説明

ナビゲーション脳刺激時に提示された対象を表示するために用いられる座標系の相互表示における誤差を補正するための方法及び機器

画像データ中にある対象の頭部を表示するのに用いられる座標系と、頭部の頭皮面と経頭蓋磁気刺激(TMS)誘導コイル装置のような追跡装置とに付いたトラッカの位置を表示するのに用いられる座標軸との相互表示における誤差は、追跡装置及び対象の頭部の表示が対象の頭部に関連付けて追跡装置の移動を追跡するナビゲーション脳刺激(NBS)システムのディスプレイ上に正確に示される。相互表示における誤差の補正は追跡されたTMSコイル装置及び頭部上のトラッカから更なる追跡情報を収集することなく行われ、TMSコイル装置を用いてNBSを妨害するのを防いでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年9月13日に出願され、本出願の法定代理人に付与され、ここに引用として取り込まれた、米国仮特許出願番号60/825,462の利益を主張する。
【0002】
本発明は一般的には経頭蓋磁気刺激に関し、特に経頭蓋磁気刺激誘導コイルの正確な表示をナビゲーション脳刺激時に対象の頭部に関連づけて表示することに関する。
【背景技術】
【0003】
経頭蓋磁気刺激(TMS)は、時変磁場を生成して、脳内の電場を誘起するのみ誘導コイルを用いる。十分に強い電場に曝された脳部位にある神経細胞は、活性化あるいは刺激される。ナビゲーション脳刺激(NBS)においては、TMS誘導コイル装置によって脳内に誘起された電場は、対象の脳の解剖学的表示のグラフィカルディスプレイ上にオーバレイとして示されている。ディスプレイを見ることによって、脳で誘発される電場を可視化でき、従って、実時間で、TMSコイル装置を脳に関連づけて相互配置し、脳の標的部位を刺激できる。
【0004】
以下のデータ取得及び処理ステップは一般的には、NBSの一部として行われている。
【0005】
1.対象の頭皮あるいは頭部表面の分割データ表示は、対象の頭部の解剖学的構成のデータ表示から生成されている。一般的には、従来のMRI技術を用いてこれまでに得られ、画像が少なくとも脳と、頭蓋骨の上方部分と、付属組織及び軟骨組織対象の頭部を含む、2次元(2D)磁気共鳴画像法(MRI)の画像を表示するデータは、公知のソフトウェアアルゴリズムを用いて処理され、頭部の容量3次元(3D)表示を生成している。容量の3D表示は次いで、既知のソフトウェアアルゴリズムを更に用いて、更に処理されて、対象の頭部表面の分割データ表示を生成している。
【0006】
2.追跡要素が実装されて、対象の頭部に対するTMSコイル装置の位置及び方向が追跡できると規定している。当該技術分野における従来法と同様、容易に同定可能な反射マーカ(トラッカ)が対象の頭部の上の、更にはTMSコイル装置の上の選択された点上に配置され、3Dにおける座標の自動記録を可能にしている。頭部の上の少なくとも3のこのような点及びTMSコイル装置の上の少なくとも3のこのような点の座標が記録された場合、総ての6のこれらの対象の自由度に対する座標値が決定される。例えば、TMSコイル装置上のトラッカは、2007年4月30日に出願され、本出願の代理人に付与され、ここに引用として取り込まれる、「TRANSCRANIAL MAGNETIC STIMULATION INDUCTION COIL DEVICE WITH ATTACHMENT PORTION FOR RECEIVING TRACKING DEVICE」に対する米国特許出願番号11/847,511号に記載されるように、TMSコイル装置に付いた追跡装置の一部となる。トラッカの座標は、当該技術分野における従来法のように、特殊用途のカメラを用いて記録される。
【0007】
3.相互表示手順が行われ、追跡較正中のTMSコイル装置及び対象の頭部の上にあるトラッカの位置を表示するデータを、対象の頭部の3D表示が生成される画像データと相関付けている。一般的には、追跡較正において、各々の耳部及び鼻部上の点のような反射トラッカが配置される、頭部の上のいくつかの標識点が、頭部の2DのMRI画像、あるいは、可能な場合は、容積3D画像の上に正確に示される。同一の点が、反射トレーサを含む、ディジタルペントラッカの使用によって対象の頭部の上に更に正確に示される。各々の点がペントラッカによって正確に示される場合、TMSコイル装置及び対象の頭部上のトラッカの位置を示す追跡データが次いで収集される。このような一点ごとの対応あるいは一点ごとの合致を行った後で、較正中に、MRI画像データで頭部を表示するように用いられた座標系を、トラッカの相対位置を表示するように用いられる座標系と連携させる変換が算出される。変換の質は例えば、少なくとも最小二乗法の意味で、NBSの精度を順々に改善する更なる一点ごとの合致を行うことによって拡張されうる。
【0008】
NBSディスプレイ上に、以下のもの:頭皮のグラフィック表示に関連付けた、TMSコイル装置のグラフィック表示、特に好ましくはコイル巻線が含まれているTMSコイルのケーシングのみと、選択された深部での脳部位のグラフィック表示と、脳部位の表示上のオーバレイとしてTMSコイル装置によって脳部位に誘起される電場と、が一般的に示される。ディスプレイはこのように、頭部及び脳に関連づけた、ケーシングひいてはTMSコイル装置のコイル巻線と、ユーザが対象の頭部に関連付けてTMSコイル装置をナビゲートする場合に、脳に誘起される電場との位置及び方向の可視的表示をユーザに提供する。相互表示(上の3.)で選出される変換の質は、ディスプレイ上に示される表示の精度、ひいてはナビゲーション精度に影響を与える。当該技術分野で公知のように、コイル巻線によって誘起される電場は、TMSコイル装置のケーシング内部の銅巻線の形状及び位置のモデルに基づいて、ここに引用によって取り込まれている「Ravazzani,P.,et al,“Magnetic stimulation of the nervous system:induced electric field in unbounded,semi−infinite,spherical,and cylindrical media”,Annals of Biomedical Engineering 24:606−616,1996」に述べられているような、頭部形状あるいは頭部伝導性分布モデル、例えば球状モデルを用いて、算出される。電場は電場強度を呈示するために色を用いて脳部位の表示上に一般的に示され、TMSコイル装置をナビゲートして脳部位上の標的部位を刺激する際にユーザを支援する。大部分において、脳部位の表示の精度は、ディスプレイ上に示された脳部位で誘起された電場の表示の精度を決定し、ひいてはユーザがTMSコイル装置をナビゲートして脳の標的部位を刺激できる精度に大きく影響する。
【0009】
しかしながら、先行技術の相互表示技術は誤差を起こしやすく、NBSディスプレイ上のTMSコイル装置及び生じた電場の位置を提示に誤差を生じさせ、ひいてはNBS中に誤差を生じさせる。相互表示時の誤差の最も重要な発生源は次の通りである。
【0010】
1.物理的な頭部形状とMRI画像の不正確な合致。MRI画像データの収集が一般的に検出された頭部形状に影響を与える幾何学的な歪みを含んでいる。例えば幾何学的歪みは完全な球体をディスプレイ上で楕円形として出現させる。更に、MRI画像データのデータ分割は、頭皮面近傍の点を表示するグレーレベルボクセル値におけるMRI画像データの誤差のために、頭皮を正確には同定できない。現在取得可能なMRI画像データは1mm×1mm×1mmボクセルを用いて、頭部容積の3D表示生成を規定するのに十分な解像度を一般的には有するのみであるため、取得可能なボクセルサイズは頭部のみを示すMRI画像データの精度を制限する。更に、MRIデータは幾何学的な歪みの発生源となる他の誤差を含んでいる。
【0011】
2.頭部にあるトラッカがNBS手順中に頭部に対して移動する。頭部にあるトラッカが頭部に対して移動する場合、相互表示は無効にされ、繰り返されなければならない。頭部にあるトラッカの移動は、患者がTMSコイル装置を用いてNBS手順を受ける場合には検出できない。通常のNBSの患者の手順について、トラッカを患者の頭部に固定することは不可能あるいは実用的でなく、トラッカを頭部にねじ込むことが要求される。
【0012】
3.一点ごとの合致が不可能である。MRI画像データは解像度を制限する場合、例えば、例えばボクセルが1×1×1mmとなる頭部の容積表示を規定する場合に、頭部にあり、かつ、更にMRI画像データから生成された容積測定の頭部表示にある同一の点を正確に示すことは不可能ではないにしてもかなり困難である。追跡較正中の標識点の選択時の誤差は、NBS中のナビゲーション誤差を導く。
【0013】
対象の頭部とのMRI画像データの不正確な合致、及び、頭部に関連付けた、TMSコイル装置の不正確なナビゲーションはNBSディスプレイ上で容易に現れる。例えばNBS中に、TMSコイル装置のユーザがTMSコイル装置を標準配置して、ケーシングが刺激中に頭皮に接触するようにする。ユーザがTMSコイル装置を頭皮上に配置する場合、頭皮に接触するTMSコイル装置のケーシング外表面があれば、TMSコイル装置が頭皮に接触するようにすべきであり、TMSコイル装置及び頭部にあるトラッカの位置を表示するのに用いられる座標系は、頭部を表示するMRI画像データ用の座標系と共に正確に相互表示される。しかしながら、相互表示時の上述の誤差によって、一般的にはTMSコイル装置が、頭皮上あるいは頭部内側のいずれかで、NBSディスプレイ上に表示されるが、後者は不可能である。
【0014】
他の変換が行われ、ひいては、更新された相互表示に基づいて頭部に関連づけたTMSコイル装置を示すことを規定するように、NBS手順を停止し、トラッカからの追跡情報の収集を他の追跡較正の一部分として反復することは所望されない。
【0015】
従って、MRI画像データにおいて頭部を表示するのに用いられる座標系と、頭部及びTMSコイル装置にあるトラッカ位置を表示するのに用いられる座標系との相互表示における誤差を、追跡較正に続いて更なる追跡データを収集することなく補正するためのニーズが存在している。
【発明の概要】
【0016】
本発明によると、NBSシステムのコントローラが相互表示を実行し、画像データ中の対象の頭部を表示するのに用いられる座標系と、対象の頭部表面及びTMSコイル装置のような追跡装置に付けられたトラッカの位置を表示するのに用いられる座標系との相関を補正し、追跡装置と対象の頭皮との間の実際の距離を表示する情報を用いた、相互表示内の誤差を補正している。
【0017】
一実施例においては、NBSシステムディスプレイを用いる際に、ユーザが(i)追跡されたTMSコイル装置を動作させて、脳の標的部位を刺激する(オンラインモード)、又は、(ii)TMSコイル装置を頭部に関連づけて脳を刺激することなく移動させる(オフラインモード)間に、距離情報がコントローラに提供される。コントローラは、距離情報に基づいて、オンラインモード又はオフラインモード時の相互表示データ内の誤差を補正する。
【0018】
別の実施例においては、TMSコイル装置やポインタペンのような追跡装置のユーザは、NBSシステムのディスプレイ上の頭皮と関連付けた、追跡装置の位置の観察に基づいて、頭皮上の追跡装置の実際の位置と関連付けてコントローラに距離情報を提供している。
【0019】
更に別の実施例においては、追跡装置が、TMSコイル装置と頭皮との間の距離を決定し、その距離をNBSシステムのコントローラに提供する、ケーシング上の近接センサを含むTMSコイル装置である。
【0020】
更なる実施例においては、追跡装置が頭部内部に部分的にでさえ存在しないという事実に基づき、相互表示データ内の誤差を補正し、距離情報は実際の距離測定を含まない。
【0021】
別の実施例においては、コントローラは追跡装置のユーザを指示して、頭皮と関連づけて追跡装置を維持し、零となる追跡装置と頭皮との間の距離に基づいて相互表示を補正している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の別の目的及び利点は、この好ましい実施例の以下の詳細な説明から明白であり、この記載は、同様の番号が同様の要素を示している添付の図と併用して配慮されるべきである。
【0023】
【図1】図1は、本発明によって相互表示データ内の誤差を補正するための、例示的なナビゲーション脳刺激システムの機能的ブロック図である。
【図2】図2は、相互表示データ内の誤差に基づいて、対象の頭皮上に不正確に配置されたTMSコイル装置を示す、例示的なNBSディスプレイの断面図である。
【図3】図3は、本発明によって相互表示データ内の誤差の補正後の、NBSディスプレイ上の図2の対象の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
NBSにおいては、ディスプレイが一般的に、対象の頭皮と関連付けてTMSコイル装置の位置を示す一方、ユーザはTMSコイル装置を移動させて、脳の標的部位を刺激している。例えば、ここに引用として取り込まれている米国特許第6,287,681号を参照。このようなディスプレイを生成するために、MRI画像データのような、画像データ中の対象の頭部を表示するのに用いられる座標系が、TMSコイル装置及び頭部にあるトラッカの位置を表示するのに用いられる座標系と、異なる座標系を当該技術分野で公知かつ通常である、1つに相互表示された座標系に変換するためのアルゴリズムを用いて相関付けられている。
【0025】
図1は、ユーザはTMSコイル装置を移動させて、対象の脳の標的部位を刺激し、追跡装置にあるトラッカからの更なる追跡情報の収集を要求して、更なる追跡較正が実行できるようにすることなく、例えば、NBSシステム10のTMSコイル装置20のような、その移動がNBSシステム10によって追跡される装置と頭皮との間の距離を表示する情報を用いて、本発明により相互表示データの誤差を補正する間に、例えば、TMSコイル装置、頭部、及び頭部の頭皮のような、NBSディスプレイ上に示された物体の表示を生成するのに用いられる座標系を補正する例示的なNBSシステム10を示している。図1によると、システム10は入力装置14と、ディスプレイ16と、追跡カメラシステム18と接続されたNBSコントローラ12を含んでいる。更に、TMSコイル装置20は光学式近接センサ22を含んでいる。更に、システム10はTMSコイル装置20と対象の頭部30の所定の位置に配置されたトラッカ24を含んでいる。
【0026】
入力装置14はデータがコントローラ12に提供できる、キーボード、マウスあるいは音声認識装置のような従来のデータ入力装置である。
【0027】
ディスプレイ16はコントローラ12から提供される提示データからグラフィカルな提示を受け取り、次いで生成する、CRTモニタ、LCDあるいはプラズマ画面のような従来のグラフィカルディスプレイ装置である。
【0028】
追跡カメラシステム18はIRエネルギ信号を送信し、反射トラッカ24による送信IR信号の反射を検出する赤外線送受信装置を含む従来の追跡システムであり、反射トラッカ24は頭部30及びTMSコイル装置20、更には従来の従来のディジタルペントラッカ(図示せず)上に配置される。頭部30上で選択された点が、追跡較正中にディジタルペンを用いて正確に示された際のIR送受信機で検出された反射を表示するデータ、及び、TMSコイル装置20のケーシング21の形状や頭皮32の形状を表示するデータに基づいて、システム18のプロセッサは、当該技術分野の従来技術を用いて、頭部30にあるトラッカ24と関連付けてTMSコイル装置20にあるトラッカ24の位置を決定し、所定の座標系を用いて所定位置を表示する情報を保存する。代替的に、コントローラ12は反射データを処理してトラッカ24の位置を決定し、所定の座標系を用いて、追跡較正中にTMSコイル装置20及び頭部30にあるトラッカ24の位置を表示している。更に、追跡システム18はNBS動作中に、所定の座標系を用いてTMSコイル装置20及び頭部30の位置を示す追跡データを連続生成し、コントローラ12に提供している。
【0029】
TMSコイル装置20はコイル巻線(図示せず)を含むケーシング21を具える従来の誘導コイル巻線装置である。ケーシング21は頭皮32上にあるいは隣接して配置された底部外表面26を有している。
【0030】
コントローラ12はメモリ(図示せず)に接続される従来のプロセッサであり、従来の無線データ通信装置13と従来の音声発生装置15を含んでいる。プロセッサはメモリ内にエンコードされたソフトウェアアルゴリズムを実行して、無線装置13、可聴音発生装置15,ディスプレイ16、追跡カメラシステム18及び入力装置14とのデータ交換を制御している。更にコントローラ12は従来の処理を実行して、ディスプレイ16での提示用の、頭部30、頭部30の頭皮表面32、及びTMSコイル装置20のグラフィック表示を生成し、頭部30及び頭皮32に関連付けてTMSコイル装置20の位置を同定し、ディスプレイ16上で互いを関連付けて、頭部30及びTMSコイル装置20の表示の提示を規定している。更に、コントローラ12は追跡システム18によって提供される追跡データを用いた追跡較正と、相互表示とを選択的に行って、MRI画像データ中の頭部と、追跡データに基づく頭部に関連付けたTMS装置20の位置とを表示するように用いられる座標系を相関づけている。例えば、相互表示技術の記載については、ここに引用により取り込まれる「Electroencephalography and Clinical Neurophysiology Supplement vol.51(1999) and Ravazzani P.et al.,“Magnetic stimulation of the nervous system:induced electric field in unbounded,semi−infinite,spherical,and cylindrical media”,Annals of Biomedical Engineering 24:606−616(1996)」参照。
【0031】
本発明によると、頭部の容積画像が生成できるMRI画像データ中の頭部を表示するのに用いられる座標系と共に、追跡較正中に正確に示されたトラッカ24の位置を表示するのに用いられる座標系の相互表示中あるいはそれに続いて、コントローラ12が、TMSコイル装置20のケーシング22の外表面26と、頭皮表面32との間の距離を表示する情報を用いて、相互表示データ中の誤差を補正している。距離情報は入力装置14を介してユーザによって、あるいは近接センサ22によって自動的に、コントローラ12に提供される。
【0032】
一実施例においては、NBSシステム12を用いて、TMSコイル装置20でNBSを実行するユーザは、頭部30に対してTMSコイル装置20を移動させ、図2に示されようにして、ディスプレイ16を見て、ディスプレイ16上に示されたTMSコイル装置20の位置がユーザが直接的に観察するのと同一であるかどうかを決定する。ユーザがTMSコイル装置20を移動させて、外表面26を頭皮32に接触させる場合、TMSコイル装置20の頭皮32に対する実際の正確な位置を正確に知り、前者と後者との間の距離は零になる。このように、TMSコイル装置20が頭皮32の上方に、又は、TMSコイル装置20がユーザによって頭皮32に接触するように実際に配置された際に頭の内部に、ディスプレイ16上で示される場合、相互表示データは誤差を含んでいる。誤差を補正するために、入力装置14でユーザは、TMSコイル装置20と頭皮32との間の距離を表示するコントローラ12に情報を提供している。外表面26上の一点が物理的に頭皮32に接触するように配置されたTMSコイル装置20がユーザによって維持される場合に、実際の距離が零となる。
【0033】
一実施例においては、ユーザが頭皮32に接触するTMSコイル装置20の外表面26上にある一点を維持する場合、かつ、NBSディスプレイ16が頭皮32の上方あるいは下方にTMSコイル装置20を示している場合に、装置14で誤差通知として「1」を入力する。コントローラ12が「1」というデータ信号を受信する場合、コントローラが処理を実行して、TMS装置20が頭部30と関連付けて現在配置される一点に対する相互表示データを補正している。このような点に対する相互表示データの補正に続き、ディスプレイ16は図3に示されるように、頭皮32に現在直接的に配置されているTMS装置20を示している。
【0034】
例示的な実施例においては、ユーザが誤差通知をコントローラ12へ送信する場合、コントローラ12が、トラッカシステム18から提供され、ユーザによる誤差通知送信と同時あるいは実質的に同時に取得される追跡データに基づいて、頭皮32と関連付けてTMSコイル装置20の位置を決定している。コントローラ12は次いで処理を実行して、頭皮32の上の正確な相互表示データにおける一点と、誤差通知送信と同時に取得される追跡データによって表示されるTMSコイル装置20の位置とを合致させ、このような合致に基づく一点に対する表示データを更新し、次いでディスプレイ16を更新して、更新された相互表示データに基づき直接的に頭皮32上にTMSコイル装置20の表示を示している。
【0035】
ユーザがTMSを実行し続けるために、更なる補正された相互表示データ点が算出されて、相互表示の全体的な精度、ひいてはディスプレイ16上に頭部30と関連付けて表示される精度を増加させる。頭皮32及び脳に関連付けた、TMSコイル装置20の補正された相互表示データ及び位置座標及び方向情報が、NBSシステム10を用いて実行される将来のTMS手順のために利用できるように、相互表示データはコントローラ12のメモリ内に患者ファイル中に好ましくは保存される。
【0036】
別の実施例においては、距離情報及び距離情報が生成される場合のTMSコイル装置20の位置は、コントローラ12のメモリ内に保存され、ユーザがTMSコイル装置20を操作せずに、脳を刺激する場合(オフラインモード)に、相互表示データを補正するのにアクセス可能である。
【0037】
都合の良いことに、ユーザがTMSコイル装置20を用いてNBSを行いつづける間(オンラインモード)、NBSシステム10が相互表示データ中の誤差を補正している。ユーザはNBSシステム10の使用を開始して、TMSコイル装置20を用いてTMSを行うか、更なる別の追跡較正を行う前に、相互表示における誤差を補正する必要がなく、相互表示における誤差がオンラインモード中に検出される場合に、更なる追跡データの収集と、NBSシステム10を用いて実行される進行中のTMS手順を停止することを要求する。コントローラ12が誤差を通知する、言い換えると、距離情報がコントローラ12に提供される場合、NBSシステム10はTMSコイル装置20が現在配置されている一点での相互表示データ中の誤差を補正し、その後補正された相互表示データを用いてディスプレイ16上のTMSコイル装置20を正確に提示する。
【0038】
代替的な方法においては、トラッカを含むディジタイザペンがTMSコイル装置20に対して上述と同様に、頭皮32上に一点から一点へと移動する。コントローラ12はカメラシステム18によって提供されるペンの位置を表示する情報を用いて、ペンが頭皮32の上方あるいは下方に、ディスプレイ16上に示される場合に、一点での相互表示データ中の誤差を補正している。TMSコイル装置20について上述と同様の追跡較正が、ペンについて初期実行されうることは理解すべきである。
【0039】
別の実施例においては、NBSシステム10がオフラインモードである場合、コントローラ12が相互表示中の誤差を補正している。TMSコイル装置20の外表面26、あるいはディジタイザペンの末端は、頭皮と物理的に接触するように配置される。コントローラ12は次いで、同時にシステム18で収集される、TMSコイル装置20あるいはペンの位置を表示する追跡データを処理して、相互表示データを補正している。コントローラ12は上述のように、例えば装置14でユーザ12によって提供されるような距離情報を用いて相互表示データを調節して、TMSコイル装置20の外表面26の任意の点、あるいはペンの末端が頭皮32と接触するまで、ディスプレイ16上に示されるようなTMSコイル装置20あるいはペンを、頭部30又は脳のほぼ中央の方向に、あるいは、TMSコイル装置16の外表面26の最近傍の頭皮32の一点方向に移動させる。TMSコイル装置20あるいはペンが頭皮32の内部にあるようにディスプレイ16で示される場合、ディスプレイ36に示されるようなTMSコイル装置20の外表面26上の総ての点あるいはペンの末端が頭部30の外部となるまで、TMSコイル装置20あるいはペンは逆方向に移動する。更なる実施例においては、コントローラ12が補正された相互表示データに基づいて、脳に誘起される電場を算出し、誘起された電場を表示する記憶データ内に保存し、後の分析を可能にしている。
【0040】
更なる実施例においては、TMSコイル装置及び頭部の位置を表示するのに用いられる座標系と、MRI画像データ中の頭部を表示するのに用いられる座標系との間で行われる相互表示手順は、MRI画像データから生成された頭皮上の表示での同一点に対応する、対象の頭皮32上の複数の更なる点に配置されたディジタイザペンのトラッカから収集された位置情報の使用を含んでいる。コントローラ12が頭部のMRI画像データを表示する座標系を変換及び回転することによって、更なる位置情報を有する相互表示を実行して、MRI画像データから決定されるような、頭皮面32に対する更なる点の距離が、最小二乗法で最小化される。例えば、ここに引用によって取り込まれた、正確な相互表示について述べた「K.S.Arun et al.,“Least−squares fitting of two 3−d point sets,”IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence,9(5):698−700(1987)」参照。
【0041】
別の実施例においては、更に図1によると、TMSコイル装置20の近接センサ22はTMSコイル装置20のケーシング21の底面26が頭皮32と接触しているか否かを検出している。例えば、近接センサ22はセンサ22から頭皮32まで、あるいは頭部30に付けられた反射マーカ24までの距離を測定する距離検出器となる。無線データ通信性能を有するセンサ22が、距離測定値を表示する情報をコントローラ12の無線装置13に無線通信している。センサ22によって提供される距離情報が、距離は零の値以外であるという場合、コントローラ12が距離情報を用いて、頭皮32に関連付けてTMSコイル装置20の現在位置に対する相互表示データを補正する。
【0042】
一実施例においては、ユーザはNBS中に頭皮32の上方、例えば頭皮上方約5mmでTMSコイル装置20を維持している。センサ22が距離情報をコントローラ12に提供し、従って、コントローラ12は相互表示データを補正する場合、この距離を計上する。例えば、相互表示が互いに最も近接した外表面26及び頭皮面32上の各点間を延在するラインに沿った方向に、頭皮面32から5mmの距離でTMSコイル装置20の外表面26をマッピングしていると認知するまで、コントローラ12はMRI画像データ及び物理的な頭部の座標から取得される頭部表示を回転及び変換する処理を実行する。
【0043】
別の実施例においては、コントローラ12はディスプレイ16上のTMSコイル装置20及び頭皮32を表示するのに用いられる提示データをモニタし、可聴音発生装置15で警報信号を生成して、TMSコイル装置20が頭部30内側に配置されるようにディスプレイ16に示される場合にユーザに警報する。
【0044】
都合の良いことに、本発明による、TMSコイル装置、頭皮面あるいはその他の対象と連携した相互表示データの補正は、頭部の形状的及び絶対的な寸法についての高精度の情報がNBSのために利用可能であることを有利に規定している。例えば、頭部の形状的及び絶対的な寸法についての正確な情報を用いて、スケーリングの不正確さ及びMRI及びfMRI画像データから得られる頭部の3Dの解剖学的あるいは機能的な画像の他の空間歪みを補正できる。例えば、頭部の2次元(2D)MRI画像データから生成される頭部の3D表示の不正確さは伸縮又は圧縮によって、あるいは各々がここに引用によって取り込まれる米国特許出願番号2006/052687及び米国特許第6,594,516号に記載のような他の変換によって補正できる。NBSを用いてMRI画像データから生成される頭部表示の歪み補正は、例えば手術室、外科手術の計画等に応用できる。
【0045】
本発明の好ましい実施例が記載され例示されてきたが、本発明の原理から離れることなく様々な変形が為されうることは当該技術分野の当業者にとって明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部の頭皮面の表示と関連付けて追跡装置の表示を配置する際に、誤差を補正するための方法であって、前記追跡装置及び前記頭皮面の表示が、経頭蓋磁気刺激(TMS)誘導コイル装置を用いたナビゲーション脳刺激(NBS)を行うことと関連付けて生成され、前記方法が、
前記追跡装置と前記頭皮面との間の実際の距離を表示する情報を提供するステップと;
前記距離情報を用いて相互表示データを補正するステップと;
を具え、前記相互表示データが、画像データ中の対象の頭部を表示するのに用いられる座標系と、前記対象の頭皮面及び前記追跡装置に付けられた反射トラッカの位置を表示するのに用いられる座標系との相関から生成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、画像データが磁気共鳴画像データであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記距離情報が自動的に決定されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記追跡装置がTMSコイル装置であり、当該TMSコイル装置上の近接センサが前記距離情報を生成することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記近接センサが前記TMSコイル装置上の一点と、前記頭皮面の一点との間の距離を測定することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記距離情報がユーザによって提供されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法が、前記補正された相互表示データを用いて、前記追跡装置の表示を前記頭皮面の表示に関連付けてディスプレイ上に表示するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記追跡装置がTMSコイル装置であり、ユーザが前記TMSコイル装置を動作させて、前記対象の脳の標的部位を刺激する間に、前記距離情報が生成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記追跡装置がTMSコイル装置であり、ユーザが前記TMSコイル装置を、前記頭部に関連付けて脳を刺激することなく移動させる間に、前記距離情報が生成されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記追跡装置がTMSコイル装置であり、ユーザが前記TMSコイル装置を動作させて、前記対象の脳の標的部位を刺激する間に、前記相互表示データの補正ステップが行われることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記追跡装置がTMSコイル装置であり、ユーザが前記TMSコイル装置を、前記頭部に関連付けて脳を刺激することなく移動させる間に、前記相互表示データの補正ステップが行われることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法が、
前記追跡装置のユーザが、前記追跡装置の表示位置を前記頭皮面の表示と関連付けてNBSディスプレイ上で観察するステップと;
前記観察された位置が、前記頭皮面の表示と関連付けた前記追跡装置の実際の位置と異なる場合に、前記ユーザが前記距離情報を提供するステップと;
を更に具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記追跡装置の実際の位置が、前記頭皮面と接触していることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、ディジタイザペンが前記頭皮面に沿って所定の点に配置される場合、前記相互表示データが前記ペンに付けられた反射トラッカの位置を表示する追跡情報から生成されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、前記相互表示データが複数の座標系相関から生成され、前記距離情報を用いた相互表示データの補正ステップが、前記座標系相関のうちの少なくとも1つを補正することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、前記追跡装置がTMSコイル装置であり、前記方法は、
前記TMSコイル装置の表示が前記頭部内での前記TMSコイル装置の表示の一点を配置する場合に、前記頭部の頭皮面の表示と関連付けて音響警報を生成するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法が、前記補正された相互表示データに基づき、前記頭部を表示する画像データを補正するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法が、前記画像データから生成された前記頭部の表示を、前記補正された相互表示データによって補正されるように表示するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項19】
頭部の頭皮面の表示と関連付けて追跡装置の表示を配置する際に、誤差を補正するための機器であって、前記追跡装置及び前記頭皮面の表示は、経頭蓋磁気刺激(TMS)誘導コイル装置を用いたナビゲーション脳刺激(NBS)を行うことと関連付けて生成され、前記機器がNBS処理を行うためのプロセッサを具え、前記NBS処理が、
前記追跡装置と前記頭皮面との間の実際の距離を表示する情報を前記プロセッサで受け取るステップと;
前記距離情報を用いて相互表示データを補正するステップと;
を具え、前記相互表示データが、画像データ中の対象の頭部を表示するのに用いられる座標系と、前記対象の頭皮面及び前記追跡装置に付けられた反射トラッカの位置を表示するのに用いられる座標系との相関から生成されることを特徴とする機器。
【請求項20】
請求項19に記載の機器において、画像データが磁気共鳴画像データであることを特徴とする機器。
【請求項21】
請求項19に記載の機器が、前記プロセッサに接続された、前記距離情報をプロセッサに提供するための、入力装置及び近接センサのうちの少なくとも1つを具えることを特徴とする機器。
【請求項22】
請求項21に記載の機器において、前記近接センサが前記距離情報を自動的に決定することを特徴とする機器。
【請求項23】
請求項21に記載の機器において、前記追跡装置がTMSコイル装置であり、前記近接センサが前記TMSコイル装置上にあり、当該TMSコイル装置上の一点と、前記頭皮面の一点との間の距離を測定することを特徴とする機器。
【請求項24】
請求項21に記載の機器において、前記入力機器が、前記距離情報を前記プロセッサに提供するようにユーザによる操作が可能であることを特徴とする機器。
【請求項25】
請求項19に記載の機器が、プロセッサに接続されるディスプレイを更に具え、当該ディスプレイが前記追跡装置の表示を、前記補正された相互表示データに基づき、前記頭皮面の表示に関連付けて表示するためにあることを特徴とする機器。
【請求項26】
請求項19に記載の機器において、前記追跡装置がTMSコイル装置であり、ユーザが前記TMSコイル装置を動作させて、前記対象の脳の標的部位を刺激する間に、前記距離情報が前記プロセッサで受け取られることを特徴とする機器。
【請求項27】
請求項19に記載の機器において、前記追跡装置がTMSコイル装置であり、ユーザが前記TMSコイル装置を、前記頭部に関連付けて脳を刺激することなく移動させる間に、前記距離情報が前記プロセッサで受け取られることを特徴とする機器。
【請求項28】
請求項19に記載の機器において、前記追跡装置がTMSコイル装置であり、ユーザが前記TMSコイル装置を動作させて、前記対象の脳の標的部位を刺激する間に、前記相互表示データの補正ステップが行われることを特徴とする機器。
【請求項29】
請求項19に記載の機器において、前記追跡装置がTMSコイル装置であり、ユーザが前記TMSコイル装置を、前記頭部に関連付けて脳を刺激することなく移動させる間に、前記相互表示データの補正ステップが行われることを特徴とする機器。
【請求項30】
請求項19に記載の機器が、前記プロセッサに接続される入力デバイスとディスプレイを更に具え、前記プロセッサが前記入力装置のデータ入力に基づいて、前記入力装置からの前記距離情報を受け取り、前記頭皮面の表示に関連付けた前記追跡装置の表示位置は、前記NBSディスプレイ上に示され、前記頭皮面に関連づけた前記追跡装置の表示位置が、前記頭皮面に関連づけた前記追跡装置の実際の位置と異なることをユーザが前記ディスプレイ上で観察する場合に、前記入力装置での前記ユーザによる前記データ入力が行われることを特徴とする機器。
【請求項31】
請求項19に記載の機器において、前記追跡装置の実際の位置が、前記頭皮面と接触していることを特徴とする機器。
【請求項32】
請求項19に記載の機器が、反射トラッカを含むディジタイザペンを更に具え、当該ペンが前記頭皮面に沿って所定の点に配置される場合、前記相互表示データが前記ペンの反射トラッカの位置を表示する追跡情報から生成されることを特徴とする機器。
【請求項33】
請求項19に記載の機器において、前記相互表示データが複数の座標系相関から生成され、前記距離情報を用いた相互表示データの補正ステップが、前記座標系相関のうちの少なくとも1つを補正することを特徴とする機器。
【請求項34】
請求項19に記載の機器において、前記追跡装置がTMSコイル装置であり、前記機器が前記プロセッサに接続された可聴音発生装置を更に具え、前記TMSコイル装置の表示の一点が前記頭部内に配置される場合に、前記可聴音発生装置が音響警報を前記頭部の頭皮面の表示と関連付けて生成するステップを更に具えることを特徴とする機器。
【請求項35】
請求項19に記載の機器が、前記プロセッサに接続された、前記追跡装置及び前記頭部の表示を提示するためのディスプレイを更に具え、前記プロセッサが前記補正された相互表示データに基づき、前記頭部を表示する前記画像データを補正し、前記頭部の補正された画像データ表示の提示をディスプレイ上に生じさせることを特徴とする機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−503439(P2010−503439A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527817(P2009−527817)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059587
【国際公開番号】WO2008/031847
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(509044866)ネクスティム リミテッド (2)
【Fターム(参考)】