説明

ナノ結晶粒子蛍光体と被覆ナノ結晶粒子蛍光体、ならびに被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法

【課題】13族窒化物混晶半導体を含み、13族窒化物混晶半導体の混晶比を制御することができる発光効率が高く信頼性に優れたナノ結晶粒子蛍光体および分散性を高めた被覆ナノ結晶粒子蛍光体ならびにその製造方法を提供する。
【解決手段】13族窒化物半導体からなるコアと、コアを被覆し13族窒化物混晶半導体からなるシェル膜を含むシェル層とのコア/シェル構造であるナノ結晶粒子蛍光体ならびに、該ナノ結晶粒子蛍光体が修飾有機分子により結合および/もしくは被覆されてなる被覆ナノ結晶粒子蛍光体を提供する。また、13族窒化物半導体からなるコアと、窒素含有化合物と、13族元素含有化合物と修飾有機分子を含む混合溶液を加熱する被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ結晶粒子蛍光体と被覆ナノ結晶粒子蛍光体、ならびにこれらの製造方法に関し、詳しくは、発光強度、発光効率を向上させたナノ結晶粒子蛍光体、およびナノ結晶粒子蛍光体を修飾有機分子で修飾してなる被覆ナノ結晶粒子蛍光体、ならびに合成手順が簡便で合成収率が高い該製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体結晶粒子(以下「結晶粒子」という。)をボーア半径程度に小さくすると、量子サイズ効果を示すことが知られている。量子サイズ効果とは物質の大きさが小さくなるとその中の電子は自由に運動できなくなり、このような状態では電子のエネルギは任意ではなく特定の値しか取り得なくなることであり、電子をナノメートルサイズの空間に閉じ込めることで、波動としての性質が顕著に表れる効果を指す。たとえば、ボーア半径程度の結晶粒子から発生する光の波長は寸法が小さくなるほど短波長になる(非特許文献1)。そして、非特許文献1に記載のII−VI族化合物半導体を用いた蛍光体は、信頼性および耐久性に問題があり、また、カドミウムやセレンといった環境汚染物質を使用しているため、これに代わる材料が必要とされてきた。
【0003】
II−VI族化合物半導体に代わる材料として、窒化物系半導体の微結晶合成の試みがなされている(特許文献1参照)。特許文献1では、水酸化ガリウムから酸化ガリウムを製造し、該酸化ガリウムをアンモニア中で加熱させて窒化ガリウム蛍光体を合成している。特許文献1では、該加熱の温度は1000℃程度であり、気相反応を行なっている。
【0004】
さらに、GaN粒子の合成は液相反応においても検討されている(非特許文献2)。非特許文献2では、三塩化ガリウムと窒化リチウムとを、ベンゼン溶液中で反応させることによりGaNナノ粒子を合成している。
【0005】
しかし、GaN粒子は、主に近紫外領域での発光波長を有している。また、該GaN粒子は、量子サイズ効果を示すことができない。そこで、可視領域での発光波長を有する13族窒化物半導体の結晶粒子を実現すべく鋭意研究を行なわれており、その一環で13族窒化物混晶半導体の結晶粒子の混晶比を制御する研究が行なわれている。
【特許文献1】特開2000−198978号公報
【非特許文献1】C.B.Murray,D.J.Norris,and M.G.Bawendi“Synthesis and Characterization of Nearly Monodisperse CdE(E=S,Se,Te) Semiconductor Nanocrystallites”Journal of the American Chemical Society 1993,115,8706−8715
【非特許文献2】Yi Xie,Yitai Qian,Wenzhong Wang,Shuyuan Zhang,Yuheng Zhang“A Benzene−Thermal Synthetic Route to Nanocrystalline GaN”SCIENCE 1996,vol.272,no.5270,pp.1926−1927
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記状況に鑑み、本発明の目的は、13族窒化物混晶半導体からなるシェル層を含み、13族窒化物混晶半導体の混晶比を制御することができる発光効率が高く信頼性に優れたナノ結晶粒子蛍光体およびその製造方法を提供することである。
【0007】
さらに本発明の目的は、ナノ結晶粒子蛍光体の表面を修飾有機分子が強固に結合することで、分散性を高めた被覆ナノ結晶粒子蛍光体、およびその簡便で効率のよい製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、13族窒化物半導体からなるコアと、コアを被覆し、13族窒化物混晶半導体からなるシェル膜を含むシェル層とのコア/シェル構造であるナノ結晶粒子蛍光体に関する。
【0009】
また、本発明は、ナノ結晶粒子蛍光体の外表面が、修飾有機分子により結合および/もしくは被覆されてなる被覆ナノ結晶粒子蛍光体に関する。
【0010】
また、本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体において、コアの窒素原子とシェル層の13族原子とが化学結合し、シェル層の窒素原子とコアの13族原子とが化学結合していることが好ましい。
【0011】
また、本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体において、コアは、窒化ガリウムからなることが好ましい。
【0012】
また、本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体において、13族窒化物混晶半導体は、インジウム原子を5〜60モル%含有することが好ましい。
【0013】
また、本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体において、シェル層の厚みがボーア半径の2倍以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体において、シェル層が複数のシェル膜からなる積層構造であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体において、シェル層は、バンドギャップが前記コアよりも小さくコアを被覆する13族窒化物混晶半導体からなる第1シェル膜と、バンドギャップがコア以上であり前記第1シェル膜を被覆する第2シェル膜とからなることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、13族窒化物半導体からなるコアと、窒素含有化合物と、13族元素含有化合物とを含む混合溶液に、修飾有機分子を更に混合する被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法に関する。
【0017】
また、本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法において、13族元素含有化合物および前記窒素含有化合物の少なくとも1つの化合物が、インジウムおよび/もしくはガリウムと窒素との結合を有する化合物であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法において、混合溶液の溶媒は、炭化水素系溶媒であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法において、加熱する温度は、180〜500℃であることが好ましい。
【0020】
また、本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法において、修飾有機分子が2種以上であることが好ましい。
【0021】
なお、本発明におけるナノ結晶粒子蛍光体のコア/シェル構造とは、内核/外殻構造をそのもの示すものであり、必ずしもシェルからコアへのエネルギ移動による発光機構を有するものではない。
【発明の効果】
【0022】
本発明のナノ結晶粒子蛍光体は、13族窒化物混晶半導体からなるシェル層の混晶比を制御することができ、可視領域での発光波長を有し、発光効率が高く信頼性に優れる。また、本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体は、分散性に優れる。
【0023】
また、本発明のナノ結晶粒子蛍光体および被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法によれば、簡便に効率よくナノ結晶粒子蛍光体および被覆ナノ結晶粒子蛍光体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
〔被覆ナノ結晶粒子蛍光体の構成〕
図1は、本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体の好ましい一実施形態を示した模式図である。図1を参照しつつ、被覆ナノ結晶粒子蛍光体10の説明を行なう。なお、図1における長さ、大きさ、幅などの寸法関係は、図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法を表してはいない。
【0025】
本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体10の基本的な構成は、コア11とコア11を被覆するシェル層14とからなるナノ結晶粒子蛍光体15の表面を、修飾有機分子16が結合および/もしくは被覆してなるものである。本発明において、コア11は、13族窒化物半導体からなり、シェル層14は、13族窒化物混晶半導体からなるシェル膜を含む。シェル層14は、1つのシェル膜からなる単層構造であっても良いし、複数のシェル膜からなる積層構造であっても良い。シェル層15を構成するシェル膜が複数である場合には、少なくとも1つのシェル膜が13族窒化物混晶半導体からなるものであればよい。図1では、便宜上コア11を直接被覆する第1シェル膜12と、第1シェル膜12を被覆する第2シェル膜13とからなるシェル層14を示している。
【0026】
修飾有機分子16は、物理的結合力および/もしくは化学的結合力によってナノ結晶粒子蛍光体15に結合している。また、修飾有機分子16の一部は、シェル層14の外表面に直接結合せずに、ナノ結晶粒子蛍光体15の周辺に存在する。そして、ナノ結晶粒子蛍光体15は、修飾有機分子16によって被覆されている。
【0027】
また、シェル層14はコア11を一部もしくは全て包含していれば良く、また、シェル層14の被覆の厚みに分布があってもよい。
【0028】
〔ナノ結晶粒子蛍光体〕
本発明のナノ結晶粒子蛍光体15は、コア11とコア11を被覆するシェル層14とから構成される。コア11は、13族元素から選ばれる1種の原子と窒素原子との結合を有する化合物である13族窒化物半導体からなる。シェル層14は、13族元素から選ばれる少なくとも2種以上の原子と窒素原子との結合を有する化合物である13族窒化物混晶半導体からなるシェル膜を含む。また、シェル層14は、13族元素から選ばれる1種の原子と窒素原子との結合を有する化合物である13族窒化物半導体からなるシェル膜を含んでも良い。ここで、13族窒化物混晶半導体における化合物中の13族元素の原子と窒素原子との混合の割合を以下、混晶比という。
【0029】
ナノ結晶粒子蛍光体15において、コア11表面では、未結合手を有する窒素原子と13族元素の原子とが配列している。該未結合手にシェル層14の原料となる元素が結合する。このとき、コア11の表面の窒素原子とシェル層14の13族元素の原子とが、コア11の表面の13族元素の原子とシェル層14の窒素原子とが化学結合している。コア11が存在することによって、シェル層14を形成する元素からなる原子は、規則正しく成長し、その結果シェル層14における13族窒化物混晶半導体からなるシェル膜および13族窒化物半導体からなるシェル膜は結晶欠陥が少ない。また、シェル層14が積層構造である場合に、隣接するシェル膜の13族元素の原子と窒素原子とは、それぞれ該シェル膜と隣接するシェル層の窒素原子と13族元素の原子と化学結合しうる。
【0030】
また、13族窒化物混晶半導体からなるシェル膜は、ナノ結晶粒子蛍光体15の発光層としての役割を果たす。原理は以下のとおりである。13族窒化物混晶半導体からなるシェル膜において、励起光の吸収および発光が行われる。励起光のエネルギは、該シェル膜によって吸収され励起される。本発明のコア11は離散化した複数のエネルギ準位のみとり得るが、一つの準位になる場合もある。本発明の13族窒化物混晶半導体からなるシェル膜の厚さは、後述するとおり、量子サイズ効果を有する程度に小さいので、該シェル膜で吸収・励起された光エネルギは、伝導帯の基底準位と価電子帯の基底準位との間で遷移し、そのエネルギに相当する波長の光が発光する。そして、該シェル膜の混晶比を制御することでバンドギャップを制御することができ、結果として、ナノ結晶粒子蛍光体15が発する光の色を制御することができる。
【0031】
そして、13族窒化物混晶半導体からなるシェル膜は、インジウム原子とガリウム原子とを含むことが好ましい。高効率で400〜410nmの励起光を吸収し、発光効率の高い赤色、緑色および青色を発するナノ結晶粒子蛍光体15を作製することができるためである。
【0032】
ここで、シェル層14が積層構造である場合には、コア11を直接被覆する第1シェル膜12が、13族窒化物混晶半導体からなることが好ましい。第1シェル膜12はコア11隣接することから、コア11が吸収した光について効率よくエネルギ変換することで、結果として、ナノ結晶粒子蛍光体15の発する光の色を制御しやすいためである。このとき第1シェル膜12は、窒化インジウム・ガリウム混晶半導体からなることが好ましい。13族窒化物半導体からなるコア11を核として13族窒化物混晶半導体からなる第1シェル膜12を形成する場合、混晶を形成しやすく、発光効率が高く信頼性に優れたナノ結晶粒子蛍光体15を得ることができる。また、コア11の表面欠陥をキャッピングできる。
【0033】
シェル層14が積層構造である場合には、コア11から積層構造を構成する各シェル膜との距離が遠くなるにしたがって、段階的に各シェル膜のバンドギャップが小さくなることが好ましい。結果として、効率よくエネルギ変換することができるためである。
【0034】
ただし、シェル層14が積層構造である場合には、シェル層14を構成するシェル膜のうち、最外殻にあたるシェル膜のバンドギャップは、コア11のバンドギャップ以上であることが好ましい。コア11および最外殻にあたるシェル膜は、13族窒化物混晶半導体からなるシェル膜で発生した励起キャリアの閉じ込め効果に寄与し、発光効率を向上させることができるためである。
【0035】
以下、好ましい一形態として、シェル層14が第1シェル膜12と最外殻にあたる第2シェル層13とからなり、第1シェル膜12は13族窒化物混晶半導体であるナノ結晶粒子蛍光体15に例に説明する。該ナノ結晶粒子蛍光体15は、3層構造を形成しており、励起光により励起されたキャリアは第1シェル膜12で閉じ込められ、閉じ込められたキャリアは再結合により効率よく発光する。第1シェル膜12で励起光の吸収および発光が行われる。コア11および第2シェル膜13は、第1シェル膜12で発生した励起キャリアの閉じ込め効果に寄与し発光効率を向上させている。励起光のエネルギは、第1シェル膜12によって吸収され励起される。
【0036】
このとき、第1シェル膜12のバンドギャップは、1.8〜2.8eVの範囲にあることが好ましい。ナノ結晶粒子蛍光体15に赤色光を発光させる場合には1.85〜2.5eV、緑色光を発光させる場合には2.3〜2.5eV、青色光を発光させる場合には2.65〜2.8eVの範囲が特に好ましい。なお、13族窒化物混晶半導体における混晶比の割合を調整することでナノ結晶粒子蛍光体15の発光色を決定する。
【0037】
ナノ結晶粒子蛍光体15の第1シェル膜12の膜厚がボーア半径の2倍以下のとき、発光強度が極端に向上する。ボーア半径とは、励起子の存在確率の広がりを示すもので、数式(1)で表される。たとえば、窒化ガリウムのボーア半径は3nm程度、窒化インジウムのボーア半径は7nm程度である。
【0038】
y=4πεh2・me2 数式(1)
ここで、y:ボーア半径、ε:誘電率、h:プランク定数、m:有効質量、e:電荷素量を示す。
【0039】
なお、ナノ結晶粒子蛍光体15の粒子径がボーア半径の2倍以下になると量子サイズ効果により光学的バンドギャップがさらに広がるが、その場合でも本発明においては、上述の第1シェル膜12のバンドギャップ範囲にあることが好ましい。
【0040】
また、ナノ結晶粒子蛍光体15の形状に特に制限はなく、球状、直方体状、多角形体状あるいは空孔や突起を有していてもよいが、電子の閉じ込めが空間的に等方性を有する理由から、球状であることが好ましい。ここで、「球状」とは、ナノ結晶粒子蛍光体15のアスペクト比(最小直径に対する最大直径の比)が1〜2であることを指す。
【0041】
本発明のナノ結晶粒子蛍光体15のコア/シェル構造は、TEM観察を行ない、高倍率での観察像により格子像を確認することでコア11の粒子径およびシェル層14の厚さを確認できる。ナノ結晶粒子蛍光体15の粒子径は、5nm〜100nmの範囲であることが好ましく、6nm〜50nmの範囲が特に好ましく、7〜20nmの範囲が更に好ましい。なお、粒子径は、便宜上球体として換算することで求めた値である。
【0042】
〔コア〕
本発明のコア11は、B、Al、Ga、InまたはTlから選ばれるいずれか1種の13族元素と、窒素原子との結合を有する化合物である13族窒化物半導体からなる。コア11は、バンドギャップの観点から、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)であることが好ましく、発光層である第1シェル膜12との光子整合の比較的よい窒化ガリウムとすることが特に好ましい。本発明のコア11の平均粒子径は、X線回析測定の結果スペクトル半値幅より通常5〜6nmと見積もられる。
【0043】
コア11には意図しない不純物を含んでいてもよい。また、コア11には意図的にドーパントとしてBe、Mg、Ca、SrまたはBaから選ばれる2族元素、ZnあるいはSiから選ばれるいずれかを添加してもよい。ただし、意図的にドーパントを添加する場合には、該ドーパントの濃度は低濃度であることが好ましい。ドーパントの濃度範囲は1×1016cm-3〜1×1021cm-3の間が特に好ましく、また好ましく用いられるドーパントは、Mg、Zn、Siである。
【0044】
〔シェル層〕
本発明のシェル層14は、B、Al、Ga、InまたはTlから選ばれる少なくとも2種以上の13族元素の原子と窒素原子との結合を有する化合物である13族窒化物混晶半導体からなるシェル膜を含む。該13族窒化物混晶半導体としては、バンドギャップの観点から、インジウムを含有することが好ましく、InGaN、InAlNまたはInAlGaNが用いられる。インジウムとガリウムとの混晶は形成しやすく、インジウムおよびガリウムは均一に窒素と結合し、窒化物を形成するため、欠陥が少なく結晶性が良いことから特に、InGaNが好ましい。
【0045】
ここで、13族窒化物混晶半導体にインジウムを含有する場合、13族窒化物混晶半導体の中でインジウムが含まれる割合は、5〜60モル%であることが好ましく、特に10〜50モル%であることが好ましい。上述の割合のインジウムと、他の13族元素、特に好ましくはガリウムとを含有する13族窒化物混晶半導体は、高効率で400〜410nmの励起光を吸収し、発光効率の高い赤色、緑色、青色を発することができるためである。インジウムが含まれる割合が、5モル%より小さい場合には、紫外発光の不具合が生じ、60モル%より大きい場合には赤外発光の不具合が生じる。
【0046】
本発明のシェル層14は、13族窒化物混晶半導体からなるシェル膜の単層からなるものであっても良いし、複数のシェル膜からなる積層構造であっても良い。ここで、シェル膜とは、シェル層15を構成するコア11を被覆する被膜をいう。シェル膜は、コア11または隣接するシェル膜を一部もしくは全面を被覆していれば良く、また、シェル膜の被覆の厚みに分布があってもよい。シェル層15が2以上の積層構造である場合には、コア11側から第1シェル12、第2シェル13と呼称し、第1シェル12のバンドギャップはコア11のバンドギャップよりも小さく、第2シェル13のバンドギャップは、コア11のバンドギャップ以上であることが好ましい。
【0047】
シェル層14の厚さは、その材料のボーア半径の2倍以下であることが好ましい。量子閉じ込めの効果が高いからである。そして、シェル層14の厚さは、1〜10nmの範囲が特に好ましい。ここでシェル層14の厚さが1nmより小さいとコア11の表面を十分に被覆できず均一な発光層を形成しにくい。一方10nmより大きいと量子閉じ込めの効果が弱くなり、またシェル層14を均一に作ることが難しくなり欠陥が増え原材料コストの面においても好ましくない。
【0048】
シェル層14には意図しない不純物を含んでいてもよい。また、コア11には意図的にドーパントとしてBe、Mg、Ca、SrまたはBaから選ばれる2族元素、ZnあるいはSiから選ばれるいずれかを添加してもよい。ただし、意図的にドーパントを添加する場合には、該ドーパントの濃度は低濃度であることが好ましい。ドーパントの濃度範囲は1×1016cm-3〜1×1021cm-3の間が特に好ましく、また好ましく用いられるドーパントは、Mg、Zn、Siである。
【0049】
〔修飾有機分子〕
本発明の修飾有機分子16は、分子中に親水基と疎水基とを有する化合物と定義される。修飾有機分子16としては、窒素含有官能基、硫黄含有官能基、酸性基、アミド基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、水酸基を有する化合物などが挙げられる。
【0050】
さらに、修飾有機分子16として好ましくは疎水基としての非極性炭化水素末端と、親水基としてのアミノ基を持つ化合物であるアミンがあげられる。その具体例としては、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミンなどある。
【0051】
修飾有機分子16で、ワイドギャップのナノ結晶粒子蛍光体15を被覆することによって、ナノ結晶粒子蛍光体15同士は修飾有機分子16で隔離される。そして、修飾有機分子16は、ナノ結晶粒子蛍光体15の表面を保護し、該表面の表面欠陥を少なくすることができる。したがって、被覆ナノ結晶粒子蛍光体10は、分散性が良く、取り扱いが容易である。
【0052】
修飾有機化合物16は、ヘテロ原子−炭素原子間での電気的極性が生じ、ナノ結晶粒子蛍光体15の表面に強固に付着すると考えられる。また、修飾有機分子16による被覆には、ナノ結晶粒子蛍光体15に修飾有機分子16のヘテロ原子が配位結合するような化学結合と、物理吸着による結合との双方が寄与すると考えられる。なお、TEM観察を行ない、高倍率での観察像を確認することにより、修飾有機分子16でナノ結晶粒子蛍光体15を被覆している厚さを確認することができる。
【0053】
〔ナノ結晶粒子蛍光体および被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法〕
本発明のナノ結晶粒子蛍光体15は、13族窒化物半導体よりなるコア11と、窒素含有化合物と、13族元素含有化合物とを含む混合溶液を加熱し、化学反応することによって、製造される。該加熱の温度は好ましくは180〜500℃であり、さらに好ましくは280〜400℃であり、気相反応より低温で操作可能である。180℃より低温であると、反応温度が低く結晶が不完全であるという不具合を生じ、500℃より高温であると、混合している有機分子が分解し結晶中に不純物として取り込まれる不具合を生じる。13族元素含有化合物とは、13族元素の原子を含有する化合物であって、13族元素の原子と窒素原子との結合を有する化合物であることが好ましい。窒素含有化合物とは、窒素原子を含有する化合物であって、13族元素の原子と窒素原子との結合を有する化合物であることが好ましい。なお、例えば、13族元素含有化合物が、13族元素の原子と窒素原子との結合を有する化合物である場合には、コア11と該13族元素含有化合物とを含む混合溶液を加熱し化学反応することによってナノ結晶粒子蛍光体15を製造しうる。
【0054】
また、13族元素含有化合物および窒素含有化合物のいずれかが、インジウムおよび/もしくはガリウムと窒素との結合を有する化合物であることが好ましい。インジウムとガリウムとの混晶は、形成しやすく、インジウムおよびガリウムは均一に窒素と結合しやすいからである。なお、シェル層14の厚さはコア11と窒素含有化合物と13族元素含有化合物との混合比に比例する。
【0055】
上述した混合溶液には、修飾有機分子16の材料となる修飾有機分子16を更に混合する。製造工程で混合する該修飾有機分子16を適当に選択することによりナノ結晶粒子蛍光体15の粒子径を制御できる。また、本発明の製造方法は、気相合成より工程が少なく、かつ液相合成でナノ結晶粒子蛍光体15と被覆ナノ結晶粒子蛍光体10とを1段階で製造することができ、大量合成が可能になる。
【0056】
該混合溶液中の修飾有機分子16の分子量を大きくした場合には、ナノ結晶粒子蛍光体15を小さくすることができ、修飾有機分子16の分子量を小さくした場合には、ナノ結晶粒子蛍光体15を大きくすることができる。これは、修飾有機分子16が、製造工程において、界面活性剤としての働きも有することに由来すると考えられる。つまり、修飾有機分子16の分子量が大きくなるにしたがって、ヘテロ原子に結合している疎水基の長さや立体的なかさ高さが大きくなり、修飾有機分子16は凝縮しやすくなり、これに伴って、ナノ結晶粒子蛍光体15が製造過程で小さくなるものと考えられる。
【0057】
また、本発明の製造方法において、修飾有機分子16は、疎水基としての非極性炭化水素末端と、親水基としてのアミノ基を持つ化合物であるアミンであることが好ましい。さらに、ナノ結晶粒子蛍光体15の粒子径制御のために、修飾有機分子16としては、第3級アミンであることが好ましい。その具体例として、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミンなどある。
【0058】
なお、コア11は、上述した窒素含有化合物と13族元素含有化合物と修飾有機分子とを含む混合溶液を加熱することによって形成される。
【0059】
以下、本発明の製造方法の好ましい一形態として、シェル層14が第1シェル膜12と第2シェル膜13とからなり、第1シェル膜12は13族窒化物混晶半導体であるナノ結晶粒子蛍光体15を例に説明する。製造方法は、「13族元素の原子と窒素原子との結合を有する化合物の製造」、「コアの形成」、「第1シェル膜の形成」、「第2シェル膜の形成:被覆ナノ結晶粒子蛍光体の完成」の各工程に分けて説明する。
【0060】
〔13族元素の原子と窒素原子との結合を有する化合物の製造:材料の準備〕
上述した窒素含有化合物および13族元素含有化合物として好ましい形態である13族元素の原子と窒素原子との結合を有する化合物の製造方法の一例として、分子中にガリウム原子と窒素原子との結合および、分子中にインジウム原子と窒素原子との結合および、アルミニウム原子と窒素原子との結合を有する化合物の製造方法を以下に示す。これらの化合物は、13族窒化物半導体からなるコア11を形成するための前駆体としてのほか、以下の製造の工程においても使用することができる。
【0061】
化学式(1)〜(4)に示す化学反応を行なうことで、トリス(ジメチルアミノ)アルミニウムダイマー、トリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマー、トリス(ジメチルアミノ)インジウムダイマーおよびヘキサ(ジメチルアミノ)インジウム・ガリウムを合成することができる。
【0062】
まず、リチウムジメチルアミドと三塩化アルミニウムとを、n−ヘキサンの溶媒に添加し、5〜30℃、さらに好ましくは10〜25℃で、24〜120時間、さらに好ましくは48〜72時間、攪拌しながら化学反応を行なう。該化学反応が終了した後、副生成物である塩化リチウムを取り除き、トリス(ジメチルアミノ)アルミニウムダイマーを取り出す。この化学反応を化学式(1)で示す。
【0063】
2AlCl3 + 6LiN(CH32 → [Al(N(CH3232化学式(1)
同様の方法で、リチウムジメチルアミドと三塩化ガリウムとを、n−ヘキサン溶媒中で攪拌しながら、トリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマーを合成する。この化学反応を化学式(2)で示す。
【0064】
2GaCl3 + 6LiN(CH32 → [Ga(N(CH3232化学式(2)
同様の方法で、リチウムジメチルアミドと三塩化インジウムとを、n−ヘキサン溶媒中で攪拌しながら、トリス(ジメチルアミノ)インジウムダイマーを合成する。この化学反応を化学式(3)で示す。
【0065】
2InCl3 + 6LiN(CH32 → [In(N(CH3232化学式(3)
次に上述の方法により合成したトリス(ジメチルアミノ)インジウムダイマーとトリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマーとを、n−ヘキサン溶媒に添加し、5〜30℃、さらに好ましくは10〜25℃で、24〜120時間、さらに好ましくは48〜72時間、攪拌しながら化学反応を行なう。該化学反応が終了した後、ヘキサ(ジメチルアミノ)インジウム・ガリウムを取り出す。この化学反応を化学式(4)で示す。
【0066】
1/2[In(N(CH3232 + 1/2[Ga(N(CH3232
→ [((CH32N)2In−(μ−N(CH322−Ga(N(CH322
化学式(4)
リチウムジメチルアミドならびに生成物のトリス(ジメチルアミノ)アルミニウムダイマー、トリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマー、トリス(ジメチルアミノ)インジウムダイマー、およびヘキサ(ジメチルアミノ)インジウム・ガリウムは反応性が高いので上述した化学反応は、全て不活性ガス雰囲気中で行なうのが好ましい。
【0067】
なお、本発明の製造方法において、上述した13族元素の原子と窒素原子との結合を有する化合物とは別の化合物を用いることも可能である。
【0068】
〔コアの形成〕
コア11の材料である13族元素含有化合物と窒素含有化合物とを任意の比率であわせて0.1〜10質量%と、1〜50質量%の修飾有機分子16とを炭化水素系溶媒に溶解させた混合溶液を十分に攪拌した後、化学反応を行なう。このとき修飾有機分子16の分子量を調整することで、コア11の粒子径を制御することができる。
【0069】
該化学反応は、不活性ガス雰囲気中で行ない、180〜500℃、さらに好ましくは280〜400℃で、6〜72時間、さらに好ましくは12〜48時間、該混合溶液を攪拌しながら加熱を行なうことで完了する。該化学反応によって、コア11が形成される。
【0070】
なお、形成されたコア11は、修飾有機分子16で被覆されている状態である。
〔第1シェル膜の形成〕
次に、第1シェル膜12を形成する。上述の化学反応後の形成されたコア11が含まれている混合溶液に対して、13族元素含有化合物および窒素含有化合物を、任意の比率であわせて0.1〜10質量%、また1〜50質量%の修飾有機分子16とを炭化水素系溶媒に溶解させ、新たに作製した混合溶液を準備する。なお、該任意の比率を調整することで、第1シェル膜12の厚さを制御することができ、かつ、修飾有機分子16の分子量を調整することで、第1シェル膜12の厚さを制御することができる。このとき、第1シェル膜12は13族窒化物混晶半導体であるため、13族元素含有化合物および/もしくは窒素含有化合物は、2種以上の13族元素の原子を含有していることが好ましい。また、例えば、13族元素含有化合物が1種の13族元素の原子のみ含有している場合には、窒素含有化合物が該13族元素以外の他の1種以上の13族元素の原子を有している必要がある。ここで、該任意の比率を調整することで、第1シェル膜12の厚さを制御することができる。そして、該混合溶液にさらに修飾有機分子16を1〜50質量%混合する。該混合溶液を十分に攪拌した後、化学反応を行なう。
【0071】
該化学反応は、不活性ガス雰囲気中で行ない、180〜500℃、さらに好ましくは280〜400℃で、6〜72時間、さらに好ましくは12〜48時間、該混合溶液を攪拌しながら加熱を行なうことで完了する。該化学反応によって、第1シェル膜12が形成される。
【0072】
なお、第1シェル膜12の表面は、修飾有機分子16で被覆されている状態である。
〔第2シェル膜の形成:被覆ナノ結晶粒子蛍光体の完成〕
次に、第2シェル膜13を形成する。上述の化学反応後の第1シェル膜12が形成された後の混合溶液に対して、13族元素含有化合物と窒素含有化合物とを、任意の比率であわせて0.1〜10質量%、また1〜50質量%の修飾有機分子16とを炭化水素系溶媒に溶解させ、新たに作製した混合溶液を準備する。なお、該任意の比率を調整することで、第2シェル膜13の厚さを制御することができ、かつ、修飾有機分子16の分子量を調整することで、第2シェル膜13の厚さを制御することができる。該混合溶液を十分に攪拌した後、化学反応を行なう。
【0073】
該化学反応は、不活性ガス雰囲気中で行ない、180〜500℃、さらに好ましくは280〜400℃で、6〜72時間、さらに好ましくは12〜48時間、該混合溶液を攪拌しながら加熱を行なうことで完了する。該化学反応後に、有機不純物を除去するために該混合溶液をn−へキサンと無水メタノールとで数回洗浄を行なう。
【0074】
上述のように、13族窒化物半導体からなるコア11と窒素含有化合物と13族元素含有化合物とを含む混合溶液を加熱することによって、第1シェル膜12が成長し、さらに添加した13族元素含有化合物と窒素含有化合物を材料にして、第2シェル膜13が形成される。
【0075】
また、上述した製造方法によって、ナノ結晶粒子蛍光体15の形成と、それを修飾有機分子16で被覆して形成される被覆ナノ結晶粒子蛍光体10の形成が同時に進行する。これにより、修飾有機分子16で被覆された被覆ナノ結晶粒子蛍光体15を得ることができる。
【0076】
また、本発明においては、炭素原子と水素原子だけからなる化合物溶液を炭化水素系溶媒と呼ぶこととする。炭化水素系溶媒を用いることで合成溶液中に水分や酸素の混入を抑制できる利点がある。炭化水素系溶媒の例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレンおよびp−キシレンなどがある。
【0077】
また、本発明においては、修飾有機分子16は2種以上含むことが好ましい。2種以上含むことで、ナノ結晶粒子蛍光体15の粒子径を制御することができるからである。
【実施例】
【0078】
<実施例1>
コアが窒化ガリウムからなる被覆ナノ結晶粒子蛍光体を、以下の手法により合成した。
【0079】
〈材料の準備〉
まず、コア、第1シェル膜および第2シェル膜を形成するために必要なトリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマー、トリス(ジメチルアミノ)インジウムダイマーおよびヘキサ(ジメチルアミノ)インジウム・ガリウムを準備した。これらの化合物は、上述した化学式(2)、(3)、(4)で示される化学反応で合成し準備した。なお、該化学反応で用いるリチウムジメチルアミドと、生成物のトリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマー、トリス(ジメチルアミノ)インジウムダイマーおよびヘキサ(ジメチルアミノ)インジウム・ガリウムとは、反応性が高いので該化学反応は全て窒素ガス雰囲気中で行なった。
【0080】
まず、グローブボックス内で、リチウムジメチルアミド0.03モルと三塩化ガリウム0.01モルとを秤量し、n−ヘキサン中で攪拌しながら、加熱温度20℃で、50時間化学反応を行なった。該化学反応終了後、副生成物である塩化リチウムを取り除き、トリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマーを取り出した(化学式(2))。同様の方法により、トリス(ジメチルアミノ)インジウムダイマーを合成した(化学式(3))。さらに、上述の方法により合成したトリス(ジメチルアミノ)インジウムダイマー0.005モルとトリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマー0.005モルとを秤量し、n−ヘキサン中で攪拌しながら、加熱温度20℃で、50時間、化学反応を行なった。化学反応終了後、ヘキサ(ジメチルアミノ)インジウム・ガリウムを取り出した(化学式(4))。
【0081】
〈コアの形成〉
コアを形成するため、トリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマー0.02モル、トリオクチルアミン(分子量:353.67)30gおよび溶媒であるベンゼン200mlを混合した混合溶液を作製した。そして、混合溶液を十分に攪拌した後、化学式(5)で示される化学反応を行なった。
【0082】
[Ga(N(CH32)]2 → GaN 化学式(5)
該化学反応は窒素ガス雰囲気下において、該混合溶液を320℃で12時間加熱をすることで完了した。該加熱の間は、該混合溶液を攪拌子で攪拌しつづけた。次に、該混合溶液中の有機不純物を除去するために、n−ヘキサンと無水メタノールとで3回洗浄を行なった。該化学反応によって、窒化ガリウムからなるコアが形成された。ただし、コアの表面はトリオクチルアミンで被覆された状態にあるため、該状態を以下GaN/nN(C8173とも表わす。なお、以下、本実施例において、仮に「A/B」と表記した場合に示す意味は、Bで被覆されたAとする。
【0083】
〈第1シェル膜の形成〉
次に、窒化ガリウムからなるコアを、窒化インジウム・ガリウム混晶(InGaN)からなる第1シェル膜で被覆するために、上述した方法で化学反応を行なったGaN/nN(C8173を含む混合溶液100mlと以下に示す4種の材料とを混合した混合溶液を新たに作製した。
【0084】
ヘキサ(ジメチルアミノ)インジウム・ガリウム0.04モル
トリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマー0.06モル
修飾有機分子:トリオクチルアミン30g
溶媒:ベンゼン100ml
新たに作製した混合溶液を十分に攪拌した後、化学式(6)で示される化学反応を行なった。
【0085】
GaN +
0.2[((CH32N)2In−(μ−N(CH322−Ga(N(CH322] +
0.3[Ga(N(CH3232 → GaN/In0.2Ga0.8N 化学式(6)
該化学反応は窒素ガス雰囲気下において、該混合溶液を320℃で12時間加熱をすることで完了した。該加熱の間は、該混合溶液を攪拌子で攪拌しつづけた。次に、該混合溶液中の有機不純物を除去するために、n−ヘキサンと無水メタノールとで3回洗浄を行なった。該化学反応によって、コアの表面に窒化インジウム・ガリウム混晶からなる第1シェル膜が形成された。ただし、第1シェル膜の外表面は、トリオクチルアミンで被覆された状態にあるため、該状態を以下GaN/In0.2Ga0.8N/nN(C8173とも表わす。
【0086】
〈第2シェル膜の形成:被覆ナノ結晶粒子蛍光体の完成〉
次に、第1シェル膜の外表面を第2シェル膜で被覆するために、上述した方法で化学反応を行なったGaN/In0.2Ga0.8N/nN(C8173を含む混合溶液100mlと以下に示す3種の材料とを混合した混合溶液を新たに作製した。
【0087】
トリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマー0.1モル
修飾有機分子:トリオクチルアミン30g
溶媒:ベンゼン100ml
新たに作製した混合溶液を十分に攪拌した後、化学式(7)で示される化学反応を行なった。
【0088】
GaN/In0.2Ga0.8N + [Ga(N(CH32)]2
→ GaN/In0.2Ga0.8N/GaN 化学式(7)
該化学反応は窒素ガス雰囲気下において、該混合溶液を320℃で12時間加熱をすることで完了した。該加熱の間は、該混合溶液を攪拌子で攪拌しつづけた。次に、該混合溶液中の有機不純物を除去するために、n−ヘキサンと無水メタノールとで3回洗浄を行なった。該化学反応によって、第1シェル膜の外表面に窒化ガリウムからなる第2シェル膜が形成され、ナノ結晶粒子蛍光体が完成した。そして、該第2シェル膜の形成とともに、ナノ結晶粒子蛍光体の外表面を修飾有機分子であるトリオクチルアミンで被覆してなる被覆ナノ結晶粒子蛍光体の形成が、同時に進行した。本実施例で形成された被覆ナノ結晶粒子蛍光体は、以下GaN/In0.2Ga0.8N/GaN/nN(C8173とも示す。
【0089】
〈被覆ナノ結晶粒子蛍光体の性質〉
本実施例で得られたGaN/In0.2Ga0.8N/GaN/nN(C8173は、ナノ結晶粒子蛍光体の外表面を修飾有機分子が均一に被覆した状態である。該被覆ナノ結晶粒子蛍光体は、凝集せず、均一な大きさであって分散性が高かった。
【0090】
また、該被覆ナノ結晶粒子蛍光体は、13族窒化物からなる青色発光素子を励起光源として用いることができ、特に外部量子効率の高い405nmの発光を効率よく吸収できた。また、In0.2Ga0.8Nからなる第1シェル膜は、発光波長が460nmとなるようにIn組成比が調整されているため青色発光を示すことができた。さらに、修飾有機分子でナノ結晶粒子蛍光体の粒子径が制御することができた。得られた被覆ナノ結晶粒子蛍光体のX線回折測定の結果、スペクトル半値幅より見積もられた第1シェル膜の厚さは、数式(2)で表されるScherrerの式を用いると5nmと見積もられ、量子サイズ効果を示し発光効率は向上した。また、この実施例で得られた蛍光体の収率は95%であった。
【0091】
B=λ/CosΘ・R 数式(2)
ここで、B:X線半値幅[deg]、λ:X線の波長[nm]、Θ:Bragg角[deg]、R:粒子径[nm]を示す。
【0092】
<実施例2>
コアが窒化アルミニウムからなる被覆ナノ結晶粒子蛍光体を、以下の手法により合成した。
【0093】
〈前処理〉
まず、実施例1に記載した方法と同様にして、コア、第1シェル膜および第2シェル膜を形成するために必要なトリス(ジメチルアミノ)アルミニウムダイマー、トリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマーおよびヘキサ(ジメチルアミノ)インジウム・ガリウムを合成した。
【0094】
〈コアの形成〉
コアを形成するため、トリス(ジメチルアミノ)アルミニウムダイマー0.02モル、トリオクチルアミン(分子量:353.67)30gおよび溶媒であるベンゼン200mlを混合した混合溶液を作製した。そして、混合溶液を十分に攪拌した後、化学式(8)で示される化学反応を行なった。
【0095】
[Al(N(CH32)]2 → AlN 化学式(8)
該化学反応は窒素ガス雰囲気下において、該混合溶液を320℃で12時間加熱をすることで完了した。該加熱の間は、該混合溶液を攪拌子で攪拌しつづけた。次に、該混合溶液中の有機不純物を除去するために、n−ヘキサンと無水メタノールとで3回洗浄を行なった。該化学反応によって、窒化アルミニウムからなるコアが形成された。ただし、コアの表面はトリオクチルアミンで被覆された状態にあるため、該状態を以下AlN/nN(C8173とも表わす。
【0096】
〈第1シェル膜の形成〉
次に、窒化アルミニウムからなるコアを、窒化インジウム・ガリウム混晶(InGaN)からなる第1シェル膜で被覆するために、上述した方法で化学反応を行なったAlN/nN(C8173を含む混合溶液100mlと以下に示す4種の材料とを混合した混合溶液を新たに作製した。
【0097】
ヘキサ(ジメチルアミノ)インジウム・ガリウム0.04モル
トリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマー0.06モル
修飾有機分子:トリオクチルアミン30g
溶媒:ベンゼン100ml
新たに作製した混合溶液を十分に攪拌した後、化学式(9)で示される化学反応を行なった。
【0098】
AlN +
0.2[((CH32N)2In−(μ−N(CH322−Ga(N(CH322] +
0.3[Ga(N(CH3232 → AlN/In0.2Ga0.8N 化学式(9)
該化学反応は窒素ガス雰囲気下において、該混合溶液を320℃で12時間加熱をすることで完了した。該加熱の間は、該混合溶液を攪拌子で攪拌しつづけた。次に、該混合溶液中の有機不純物を除去するために、n−ヘキサンと無水メタノールとで3回洗浄を行なった。該化学反応によって、コアの表面に窒化インジウム・ガリウム混晶からなる第1シェル膜が形成された。ただし、第1シェル膜の外表面は、トリオクチルアミンで被覆された状態にあるため、該状態を以下AlN/In0.2Ga0.8N/nN(C8173とも表わす。
【0099】
〈第2シェル膜の形成:被覆ナノ結晶粒子蛍光体の完成〉
次に、第1シェル膜の該表面を第2シェル膜で被覆するために、上述した方法で化学反応を行なったAlN/In0.2Ga0.8N/nN(C8173を含む混合溶液100mlと以下に示す3種の材料とを混合した混合溶液を新たに作製した。
【0100】
トリス(ジメチルアミノ)アルミニウムダイマー0.1モル
修飾有機分子:トリオクチルアミン30g
溶媒:ベンゼン100ml
新たに作製した混合溶液を十分に攪拌した後、化学式(10)で示される化学反応を行なった。
【0101】
AlN/In0.2Ga0.8N + [Al(N(CH32)]2
→ AlN/In0.2Ga0.8N/AlN 化学式(10)
該化学反応は窒素ガス雰囲気下において、該混合溶液を320℃で12時間加熱をすることで完了した。該加熱の間は、該混合溶液を攪拌子で攪拌しつづけた。次に、該混合溶液中の有機不純物を除去するために、n−ヘキサンと無水メタノールとで3回洗浄を行なった。該化学反応によって、第1シェル膜の外表面に窒化アルミニウムからなる第2シェル膜が形成され、ナノ結晶粒子蛍光体が完成した。そして、該第2シェル膜の形成とともに、ナノ結晶粒子蛍光体の外表面を修飾有機分子であるトリオクチルアミンで被覆してなる被覆ナノ結晶粒子蛍光体の形成が、同時に進行した。本実施例で形成された被覆ナノ結晶粒子蛍光体は、以下AlN/In0.2Ga0.8N/AlN/nN(C8173とも示す。
【0102】
〈被覆ナノ結晶粒子蛍光体の性質〉
本実施例で得られたAlN/In0.2Ga0.8N/AlN/nN(C8173は、ナノ結晶粒子蛍光体の外表面を修飾有機分子が均一に被覆した状態である。該被覆ナノ結晶粒子蛍光体は、凝集せず、均一な大きさであって分散性が高かった。
【0103】
また、該被覆ナノ結晶粒子蛍光体は、13族窒化物からなる青色発光素子を励起光源として用いることができ、特に外部量子効率の高い405nmの発光を効率よく吸収できた。また、In0.2Ga0.8Nからなる第1シェル膜は、発光波長が460nmとなるようにIn組成比が調整されているため青色発光を示すことができた。さらに、修飾有機分子でナノ結晶粒子蛍光体の粒子径が制御することができた。得られた被覆ナノ結晶粒子蛍光体のX線回折測定の結果、スペクトル半値幅より見積もられた第1シェル膜の厚さは、数式(2)で表されるScherrerの式を用いると5nmと見積もられ、量子サイズ効果を示し発光効率は向上した。また、この実施例で得られた蛍光体の収率は95%であった。
【0104】
<実施例3>
コアが窒化ガリウムからなり、第1シェル膜がIn0.3Ga0.7N、第2シェル膜が窒化ガリウムである被覆ナノ結晶粒子蛍光体を、以下の手法により合成した。
【0105】
第1シェル膜の形成において、ヘキサ(ジメチルアミノ)インジウム・ガリウム0.06モル、トリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマー0.04モル、トリオクチルアミン30gおよび溶媒であるベンゼン100mlの混合溶液を用いること以外は、実施例1と同様の製造方法によって、13族窒化物からなる青色発光素子からの発光を吸収したときに緑色光を発する被覆ナノ結晶粒子蛍光体を得ることができた。得られた被覆ナノ結晶粒子蛍光体は、特に外部量子効率の高い405nmの発光を効率よく吸収できた。また、このとき発光波長が520nmだった。
【0106】
X線回折測定の結果、スペクトル半値幅より見積もられた第1シェル膜の厚さは、Scherrerの式を用いると5nmと見積もられ、量子サイズ効果を示し、発光ピーク強度は従来の窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体に比べ約20倍向上した。
【0107】
<実施例4>
コアが窒化ガリウム、第1シェル膜がIn0.5Ga0.5N、第2シェル膜が窒化ガリウムである被覆ナノ結晶粒子蛍光体を、以下の手法により合成した。
【0108】
第1シェル膜の形成において、ヘキサ(ジメチルアミノ)インジウム・ガリウム0.1モル、トリオクチルアミン30gおよび溶媒であるベンゼン100mlの混合溶液を用いること以外は、実施例1と同様の製造方法によって、13族窒化物からなる青色発光素子からの発光を吸収したときに赤色光を発する被覆ナノ結晶粒子蛍光体を得ることができた。得られた被覆ナノ結晶粒子蛍光体は、特に外部量子効率の高い405nmの発光を効率よく吸収できた。また、このとき発光波長が600nmだった。
【0109】
X線回折測定の結果、スペクトル半値幅より見積もられた第1シェル膜の厚さは、Scherrerの式を用いると5nmと見積もられ、量子サイズ効果を示し、発光ピーク強度は従来の窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体に比べ約20倍向上した。
【0110】
<実施例5>
コアが窒化アルミニウム、第1シェル膜がIn0.3Ga0.7N、第2シェル膜が窒化アルミニウムである被覆ナノ結晶粒子蛍光体を、以下の手法により合成した。
【0111】
第1シェル膜の形成において、ヘキサ(ジメチルアミノ)インジウム・ガリウム0.06モル、トリス(ジメチルアミノ)ガリウムダイマー0.04モル、トリオクチルアミン30gおよび溶媒であるベンゼン100mlの混合溶液を用いること以外は、実施例2と同様の製造方法によって、13族窒化物からなる青色発光素子からの発光を吸収したときに緑色光を発する被覆ナノ結晶粒子蛍光体を得ることができた。得られた被覆ナノ結晶粒子蛍光体は、特に外部量子効率の高い405nmの発光を効率よく吸収できた。また、このとき発光波長が520nmだった。
【0112】
X線回折測定の結果、スペクトル半値幅より見積もられた第1シェル膜の厚さは、Scherrerの式を用いると5nmと見積もられ、量子サイズ効果を示し、発光ピーク強度は従来の窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体に比べ約20倍向上した。
【0113】
<実施例6>
コアが窒化アルミニウム、第1シェル膜がIn0.5Ga0.5N、第2シェル膜が窒化アルミニウムである被覆ナノ結晶粒子蛍光体を、以下の手法により合成した。
【0114】
第1シェル膜の形成において、ヘキサ(ジメチルアミノ)インジウム・ガリウム0.1モル、トリオクチルアミン30gおよび溶媒であるベンゼン100mlの混合溶液を用いること以外は、実施例2と同様の製造方法によって、13族窒化物からなる青色発光素子からの発光を吸収したときに赤色光を発する被覆ナノ結晶粒子蛍光体を得ることができた。得られた被覆ナノ結晶粒子蛍光体は、特に外部量子効率の高い405nmの発光を効率よく吸収できた。また、このとき発光波長が520nmだった。
【0115】
X線回折測定の結果、スペクトル半値幅より見積もられた第1シェル膜の厚さは、Scherrerの式を用いると5nmと見積もられ、量子サイズ効果を示し、発光ピーク強度は従来の窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体に比べ約20倍向上した。
<実施例7>
コアが窒化ガリウムからなる被覆ナノ結晶粒子蛍光体を、以下の手法により合成した。
【0116】
〈コアの形成〉
コアを形成するため、三塩化ガリウム0.02モル、窒化リチウム(Li3N)0.02モル、トリオクチルアミン(分子量:353.67)30gおよび溶媒であるベンゼン200mlを混合した混合溶液を作製した。そして、混合溶液を十分に攪拌した後、化学式(11)で示される反応を行なった。
【0117】
GaCl3 + Li3N → GaN + 3LiCl 化学式(11)
該化学反応は窒素ガス雰囲気下において、該混合溶液を320℃で12時間加熱をすることで完了した。該加熱の間は、該混合溶液を攪拌子で攪拌しつづけた。次に、該混合溶液中の有機不純物を除去するために、n−ヘキサンと無水メタノールとで3回洗浄を行なった。該化学反応によって、窒化ガリウムからなるコアが形成された。ただし、コアの表面はトリオクチルアミンで被覆された状態にあるため、該状態を以下GaN/nN(C8173とも表わす。
【0118】
〈第1シェルの形成〉
次に、窒化ガリウムからなるコアを、窒化インジウム・ガリウム混晶(InGaN)からなる第1シェル膜で被覆するために、上述した方法で化学反応を行なったGaN/nN(C8173を含む混合溶液100mlと以下に示す5種の材料とを混合した混合溶液を新たに作製した。
【0119】
三塩化ガリウム0.08モル
三塩化インジウム0.02モル
窒化リチウム0.1モル
修飾有機分子:トリオクチルアミン30g
溶媒:ベンゼン100ml
新たに作製した混合溶液を十分に攪拌した後、化学式(12)で示される化学反応を行なった。
【0120】
GaN + 0.08GaCl3 + 0.02InCl3 + 0.1Li3
→ GaN/In0.2Ga0.8N 化学式(12)
該化学反応は窒素ガス雰囲気下において、該混合溶液を320℃で12時間加熱をすることで完了した。該加熱の間は、該混合溶液を攪拌子で攪拌しつづけた。次に、該混合溶液中の有機不純物を除去するために、n−ヘキサンと無水メタノールとで3回洗浄を行なった。該化学反応によって、コアの表面に窒化インジウム・ガリウム混晶からなる第1シェル膜が形成された。ただし、第1シェル膜の外表面は、トリオクチルアミンで被覆された状態にあるため、該状態を以下GaN/In0.2Ga0.8N/nN(C8173とも表わす。
【0121】
〈第2シェル膜の形成:被覆ナノ結晶粒子蛍光体の完成〉
次に、第1シェル膜の該表面を第2シェル膜で被覆するために、上述した方法で化学反応を行なったGaN/In0.2Ga0.8N/nN(C8173を含む混合溶液100mlと以下に示す4種の材料とを混合した混合溶液を新たに作製した。
【0122】
三塩化ガリウム0.1モル
窒化リチウム(Li3N)0.1モル
修飾有機分子:トリオクチルアミン(分子量:353.67)30g
溶媒:ベンゼン100ml
新たに作製した該混合溶液を十分に攪拌した後、化学式(13)で示される化学反応を行なった。
【0123】
GaN/In0.2Ga0.8N + GaCl3 + Li3
→ GaN/In0.2Ga0.8N/GaN + 3LiCl 化学式(13)
該化学反応は窒素ガス雰囲気下において、該混合溶液を320℃で12時間加熱をすることで完了した。該加熱の間は、該混合溶液を攪拌子で攪拌しつづけた。次に、該混合溶液中の有機不純物を除去するために、n−ヘキサンと無水メタノールとで3回洗浄を行なった。該化学反応によって、第1シェル膜の外表面に窒化アルミニウムからなる第2シェル膜が形成され、ナノ結晶粒子蛍光体が完成した。そして、第2シェル膜の形成とともに、ナノ結晶粒子蛍光体の外表面を修飾有機分子であるトリオクチルアミンで被覆してなる被覆ナノ結晶粒子蛍光体の形成が、同時に進行した。本実施例で形成された被覆ナノ結晶粒子蛍光体は、以下GaN/In0.2Ga0.8N/GaN/nN(C8173とも示す。
【0124】
〈被覆ナノ結晶粒子蛍光体の性質〉
本実施例で得られた被覆ナノ結晶粒子蛍光体は、特に外部量子効率の高い405nmの発光を効率よく吸収できた。また、このとき発光波長が460nmだった。得られた被覆ナノ結晶粒子蛍光体のX線回折測定の結果、スペクトル半値幅より見積もられた第1シェル膜の厚さは、Scherrerの式を用いると5nmと見積もられ、量子サイズ効果を示し、発光ピーク強度は従来の窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体に比べ約10倍向上した。
【0125】
<比較例1>
三塩化ガリウム(GaCl3)0.016モル、三塩化インジウム(InCl3)0.004モル、窒化リチウム(Li3N)0.02モルおよびベンゼン((C612)200mlを混合した混合溶液を作製した。該混合溶液を320℃で3時間加熱を行ない、窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体の合成を行なった。加熱した後の該混合溶液を、室温にまで冷却し窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体のベンゼン溶液とした。
【0126】
図2は、比較例1で合成した窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体の模式図である。比較例1で得られた窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体は、発光層である窒化インジウム・ガリウム混晶自体を、核となるコアなしで成長させたため結晶欠陥が多く、精密な13族元素の混晶比の制御が困難であり、窒化インジウム・ガリウム混晶中に窒化インジウムの層および窒化ガリウムの層が偏析している領域が見られた。また、窒化インジウム・ガリウム混晶の未結合手による欠陥をキャッピングするための層を有しないため表面欠陥が多く、表面には修飾有機分子が存在しないため、生成した窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体は凝集し分散性が悪い。また、窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体の粒子径の制御は、合成の際の反応温度と反応時間にのみ依存するので粒子径の制御が困難である。
【0127】
得られた窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体のX線回折測定の結果、スペクトル半値幅より見積もられた平均粒子径(直径)は、Scherrerの式を用いると50nmと見積もられ、量子サイズ効果を示さない。また、この比較例1で得られた窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体の収率は、5%であった。
【0128】
図3は、結晶粒子からなる蛍光体の発光特性を検討するための発光強度と発光層の大きさとの関係を示す図である。横軸は、結晶粒子からなる蛍光体の発光層の大きさを示し、縦軸は、460nmの光で励起したときの該蛍光体が460nmで発光したときの任意の発光強度「a.u.(arbitrary units)」を示す。図中(a)は、実施例1の被覆ナノ結晶粒子蛍光体の発光層の厚さと発光強度との関係をプロットしたものであり、図中(b)は、比較例1の窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体の粒子径と発光強度との関係をプロットしたものである。
【0129】
図中(c)は、結晶粒子からなる蛍光体の発光特性を検討するための発光強度と粒子径との関係を示す曲線であり、蛍光体の粒子径がボーア半径の2倍以下では、発光強度が極端に向上していることが分かる。
【0130】
図3からもわかるとおり、実施例1による被覆ナノ結晶粒子蛍光体に含まれるナノ結晶粒子蛍光体は、比較例1による窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体よりもボーア半径が小さく、発光の効率も高いことが分かった。
【0131】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0132】
発光効率に優れた機能を有するナノ結晶粒子蛍光体および、分散性と媒体親和性とに優れた被覆ナノ結晶粒子蛍光体を提供し、高収率なナノ結晶粒子蛍光体および被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の被覆ナノ結晶粒子蛍光体の好ましい一実施形態を示した模式図である。
【図2】比較例1で合成した窒化インジウム・ガリウム混晶半導体粒子蛍光体の模式図である。
【図3】結晶粒子からなる蛍光体の発光特性を検討するための発光強度と発光層の大きさとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0134】
10 被覆ナノ結晶粒子蛍光体、11 コア、12 第1シェル膜、13 第2シェル膜、14 シェル層、15 ナノ結晶粒子蛍光体、16 修飾有機分子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
13族窒化物半導体からなるコアと、
前記コアを被覆し、13族窒化物混晶半導体からなるシェル膜を含むシェル層との、
コア/シェル構造であるナノ結晶粒子蛍光体。
【請求項2】
請求項1に記載のナノ結晶粒子蛍光体の外表面が、修飾有機分子により結合および/もしくは被覆されてなる被覆ナノ結晶粒子蛍光体。
【請求項3】
前記コアの窒素原子と前記シェル層の13族原子とが化学結合し、
前記シェル層の窒素原子と前記コアの13族原子とが化学結合している請求項2に記載の被覆ナノ結晶粒子蛍光体。
【請求項4】
前記コアは、窒化ガリウムからなる請求項2に記載の被覆ナノ結晶粒子蛍光体。
【請求項5】
前記13族窒化物混晶半導体は、インジウム原子を5〜60モル%含有する請求項2に記載の被覆ナノ結晶粒子蛍光体。
【請求項6】
前記シェル層の厚みがボーア半径の2倍以下である請求項2に記載の被覆ナノ結晶粒子蛍光体。
【請求項7】
前記シェル層が複数のシェル膜からなる積層構造である請求項2に記載の被覆ナノ結晶粒子蛍光体。
【請求項8】
前記シェル層は、
バンドギャップが前記コアよりも小さく前記コアを被覆する13族窒化物混晶半導体からなる第1シェル膜と、
バンドギャップが前記コア以上であり前記第1シェル膜を被覆する第2シェル膜と、
からなる請求項2に記載の被覆ナノ結晶粒子蛍光体。
【請求項9】
13族窒化物半導体からなるコアと、
窒素含有化合物と、
13族元素含有化合物と、
を含む混合溶液に、修飾有機分子を更に混合する被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法。
【請求項10】
前記13族元素含有化合物および前記窒素含有化合物の少なくとも1つの化合物が、
インジウムおよび/もしくはガリウムと窒素との結合を有する化合物である請求項9に記載の被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法。
【請求項11】
前記混合溶液の溶媒は、炭化水素系溶媒である請求項9に記載の被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法。
【請求項12】
前記加熱する温度は、180〜500℃である請求項9に記載の被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法。
【請求項13】
前記修飾有機分子が2種以上である請求項9に記載の被覆ナノ結晶粒子蛍光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−94968(P2008−94968A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278627(P2006−278627)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】