図1において例示的な実施形態によって示されているように、アルキン、炭素含有分子、および求核試薬が反応して、お互いに共有結合している各成分(例えば、アルキン、炭素含有分子、および求核試薬)の少なくとも一部を含む生成物を形成し得る。本明細書で使用される場合、「反応する」もしくは「反応すること」なる用語は、安定で単離可能な化合物を生成する、2つ以上の成分の間の結合の形成を意味する。例えば、第一の成分と第二の成分とが反応して、共有結合で結合された第一の成分および第二の成分を含む1つの反応生成物を形成してもよい。すなわち、「反応すること」なる用語は、溶媒、触媒、塩基、配位子、または当該成分(単数または複数)による反応の発生を促進させるために役立つ他の材料による相互作用を意味するものではない。「安定で単離可能な化合物」は、単離された反応生成物を意味し、不安定な中間体もしくは遷移状態を意味するものではない。アルキン(例えば、求電子体)および求核試薬を変えることによって、様々な官能基を炭素含有分子に導入することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、当該炭素含有分子は、アルキンおよび求核試薬との反応によって当該炭素含有分子の非平面状芳香族部分に結合した官能基が形成されるような非平面状芳香族部分を含み得る。例えば、当該官能基は、非平面状芳香族部分の2つの原子を介して炭素含有分子に縮合している環を含んでいてもよい。当該環は、炭素原子、あるいは炭素原子とヘテロ原子との組み合わせを含み得る。場合によって、当該環は、少なくとも4個の環原子、少なくとも5個の環原子、少なくとも6個の環原子、またはそれ以上の環原子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、5員環が炭素含有分子に縮合していてもよい。
【0039】
場合によって、2つ以上の官能基もしくはその前駆体(例えば、アルキン、求核試薬)は、本明細書に記載されているように、リンカーによって結合されていてもよい。例えば、本方法は、炭素含有分子に縮合し、かつリンカーによって結合されている少なくとも2つの官能基の形成を包含し得る。当該リンカーは、例えば、酒石酸エステル、芳香族基、または本明細書に記載されているような他の基であってもよい。場合によって、当該炭素含有分子は、炭素含有分子上の1つ以上の位置で官能基化されていてもよく、この場合、適切なサイズおよび/または長さのリンカーを選択することによって、当該位置の相対的な位置関係を選択することができる。例えば、お互いに相対的に近接している2つの官能基を形成するには、例えば、炭素含有分子上の官能基化される位置の間の所望する距離に対応した分子サイズおよび/または長さを有するリンカーによって結合された2つのアルキン基を有する試薬を選択することによって達成することができる。場合によって、炭素含有分子に結合した場合に官能基の間の十分な距離を確立し維持するのに十分な剛直性もしくは立体障害特性を有するような、剛直なリンカーを利用してもよい。
【0040】
場合によって、当該リンカーは、末端に官能基もしくは官能基群またはそれらの前駆体(例えば、アルケン、求核試薬)が結合している鎖、例えばアルキル鎖またはヘテロアルキル鎖など、を含んでいてもよい。一連の実施形態において、当該剛直なリンカーは、アリール基、ヘテロアリール基、アルケン基、ヘテロアルケン基、アルキン基、またはヘテロアルキン基を含んでいてもよい。そのような剛直なリンカーを使用する場合、それらは長さを有し得るか、あるいは、少なくとも以下の分子の長さと同程度だけ、官能基もしくは官能基前駆体を有効に分離することができる。
【0041】
【化15】

式中、xは少なくとも2であり、別の実施形態においては、3、4、5、6、7、またはそれ以上である。上記の構造は、使用することのできるリンカーの種類に関する限定として用いられるのではなく、単に、当業者によって理解されるように分子目盛りで測定される場合に、単にリンカーによって提供される分離の長さの比較基準として用いられる。本発明のこの態様において、分子の剛直でない部分によって2つの官能基がリンカーの剛直な部分の距離よりも近くに近接した状態となり得る場合であっても、リンカーの剛直な部分と剛直でない部分との組み合わせが、少なくとも上記の距離(比較基準として)だけ2つの官能基を分離する限りにおいて、リンカーは、1つ以上の剛直な部分と1つ以上の剛直でない部分とを含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「剛直な」部分は、分子の一部を意味し、その末端は、少なくとも1つの結合を壊すことなしには変化し得ない距離(通常の分子目盛りの外寸は温度などで変化する)によって分離される。例えば、sp−混成した炭素原子を含む分子の一部(例えば、アルキル鎖など)は剛直ではないが、一方で、sp−混成もしくはsp−混成した炭素原子(例えば、アリール基、アルキニル基)は、比較的高い剛直性を付与するであろう。当業者であれば、このような専門用語を理解するであろう。
【0042】
場合によって、当該炭素含有分子は、さらなる基を分子に導入するためにさらに反応することのできる原子または基を含んでいてもよい。炭素含有分子への第一の官能基の導入により、第一の官能基のさらなる官能基化が可能となり得る。例えば、本方法は、炭素含有分子およびアルキンを第一の求核試薬と反応させて、置換された炭素含有分子を形成する工程を包含し得る。続いて、当該置換された炭素含有分子と、第二の求核試薬または他の種(例えば、官能基前駆体など)とを反応させることにより、例えば共有結合などを介して他の官能基を当該炭素含有分子に付加させることが可能となり得る。
【0043】
例えば、R、R、およびRの少なくとも1つは、第二の原子もしくは化学基によって置き換えることができるか、あるいは、第二の原子もしくは化学基への接続(例えば、結合)に関与することができる。本明細書で使用される場合、「置き換える」なる用語は、第一の官能基を、第二の官能基によって少なくとも部分的に置き換える化学反応、例えば、S2反応など、を意味し得る。当該原子もしくは基は、別の原子もしくは基と結合(例えば、共有結合、非共有結合)を形成することができる反応性基を含んでいてもよい。例えば、置換された炭素含有分子は、求核試薬との反応によって置き換えることができるような脱離基を含んでいてもよい。あるいは、置換された炭素含有分子は、求電子体に電子を供与して結合を形成することができる求核試薬を含んでいてもよい。場合によって、置換された炭素含有分子は、ラジカル反応、ペリ環状反応(例えば、ディールス・アルダー反応、環付加など)、金属触媒反応(例えば、メタセシス反応)、酸化反応、還元反応、または当技術分野で公知の任意の他の化学反応を受ける基を含んでいてもよい。当該官能基化(例えば、置換、付加など)は、当該化合物(例えば、炭素含有分子など)のR、R、またはR以外の残基に対して不反応性であり得るような条件下で実施することができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、R、R、またはRは、架橋基、すなわち、他の基と結合を形成することができる基、を含んでいてもよい。例えば、架橋基は、炭素含有分子とポリマーとの間の結合(例えば、炭素含有分子上の官能基を介して)、または2つのポリマーの間の結合を形成することができる。当該架橋基は、例えば、酸塩化物、アルケン、アルキン、ハロゲン化物、金属とキレート形成することができる基などを含んでいてもよく、並びに当技術分野において公知の方法を用いて反応させることができる。場合によって、R、R、またはRは、メタセシス反応を介した反応によって他の分子もしくは基の末端アルケンへの結合を形成することができる末端アルケンを含んでいてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明は、第一の非プロトン性求核試薬、アルキン、および炭素含有分子の間の反応を介した、荷電している中間体の形成を包含し得る。荷電している中間体は、安定で単離可能な化合物であり得るが、場合によっては、当該中間体は単離できない場合もある。当該荷電している中間体は、さらに、第二のプロトン性求核試薬、例えばアルコール、アミン、チオール、エナミン、エノラートなど、と反応してもよい。場合によって、荷電している中間体を生成するために、第一の非プロトン性求核試薬を触媒として使用してもよい。図2に示した例示的な実施形態では、C60を、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP:N,N−dimethylaminopyridine)(例えば、第一の求核試薬)およびジメチルアセチレン−ジカルボキシレート(DMAD:dimethyl acetylene−dicarboxylate)(例えば、アルキン)と反応させて、置換された分子10を得て、この置換された分子10を、さらに、例えばアルコールもしくは他の種(例えば、第二の求核試薬)と反応させて、置換された分子20を形成ことができる。別の例示的な実施形態では、図3に示してあるように、カーボンナノチューブ40を、第一の求核試薬(例えば、「Nuc」)およびアルキンと反応させて、荷電している分子50を得て、この分子50を、さらに、第二の求核試薬(例えば、「Nuc」)と反応させて、置換されたカーボンナノチューブ60を得ることができる。
【0046】
本発明の方法は、本明細書に記載されているような生成物を形成するために、既知の方法と比較して比較的穏和な条件を用いて、有利に実施することができる。例えば、アルキン、求核試薬、および炭素含有分子の間の反応は、100℃未満、80℃未満、60℃未満、40℃未満の温度で、あるいは、場合によっては30℃未満の温度で実施することができる。いくつかの実施形態において、当該反応は、室温で実施することができる。さらに、当該反応は、10,000気圧未満、5,000気圧未満、1,000気圧未満、500気圧未満、100気圧未満、50気圧未満、または10気圧未満の圧力において実施してもよい。いくつかの実施形態において、当該反応は、約1気圧の圧力において実施することができる。
【0047】
場合によって、本発明の方法は、アルキン、求核試薬、および/または炭素含有分子の反応性を高めるためのさらなる試薬を必要とせずに実施することができる。例えば、既知の方法では、炭素含有分子を官能基化するために、強酸(例えば、硝酸)もしくは強塩基(例えば、リチウムジイソプロピルアミン)の使用を必要とする場合がある。本発明の方法は、強酸もしくは強塩基の不在下において実施することができる。当業者であれば、強酸および強塩基を特定することができるであろう。強酸の例としては、硝酸、硫酸、塩酸、臭化水素酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。強塩基の例としては、リチウムジイソプロピルアミン(LDA:lithium diisopropyl amine)、アルキルリチウム(例えば、ブチルリチウム)、ナトリウムアミド、金属水酸化物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書で使用される場合、強酸または強塩基は、反応により生成物(例えば、置換された炭素含有分子)の少なくとも一部を形成するような、反応のいずれかの成分(例えば、アルキン、求核試薬、炭素含有分子)を意味するものではない。むしろ、強酸および強塩基は、反応の成分を活性化するために、および/または反応を促進するために利用される試薬を意味し得る。
【0048】
既知の方法では、十分な反応性を得るために、一般的に高温(例えば、100℃を超える温度)、高圧、あるいは強酸および/または強塩基の使用を必要とするため、上記の穏和な条件を用いて炭素含有分子(例えば、非平面状炭素含有分子)を官能基化できるということは、意外なことであろう。
【0049】
本発明の方法は、様々な官能基を有する炭素含有分子を合成するために使用することができる。例えば、官能基は、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA:peptide nucleic acid)、金属錯体、金属に対する配位子、タンパク質に対するリガンド、抗体、分極性芳香族、クラウンエーテル、ヒドロキシルアミン、ポリマー、重合開始剤、液晶、フルオロカーボン、合成受容体などを含み得る。場合によって、当該化合物は、DNA、RNA、PNA、またはタンパク質に共有結合していてもよい。さらに、炭素含有分子の特性は、縮合した芳香族網様構造の曲がった部分を置換することによって調整することもできる。当業者であれば、どのような種類の官能基が、特定の所望する特性、例えば検体を決定する能力など、を提供するかを認識しているだろう。一連の実施形態において、標的検体を確定するために、結合部位によって炭素含有分子を官能基化してもよく、その場合、当該炭素含有分子は、標的検体と相互作用することができる結合部位によって官能基化され得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、検体と結合部位との間の相互作用は、共有結合(例えば、炭素−炭素、炭素−酸素、酸素−ケイ素、硫黄−硫黄、リン−窒素、炭素−窒素、金属−酸素、または他の共有結合)、イオン結合、水素結合(例えば、ヒドロキシル、アミン、カルボキシル、チオール、および/または同様の官能基など)、配位結合(例えば、金属イオンと一座配位性もしくは多座配位性配位子との間の錯体形成もしくはキレート形成)などの結合の形成を含み得る。当該相互作用は、ファン・デル・ワールス相互作用も含み得る。1つの実施形態において、当該相互作用は、検体との共有結合の形成を含む。結合部位は、さらに、生物学的分子の対の間の結合事象を介して検体と相互作用することができる。例えば、炭素含有分子は、標的検体上のエンティティ、例えば、アビジンまたはストレプトアビジンなどの補足的なエンティティに対して特異的に結合するビオチンなど、を含み得る。
【0051】
場合よって、当該結合部位は、媒体(例えば、溶媒、気相、固相)中において他の生物学的分子または化学分子に結合することができる生物学的分子または化学分子を含んでいてもよい。例えば、当該結合部位は、チオール、アルデヒド、エステル、カルボン酸、ヒドロキシルなどの官能基であってもよく、この場合、当該官能基は、検体と共に結合を形成する。場合によって、当該結合部位は、ポリマー中の電子リッチ部分もしくは電子不足部分であってもよく、この場合、検体と導電性ポリマーとの間の相互作用は、静電相互作用を含む。
【0052】
さらに、当該結合部位は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモンなどの生物学的分子の対の間に生じる相互作用を介して検体に生物学的に結合することが可能であってもよい。具体例としては、抗体/ペプチドの対、抗体/抗原の対、抗体フラグメント/抗原の対、抗体/抗原フラグメントの対、抗体フラグメント/抗原フラグメントの対、抗体/ハプテンの対、酵素/基質の対、酵素/抑制物の対、酵素/補助因子の対、タンパク質/基質の対、核酸/核酸の対、タンパク質/核酸の対、ペプチド/ペプチドの対、タンパク質/タンパク質の対、小分子/タンパク質の対、グルタチオン/GSTの対、抗GFP/GFP融合タンパク質の対、Myc/Maxの対、マルトース/マルトース結合タンパク質の対、炭水化物/タンパク質の対、炭水化物誘導体/タンパク質の対、金属結合タグ/金属/キレート、ペプチドタグ/金属イオン−金属キレートの対、ペプチド/NTAの対、レクチン/炭水化物の対、受容体/ホルモンの対、受容体/作動体の対、補足的な核酸/核酸の対、リガンド/細胞の表面の受容体の対、ウイルス/リガンドの対、Aタンパク質/抗体の対、Gタンパク質/抗体の対、Lタンパク質/抗体の対、Fc受容体/抗体の対、ビオチン/アビジンの対、ビオチン/ストレプトアビジンの対、薬剤/標的の対、ジンクフィンガー/核酸の対、小分子/ペプチドの対、小分子/タンパク質の対、小分子/標的の対、マルトース/MBP(マルトース結合タンパク質)などのような炭水化物/タンパク質の対、小分子/標的の対、または金属イオン/キレート化剤の対、などが挙げられる。
【0053】
検体は、化学的検体または生物学的検体であってもよい。「検体」なる用語は、分析されるべき任意の化学的、生化学的、または生物学的エンティティ(例えば、分子)を意味する。場合によって、ポリマー構造は、検体に対して高い特異性を有するように選択してもよく、並びに、例えば、化学的センサー、生物学的センサー、もしくは爆発物センサーであってもよい。いくつかの実施形態において、当該検体は、放射性ポリマー材料の少なくとも一部と相互作用することができる官能基を含む。例えば、当該官能基は、共有結合などの結合を形成することによって、物品の外層と相互作用してもよい。場合によって、当該結合部位は、pH、湿度、温度などにおける変化を決定することができる。1つの実施形態において、当該検体は、タンパク質などの生物学的分子である。
【0054】
場合によって、当該炭素含有分子は、金属錯体および/または金属含有種、例えば金属(例えば、電気触媒金属)、金属酸化物、金属合金など、に結合するための配位子を含み得る。例えば、金属錯体、または金属含有種に結合するための配位子は、本明細書に記載されているような炭素含有分子に取り付けられて(例えば、結合して)いてもよい。場合によって、当該金属錯体は、電気触媒基(electrocatalytic group)、すなわち、電気化学反応(例えば、酸化、還元など)を高める(例えば、触媒作用を及ぼす)ことができる基であってもよい。例えば、当該電気触媒基は、有機化合物(例えばアルコールなど)、酸素、水、水素、二酸化炭素などの種の還元および/または酸化において有用であり得る。電気触媒基のいくつかの例は、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム、および白金金属原子などの金属原子を含む。当業者であれば、本発明に関する使用に対して好適な電気触媒基を特定し選択することができるであろう。
【0055】
いくつかの実施形態において、当該炭素含有分子は、所望する特性(例えば、水溶性、表面特性など)を付与するために適切に官能化することができる。例えば、当該炭素原子は、当該物質の特性を変更もしくは改善することのできる化合物、官能基、原子、または物質を含むように、官能化もしくは誘導体化することができる。いくつかの実施形態において、当該炭素含有分子は、媒体(例えば、水など)との適合性、光安定性、および生物学的適合性などの特性を変更もしくは改善することのできる化合物、原子、もしくは物質を含み得る。場合によって、当該炭素含有分子は、表面に対して親和性を有するように選択された官能基を含み得る。いくつかの実施形態において、当該炭素含有分子は、官能基化することによって、特定の表面への吸着を促進することができる。例えば、当該炭素含有分子は、カルボン酸部分によって官能基化することができ、これによって、荷電している表面、例えばガラス表面、粒子表面など、への静電吸着が可能となり得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、炭素含有分子は、官能基化することによって、流動性担体(例えば、溶媒など)に対する当該炭素含有分子の適合性を変えることができる。例えば、当該炭素含有分子は、1つ以上の親水基によって官能基化することにより、水性溶媒、例えば水など、に対する当該炭素含有分子の適合性(例えば、溶解性など)を高めることができる。すなわち、当該炭素含有分子は、当該炭素含有分子の親水性を高める官能基を含み得る。そのような親水基の例としては、アミン、チオール、アルコール、カルボン酸およびカルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)、またはポリエチレングリコールの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。誘導体としては、官能基化されたPEG、例えば、アミン官能基化PEG、チオール官能基化PEG、およびカルボキシル官能基化PEGなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。炭素含有分子の親水性もしくは水溶性を高めるための適切な官能基を選択するスクリーニング試験は、官能基化された炭素含有分子を水などの流動性担体中に入れる段階、並びに当該流動性担体中における炭素含有分子の適合性(例えば、溶解度など)を評価する段階を含み得る。当業者であれば、官能基化された炭素含有分子が、特定の用途に適するために、特定の流動性担体に対して十分なレベルの適合性を示すか否かを評価することができるであろう。
【0057】
場合によって、当該官能基化された炭素含有分子は、実質的に水溶性であってもよい。「水溶性」なる用語は、水性環境中における種(例えば、炭素含有分子)の分散を意味するために当技術分野において一般的に使用されているのと同様に、本明細書において使用される。場合によって、水溶性の種は、流動性担体と組み合わされて溶液を形成し得る。場合によって、水溶性の種は、流動性担体と組み合わされて、分散液もしくは懸濁液を形成し得る。場合によって、炭素含有分子は、官能基化することによって、ポリマー性材料に対する当該炭素含有分子の適合性を変え得る。例えば、炭素含有分子は、当該分子をポリマーマトリックスに対して可溶性もしくは混合可能にすることができる基によって官能基化してもよい。当該官能基は、特定の材料に対する適合性を付与するように選択することができる。例えば、炭素含有分子は、様々な疎水基によって官能基化することによって、疎水性ポリマーに対する当該分子の適合性を高めることができる。場合によって、炭素含有分子は、適切に官能基化することによって、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアリールエーテルなどと混合可能にすることができる。これにより、当該炭素含有分子を含むポリマーブレンドの形成が可能となり得る。
【0058】
場合によって、炭素含有分子は、ポリマーマトリックスに共有結合していてもよい。場合によって、炭素含有分子は、ポリマーマトリックスに共有結合していなくてもよく、別の方法でポリマーマトリックスによって担持されていてもよく(例えば、実質的にポリマーマトリックス内に含有される)、あるいは一体的に結合されていてもよい。いくつかの実施形態において、炭素含有分子を含むポリマー(例えば、ポリマーに共有結合もしくは非共有結合されている)は、炭素含有分子を含まない基本的に同一のポリマーと基本的に同一条件下で比較した場合に、より高いモジュラス、より高い軟化温度、または他の有利な特徴を示し得る。
【0059】
本発明の組成物は、化学センサー、トランジスタ(例えば、有機トランジスタ)、透明導電膜、電極(例えば、電気触媒用)、光起電デバイスの構成要素、発光ダイオード(例えば、OLED、PLEDなど)、高強度ポリマーなどのポリマーの強化素子(reinforcing element)、アクチュエータ(例えば、ポリマー性機械式アクチュエータ)、回路、発光素子などの様々な用途において有用であり得る。さらに、当該組成物は、生体撮像用薬剤(biological imaging agent)および医学的診断用薬剤としても有用であり得る。場合によって、当該組成物は、化粧品組成物において有用であり得る。フラーレン、カーボンナノチューブ、およびグラファイトなどの炭素含有分子を官能基化することができれば、炭素含有分子を含む安定した混合物(例えば、溶液、分散液)の形成において、あるいは異なる種類の炭素含有分子(例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ)の分離において役立ち得る。
【0060】
一連の実施形態において、官能基化された炭素含有分子(例えば、カーボンナノチューブ)は、光起電デバイスにおける電子輸送材料として有用であり得る。官能基化された炭素含有分子は、導電性ポリマーなどの材料と組み合わせることができ、その場合、当該炭素含有分子は、本明細書に記載しているように、ポリマーブレンドの安定した形成を促進する基によって置換されている。動作中、ポリマーマトリックスが電子供与体として機能し得る一方で、炭素含有分子は、電子受容体として機能し得る。この場合、当該炭素含有分子は、デバイスにおける電子のモビリティを高め、その結果として、改良された性能を有する光起電デバイスが得られる。
【0061】
いくつかの実施形態において、官能基化された炭素含有分子は、電気触媒として有用であり得る。例えば、炭素含有分子は、金属錯体などの電気触媒基によって官能基化することができ、有機化合物、二酸化炭素、酸素などを電気化学的に還元することができる。例えば、電気触媒基を含む官能基化された炭素含有分子は、水を還元して水素を生成するために用いられ得る。場合によって、電気触媒基を含む官能基化された炭素含有材料は、酸素を還元して水を生成する際に有用であり得る。場合によって、本明細書に記載の官能基化された炭素含有材料を用いて二酸化炭素を還元することができる。場合によって、官能基化された炭素含有分子は、アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)、水、水素などを含む有機化合物を電気化学的に酸化することが可能であり得る。例えば、官能基化された炭素含有分子は、水を酸化して酸素を生成する際に有用であり得、すなわち、水の電気分解において有用であり得る。場合によって、官能基化された炭素含有分子は、水素を酸化してプロトンを生成する際に有用であり得る。場合によって、本明細書に記載の官能基化された炭素含有材料を用いて、メタノールを酸化して二酸化炭素と水を生成することができる。
【0062】
本発明の組成物は、固体として、または流動性担体との組み合わせにおいて提供してもよい。場合によって、本発明は、本明細書に記載の組成物と、少なくとも1種の流動性担体とを含む混合物を提供する。当該混合物は、例えば、溶液または分散液であってもよい。場合によって、本発明の組成物は、さらなる成分の有無にかかわらず、イオン性集合体(ionic assembly)を形成し得る。当該混合物は、例えばカーボンナノチューブやフラーレンなどの非平面状炭素含有分子を含む組成物の分離もしくは精製において有用であり得る。1つの実施形態において、当該混合物は、カーボンナノチューブの分離において有用であり得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、炭素含有分子から官能基を除去することが望ましい場合がある。本明細書に記載されているような官能基は、比較的穏和な反応条件を用いて除去(例えば、熱的除去)することができる。すなわち、元の非置換の炭素含有分子を得るために、官能基(単数または複数)と炭素含有分子との間に形成された結合(単数または複数)を、既知の方法と比較して穏和であり得る条件を用いて壊すことができる。例えば、炭素含有分子に縮合した5員環は、700℃以下、600℃以下、500℃以下、400℃以下、または300℃以下で加熱することによって熱的に除去することができる。例示的な実施形態において、下記構造を含み、かつ炭素含有分子(例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ)に縮合している5員環は、200〜300℃の間の範囲の温度に晒すことにより、炭素含有分子から熱的に除去することができる。
【0064】
【化16】

本明細書で使用される場合、「sp混成」および「sp混成した」なる用語は、当技術分野におけるその通常の意味を与えるものであり、別のsp混成した原子と共に1つの二重結合(例えば、パイ結合)を形成することが可能な原子(例えば、炭素原子)を意味する。sp混成を有する原子は、一般的に、三角平面状の結合による幾何学的配置を示し、この場合、当該原子は、1つの平面上にある3つのsp混成軌道と、当該3つのsp混成軌道に垂直な平面上にあるp軌道とを有している。例えば、フェニル基の炭素原子は、sp混成している。本明細書で使用される場合、「sp混成」および「sp混成した」なる用語は、当技術分野におけるその通常の意味を与えるものであり、他の原子と共に4つまでの単結合を形成することができる原子を意味する。sp混成を有する原子は、一般的に、実質的に四面体状の結合による幾何学的配置を示す。例えば、エチル基の炭素原子は、sp混成している。当業者であれば、そのような用語の意味を理解するであろうし、分子における原子の混成を特定することができるであろう。
【0065】
本発明における使用に好適なアルキンとしては、三重結合、例えば炭素−炭素三重結合など、を有する任意の種が挙げられる。アルキンは、求電子性の種、例えば求核試薬から電子を受容することのできる種、であるように選択され得る。当業者であれば、本発明における使用に適切なアルキンを選択することができるであろう。例えば、アルキンは、電子不足アルキンもしくは電子欠乏アルキンであってもよい。場合によって、電子欠乏アルキンは、高められた反応性を有し得るか、あるいは、求核攻撃または他の反応に対して活性化され得る。アルキンは、少なくとも1つの電子吸引基、例えばカルボニル基、スルホン酸塩、ホスホン酸塩、アリール基(例えば、電子欠乏基によって置換されたアリール基)、ハロゲン化物(例えば、ヨウ化物、臭化物、塩化物、フッ化物)、ニトリル、ニトロ基、アミドなど、によって置換され得る。場合によって、アルキンは、ハロゲン化されたアルキル基、例えば、トリフルオロメチルまたはペルフルオロアルキルを含む。
【0066】
アルキンは、さらに、本明細書に記載されたような化合物を形成するために、求核試薬および炭素含有分子との相互作用(例えば、反応)を可能にする適切な立体障害サイズを有するように選択することができる。例えば、立体的に大きな基によっては、立体的な込み合いのために、アルキンと求核試薬および炭素含有分子との反応を妨げ得るものがある。当業者であれば、本発明における使用に好適であり得るアルキンを選択することが可能であろう。
【0067】
本明細書で使用される場合、「求核試薬」なる用語は、当技術分野におけるその通常の意味を与えるものであり、反応性の電子対を有する化学部分を意味する。求核試薬は、電子を供与し、通常はその結果として共有結合などの結合を形成することのできる任意の種を含み得る。求核試薬は、例えば、酸素、窒素、またはリンなどのヘテロ原子、あるいは電子を供与して結合を形成することのできる他の原子などを含み得る。場合によって、求核試薬は、電子供与基、例えば、アミノ、アルコキシ(例えば、メトキシ)、ヘテロアリールなどを含み得る。場合によって、求核試薬は、ヘテロアルキル基もしくはヘテロアリール基を含み得、必要に応じて置換されていてもよい。例えば、求核試薬は、N(R、P(R、O(R、S(R、ピリジン、ピロール、チオフェン、フラン、またはそれらの置換誘導体であってもよく、この場合、Rは、ハロゲン化物、ヒドロキシ、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはそれらの塩であり、必要に応じて置換されていてもよい。
【0068】
求核試薬の例としては、荷電していない化合物、例えば、水、アミン、メルカプタン、およびアルコールなど、並びに荷電している部分、例えば、アルコキシド、チオレート、カルボアニオン、並びに様々な有機アニオンおよび無機アニオンなど、が挙げられる。荷電していない求核試薬のいくつかの特定の例としては、N,N−ジメチルアミノピリジンおよびイミダゾールが挙げられる。アニオン性求核試薬のいくつかの特定の例としては、水素化物、水酸化物、アジ化物、シアン化物、チオシアン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、クロロギ酸塩、または亜硫酸水素塩などのアニオンが挙げられる。場合によって、求核試薬は、有機銅酸塩、有機亜鉛、有機リチウム、グリニャール試薬、エノラート、アセチリドなどの有機金属試薬を含むカルボアニオン種を含み得る。いくつかの実施形態において、求核試薬は、N,N−ジメチルアミノピリジンであってもよい。いくつかの実施形態において、求核試薬は、イミダゾールであってもよい。
【0069】
本発明のいくつかの方法は、炭素含有分子と求核試薬とを反応させる工程を包含し得る。ただし、当該求核試薬は、5.0より大きいpKを有する共役酸を有する。本明細書で使用される場合、求核試薬の「共役酸」は、求核試薬のプロトン化された誘導体を意味する。場合によって、当該共役酸は、荷電している分子または荷電していない分子であってもよい。例えば、求核試薬がイミダゾールの場合、イミダゾールの共役酸のpK値は、対応するイミダゾリウム塩のpK値を意味し得る。場合によって、本発明の方法は、炭素含有分子と求核試薬とを反応させる工程を包含し得、この場合、当該求核試薬は、10.0、15.0、20.0より大きなpK、あるいは、場合によって25.0より大きなpKを有する共役酸を有する。
【0070】
当業者であれば、どのような反応成分(例えば、炭素含有分子、アルキン、求核試薬など)が本発明における使用に好適であるかを選択することができるであろう。本発明の方法は、短時間で、かつ比較的容易に実施することができるため、簡単なスクリーニング試験は、成分の1つ以上を変更することができる一連の反応を実施する工程を含んでいてもよい。例えば、カーボンナノチューブ、同じ求核試薬、および立体障害サイズおよび電子特性を変更した一連のアルケンを用いて反応を実施して、どのアルキンが本発明の使用に好適であるかどうかを決定することができる。
【0071】
本発明の方法における使用に好適な溶媒としては、有機溶媒、無機溶媒(例えば、水性溶媒)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。場合によって、当該溶媒は、極性溶媒または非極性溶媒であってもよい。当該溶媒は、炭素含有分子もしくは本明細書に記載されているような反応における他の成分との適合性のために選択することができる。例えば、溶媒は、炭素含有分子がその溶媒に実質的に可溶性であるように選択することができる。適合性は、かならずしも溶解性を必要とせず、炭素含有分子または他の成分と安定した懸濁液、コロイド、または当技術分野において公知の他の混合物を形成することができる溶媒は、本発明における使用において十分に適合性であり得る。各溶媒が、それぞれの成分と十分に適合性である限り、本発明に関して、様々な溶媒を使用することができる。さらに、溶媒は、例えば本明細書に記載された組成物を含む混合物を形成するなどのための流動性担体としても有用であり得る。
【0072】
場合によって、溶媒は、反応内においてイオン種(例えば、双性イオン)に安定性を提供するために十分極性であるように選択してもよく、同様にイオン種が反応に参加できるように、十分非極性であるように選択してもよい。いくつかの有機溶媒の例としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、および他の炭化水素、エーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2,4−トリクロロベンゼン、二硫化炭素、テトラヒドロフラン(THF:tetrahydrofuran)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF:N,N−dimethylformamide)、エチルメチルケトン、アセトン、N−メチルピロリジノン、アセトニトリル、メタノール、および他のアルコールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。場合によって、分散媒は、水性溶媒であるか、あるいは水性溶媒と混合可能な他の溶媒である。場合によって、溶媒は、THF、DMF、またはトルエンであり得る。
【実施例】
【0073】
本発明の方法に関して、以下の基本手順に従った。Carbon Nanotechnologies Inc.社から入手した未精製の(HiPCO)SWCNT (CNI ロット# R0204)を、300℃で空気に晒し、続いて濃HClで洗浄することによってさらに精製して、使用する前に残存する金属触媒を除去した。フラーレン(99.5%)は、Alfa Aesar社から入手し、そのまま使用した。使用した全ての溶媒は、特に記載の無い限り、分光用グレードを用いた。無水トルエン、ジクロロメタン、アセトニトリル、およびテトラヒドロフランは、溶媒精製システム(Innovative Technologies社)を用いて得た。他の全ての化学物質は、試薬グレードのもの、および入手したままのものを使用した。
【0074】
核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)スペクトルは、Inova−500 NMR Spectrometerによって測定した。化学シフトは、残留溶媒を参照している。高分解能質量スペクトル(HRMS:High−Resolution Mass Spectra)は、Bruker Daltonics APEX II 3 Telsa FTICR−MSによって測定した。ラマンスペクトルは、Kaiser Hololab 5000R Raman Spectrometerによって785nmの励起波長を用いて測定した。紫外−可視−近赤外の範囲におけるスペクトルは、Cary 6000i UV−vis−NIR分光計を用いて測定した。熱重量分析(TGA:thermogravimetric analyses)は、TGA Q50装置(TA instruments社)により実施した。実験は、窒素下で実施した。試料は、5℃/分で22℃から800℃まで加熱した。X線による結晶学的データは、Bruker−AXS Smart Apex CCD検出器に接続したSiemens Platform 3サイクル回折計により収集した。全ての合成操作は、特に記載のない限り、標準的シュレンク技術を用いてアルゴン雰囲気下で実施した。ガラス器具は、オーブンでベーク処理し、N雰囲気下で冷却した。
【0075】
(実施例1)
官能基化したフラーレンは、求核試薬としてN,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、およびアルキンとしてジメチルアセチレンジカルボキシレート(DMAD)を用いて、以下の基本手順に従って合成し、ビニルメトキシフラーレン類似物を得た。トルエン中におけるC60(10mg、0.014mmol)およびDMAP(4.4mg、0.036mmol)の混合物を、25mLシュレンク管において、超音波浴(Branson 2510、20W、42kHz)を用いて均一な紫色の溶液が得られるまで超音波処理した。得られた混合物に、トルエン(0.5mL)中におけるDMAD(3.4μL、0.028mmol)の溶液を滴下しながら添加した。DMADの添加が完了した後、当該系を室温で0.5時間攪拌し、その後、メタノール(0.5mL)を加えた。得られた混合物を、さらに2時間攪拌した。当該溶液を濃縮し、残留物をカラム・クロマトグラフィーで処理した。これにより、赤色固体(8.1mg、68%)の生成物を得た。さらに、フラーレン出発物質の一部も回収した(1.9mg、19%)。
【0076】
(実施例2)
ビニル−2−メトキシエチルオキシフラーレン類似物は、第一の求核試薬としてN,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、アルキンとしてジメチルアセチレンジカルボキシレート(DMAD)、および第二の求核試薬として2−メトキシエタノールを用い、以下の基本手順を用いて合成し、当該生成物を得た。トルエン中におけるC60(10mg、0.014mmol)およびDMAP(4.4mg、0.036mmol)の混合物を、25mLシュレンク管において、超音波浴を用いて均一な紫色の溶液が得られるまで超音波処理した。得られた混合物に、トルエン(0.5mL)中におけるDMAD(3.4μL、0.028mmol)の溶液を滴下しながら添加した。添加の後、当該系を室温で0.5時間攪拌し、その後、2−メトキシエタノール(0.5mL)を加えた。得られた混合物を、さらに2時間攪拌した。当該溶液を濃縮し、残留物をカラム・クロマトグラフィーで処理した。これにより、赤色固体(7.7mg、62%)の生成物を得た。さらに、フラーレン出発物質の一部も回収した(2.1mg、21%)。
【0077】
(実施例3)
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)類似物は、求核試薬としてDMAP、アルキンとしてDMAD、および第二の求核試薬として2−メトキシエタノールを用い、以下の基本手順を用いて合成し、当該生成物を得た。THF(40mL)中における精製済みSWCNT(4.0mg、炭素0.33mmol)の懸濁液を、超音波プローブ(Branson Sonifier 450、60W、20kHz)を用いて3分間超音波処理した。得られた不均一な溶液を60℃で加熱した。当該SWCNT懸濁液に、THF(10mL)中におけるDMAD(0.51mL、4.2mmol)の溶液と、THF(10mL)中におけるDMAP(0.51g、4.2mmol)の溶液とを、シリンジ・ポンプを介して同時に40時間かけて加えた(生成物を得るために第二の求核試薬が必要な場合には、第二の求核試薬をDMADおよびDMAPの添加が完了した後で加えてもよく、その混合物を60℃でさらに12時間攪拌してもよい)。当該反応混合物は、5000rpmで5分間、遠心分離処理した。上澄みを破棄し、残留物を、超音波浴を用いてDMF中で5分間分散させた。当該混合物を遠心分離処理し(5000rpm、5分間)、上澄みを破棄した。同じ一連の作業を、溶媒としてDMFおよびアセトンを用いて2回繰り返し、官能基化されたSWCNTを得た。このSWCNTを減圧下で終夜乾燥させた。
【0078】
定義
便宜上、明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で用いられる特定の用語をここに一覧する。
【0079】
「アルキル」なる用語は、飽和脂肪族基による基を意味し、直鎖状アルキル基、分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む。アルキル基は、以下においてより詳細に説明されるように、必要に応じて置換されていてもよい。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。「ヘテロアルキル」基は、少なくとも1個の原子がヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素、リンなど)であり、残りの原子が炭素原子であるようなアルキル基である。ヘテロアルキル基の例としては、アルコキシ、ポリ(エチレングリコール)−、アルキル−置換アミノ、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、モルフォリニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
「アルケニル」および「アルキニル」なる用語は、それぞれ、少なくとも1つの二重結合または三重結合を有している、上記のアルキル基に類似した不飽和脂肪族基を意味する。「ヘテロアルケニル」および「ヘテロアルキニル」は、1つ以上の原子がヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄など)である、本明細書に記載されているようなアルケニル基およびアルキニル基を意味する。
【0081】
「アリール」なる用語は、全てが必要に応じて置換されていてもよい、単環(例えば、フェニル)、多環(例えば、ビフェニル)、または少なくとも1つの環が芳香族である複数の縮合環(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリル、またはフェナントリル)を有する芳香族炭素環基を意味する。「ヘテロアリール」基は、芳香族環の少なくとも1つの環原子がヘテロ原子であり、残りの環原子が炭素原子であるアリール基である。ヘテロアリール基の例としては、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N−低級アルキルピロリル、ピリジル−N−オキシド、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、インドリルなどが挙げられ、全てが必要に応じて置換されていてもよい。
【0082】
「アミン」および「アミノ」なる用語は、非置換および置換アミンの両方、例えば、一般式:N(R’)(R’’)(R’’’)によって表され得る部分、を意味する。なお、式中、R’、R’、およびR’’’は、それぞれ独立して、原子価の法則によって許容される基を表す。
【0083】
「アシル」、「カルボキシル基」、または「カルボニル基」なる用語は、当技術分野において公知であり、下記一般式で表すことができるような部分を含み得る。
【0084】
【化17】

式中、Wは、H、OH、O−アルキル、O−アルケニル、またはこられの塩である。WがO−アルキルの場合、当該式は「エステル」を表す。WがOHの場合、当該式は「カルボン酸」を表す。一般的に、上記式の酸素原子が、硫黄で置き換わっている場合、当該式は「チオールカルボニル」基を表す。WがS−アルキルの場合、当該式は「チオールエステル」を表す。WがSHの場合、当該式は「チオールカルボン酸」を表す。一方、Wがアルキルの場合、上記の式は「ケトン」基を表す。Wが水素の場合、上記の式は「アルデヒド」基を表す。
【0085】
本明細書で使用される場合、「置換された」なる用語は、有機化合物の全ての許容可能な置換基を含むことが想定される。なお、「許容可能な」は、当業者に公知である原子価の法則に関連している。場合によって、「置換された」は、一般的に、本明細書に記載されているような置換基による水素の置き換えを意味する。ただし、本明細書で使用される場合、「置換された」は、分子を特定するような、例えば、「置換された」官能基が置換によって別の官能基になるような重要な置換基の置換および/または改変を含まない。例えば、「置換されたフェニル」は、依然としてフェニル部分を含んでいなければならず、この定義において、例えばピリジンなどのヘテロアリール基に変えてしまうような置換によって修飾することはできない。様々な態様において、許容可能な置換基としては、有機化合物における、非環式および環式の置換基、分岐鎖状および非分岐鎖状の置換基、炭素環式および複素環式の置換基、芳香族および非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、例えば、本明細書に記載されたものが挙げられる。許容可能な置換基は、適切な有機化合物に対して、1つ以上であってもよく、かつ同じかまたは異なっていてもよい。本発明の目的において、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、および/またはヘテロ原子の原子価を満足するような、本明細書に記載された有機化合物の許容可能な任意の置換基を有していてもよい。本発明は、有機化合物の許容可能な置換基によって、いかなる制限を受けることも意図されない。
【0086】
置換基の例としては、アルキル、アリール、アラルキル、環式アルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ペルハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アミノ、ハロゲン、アルキルチオ、オキソ、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキシル、カルボキサミド、ニトロ、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、アルコキシアルキル、ペルハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキルなどが挙げられるが、これらの限定されるものではない。
【0087】
「電子供与基」なる用語は、本明細書で使用される場合、同じ位置にあった場合の水素原子ほどは、それ自体に電子を引き付けない官能基を意味する。電子供与基の例としては、アミン、メトキシなどが挙げられる。
【0088】
「電子吸引基」なる用語は、当技術分野において公知であり、本明細書で使用される場合、同じ位置にあった場合の水素原子よりも、それ自体に電子を引き付ける官能基を意味する。電子吸引基の例としては、ニトロ、シアノ、カルボニル基(例えば、アルデヒド、ケトン、エステルなど)、スルホニル、トリフルオロメチルなどが挙げられる。
【0089】
本明細書中において、本発明のいくつかの実施形態を説明かつ例示したが、当業者であれば、本明細書中に記載された機能を実施するため、並びに/あるいは本明細書中に記載された結果および/または1つ以上の利点を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に想到するであろうし、そのような変更および/または修正は、それぞれ本発明の範囲内であると考えられる。より一般的には、当業者であれば、本明細書に記載された全てのパラメータ、寸法、材料、および構成は例示であることが意図され、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、特定の用途あるいは本発明の技術が使用される用途に応じて変わる、ということを容易に理解するであろう。当業者であれば、本明細書中に記載された発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を、日常的な実験だけを用いて認識あるいは見極めるであろう。したがって、前述の実施形態は、単なる一例として提示されるものであり、添付された特許請求の範囲およびそれらに対する同等物の範囲内において、本発明は、具体的に記載および請求されている以外の方法で実施することができるということは理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載されたそれぞれの個々の特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法に関する。さらに、そのような特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾しなければ、2つ以上のそのような特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、本発明の範囲内に含まれる。
【0090】
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書中および請求の範囲中で使用される場合、特に明記のない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0091】
「および/または」なる語句は、本明細書中および特許請求の範囲中で使用される場合、それらの等位接続される要素、すなわち、ある場合には接続的に存在し、別の場合には離接的に存在する要素の「いずれか一方または両方」を意味すると理解されるべきである。特に明記のない限り、「および/または」の節によって具体的に特定される要素以外の他の要素が、具体的に特定されるそれらの要素に関連するか否かに関わらず、必要に応じて存在していてもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「〜を含む」などのオープンエンド用語と共に使用される場合、1つの実施形態においては、AであってBを含まないことを意味し(B以外の要素を含んでもよい)、別の実施形態においては、BであってAを含まないことを意味し(A以外の要素を含んでもよい)、さらに別の実施形態においては、AおよびBの両方を意味し得る(他の要素を含んでもよい)。
【0092】
本明細書および本特許請求の範囲において使用される場合、「または」は、上記で定義されたような「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、一覧の項目を分割する場合、「または」または「および/または」は、包括的であるとして解釈されるべきであり、すなわち、多くの要素もしくは一覧の要素、並びに必要に応じてさらに一覧に未掲載の項目の、少なくとも1つを包含するが、1つより多くも包含すると解釈されるべきである。それとは反対の意味を明示する用語のみ、例えば「〜の1つだけ」もしくは「〜の厳密に1つ」、または特許請求において使用される場合、「〜のみから成る」は、多くの要素もしくは一覧の要素のうちの厳密に1つの要素を包含することを意味する。一般的に、本明細書で使用される場合、「または」なる用語は、排他的な用語、例えば、「いずれか一方」、「〜の1つ」、「〜の1つだけ」または「〜の厳密に1つ」など、が先行する場合のみ、排他的な代替(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すと解釈されるべきである。「〜のみから実質的に成る」は、本特許請求の範囲において使用される場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するべきである。
【0093】
本明細書中および本特許請求の範囲において使用される場合、語句「少なくとも1つ」は、1つ以上の要素の一覧に関する場合、その要素の一覧中の任意の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素の一覧内に具体的に列挙されているありとあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも包含するわけではなく、またその要素の一覧中の要素の任意の組み合わせを排除するものでもないとして理解されるべきである。この定義は、さらに、「少なくとも1つ」という語句が意味する要素の一覧内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定されたこれらの要素に関係するか否かに関わらず、存在していてもよいことを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同義に「AまたはBの少なくとも1つ」、または同義に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態においては、少なくとも1つの、必要に応じて1つ以上のAであってBは存在しないことを意味し(並びに必要に応じてB以外の要素を含んでもよい)、別の実施形態においては、少なくとも1つの、必要に応じて1つ以上のBであってAは存在しないことを意味し(並びに必要に応じてA以外の要素を含んでもよい)、さらに別の実施形態においては、少なくとも1つの、必要に応じて1つ以上のA、および少なくとも1つの、必要に応じて1つ以上のBを意味し得る(並びに必要に応じて他の要素を含んでもよい)。
本特許請求の範囲において、並びに上記の本明細書において、「を含む(”comprising”)」「を含む(”including”)」「を有する(”carrying”)」「を有する(”having”)」「を含む(”containing”)」「を含む(”involving”)」「を保持する(”holding”)」などの全ての移行句は、オープンエンドであり、すなわち、含むことを意味するが、それらに限定されるものではないと理解されるべきである。移行句「〜から成る(”consisting of”)」および「〜から実質的に成る(”consisting essentially of”)」だけは、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures、Section 2111.03に記載されているように、それぞれ制限的語句または半制限的語句であるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式を有する化合物
を含む組成物であって、
【化18】

式中、
Aは、非平面状芳香族部分を含む炭素含有分子であり、
、R、およびRは、同一かまたは異なっていてもよく、かつ、=O、ヒドロキシ、ハロゲン化物、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アリール、またはヘテロアリールであり、必要に応じて置換され、
【化19】

は、単結合もしくは二重結合である、組成物。
【請求項2】
下記式を有する化合物
を含む組成物であって、
【化20】

式中、
Aは、非平面状芳香族部分を含む炭素含有分子であり、
、R、およびRは、同一かまたは異なっていてもよく、それぞれが原子もしくは化学基であり、ただし、R、R、およびRの少なくとも1つは、第二の原子もしくは化学基で置き換えることができるか、あるいはR、R、またはR以外の該化合物の残りに対して非反応性である条件下において第二の原子もしくは化学基への結合に関与することができ、
【化21】

は、単結合もしくは二重結合である、組成物。
【請求項3】
下記構造を含み、
【化22】

式中、
【化23】

は、前記非平面状芳香族部分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記非平面状芳香族部分が芳香族環の縮合網様構造を含み、該縮合網様構造の終結している境界を必要に応じて含み、ただし、前記構造:
【化24】

が、該縮合網様構造の少なくとも2つの芳香族環の環原子である2つの原子を介して該網様構造に縮合している、
請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記非平面状芳香族部分が、sp2.xの混成を有する炭素原子を含み、ただし、xは1〜9である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
が、下記構造を有し、
【化25】

式中、
Xは、H、OH、ハロゲン化物、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはこれらの塩であり、必要に応じて置換され、
は脱離基であり、Rは、=O、=S、または=NRである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記脱離基が、電子吸引基で置換されたアリールオキシ基である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記脱離基が、構造:
【化26】

を有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
下記構造を有する化合物を含み、
【化27】

式中、Rはエステルであり、Rは脱離基である、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
が、酸塩化物、カルボン酸もしくはその塩、エステル、アミド、またはこれらの置換誘導体である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記化合物が、構造:
【化28】

を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記化合物が、下記構造を有し、
【化29】

式中、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはこれらの塩であって、必要に応じて置換される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
、R、またはRが架橋基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記架橋基が、酸塩化物、アルケン、アルキン、またはハロゲン化物である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記化合物と組み合わされた少なくとも1種のポリマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリウレタン、およびポリアリールエーテルである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記炭素含有分子がフラーレンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記炭素含有分子がカーボンナノチューブである、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記炭素含有分子が単層カーボンナノチューブである、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記炭素含有分子が多層カーボンナノチューブである、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
、R、およびRのうちの任意の2つが結合して環を形成している、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
およびRが結合して少なくとも6個の環原子を含む環を形成している、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1に記載の組成物を含むセンサー。
【請求項24】
請求項1に記載の組成物を含む光起電デバイス。
【請求項25】
請求項1に記載の組成物を含む電極。
【請求項26】
請求項1に記載の組成物を含む、ポリマー物品のための強化素子。
【請求項27】
請求項1に記載の組成物を含む化粧品。
【請求項28】
請求項1に記載の組成物を含む生体撮像用薬剤。
【請求項29】
請求項1に記載の組成物を含む医学診断用薬剤。
【請求項30】
請求項1に記載の組成物を含むトランジスタ。
【請求項31】
請求項1に記載の組成物を含む溶液。
【請求項32】
請求項1に記載の組成物を含む分散物。
【請求項33】
請求項1に記載の組成物を含むイオン性集合体。
【請求項34】
請求項1に記載の組成物を含むポリマー性機械式アクチュエータ。
【請求項35】
前記化合物がDNAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
前記化合物がRNAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項37】
前記化合物がPNAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項38】
前記化合物がタンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項39】
芳香族環の縮合網様構造の終結している境界を必要に応じて含む該縮合網様構造と、該網様構造の少なくとも2つの芳香族環の環原子である2つの原子を介して該網様構造に縮合している5員環の炭素環を含む官能基と
を含む組成物。
【請求項40】
前記炭素含有分子がフラーレンである、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記炭素含有分子がカーボンナノチューブである、請求項39に記載の組成物。
【請求項42】
前記炭素含有分子が単層カーボンナノチューブである、請求項39に記載の組成物。
【請求項43】
前記炭素含有分子が多層カーボンナノチューブである、請求項39に記載の組成物。
【請求項44】
下記式を有する化合物を含み、
【化30】

式中、
Aは、非平面状芳香族部分を含む炭素含有分子であり、
、R、およびRは、同一かまたは異なっていてもよく、それぞれが原子もしくは化学基であり、ただし、R、R、およびRの少なくとも1つは、第二の原子もしくは化学基で置き換えることができるか、あるいはR、R、またはR以外の該化合物の残りに対して非反応性の条件下において第二の原子もしくは化学基への結合に関与することができ、
【化31】

は、単結合もしくは二重結合である、請求項39に記載の組成物。
【請求項45】
アルキンと、非平面状芳香族部分を含む炭素含有分子と、5.0より大きいpKを有する共役酸を有する求核試薬とを反応させて、置換された炭素含有分子を形成する工程
を包含する、置換された炭素含有分子を合成するための方法。
【請求項46】
さらに、前記置換された炭素含有分子と官能基前駆体とを反応させて、該官能基と該炭素含有分子との間に結合を形成する工程
を包含する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記非平面状芳香族部分が、芳香族環の縮合網様構造の終結している境界を必要に応じて含む該縮合網様構造と、該網様構造の少なくとも2つの芳香族環の環原子である2つの原子を介して該網様構造に縮合している環を含む官能基とを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記アルキンが電子吸引基を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記電子吸引基が、カルボニル基、スルホニル基、ホスホニル基、シアノ基、またはニトロ基を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記求核試薬が、10.0より大きいpKを有する共役酸を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記求核試薬が、15.0より大きいpKを有する共役酸を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記求核試薬が、20.0より大きいpKを有する共役酸を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項53】
前記求核試薬が、25.0より大きいpKを有する共役酸を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記求核試薬が、必要に応じて置換されるヘテロアルキル基もしくはヘテロアリール基を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
前記求核試薬が、N(R、P(R、O(R、S(R、ピリジン、ピロール、チオフェン、フラン、またはそれらの置換誘導体であり、ただし、Rは、ハロゲン化物、ヒドロキシ、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはそれらの塩であり、必要に応じて置換される、請求項45に記載の方法。
【請求項56】
前記求核試薬がN,N−ジメチルアミノピリジンである、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
前記求核試薬がイミダゾールである、請求項45に記載の方法。
【請求項58】
前記炭素含有分子がフラーレンである、請求項45に記載の方法。
【請求項59】
前記炭素含有分子がカーボンナノチューブである、請求項45に記載の方法。
【請求項60】
前記反応工程が100℃未満の温度で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項61】
前記反応工程が80℃未満の温度で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項62】
前記反応工程が60℃未満の温度で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項63】
前記反応工程が40℃未満の温度で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項64】
前記反応工程が30℃未満の温度で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項65】
前記反応工程が5000気圧未満の圧力で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項66】
前記反応工程が1000気圧未満の圧力で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項67】
前記反応工程が500気圧未満の圧力で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項68】
前記反応工程が100気圧未満の圧力で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項69】
前記反応工程が50気圧未満の圧力で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項70】
前記反応工程が10気圧未満の圧力で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項71】
前記反応工程が約1気圧の圧力で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項72】
前記置換された炭素含有分子が、下記式を有し、
【化32】

式中、
Aは、非平面状芳香族部分を含む炭素含有分子であり、
、R、およびRは、同一かまたは異なっていてもよく、それぞれが原子もしくは化学基であり、ただし、R、R、およびRの少なくとも1つは、第二の原子もしくは化学基で置き換えることができるか、あるいはR、R、またはR以外の該化合物の残りに対して非反応性の条件下において第二の原子もしくは化学基への結合に関与することができ、
【化33】

は、単結合もしくは二重結合である、請求項45に記載の方法。
【請求項73】
置換された炭素含有分子を合成するための方法であって、該方法は、
100℃未満の温度かつ10,000気圧未満の圧力で、アルキンと、炭素含有分子と、求核試薬とを反応させて生成物を形成する工程を含み、
該生成物が、芳香族環の縮合網様構造と、少なくとも4つの環原子を含む環を含む官能基とを含む置換された炭素含有分子であり、該官能基は、該網様構造の少なくとも2つの芳香族環の環原子である2つの原子を介して該網様構造に縮合している、方法。
【請求項74】
該反応工程が100℃未満の温度で実施される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
該反応工程が80℃未満の温度で実施される、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
該反応工程が60℃未満の温度で実施される、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
該反応工程が40℃未満の温度で実施される、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
該反応工程が30℃未満の温度で実施される、請求項73に記載の方法。
【請求項79】
前記反応工程が5000気圧未満の圧力で実施される、請求項73に記載の方法。
【請求項80】
前記反応工程が1000気圧未満の圧力で実施される、請求項73に記載の方法。
【請求項81】
前記反応工程が500気圧未満の圧力で実施される、請求項73に記載の方法。
【請求項82】
前記反応工程が100気圧未満の圧力で実施される、請求項73に記載の方法。
【請求項83】
前記反応工程が50気圧未満の圧力で実施される、請求項73に記載の方法。
【請求項84】
前記反応工程が10気圧未満の圧力で実施される、請求項73に記載の方法。
【請求項85】
前記反応工程が約1気圧の圧力で実施される、請求項73に記載の方法。
【請求項86】
前記生成物が、下記式を有する化合物であり、
【化34】

式中、
Aは、非平面状芳香族部分を含む炭素含有分子であり、
、R、およびRは、同一かまたは異なっていてもよく、それぞれが原子もしくは化学基であり、ただし、R、R、およびRの少なくとも1つは、第二の原子もしくは化学基で置き換えることができるか、あるいはR、R、またはR以外の該化合物の残りに対して非反応性の条件下において第二の原子もしくは化学基への結合に関与することができ、
【化35】

は、単結合もしくは二重結合である、請求項73に記載の方法。
【請求項87】
請求項1に記載の組成物を含む電気化学触媒。
【請求項88】
前記触媒が、水を還元して水素を生成することができる、請求項87に記載の電気化学触媒。
【請求項89】
前記触媒が、二酸化炭素を還元することができる、請求項87に記載の電気化学触媒。
【請求項90】
前記触媒が、酸素を還元して水を生成することができる、請求項87に記載の電気化学触媒。
【請求項91】
前記触媒が、水を酸化して酸素を生成することができる、請求項87に記載の電気化学触媒。
【請求項92】
前記触媒が、水素を酸化してプロトンを生成することができる、請求項87に記載の電気化学触媒。
【請求項93】
前記触媒が、メタノールを酸化して水および/または二酸化炭素を生成することができる、請求項87に記載の電気化学触媒。
【請求項94】
前記化合物が金属錯体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項95】
前記化合物が電気触媒基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項96】
請求項1に記載の組成物を含むバッテリー。
【請求項97】
前記炭素含有分子が水溶性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項98】
前記炭素含有分子が水溶性である、請求項2に記載の組成物。
【請求項99】
前記炭素含有分子が水溶性である、請求項39に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−521429(P2010−521429A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552763(P2009−552763)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/003180
【国際公開番号】WO2008/133779
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】