説明

ナノ結晶のためのマグネシウムをベースとするコーティング

マグネシウム含有シェルを含む半導体ナノ結晶組成物、およびそれらを調製する方法を記載する。この組成物は、青色および緑色波長における強い発光を提供し、かつ従来のシェル材料では達成されなかった化学的安定性および光安定性を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年5月31日出願の米国特許仮出願第60/941,211号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、コアおよびマグネシウム含有層を含む半導体ナノ結晶に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
半導体ナノ結晶は、広く様々な応用例を有する重要な新しい材料である。これらの材料の多くの独特な特性のなかで、光物理的特性が最も有用なものである可能性がある。具体的には、これらの材料は粒度依存性および粒子組成依存性の強い発光を示すことができ、極めて狭い発光帯域幅を有することができ、環境に非感受性であることができ、強力な光源下で光退色に耐性である。発光は、材料の最も高いエネルギーエミッタより短い波長を有する電磁放射で効率的に励起され得る。これらの特性は、たとえば高度に多重化された系の生物学的状態および工程の超高感度発光レポータとしての半導体ナノ結晶の使用を可能にする。
【0004】
ナノ結晶コアは広く研究されており、合成の進歩は均一なサイズ分布および光励起後の強度な狭い発光帯を有するナノ結晶コアをもたらす重要な生理化学的特性の最適化を導いた。しかしながら、ほとんどの応用例においてナノ結晶コアだけでは十分に強いまたは安定な発光強度が得られず、さらにナノ結晶コアは環境に対して特に感受性であり;たとえば、多くの生物学的応用例が必要とする水性環境は、ナノ結晶コアの発光の完全な崩壊をもたらし得る。したがって、ナノ結晶コアを光安定化し(たとえば、発光特性を保護する)、水性媒質においてそれらを安定で有用なものにする方法は、生物学的応用例に非常に重要である。
【0005】
ナノ結晶コアを被覆する能力は多くの研究が行われている領域であり、「コア/シェルナノ結晶」を形成する無機シェルによるナノ結晶コアの被覆は、発光強度、化学的および光化学的安定性の改善、自己消光特性の低下、様々な環境での安定性などをもたらした。無機シェルでナノ結晶コアを被覆することによる、内在する発光エネルギーに対する影響は十分に理解されておらず、一般に、たとえば被覆材料の選択ならびにシェルの密度および厚さなどの数少ない基準に基づいて制御されている。任意で、分散媒質との適合性を提供するために選択される有機または他のオーバーコートがシェルを包囲していてもよい。
【0006】
無機シェルは一般に、コアナノ結晶の最外部表面を不動態化し、それによってコアに関連する表面エネルギー状態を低下または排除し、コアを外部環境から絶縁すると考えられている。これによりコアから環境への励起子の非放射性損失を低減または排除できる。したがって、コアを無機シェルで被覆することによって、光化学的劣化が低減される可能性があり、発光効率および安定性が改善される可能性がある。
【0007】
シェル材料の選択はコア材料に大きく依存する。たとえば、シェル材料は一般にコアより大きいバンドギャップを有し、シェルはコア材料の原子間隔および格子構造と密接に適合する原子間隔ならびに格子構造を有するように選択することができる。YZシェル(YはCdまたはZnであり、ZはS、Se、またはTeである)で被覆されたCdXコア(XはS、Se、またはTeである)を有するコア/シェルナノ結晶が一般に製造および使用され、良好な発光特性および安定性を有することが示されている。これは主として、比較的対称的にコアのバンドギャップエネルギー範囲にわたるYZ被覆材料のバンドギャップエネルギーによるものである可能性がある。この意味で用いられる「対称」は、シェル材料のより大きいバンドギャップがコア材料のより小さいバンドギャップを完全に包含し、コア材料バンドギャップの上端より上に広がり、コア材料バンドギャップの下端より下に広がっていることを意味する。たとえば、図1および2は、CdSまたはZnSシェルを有するCdSeコアのバンドギャップの整列を示している。CdSおよびZnSは共にCdSeのバンドギャップ範囲にわたっているが、ZnSがより対称的にCdSe範囲にわたり、CdSeバンドギャップの上端を上に超え、CdSeバンドギャップの下端を下に超えて広がっている。したがって、バンドギャップの整列が対称であると良好にコアを周囲環境から絶縁する可能性があるため、CdSe/ZnSコア/シェルナノ結晶は、CdSe/CdSナノ結晶より良好な特性を有する可能性がある。
【0008】
これらの材料それぞれのバンドギャップは、その材料を構成するナノ結晶ではなく、バルク材料に関して測定された値であることも認識されなければならない。材料のバンドギャップは、材料のサンプルの大きさが変化するにつれて変化することが知られており、このことが、たとえばナノ結晶の比類なく価値のある蛍光特性の基礎となっている。試料がナノ結晶の寸法に近づくと、様々な材料または材料混合物のバンドギャップがどのように影響を受けるのか十分に理解されていない。具体的には、ナノ結晶のシェルを形成する半導体材料の薄層は、そのバルク特性と比べて予測可能なバンドギャップ特性を持たない可能性がある。このように、バルク材料の特性はある対の材料が良好に機能する理由を説明するのに有用であり得るが、どの対が良好に機能するか予測するには信頼できない可能性がある。
【0009】
CdSeをベースとするコア/シェルナノ結晶の制限の1つは、青色発光粒子が赤色発光粒子より低い吸光係数を有することである。これはCdSeコア粒度の変化によって、発光波長が調整されるという事実によるものである。何人かの研究者が、合金コア(たとえば、CdSSeまたはZnCdSe)を利用することによって、大きさではなく元素組成を調節して波長を調整し、発光色を吸光係数から切り離せることを示している。さらに最大のナノ結晶が青色/緑色で発光するように、より大きいバルクバンドギャップを有する半導体材料を利用することもできる(たとえば、ZnSe)。
【0010】
ナノ結晶コアは、無機シェルによる不動態化がなければ、有用性は限定されている。ZnSeまたはZnCdSeコアは、有利な蛍光特性を有するが、CdSeコアより被覆および不動態化がはるかに困難であることがわかっている。これらのコアを不動態化できないのは主として、元来高い伝導帯エネルギーのためである。図3および4に例示したとおり、ZnSeコアのバンドギャップエネルギーは、CdSまたはZnSのいずれとも十分に整列しない。ZnSはより良好にコアバンドギャップ範囲にわたっているが、対称ではなく、ZnSeバンドギャップの上端からあまり上に広がっていない。実際、これらの材料をナノ結晶の大きさに縮小した時、ZnSeおよびZnS半導体材料のバンドギャップのずれは非常に重大であり、ZnSのいくつかの単層で被覆した時でさえ、ZnSe/ZnSの発光強度は酸素に曝露されると急速に低下する。
【0011】
したがって、大きい伝導帯を有するナノ結晶コア(たとえば、ZnSeコア)に不動態化シェルを形成するのに適切な材料および方法が求められている。
【0012】
半導体ナノ結晶に関連する多くの特許および刊行物が存在する。以下はマグネシウム含有ナノ結晶に関連する分野において利用可能なそのような特許および刊行物の少数を選び出したものである。
【0013】
Hee Son,D.らによる刊行物(Science 306:1009-1012(2004))は、イオン性ナノ結晶におけるカチオン交換反応を記載している。CdSeナノ結晶をAgイオンと反応させて、Ag2Seナノ結晶を得た。筆者らは室温での反応の驚くべき速度および可逆性を報告した。
【0014】
米国特許第5,537,000号(1996年7月16日発行)は、半導体ナノ結晶の単層を記載している。適切な半導体材料のリストが示されており、MgS、MgSe、およびMgTeが含まれる。
【0015】
米国特許第6,306,610号(2001年10月23日発行)は、化合物に結合した蛍光半導体ナノ結晶を提供している。ナノ結晶の議論において、コアおよびシェル材料の長いリストが開示されており、MgS、MgSe、およびMgTeが含まれる。
【0016】
米国特許第6,379,622号(2002年4月30日発行)は、試料中の分析物の存在を検出する装置を記載している。この装置は、結合基質、標識された類似体、結合基質に結合した染料、照射された時に第2の波長で光を発する量子ドットを含有する第1の基準、分析物透過膜、および空隙容量を含有する。量子ドットの議論において、半導体材料の長いリストを挙げており、MgS、MgSe、およびMgTeが含まれる。
【0017】
米国特許第6,444,143号(2002年9月3日発行)、第6,251,303号(2001年6月26日発行)、および第6,319,426号(2001年11月20日発行)、および第6,426,513号(2002年7月30日発行)は、種々の材料で被覆された半導体ナノ結晶を提供している。ZnS、GaN、またはMgS、MgSeおよびMgTeなどのマグネシウムカルコゲニドを含有するオーバーコーティング層が提示されている。
【0018】
米国特許第6,500,622号(2002年12月31日発行)は、ビーズを用いる核酸アッセイでの半導体ナノ結晶の使用を記載している。ナノ結晶シェルの議論において、紫外線でバンドギャップエネルギーを有する材料を提示しており、たとえばZnS、GaN、ならびにMgS、MgSe、およびMgTeなどのマグネシウムカルコゲニドである。
【0019】
米国特許第6,602,671号(2003年8月5日発行)は、流体力学、マイクロ流体工学、物体の同定、コンビナトリアルライブラリのエンコード、およびゲノミクス応用例に用いるための半導体ナノ結晶を提供している。ナノ結晶の記載において、ZnS、GaN、またはMgS、MgSeおよびMgTeなどのマグネシウムカルコゲニドを含有するオーバーコーティング層が提示されている。
【0020】
米国特許第6,630,307号(2003年10月7日発行)は、試料中の標的分析物を検出する方法を提供している。この方法に用いるためのシェル化ナノ結晶の議論において、紫外線にバンドギャップエネルギーを有する材料を提示しており、たとえばZnS、GaN、ならびにMgS、MgSe、およびMgTeなどのマグネシウムカルコゲニドである。
【0021】
米国特許第6,645,444号(2003年11月11日発行)は、金属ナノ結晶を調製する方法を記載している。金属イオンを有機配位子と錯体化し、還元しナノ結晶を形成する。ナノ結晶の形成に適しているとして提示されている金属元素の長いリストにマグネシウムが含まれる。
【0022】
米国特許第6,653,080号(2003年11月23日発行)は、半導体ナノ結晶を用いる、ポリヌクレオチド分析のループプローブハイブリダイゼーションアッセイを記載している。ナノ結晶シェルの議論において、紫外線にバンドギャップエネルギーを有する材料を提示しており、たとえばZnS、GaN、ならびにMgS、MgSe、およびMgTeなどのマグネシウムカルコゲニドである。
【0023】
米国特許第6,423,551号(2002年7月23日発行)および第6,699,723号(2004年3月2日発行)は、結合基を伴うコア/シェルナノ結晶を提供している。半導体材料のリストにMgS、MgSe、およびMgTeが含まれる。
【0024】
米国特許第6,921,496号(2005年7月26日発行)は、融合タンパク質および半導体ナノ結晶のイオンコンジュゲートを提示している。ナノ結晶は式MXを有することができ;Mはカドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウムまたはタリウムである。
【0025】
米国特許第6,734,420号(2004年5月11日発行)は、半導体ナノ結晶を用いる、スペクトルバーコードシステムを提供している。ナノ結晶シェルの議論において、紫外線にバンドギャップエネルギーを有する材料を提示しており、たとえばZnS、GaN、ならびにMgS、MgSe、およびMgTeなどのマグネシウムカルコゲニドである。
【0026】
米国特許第6,759,235号(2004年7月6日発行)は、半導体ナノ結晶を用いる、2次元スペクトル画像化システムを提供している。ナノ結晶シェルの議論において、紫外線にバンドギャップエネルギーを有する材料を提示しており、たとえばZnS、GaN、ならびにMgS、MgSe、およびMgTeなどのマグネシウムカルコゲニドである。
【0027】
米国特許第6,774,361号(発行)は、半導体ナノ結晶で標識された品目を同定する方法を記載している。ナノ結晶シェルの議論において、紫外線にバンドギャップエネルギーを有する材料を提示しており、たとえばZnS、GaN、ならびにMgS、MgSe、およびMgTeなどのマグネシウムカルコゲニドである。
【0028】
米国特許第6,819,692号(2004年11月16日発行)は、レーザーおよび利得媒質を記載している。利得媒質は、式MXの複数の半導体ナノ結晶を含有しており;Mはカドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウムまたはタリウムである。
【0029】
米国特許第6,821,337号(2004年11月23日発行)および第7,138,098号(2006年11月21日発行)は、金属含有非有機金属化合物、配位性溶媒、およびナノ結晶を形成するカルコゲン源を組み合わせることによって、ナノ結晶を合成する方法を提供している。マグネシウムはいくつかの列挙された金属の1つである。
【0030】
米国特許第6,838,243号(2005年1月4日発行)は、一般的なキャプチャシーケンスを用いるポリヌクレオチド分析を記載している。この方法の少なくとも1つの標識として半導体ナノ結晶が用いられる。シェル化ナノ結晶の議論において、紫外線にバンドギャップエネルギーを有する材料を提示しており、たとえばZnS、GaN、ならびにMgS、MgSe、およびMgTeなどのマグネシウムカルコゲニドである。
【0031】
米国特許第7,068,898号(2006年6月27日発行)は、マトリクスおよびナノ構造の複合材料を記載している。シェル化ナノ結晶の議論において、紫外線にバンドギャップエネルギーを有する材料を提示しており、たとえばZnS、GaN、ならびにMgS、MgSe、およびMgTeなどのマグネシウムカルコゲニドである。
【0032】
米国特許第7,079,241号(2006年7月18日発行)は、スペクトル標識ビーズの空間配置を記載している。シェル化ナノ結晶の議論において、紫外線にバンドギャップエネルギーを有する材料を提示しており、たとえばZnS、GaN、ならびにMgS、MgSe、およびMgTeなどのマグネシウムカルコゲニドである。
【0033】
米国特許第7,108,915号(2006年9月19日発行)は、疎水性ナノ結晶の表面に複層(multiply)両親媒性分散剤のコーティングを適用することによって調製された水分散性ナノ結晶を提供している。ナノ結晶シェルの議論において、紫外線にバンドギャップエネルギーを有する材料を提示しており、たとえばZnS、GaN、ならびにMgS、MgSe、およびMgTeなどのマグネシウムカルコゲニドである。
【0034】
米国特許第7,129,048号(2006年10月31日発行)は、半導体ナノ結晶を用いる、ポリヌクレオチド分析のループプローブハイブリダイゼーションアッセイを記載している。ナノ結晶シェルの議論において、紫外線にバンドギャップエネルギーを有する材料を提示しており、たとえばZnS、GaN、ならびにMgS、MgSe、およびMgTeなどのマグネシウムカルコゲニドである。
【0035】
米国特許第7,150,910号(2006年12月19日発行)は、半導体ナノ結晶層を有する回折格子を記載している。ナノ結晶は式MXを有することができ、Mはカドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、またはそれらの混合物である。
【発明の概要】
【0036】
概要
従来のCdSeコアをベースとするナノ結晶のいくつかの著しい制限に対処する組成物および方法が本明細書において提供される。いくつかの態様において、コアの発光特性を首尾よく改善または保護するシェルと共に、Zn含有コアを含むナノ結晶が本明細書において提供される。いくつかの態様において、改良されたナノ結晶は、同じ極大発光波長を有する従来のCdSeコアナノ結晶より高い発光強度を提供する。いくつかの態様において、改良されたナノ結晶はまた、従来のCdSeコアナノ結晶と比べて強化された光安定性および/または化学的安定性を提供する。そのような改善された特性を有するナノ結晶を製造する方法も提供され、シェルの格子間隔を下層のコアと整合させる懸念を最小限に抑える方法が含まれる。開示されるナノ結晶は、CdSeコアを有する従来のナノ結晶と比べて改善された光安定性および強度を有し、高い発光強度および適切な光安定性を維持しながら、当技術分野において公知のナノ結晶より広い色の範囲にわたって製造できる。
【0037】
CdSeコアをベースとするナノ結晶の発光波長は粒度の変化によって調整されるため、可視スペクトルの青色および緑色域に該当する比較的小さい粒子は、吸光係数は低くなる。このため、従来のナノ結晶が有する青色および緑色発光ナノ結晶は、赤色発光ナノ結晶と比べて比較的弱い発光を有することとなる。この限界のため、CdSSeおよびZnCdSeなどの合金、ならびにより広いバンドギャップの半導体(たとえば、ZnSe)が探求されてきた。これらの材料は発光の弱い青色/緑色CdSeコアの問題に対処するが、代替となるこれらのコアの不動態化は困難であることがわかっている。したがって、これらの代替コアはより明るく、より容易に検出可能な発光応答を提供するが、一般にこの分野で大きな注目を集めているCdSeコアに比べてより不安定で有用なものではなくなっている。
【0038】
保護されていないコアの化学的安定性および光安定性が劣るため、コアはコア/シェルと比べて有用性が限られている。ナノ結晶が「分離した」正孔および電子を有する状態へと露出コアナノ結晶が励起された時、酸素のような一般的な種に対して過度に反応性である。このように、照明によって励起状態になった時、露出コアナノ結晶は急速に損傷または劣化する。コア上に適用されたシェルは、コアを外部環境から有効に絶縁するならば、コアナノ結晶を保護または不動態化するのに有効であり得る。
【0039】
しかしながら、CdSeナノ結晶コアと共に用いる適切なシェルまたは不動態化層は公知である可能性があるが、他の種類のナノ結晶コアに適切な不動態化層の選択および適用は困難であり得る。不動態化が困難であるのは、ほとんどの非カドミウムベースの半導体がカドミウムベースの半導体に比べて高い伝導帯を有するという事実に起因するものであると考えられている。これらの材料は光励起された時、たとえCdSeコアでの使用に適しているZnSおよびCdSのような不動態化層またはシェル材料で覆われていても、励起電子を酸化的消光に対して脆弱なままにする。
【0040】
青色および緑色波長で強い発光を提供するだけでなく、従来のシェル材料(たとえば、ZnS、ZnSe、CdS)で得られるものと比べて高い化学的安定性および/または光安定性を提供する組成物が本明細書において提供される。したがって、青色、緑色または青色/緑色発光帯を有し、ならびに従来のCdSeコアナノ結晶と比べて著しく強化された明度を有する本明細書において提供されるナノ結晶は、本発明の一局面である。したがって、いくつかの態様において、たとえば検出を容易にするより強い発光を提供しながら、CdSeコアおよびZnSシェルを含むナノ結晶に匹敵する光安定性を有するナノ結晶が本明細書において提供される。本明細書において図10、11および12は、本発明のナノ結晶がQdot 525として知られる市販の量子ドットより高い蛍光強度を提供し、さらに高水準の光安定性を保持しているが、本発明のシェルを伴わない同じコアははるかに低い光安定性を有することを実証している。
【0041】
さらに、コア/シェルナノ結晶のすでに堆積している無機シェルにマグネシウムを組み入れる方法、およびナノ結晶の光安定性を強化するためにマグネシウム処理を用いる方法が本明細書において提供される。これらの方法は、伝統的なコロイド合成技法によってコアに直接MgXシェルを堆積させる試みにおいて遭遇した以前には予期していなかったいくつかの困難を克服する;本発明の方法は、任意のコア/シェルナノ結晶の改変に適用可能であろう。
【0042】
一局面において、コアおよびシェルを含む明るいナノ結晶が本明細書において提供され、明るいナノ結晶は、
a)可視範囲において特徴的な蛍光発光波長を有し、
b)光安定性であり、かつ
c)明るいナノ結晶と同じ発光波長を有する大きさに作られているCdSeコアを有する従来のナノ結晶の蛍光強度の少なくとも約2倍の蛍光強度を提供する。
【0043】
明るいナノ結晶は、約400nmから約600nmの特徴的な蛍光発光波長を有することができる。いくつかの態様において、この波長は450から550または500から550nmである。
【0044】
いくつかの態様において、明るいナノ結晶は、Znを含むコアを有する。いくつかの態様において、明るいナノ結晶は、Mgを含むシェルを有する。
【0045】
他の局面において、Znを含むコア、およびMgを含むシェルを含むナノ結晶が本明細書において提供される。いくつかの態様において、シェルはMgおよびZnの両方を含む。いくつかの態様において、コアはZnSeまたはZnCdSeを含む。いくつかの態様において、コアはZnCdSeを含むか、または本質的にZnCdSeからなり、Zn対Cdの比は約0.1から約0.3の間である。
【0046】
上記のナノ結晶の一部の態様において、シェルはZnSを含む。一部の態様において、シェルはMgSを含む。いくつかの態様において、シェルはMgSおよびZnSの両方を含む。
【0047】
前述の態様の一部において、ナノ結晶のコアは本質的にZnCdSeからなる。上述の他の態様において、ナノ結晶のコアは本質的にZnSeからなる。これらの態様の一部において、ナノ結晶のシェルは本質的にMgSおよびZnSの混合物からなる。そのような態様において、シェルに他の材料が存在してもよい。
【0048】
いくつかの態様において、シェル中のMgSの量は、シェルにマグネシウムを含有しないがその他の点では同一のナノ結晶と比べて、ナノ結晶の光安定性を増大するのに十分な量である。いくつかの態様において、MgSの量は、シェルにマグネシウムを含有しないがその他の点では同一のナノ結晶がその蛍光強度の少なくとも20%を失う照射条件下で、その蛍光強度の10%未満を失うナノ結晶を提供するのに十分な量である。いくつかの態様において、MgSの量は、そのシェル中にマグネシウムを含有しないがその他の点では同一のナノ結晶がその蛍光強度の少なくとも40%を失う照射条件下で、その蛍光強度の10%未満を失うナノ結晶を提供するのに十分な量である。
【0049】
いくつかの態様において、ZnxCd1-XSeコア(xは0.1から0.9の間である)と、MgyZn1-yS(yは少なくとも約0.1である)を含むシェルとを含むナノ結晶が本明細書において提供される。いくつかの態様において、yは、ナノ結晶のコアの表面に単層を形成するのに十分なMgSを提供するように選択される。ZnxCd1-XSeコアを含むこれらのナノ結晶のいくつかの態様において、ナノ結晶は可視スペクトルの青色または緑色部分に特徴的な蛍光極大波長を有する。好ましくは、そのようなナノ結晶は光安定性である。いくつかの態様において、xは0.15超、または0.25超である。いくつかの態様において、xは0.5以上である。いくつかの態様において、xは少なくとも0.7である。
【0050】
他の局面において、光安定性ナノ結晶を製造する、またはナノ結晶の光安定性を増大する方法が本明細書において提供される。例示的な方法は、以下の工程を含む:
i)第1のコア/シェルナノ結晶を提供する工程;
ii)マグネシウム材料を含有する反応混合物にナノ結晶を分散する工程;および
iii)ナノ結晶を含む反応混合物を少なくとも約120℃の温度に加熱して、第1のコア/シェルナノ結晶より良好な光安定性を有する光安定性ナノ結晶を生成する工程。
【0051】
いくつかの態様において、これらの方法は、第1のコア/シェルナノ結晶が初期発光強度の20%を失う条件下で、その初期発光強度の10%未満を失う光安定性ナノ結晶を提供する。いくつかの態様において、これらの方法は、第1のコア/シェルナノ結晶がその初期発光強度の40%を失う条件下で、その初期発光強度の10%未満を失う光安定性ナノ結晶を提供する。
【0052】
いくつかの態様において、これらの方法は、アルキルホスフィン酸、トリアルキルホスフィン、もしくはトリアルキルホスフィンオキシド、またはこれらの材料の少なくとも2種の混合物を含む反応混合物を使用する。トリアルキルホスフィンはしばしば、この反応を行うための媒質として利用される。いくつかの態様において、トリアルキルホスフィンはトリオクチルホスフィンである。
【0053】
例示的な方法では、用いられる第1のコア/シェルのコアは、時としてZnSeを含むか、または本質的にZnSeからなる。他の態様において、第1のコア/シェルのコアは、ZnCdSeを含むか、または本質的にZnCdSeからなる。本明細書において用いられるZnCdSeは、ZnおよびCdが両方とも存在することを示し、頻繁にZnは存在する金属(Zn+Cd)の約15〜95%存在し、残りはCdである。一態様において、Znは金属の約50%存在し、約50%がCdである。他の態様において、Zn対Cdの比は1超である。他の態様において、比は約2であり、他の態様において、比は約5、または約5超である。
【0054】
いくつかの態様において、本明細書において開示した方法は、最大寸法約6nmを有し、可視スペクトルの青色または緑色域に蛍光色を有するコアを提供するのに十分な量のCdをコアに含むナノ結晶の光安定性を増大するために用いられる。いくつかの態様において、コアは、最大寸法約6nmを有し、500nmを超える波長に蛍光発光極大を有するコアを提供するのに十分な量のCdをコア中に含む。
【0055】
前述の方法のいくつかの態様において、第1のコア/シェルナノ結晶のシェルはZnSを含む。
【0056】
上記の方法において、任意の適切なマグネシウム材料を用いることができる。いくつかの態様において、本明細書において特定されるマグネシウム材料が用いられる。いくつかの態様において、マグネシウム材料はアルキルカルボン酸マグネシウムである。いくつかの態様において、アルキルカルボン酸マグネシウムは酢酸マグネシウムである。
【0057】
いくつかの態様において、これらの方法は、マグネシウム材料に加えて、以下の材料:トリアルキルホスフィン、トリアルキルホスフィンオキシド、アルキルアミン、またはアルキルホスフィン酸の少なくとも1種を含む反応混合物を使用する。いくつかの態様ではアルキルホスフィン酸は、時としてアルキルアミンと共に存在してもよい。いくつかの態様において、トリアルキルホスフィンは反応の媒質または溶媒として用いられる。一部の態様において、混合物はトリオクチルホスフィンを含む。
【0058】
これらの方法は典型的に、反応混合物中でナノ結晶を加熱する工程を含む。前述の方法のいくつかの態様において、ナノ結晶を含む反応混合物を加熱する工程は、混合物を約150℃から約250℃の間の温度に加熱する工程を含む。いくつかの態様において、ナノ結晶を含む反応混合物を加熱する工程は、混合物を約0.5時間から約4時間の間加熱する工程を含む。
【0059】
他の局面において、本発明は、前述の方法で製造された光安定性ナノ結晶、または光安定化ナノ結晶を提供する。
【0060】
他の局面において、半導体コアおよびシェルを含み、シェルがMgを含むナノ結晶が本明細書において提供される。存在するマグネシウムの量は多様であることができ、典型的にマグネシウムの量は、マグネシウムを用いずに調製されたがその他の点では同一のナノ結晶と比べて、ナノ結晶の光安定性を増大するのに十分な量である。
【0061】
他の局面および態様を以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
添付の図面は本明細書の一部をなし、本発明の一部の局面をさらに実証するために含まれる。本明細書において示した特定の態様の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つまたは複数を参照することによって本発明はよりよく理解される可能性がある。
【図1】CdSe対CdS半導体材料のバンドギャップエネルギー図を示す。CdSはCdSeより広いバンドギャップを有し、したがってCdSeコアのシェルとして用いることができるが、CdSバンドギャップはCdSeバンドギャップの上端からあまり上に広がっていない。
【図2】CdSe対ZnS半導体材料のバンドギャップエネルギー図を示す図である。本明細書に例示したとおり、ZnSはCdSeよりはるかに広いバンドギャップを有し、CdSeナノ結晶はZnSのシェルによって劣化から有効に保護される(光安定化)。この組み合わせは市販の量子ドットによく用いられている。
【図3】ZnSe対CdS半導体材料のバンドギャップエネルギー図を示す。
【図4】ZnSe対ZnS半導体材料のバンドギャップエネルギー図を示す。図3および4は、CdSがZnSeコアの好適なシェルとはならないことを示しており、バンドギャップの情報だけから判断すると、ZnSも悪い選択である可能性がある。
【図5】ZnSe対ZnSおよびMgS半導体材料のバンドギャップエネルギー図を示す。このバンドギャップの比較は、MgSがZnSよりZnSeコアの良好なシェルとなる可能性のあることを示唆している。
【図6】ヘキサン中の疎水性ZnCdSe/ZnSコア/シェルおよびMg処理疎水性ZnCdSe/ZnSコア/シェルの発光強度を示す。この図は本発明のMg処理法がZnCdSeコアの光安定性を強化することを例示しており、ZnCdSeコアはZnSシェル単独では光不安定性であるために十分に保護されていないことを示している。
【図7】水性溶媒中の水分散性ZnCdSe/ZnSコア/シェルおよびMg処理水分散性ZnCdSe/ZnSコア/シェルの発光強度を示す。この図は異なる発光極大を示すZnCdSeコアを用いており、図6と類似している。
【図8】最初にZnSシェル、次いでMgSシェルでオーバーコートしたZnCdSeコアを描写する図である。これは適用されたZnSシェル、次いで適用されたMgSシェルを有するコアを描写している。
【図9】Zn、MgおよびSの混合物であるシェルでオーバーコートしたZnCdSeコアを描写する図である。このシェルは均質であるか、またはコアからシェル層を経て外側に移動した時、増加もしくは減少するZn/Mg比を有する勾配を含有する可能性がある。
【図10】固定化ビオチンに対して滴定した2種のストレプトアビジンコンジュゲートの相対発光強度を示す。標準として用いたQdot 525は、525nmで発光極大を有する、広く用いられている市販の量子ドットである。ZnCdSe/ZnMgSは、主としてZnを含有するコアおよびMgを含有するシェルを有する本発明のナノ結晶であり、同じ極大波長で放射する市販の標準のものより実質的に高い発光強度を有する。
【図11】固定化ウサギ抗体に対して滴定した2種のヤギ抗ウサギコンジュゲートの相対発光強度を示す。標準として用いたQdot 525は、525nmで発光極大を有する、広く用いられている市販の量子ドットである。ZnCdSe/ZnMgSは、主としてZnを含有するコアおよびMgを含有するシェルを有する本発明のナノ結晶であり、同じ極大波長で放射する市販の標準のものより実質的に高い発光強度を有する。
【図12】ウサギ抗Ki67抗体と共にインキュベートし、次いでヤギ抗ウサギ量子ドットコンジュゲートと共にインキュベートした固定HEp-2細胞の相対発光強度を示す図である。相対発光強度は、2つの励起波長に関して示している。480nmは、フルオレセイン染料に用いられ、広く利用可能な励起波長であるために用いられ、425nmは、ZnCdSeコアに最適であるために用いられた。本発明のZnCdSe/ZnMgSナノ結晶は、両方の波長でQdot 525標準よりはるかに高い蛍光発光を有することに留意されたい。
【図13】様々な量のカドミウムのZnSeコアへのドーピングによる発光波長に対する影響を示す。3つの連続調製に用いたCd量の増加は、Cd改変コアの作製に多くのCdを用いることにより(Cd量の増加したコアが生成されることが推定される)発光極大波長が増大したことを実証した。
【図14】ZnSeコア対ZnCdSe/ZnMgSコア/シェルの透過電子顕微鏡で測定された粒度を示す。ZnSeコアは平均粒度約5nmを有するとみられ、ZnMgSシェルを伴うZnCdSeコアは8から9nmの直径を有し、そのためシェルはナノ結晶の直径を3〜4nm増加させる。
【発明を実施するための形態】
【0063】
発明の詳細な説明
これまで達成が困難であり、ナノ結晶の光安定性を増大する、Zn含有ナノ結晶コアに有効なシェル層を提供する方法および材料が本明細書において開示される。理論に拘束されるものではないが、開示した方法および材料は、ZnxCd1-XSe(たとえばxは少なくとも約0.25、または少なくとも約0.5である)などZn含有ナノ結晶コアのバンドギャップを超えて対称的に広がり、したがってコアのバンドギャップの上端および下端の両方でコアを外部環境から絶縁する適切なバンドギャップを有するシェルを提供することによって、光安定性の増大を達成するようである。
【0064】
一態様において(図8および9に例示)、ナノ結晶シェルは、MgSまたはMgSe、と、ZnS、ZnSe、またはCdSeなどのシェル材料とを共に含む。MgSとZnSに関して図5に例示したとおり、MgSeまたはZnSなどの第2のシェル材料とMgSとの組み合わせは、いずれか単独の場合より有効にZnSeコアのバンドギャップの上下両方を超えて対称に広がるバンドギャップを提供する。図10〜12に見られる、シェルにマグネシウムを含むナノ結晶の光安定性の増大は、コアとシェルのバンドギャップのこの適合によるものである可能性がある。図5に例示したMgSとZnSの混合物のバンドギャップは、MgSの存在によって増大するため、ZnSのバンドギャップより高い上端バンドギャップ値を有することが推定される;下端点は両方の材料で類似しており、そのため混合物はバンドギャップの下端にほとんど影響を及ぼさない。バンドギャップの分析はMgS単独で適切なシェルとなることを示唆しており、MgSとZnSの組み合わせが非常に良好に機能することが実験的に示された。
【0065】
MgSおよびZnS(またはCdSeもしくはZnSe)は、いずれかの順序で2つの個別のシェル層として、または混合されたMgおよびZn(またはCd)を含有する単一層として存在することができる。2層で存在する場合、それらの層はいずれの順序でコア上に置かれていてもよく、すなわち、MgS層が2層の内側であることができ、またはZnS層が2層の内側であることもできる。1層に混合されている場合(図9参照)、MgSおよびZnSなどの第2のシェル材料は、ZnS単独より改善された特性を有するバンドギャップを提供する任意の比で混合することができる。1層で存在する場合、層は比較的均質であることができ、または層の内側部が主としてZnSもしくは他の適切なシェル材料であり、MgSの比がコアから外側に移動すると高くなる勾配として生じることもできる。あるいは、1層で存在する場合、層はコアの最も近くでZn(またはCd)に対してより高いMg比を有することができ、その比はコアから外側に移動すると低くなってもよい。
【0066】
さらに、CdSeコアを有する従来のナノ結晶より高い発光強度、または明度を有するナノ結晶を提供する方法および組成物が本明細書において開示される。ナノ結晶の明度は、ナノ結晶を標識またはマーカーとして用いる系でそれがいかに容易に検出されるかを決定し、したがって明度が高い程ナノ結晶の有用性が高まる。そのナノ結晶が獲得できる吸収特性および発光特性(量子収率)の両方をコアが決定するため、ナノ結晶によって得られ得る明度は、主としてコアによって決定される。相当量のZnを含むコアは、可視スペクトルでのその光の吸収がCdSeより良好な傾向があり、さらに高い量子収率を提供するために明度が高くなり、そのため従来のCdSeコアに比べて有利である。したがっていくつかの態様において、本明細書においてさらに記載するとおり、本発明はZnを含むコアを有するナノ粒子を提供する。さらに、Znを含むコアは典型的にCdSeコアより広いバンドギャップを有し、そのため有する。
【0067】
しかしながら、コアがシェルまたは他のコーティングによって環境から保護されていない場合、ナノ結晶の明度は急速に失われることがある。コーティングまたはシェルは、特にコアがその活性化状態にある時、コアが環境と反応するのを防ぐために必要である。光活性化状態は「分離した」電子および正孔を有し、コア材料がその基底状態にある時には起こらないような様式で酸素などの種と反応し得る。そのような反応はコアの発光特性を低下させるが、適切なコーティングまたはシェルで防止できる。したがっていくつかの態様において、本発明はシェルを有するコアを提供し、シェルはコアの光劣化を遅らせる。いくつかの態様において、シェルは、マグネシウムを含まない類似のシェルと比べて劣化を遅らせるマグネシウム含有シェルである。さらに、本発明の方法および組成物は、スペクトルの赤色および橙色域で発光する傾向のある従来のCdSeコアナノ結晶を補完する、可視光スペクトルの緑色、青色、および黄色部分で発光するより明るいナノ結晶を提供する。従来のナノ結晶は非常に高い水準の発光強度を有する青色または緑色を提供せず:これらの発光領域でより高い明度を有するナノ結晶が必要とされている。したがって青色、緑色または青色/緑色発光帯、ならびに従来のCdSeコアナノ結晶と比べて著しく強化された明度を有する本発明のナノ結晶が、本発明の一局面である。
【0068】
開示を明確にするため、また限定のためではなく、本発明の詳細な説明を以下の小項目に分ける。
【0069】
定義
別段の定義のないかぎり、本明細書において用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当技術分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において言及されたすべての特許、出願、公開出願および他の刊行物は、その全体が参照により組み入れられる。この項に記載の定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開出願および他の刊行物に記載の定義に反するか、または他の点で矛盾する場合、この項に記載の定義が参照により本明細書に組み入れられる定義より優先する。
【0070】
本明細書において用いられる「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味する。
【0071】
本明細書において用いられる「約」は、その数値が近似値であり、小さな変動が本発明の実施に著しい影響を与えないことを意味する。数値の限定が用いられる場合、文脈によって別段の指示のないかぎり、「約」はその数値が±10%変動でき、依然として本発明の範囲内であることを意味する。
【0072】
アルキルホスフィン、アルキルホスフィンオキシド、またはアルキルアミンの言及において用いられる「アルキル」は、1から20個の炭素原子、頻繁に4から15個の炭素原子、または6から12個の炭素原子を有し、直鎖、環式、分岐鎖、またはそれらの混合物からなることのできる炭化水素基を指す。アルキルホスフィン、アルキルホスフィンオキシド、またはアルキルアミンには、各リン原子または窒素原子上に1から3個のアルキル基を有する態様が含まれる。好ましい態様において、アルキルホスフィンまたはアルキルホスフィンオキシドはPに3つのアルキル基を有し、アルキルアミンはNに1つのアルキル基を有する。いくつかの態様において、アルキル基は、C4〜C15またはC6〜C12アルキル基の1つの炭素の代わりに酸素原子を含有し、ただしその酸素原子はアルキルホスフィン、アルキルホスフィンオキシド、またはアルキルアミンのPまたはNに結合していない。いくつかの態様において、アルキルは、ハロおよびC1〜C4アルコキシから選択される1〜3個の置換基で置換されることができる。好ましいアルキルホスフィンには、式[(C4〜C103]Pの化合物が含まれる。好ましいアルキルホスフィンオキシドには、式[(C4〜C103]P=Oの化合物が含まれる。好ましいアルキルアミンには、式(C4〜C102NHおよび(C4〜C102NH2の化合物が含まれ、ここでC4〜C10アルキルはそれぞれ直鎖または分岐鎖非置換アルキル基である。好ましいアルキルホスホン酸およびアルキルホスフィン酸には、1〜15個の炭素原子、好ましくは2〜10個の炭素原子、または3〜8個の炭素原子を有するものが含まれる。
【0073】
本明細書において用いられる「疎水性」は、その固体または液体が高誘電媒質中より低誘電媒質中で高い混和性または溶解性を示す、固体の表面特性または液体のバルク特性を指す。酢酸エチル、ジクロロメタン、MTBE、ヘキサン、またはエーテルなどの、水と混和性でない有機溶媒に溶解性であるナノ結晶は疎水性である。単に例として、デカンなどの炭化水素溶媒に可溶性であり、メタノールなどのアルコールに不溶性であるナノ結晶は疎水性である。
【0074】
本明細書において用いられる「親水性」は、その固体または液体が低誘電媒質中より高誘電媒質中で高い混和性または溶解性を示す、固体の表面特性または液体のバルク特性を指す。単に例として、デカンなどの炭化水素溶媒よりメタノールに可溶性である材料は親水性であるとみなされる。
【0075】
本明細書において用いられる「成長媒質」は、その中でナノ結晶が成長するか、またはシェルがナノ結晶上で成長する、試薬および/または溶媒の混合物を指す。これらの成長媒質は当技術分野において周知であり、しばしば少なくとも1種の金属、少なくとも1種のカルコゲニド(S、Se、またはTeの化合物)、および1種または複数のアルキルホスフィン、アルキルホスフィン酸、アルキルホスホン酸、アルキルホスフィン酸またはアルキルアミンを含む。
【0076】
「発光(luminescence)」は物体から電磁放射線を放射する特性を指す。典型的に、電磁放射線はUVからIR放射線の範囲であり、可視電磁放射線、たとえば光を指すことができる。発光は、系が励起状態から低エネルギー状態に遷移して結果として光子を放出する時に生じ得る。発光を招く遷移は、系に蓄えられたエネルギーの放出によって化学的または動態学的に刺激されることができ、またはたとえば、光子、または化学、熱、電気、磁気、電磁気、物理的エネルギー源、もしくは系を励起することのできる他の任意の型のエネルギー源など、外部供給源から系に加えられることもできる。いくつかの態様において、「発光」は、蛍光、すなわち放射された光子より高いエネルギー(短い波長)の光子による励起によって開始される光子の放射を指す。
【0077】
「系を励起すること」または「励起すること」または「励起」は、系のエネルギー状態を基底状態より高い状態に誘導することを指す。用語「励起波長」は、系を励起するのに用いられる発光波長より短い波長を有する可能性のある電磁エネルギーを指す。本明細書において記載の系の「エネルギー状態」は、電子、振動、回転、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。用語「発光ピーク」は、特徴的な発光スペクトル内で最も高い相対強度を有する波長を指す。
【0078】
本明細書において用いられる用語「固溶体」は、イオンまたはイオン基が別のイオンまたはイオン基で置き換えられることによって生じる組成の変形を指し、たとえばCd原子の一部がZnで置き換えられているCdSであり得る。対照的に、本明細書において用いられる「混合物」または「合金」は、2種以上の物質で構成され、各物質がそれ自体を同定する特性を保持している物体の一種を指すことができる。
【0079】
用語「単分散」は、実質的に同じ大きさおよび形状を有する粒子の集団を指す。本発明の目的のために、粒子の「単分散」集団は、粒子の少なくとも約60%、または場合によって粒子の約75%から約90%以上が特定の粒度範囲に含まれ、粒子の直径または最大寸法が10%rms(2乗平均平方根)未満、場合によって5%rms未満外れることを意味する。当業者は、半導体ナノ結晶などのナノ結晶の粒度は、実際には粒度分布として得られることを理解する。
【0080】
組成物および方法は、種々の成分または工程を「含む」という観点から記載されるが(「含むが、限定しない」ことを意味すると解釈される)、組成物および方法は、種々の成分および工程「から実質的になる」またはそれら「からなる」こともでき、そのような用語は本質的に排他的な要素の群を定義するものとして解釈されるべきである。
【0081】
ナノ結晶
任意の適切なナノ結晶を、本明細書において開示の方法およびマグネシウム含有シェルコーティングで用いることができる。本発明の方法およびシェルは、ナノ結晶の光安定性を増大する。たとえば、本発明の方法を用いて、その光安定性を増大するようにコア/シェルナノ結晶のシェルを改変することができる。いくつかの態様において、これらの方法は、未処理ナノ結晶の発光強度を20%または40%低減する光劣化条件下で、ナノ結晶がその発光強度の約10%未満を失うように、マグネシウムで処理されていない同じナノ結晶と比べて光安定性を増大する。いくつかの態様において、本発明のナノ結晶は、同じ発光極大波長を有する対応するCdSeコアナノ結晶より少なくとも約100%高い蛍光強度を提供する。
【0082】
本発明の方法は、ZnSを含むシェルのバンドギャップを増大するのに適しており、たとえば任意のナノ結晶コアにおいて:MgをシェルのZnSに添加することによってシェルのバンドギャップが増大し、それによってコアを保護するその能力を高める。これがナノ結晶の光安定性を増大する。本発明のマグネシウム含有シェルは、両方の終点が約-4eVから-7eVの範囲にあるバンドギャップを有する任意のナノ結晶コアに用いるのに適している。適切な例は、ZnSeまたはZnCdSeナノ結晶コアである。CdSeのバンドギャップは、CdSeも機能するはずであることを示唆している(図2参照)。ZnSeは他の例示的な適切なシェル材料である。
【0083】
一般にナノ結晶は、約1nmから約1000nmの範囲、または約2nmから約50nmの範囲、一部の態様では約2nmから約20nmの範囲の直径または最大寸法を有する半導体粒子である。用語「半導体ナノ結晶」または「量子ドット」は、本明細書において交換可能に用いられ、結晶性無機半導体材料または材料の混合物からなるナノ結晶を指す。これらのナノ結晶、または量子ドットは発光性であり、分子、粒子、細胞などの同定、位置決定、追跡、または定量を容易にする蛍光マーカーまたは標識として有用である。ナノ結晶または量子ドットは、半導体コアに加えて、1つまたは複数のシェルまたは他のコーティングを含むことができる。
【0084】
ナノ結晶は、コアおよびシェルからなる。用語「半導体コア」、「ナノ結晶コア」、「コアナノ結晶」または「コア」は、無機半導体材料、無機半導体材料の混合物もしくは固溶体、または有機半導体材料からなるナノ結晶を指す。コアは分離していることができ、または部分的もしくは完全にシェルで被覆されていることもできる。
【0085】
用語「シェル」は、ナノ結晶コアを囲う無機半導体層を指す。本明細書において記載される「無機シェル」は、無機材料、または無機材料の混合物もしくは固溶体からなるシェルである。適切なシェルは、コア材料のバンドギャップの上下両方を絶縁する能力を提供する。特定のナノ結晶コアに適したシェルは、コアのバンドギャップより広く、コアのバンドギャップの上端より上に広がり、コアのバンドギャップの下端より下に広がるバンドギャップを有する。一部の態様において、無機シェルは絶縁材料または他の半導体材料からなることができる。いくつかの態様において、シェルはマグネシウムを含み、本明細書においてマグネシウム含有シェルと称される。本発明のナノ粒子のいくつかの態様は、MgSを含むシェルを有する。いくつかの態様において、シェルは、ZnSおよびMgSの混合物を含むか、または本質的にそれからなる。いくつかの態様において、混合物は、対応するマグネシウム不含半導体材料より有効に光安定性を提供するバンドギャップを提供するように選択される。
【0086】
本明細書において用いられる「コア/シェルナノ結晶」または「コア/シェル量子ドット」は、多くの場合同様に半導体である第2の無機材料のシェルに含有されているか、または実質的に被覆されている、1種または複数種の第1の半導体材料のナノ結晶コアを含むナノ結晶を指す。
【0087】
コアおよびマグネシウム含有層を含む半導体ナノ結晶が本明細書において提供される。半導体ナノ結晶は、2、3、4、5、6、またはそれ以上の層などの複数のマグネシウム含有層を含むことができる。コアは半導体コアであることができる。半導体コアは一般に、任意の適切な半導体材料、または2種以上の適切な半導体材料の混合物を含むことができる。半導体ナノ結晶のコアは、これに限定されるわけではないが、元素周期表のII-VI族のもの、たとえばZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTeなど、および元素周期表のIII-V族のもの、たとえばGaN、GaP、GaAs、GaSbなど、および元素周期表のIV族のもの(Ge、Siなど)、ならびにそれらの合金または組み合わせまたは混合物を含む半導体材料であることができる。適切な半導体コア材料の例はZnXであり、XはSe、S、またはTeである。バルクバンドギャップおよび格子間隔(不整合約4%未満)の分析によって示されるとおり、本発明に適した特定のコア材料には、ZnS、AlP、GaP、ZnSe、AlAs、GaAs、CdS、HgS、ZnSeおよびZnCdSe、ならびにこれらの任意の2種の混合物が含まれる。一部の態様において、コアは、ZnSeおよび/またはZnCdSe、またはこれら2種の混合物を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。
【0088】
コアのいくつかの特定の態様はZnを含む。Znは、特定の蛍光波長で発光する、対応するCdをベースとするナノ結晶より大きいナノ結晶を提供するため有利である。Znをコアの成分として用いる時、Cd、Ga、Hg、またはAlなどの第2の金属と混合してもよい。たとえば、蛍光の色を緑色側にシフトするために、Cdを加えることができる。他の金属が存在する場合、他の金属に対するZnの比は典型的に、少なくとも0.25、または少なくとも0.5、または少なくとも約1である。いくつかの態様において、比は少なくとも約2である。
【0089】
いくつかの態様において、コアはZnSeを含むか、または本質的にZnSeからなる。いくつかの態様において、コアは、同じ蛍光発光極大波長を有するCdSeナノ結晶コアの発光強度より少なくとも約50%高く、任意で少なくとも約100%高い発光強度を提供する比で、ZnSeおよびCdSeの混合物を含むか、または本質的にそれからなる。好ましくは、本発明のナノ結晶コアにおいてZn対Cdの比は、少なくとも0.5であり、頻繁に1、または1超、または約2超である。いくつかの態様において、発光波長を500nm超の波長にシフトするのに十分なCdが添加される。
【0090】
図13は、ZnCdSeコアの調製に用いられるCd材料の量を増加することによって、ナノ結晶蛍光の波長がどのように510から520nm、または515から520nm、または530から550nmの間の波長に増大されるかを実証するものである。したがっていくつかの態様において、本発明は、同じ蛍光発光極大波長を有するCdSeナノ結晶コアの発光強度より少なくとも約50%高く、任意で少なくとも約100%高い発光強度を有するナノ結晶を提供し、蛍光波長は500nm超、または510nm超、または520nm超、または530nm超、または540nm超、またはこれらの任意の2つの値の間、または510から550nmの間の波長である。
【0091】
マグネシウム含有層は単層であることができ、またはいくつかの単層からなるより厚い層であることができる。マグネシウム含有層は一般に任意のマグネシウム材料を含むことができる。マグネシウム材料の例はMgXであり、XはB、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、N、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、もしくはTeまたは混合物である。半導体ナノ結晶はさらに、コア半導体材料とは異なる第2の半導体材料からなるシェルを含むことができる。このMg含有層はシェルに対してどの場所であることもできるが、好ましくはシェルの外側である。マグネシウム含有層は、いくつかの態様において、少なくとも1種の追加の半導体材料をさらに含んでもよい。たとえば、層は、マグネシウム材料と少なくとも1種の半導体材料との均質な混合物、マグネシウム材料と少なくとも1種の半導体材料との勾配、またはマグネシウム材料と少なくとも1種の半導体材料との層であることができる。勾配はコアの最も近くで高いMgX濃度を有していても、またはコアの最も近くで低いMgX濃度を有していてもよい。
【0092】
いくつかの態様において、半導体ナノ結晶は、実質的に均一なマグネシウム含有層を有する。均一性はZコントラスト走査透過電子顕微鏡(Z-STEM)で判定することができ、McBride et al.,Nano Letters(2006)6:1496-1501を参照されたい。他の態様において、マグネシウム含有層は、ナノ結晶のコア/シェル全体を囲む、少なくとも1、2、3、4、5、6、またはそれ以上の単層を含む。
【0093】
コア/シェルナノ結晶のシェルに用いることのできる半導体材料には、これに限定されるわけではないが、元素周期表の2、12、13または14族の第1の元素および16族の第2の元素からなる材料、たとえばZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe;元素周期表の13族の第1の元素と15族の第2の元素からなる材料、たとえばGaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、およびBP;14族の元素からなる材料、たとえばGeおよびSi;PbSおよびPbSeなどの材料;ならびにそれらの合金、固溶体、および混合物を含むことができる。いくつかの態様において、シェルはMgを含むか、またはMgおよびZnの混合物を含む。一部の態様において、シェルはMgSを含む。任意で、シェルはZnSと混合したMgSを含むことができる。MgS対ZnSの比は、約0.05から約0.95まで変化することができ、多くの場合比は0.1から0.8、好ましくは約0.1から約0.5の間である。
【0094】
いくつかの態様において、本発明のナノ結晶は2つのシェル層を含む。一部の態様において、第1のシェル層は、CdSe、CdS、ZnS、およびZnSeから選択され、第2のシェル層は、MgSおよびMgSeから選択される。2つのシェル層は、いずれの順序でコアに堆積されてもよい。したがって本発明の態様は、2つのシェルを伴うZnSeまたはZnCdSeのコアを有するナノ結晶を含み、シェルの一方はCdSe、CdS、ZnSまたはZnSeを含み、他方のシェルはMgSまたはMgSeを含む。2つのシェルは個別の層であることができるが、典型的に2層の界面で少なくとも一部の材料の混合が起こる。マグネシウム含有層がSを含有し、第2のシェル材料が存在する場合、第2のシェル材料もSを含むことができ、たとえばZnSまたはCdSであることができる。マグネシウム層がSeを含み、第2のシェル層が存在する場合、第2のシェル材料は多くの場合Seを含み、たとえばZnSeまたはCdSeであることができる。
【0095】
他の態様において、シェルは添加物を含有することができ、添加物は1つまたは複数のシェル前駆体と共にシェルに組み入れることができ、半導体材料であってもなくてもよい。いくつかの態様において、添加物は2、12、13、14、15および16族の元素、ならびにFe、Nb、Cr、Mn、Co、Cu、およびNiであることができ、他の態様において、添加物は単に過剰なコアまたはシェル前駆体の1つであることができる。添加物は、シェルの1つもしくは複数の層、コア、またはコアとシェルの1つまたは複数の層との両方に組み入れることができ、またはコアとシェルの間、または多層シェルの2層の間の界面領域にのみ存在することもできる。半導体コアおよびシェルが交わる界面領域は、シェルおよびコアの両方の元素、ならびに添加物の元素を含有することができる。理論に拘束されることは望まないが、添加物をナノ結晶の少なくとも界面領域に組み入れることによって、コアおよびシェルの格子構造の相違に起因するコア/シェル界面の応力が低減される可能性がある。これらの応力の低減はコア/シェル複合体の強度および均一性の向上に役立つ可能性がある。シェルに存在する時、添加物はシェル全体に均一に分布していることができ、または勾配として分布していてもよい。たとえば、添加物は半導体コアから外側方向に濃度の低下を示す勾配として存在できる。一部の態様において、添加物はナノ結晶に全く組み入れられていなくてもよいが、コア上の高品質な厚いシェルの過成長を単に促進する可能性がある。
【0096】
さらに他の態様において、シェルは、たとえば酸素またはシェルの調製中に存在する他の材料などの半導体材料ではない1種または複数の材料をさらに含有することができる。これらの材料は意図的に反応混合物に加えることができ、または偶発的に生じる可能性があり、一般にシェル材料の半導体特性に著しく影響を及ぼさない。
【0097】
シェルは約1から約20の単層からなることができ、典型的に約4から約15の単層からなることができる。単層の数の例には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、およびこれらの値の任意の2つの間の範囲が含まれる。本発明の態様の方法を用いて調製されるコア/シェルナノ結晶の直径は、約1nmから約1000nm、一部の態様において約2nmから約50nm、さらに一部の態様において約2nmから約20nmであることができる。直径の特定の例には、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、およびこれらの値の任意の2つの間の範囲が含まれる。
【0098】
ナノ結晶は一般に、任意の波長、または発光が可視スペクトルである場合には任意の色で発光することができる。いくつかの態様において、ナノ結晶は約400nmから約600nmの波長で発光する青色または緑色であり、いくつかの態様において、ナノ結晶は約500nm未満で発光することができる。理論に拘束されることは望まないが、ZnXコアを有するナノ結晶は、現在用いられているCdSe/ZnSナノ結晶と比べて青色または緑色を発光するナノ結晶の製造によりよく適している可能性がある。青色または緑色で光を放射するZnXコアを有するナノ結晶は、CdSeコアを有するナノ結晶より大きい。大きいコアはより高い吸光係数を有するため、これは特定の発光波長を提供するZnXコアはより明るく、したがって高い感度が必要とされる応用例でより有用であることを意味する。本明細書において用いられる「明度」は、ナノ結晶によって提供される蛍光強度を指す。「明るいナノ結晶」は、従来のCdSeコア/ZnSeシェルナノ結晶ではなく、「明るいナノ結晶」と同じ蛍光発光波長およびほぼ同じシェル層の厚さを有する従来のCdSeコア/ZnSeシェルナノ結晶より高い蛍光強度を提供するナノ結晶である。Qdot 525は、525nmの蛍光発光波長を有し、本明細書においていくつかの比較に用いられる従来のナノ結晶の一例である。このような特性の比較のために、2種のナノ結晶はそれらの発光極大が約5nm未満異なる場合、「同じ」発光波長を有するとみなされる。
【0099】
MgSのバンドギャップエネルギーは、ZnSと比べてより対照的にZnSeまたはZnCdSeのバンドギャップエネルギー範囲にわたることができる。理論に拘束されることは望まないが、ZnSeまたはZnCdSeコアを被覆するMgSの少なくとも1つの単層が、コアを十分に外部環境から絶縁し、酸素などの元素の有害な作用からコアの電子および正孔を保護し、化学的安定性および光安定性を改善するコーティングを提供する可能性がある。さらに、MgSおよびZnSの混合物はコアのバンドギャップの上端および下端の両方でZnSeまたはZnCdSeのバンドギャップをより良好に包含し、それを超えて広がるバンドギャップを提供することができるため、MgSおよびZnSの混合物は、MgS単独より広範な保護を提供する可能性がある。図6および7に例示したとおり、MgSを導入するためにマグネシウム試薬で処理されたZnCdSe/ZnSコア/シェルナノ結晶の発光強度は、未処理ZnCdSe/ZnSナノ結晶と比べて改善された安定性を示す。
【0100】
したがって、ナノ結晶の光安定性を改善する方法が本明細書において提供される。光安定性は、一定照明下、経時的にナノ結晶の積分発光強度を測定することによって、本明細書において記載の方法で評価できる。照明源は、48mAの定電流で動作する、Opto Technology,Inc.から購入した375nm発光Shark Series Visible LEDであった。このような条件下で、3分間の照射中にその蛍光強度をほとんど失わない場合、材料は光安定性であるとみなされる。いくつかの態様において、この処理の後、その初期蛍光強度の95%以上を保持している場合、ナノ結晶は光安定性であるとみなされる。他の態様において、その初期蛍光強度の少なくとも90%を保持している場合、ナノ結晶は光安定性であるとみなされる。他の態様において、その初期蛍光強度の少なくとも80%を保持している場合、ナノ結晶は光安定性であるとみなされる。他の態様において、マグネシウムで処理されていないナノ結晶などの参照物が、マグネシウムで処理されたナノ結晶の参照物として用いられる時、その初期蛍光強度の少なくとも20%、またはその初期蛍光強度の少なくとも40%を失う条件下で、その初期蛍光強度の少なくとも90%を保持している場合、ナノ結晶は光安定性であるとみなされる。図6および7は、この方法を用いて行った光安定性試験を図示している。この目的のため、疎水性ナノ結晶を試験した場合、ヘキサンを用いて試料を希釈し、親水性ナノ結晶を試験した場合、50mMホウ酸緩衝液を用いて試料を希釈した。これらの測定は典型的に、ナノ結晶の発光強度の損失率を標準と比較するために行われ、適切な標準の別段の開示がない場合、コア/シェルナノ結晶のコア単独を標準として用いることができ、試験条件はコアが試験時間中にその蛍光強度の少なくとも約40%を失うように調整できる。試験材料および標準は、等しい光学密度で試験されるべきである。コア単独が参照標準として用いられる試料において、照明は参照標準がその初期強度の40%を失う時間維持することができ、コア/シェルナノ結晶は、コア単独がその蛍光強度の40%を失うのに必要な時間中にその蛍光強度の約10%未満を失う時、そのコアと比べて光安定性であるとみなされる。
【0101】
本発明の方法は、特にZnSを含むシェルを有するナノ結晶に適用可能であり、シェルの半導体材料のバンドギャップを改変する程度までマグネシウムがシェル内に交換される条件下で、コア/シェルナノ結晶をマグネシウム試薬で処理する工程を含む。いくつかの態様において、この方法は、光安定性が増大されたナノ結晶を提供する。光安定性は、未処理ナノ結晶の強度が20%低減される条件下で、処理ナノ結晶がその蛍光強度を10%未満失うのに十分なだけ増大され得る。いくつかの態様において、光安定性は、未処理ナノ結晶の強度が40%低減される条件下で、処理ナノ結晶がその蛍光強度を10%未満失うのに十分なだけ増大され得る。
【0102】
本発明の特定の一態様は、ZnxCd1-XSeコア、ZnS第1のシェル、およびMgS第2のシェルを含む半導体ナノ結晶である。「x」の値は、0から1の任意の数または分数であることができる。したがって半導体コアは、ある比のZnおよびCdを含む。いくつかの態様において、Zn対Cdの比は、少なくとも0.5である。他の態様において、Zn対Cdの比は、少なくとも1または少なくとも約2である。これらの態様において、ZnSシェルおよびMgSシェルは分離していてよく、または任意の程度まで混ざり合っていてもよい。コアは第1のシェルに接触する。第1のシェルはコアおよび第2のシェルに接触する。第2のシェルは第1のシェルに接触する。これを図8に図で示している。任意で、2層の順序を逆にすることができ、それによりMgS層がコアと接触している。
【0103】
いくつかの態様において、CdSeコアおよび同じ蛍光発光極大波長を有する従来のナノ結晶の蛍光より少なくとも100%蛍光強度を増大する方法が本明細書において提供される。いくつかの態様において、この方法は、CdSeコアおよび同じ蛍光発光極大波長を有する従来のナノ結晶の蛍光より、少なくとも100%蛍光強度を増大できる。これらの態様において、本発明はさらに、ナノ結晶の光安定性を維持する方法を提供する。これらの方法は特に、約500nm超に特徴的な発光を有するナノ結晶の調製に有用であり、図10〜12に実証したとおり、市販の標準であるQdot 525のような従来のCdSeコアナノ結晶より実質的に優れた明度(発光強度)を有するナノ結晶を提供する。したがって本発明のナノ結晶には、対応するCdSeコアナノ結晶の少なくとも2倍の蛍光強度を提供しながら、光安定性を有し、さらに500nm超、任意で500から550nmの間の特徴的な発光極大を有するナノ結晶が含まれる。
【0104】
本発明のさらなる特定の態様は、ZnxCd1-XSeコアおよびMgyZn1-yS第1シェルを含む半導体ナノ結晶である。「x」および「y」の値は、0から1の任意の数または分数であることができる。いくつかの態様において、yはその上にシェルが用いられるナノ結晶に少なくともMgSの単層を提供するのに必要とされるMgの量を求めることによって選択され、これは当業者がナノ結晶の大きさまたは表面積から容易に算出できる。コアは第1のシェルに接触する。これを図9に図で示している。コアの組成は、ZnおよびCdを合わせた混合物を含むナノ結晶コアに関して上に記載した範囲にわたって多様であることができる。シェルの組成は、MgおよびZnを合わせた混合物を含むシェルに関して上に記載した範囲にわたって多様であることができる。その結果ナノ結晶は、CdSeコアを有する同じ蛍光発光極大波長のナノ結晶と比べて増大された蛍光強度を有し、光安定性はCdSeコアを有する従来のナノ結晶に匹敵する。可視スペクトル全域の蛍光色を有するナノ結晶に適用可能であるが、本発明の最大の利益は、スペクトルの青色、緑色および黄色部分に蛍光極大を有する対応するナノ結晶によって得られる可能性がある。
【0105】
調製方法
本明細書において共に開示されるナノ結晶を製造する方法、および本明細書において開示の原理を用いて公知のコア/シェルナノ結晶を改変してナノ結晶の光安定性を増大する方法が、本明細書において提供される。別の態様は、コアおよびマグネシウム含有層を含む半導体ナノ結晶を調製する種々の方法、ならびに開示の方法によって製造されたナノ結晶を含む。
【0106】
連続コーティングを用いてコアおよびマグネシウム含有層を含む半導体ナノ結晶を調製する方法は、半導体コアを提供する工程と、コアを無機シェルで被覆して、コア/シェル中間体を提供する工程と、中間体をマグネシウム材料と接触させて、コアおよびマグネシウム含有層を含む半導体ナノ結晶を生成する工程とを含むことができる。コアは一般に任意の半導体コアであることができ、たとえばZnX(XはSe、S、またはTeである)である。
【0107】
コア/シェルナノ結晶をマグネシウム材料と接触させる工程は、本明細書において記載したものと類似の条件下で行うことができる。たとえば、コア/シェルナノ結晶を適切な液体媒質に分散し、選択されるマグネシウム材料と接触させて、混合物を形成できる。次いで、混合物を任意の適切な時間、通常約0.5時間から4時間、任意の適切な温度、しばしば約120℃から約250℃で加熱できる。
【0108】
被覆工程は、コアを第1の前駆体および第2の前駆体と接触させる工程を含むことができる。第1の前駆体は、元素周期表の2、12、13または14族の第1の元素を含むことができる。第2の前駆体は、16族の第2の元素を含むことができる。無機シェルの例には、たとえばZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、およびBaTeが含まれ得る。あるいは、第1の前駆体は、元素周期表の13族の第1の元素を含むことができる。第2の前駆体は、15族の第2の元素を含むことができる。無機シェルの例には、たとえばGaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、およびBP;14族の元素からなる材料、たとえばGeおよびSi;PbSおよびPbSeなどの材料;ならびにそれらの合金、固溶体、および混合物が含まれ得る。
【0109】
マグネシウム材料は一般に、任意のマグネシウム含有材料であることができる。マグネシウム材料の例には、Me2Mg、ジブチルマグネシウム、MgO、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、Mg(アセトアセトナート)2、Mg(C2H3O22、MgTiO3、MgWO4、MgZrO3、Mg2Si、Mg(MnO42、Mg(ClO42、MgCO3、MgB2、ビス(シクロペンタジエニル)Mg、MgS2O3、MgSO4、MgHPO4、Mg(HSO32、MgAl2O4、およびMg(NO32が含まれる。いくつかの態様において、シェルにマグネシウムを導入する方法に用いられるマグネシウム材料は、臭化マグネシウム、酢酸マグネシウム、または他のアルキルカルボン酸マグネシウム、および塩化マグネシウムから選択され、好ましくは、マグネシウム材料は酢酸マグネシウムである。
【0110】
マグネシウム含有層は、約1から約20の単層からなることができ、典型的に約4から約15の単層からなることができる。単層の数の例には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、およびこれらの値の任意の2つの間の範囲が含まれる。マグネシウム含有層は、厚さ1nm未満から5nm超であることができ、たとえば厚さ約1から約5nm、または厚さ約2から約4nmであることができる。
【0111】
マグネシウム材料と接触させる工程は一般に、任意の適切な条件下で行うことができ、少なくとも1種の溶媒の存在下で行うことができる。適切な溶媒には、ステアリン酸またはラウリン酸などの脂肪酸;アルキルアミンまたはドデシルアミンなどのアミン;トリオクチルホスフィンなどのホスフィン;トリオクチルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド;テトラデシルホスホン酸などのホスホン酸;ホスホルアミド;ホスファート;ホスファート;およびそれらの混合物が含まれる。たとえばアルカン、アルケン、ハロアルカン、エーテル、アルコール、ケトン、エステルなどを含む他の溶媒も、これに関して、特に追加ナノ結晶配位子の存在下で有用である可能性がある。第1および第2の溶媒は同じ溶媒であってよく、「ワンポット」型合成において同じ溶液であってよいことが理解される。
【0112】
接触工程は一般に、任意の適切な温度で行うことができる。たとえば、温度は約120℃超、または約150℃超、または約200℃超であることができる。温度は接触工程中一様に保つことができ、または接触工程中に変化することもできる。
【0113】
この方法は、ナノ結晶コアをマグネシウム含有層で直接被覆する方法と比べていくつかの利点を提供する。たとえば、この方法は使用者が公知の方法でコア/シェルナノ結晶を生成することを可能にし、被覆工程で格子整合の問題が生じないことを確実にする。この型の公知のコア/シェルナノ結晶はあまり望ましくない光安定特性を有するが、本発明の方法は、光安定性を改善し、それによってナノ結晶の有用性を著しく高める方法を提供する。これらの方法は特に、Zn含有コア、好ましくは少なくとも約5%のZnを含有するコアとの使用によく適している。これらの方法は、本明細書においてさらに記載のとおり、ZnSeおよびZnCdSeなどのコアと共に用いることができる。これらの方法においてコア/シェルナノ結晶のシェルとして適している特定のシェルには、ZnSおよびZnCdSなどのこれらのナノ結晶コアに安定なシェルを提供することが公知のものが含まれる。
【0114】
コアおよびマグネシウム含有層を含む半導体ナノ結晶を調製する別の方法は、半導体コアを被覆するものであり、半導体コアを提供する工程と、半導体コアをマグネシウム材料と接触させて、コアおよびマグネシウム含有層を含む半導体ナノ結晶を生成する工程とを含むことができる。コアは一般に任意の半導体コアであることができ、たとえばZnX(XはSe、S、またはTeである)である。
【0115】
マグネシウム材料は一般に、任意のマグネシウム含有材料であることができる。マグネシウム材料の例には、Me2Mg、ジブチルマグネシウム、MgO、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、Mg(アセトアセトナート)2、Mg(C2H3O22(酢酸マグネシウム)、ギ酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、または他のマグネシウムのカルボン酸塩、たとえば(RCO22Mg(Rはアルキルである)、トリフルオロ酢酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムなど、MgTiO3、MgWO4、MgZrO3、Mg2Si、Mg(MnO42、Mg(ClO42、MgCO3、MgB2、ビス(シクロペンタジエニル)Mg、MgS2O3、MgSO4、MgHPO4、Mg(HSO32、MgAl2O4、およびMg(NO32が含まれる。一部の態様において、マグネシウムのアルキルカルボン酸塩、またはマグネシウムのアルキルカルボン酸塩の混合物が用いられる。
【0116】
マグネシウム含有層は、約1から約20の単層からなることができ、典型的に約4から約15の単層からなることができる。単層の数の例には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、およびこれらの値の任意の2つの間の範囲が含まれる。
【0117】
マグネシウム材料と接触させる工程は一般に、任意の適切な条件下で行うことができ、接触工程は少なくとも1種の溶媒の存在下で行うことができる。適切な溶媒には、ステアリン酸またはラウリン酸などの脂肪酸;アルキルアミンまたはドデシルアミンなどのアミン;トリオクチルホスフィンなどのホスフィン;トリオクチルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド;テトラデシルホスホン酸などのホスホン酸;ホスホルアミド;ホスファート;ホスファート;およびそれらの混合物が含まれる。たとえばアルカン、アルケン、ハロアルカン、エーテル、アルコール、ケトン、エステルなどを含む他の溶媒も、これに関して、特に追加ナノ結晶配位子の存在下で有用である可能性がある。第1および第2の溶媒は同じ溶媒であってよく、「ワンポット」型合成において同じ溶液であってよいことが理解される。
【0118】
接触工程は一般に、任意の適切な温度で行うことができる。たとえば、温度は約150℃超、または約200℃超であることができる。温度は接触工程中一様に保つことができ、または接触工程中に変化することもできる。
【0119】
コア/シェルナノ結晶を被覆し、コアおよびマグネシウム含有層を含む半導体ナノ結晶を調製するさらに別の方法は、半導体コア/シェルナノ結晶を提供する工程と、半導体コア/シェルナノ結晶をマグネシウム材料と接触させて、コアおよびマグネシウム含有層を含む半導体ナノ結晶を生成する工程とを含むことができる。
【0120】
コア/シェルナノ結晶は一般に、任意の半導体コアを有することができ、たとえばZnX(XはSe、S、またはTeである)である。コア/シェルナノ結晶は一般に、任意の半導体シェルを有することができ、たとえばZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、BP、Ge、Si、PbS、PbSe、それらの混合物、またはそれらの合金である。
【0121】
マグネシウム材料は一般に、任意のマグネシウム含有材料であることができる。マグネシウム材料の例には、Me2Mg、ジブチルマグネシウム、MgO、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、Mg(アセトアセトナート)2、Mg(C2H3O22、MgTiO3、MgWO4、MgZrO3、Mg2Si、Mg(MnO42、Mg(ClO42、MgCO3、MgB2、ビス(シクロペンタジエニル)Mg、MgS2O3、MgSO4、MgHPO4、Mg(HSO32、MgAl2O4、およびMg(NO32が含まれる。
【0122】
マグネシウム含有層は、約1から約20の単層からなることができ、典型的に約4から約15の単層からなることができる。単層の数の例には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、およびこれらの値の任意の2つの間の範囲が含まれる。
【0123】
マグネシウム材料と接触させる工程は一般に、任意の適切な条件下で行うことができ、接触工程は少なくとも1種の溶媒の存在下で行うことができる。適切な溶媒には、ステアリン酸またはラウリン酸などの脂肪酸;アルキルアミンまたはドデシルアミンなどのアミン;トリオクチルホスフィンなどのホスフィン;トリオクチルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド;テトラデシルホスホン酸などのホスホン酸;ホスホルアミド;ホスファート;ホスファート;およびそれらの混合物が含まれる。たとえばアルカン、アルケン、ハロアルカン、エーテル、アルコール、ケトン、エステルなどを含む他の溶媒も、これに関して、特に追加ナノ結晶配位子の存在下で有用である可能性がある。第1および第2の溶媒は同じ溶媒であってよく、「ワンポット」型合成において同じ溶液であってよいことが理解される。
【0124】
接触工程は一般に、任意の適切な温度で行うことができる。たとえば、温度は約150℃超または約200℃超であることができる。温度は接触工程中一様に保つことができ、または接触工程中に変化させることもできる。
【0125】
方法の追加
上記の方法はさらに、1つまたは複数の工程または詳細を含むことができる。以下の節は方法の例示的な追加を記載する。
【0126】
たとえば、この方法は、トリオクチルホスフィン中にZnSeコアナノ結晶を含有する溶液を加熱する工程と、いずれもトリオクチルホスフィン中のZn含有シェル前駆体、たとえばEt2Znなど、およびS含有前駆体、たとえば(TMSi)2Sなどをコア混合物に混合する工程とを含むことができる。シェルのコアへの堆積を開始するのに十分な温度をある期間維持することができる。その後、温度を下げてよく、Mg含有シェル前駆体、たとえばMgAc2(酢酸マグネシウム)などを混合物に添加することができる。次いで、この混合物を加熱および冷却して、Mg含有前駆体をシェルに組み入れることができる。そのような態様において、MgSの単層はシェルの最外層として堆積できる。あるいは、Mg含有前駆体を最初に添加するか、またはZnもしくはS含有シェル前駆体より前に添加するか、またはそれに加えて添加することができる。
【0127】
シェルが添加物を含有する態様の例は、コア/溶媒混合物を、1種または複数の添加物と第1シェル前駆体とからなる添加物/第1シェル前駆体混合物と混合して、第1の反応混合物を形成することを含む。続いて、第2シェル前駆体を第1反応混合物に添加して、第2の反応混合物を形成することができる。シェル形成を誘発するのに十分な温度への加熱は、添加物/第1シェル前駆体混合物をコア/溶媒混合物に添加する前、その後、もしくはそれと同時に行うことができ、または第2シェル前駆体を第1の反応混合物に添加する前、その後、もしくはそれと同時に行うことができる。他の例において、コア/溶媒混合物を第1シェル前駆体と混合して、反応混合物を形成することができ、この反応混合物を、1種または複数の添加物と第2シェル前駆体とを含有する添加物/第2シェル前駆体混合物と混合することができる。上記の態様にあるとおり、添加物/第2シェル前駆体混合物をコア、溶媒、第1シェル前駆体混合物に添加する前、その後、またはそれと同時に、シェル形成を誘発するのに十分な温度にこの混合物を加熱することができる。
【0128】
本発明の態様の方法は、単一の反応容器、すなわち「ワンポット」合成で行うことができ、または半導体コアおよび無機シェルに関して個別の合成を用いて行うことができる。コアおよびシェルの成長段階中の粒度および粒度分布は、試料の吸収または発光ピークの位置および線幅をモニターすることによって近似値を求めることができ、スペクトルの変化に応じて温度およびモノマー濃度などの反応パラメータを動的改変することによって、これらの特性を調整できる。
【0129】
コアナノ結晶は多くの方法で調製することができる。いくつかの態様において、第1および第2のコア前駆体を、離散粒子の均一な核形成を誘発するのに十分な温度に保持され得る反応溶液に注入できる。いくつかの態様において、1つまたは複数の添加物もコアの調製に用いる反応溶液に添加できる。次いで、所望の大きさに到達するまで、たとえば直径約20Å(2nm)から約125Å(12.5nm)まで粒子を成長させることができる。いくつかの態様において、成長工程は、反応温度を下げることによって停止できる。
【0130】
このように調製されたコアは、当業者に公知の方法、たとえば非溶媒、たとえばメタノールによる凝集(flocculation)などを用いて単離することができる。いくつかの態様において、個々のコアを含有する単分散粒子集団を得ることができる。当業者に公知の方法を用いて第1の溶媒から、これらのコアを単離および/または精製し、次いで第2の溶媒に加えてコア溶液を形成することができ、またはいくつかの態様においては、単分散ナノ結晶集団を含有する溶液を「そのまま」用いることができ、これはコアの合成が完了したら、コアをさらに精製または単離する必要のないことを意味している。
【0131】
いくつかの態様において、ナノ結晶は、ナノ結晶の外表面上で有機または他のオーバーコーティングにより覆われてもよい。このオーバーコーティングは、懸濁媒質との適合性を提供することのできる材料、およびナノ結晶の最外表面に対する親和性を有する部分からなることができる。たとえば、適切なオーバーコーティング材料には、これらに限定するわけではないが、ポリスチレン、ポリアクリラート、または他のポリマー、たとえばポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリビニル、ポリジアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリペプチド、ポリサッカリド、ポリスルホン、ポリピロール、ポリイミダゾール、ポリチオフェン、およびポリエーテルなど;エポキシ;石英ガラス;シリカゲル;チタニア;シロキサン;ポリホスファート;ヒドロゲル;アガロース;セルロースなどを含むことができる。これらのオーバーコーティング材料は、ナノ結晶の最外表面に直接付着することができ、または例えばメルカプト、ホスフィン、またはイミダゾール部分など、ナノ結晶の表面と密接に結合することが知られている部分と結合させることもできる。このコーティングは、いくつかの態様において厚さ約2から約100nm、他の態様において約2から約10nmの範囲であることができる。
【0132】
使用方法
本明細書において提供される組成物は特に、増強された感度が必要とされる応用例において有益である。たとえば、酵素免疫測定法(ELISA)を行う時、蛍光標識された抗体の明度はアッセイ全体の感度に直接関連する。従来のCdSeベースのコア/シェル標識抗体では、たとえば赤色が緑色よりはるかに感度が高い。このことは、抗原の濃度が未知である場合、非常に低い濃度を検出するのに十分な感度を維持しながら、容易に識別される広範なナノ結晶の色を提供することが困難であるため、多重アッセイを困難にし得る。図10および11は、本発明において提供される組成物が市販されているCdSeベースのコア/シェルナノ結晶と比べていかに高い発光強度を提供するかを示している。
【0133】
さらに、本明細書において提供される組成物は、高い感度が必要とされる蛍光細胞標識化応用例において有益である。図12は、市販されている525nmで発光する従来の抗体結合型ナノ結晶と比較した開示組成物の一態様のナノ結晶の相対強度を示している。このデータは、本明細書において提供される組成物が従来のナノ結晶と比べて著しく高い発光強度を有することを示している。
【0134】
以下の実施例は、開示した方法および組成物のいくつかの態様を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技法は、本発明の実施において十分に機能するように本発明者らによって発見された技法を表し、したがってその実施に好ましい様式を構成するものとみなせることが当業者に理解されるべきである。しかしながら、当業者は本開示に照らして、開示されている特定の態様に多くの変更を加えることができ、依然として本発明の範囲から逸脱することなく同様または類似の結果が得られることを理解するべきである。
【0135】
実施例
実施例1:発光ZnSeナノ結晶コアの調製
不活性雰囲気下、50mL丸底反応フラスコに、溶融ヘキサデシルアミン98%15mL、およびビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィン酸(Cytec Industries IncのCYANEX 272)47μLを添加した。この混合物を攪拌しながら真空下で100℃に加熱し、15分間保持した。15分の保持時間後、フラスコを再び窒素で満たし、さらに310℃に加熱した。310℃で、ジエチル亜鉛(Et2Zn)0.123g(1.0mmol)および1M TOP-Se(Se 1.4mmol)(TOP-Seは金属セレンをトリオクチルホスフィンに溶解することによって調製した)1.274gの混合物を迅速にフラスコに注入した。15分の保持時間後、Et2Zn(Zn 3.0mmol)0.370gおよび1M TOP-Se(Se 4.2mmol)3.822gの追加の注射器を調製し、15分間18.5μL/分、30分間50μL/分、および15分間75μL/分の速度で添加した。前駆体の添加が完了した時、反応物を室温に冷却した。最終材料は424nmの発光極大波長、および15nmの半値全幅(FWHM)を有した。最初の吸光特徴のピーク波長は413nmであった。413nmの光学密度は34.4であった。
【0136】
実施例2:発光ZnSeナノ結晶コアの調製
不活性雰囲気下、50mL丸底反応フラスコに、溶融ヘキサデシルアミン(HDA)98%15mLを添加した。HDAを攪拌しながら真空下で100℃に加熱し、15分間保持した。15分の保持時間後、フラスコを再び窒素で満たし、さらに310℃に加熱した。310℃で、ジエチル亜鉛(Et2Zn)0.123g(1.0mmol)および1M TOP-Se(Se 1.4mmol)(TOP-Seは金属セレンをトリオクチルホスフィンに溶解することによって調製した)1.274gの混合物を迅速にフラスコに注入した。15分の保持時間後、Et2Zn(Zn 3.0mmol)0.370gおよび1M TOP-Se(Se 4.2mmol)3.822gの追加の注射器を調製し、15分間18.5μL/分、30分間50μL/分、および15分間75μL/分の速度で添加した。前駆体の添加が完了した時、反応物を室温に冷却した。最終材料は413nmの発光極大波長、および19nmのFWHMを有した。最初の吸光特徴のピーク波長は408nmであった。408nmの光学密度は63.3であった。粒子50個に関してTEMで測定した平均径は5.2nm、標準偏差0.7nmであった。
【0137】
実施例3:発光ZnCdSeナノ結晶コアの調製
任意の所与量の実施例1で調製した溶融ZnSeコアに、6容量のトルエン、次いで2容量のブタノールを添加した。この混合物を完全に混合した後、7容量のメタノールを添加した。濁った混合物を約3000rpmで10分間遠心分離した。上清を捨て、1容量のヘキサンを添加して、ナノ結晶含有ペレットを溶解した。最初の吸光特徴で吸光度を測定し、吸光係数で割ることによって、ヘキサン溶液の濃度を求めた。吸光係数は以下の式で算出し、粒径はTEMによって測定した。
ε=4.8080×(粒径(オングストローム))3
【0138】
不活性雰囲気下、50mL丸底反応フラスコに、溶融ヘキサデシルアミン6.3mL、およびヘキサン中ZnSeコア(上記のもの)163nmolを添加した。揮発性溶媒がすべて除去されるまで、フラスコを真空下に保持した。次いで、ジメチルカドミウム(Me2Cd)1.072gと、CYANEX 272 3.57mLと、トリオクチルホスフィン25.89mLとの混合物597μLを添加する(Cd 149μmol)。他の発光波長を得るために、様々な量のカドミウム溶液を用いた。コア/シェルの最終発光波長に対するカドミウム添加の影響のいくつかの例を図13に示す。
【0139】
この混合物を255℃に加熱し、20分間温度を保持した。コア/シェルが所望の最終生成物であった場合、20分の保持時間の直後にシェル前駆体を添加する(実施例6参照)。そうでない場合、フラスコを室温に冷ました。最終材料は498nmの発光極大波長、および40nmのFWHMを有した。
【0140】
実施例4:発光ZnCdSeナノ結晶コアの調製
任意の所与量の実施例2で調製した溶融ZnSeコアに、6容量のトルエン、次いで2容量のブタノールを添加した。この混合物を完全に混合した後、7容量のメタノールを添加した。濁った混合物を約3000rpmで10分間遠心分離した。上清を捨て、1容量のヘキサンを添加して、ナノ結晶含有ペレットを溶解した。最初の吸光特徴で吸光度を測定し、吸光係数で割ることによって、ヘキサン溶液の濃度を求めた。吸光係数は以下の式で算出し、粒径はTEMによって測定した。
ε=4.8080×(粒径(オングストローム))3
【0141】
不活性雰囲気下、50mL丸底反応フラスコに、溶融ヘキサデシルアミン6.3mL、およびヘキサン中ZnSeコア(上記のもの)150nmolを添加した。揮発性溶媒がすべて除去されるまで、フラスコを真空下に保持した。次いで、ジメチルカドミウム(Me2Cd)0.108g、CYANEX 272 0.358mL、およびトリオクチルホスフィン2.602mLの混合物301μLを添加する(Cd 75.3μmol)。
【0142】
この混合物を255℃に加熱し、20分間温度を保持した。コア/シェルが所望の最終生成物であった場合、20分の保持時間の直後にシェル前駆体を添加する(実施例7参照)。そうでない場合、フラスコを室温に冷ました。最終材料は495nmの発光極大波長、および40nmのFWHMを有した。
【0143】
実施例5:硫化亜鉛シェルによる被覆
ある容量の実施例1で調製した溶融ZnSeコアに、6容量のトルエン、次いで2容量のブタノールを添加した。この混合物を完全に混合した後、7容量のメタノールを添加した。濁った混合物を約3000rpmで遠心分離した。上清を捨て、1容量のヘキサンを添加してペレットを溶解した。最初の吸光特徴で吸光度を測定し、吸光係数で割ることによって、ヘキサン溶液の濃度を求めた。吸光係数は以下の式で算出し、粒径はTEMによって測定した。
ε=4.8080×(粒径(オングストローム))3
【0144】
不活性雰囲気下、50mL丸底反応フラスコに、溶融ヘキサデシルアミン6.3mL、およびヘキサン中ZnSeコア(上記のもの)150nmolを添加した。揮発性溶媒がすべて除去されるまで、フラスコを真空下に保持した。この混合物を255℃に加熱した。溶液が255℃に達した時、Et2Zn 0.186gと、CYANEX 272 0.717mLと、トリオクチルホスフィン5.155mLとの混合物2.2mL(Zn 0.55mmol)、ならびにビス(トリメチルシリル)スルフィド((TMS)2S)0.269gおよびトリオクチルホスフィン2.243gの混合物1.1mL(S 0.55mmol)を、87分間かけて連続して添加した。連続手順の数および持続期間は、それぞれ厚さ3オングストローム(0.3nm)であるZnSの4つの単層を供給するのに必要とされる亜鉛および硫黄原子のモル数を算出することによって求めた。各手順は亜鉛から開始した。前駆体の添加が完了した時、混合物を100℃に冷却し、トルエン9.8mLを添加した。トルエンを添加した後、混合物を室温に冷ました。最終材料は422nmの発光極大波長、および19nmのFWHMを有した。有機溶媒中のこの材料の量子収率を、25%TOPおよび75%2-メチル-THFの混合物中で測定した。TOPは良好な脱酸素剤であり、酸素感受性材料の量子収率を測定する時に必要とされる。上記有機溶媒中の量子収率は31%であった。疎水的に改質した親水性ポリマーを含む95%50mMホウ酸塩溶液および5%2-メルカプトエタノールの混合物に材料を再分散した時、量子収率は20%であった(実施例11)。50mMホウ酸塩溶液に分散した水分散性粒子は、3分の一定照明後、初期発光強度の75%を失った。粒子50個に関してTEMで測定した平均径は8.3nm、標準偏差1nmであった。
【0145】
実施例6:硫化亜鉛シェルによる被覆
実施例3の最後20分の保持時間の直後に、Et2Zn 0.925gと、CYANEX 272 3.57mLと、トリオクチルホスフィン25.65mLとの混合物1.922mL(Zn 0.48mmol)、ならびに(TMS)2S0.128gおよびトリオクチルホスフィン1.072gの混合物0.961mL(S 0.48mmol)を、96分間かけて連続して添加した。連続手順の数および持続期間は、それぞれ厚さ3オングストローム(0.3nm)であるZnSの4つの単層を供給するのに必要とされる亜鉛および硫黄原子のモル数を算出することによって求めた。各手順は亜鉛から開始した。前駆体の添加が完了した時、混合物を100℃に冷却し、トルエン9.6mLを添加した。トルエンを添加した後、混合物を室温に冷ました。最終材料は525nmの発光極大波長、およびFWHM 44nmを有した。
【0146】
実施例7:硫化亜鉛シェルによる被覆
実施例4の最後20分の保持時間の直後に、Et2Zn 0.167gと、CYANEX 272 0.645mLと、トリオクチルホスフィン4.639mLとの混合物2.2mL(Zn 0.55mmol)を、Me2Cd(Cd 0.055mmol)0.269gと、CYANEX 272 0.896mLと、トリオクチルホスフィン6.505mLとの混合物0.22mLと混合し、(TMS)2S0.269gおよびトリオクチルホスフィン2.243gの混合物1.1mL(S 0.55mmol)と共に、96分間かけて連続して添加した。連続手順の数および持続期間は、それぞれ厚さ3オングストローム(0.3nm)であるZnSの4つの単層を供給するのに必要とされる亜鉛および硫黄原子のモル数を算出することによって求めた。各手順は亜鉛から開始した。前駆体の添加が完了した時、混合物を100℃に冷却し、トルエン9.8mLを添加した。トルエンを添加した後、混合物を室温に冷ました。最終材料は519nmの発光極大波長、およびFWHM 48nmを有した。ヘキサン中の有機量子収率は47%であった。疎水的に改質した親水性ポリマーを含む50mMホウ酸塩に分散した粒子の量子収率は42%であった(実施例11)。ヘキサンに分散した有機粒子は、3分の一定照明後、初期発光強度の40%を失った(図6)。50mMホウ酸塩溶液の水分散性粒子は、3分の一定照明後、初期発光強度の28%を失った(図7)。
【0147】
実施例8:マグネシウムによる処理
50mL丸底フラスコに、酢酸マグネシウム水和物857.8mg、CYANEX 272 5.07mL、およびトリオクチルホスフィン14.34mLを添加した。強い(sweeping)窒素流下、混合物を250℃に加熱し、その後すぐに室温に戻した。次いで、イソプロピルアルコール4mLおよびメタノール12mLを、実施例6のコア/シェル15.9mLに添加した。濁った溶液を完全に混合し、3000rpmで10分間遠心分離した。上清を捨て、ヘキサン15.9mLを添加してペレットを再び溶解した。遠心分離で白色の不溶性固体を除去して、ナノ結晶の透明な有色分散液を得た。前と同様に粒子をさらに沈澱させ、上述のマグネシウム溶液に再分散した。ペレットがマグネシウム溶液に完全に分散したところで、混合物を真空下、室温で脱気した。最後に、混合物を180℃に加熱し、その温度で1時間保持した。1時間の保持時間の後、混合物を室温に冷却した。最終材料は520nmの発光極大波長、およびFWHM 41nmを有した。ヘキサン中の有機量子収率は59%であった。疎水的に改質した親水性ポリマーを含む50mMホウ酸塩に分散した粒子の量子収率は50%であった(実施例11)。
【0148】
実施例9:マグネシウムによる処理
50mL丸底フラスコに、酢酸マグネシウム水和物646.5mg、CYANEX 272 3.82mL、およびトリオクチルホスフィン10.81mLを添加した。強い窒素流下、混合物を250℃に加熱し、その後すぐに室温に戻した。次いで、イソプロピルアルコール2.5mLおよびメタノール7.5mLを、実施例7のコア/シェル10mLに添加した。濁った溶液を完全に混合し、3000rpmで10分間遠心分離した。上清を捨て、ヘキサン10mLを添加してペレットを再び溶解した。遠心分離で白色の不溶性固体を除去して、ナノ結晶の透明な有色分散液を得た。前と同様に粒子をさらに沈澱させ、上述のマグネシウム溶液に再分散した。ペレットがマグネシウム溶液に完全に分散したところで、混合物を真空下、室温で脱気した。最後に、混合物を180℃に加熱し、その温度で1時間保持した。1時間の保持時間の後、混合物を室温に冷却した。最終材料は515nmの発光極大波長、およびFWHM 39nmを有した。ヘキサン中に分散した有機量子収率は67%であった。材料を、疎水的に改質した親水性ポリマーを含む50mMホウ酸塩溶液に再分散した時、量子収率は51%であった。ヘキサンに分散した有機粒子は、3分の一定照明後、初期発光強度の4%を失った(図6)。50mMホウ酸塩溶液に分散した水分散性粒子は、3分の一定照明後、初期発光強度の4%を失った(図7)。粒子50個に関してTEMで測定した平均径は8.5nm、標準偏差0.9nmであった。図14は、実施例2のZnSeコアおよび本実施例で調製したZnCdSe/ZnMgSコア/シェルの粒度の比較を示している。
【0149】
実施例10:ナノ結晶表面に付着させる疎水的に改質した親水性ポリマーの調製
疎水的に改質した親水性ポリマーは、以下のように、Adamsらの米国特許第6,649,138号に記載のとおり調製した。
【0150】
ポリ(アクリル酸、ナトリウム塩)(Aldrichから入手、分子量1200)100g[COONa0.48mol]を水で2倍に希釈し、1.0L丸底フラスコで濃HCl 150ml(1.9mol)を用いて酸性化することによって、変性ポリアクリル酸を調製した。この酸性化ポリマー溶液をロータリエバポレータ(100mbar、80℃)で濃縮乾固した。乾燥ポリマーを10mbar未満で12時間減圧して、確実に水を除去した。攪拌子および1-[3-(ジメチル-アミノ)-プロピル]-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC-Aldrich 98%)47.0g(0.24mol)をフラスコに加え、その後フラスコを密閉し、N2でパージし、バルーンを取り付けた。無水N,N-ジメチルホルムアミド(Aldrich)500mlを正圧下、カニューレを通してこの混合物に移し、フラスコを静かに回転させて、固体を溶解した。オクチルアミン32ml(0.19mol)を正圧下、乾燥器で乾燥した密閉メスシリンダから攪拌ポリマー/EDC溶液にカニューレを通して1滴ずつ移し、攪拌を12時間続けた。この溶液をロータリエバポレータ(30mbar、80℃)で<100mlに濃縮し、冷却した濃縮液にdi-H2O(脱イオン水)200mlを添加することによってポリマーを沈澱させ、これにより白色のゴム状材料が生成した。この材料を上清から分離し、さらに3回di-H2O100mlで摩砕した。生成物を穏やかに加熱しながら酢酸エチル(Aldrich)400mlに溶解し、di-H2O200mlおよびN-N-N-N-テトラメチルアンモニウムヒドロキシドペンタヒドラート(0.55mol)100gで12時間、塩基性化した。水層を取り、1.27M HCl 400mlで白色のゴム状生成物に沈澱させた。生成物をデカントし、di-H2O 100mlでさらに2回摩砕し、その後、水性洗浄液を酢酸エチル6×100mL部分に逆抽出した。これらの酢酸エチル溶液を生成物のフラスコに加え、濃縮乾固した(100mbar、60℃)。粗製ポリマーをメタノール300mLに溶解し、LH-20(Amersham-Pharmacia、5.5cm×60cmカラム)によって流速3mL/分でアリコート2つに精製した。画分を純度に関してnmRで試験して、純粋な画分をプールし、不純な画分をLH-20カラムで再び精製した。純粋な画分をすべてプールした後、ポリマー溶液を回転蒸発して濃縮乾固し、12時間<10mbarで減圧した。生成物は白色粉末であり(25.5g、理論収率の45%)、CD3ODで広幅のnmRピーク[δ=3.1b(9.4),2.3b(9.7),1.9 1.7 1.5 1.3b(63.3)0.9bt(11.3)]を示し、カルボン酸(1712cm-1)およびアミド基(1626cm-1、1544cm-1)の両方に関して明確なIRシグナルを示した。
【0151】
実施例11:疎水的に改質した親水性ポリマーを用いる水分散性量子ドットの調製
以下の手順を用いて、いくつかの前述の実施例から水分散性ナノ結晶を得た。以下のように、米国特許第6,649,138号に記載のとおり疎水的に改質した親水性ポリマーを用いる水性溶媒系に、疎水性量子ドットを分散した。
【0152】
実施例5、6、7、8、または9で調製した3〜5μM(3〜5nmol)のTOPO/TOP被覆コア/シェルナノ結晶20mLをメタノール20mLで沈澱させた。凝集塊を3000×gで3分間遠心分離して、ナノ結晶のペレットを形成させた。その後、上清を除去し、メタノール20mLを再び粒子に添加した。粒子をボルテックスして、メタノール全体に凝集塊を緩やかに分散した。凝集塊をさらなる時間遠心分離して、ナノ結晶のペレットを形成させた。沈澱/遠心分離工程をさらなる時間繰り返して、ナノ結晶合成から残存している任意の過剰の反応物を除去した。クロロホルム20mLをナノ結晶ペレットに添加して、自由に分散したゾルを得た。
【0153】
疎水的に改質したポリ(アクリル酸)300mgをクロロホルム20mLに溶解した。テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中1.0M)をポリマー溶液に添加して、溶液のpH10に上昇させた(pHはクロロホルム溶液の少量のアリコートをpH紙にスポットし、溶媒を蒸発させ、その後、pH紙を蒸留水で湿らせることによって測定した)。その後、攪拌子を備えた250mL丸底フラスコでポリマー溶液をクロロホルム20mLに添加した。この溶液を1分間攪拌して、ポリマー溶液の混合を確実に完了させた。攪拌を続けながら、上記の洗浄したナノ結晶分散液を1滴ずつポリマー溶液に添加した。次いで、この分散液を2分間攪拌して成分の混合を確実に完了させ、その後、真空中低熱でクロロホルムを除去して、フラスコの壁に粒子/ポリマー複合体の薄膜を得た。蒸留水20mLをフラスコに添加し、フラスコの壁に沿って旋回させて、粒子が水性媒質に分散するのを助けた。その後、この分散液を室温で一晩攪拌した。この時点で、ナノ結晶は水性媒質に自由に分散していた。
【0154】
実施例12:ポリエトキシル化変性水分散性量子ドットの調製
実施例11の水分散性量子ドットを7000倍モル過剰のポリエチレングリコール(PEG)分子と混合する。分子量が200から20,000Daの範囲であり、メトキシ、ヒドロキシル、アミン、カルボキシ、ホスファート、チオール、アジド、NHSエステル、アルデヒド、イソシアナート、およびビオチンなどの種々の官能基を有するPEG分子またはPEG分子の混合物を用いることができる。次いで、3000倍モル過剰のEDCを添加し、混合物を2時間攪拌した。限外濾過によって過剰なPEGおよびEDCを除去した。ポリエトキシル化された、実施例8の水分散性ナノ結晶の量子収率は37%であった。ポリエトキシル化された、実施例9の水分散性ナノ結晶の量子収率は50%であった。
【0155】
実施例13:量子ドットストレプトアビジンコンジュゲートの調製
実施例12のポリエトキシル化変性水分散性量子ドットに、100倍モル過剰のビス(スルホスクシンイミジル)スベラート(BS3)を添加し、30分間穏やかに混合した。illustra(商標)NAP-5カラム(GE Healthcare)で精製することによって、過剰のBS3を除去した。NAP-5カラムから得た精製BS3活性化粒子を40倍モル過剰のストレプトアビジンと混合し、室温で2時間インキュベートさせた。残存する未反応BS3をグリシン1M溶液でクエンチした。溶液1L当たりグリシン50mmolを溶液が含有するように、ある量の1Mグリシン溶液をストレプトアビジン結合粒子に添加した。コンジュゲートを限外濾過によって過剰グリシンから精製した。実施例9のコアシェルから得たストレプトアビジンコンジュゲートの量子収率は38%であった。これらのストレプトアビジンコンジュゲートの明度を、市販されているCdSeコアをベースとするストレプトアビジンコンジュゲートとELISAアッセイで比較した(図10)。本発明によって提供されるストレプトアビジンコンジュゲートは、市販されているナノ結晶より約4.6倍明るかった。
【0156】
実施例14:量子ドット二次抗体コンジュゲートの調製
実施例12のポリエトキシル化変性水分散性量子ドットに、130倍モル過剰のスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)を添加した。この溶液を穏やかに混合し、室温で1時間インキュベートした。SMCC活性化量子ドットをillustra NAP-25カラムで過剰SMCCから精製した。第2の反応容器で、ポリエトキシル化粒子1nmol当たり0.35mgのFabまたはF(ab')2抗体フラグメントを、抗体1mg当たり4000nmolのジチオトレイトール(DTT)と混合し、30分間穏やかに混合した。DTT還元抗体をillustra NAP-25カラムで過剰のDTTから精製した。活性化量子ドットおよび還元抗体を混合し、室温で2時間インキュベートさせた。コンジュゲートを45倍モル過剰の2-メルカプトエタノールと30分間インキュベートすることによって、残存する未反応SMCCをクエンチした。抗体コンジュゲートを高速タンパク質液体クロマトグラフィ(FPLC)で精製した。実施例8のコア/シェルから得たヤギ抗ウサギコンジュゲートの量子収率は31%であった。これらの抗体コンジュゲートの明度を、市販されているCdSeコアをベースとする抗体コンジュゲートとELISAアッセイで比較した(図11)。本発明によって提供される抗体コンジュゲートは、市販されているナノ結晶より約4.5倍明るかった。さらに、これらの抗体コンジュゲートの明度を、市販されているCdSeコアをベースとする抗体コンジュゲートと細胞標識化応用例で比較した(図12)。本発明によって提供される抗体コンジュゲートは、励起波長に応じて、市販されているナノ結晶より約2から3倍明るかった。
【0157】
本明細書において開示され特許請求されるすべての組成物および/または方法は、本開示に照らして、過度の実験を行うことなく製造および実行できる。本発明の組成物および方法を好ましい態様に関して記載したが、本発明の概念および範囲から逸脱することなく、本明細書において記載の組成物および/または方法、ならびに方法の工程または工程の順序に変更を加えられ得ることが当業者には明らかである。より具体的には、本明細書において記載の剤の代わりに化学的に関連するある種の剤を用いることができ、同時に同じであるかまたは類似の結果が得られることが明らかである。当業者に明らかなそのような類似の代用物および改変はすべて、本発明の範囲および概念に含まれるものとみなされる。
【0158】
実施例14:相対光安定性の実験的試験
光安定性実験を疎水性および親水性両方のナノ粒子で行った。疎水性ナノ粒子を試験した場合、ヘキサンを用いて試料および参照物質を希釈し、光学密度が等価となるように調整した。親水性ナノ粒子を試験した場合、50mMホウ酸緩衝液を用いて試料および参照物質を希釈し、光学密度が等価となるように調整した。光安定性実験において常に参照物質を用いた。参照物質は一般に、非マグネシウム含有ナノ粒子または市販のCdSeナノ粒子であった;他の参照が同定されない場合、コア/シェルナノ結晶のコア単独(シェルを伴わない)を参照標準として用いることができる。この実験は、一定照明下、経時的にナノ粒子の積分発光強度を測定することによって行った。照明源は、48mAの定電流で動作する、Opto Technology,Inc.から購入した375nm発光Shark Series Visible LEDであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアおよびシェルを含む明るいナノ結晶であって、
a)可視範囲において特徴的な蛍光発光波長を有し、
b)光安定性であり、かつ
c)明るいナノ結晶と同じ発光波長を有する大きさであるCdSeコアを有する従来のナノ結晶の蛍光強度の少なくとも約2倍の蛍光強度を提供する、
明るいナノ結晶。
【請求項2】
明るいナノ結晶の特徴的な蛍光発光波長が、約400nmから約600nmの間である、請求項1記載の明るいナノ結晶。
【請求項3】
明るいナノ結晶のコアがZnを含む、請求項1または2記載の明るいナノ結晶。
【請求項4】
明るいナノ結晶のシェルがMgを含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の明るいナノ結晶。
【請求項5】
明るいナノ結晶が、450nmから550nmの間、または500から550の間に特徴的な蛍光発光波長を有する、請求項1〜4のいずれか一項記載の明るいナノ結晶。
【請求項6】
コアおよびシェルを含むナノ結晶であって、コアがZnを含み、かつシェルがMgを含む、ナノ結晶。
【請求項7】
シェルがZnおよびMgを含む、請求項6記載のナノ結晶。
【請求項8】
コアがZnSeまたはZnCdSeを含む、請求項6または7記載のナノ結晶。
【請求項9】
コアがZnCdSeを含み、Zn対Cdの比が約1から約5の間である、請求項8記載のナノ結晶。
【請求項10】
シェルがZnSを含む、請求項6〜9のいずれか一項記載のナノ結晶。
【請求項11】
シェルがMgSを含む、請求項6〜10のいずれか一項記載のナノ結晶。
【請求項12】
コアが本質的にZnCdSeからなる、請求項6〜11のいずれか一項記載のナノ結晶。
【請求項13】
コアが本質的にZnSeからなる、請求項6〜11のいずれか一項記載のナノ結晶。
【請求項14】
シェルが本質的にMgSおよびZnSの混合物からなる、請求項12または13記載のナノ結晶。
【請求項15】
シェル中のMgSの量が、そのシェル中にマグネシウムを含有しないがその他の点では同一のナノ結晶と比べて、ナノ結晶の光安定性を増大するのに十分な量である、請求項14記載のナノ結晶。
【請求項16】
MgSの量が、そのシェル中にマグネシウムを含有しないがその他の点では同一のナノ結晶がその蛍光強度の少なくとも20%を失う照射条件下で、その蛍光強度の10%未満を失うナノ結晶を提供するのに十分な量である、請求項15記載のナノ結晶。
【請求項17】
MgSの量が、そのシェル中にマグネシウムを含有しないがその他の点では同一のナノ結晶がその蛍光強度の少なくとも40%を失う照射条件下で、その蛍光強度の10%未満を失うナノ結晶を提供するのに十分な量である、請求項15記載のナノ結晶。
【請求項18】
xが0.15から0.95の間であるZnxCd1-XSeコアと、yが少なくとも約0.1であるMgyZn1-ySを含むシェルをと含む、請求項6記載のナノ結晶。
【請求項19】
ナノ結晶が、可視スペクトルの青色または緑色部分において特徴的な蛍光極大波長を有する、請求項18記載のナノ結晶。
【請求項20】
光安定性である、請求項19記載のナノ結晶。
【請求項21】
光安定性ナノ結晶を製造するための方法であって、
i)第1のコア/シェルナノ結晶を提供する工程;
ii)マグネシウム材料を含有する反応混合物に該ナノ結晶を分散する工程;および
iii)該ナノ結晶を含む反応混合物を少なくとも約120℃の温度に加熱して、該第1のコア/シェルナノ結晶より良好な光安定性を有する光安定性ナノ結晶を提供する工程
を含む、方法。
【請求項22】
光安定性ナノ結晶が、第1のコア/シェルナノ結晶がその初期発光強度の20%を失う条件下で、その初期発光強度の10%未満を失う、請求項21記載の方法。
【請求項23】
反応混合物が、アルキルホスフィン酸、トリアルキルホスフィン、もしくはトリアルキルホスフィンオキシド、またはこれらの材料の少なくとも2種の混合物を含む、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
光安定性ナノ結晶が、第1のコア/シェルナノ結晶がその初期発光強度の40%を失う条件下で、その初期発光強度の10%未満を失う、請求項21記載の方法。
【請求項25】
第1のコア/シェルのコアがZnSeを含む、請求項21〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
第1のコア/シェルのコアがZnCdSeを含む、請求項21〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
Zn対Cdの比が少なくとも約1である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
コア中のCdの量が、約6nmの最大寸法と、可視スペクトルの青色または緑色域における蛍光色とを有するコアを提供する、請求項26記載の方法。
【請求項29】
コア中のCdの量が、約6nmの最大寸法と、500nmを超える波長での蛍光発光極大とを有するコアを提供する、請求項26記載の方法。
【請求項30】
第1のコア/シェルナノ結晶のシェルがZnSを含む、請求項21〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
マグネシウム材料が、アルキルカルボン酸マグネシウムである、請求項21〜30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
アルキルカルボン酸マグネシウムが酢酸マグネシウムである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
反応混合物が、トリアルキルホスフィン、トリアルキルホスフィンオキシド、アルキルアミン、およびアルキルホスフィン酸から選択される少なくとも1種の材料を含む、請求項21〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
反応混合物がトリオクチルホスフィンを含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
ナノ結晶を含む反応混合物を加熱する工程が、該混合物を約150℃から約250℃の間の温度に加熱することを含む、請求項21〜34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
ナノ結晶を含む反応混合物を加熱する工程が、該混合物を約0.5時間から約4時間の間加熱することを含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
請求項21〜36のいずれか一項記載の方法で製造された光安定性ナノ結晶。
【請求項38】
半導体コアおよびシェルを含むナノ結晶であって、シェルがMgを含む、ナノ結晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−529234(P2010−529234A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510540(P2010−510540)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/065425
【国際公開番号】WO2009/025913
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】