説明

ナノ繊維マトリクスを含む拡張複合ろ過材及び方法

細繊維を担持する拡張された基材媒体を含み、細繊維は拡張された基材媒体と共に引き伸ばされ、それにより、ダスト保持容量を改善し、圧力損失の増大を緩やかにするように構成された、複合フィルタ媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くフィルタ媒体(ろ過材)に関し、特に、拡張された基材(expanded substrate)及び拡張された基材上に担持された細繊維(fine fibers)を備える複合フィルタ媒体(composite filter media)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体流れ及び気体流れ(例えば、空気流れ)等の流体流れは、その流体の流れの中に混入した、望ましくないことが多い汚染物質である微粒子(particulates)を運ぶことがしばしばである。通常は、フィルタを用いて、流体流れから微粒子の一部又はすべてを除去している。
【0003】
静電紡糸プロセス(electrostatic spinning process)を用いて形成された細繊維を含むフィルタ媒体も知られている。かかる従来技術には、米国特許5,672,399号「フィルタ材料構成及び方法」、米国特許公開2007/0163217号「セルロース/ポリアミド複合体」、米国仮特許出願60/989,218号「フィルタ媒体、100ナノメートル未満の細繊維及び方法」、米国仮特許出願61/047,459号「積層されたナノ繊維フィルタ媒体」、米国仮特許出願61/047,455号「2構成要素(Bi−Component)ナノ繊維層を有するフィルタ媒体」が含まれる。これらの開示の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。これらの先行技術文献に示されるように、ナノ繊維は共通して予め形成されて完成されたろ過媒体(filtration media)(ろ過材)の基材上に載置(laid)(積層)される。
【0004】
本発明は、細繊維を含む改良されたフィルタ媒体を提供する。本発明のこれらの利点及び他の利点、並びに更なる本発明の特徴は、本明細書に提示する本発明の説明から明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0005】
特定の実施の形態による最も好ましい電界紡糸ナノ繊維等の、基材媒体(基材としての媒体(ろ過材))上に載置された細繊維は、細繊維を堆積させた後にその基材媒体の厚さを改変する等の基材媒体の改変(modifying)によって、載置後に再配向(reorient)させることができる。例えば、(カレンダ加工(圧延加工)した媒体等の)少なくとも部分的に圧縮された基材媒体は拡張(expand)させることができ、そのとき、より大きな直径の繊維はより小さな直径の繊維を担持し、そのため細繊維層を拡張させる。この結果として、いくつかの利点である、ナノ繊維のより大きな体積カバレッジ(体積被覆率)(拡張によりナノ繊維が拡がって(open up)、3次元マトリクス(3D matrix)へと拡張することができ、同一の坪量(basis weight)の用途のためにより大きな体積を被覆する)、拡張に起因する圧力損失(pressure drop)の低減、及び/又は圧力損失が生じる際のより緩やかな圧力損失の増大を含む、複数の利点を導くことができる。加えて、ナノ繊維又は他のかかる細繊維層の波状の(Undulating)(起伏した)3次元的な特徴は、ダスト保持容量を大幅に増大させる。これは、従来のシステムの場合のように単に平坦なものとは異なって、はるかに大きな体積保持領域(volumetric holding area)を有する波状の表面を効率的に形成するものであると考えられる。このように、ナノ繊維層の有効な体積領域を増大することができる。
【0006】
一の実施の形態では、基材は、高融点構成要素及び低融点構成要素を含む2構成要素スクリム(bi−component scrim)(2構成要素粗目布)である。細繊維は電界紡糸(electrospun)されたポリマーナノ繊維である。高融点構成要素及び電界紡糸されたポリマーナノ繊維は、低融点構成要素よりも高い溶融温度を有する。2構成要素スクリムは非拡張状態及び拡張状態を有し、拡張された2構成要素スクリムは、非拡張状態を超える厚さを有する。例えば、非拡張状態のスクリムは、予め形成してカレンダ加工(圧延加工)することができるか、これにより、又はさもなければ、繊維が結合によって偏倚された状態の位置に保たれ、それにより互いに保持し合うことで、少なくとも部分的に圧縮することができる(大きな直径の繊維相互の結合はこれらの大きな直径の複数の繊維を適所に保持する)。一の実施の形態では、細繊維を担持する非拡張状態の2構成要素スクリムは加熱によって拡張され、低融点構成要素は溶融又は軟化して細繊維と結合する。また、この加熱の間に、基材のより大きな直径の繊維は少なくとも部分的に圧縮された状態から解放され、摺動可能となり、少なくとも部分的に圧縮されていない拡張状態に向かう(例えば、初期状態であるスクリムの形成前の非圧縮状態に向かう)等の、より自然な状態に向かって戻るように移動する。加熱の間に、はるかに小さな直径の細繊維を担持する2構成要素スクリムの大きな直径の繊維は弛緩して再配向され、細繊維は拡張する2構成要素スクリムと共に拡張する。製造される複合フィルタ媒体は波状の表面及び拡張された厚さを有し、細繊維に、従来のナノ繊維載置(積層)技法の場合の平面的な特徴だけでなく、3次元マトリクス構成をも付加する。拡張されたフィルタ媒体(拡張されたろ過材)は、ダスト保持容量が向上され、ダスト負荷に対する圧力損失の増大を緩やかとし、及び/又は初期の圧力損失をより低くすることができる。
【0007】
本発明の一の態様では、フィルタ媒体を製造する方法が提供される。方法は、第1の厚さを有する基材の表面上に細繊維を堆積させるステップであって、細繊維の平均直径は1マイクロメートル未満である、基材の表面上に細繊維を堆積させるステップと、細繊維を担持する基材を第1の厚さを超える第2の厚さまで拡張するステップとを含む。
【0008】
本発明の他の態様では、平均繊維直径が1マイクロメートル未満の細繊維を担持する、平均繊維直径が1マイクロメートルを超える第1の繊維の基材を備えるフィルタ媒体を提供する。基材は波状の表面を有し、細繊維は波状の表面を有する第1の繊維と共に3次元マトリクスに組み込まれる。
【0009】
本発明の他の態様、目的及び利点は、添付図面を併せ見れば、以下の詳細な説明により更に明らかになるであろう。
【0010】
本明細書に組み入れられ、本明細書の一部を形成する添付図面は、本発明の複数の態様を例示し、記述と共に、本発明の原理の説明に資する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一の実施の形態による基材媒体に担持された細繊維を備える波状の表面を有する拡張された複合フィルタ媒体を模式的に示す断面図である。
【0012】
【図2】図2は、略平坦な表面を有する非拡張状態の図1に示す複合フィルタ媒体を模式的に示す断面図である。
【0013】
【図3】図3は、本発明の一の実施の形態による基材媒体を構成する繊維である同心に設けられた鞘/芯(sheath/core)型の2構成要素繊維の模式図である。
【0014】
【図4】図4は、本発明の一の実施の形態による基材媒体を構成する繊維である偏心して設けられた鞘/芯型の2構成要素繊維の模式図である。
【0015】
【図5】図5は、本発明の一の実施の形態による基材媒体を構成する繊維である並列(side−by−side)型の2構成要素繊維の模式図である。
【0016】
【図6】図6は、本発明の一の実施の形態による基材媒体を構成する繊維であるパイ楔(pie‐wedge)型の2構成要素繊維の模式図である。
【0017】
【図7】図7は、本発明の一の実施の形態による基材媒体を構成する繊維である中空パイ楔(hollow pie wedge)型の2構成要素繊維の模式図である。
【0018】
【図8】図8は、本発明の一の実施の形態による基材媒体を構成する繊維である島/海(islands/sea)型の2構成要素繊維の模式図である。
【0019】
【図9】図9は、本発明の一の実施の形態による基材媒体を構成する繊維である三つ葉(trilobal)型の2構成要素繊維の模式図である。
【0020】
【図10】図10は、本発明の一の実施の形態による基材媒体を構成する繊維である端部(tipped)型の2構成要素繊維の模式図である。
【0021】
【図11】図11は、本発明の一の実施の形態による非拡張状態の複合フィルタ媒体を模式的に示す断面図である。
【0022】
【図12】図12は、本発明の一の実施の形態による拡張状態の図11に示す複合フィルタ媒体を模式的に示す断面図である。
【0023】
【図13】図13は、本発明の別の実施の形態による拡張された複合フィルタ媒体を模式的に示す断面図である。
【0024】
【図14】図14は、本発明の一の実施の形態による拡張された複合フィルタ媒体を製造するためのシステムの模式図である。
【0025】
【図15A】図15Aは、図1に示す拡張された複合フィルタ媒体の基材媒体の表面近傍の2構成要素繊維及び細繊維を300倍に拡大して示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【0026】
【図15B】図15Bは、図1に示す拡張された複合フィルタ媒体の基材媒体の表面近傍の2構成要素繊維及び細繊維を1,000倍に拡大して示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【0027】
【図15C】図15Cは、図1に示す拡張された複合フィルタ媒体の基材媒体の表面近傍の2構成要素繊維及び細繊維を2,000倍に拡大して示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【0028】
【図15D】図15Dは、図1に示す拡張された複合フィルタ媒体の基材媒体の表面近傍の2構成要素繊維及び細繊維を10,000倍に拡大して示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【0029】
【図16】図16は、本発明の他の実施の形態による拡張された複合フィルタ媒体を製造するためのシステムの模式図である。
【0030】
【図17】図17は、本発明の一の実施の形態による拡張された複合フィルタ媒体及び他の2つの従来のフィルタ媒体のMFP効率試験結果のグラフを示す図である。
【0031】
【図18】図18は、図17に示す拡張された複合フィルタ媒体及び他の2つの従来のフィルタ媒体の試験期間200分にわたるMFPダスト保持試験結果のグラフを示す図である。
【0032】
【図19】図19は、図17に示す拡張された複合フィルタ媒体及び他の2つの従来のフィルタ媒体の試験期間650分にわたるMFPダスト保持試験結果のグラフを示す図である。
【0033】
【図20】図20は、本発明の一の実施の形態による加熱拡張前のスクリムの形態に形成された非拡張の基材媒体を120倍に拡大して示す光学顕微鏡画像を示す図である。
【0034】
【図21】図21は、本発明の一の実施の形態による図12に示す拡張された複合媒体のような、互いに対面する細繊維層で合わせて積層された2層の細繊維で覆われた基材媒体を含む拡張された複合媒体を120倍に拡大して示す光学顕微鏡画像を示す図である。
【0035】
【図22】図22は、本発明の一の実施の形態による拡張された複合フィルタ媒体をひだ加工して形成されたひだ付きのフィルタ媒体を含むひだ付きのフィルタエレメントの斜視図である。
【0036】
【図23】図23は、本発明の一の実施の形態による拡張された複合フィルタ媒体で形成されたひだ付きのフィルタ媒体を含むひだ付きのフィルタエレメントの斜視図である。
【0037】
【図24】図24は、本発明の一の実施の形態による細繊維が相互に対面するように合わせて積層された細繊維で覆われた2層の媒体を含む複合フィルタ媒体を2,500倍に拡大して示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【0038】
【図25】図25は、本発明の一の実施の形態による拡張された複合フィルタ媒体で形成されたひだ付きのフィルタ媒体を含むパネルフィルタの斜視図である。
【0039】
【図26】図26は、本発明の一の実施の形態による互いに対面する細繊維を合わせて積層された細繊維で覆われた2層の媒体を含む拡張された複合フィルタ媒体を製造するためのシステムの模式図である。
【0040】
【図27】図27は、本発明の一の実施の形態による細繊維で覆われた2層の媒体、及び細繊維の各層と合わさるように複数の(前記2層の)媒体の間に挟まれて設けられた、もう1つの媒体の層を含む拡張された複合フィルタ媒体を製造するためのシステムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、ある好ましい実施の形態と関連付けて説明されるが、それら実施の形態に限定する意図はない。反対に、意図するところは、全ての代替物、変形、及び均等物を、特許請求の範囲に定義されているように本発明の精神と範囲の内に含まれるものとして、カバーすることである。
【0042】
図1は、本発明の一の実施の形態による複合フィルタ媒体10を模式的に示す断面図である。図示のように、複合フィルタ媒体(複合ろ過材)10は、基材媒体(substrate media)(基材ろ過材)12と基材媒体12の表面16に沿って担持される細繊維(fine fibers)14とを備える。複合フィルタ媒体10は基材媒体12の拡張によって形成される波状の表面(undulating surface)(起伏を有する表面)18を有する(図1では極めて模式的にしか図示されない)。
【0043】
図1に示す拡張された(expanded)複合フィルタ媒体10を形成するために、図2に示すように、圧縮された媒体(compacted media)及び少なくとも部分的に圧縮された媒体が用いられる。図2は、拡張前の非拡張状態(unexpanded state)の図1に示す複合フィルタ媒体10の模式的な断面図であり、そこでは、また、拡張前の堆積された細繊維14を見ることができる。図示のように、複合フィルタ媒体10は拡張前の略平坦な表面20を有し、細繊維14は略平坦な層を形成する。非拡張状態の基材媒体12は厚さt´を有する。複合フィルタ媒体10を拡張させる場合、基材媒体12の厚さは図1に示すようにtまで拡大し、表面が弛緩(relax)して図1に示す波状の表面18を形成する。いくつかの実施の形態では、厚さtは元の厚さの少なくとも1.5倍以上に、より好ましくは約2倍もしくは3倍又はそれ以上に増大し得る。
【0044】
一の実施の形態では、フィルタ媒体10の拡張は熱処理を通して達成されるが、溶剤スプレー(基材のみに対して部分的に可溶性を有する)等の他の弛緩剤、又は他のプロセシング(processing)(処理)を弛緩のために用いることができる。例えば、非拡張状態のスクリム(scrim)(粗目布)は、予め形成してカレンダ加工(圧延加工)することができるか、さもなければ、繊維が結合によって偏倚された状態の位置に保たれ、それにより互いに保持し合うことで、少なくとも部分的に圧縮することができる(大きな直径の繊維と大きな直径の繊維との結合はこれらの大きな直径の複数の繊維を適所に保持する)。一の実施の形態では、細繊維を担持する非拡張の2構成要素スクリムは加熱によって拡張され、低融点構成要素は溶融又は軟化して細繊維と結合する。また、この加熱の間に、基材のより大きな直径の繊維は少なくとも部分的に圧縮された状態から解放され、摺動可能となり、少なくとも部分的に圧縮されていない拡張状態(expanded state)に向かう(例えば、初期状態であるスクリムの形成前の非圧縮状態(uncompressed state)に向かう)等の、より自然な状態に向かって戻るように移動する。特定の好ましい実施の形態では、熱処理の間に基材媒体12の繊維は弛緩及び再配向(reorient)して繊維間の平均距離を増大させる。このように、基材媒体12は拡張し、基材媒体12の厚さは増大し、基材媒体12の表面は平坦な特徴とは異なって、起伏を有する(undulated)ようになる。更に、基材媒体12の表面近傍の繊維が弛緩及び再配向するにつれて、これらの繊維によって担持される細繊維14はこれらの繊維と共に移動して再配向される。このように、細繊維14はより大きな直径の繊維と共に引き伸ばされ、押され、引かれる。
【0045】
拡大した厚さ及び波状の表面を有する複合フィルタ媒体が、本発明の実施の形態に従って、全体的に説明されたが、その利点のいくつかについて、複合フィルタ媒体の更なる詳細及び他の実施の形態を説明する前に考察する。
【0046】
フィルタ媒体(ろ過材)の特性に影響を与えるいくつかの因子を挙げることができる。フィルタ又はろ過の能力(容量)(capacity)は、フィルタがその整備(service)までの寿命の間に捕捉する微粒子の量である。概して、より高いフィルタの能力(フィルタ容量)はより長いフィルタ寿命を提供し、それはフィルタの交換又は整備の頻度を減少させることができる。所望の流体流れに対する制限(restriction)があまりにも高くなる(したがって圧力損失が増大する)とき、フィルタ能力(フィルタ容量)は多くの場合に圧力損失又は制限に関係し、フィルタは所望の量の流体流れを可能とするために交換することが求められる。圧力損失は、流体流れに対してフィルタ媒体により生ずる抵抗に関する。圧力損失は、媒体の汚れた側から清浄な側への圧力差である。概して、抵抗が大きくなるほど、所与の流量(flow rate)に対して必要とされるエネルギはより大きくなり、及び/又は圧力損失はより高くなる。したがって、他のすべての条件が等しい場合、圧力損失が低いフィルタが好ましい。フィルタ効率は、フィルタ媒体によって流体流れから除去される微粒子の割合であり、通常は特定の微粒子サイズ(単独サイズ又はサイズの範囲)に対して与えられる。大抵の場合、流体流れからより多くの微粒子を除去することが望ましいのは勿論であるが、同時に流体流れを過度に制限しないことが望ましい。フィルタ寿命は、フィルタが、過大な圧力損失又は吹き抜け(blow−throughs)(素通り)のために交換又は整備が必要になるまでの持続期間である。
【0047】
本発明の実施の形態による複合フィルタ媒体は、拡張プロセス(プロセシング)を経ていない非拡張のフィルタ媒体と比較するとき、より大きなフィルタ媒体の体積を提供する拡大した厚さ及び波状の表面を有する。これは特に表面負荷型の層と考えられるナノ繊維層14に関して、この領域を本質的に平面から波状に(起伏を有するように)拡張させることによって、有効体積領域(effective volumetric area)を増大させる。こうして、拡張することにより、より多くの微粒子を増大したフィルタ媒体の体積の全体にわたって捕捉することができる。更に前述のように、基材媒体の繊維及び基材媒体の繊維上に担持される細繊維は拡張プロセスの間に再配向される。かかる繊維の再配向により、流体流れに対する抵抗が小さくなり、微粒子をより効率的に捕捉するための改善されたフィルタ媒体の微細孔構造(pore structures)を生成することができる。それはまた、ナノ繊維の再配向により抵抗を大きくすることなく、ナノ繊維のより高いカバレッジレベル(被覆率の程度)を実現することを可能とする。したがって、拡張された複合フィルタ媒体は、非拡張状態の複合フィルタ媒体と比較したとき、圧力損失を同レベルに維持しながらろ過効率を改善するか、又は同じろ過効率を維持しながら圧力損失を低くすることができる。このため、拡大した厚さ及び波状の表面を有する複合フィルタ媒体は、ダスト保持容量の増大、圧力損失及び/又は制限の低減、及び/又はより長いフィルタ寿命の実現によって、ろ過品質(filtration quality)を改善することができる。
【0048】
図1及び図2に戻って複合フィルタ媒体10の更に詳細な構成について以下に説明する。基材媒体12は、任意の適切な多孔質材料で形成することができる。好ましくは、基材媒体12は、複数構成要素フィルタ媒体から形成される。
【0049】
本明細書では、「複数構成要素フィルタ媒体(multi‐component filter media)」、「複数構成要素媒体(multi‐component media)」、及び他の同様の用語は、少なくとも2種類の異なる材料を含むフィルタ媒体を指すものとして同義に用いられる。例えば、複数構成要素フィルタ媒体は、第1の材料から形成された繊維及び第2の材料から形成された繊維を含むことができる。ここで、第1の材料及び第2の材料は異なる材料である。あるいは、複数構成要素フィルタ媒体は、以下に詳細に説明するように、第1の材料から形成された芯(core)及び第2の材料から形成された鞘(sheath)を含む複数の繊維等、少なくとも2種類の異なる材料を含む複数の繊維から形成することができる。2種類の異なる材料を含む複数構成要素フィルタ媒体は、本明細書において「2構成要素フィルタ媒体(bi‐component filter media)」「2構成要素媒体(bi‐component media)」、及び類似の用語で呼ばれる。
【0050】
一の好ましい実施の形態では、基材媒体12は、異なる融点を有する2種類の異なる材料を含む2構成要素繊維で形成される。細繊維及びかかる複数構成要素繊維で形成された基材媒体を備える複合フィルタ媒体は、本願出願人に譲渡されている国際特許出願PCT/US09/50392号の「ナノ繊維が取り付けられた複数構成要素フィルタ媒体」に記載されており、その開示の全体を参照により本明細書に組み込む。
【0051】
本実施の形態では、基材12の2構成要素繊維の一の構成要素は他の構成要素よりもより低い融点を有する。この低融点構成要素は、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリエステル等の任意の適切なポリマーとすることができる。他の構成要素は、低融点構成要素よりも高い融点を有するポリマー、あるいはガラス及び/又はセルロース等の他の適切な繊維材料であってもよい。繊維を圧縮して、特定の厚さを有する媒体又はスクリムのウェブの形態で基材媒体12を形成することが好ましい。
【0052】
一の実施の形態では、基材媒体12は、高融点ポリマー構成要素及び低融点ポリマー構成要素を含む2構成要素繊維で形成されるスクリムである。例えば、2構成要素は高融点ポリエステル及び低融点ポリエステルを含み、そのうちの一方は他方よりも高い溶融温度を有する。図3は、一の実施の形態による2構成要素繊維22の模式図である。図示のように、2構成要素繊維22は、同心に設けられた鞘/芯(sheath/core)型であり、芯24は高融点ポリマー構成要素で形成され、鞘26は低融点ポリマー構成要素で形成される。
【0053】
この高融点ポリマー構成要素は、低融点ポリマー構成要素よりも高い溶融温度を有するポリマーから形成される。適切な高融点ポリマーには、ポリエステル及びポリアミドが含まれるが、それらに限定されない。適切な低融点ポリマーには、ポリプロピレン、ポリエチレン、コポリエステル、又は選択された高温で溶融するポリマーよりも低い溶融温度を有する任意の他の適切なポリマーが含まれる。例えば、2構成要素繊維は、ポリエステルの芯及びポリプロピレンの鞘で形成されてもよい。本実施の形態では、2構成要素繊維は2種類の異なるタイプのポリエステルから形成され、一方の融点は他方の融点よりも高い。
【0054】
基材媒体12の繊維は細繊維14の平均繊維直径よりも大きな平均繊維直径を有するように形成される。好ましくは、基材媒体12の繊維は、約1マイクロメートル超、より好ましくは5マイクロメートル超の平均繊維直径を有する。一の実施の形態では、基材媒体12の繊維の平均直径は約1マイクロメートル乃至約40マイクロメートルである。非拡張状態では、例えば、カレンダ加工ローラのセットによって、粗繊維は圧縮され、約0.05mm乃至1.0mm、好ましくは、約0.1mm乃至0.5mmの厚さを有する基材媒体12を形成する。かかる2構成要素繊維の基材媒体12は、細繊維14に要求される構造的支持を提供することができる。基材媒体12として用いるために適した様々な厚さの2構成要素スクリムは、米国テネシー州RogersvilleのHDK Industries,Inc.又は他のフィルタ媒体供給者から市販により入手することができる。したがって、基材は、この用意された2構成媒体で予め形成したものとすることができる。
【0055】
他のタイプの2構成要素繊維を、他の実施の形態で基材媒体12を形成するために用いるものとしてもよい。種々のタイプの2構成要素繊維のいくつかの例を図4乃至図10に模式的に示す。芯30及び鞘32を備える偏心して設けられた鞘/芯型の2構成要素繊維28を図4に示す。この繊維は、同心に設けられた鞘/芯繊維22と同様であるが、芯30は中心からずらして設けられる。これら2種類のポリマー構成要素の収縮率(shrinkage rates)が異なることにより、繊維は、加熱されると螺旋状に渦を巻く。これにより、他の場合であれば平坦な繊維が、加熱下では縮れて(crimp)かさ高になる(bulk)ことができ、その結果、異なる繊維再配置(fiber reorientation)、拡張、及び/又は表面の起伏(undulation)が生じる。
【0056】
図5は、第1のポリマー構成要素36及び第2のポリマー構成要素38を含む並列(side‐by‐side)型の2構成要素繊維34の模式図である。用途に応じて、第1のポリマー構成要素の融点は、第2のポリマー構成要素の融点より高くても低くてもよい。これは、偏心して設けられた鞘/芯繊維の更なる拡張であり、両ポリマーは繊維表面の一部を占めるように設けられる。適切なポリマーの選択により、この繊維は、偏心して設けられた鞘/芯繊維28よりも高いレベルの潜在的な縮れを展開させることができる。
【0057】
図6は、パイ楔(pie wedge)型の2構成要素繊維40の模式図である。パイ楔繊維40は、第1のポリマー構成要素42及び第2のポリマー構成要素44で形成された複数の隣接し合う楔(ウェッジ)を備える。各第1のポリマー構成要素42はどちらの側面上にも第2のポリマー構成要素44を有する。第1のポリマー構成要素42は第2のポリマー構成要素44よりもより高い又はより低い融点を有することができる。これらの繊維は、機械的撹拌(典型的には、液流交絡(hydroentangling))により複数の構成要素楔へと分割されて、フィルタ媒体中に0.1乃至0.2デニール(1.111×10−5g/m乃至2.222×10−5g/m)のマイクロ繊維をもたらすように設計される。
【0058】
図7は、第1のポリマー楔48及び第2のポリマー楔50を備える中空パイ楔(hollow pie wedge)型の2構成要素繊維46の模式図である。ここでも、用途に応じて、第1のポリマー楔48は第2のポリマー楔50よりもより高い又はより低い融点を有するポリマーで形成することができる。中空パイ楔繊維46は、パイ楔繊維40に類似するが、中空中心52の中心部を有し、これにより、楔の内側の先端部同士の接合が防止され、したがって分割が比較的容易となる。
【0059】
図8は、島/海(islands/sea)型の2構成要素繊維54の模式図である。この繊維は、「ペパローニピザ」構成ともいうことができ、第1のポリマー構成要素56はペパローニピザに例えるとペパローニに当たり、第2のポリマー構成要素58はペパローニピザに例えるとチーズに当たる。いくつかの実施の形態では、第1のポリマー構成要素56は、第2のポリマー構成要素58よりも高い融点のポリマーで形成されるか、又は第2のポリマー構成要素58は可溶性ポリマーで形成される。かかる実施の形態では、この繊維により、後に溶融又は分解されてしまう低融点ポリマー又は可溶性ポリマー58のマトリクス中に高融点ポリマー56の多数の細いストランド(strands)(より糸)を配置することが可能となる。これにより、細いマイクロ繊維で設けられた媒体を製造することが可能となる。なぜならば、これらの繊維は、個々の「ペパローニ」としてよりも「ピザ」の形態でプロセシングすることの方が容易だからである。ステープル繊維(staple fibers)(繊維の束)が各ピザ上の37個のペパローニからできるので、約0.04デニール(約4.444×10−6g/m)(直径約2マイクロメートル)又は更に細い繊維を生産することができる。
【0060】
2構成要素繊維を様々な形に形成してもよい。例えば、2構成要素繊維は、前述の2構成要素繊維のような断面が円形の円筒形でなくてもよい。図9及び図10は、複数の不規則な形を有する2構成要素繊維の複数の例を示す。これらの繊維は円形断面を有していないが、各繊維は本発明における意味(context)において直径を有している。非円形断面を有する繊維の直径は繊維の外周から測定される。図9は、3つ葉(trilobal)型の2構成要素繊維60、62の模式図である。3つ葉繊維60、62の各々は、第1のポリマー構成要素64、66及び第2のポリマー構成要素68、70を備える。3つ葉繊維60、62の各々は、その直径72、74によって測定される。いくつかの実施の形態では、第1のポリマー構成要素64、66は第2のポリマー構成要素68、70よりもより高い又はより低い融点を有するポリマーで形成される。
【0061】
図10は、端部(tipped)型の2構成要素繊維78、80の模式図である。繊維78は第1のポリマー中央部82と第2のポリマー端部84とを有する3つ葉端部型の2構成要素繊維である。繊維80は、第1のポリマー中央部86と第2のポリマー端部88とを有する十字端部型の2構成要素繊維である。好ましくは、第1のポリマー中央部82、86は第2のポリマー端部84、88よりも高い融点を有するポリマーで形成される。
【0062】
細繊維14は、基材媒体12上にそれらが形成されたままに堆積することができる。代替として、細繊維14を媒体ウェブ(布状の媒体)として別途用意してから、基材媒体12と共に積層してもよい。細繊維14は、多様な繊維直径を有する繊維を備えることができるが、好ましくは、細繊維14は、非常に細い繊維直径を有するナノ繊維とする。かかる細繊維14は、電界紡糸プロセス又は他の適切なプロセスにより形成することができる。一の実施の形態では、細繊維14は、約1マイクロメートル未満、好ましくは0.5マイクロメートル未満、より好ましくは0.01乃至0.3マイクロメートルの平均繊維直径を有する電界紡糸ナノ繊維とする。かかる小直径の細繊維は、フィルタの全体的な固体性(中実性)を著しく増大させることなく、より多数の繊維を一緒に詰め込むことができ、これにより、圧力損失を増大させることなく、ろ過効率を向上させることができる。
【0063】
細繊維14を様々な適切なポリマー材料で形成してもよい。一の実施の形態では、細繊維14は、電界紡糸によりナイロン(登録商標)‐6(ポリアミド‐6、本明細書においては「PA‐6」とも呼ぶ)から形成することができ、電界紡糸される細繊維14は基材媒体12上に直接堆積されるが、任意のポリマーを用いることができる。熱による拡張(熱拡張)の間の細繊維の破壊(destruction)を回避するために、細繊維14は、2構成要素繊維の低融点ポリマーよりも高い溶融温度を有する材料で形成される。本実施の形態では、基材媒体12は、高融点ポリエステルの芯及び低融点ポリエステルの鞘を有する2構成要素ステープル繊維で形成されたスクリムである。2構成要素ステープル繊維をカレンダ加工ローラのセットの間で圧縮して、スクリムのウェブ(布状のスクリム)を形成する。基材媒体12と細繊維14との間の結合には、溶剤結合、加圧結合及び/又は熱結合を含めることができる。一の実施の形態では、図15A乃至図15Dに示すように、低融点の材料を用いて基材のより粗い繊維に細繊維を結合することができる。このように、より粗い基材繊維が弛緩プロセス(プロセシング)により用いられ、摺動する場合、より粗い基材繊維は、それに結合されるより繊細な細繊維を担持する。
【0064】
図2に示すように、拡張前の複合フィルタ媒体10は、厚みt´と実質的に平坦な表面20を有する。この非拡張の複合フィルタ媒体10を、例えば5分間華氏250度(摂氏121.11度(異なる単位間の換算値であって有効数字の表示を意図しない。以下換算値については同じ。))で熱処理すると、基材媒体12の圧縮された繊維は弛緩及び再配向され、それによって基材媒体12を拡張させる。その結果、基材媒体12の厚さはtまで拡大し、図2に示す実質的に平坦な表面20は弛緩して、図1に示す波状の表面18を形成する。商業的に入手可能な基材/スクリムの一般的な平面の性質とは異なって、波状の表面が不規則であることは理解されるであろう。実際、フィルタ媒体のロールは典型的には、多くの媒体が通常はそのように設けられているように、概して平らな特徴を有して、媒体の予め巻かれたロールの状態で入荷される。基材媒体12の表面近傍のより粗い基材繊維が弛緩及び再配向されるにつれて、これらの繊維によって担持される細繊維14も共に移動し、波状の表面の繊維と共に引き伸ばされ、3次元マトリクスに組み込まれる。更に、2構成要素繊維の低融点ポリエステルは熱処理の間に溶融又は軟化して隣接する細繊維が低融点ポリエステル中へ埋め込まれることを可能とし、2構成要素繊維と細繊維14との間の結合を強化する。
【0065】
一の実施の形態では、基材媒体12は、約1乃至40マイクロメートルの平均繊維直径及び約0.5乃至15オンス/平方ヤード(約16.953g/m乃至14,085g/m)の坪量を有する複数構成要素繊維スクリムで形成される。細繊維14は、約0.01乃至0.5マイクロメートルの平均繊維直径を有し、約0.012g/m乃至0.025g/mの細繊維カバレッジを有する。本実施の形態では、拡張された複合フィルタ媒体10は、約100乃至200CFM(約2.832m/分乃至5.663m/分)のフレーザ透過性(Frazier透過性)、MERV11−16等級のMFP効率、及び水柱圧約1.5インチ(約38.1mm)の最終的な圧力損失で約400mg/100cm乃至600mg/100cmのMFPダスト保持重量を有する。
【0066】
図11及び図12は、本発明の別の実施の形態による複合フィルタ媒体90を示す図である。複合フィルタ媒体90は、図2に示す複合フィルタ媒体10の基材媒体12及び細繊維14に加えて媒体92及び細繊維93を備える。図示のように、複合フィルタ媒体90の細繊維14及び93は、基材媒体12と媒体92との間に挟まれて設けられる。媒体92及び基材媒体12は、同じスクリム又はフィルタ媒体、もしくは異なるスクリム又はフィルタ媒体で形成することができる。複合フィルタ媒体90は、例えば、図2に示す複合フィルタ媒体10の2つの層を細繊維が互いに向かい合うように積層し、基材媒体層を拡張させることによって構築することができ、細繊維は隣接する基材媒体と共に再配向される。
【0067】
一の実施の形態では、基材媒体12は、前述の実施の形態に記載した低融点ポリエステル/高融点ポリエステルの2構成要素繊維で形成されたスクリムである。細繊維14は、基材媒体12上に堆積させた電界紡糸されたナイロン(登録商標)‐6のナノ繊維である。同様に、媒体92には、細繊維93を形成する電界紡糸されたナイロン(登録商標)‐6のナノ繊維を堆積させる。細繊維14を堆積させた基材媒体12と細繊維93を堆積させた媒体92を、細繊維14及び細繊維93が互いに対面して向かい合うように合わせて積層して、図11に示す複合フィルタ媒体90を形成する。本実施の形態では、媒体92は基材媒体12に用いた同じスクリムで形成される。細繊維14及び細繊維93は、同一の細繊維カバレッジレベル(被覆率の程度)又は異なる細繊維カバレッジレベルを有してもよい。例えば、細繊維14は、約0.005g/m乃至0.030g/mの、好ましくは約0.012g/m乃至0.025g/mの細繊維カバレッジレベルを有する。同様に、細繊維93は、約0.005g/m乃至0.030g/mの、好ましくは約0.012g/m乃至0.025g/mの細繊維カバレッジレベルを有する。このため積層したとき、細繊維14、93の2つの層は、約0.010g/m乃至0.060g/mの、好ましくは約0.024g/m乃至0.050g/mの細繊維カバレッジレベルを有することができる。オプションとして(追加するか否かは任意に)、複合フィルタ媒体90をローラのセットを用いて圧縮して、層12、14、93、92の間の結合を促進することができる。図11に示すように、非拡張の複合フィルタ媒体90は実質的に平坦な表面94と厚さt´´を有する。次いで、前述の実施の形態と同様に非拡張の複合フィルタ媒体90を熱処理する。熱処理は、2構成要素繊維の低融点構成要素の溶融温度で、又はその付近で行うことができる。本実施の形態では、非拡張の複合フィルタ媒体90は、低融点ポリエステルの溶融温度まで、又はその付近まで加熱される。
【0068】
図12に示すように、熱処理の間に、基材媒体12及び媒体92の2構成要素繊維は弛緩及び再配向されて、t´´´まで複合フィルタ媒体90の厚さを拡大させて波状の表面96を形成する。基材媒体12の2構成要素繊維が弛緩及び再配向されるにつれて、細繊維14も基材媒体12の隣接する2構成要素繊維と共に移動する。同様に媒体92の2構成要素繊維が弛緩及び再配向されるにつれて、細繊維93も媒体92の隣接する2構成要素繊維と共に移動する。
【0069】
非拡張の複合フィルタ媒体又は他の従来のフィルタ媒体と比較したとき、拡大した厚さ及び波状の表面を有するかかる複合フィルタ媒体90は、優れたダスト保持能力及び減少した圧力損失を有し得る。更に、弛緩を介したフィルタ媒体の拡張によるフィルタ媒体の体積の増大は、拡張された複合フィルタ媒体90(図12参照)を、改善されたダスト保持容量及び減少した圧力損失を有する深さフィルタ媒体(Depth filter medias)(深さを有するろ過材)として良好に適合させ、より多くの微粒子を複合フィルタ媒体90の増大した体積の全体にわたって捕捉することができ、細繊維層はその大部分で不当に制限することなく最大の微粒子捕捉効率を設定することができる。
【0070】
図11及び図12は模式図であるが、図20、図21は、120倍の倍率で撮影された基材媒体及び拡張された複合フィルタ媒体の実際の光学顕微鏡画像を示す図である。図20は、細繊維の堆積及び拡張の前の、図11に示す基材媒体12及び媒体92等の基材媒体の光学顕微鏡画像である。図21は拡張された複合フィルタ媒体の光学顕微鏡画像であり、2つの図20に示す媒体のサンプルに細繊維を堆積させて積層し、図12に示す拡張された複合フィルタ媒体90のように、2つの媒体のサンプル上の細繊維が互いに対面して向かい合うように設ける。図21に示す複合フィルタ媒体は細繊維を含むが、この拡大画像では、媒体層の粗い繊維しか見ることができない。細繊維ははるかに小さく、より粗い繊維によって担持され、それは、拡大レベル2,500倍で撮影された複合フィルタ媒体の走査電子顕微鏡画像である図24を参照して見ることができる。図24では、一の媒体層を覆う細繊維に画像の焦点が合わせられ、他の媒体層を覆う細繊維は画像の焦点から外れている。細繊維で覆われた2層の媒体層は、細繊維が互いに対面して向かい合うように積層され、熱拡張されることにより複合フィルタ媒体を形成する。
【0071】
深さフィルタ媒体(深さを有するろ過材)は実質的に体積又は深さの全体に微粒子を填装(load)し、したがって深さ媒体は、フィルタの寿命を通して表面填装システムと比較したとき、より大きな重量及び体積の微粒子を填装することができる。しかし通常は、深さ媒体の構成は効率に関する難点を有する。これほどまで保持容量を高めるために、多くの場合、固体性(中実性)の低い媒体を用いることを選ぶ。これは、一部の微粒子がより容易に通過する可能性がある大きな孔サイズをもたらす。本発明の実施の形態による拡張された複合フィルタ媒体は、拡張した媒体及び細繊維を介して同じ低いレベルの圧力損失を維持しながら、優れたダスト保持能力及びろ過効率を提供することができる。
【0072】
他の実施の形態では、拡張された複合フィルタ媒体は、細繊維の多重層(複数の層)及び多重フィルタ層(複数のフィルタ層)を含むことができる。図13は、3層のフィルタ層12、92、104の間に挟まれて設けられた2層の細繊維層16、102を備える本発明の実施の形態による複合フィルタ媒体100を示す。フィルタ層12、92、104は、前述の実施の形態の低融点ポリエステル/高融点ポリエステルの2構成要素繊維スクリムと同じフィルタ媒体又はスクリムで形成することができる。代替として、フィルタ層12、92、104は、所望のフィルタ媒体の特性に応じて異なるフィルタ媒体又はスクリムで形成することができる。異なるフィルタ媒体又はスクリムを用いてフィルタ層12、92、104を形成する場合、拡張の間、フィルタ層12、92、104の繊維を異なるように弛緩及び再配向させることができる。そのため、フィルタ層12、92、104は異なるように拡張することができる。例えば、フィルタ層12及び92の厚さを2倍に増大させ、フィルタ層104の厚さは増大させないか又は非常にわずかに増大させるように設けることもできる。
【0073】
更に、細繊維層16、102は同じ量の細繊維又は異なる量の細繊維を含むことができる。フィルタ層12、92、104の材料及び細繊維層16、102の細繊維の量を選択して、勾配を有する深さ媒体を生成することができる。例えば、フィルタ層12、92、104は、前述の実施の形態の基材媒体12及びフィルタ層92に用いられた2構成要素スクリムに類似する2構成要素繊維スクリムで形成することができる。しかし、フィルタ層104の2構成要素繊維スクリムは、フィルタ層92のために選択されたスクリムよりも、より小さな固体密度(solid density)を有することができ、それによってより低いろ過効率とすることができる。更に、基材媒体12のために選択されるスクリムは、フィルタ層92に用いられるスクリムよりも大きな固体密度を有することができる。その上、細繊維層16を細繊維層102よりも多くの細繊維を含むように形成することができる。例えば、細繊維層102を約0.015g/mでPA‐6の電界紡糸細繊維を含むように形成することができ、一方で、細繊維層16を約0.025g/mでPA‐6の電界紡糸細繊維を含むように形成する。多様な実施の形態の細繊維層(複数の細繊維層)の各々のナノ繊維カバレッジレベルは、約0.005g/m乃至0.030g/mに設けることが好ましく、約0.012g/m乃至0.025g/mに設けることが更に好ましい。堆積/被覆後の起伏を有する(波状の)3次元マトリクスへの繊維の再配向により、不当な制限又は圧力損失の問題を引き起こすことなく、はるかに多くの細繊維を堆積させる(より大きな細繊維カバレッジ又は坪量とする)ことができ、実際にはその不当な制限又は圧力損失の問題を引き起こすこととは逆に、拡張の結果、より大きな有効体積領域が得られることが理解されるであろう。かかる勾配を有する複合フィルタ媒体100は、複合フィルタ媒体100の厚さの全体にわたってより多くのダスト微粒子が填装されることを可能とする。
【0074】
一の実施の形態では、非拡張状態の複合フィルタ媒体100は、約0.005インチ(0.127mm)の厚さを有する2構成要素繊維スクリムで形成されるフィルタ層12、92、104、及び約0.019g/mのカバレッジレベルで電界紡糸されたPA‐6ナノ繊維を備える細繊維層16、102を含む。非拡張の複合フィルタ媒体100は約0.015インチ(0.381mm)の全体の厚さを有する。熱拡張後に、フィルタ層12、92、104の各々の厚さは、約2倍乃至3倍又は更に大きく増大させることができ、それによって0.030インチ(0.762mm)又は0.045インチ(1.143mm)以上の全体の厚さを有する拡張された複合フィルタ媒体100を実現する。
【0075】
拡張された複合フィルタ媒体の他の構成は、ダスト保持及び圧力損失の特性を最適化するための他のろ過用途に有益であり得る。他の実施の形態では、拡張された複合フィルタ媒体は、様々な順序で構成される3層を超えるフィルタ層及び2層を超える細繊維層を含むことができる。
【0076】
加えて、細繊維の再配向をもたらす媒体の拡張後に、次いで、拡張された複合フィルタ媒体は、溝付きのフィルタやひだ付きのフィルタ又は類似の典型的なフィルタエレメント構成のようなギャザー加工された構成を有するフィルタエレメントに編成することができる。かかるギャザーを伴うフィルタ構成は、端部キャップ、フレーム及び同種の部材を有する、並びに多くの場合、参照により本明細書に援用される特許のいくつかにおいて示されるような環状の密閉ガスケットを有する、円筒形又は楕円形のエレメントの形態に設けられてもよい。この媒体は、また、かかるフィルタエレメント内に組み込むことができる。更に、拡張された複合フィルタ媒体にひだ加工して、パネルフィルタに用いることができる。
【0077】
図22は、本発明の一の実施の形態による円筒形の芯304の周りに巻き付けられたひだ付きのフィルタ媒体302、及び各端部に取り付けられた端部キャップ306、308を含む、ひだ付きのフィルタエレメント300を示す。ひだ付きのフィルタ媒体302は、図1、図12及び図13に示す拡張されたフィルタ媒体のような波状の表面を有する拡張された複合フィルタ媒体をひだ加工することによって形成することができる。かかる溝付きのフィルタエレメントは、本願出願人に譲渡された米国特許4,184,966号に開示されており、この教示及び開示は、本明細書の開示と矛盾しない範囲でその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0078】
図23は、本発明の別の実施の形態による溝付きのフィルタエレメント320を示す図である。溝付きのフィルタエレメントは、フレーム324、フィルタ媒体密閉部材(シール)326、環状の密閉部材328、及び溝付きのフィルタ媒体330を含む。溝付きのフィルタ媒体330は共にしっかりと合わされる面シートと複雑屈曲シートとを含み、中央フレーム332の周りに巻き付けられて、一方の面の近傍が閉鎖された第1の溝及び他方の面の近傍が閉鎖された第2の溝を含む複数の溝334を画成する。本実施の形態では、面シート及び/又は複雑屈曲シートは、図1、図12及び図13に示す拡張された複合フィルタ媒体のような波状の表面を有する拡張された複合フィルタ媒体から形成することができる。かかる溝付きのフィルタエレメントは、本願出願人に譲渡された米国特許公開2009−0320424号「取付フィルタフレーム及び取付フィルタフレームを有する溝付きのフィルタ」に開示されており、この教示及び開示は、本明細書の開示と矛盾しない範囲でその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0079】
図25は本発明の実施の形態によるパネルフィルタ350を示す図である。フィルタ媒体352は、図12に示す拡張された複合フィルタ媒体90のような拡張された複合フィルタ媒体を備える。拡張された複合フィルタ媒体をひだ加工してフィルタ媒体352を形成し、フレーム354で囲んでパネルフィルタ350を形成する。
【0080】
本発明に従う拡張された複合フィルタ媒体の別の実施の形態を説明したが、拡張された複合フィルタ媒体を形成する方法を以下に説明する。
【0081】
図14は拡張された複合フィルタ媒体を製造する代表的なプロセスを模式的に示し、前述の実施の形態のいずれもを本発明の加工の実施の形態に従って生成することができる。システム200は、巻出しステーション202、電界紡糸ステーション204、熱処理ステーション206及び巻戻しステーション208を含む。
【0082】
システム200において、スクリム210のロールは巻出しステーション202から巻き出される。一の実施の形態では、スクリム210のロールは、高融点ポリエステルの芯/低融点ポリエステルの鞘の2構成要素ステープル繊維で形成され、カレンダ加工ローラのセットを介して既に圧縮されて、所望の厚さ及び固体性(中実性)を有するスクリム210のロールとして形成されている。ウェブ(web)(布)状に形成されたスクリム212は電界紡糸ステーション204に向かってマシン方向214に移動する。電界紡糸ステーション204において、細繊維216はスクリム212のウェブ上に形成及び堆積され、複合フィルタ媒体218を形成する。次いで、複合フィルタ媒体218は熱処理ステーション206に入り、そこで複合フィルタ媒体218は低融点ポリエステルの溶融温度まで、又はその付近まで加熱される。熱処理の間、複合フィルタ媒体218は弛緩及び拡張して、拡張された複合フィルタ媒体220を形成し、巻戻しステーション208で巻き戻される。スクリム212のウェブと細繊維216との間の結合も熱処理の間に強化される。システム200の各構成要素については以下で詳細に述べる。
【0083】
スクリムを、システム200の上流プロセス(連続1ラインプロセスの一部又は断続2ラインプロセスのいずれか)で形成してもよく、又はHDK等の適切な供給者又はH&V若しくはAhlstrom等の他の適切な媒体供給者又は同様の供給者からロール形態で購入してもよい。スクリムを、前述の図3乃至図10に示す2構成要素繊維等の様々な適切な材料から形成することができる。代替として、媒体は、圧縮されて溶剤結合又は熱結合等により定位置に保持される(成形される)他の単一構成要素媒体(single component media)であってもよい。例えば2構成要素の場合、同心に設けられた鞘/芯型の2構成要素繊維を、芯として高融点ポリエステルを用い、鞘として低融点ポリエステルを用いて同時押出成形(coextrude)してもよい。そして、かかる2構成要素繊維を、スクリム又はフィルタ媒体を形成するために用いることができる。一の実施の形態では、2構成要素繊維を、ステープル繊維(staple fibers)(ステープルファイバ)((短く)切断した繊維)として用いることにより、従来の乾式積層プロセス又は空気積層プロセスによって複数構成要素フィルタ媒体又はスクリムを形成する。このプロセスで用いられるステープル繊維は比較的短く不連続なものであるが、従来の装置で扱うためには十分な長さである。2構成要素繊維の複数の包装(bales)は、シュート供給(chute feed)を経由して供給され、カーディング装置(carding device)で個々の繊維に分離されてから、繊維ウェブへと空気積層(air laid)される(この繊維ウェブ自体は、本開示においては基材と見ることができる)。次に、繊維ウェブを、カレンダローラのセットを用いて圧縮し、スクリムロール210を形成する(このスクリムロール210は基材としても見ることができる)。追加するか否かは任意に、繊維ウェブをカレンダ加工ローラのセットに入れる前に加熱してもよい。本実施の形態のスクリム210は、高融点構成要素及び低融点構成要素を含む2構成要素繊維を備えるため、2構成要素フィルタ媒体とも呼ばれる。いくつかの実施の形態では、繊維ウェブをカレンダリング(圧延加工)する前に折り畳んで、より厚い2構成要素フィルタ媒体を形成する。
【0084】
別の実施の形態では、ポリエステル繊維等の高融点ポリマー繊維を備えるウェブ、及びポリプロピレン繊維等の低融点ポリマー繊維を備えるウェブを分離して形成し、共に積層することにより、2構成要素フィルタ媒体又はスクリムのロールを形成することができる。かかる実施の形態では、細繊維216は、スクリム212の低融点側に堆積される。この実施の形態では、低融点ウェブは、低融点構成要素が加熱及び溶融されたときに高融点ウェブの表面を塞がないように、高融点ウェブよりも実質的に薄く設けられる。
【0085】
他の実施の形態では、2構成要素繊維スクリムは、溶融ブロープロセス(melt blowing process)により形成することができる。例えば、溶融ポリエステル及び溶融ポリプロピレンが、加熱された高速空気を伴って押出し及び引抜き成形されることで粗繊維を形成することができる。この繊維は、移動中の網(screen)上にウェブとして収集されることにより2構成要素スクリム210を形成することができる。
【0086】
また、複数構成要素繊維フィルタ媒体又はスクリムは、少なくとも2種類の異なるポリマー材料を用いてスパンボンド(spun−bonded)(紡糸接着)されてもよい。典型的なスパンボンドプロセスでは、溶融ポリマー材料が複数の押出成型開口(extrusion orifices)を通過することにより複数糸紡糸工程(multifilamentary spinline)が形成される。この複数糸紡糸工程では、その引張り強さを高めるために引き抜かれ、固体化を生じさせる急冷ゾーンを通過させられて、移動する網(screen)等の支持体の上に集められる。スパンボンドプロセスは溶融ブロープロセスに類似するが、溶融ブローによる繊維はスパンボンドによる繊維よりもより細いのが通常である。
【0087】
更に他の実施の形態では、複数構成要素フィルタ媒体は湿式積層(wet−laid)される。湿式積層プロセスでは、高融点繊維及び低融点繊維が搬送ベルト上に分散され、これらの繊維は、湿った状態にある間に均一なウェブへと広げられる。湿式積層操作では、典型的には1/4乃至3/4インチ(6.35mm乃至19.05mm)の長さの繊維が用いられるが、繊維が硬かったり太かったりする場合には時として、より長い繊維を用いる。多様な実施の形態による前述の繊維は、圧縮されることにより、所望の厚さを有するスクリム210又はフィルタ媒体を形成する。
【0088】
再び図14を参照して説明する。スクリムのウェブ(布)212は、細繊維216が形成されてスクリムのウェブ212の上に堆積する、電界紡糸ステーション204に入る。電界紡糸ステーション204において、細繊維216は、電界紡糸セル222から電界紡糸され、スクリムウェブ212の上に堆積する。システム200の電界紡糸プロセスは、本願出願人に譲渡された米国特許公開2009/0199717号の「100ナノメートル未満の細繊維及び方法」に開示されている電界紡糸プロセスと実質的に同様とすることができ、その開示の全体を参照により本明細書に組み込む。代替として、ノズルバンク(nozzle banks)又は他の電界紡糸設備を用いて細繊維を形成することもできる。このような代替としての電界紡糸装置又はセル222のチェーン電極の経路変更により、繊維を所望の配向に堆積させることが可能となる(例えば、繊維は上方向に紡糸されていることが示されているが、粗繊維を搬送するコンベヤ上へ繊維を下方向、水平方向、又は対角方向に紡糸することも可能である)。
【0089】
この電界紡糸プロセスは、ナノ繊維としても知られる小直径の合成繊維を生産する。静電紡糸の基本プロセスは、高電圧勾配等の強電界が存在する中での、溶融ポリマーの流れ又はポリマー溶液の流れへの静電荷の導入を伴う。電界紡糸セル222においてポリマー流体へ静電荷を導入することにより、荷電流体噴流(荷電流体ジェット)が形成される。この荷電噴流は、静電界中で加速して細くなり、接地コレクタ(ground collector)の方向に引き付けられる。かかるプロセスにおいては、ポリマー流体の粘弾性力により、この噴流は安定化し、小直径の糸(filaments)が形成される。繊維の平均直径は、静電紡糸セル222の設計及びポリマー溶液の配合により制御することができる。
【0090】
細繊維を形成するために用いるポリマー溶液は、様々なポリマー材料及び溶剤を含むことができる。例示のポリマー材料には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリエステル、セルロースエーテル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリレンオキシド、ポリスルホン、変性ポリスルホンポリマー及びポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデンが含まれる。静電紡糸用のポリマー溶液を作るための溶剤には、酢酸、ギ酸、m−クレゾール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール塩化溶剤、アルコール、水、エタノール、イソプロパノール、アセトン、及びN−メチルピロリドン、並びにメタノールが含まれてもよい。この溶剤とポリマーは、所与の溶剤及び/又は溶剤混合物(両方とも「溶剤」と呼ぶ場合がある)中のポリマーの十分な可溶性に基づいて、適切に用いるために組み合わせることができる。例えば、ギ酸をナイロン(登録商標)‐6としても広く知られるポリアミドに対して選択してもよい。細繊維の電界紡糸に関する更なる詳細については前述の特許を参照することができる。
【0091】
システム200において、高電圧差を生じさせる高電圧を供給することにより、電界紡糸セル222内の電極と真空コレクタコンベヤ(vacuum collector conveyor)224との間に静電界が生成される。図14に示すように、細繊維216が形成される複数の電界紡糸セル222を設けてもよい。電界紡糸セル222の電極で形成された細繊維216は、静電界により与えられる力によって真空コレクタコンベヤ224の方向に引かれる。また、真空コレクタコンベヤ224は、スクリムのウェブ212を保持し、機械方向214にスクリムのウェブ212を移送する。この構成では、スクリムのウェブ212は、細繊維216がスクリムのウェブ212上に堆積するように電界紡糸セル222と真空コレクタコンベヤ224との間に配置される。スクリムのウェブ212が一方の表面上の低融点構成要素と他方の表面上の高融点構成要素とを含む複数構成要素フィルタ媒体である実施の形態では、複数構成要素スクリム212は、複数構成要素スクリムの低融点構成要素表面が電界紡糸セル222に対面するように、電界紡糸セル222と真空コレクタコンベヤ224との間に配置される。
【0092】
一の実施の形態では、電界紡糸セル222は、ポリアミド‐6(PA‐6)と、2/3の酢酸及び1/3のギ酸からなる適切な溶剤とを含むポリマー溶液を収容する。かかる溶剤において、酢酸及びギ酸は共に、PA‐6を溶解するための溶解剤として機能し、酢酸は、ポリマー溶液の導電性及び表面張力を制御する。電界紡糸セル222は、PA‐6から形成される細繊維を生成し、この細繊維は、スクリムのウェブ212の表面上に堆積される。細繊維216がスクリムのウェブ212の表面に堆積されると共に、いくらかの細繊維216は、電界紡糸セル222に対面するスクリムの表面近傍の粗繊維と交絡(entangle)する。いくらかの細繊維216が、スクリムの表面近傍のいくらかの繊維と交絡するときに、電界紡糸プロセスからの細繊維216内に残留するいくらかの溶剤は、細繊維216とスクリムのウェブ212の繊維との間に溶剤結合を生じさせることができる。溶剤結合の効果を得るために、スクリムのウェブ212の繊維は可溶性を有すること、又は少なくとも細繊維内の溶剤に反応することが求められる。電界紡糸ステーション204で形成された複合フィルタ媒体218の断面図は図2に示す非拡張の複合フィルタ媒体10に類似するものとして見ることができる。
【0093】
電界紡糸ステーション204を出ると、複合フィルタ媒体218は拡張プロセスに進む。本実施の形態では、複合フィルタ媒体218の拡張は熱処理ステーション206で達成される。熱処理ステーション206は、対流オーブン(convection oven)等の任意の好適な従来のオーブン、又は赤外線オーブン(infrared oven)等の他の好適なタイプの加熱機構を利用する加熱装置とすることができる。スクリム212が高融点/低融点の2構成要素繊維を備える場合、複合フィルタ媒体218は、2構成要素繊維の低融点ポリマー構成要素の溶融温度まで、又はその付近まで加熱される。スクリム212の2構成要素繊維が低融点ポリマー構成要素の溶融温度まで又はその付近まで加熱されるにつれて2構成要素繊維は弛緩及び再配置(reposition)される。図4に示す偏心して設けられた鞘/芯型の2構成要素繊維等の2構成要素繊維のいくらかは、熱処理を行ったとき、様々な方向に渦を巻き及びねじれ得る。更に、スクリムの形成の間に、例えばカレンダ加工ローラのセットを介して合わせて圧縮された2構成要素繊維は、熱が圧縮力を解放して2構成要素繊維を再配置させて繊維間の平均距離を増大させると共に除圧される。そのようにして、スクリム212のウェブはその厚みが増して波打って、波状の表面を形成する。
【0094】
更に、細繊維216を担持する表面近傍の2構成要素繊維が移動して再配向されるにつれて、細繊維216も2構成要素繊維と共に移動する。前述のように、細繊維216はスクリム212のウェブの表面上に堆積され、いくらか(一部)の細繊維216は、スクリム212のウェブの表面近傍の2構成要素繊維と接触するようになり、溶剤結合により結合され得る。2構成要素繊維の外側の低融点ポリマー構成要素が軟化又は溶融し、細繊維216を埋め込むにつれて、2構成要素繊維と細繊維216との間の結合は熱処理の間に強化される。熱処理中は、複合フィルタ媒体218は、低融点構成要素のガラス転移温度を少なくとも上回るまで、より好ましくは低融点構成要素の溶融温度又はその付近まで、加熱される。例えば、複合フィルタ媒体218は、2構成要素繊維の外側の低融点ポリエステル層が溶融し、PA‐6から形成された細繊維216と結合するように、低融点ポリエステルの融点まで又はその付近まで加熱される。かかる実施の形態では、PA‐6及び高融点ポリエステルの溶融温度は、低融点ポリエステルの溶融温度よりも著しく高いので、PA‐6細繊維216及び2構成要素繊維の高融点ポリエステルの芯は溶融しない。最も低い溶融温度を有する低融点ポリエステルは溶融又は軟化し、隣接するPA‐6細繊維216は、この軟化又は溶融した低融点ポリエステル内に埋め込まれ、それにより細繊維216とスクリムのウェブ212とが共に結合される。したがって、低融点ポリエステルは、2構成要素繊維スクリム212と細繊維216との間の結合剤として機能する。
【0095】
図15A乃至図15Dはスクリム212の2構成要素繊維及びスクリムのウェブ212の表面近傍の細繊維216を多様な倍率で示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。図15A及び図15Bの300倍及び1,OOO倍で示すSEM画像に見られるように、スクリムウェブ212上に堆積した細繊維216は、スクリム212の表面近傍に位置するより粗い2構成要素繊維の間の蜘蛛の巣状の繊維構造を形成する。より高い倍率で得られたSEM画像(2,000倍の図15C及び10,000倍の図15D)は、細繊維216と2構成要素繊維との間の結合を示す。図15Dに鮮明に示すように、細繊維216は、2構成要素繊維の低融点ポリエステル表面に埋め込まれている。
【0096】
2構成要素繊維が熱処理の間に弛緩及び再配向されるにつれて、2構成要素繊維の表面上に埋め込まれた細繊維216は2構成要素繊維と共に移動する。2構成要素繊維が加熱されるにつれて、2構成要素繊維は異なる方向に渦を巻いたり、ねじれたり、移動したりし得る。細繊維216を担持する2構成要素繊維の一部(いくらか)は、外側に向かって移動して表面を拡張させることができ、一方、細繊維216を担持する2構成要素繊維の他の一部(いくらか)は、元の表面位置に留まるか又は反対方向である内側に向かって移動することができる。そのようにして、複合フィルタ媒体218の実質的に平坦な表面は熱処理の間に繊維が配向するにつれて波状になる。更に、スクリム212の表面位置に堆積していた細繊維216は2構成要素繊維と共に移動するにつれて引き伸ばされ、それによって、複合フィルタ媒体218が熱処理の間に拡張するにつれて、細繊維216がスクリム212のウェブへ組み込まれる深さが増大する。2構成要素繊維及び細繊維216の再配向は、拡張された複合フィルタ媒体218の全体の微細孔構造も改善することができる。したがって、拡張による固体比率の減少(同じ量の繊維で体積が増加する)及び拡張された複合フィルタ媒体218の微細孔構造の改善は、フィルタ能力(フィルタ容量)を向上させ、及び圧力損失の増大を緩やかにする。拡張された複合フィルタ媒体220は、波状の表面及び拡大された厚さを有する図1に示す拡張された複合フィルタ媒体に類似してもよい。
【0097】
いくつかの実施の形態では、拡張された複合フィルタ媒体220は、熱処理ステーションの下流でローラのセットを通してプロセシングしてもよい。少量の圧力を拡張された複合フィルタ媒体220に印加して細繊維216と基質スクリム212との間の接着を促進することができ、及び/又は所望の厚さまで複合フィルタ媒体220の厚さをわずかに減少させることができる。しかしながら、拡張された複合フィルタ媒体220は、ローラのセットを通しても熱処理による波状の表面及び拡大された厚さを実質的に保持する。
【0098】
図16は、本発明の別の実施の形態による拡張された複合フィルタ媒体を製造するためのシステム230の模式図である。システム230は、基材236の形成のための装置232、フィルタ層238の形成のための装置234、電界紡糸ステーション240、ローラ242のセット、熱処理ステーション244及び巻戻しステーション252を含む。
【0099】
基材媒体236及びフィルタ層238は様々な好適な材料及び方法で形成することができる。更に、基材媒体236及びフィルタ層238は、同じフィルタ媒体又はスクリム、もしくは異なるフィルタ媒体又はスクリムから形成することができる。
【0100】
一の実施の形態では、基材媒体236及びフィルタ層238は同じ2構成要素繊維スクリムから形成される。本実施の形態では、高融点ポリエステルの芯及び低融点ポリエステルの鞘を備える2構成要素ステープル繊維は、基材媒体形成装置232及びフィルタ層形成装置234で所望の厚さ及び幅を有するスクリムのウェブとして形成される。
【0101】
2構成要素繊維スクリムを備える基材媒体236は電界紡糸ステーション240に入り、PA‐6ナノ繊維254は、図14に示す電界紡糸ステーション204について説明した形態で基材媒体236の表面上に形成及び堆積される。次いで細繊維254を担持する基材媒体236は、ローラ242のセットを介してフィルタ層238と共に積層される。図示のように、フィルタ層238は、複合フィルタ媒体246の細繊維が堆積された側の上に積層される。ローラ242のセットは、細繊維254と基材媒体236との間の結合及び細繊維254とフィルタ層238との間の結合を可能とする所望の量の圧力を印加することができる。ローラ242のセットを出た複合フィルタ媒体248は、図11に示す非拡張の複合フィルタ媒体90と類似するものとして見ることができる。
【0102】
次いで複合フィルタ媒体248は熱処理ステーション244に入る。熱処理ステーション244において、複合フィルタ媒体248は、2構成要素繊維の低融点ポリエステル構成要素の融点まで、又はその付近まで加熱される。基材媒体236及びフィルタ層238の2構成要素繊維は、図14に示す実施の形態に関して説明したように、弛緩及び再配向される。前述のように、細繊維254も2構成要素繊維と共に再配向される。熱処理ステーション244を出た拡張された複合フィルタ媒体250は、図12に示す拡張された複合フィルタ媒体に類似するものとして見ることができる。拡張された複合フィルタ媒体250は拡大された厚さ及び波状の表面を有する。最終的に、拡張された複合フィルタ媒体250は巻戻しステーション252でロールへと巻き付けられる。いくつかの実施の形態では、拡張された複合フィルタ媒体250は、熱処理ステーションの下流でローラのセットを通してプロセシングしてもよい。少量の圧力を拡張された複合フィルタ媒体250に印加して異なる複数の層の間の接着を促進することができ、及び/又は所望の厚さまで複合フィルタ媒体250の厚さをわずかに減少させることができる。しかしながら、拡張された複合フィルタ媒体250は、ローラのセットを通しても熱処理による波状の表面及び拡大された厚さを実質的に保持する。
【0103】
図26は、本発明の別の実施の形態による拡張された複合フィルタ媒体を製造するためのシステム400の模式図である。システム400は2つの巻出しステーション402、404、オーブン406、及び巻戻しステーション408を含む。基材媒体414及び細繊維418を含む、細繊維で被覆された媒体410のロールは、細繊維で被覆された媒体412の細繊維420に対面して向かい合う細繊維418と共に巻出しステーション402から巻き出される。基材媒体416及び細繊維420を含む細繊維で被覆された媒体412のロールは、細繊維418に対面して向かい合う細繊維420と共に巻出しステーション404から巻き出される。細繊維418、420は、図14に示すシステム200で説明される電界紡糸のような電界紡糸法によって基材媒体414及び416上に堆積される。本実施の形態では、細繊維418、420は、前述の実施の形態に記載した電界紡糸されたナイロン(登録商標)‐6のナノ繊維である。基材媒体414、416は、前述の実施の形態に記載した高融点ポリエステル/低融点ポリエステル繊維を含む2構成要素繊維スクリムを備える。
【0104】
2層の細繊維で被覆された媒体410、412は、ローラ422のセットの間で共に積層され、複数の層414、418、420、416の間の接着を可能とするために圧力が印加される。いつくかの実施の形態では、ローラ422のセットは、複数の層414、418、420、416の間の接着を強化するために加熱されてもよい。積層された複合フィルタ媒体424は、オーブン406に入る前は、図11に示す非拡張の複合フィルタ媒体90と類似するものとして見ることができる。複合フィルタ媒体424はオーブン406に入る。オーブン内で、複合フィルタ媒体424は、低融点ポリエステルの融点まで、又はその付近まで加熱され、基材媒体414、416は前述の実施の形態に記載したように拡張する。基材媒体414が拡張するにつれて、基材媒体414の粗い2構成要素繊維によって担持される細繊維418も3次元マトリクスへと移動及び再配向される。同様に、基材416が拡張するにつれて、基材媒体416の粗い2構成要素繊維によって担持される細繊維420は3次元マトリクスへと移動及び再配向される。更に、複合フィルタ媒体424が加熱されるにつれて、層414、418、420、416の間で熱結合を生じて接着を可能とすることができる。オーブン406での熱拡張の後に、拡張された複合フィルタ媒体426は、図12に示す拡張された複合フィルタ媒体90に類似するものとして見ることができ、細繊維層418、420は互いに対面して向かい合うように積層される。拡張された複合フィルタ媒体426は巻戻しステーション408でロールへと巻き付けられる。
【0105】
図27は、本発明の更に他の実施の形態による拡張された複合フィルタ媒体を製造するためのシステム430の模式図である。システム430は3つの巻出しステーション432、434、436、オーブン438、及び巻戻しステーション440を含む。基材媒体448及び細繊維452を含む細繊維で被覆された媒体442のロールは、細繊維で被覆された媒体444のロールの基材媒体450に対面して向かい合う細繊維452と共に巻出しステーション432から巻き出される。基材層450及び細繊維454を含む細繊維で被覆された媒体444のロールは、細繊維452に対面して向かい合う基材層450と共に巻出しステーション434から巻き出される。細繊維で被覆された媒体442及び細繊維で被覆された媒体444は、ローラ456のセットの間で積層され、圧力が印加されて層448、452、450、454の間の接着を可能とする。ローラ456のセットを加熱して、熱結合により層448、452、450、454の間の接着を可能とすることができる。媒体446のロールは巻出しステーション436から巻き出され、ローラ458のセットを介して細繊維454の上に積層される。更なる圧力をローラ458のセットによって印加して層の間の積層を可能とすることができる。ローラ458のセットを加熱して、層448、452、450、454、446の間の接着を可能とすることもできる。
【0106】
細繊維452、454は、図14に示すシステム200で説明される電界紡糸のような電界紡糸法によって基材媒体448及び450上に堆積される。本実施の形態では、細繊維452、454は、前述の実施の形態に記載した電界紡糸されたナイロン(登録商標)‐6のナノ繊維である。基材媒体448、450及び媒体446は、前述の実施の形態に記載した高融点ポリエステル/低融点ポリエステル繊維を含む2構成要素繊維スクリムを備える。媒体446、448、450の3つの層、及び細繊維452、454の2つの層を含む、拡張された複合フィルタ媒体460は、オーブン438に入り、複合フィルタ媒体460は前述の実施の形態に記載したように熱により拡張する。複合フィルタ媒体460がオーブン438内で加熱されるにつれて、層448、452、450、454、446の間で熱結合を生じて接着を改善することができる。オーブン438を出た後の拡張された複合フィルタ媒体462は、図13に示す拡張された複合フィルタ媒体100に類似するものとして見ることができる。拡張された複合フィルタ媒体462は巻戻しステーション440でロールへと巻き付けられる。
【実施例】
【0107】
[実施例及び試験結果]
【0108】
図13に示す本発明の一の実施の形態による拡張された複合フィルタ媒体100の試験サンプルを実験室で製作した。1.25OSY(42.383g/m)の坪量を有する高融点ポリエステルの芯と低融点ポリエステルの鞘とを備える2構成要素繊維スクリムを、基材媒体12、フィルタ層92及びフィルタ層104に用いた。
【0109】
細繊維は、電界紡糸プロセスにより、PA‐6を含むポリマー溶液から形成した。PA‐6ナノ繊維は、約0.019g/mのカバレッジレベルで2構成要素繊維スクリム上に形成及び堆積された。かかる細繊維を担持する2層の2構成要素繊維スクリム及び被覆されていない2構成要素繊維スクリムは、図13に示すように細繊維が2構成要素繊維スクリム層の間に挟まれて設けられるように合わせて積層された。次いで、複合フィルタ媒体の試験サンプルを華氏約250度(摂氏約121.11度)で約5分間オーブン内で加熱した。
【0110】
サンプルは効率(efficiency)及びダスト保持容量について試験され、サンプルの試験結果は市場で入手可能な他の比較し得るフィルタ媒体の結果と比較された。MFPダスト保持試験についての試験条件は、140mg/mの濃度でのISO試験用微細ダスト、100cmのサンプルサイズ、面速度10cm/sであった。MFP効率試験についての試験条件は、70mg/mの濃度でのISO試験用微細ダスト、100cmのサンプルサイズ、面速度20cm/sであった。図17乃至図19は、Lydall Inc.を通して入手可能な2つの比較可能なフィルタ媒体(Lydall MERV14等級 SC8100及びLydall MERV11等級 SC8110)と比較した、複合試験サンプルの効率及びダスト保持の試験結果を示す。
【0111】
図17に示すように、複合媒体試験サンプル(CLC媒体)は効率試験においてLydall SC8110よりも優れており、Lydall SC8100に非常に近い結果であった。しかしながら、複合媒体試験サンプル(CLC媒体サンプル1及びCLC媒体サンプル2)は、ダスト保持試験においてはるかに優れており、図18及び図19に示すように全試験期間にわたってより低い圧力損失を示した。
【0112】
本明細書中で引用する公報、特許出願及び特許を含む全ての文献は、各文献を個々に、具体的に示し、引用して組み込むかのように、又、その全体を本明細書に記載するかのように、引用して組み込まれる。
【0113】
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞及び同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数及び複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」及び「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(即ち「〜を含むが限らない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明される全ての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例又は例示的な言い回し(例えば「等」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、請求項に記載されていない要素を、本発明の実施に不可欠であるものとして示すものとは解釈されないものとする。
【0114】
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読めば、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正及び均等物を全て含む。更に、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、全ての変形における上記要素のいずれの組み合わせも本発明に包含される。
【符号の説明】
【0115】
10 拡張された複合フィルタ媒体
12 基材媒体
14 細繊維
16 表面
18 波状の表面(起伏を有する表面)
20 略平坦な表面
22 2構成要素繊維(同心型)
24 芯
26 鞘
28 2構成要素繊維(偏心型)
30 芯
32 鞘
34 2構成要素繊維(並列型)
36 第1のポリマー構成要素
38 第2のポリマー構成要素
40 2構成要素繊維(パイ楔型)
42 第1のポリマー構成要素
44 第2のポリマー構成要素
46 2構成要素繊維(中空パイ楔型)
48 第1のポリマー楔
50 第2のポリマー楔
52 中空中心
54 2構成要素繊維(島/海型)
56 第1のポリマー構成要素
58 第2のポリマー構成要素
60 2構成要素繊維(3つ葉型)
62 2構成要素繊維(3つ葉型)
64 第1のポリマー構成要素
66 第1のポリマー構成要素
68 第2のポリマー構成要素
70 第2のポリマー構成要素
72 直径
74 直径
78 2構成要素繊維(3つ葉端部型)
80 2構成要素繊維(十字端部型)
82 第1のポリマー中央部
84 第2のポリマー端部
86 第1のポリマー中央部
88 第2のポリマー端部
90 複合フィルタ媒体
92 媒体
93 細繊維
94 略平坦な表面
96 波状の表面
100 複合フィルタ媒体
102 細繊維層
104 フィルタ媒体層
200 システム
202 巻出しステーション
204 電界紡糸ステーション
206 熱処理ステーション(オーブン)
208 巻戻しステーション
210 スクリムロール
212 スクリム
214 マシン方向
216 細繊維
218 複合フィルタ媒体
220 拡張された複合フィルタ媒体
222 電界紡糸セル
224 真空コレクタコンベヤ
230 システム
232 基材媒体形成装置
234 フィルタ層形成装置
236 基材媒体
238 フィルタ層
240 電界紡糸ステーション
242 ローラ
244 熱処理ステーション
248 複合フィルタ媒体
250 拡張された複合フィルタ媒体
252 巻戻しステーション
254 細繊維
300 ひだ付きのフィルタエレメント
302 ひだ付きのフィルタ媒体
304 円筒型の芯
306 端部キャップ
308 端部キャップ
320 溝付きのフィルタエレメント
324 フレーム
326 フィルタ媒体密閉部材
328 環状の密閉部材
330 溝付きのフィルタ媒体
332 中央フレーム
334 複数の溝
350 パネルフィルタ
352 フィルタ媒体
354 フレーム
400 システム
402 巻出しステーション
404 巻出しステーション
406 オーブン
408 巻戻しステーション
410 細繊維で被覆された媒体
412 細繊維で被覆された媒体
414 基材媒体
416 基材媒体
418 細繊維
420 細繊維
422 ローラ
424 複合フィルタ媒体
426 拡張された複合フィルタ媒体
430 システム
432 巻出しステーション
434 巻出しステーション
436 巻出しステーション
438 オーブン
440 巻戻しステーション
442 細繊維で被覆された媒体
444 細繊維で被覆された媒体
446 媒体
448 基材媒体
450 基材媒体
452 細繊維
454 細繊維
456 ローラ
458 ローラ
460 拡張された複合フィルタ媒体
462 拡張された複合フィルタ媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の厚さを有する基材の表面上に細繊維を堆積させるステップであって、前記細繊維の平均直径は1マイクロメートル未満である、基材の表面上に細繊維を堆積させるステップと;
前記細繊維を担持する前記基材を前記第1の厚さを超える第2の厚さまで拡張させるステップとを備える;
フィルタ媒体を製造する方法。
【請求項2】
低融点ポリマー構成要素及び高融点ポリマー構成要素を有する複数構成要素繊維を圧縮して前記第1の厚さを有する前記基材を形成するステップを更に備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細繊維を堆積させるステップは、前記細繊維を電界紡糸するステップと、前記基材の表面上へ前記細繊維を直接堆積させるステップとを有し、前記細繊維の一部は前記基材の表面近傍の前記複数構成要素繊維の一部に取り付けられるように構成された、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細繊維を電界紡糸するステップは、前記基材の表面上に前記細繊維を堆積させて約0.012g/m乃至0.025g/mの細繊維カバレッジを得るステップを有する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記拡張させるステップは、前記フィルタ媒体を加熱するステップを有し、前記フィルタ媒体を加熱するステップは、前記基材の前記複数構成要素繊維が弛緩及び再配向され、それにより前記第2の厚さまで前記基材を拡張させ、前記複数構成要素繊維の波状の表面を形成するように構成され、前記細繊維が前記細繊維を担持する前記複数構成要素繊維と共に移動するにつれて前記細繊維は引き伸ばされ、前記細繊維が前記波状の表面の複数構成要素繊維と共に3次元マトリクスに組み込まれるように構成された、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱するステップは、前記低融点ポリマー構成要素の略溶融温度まで前記フィルタ媒体を加熱するステップを有し、前記低融点ポリマー構成要素の略溶融温度まで前記フィルタ媒体を加熱するステップは、前記低融点ポリマー構成要素が溶融又は軟化し、前記細繊維の一部が前記溶融又は軟化した低融点ポリマー構成要素中に埋め込まれるように構成された、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記拡張後に、前記第2の厚さが前記第1の厚さの少なくとも1.5倍の厚さとなるように構成された、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記拡張後に、前記第2の厚さが前記第1の厚さの少なくとも2倍の厚さとなるように構成された、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
フィルタ層を積層するステップであって、前記細繊維が前記基材と前記フィルタ層との間に挟まれるように積層する、フィルタ層を積層するステップを更に備え、前記基材、前記細繊維及び前記フィルタ層を有する前記フィルタ媒体が加熱されて前記基材及び前記フィルタ層が拡張し、前記細繊維が引き伸ばされるように構成された、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記細繊維の各層が複数の前記基材の間又は前記基材とフィルタ層との間に挟まれるように、前記細繊維及び前記フィルタ層を担持する前記基材の多重層を積層するステップを更に備え、前記積層された多重層は加熱されて前記複数の基材及び前記フィルタ層が拡張し、前記細繊維が引き伸ばされて前記複数の基材の波状の表面内に組み込まれるように構成された、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
1マイクロメートル未満の平均繊維直径を有する細繊維を担持する平均繊維直径が1マイクロメートルを超える繊維で形成された基材を備え、前記基材は波状の表面を有し、前記細繊維は前記波状の表面の前記基材を形成する繊維と共に3次元マトリクスに組み込まれるように構成された、
フィルタ媒体。
【請求項12】
前記基材は複数構成要素繊維を有する拡張されたスクリムであり、前記基材を形成する複数構成要素繊維の前記波状の表面は、平坦な表面及び前記拡張されたスクリムよりも薄い厚さを有する初期状態である非拡張状態の前記スクリムから前記拡張されたスクリムへの前記拡張により形成された、
請求項11に記載のフィルタ媒体。
【請求項13】
前記複数構成要素繊維は第1の構成要素及び第2の構成要素を含み、前記第1の構成要素は前記第2の構成要素よりも高い溶融温度を有し、前記細繊維は前記第2の構成要素を介して前記波状の表面を有する前記複数構成要素繊維に取り付けられた、
請求項12に記載のフィルタ媒体。
【請求項14】
前記第1の構成要素は高融点ポリエステルで形成され、前記第2の構成要素は低融点ポリエステルで形成され、前記細繊維は電界紡糸されたポリアミドのナノ繊維で形成された、
請求項13に記載のフィルタ媒体。
【請求項15】
前記スクリムは前記初期状態である非拡張状態の表面位置又はその近傍に前記細繊維を担持し、前記複数構成要素繊維は前記拡張されたスクリム内で再配向されて前記複数構成要素繊維が前記細繊維を担持すると共に引き伸ばし、前記細繊維が前記非拡張状態の前記表面位置を越えて前記拡張されたスクリム内のより深くまで組み込まれて設けられた、
請求項12に記載のフィルタ媒体。
【請求項16】
前記拡張されたスクリムを備えるフィルタ媒体は、前記初期状態である非拡張状態のスクリムを備えるフィルタ媒体よりも高いダスト保持容量を有し、かつ圧力損失の増大が緩やかである、
請求項15に記載のフィルタ媒体。
【請求項17】
スクリムを更に備え、前記細繊維は前記基材と前記スクリムとの間に積層された、
請求項11に記載のフィルタ媒体。
【請求項18】
前記フィルタ媒体は前記細繊維を担持する複数の前記基材の層を備え、スクリムを更に備え、前記細繊維の各層は前記複数の基材の層の間又は前記基材と前記スクリムとの間に挟まれて設けられた、
請求項11に記載のフィルタ媒体。
【請求項19】
前記基材の各層は複数構成要素繊維を有する複数構成要素スクリムで形成され、前記複数構成要素繊維は高融点構成要素及び低融点構成要素を含み;前記細繊維は電界紡糸ポリマーナノ繊維から形成され;前記電界紡糸ポリマーナノ繊維及び前記高融点構成要素は前記低融点構成要素よりも高い溶融温度を有し;前記複数構成要素スクリムは加熱により非拡張状態から拡張し;前記低融点構成要素は前記加熱の間に溶融又は軟化して前記細繊維と結合し;前記複数構成要素スクリムが前記拡張するにつれて前記細繊維が引き伸ばされて設けられた、
請求項18に記載のフィルタ媒体。
【請求項20】
前記基材は、約1乃至40マイクロメートルの平均繊維直径及び約16.953g/m乃至14,085g/m(約0.5乃至15オンス/平方ヤード)の坪量を有する複数構成要素繊維スクリムで形成され;前記細繊維は、約0.01乃至0.5マイクロメートルの平均繊維直径を有し;前記細繊維の層の各々は、約0.012g/m乃至0.025g/mの細繊維カバレッジを有し;前記フィルタ媒体は、約2.832m/分乃至5.663m/分(約100乃至200CFM)のフレーザ透過性、及び水柱圧約38.1mm(約1.5インチ)の最終的な圧力損失で約400mg/100cm乃至600mg/100cmのMFPダスト保持重量を有する、
請求項11に記載のフィルタ媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2013−521107(P2013−521107A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555150(P2012−555150)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2011/026093
【国際公開番号】WO2011/106537
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(510135935)クラーコア インコーポレーテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】CLARCOR Inc.
【住所又は居所原語表記】840 Crescent Centre Drive, Suite 600, Franklin, Tennessee 37067 United States of America
【Fターム(参考)】