説明

ナノバブルの製造装置

【課題】大がかりな装置を用いることなく、簡便にナノバブルを製造できるナノバブル製造装置を提供すること。
【解決手段】液体を通液する配管100と、配管100の上流側の分岐部104で液体の一部を分岐させて再度配管100の下流側の合流部105で戻す分岐管103と、分岐管103の途中に設けられ液体の一部に気体を混合する気液混合部とからなり、液中に4〜100μmの範囲のマイクロバブルを生成するマイクロバブル製造部1と、配管100の下流端側に接続されたナノバブル製造部本体200と、本体200内に設けられた孔付き板と、孔付き板の下流側に孔付き板に近接して設けられた衝突板とからなり、液中に100nm以下の範囲のナノバブルを発生させるナノバブル製造部2とからなるナノバブル製造装置であって、合流部105と孔付き板までの距離Lが、配管100の内径Dに対して5D〜6Dの範囲であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノバブルの製造装置に関し、詳しくは、大がかりな装置を用いることなく、簡便にナノバブルを製造できるナノバブル製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、マイクロバブルを含む液体を貯留槽に供給し、この供給されたマイクロバブルを含む液体に対し超音波振動装置により超音波振動を印加することにより、液体中のマイクロバブルを圧壊し、液体中にナノバブルを生成するナノバブルの製造方法が開示されている。この方法によると、液体中のマイクロバブルの圧壊を促進し、液体中にナノバルブを短時間で大量に生成することができる。
【0003】
特許文献2には、液体中に含まれる微小気泡に水中放電に伴う衝撃波の刺激を加えることにより、前記微小気泡を急激に縮小させることによりナノバブルを製造する方法が記載されている。
【0004】
特許文献3には、マイクロバブル生成手段Mとナノバブル生成手段Nとを備えているナノバブル発生装置が開示されている。マイクロバブル生成手段Mは、第1の液体容器と、加熱手段と、羽根付き回転体とで構成される。またナノバブル生成手段Nは、マイクロバブル生成手段Mと配管により接続された第2の液体容器と、冷却手段と、マイクロ波発生装置、超音波発生装置、羽根付き回転体及び磁石の少なくとも一つからなるバブル圧壊手段を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−289183号公報
【特許文献2】特開2005−245817号公報
【特許文献3】特開2007−136255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、超音波振動装置や、水中放電に伴う衝撃波の製造装置、超音波発生装置といった、大がかりな装置が必要であった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、大がかりな装置を用いることなく、簡便にナノバブルを製造できるナノバブル製造装置を提供することを課題とする。
【0008】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0010】
(請求項1)
液体を通液する配管と、該配管の上流側の分岐部で前記液体の一部を分岐させて再度該配管の下流側の合流部で戻す分岐管と、該分岐管の途中に設けられ前記液体の一部に気体を混合する気液混合部とからなり、液中に4〜100μmの範囲のマイクロバブルを生成するマイクロバブル製造部と、
前記配管の下流末端に接続されたナノバブル製造部本体と、該本体内に設けられた孔付き板と、該孔付き板の下流側に該孔付き板に近接して設けられた衝突板とからなり、液中に100nm以下の範囲のナノバブルを発生させるナノバブル製造部とからなるナノバブル製造装置であって、
前記合流部と前記孔付き板までの距離Lが、前記配管の内径Dに対して5D〜6Dの範囲であることを特徴とするナノバブル製造装置。
【0011】
(請求項2)
前記孔付き板が、スリット板であることを特徴とする請求項1記載のナノバブル製造装置。
【0012】
(請求項3)
マイクロバブル製造部の配管内の圧力が、0.5MPa〜1.0MPaの範囲に維持されることを特徴とする請求項1又は2記載のナノバブル製造装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大がかりな装置を用いることなく、簡便にナノバブルを製造できるナノバブル製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るナノバブル製造装置の一例を示す断面図
【図2】ナノバブル製造部の一例を示す説明断面図
【図3】(A)はナノバブル製造部に用いるスリット板の形状の一例を示し、(B)は衝突板の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るナノバブル製造装置の一例を示す断面図である。
【0017】
図1において、1はマイクロバブル製造部であり、2はナノバブル製造部である。
【0018】
マイクロバブル製造部1は、液体を通液する配管100を備える。配管100の断面形状は円形でもよいし、方形状でもよい。
【0019】
該配管100には増圧ポンプ101(BP:ブースターポンプの略)を設けることができるが、該配管の入口102に圧力水を供給可能であれば、該増圧ポンプ101を設けなくてもよい。
【0020】
増圧ポンプ101の吐出圧は、配管100内の圧力を0.5MPa〜1.0MPaの範囲に維持できる圧力が好ましく、0.6MPa〜0.8MPaの範囲に維持できる圧力がより好ましい。増圧ポンプ101を設けない場合には、配管100内の圧力を0.5MPa〜1.0MPaの範囲に圧力が保持されることが好ましく、0.6MPa〜0.8MPaの範囲に保持されることがより好ましい。
【0021】
本発明において、液体は、淡水、海水、酸、アルカリ水、微生物含有水、消化液(メタン発酵槽などから排出される)などが挙げられる。
【0022】
103は分岐管であり、配管100の上流側(図面上左側)の分岐部104で分岐させて再度該配管100の下流側の合流部105で戻すように構成されている。分岐された液体の一部は、分岐管103内を流れ、該分岐管103の途中に設けられた気液混合部106において、気体が混合される。
【0023】
気液混合部106は、液体に気体を混合できる気液混合装置であれば格別限定されないが、例えば、エジェクター、ラインミキサーなどが挙げられる。
【0024】
107は気液混合部106に気体を供給するための気体供給源である。108は分岐管103のライン中に設けられる気液混合ポンプ(EP:エジェクターポンプの略)である。気液混合ポンプの圧力は、気液混合部106の圧力損失、気体供給源からの気体の供給圧力、合流部105における配管100内の流体圧力などを考慮して決定されるが、好ましくは0.3〜1.0MPaの範囲であり、より好ましくは0.5〜0.9MPaの範囲である。
【0025】
気体供給源107から供給する気体は、オゾン、酸素、空気、二酸化炭素等が挙げられる。
【0026】
本発明におけるマイクロバブル製造部1は、上記のように構成されるために、分岐管103で生成された気液混合液が、合流部105で、配管100に合流され、その合流後の流体の中に、直径4〜100μmの範囲のマイクロバブルを生成する。
【0027】
マイクロバブルを生成する要因としては、合流の際の配管100内の圧力が0.5MPa〜1.0MPaの範囲に維持され、高圧であることが推定的に挙げられる。分岐管103で生成された気液混合液には、気泡が混入しており、その気泡径は直径4〜1000μmの範囲であるが、合流の際の配管100内の圧力が0.5MPa〜1.0MPaの範囲に維持され、高圧であるために、直径4〜100μmの範囲のマイクロバブルとなるものと推定される。
【0028】
ナノバブル製造部2は、マイクロバブル製造部1を構成する配管100の下流末端側に設けられる。200は配管100の下流末端に接続されたナノバブル製造部本体である。ナノバブル製造部本体200の形状は、図示のように、液流方向における中央近傍に向かって膨出しており、中央の膨出部201の両側に傾斜面が形成されている。頂部を反対方向に向けて二つの円錐状漏斗202、203が中央の膨出部201近傍で接合された形状でもある。
【0029】
204はナノバブル製造部2の下流側に必要により形成される接続配管である。該接続配管204には、ナノバブル検出管(図示せず)を装着できる。
【0030】
ナノバブル製造部本体200の内部には孔付き板の一例としてスリット板205を設置している。設置手法は格別限定されない。スリット板205には、図3の(A)に示すように、複数のスリット205Aが平行に設けられている。スリット数は特に限定されないが、スリット幅は、100〜1000μmの範囲が好ましい。
【0031】
206A、206B、206Cは、該スリット板205の下流側に該スリット板205に近接して設けられた衝突板である。衝突板206A、206B、206Cは、図2に示すように、前記スリット板205のスリットを通過する液体が、そのまま直進したまま実質的に通過できないように邪魔をする板状体である。
【0032】
本実施の形態では、図3の(B)に示すように、206A、206B、206Cというように、3分割板状体であるが、1枚板でも、2以上の分割板状体でもよい。
【0033】
本発明において、前記合流部105と前記スリット板205までの距離Lは、配管内径Dに対して5D〜6Dの範囲である。ここで距離Lを規定する合流部105は配管100と分岐管103の接続部位でスリット板側に近い方の部位を意味し、スリット板205はスリット板の上流側に位置する面を意味する。例えば配管100の内径が100mmである場合には、合流部105とスリット板205までの距離Lは、500〜600mmの範囲である。
【0034】
本発明者は、合流部105とスリット板205までの距離Lが、配管内径Dに対して5D〜6Dの範囲であることにより、スリット板205と衝突板206A、206B、206Cの作用とも相まって、液中に100nm以下の範囲のナノバブルを発生させることができることを見出した。
【0035】
本発明において、ナノバブルの検出方法は、動的光散乱光度計により測定でき、また電子スピン共鳴法(ESR)により計測できる。
【0036】
以上の実施の形態では、孔付き板としてスリット板を用いた場合を説明したが、スリット板に代えて、パンチング板を用いることもできる。パンチング孔の直径は、配管100内の圧力が0.5Mpa〜1.0Mpaの範囲に圧力を維持できる孔径が好ましく、0.6Mpa〜0.8Mpaの範囲に圧力を維持できる孔径がより好ましい。
【0037】
本発明のナノバブル製造装置により得られたナノバブルは、植物の葉等への吹きかけ、風呂水浄化などに使用できる。また、海水を膜処理する際に、ナノバブルは、水の粘度低下機能を果たす。例えば、膜に海水を通す際、冬は海水の粘度が上がり、ろ過量が低下する。ナノバブルによって海水粘度を低下させると、冬場でも膜処理を継続できる効果を発揮する。マイクロバブルでも粘度は下がるが、ナノバブルは更に下がる効果がある。
【符号の説明】
【0038】
1:マイクロバブル製造部
100:配管
101:増圧ポンプ
102:配管入口
103:分岐管
104:分岐部
105:合流部
106:気液混合装置
107:気体供給源
108:気液混合ポンプ
2:ナノバブル製造部
200:ナノバブル製造部本体
201:膨出部
202、203:円錐状漏斗
205:スリット板
206A、206B、206C:衝突板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を通液する配管と、該配管の上流側の分岐部で前記液体の一部を分岐させて再度該配管の下流側の合流部で戻す分岐管と、該分岐管の途中に設けられ前記液体の一部に気体を混合する気液混合部とからなり、液中に4〜100μmの範囲のマイクロバブルを生成するマイクロバブル製造部と、
前記配管の下流端側に接続されたナノバブル製造部本体と、該本体内に設けられた孔付き板と、該孔付き板の下流側に該孔付き板に近接して設けられた衝突板とからなり、液中に100nm以下の範囲のナノバブルを発生させるナノバブル製造部とからなるナノバブル製造装置であって、
前記合流部と前記孔付き板までの距離Lが、前記配管の内径Dに対して5D〜6Dの範囲であることを特徴とするナノバブル製造装置。
【請求項2】
前記孔付き板が、スリット板であることを特徴とする請求項1記載のナノバブル製造装置。
【請求項3】
マイクロバブル製造部の配管内の圧力が、0.5MPa〜1.0MPaの範囲に維持されることを特徴とする請求項1又は2記載のナノバブル製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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