説明

ニコチン低減剤、及びニコチンの低減方法

本発明は、タバコの主流煙中に含まれるニコチン量を低減するために用いられるニコチン低減剤及びニコチン低減用喫煙具に関する。また本発明は、上記ニコチン低減剤またはニコチン低減用喫煙具を用いることにより、タバコの主流煙からニコチン量を低減する方法に関する。当該ニコチン低減剤は、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類を含有し、粘度が500〜3000mPa・sの水性液状組成物から構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タバコの主流煙中に含まれるニコチン量を低減するために用いられるニコチン低減剤及びニコチン低減用喫煙具に関する。また本発明は、上記ニコチン低減剤またはニコチン低減用喫煙具を用いることにより、タバコの主流煙からニコチン量を低減する方法、並びにタール量を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タバコの煙には、約4000種類の化学物質が含まれているといわれており、その中には有害物質や発ガン性物質があることも知られている。中でもタバコの煙に含まれている有害物質の代表例として、ニコチン、タール、及び一酸化炭素を挙げることができる。そこで、従来より、タバコの煙の中からこれらの有害物質を排除するための方法が様々試みられている。
【0003】
かかる方法として、例えば、水を喫煙パイプのフィルター部に含浸させてタバコの煙を水と接触させることによって、吸入するタバコの煙(主流煙)に含まれるニコチン量を低減させる方法が提案されている(特許文献1〜3)。この方法は、タバコの煙に含まれるニコチンが水に溶けやすい性質を有していることに基づいている。しかしながら、このように喫煙パイプのフィルター部に水を含ませる構造を有するものは、ニコチンの除去という効果は見込めるものの、喫煙時に有害なニコチンやタール分を含む水が煙と共に口中に入り、体内に流入するおそれがある。
【0004】
これを予防または解消する方法として、タバコの吸口フィルターにシクロデキストリンや吸水性ポリマーを配合する方法(特許文献4)、タバコの吸口部に装着して用いられる喫煙パイプのフィルター部の成分として多孔性重合体を用いる方法(特許文献5または6)等が提案されている。しかしながら、前者のタバコの吸口フィルターに吸水性ポリマーを配合する方法は、吸口フィルターが高湿度条件下で多量に吸水することから、喫煙時の吸気抵抗が増大してしまい、喫煙自体が難しくなるという問題がある。
【0005】
さらに、粘液を含浸させたフィルターを内蔵した木製及びプラスチック製の禁煙パイプも知られているが(特許文献7)、この方法では喫煙時に付属品を取り付けるという煩わしさがある。また、タバコのフィルターや吸口面にゲル化物を薄く塗布し、これをそのまま又はパイプに差し込んで喫煙する脱ニコチン・タール剤も知られているが(特許文献8)、ゲル化物ではタバコのフィルターに浸潤せず、フィルター上に残ったゲル化物が口中に飛散し不快感を生じるとともに、吸引が困難になる。
【0006】
ところで、タバコの煙から有害物質、特にニコチンを排除する方法として考慮しなくてはならないのは、喫煙者のニコチン依存性である。喫煙する人は、通常ニコチンに対して心理的または身体的に依存性をもっているため、急激にニコチンの摂取量を低減することは喫煙者にとって必ずしも好ましいことではなく、その時々の体調や心理状態に応じてニコチン摂取量を低減していくことが望ましい。こうすることによって、段階的にニコチンに対する心理的・身体的依存度を低減ないしは緩和することができ、ひいては禁煙を達成することも可能となる。このため、単に画一的にニコチン量を低減するのではなく、喫煙者自らが自己の状況に応じてニコチン摂取量を調節することのできる方法が求められている。
【特許文献1】特開昭48−53871号公報
【特許文献2】特開昭50−130579号公報
【特許文献3】特開昭62−198378号公報
【特許文献4】特開昭51−32799号公報
【特許文献5】特開昭62−179376号公報
【特許文献6】特開昭47−30900号公報
【特許文献7】特開昭56−18583号公報
【特許文献8】特開昭61−177972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、タバコの主流煙中に含まれるニコチン量を低減するために用いられるニコチン低減剤及びニコチン低減用喫煙具を提供することである。また本発明の目的は、上記ニコチン低減剤またはニコチン低減用喫煙具を用いることにより、タバコの主流煙からニコチン量を低減する方法、並びにタール量を低減する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、タバコの主流煙に含まれるニコチンの量を低減するための方法を開発するために鋭意研究を行っていたところ、タマリンドシードガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム等の特定の多糖類を含有し、粘度を500〜3000mPa・sに調整した水性液状組成物が、タバコの主流煙からニコチンを吸着除去する能力に優れており、それをタバコや喫煙具のフィルター部に含ませても喫煙に殆ど影響しないことを見いだした。また、本発明者らは、これらの多糖類を用いることによって、また必要に応じてこれらの多糖類を糖類と組み合わせて用いることによって、気温の変化や長期保存による影響を受けにくく、季節を通じて安定した粘度及び性状を有する水性液状組成物を得ることができこと、そして、かかる水性液状組成物が上記ニコチン低減方法を実施する上で好適なニコチン低減剤となりえることを確認した。
【0009】
さらに本発明者らは、当該水性液状組成物の使用量(フィルターへの適用量)を増やすことによりタバコの主流煙から除去できるニコチンの量が増加することを確認した。このことは、喫煙により体内に吸入されるニコチン量を、当該水性液状組成物の使用量を調節することによって、喫煙者自らが簡単にコントロールできることを意味する。すなわち、上記水性液状組成物によれば、その使用量(フィルターへの適用量)を、喫煙者のニコチン依存度に応じて段階的に増やすことによって、体内に吸入されるニコチン量を段階的に低減でき、こうすることで禁煙を行う上で一番の問題となるニコチン依存症の発生を緩和して、最終的には禁煙を達成することも可能となる。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明は、下記の実施態様を含むものである;
項1. タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類を含有し、粘度が500〜3000mPa・sの水性液状組成物からなるニコチン低減剤。
項2. 多糖類が、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、及びペクチンよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1記載のニコチン低減剤。
項3. 多糖類が、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、及びキサンタンガムよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1記載のニコチン低減剤。
項4. さらに、糖類を含有するものである、項1記載のニコチン低減剤。
項5. 糖類が、トレハロース、水飴、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、及びデキストリンよりなる群から選択される少なくとも1種である、項4記載のニコチン低減剤。
項6. 糖類が、トレハロース及び水飴よりなる群から選択される少なくとも1種である、項4記載のニコチン低減剤。
項7. 喫煙具のフィルターに保持させて用いられる項1に記載するニコチン低減剤。
項8. 項1に記載する水性液状組成物からなるニコチン低減剤が容器に充填されてなる、容器入りニコチン低減剤。
【0010】
なお、ここで容器としては滴下式容器を好適に使用することができる。
項9. 項1に記載するニコチン低減剤を保持したフィルター部を有するニコチン低減用喫煙具。
項10. 上記ニコチン低減用喫煙具が、一端部に吸引口を、他端部にタバコ挿し口を備えるホルダー本体と、該ホルダー本体内に設けられたフィルターとを有し、前記フィルターに、項1記載のニコチン低減剤を保持してなることを特徴とする項9記載のニコチン低減用喫煙具。
項11. 一端部に吸引口を、他端部にタバコ挿し口を備えるホルダー本体と、該ホルダー本体内に設けられたフィルターとを有するタバコホルダーであって、更に、前記ホルダー本体の吸引口側に着脱可能なクリップ付きキャップと、前記ホルダー本体のタバコ挿し口側に着脱可能な蓋体とを有する、ニコチン低減用喫煙具。
項12. フィルターに、請求項1記載のニコチン低減剤を保持してなることを特徴とする項11記載のニコチン低減用喫煙具。
項13. 項1に記載するニコチン低減剤を含ませた喫煙具のフィルターに、タバコの主流煙を通過させる工程を有する、タバコの主流煙中のニコチン量を低減する方法。
【0011】
なお、本発明の水性液状組成物(ニコチン低減剤)は、後述する実験例4に示すように、使用することによって、タバコの主流煙に含まれるニコチンの量だけでなく、タールの量をも低減させることができる。このため、上記の「ニコチン低減剤」及び「ニコチン低減用喫煙具」は、それぞれ「タール低減剤」及び「タール低減用喫煙具」、または「ニコチン及びタール低減剤」及び「ニコチン及びタール低減用喫煙具」といい換えることもできる。また、タール低減という観点から、本発明は、下記の方法を提供するものでもある。
項14. タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類を含有し、粘度が500〜3000mPa・sの水性液状組成物(タール低減剤)を含ませた喫煙具のフィルターに、タバコの主流煙を通過させる工程を有する、タバコの主流煙中のタール量を低減する方法。
【0012】
さらに、前述するように、本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)を使用することによって、喫煙者のニコチン依存度を緩和することが可能となる。従って、本発明は、かかる観点から、下記の方法を提供するものでもある。
項15. 喫煙習慣のある被験者に対して、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類を含有し、粘度が500〜3000mPa・sの水性液状組成物(ニコチン低減剤)を含ませたフィルターを備えた喫煙具を用いて、喫煙させることからなる、当該被験者のニコチン依存度を緩和する方法。
【0013】
さらに本発明は、本発明の水性液状組成物について下記の用途を提供するものである。
項16. タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類を含有し、粘度が500〜3000mPa・sの水性液状組成物の、ニコチン低減剤またはタール低減剤の調製のための使用。
項17. 水性液状組成物がさらに糖類を含有するものである、項16記載の使用。
項18. 上記糖類が、トレハロース、水飴、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、及びデキストリンよりなる群から選択される少なくとも1種である、項17記載の使用。
項19. タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類を含有し、粘度が500〜3000mPa・sの水性液状組成物の、ニコチンまたはタールを低減するための使用。
項20. 水性液状組成物がさらに糖類を含有するものである、項19記載の使用。
項21. 上記糖類が、トレハロース、水飴、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、及びデキストリンよりなる群から選択される少なくとも1種である、項20記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0014】
[図1]本発明に係るニコチン低減用喫煙具の一態様であるシガレットホルダーの外観を示す平面図である。
[図2]本発明に係るニコチン低減用喫煙具の他の一態様であるシガレットホルダー11の外観を示す平面図である。
[図3]図2のシガレットホルダー11の側面図である。
[図4]図2のIII−III線断面図である。
[図5]図3のIV−IV線断面図である。
[図6]図2のシガレットホルダー11のクリップ付きキャップ66に蓋体77を装着した状態を示す側面図である。
[図7]図6の縦断面図である。
[図8]本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)のニコチン低減率及びタール低減率を示す図である(実験例4)。
【符号の説明】
【0015】
1.本発明のニコチン低減用喫煙具の一態様であるシガレットホルダー
2.フィルター(保持部)
3.ホルダー本体
4.吸口部
5.タバコ挿し口
6.クリップ付きキャップ
7.蓋体
8.クリップ付きキャップを吸口部に挿すための突起部
9.クリップ付きキャップの開口部
10.鍔部
11.本発明のニコチン低減用喫煙具の他の一態様であるシガレットホルダー
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(1)ニコチン低減剤
本発明のニコチン低減剤は、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類を含有する水性の液状組成物からなることを特徴とする。
【0017】
タマリンドシードガム(Tamarind seed gum)は、マメ科の多年生の双子葉植物であるタマリンド(Tamarindus grandifloraPERS.)の種子から得ることができる水溶性の多糖類である。ローカストビーンガムは、豆科イナゴマメ(Ceratonia siliqua)の種子から得ることができる多糖類である。キサンタンガム(Xantham gum)は、微生物キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)が生産する発酵多糖である。タラガム(Tara gum)は、マタタビ科タラ(Actinidia callosa LINDL.)の種子から得ることができる水溶性の多糖類である。グァーガム(Guar gum)は、マメ科グァー(Cyamopsis tetragonolobas TAUB.)から得ることができる多糖類またはグァーガムを酵素(ヘミセルラーゼなど)で分解したものである。ペクチン(Pectin)は、柑橘類やリンゴ等から水抽出することによって得ることができる、メチル化ポリガラクチュロン酸を主成分とする多糖類である。そのエステル化度(DE)(メトキシル基の含量)によって、HMペクチン(全ガラクチュロン酸のうち、メチル化ガラクチュロン酸の占める割合が50%以上のもの)とLMペクチン(全ガラクチュロン酸のうち、メチル化ガラクチュロン酸の占める割合が50%以下のもの)とに大きく分類することができる。本発明では、HMペクチン及びLMペクチンの別なく、いずれも使用することができる。
【0018】
プルラン(Pullulan)は、黒酵母(Aureobasidiumpullulans[DE Bary]ARN.)が産生する多糖類である。サイリウムシードガム(Psyllium seed gum)は、オオバコ科ブロンドサイリウム(Plantagoovata FORSK.)または同属植物の種子から得ることができる多糖類である。カラギナン(Carrageenan)は、スギノリ科アイリッシュモス(Chondruscrispus LYNGB.)、スギノリ(Gigartina tenella HARV.)、ミリン科キリンサイ(Eucheumamuricatum W.v.BOSS forma depaupaerata W.v.BOSSE)、イバラノリ科カギイバラノリ(Hypneajaponica TANAKA)等の葉から水で抽出することによって得ることができる多糖類である。これは、カッパ(κ)、イオタ(ι)及びラムダ(λ)の3つに分類することができる。本発明では、κ−カラギナン、ι−カラギナン及びλ−カラギナンの別なく、いずれも使用することができるが、λ−カラギナンをより好適に使用することができる。
【0019】
これらの多糖類、並びにメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースは何れも、食品用の増粘剤や増粘安定剤等といった食品添加物として広く市販され利用されている素材である。本発明においても、特に制限されることなく、従来より食品添加物として市販されているタマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンを広く利用することができる。
【0020】
中でも好ましい多糖類は、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、及びペクチンであり、特に好ましい多糖類は、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、及びキサンタンガムである。
【0021】
さらに本発明のニコチン低減剤は、500〜3000mPa・sの粘度を有する水性の液状組成物からなることを特徴とする。ここで粘度は、20℃、B型回転粘度計(粘度が2000mPa・s以下の場合はローターNo.3を使用、それを超える場合はローターNo.4を使用)を用いて60rpmで1分間、測定して得られる粘度をいう。好ましい粘度は500〜2500mPa・s、より好ましくは1000〜2500mPa・sである。
【0022】
水性液状組成物をかかる粘度に調整する方法は特に制限されないが、上記各多糖類を溶解する溶媒を選択したり、使用する多糖類の割合を調節したり、また他の成分を配合したりすること等によって行うことができる。
【0023】
タマリンドシードガム、キサンタンガムまたはローカストビーンガム等の上記多糖類の溶解に使用する溶媒は、これらの成分を溶解しえる溶媒であれば特に制限されない。好ましくは、安全性と利便性の点から水である。なお、本発明の効果を損なわない範囲で、水と、エタノール、プロピレングリコールまたはグリセリン等とを組み合わせて使用することもできる。
【0024】
上記多糖類(タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナン)は、1種単独で本発明のニコチン低減剤の有効成分として使用することができるが、所望に応じて2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。これらの好適な組合せとしては、制限はされないが、タマリンドシードガムとローカストビーンガムの組合せ、タマリンドシードガムとキサンタンガムの組合せ、ローカストビーンガムとメチルセルロースとの組合せ、タマリンドシードガムとタラガムとの組合せ、及びタマリンドシードガムとグァーガムとの組合せを例示することができる。
【0025】
ニコチン低減剤(水性液状組成物)に配合する上記多糖類(タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカラギナン)の割合は、得られるニコチン低減剤(水性液状組成物)の粘度が上記500〜3000mPa・sの範囲、好ましくは500〜2500mPa・s、より好ましくは1000〜2500mPa・sとなるような割合であればよく、特に制限されない。
【0026】
例えば、ニコチン低減剤(水性液状組成物)100重量%中に使用される各多糖類の割合としては、表1に記載する割合を例示することができる
【0027】

【0028】
これらの成分を任意に2種以上組み合わせて使用する場合も、その組合せの割合や配合量は、上記各配合割合を目安に、得られるニコチン低減剤(水性液状組成物)の粘度が500〜3000mPa・sの範囲、好ましくは500〜2500mPa・s、より好ましくは1000〜2500mPa・sとなることを指標として調整し決定することができる。例えば、前述するように、タマリンドシードガムとローカストビーンガムとを組み合わせて使用する場合、各成分の配合割合としては、タマリンドシードガム1重量部に対してローカストビーンガム0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部を例示することができる。タマリンドシードガムとキサンタンガムとを組み合わせて使用する場合、各成分の配合割合としては、タマリンドシードガム1重量部に対してキサンタンガム0.02〜1重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部を例示することができる。また、メチルセルロースとローカストビーンガムとを組み合わせて使用する場合、各成分の配合割合としては、メチルセルロース1重量部に対してローカストビーンガム0.2〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部を例示することができる。さらにまた、タマリンドシードガムとタラガムとを組み合わせて使用する場合、各成分の配合割合としては、タマリンドシードガム1重量部に対してタラガム0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部を例示することができる。またタマリンドシードガムとグァーガムとを組み合わせて使用する場合、各成分の配合割合としては、タマリンドシードガム1重量部に対してグァーガム0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部を例示することができる。
【0029】
本発明のニコチン低減剤は、上記タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類の他に、本発明の効果を損なわない範囲において、糖類を配合することができる。上記多糖類に糖類を組み合わせることによって、粘度や粘度安定性を向上させたり、ニコチンまたはタールの低減率を向上させることが可能である。
【0030】
本発明において好適に使用される糖類は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、エリトロース等の単糖またはこれらの還元糖(例えば、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール);トレハロース、マルトース、イソマルトース、ニゲロース、セロビオース、スクロース、ラクトース等の二糖類またはこれらの還元糖(例えば、マルチトール、ラクチトール);ビートオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖などのオリゴ糖またはこれらの還元糖;デキストリンや水飴等のデンプンに由来する糖またはこれらの還元糖(例えば、還元水飴)を例示することができる。
【0031】
好ましくは、グルコース、フルクトース等の単糖またはこれらの還元糖(ソルビトール、キシリトール、エリスリトール);トレハロース、マルトース、スクロース等の二糖類またはこれらの還元糖(マルチトール、ラクチトール);デキストリン、及び水飴を挙げることができる。より好ましくは、グルコース及びその還元糖(ソルビトール)、マルトース及びその還元糖(マルチトール)、トレハロース、デキストリン及び水飴等のデンプン糖(澱粉を酵素あるいは酸を用いて分解、酵素転移、酵素結合し得られた単糖類、小糖類及びそれらの還元物)であり、特に好ましくはソルビトール、トレハロース、及び水飴である。
【0032】
これらは1種単独または2種以上を任意に組み合わせて、上記多糖類と組み合わせて使用することができる。好ましい組み合わせとしては、トレハロースと水飴、ソルビトールと水飴等を例示することができる。
【0033】
本発明のニコチン低減剤(100重量%)に配合するこれらの糖類の割合は、特に制限されず、最終のニコチン低減剤の粘度が500〜3000mPa・sの範囲、好ましくは500〜2500mPa・s、より好ましくは1000〜2500mPa・sとなることを指標として調整決定することができる。例えば、糖類として水飴や還元水飴を使用する場合の当該糖類の割合としては、通常5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%の範囲を例示することができる。また、糖類として、上記以外の糖を使用する場合の当該糖類の割合として、通常5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%の範囲を例示することができる。
【0034】
本発明のニコチン低減剤には、上記成分(多糖類、糖類)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、増粘性を有する成分を任意に配合することもできる。かかる成分としては、カシアガム、グルコマンナン、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、納豆菌ガム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アラビアガム、トラガントガム、ガティガム、大豆多糖類、マクロホモプシスガム、ラムザンガム、ウェランガム、カラヤガム、澱粉、加工澱粉、化工澱粉、発酵セルロース、寒天等の増粘成分を挙げることができる。これらは1種で使用することもできるが、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。また、これらの成分は水溶性成分であることが好ましい。好ましくは、アラビアガム、大豆多糖類、カラヤガムである。
【0035】
さらに、本発明のニコチン低減剤には、上記成分(多糖類、糖類)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を任意に配合することもできる。かかる成分として、甘味料(例えば、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリン等の高甘味度甘味料)、天然或いは合成の着色料、香料、酸味料(例えば、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸)、保存料(例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム等)、抗酸化物質(例えば、茶カテキン、アントシアニン、イソフラボン等のポリフェノール類)、各種ハーブ及びその抽出液(カモミール、キダチアロエ、エキナセア、ホップ、メリッサ等)、アミノ酸、ミネラル、またはビタミン類等を例示することもできる。これらの成分もまた水溶性成分であることが好ましい。
【0036】
本発明のニコチン低減剤は、有効成分であるタマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類、またはこれらの少なくとも1種の多糖類と上記少なくとも1種の糖類に、必要に応じて前述する任意の成分を組み合わせて、水性溶媒に溶解することによって調製することができる。なお、溶解に際しては、必要に応じて加温や加熱処理を行ってもよい。
【0037】
なお、本発明のニコチン低減剤は、その液性(pH)を、特に制限されず、任意に設定することができるが、一例としてpH3〜5、特にpH3.5〜4.5の弱酸性を挙げることができる。
【0038】
斯くして調製される本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)は、喫煙具のフィルター部に保持させて使用される。保持の態様は、特に制限されないが、本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)をフィルター部に供して湿った状態で保持させる態様(含浸)、フィルター部に供して乾燥状態で保持させる態様のいずれであってもよい。好ましくは、ニコチン除去効果の高さから、湿潤状態での保持(含浸)である。
【0039】
喫煙具のフィルター部としては、具体的にはタバコの吸口フィルター部、喫煙パイプやシガレットホルダー(タバコの吸口部に被せて使用されるもの)内のフィルター部を挙げることができる。
【0040】
ニコチン低減剤(水性液状組成物)を喫煙具のフィルター部に保持させる方法は、特に問わない。例えば、喫煙具のフィルター部をニコチン低減剤(水性液状組成物)の液中にじかに漬ける方法やフィルター部にニコチン低減剤を塗布する方法を挙げることができるが、衛生上の観点からは、ニコチン低減剤(水性液状組成物)の液を、喫煙具のフィルター部に1滴(約50mg)〜数滴、好ましくは1滴〜5滴の割合で滴下する方法を好適に挙げることができる。
【0041】
このように本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)を、フィルター部に滴下して使用する場合、制限はされないが、当該ニコチン低減剤(水性液状組成物)は液滴のキレがよいことが好ましい。また制限はされないが、本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)は、フィルター部に適用した場合に速やかにフィルター部に浸透して含浸され、好ましくは全体に行き渡ることが好ましい。さらに本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)は、喫煙具のフィルター部に含ませて吸引した場合に、吸い圧が高まり吸いにくくなるといった不都合や、液がフィルター部から口中に飛散するといった不都合が生じないことが好ましい。
【0042】
本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)は、基本成分としてタマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類を用いて、また必要に応じて、前述する糖類を組み合わせて、粘度が500〜3000mPa・s、好ましくは500〜2500mPa・s、より好ましくは1000〜2500mPa・sの範囲の水性液状組成物として調製されることによって、上記の特徴を備えることが可能である。さらに、本発明の好適なニコチン低減剤(水性液状組成物)は、温度や保存による粘度変化が抑制されているため、一年を通じて安定した粘度や性状を備えている。このため、冬場の低温時であっても著しく増粘することなく、フィルター部への滴下や浸透、並びに喫煙(吸引)に不都合の生じない適度な粘度を備えている。
【0043】
本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)は、通常、容器に充填された状態で市場に供給される。かかるニコチン低減剤を収容する容器は、特に制限するものではないが、前述するように、本発明のニコチン低減剤は、好適には滴下という態様で使用されるため、滴下式(スポイト式を含む)の容器に充填されていることが好ましい。滴下式の容器は、液状の内容物(水性液状組成物)を1滴ずつ滴下することのできる部分を有するものであれば特に制限されない。例えば、容器自体がスポイトとなっており、容器の口部から直接内容物(水性液状組成物)が滴下できる態様のもの、容器の蓋部(キャップ)にスポイト機能が備わっており、キャップをスポイトとして利用して容器から内容物を吸い出して滴下する態様のものなどを例示することができる。
【0044】
さらに、ニコチン低減剤を収容する容器の大きさ(容量)は、特に制限するものではないが、本発明の用途、一回使用量、及び持ち運びの便利さの観点から、通常1〜100mL容量、好ましくは2〜20mLの内容物(水性液状組成物)が収容できるような大きさ(容量)であることが望ましい。
【0045】
(2)ニコチン低減用喫煙具
本発明はニコチン低減用喫煙具を提供する。本発明の喫煙具には、フィルター付きタバコといった喫煙具(以下、これを下記の喫煙に使用される道具と区別するため、単に「タバコ」という)の他、喫煙パイプ(キセルを含む)、シガレットホルダー(紙巻タバコ等の吸口に被せて使用されるもの。使い捨てを含む。)、及びシガレットホルダー内に装着して使用されるカートリッジなどのタバコ(紙巻きタバコ、刻みタバコを含む)や葉巻を吸う道具(以下、これを上記のタバコと区別するため、単に「パイプ」という)が含まれる。
【0046】
ここでパイプは、少なくともタバコ収納部若しくはタバコ挿し口、吸口部、上記タバコ収納部若しくはタバコ挿し口から吸口部に煙を導く通路(導管部)、及び前述する本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)を保持するための箇所(保持部)を備えるものである。
【0047】
本発明の喫煙具は、上記のフィルター付きタバコのフィルター部、または上記パイプの保持部に、前述する本発明のニコチン低減剤(水性液体組成物)を保持させることによって、喫煙時に体内に吸引されるニコチン量を低減することができる、ニコチン低減用喫煙具である。
【0048】
パイプの保持部は、タバコの主流煙が通過する部分に設けられ、本発明のニコチン低減剤(水性液体組成物)が保持できるように形成されていればよく、特にその構造や素材は問わない。例えば、紙、不織布、繊維及びスポンジ等の多孔質からなる部材をタバコの主流煙が通過する部分に装着または充填することによって形成することができる。なお、素材として、酢酸セルロース、脂肪酸ポリエステル化合物、セルロースエステルなどを制限なく例示することができる。
【0049】
本発明のパイプ(喫煙具)は、タバコの主流煙を、上記のニコチン低減剤(水性液体組成物)を保持させた当該保持部に通過させることによって、ニコチンを除去するという作用効果を有するものである。このため、当該パイプの保持部はフィルター部として定義することもできる。この意味で、本明細書では、当該パイプの保持部を、上記タバコのフィルター部と合わせて、「喫煙具のフィルター部」と総称する場合がある。
【0050】
本発明に係る喫煙具のフィルター(タバコのフィルター部、パイプの保持部)の容量も特に制限されない。上記ニコチン低減剤(水性液状組成物)をできるだけ多く安定して保持できるような容量を備えていることが好ましいが、上記ニコチン低減剤(水性液状組成物)を少なくとも50〜250mg程度、好ましくは50〜150mg程度で、保持できるような容量であれば、通常の使用に支障はない。
【0051】
制限はされないが、本発明のニコチン低減用喫煙具の一態様として、図1に示すようなシガレットホルダー、また図2〜図7に示すようなシガレットホルダー11を例示することができる。
【0052】
シガレットホルダーは、ホルダー本体内に保持部に該当するフィルターが設けられており、上記本発明のニコチン低減剤が保持できるようになっている。ホルダー本体は、一端部に吸口部を備え、他端部にタバコ挿し口を備えている。ホルダー本体は、吸口部の周辺及びその近傍が扁平状とされ、口でくわえやすくなっている。本発明がニコチン低減用喫煙具の一態様として提供する当該シガレットホルダーは、そのフィルター部に上記本発明のニコチン低減剤を予め保持したものである。
【0053】
シガレットホルダー11も、上記と同様に、ホルダー本体内に保持部に該当するフィルターが設けられており、本発明のニコチン低減剤が保持できるようになっている。本発明がニコチン低減用喫煙具として提供するシガレットホルダー11は、そのフィルターに上記本発明のニコチン低減剤を予め保持したものであってもよいし、また用時に、上記本発明のニコチン低減剤をそのフィルター部に供し、保持させて使用されるものであってもよい。
【0054】
以下、当該シガレットホルダー11の構成を図2〜7に則して説明する。
【0055】
ホルダー本体は、一端部に吸口部を備え、他端部にタバコ挿し口を備えている。ホルダー本体は、吸口部の周辺及びその近傍が扁平状とされ、口でくわえやすくなっている。シガレットホルダー11は、ホルダー本体の一方側に着脱可能なクリップ付きキャップと、ホルダー本体の他方側に着脱可能な蓋体とを更に備えることができる。図示例では、クリップ付きキャップがホルダー本体の吸口部の側に装着され、蓋体がホルダー本体タバコ挿し口側に装着されている。クリップ付きキャップは、吸口部に挿すための突起部を備えている。
【0056】
クリップ付きキャップと蓋体とをホルダー本体に装着することで、フィルターにニコチン低減剤を含浸させた場合に生じる揮発を防ぐことができる。また、クリップ付きキャップのクリップは、喫煙しない時には、胸ポケット等に留めておくことができる。クリップ付きキャップは、通常のペンに付属のキャップと類似する形状としておくことが好ましい。
【0057】
クリップ付きキャップと蓋体とは、着脱可能に構成されている。図示例では、クリップ付きキャップの開口部に蓋体を嵌入して取り付けることができるようになっている。蓋体は鍔部10を有し、鍔部10は蓋体をクリップ付きキャップに嵌着した時のストッパーとなる。喫煙時は、クリップ付きキャップに蓋体を装着し、クリップで胸ポケット等に留めておくことで、蓋体の紛失を防ぐことができる。
(3)タバコの主流煙中のニコチン量を低減する方法
本発明は、タバコの主流煙中のニコチン量を低減する方法を提供する。当該方法は、前述するニコチン低減剤(水性液状組成物)を喫煙具のフィルター部〔例えば、タバコの吸口フィルター、または喫煙パイプやシガレットホルダーのフィルター〕に含ませて、喫煙時にタバコの主流煙を当該フィルターに通過させることによって実施することができる。
【0058】
本発明によるニコチンの低減方法によると、喫煙具のフィルターに前述する本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)を含ませるだけで、喫煙によって体内に吸入される主流煙中のニコチン量を有意に低減することができる。また後述する実験例に示すように、ニコチン量に加えて、主流煙中のタール量も有意に低減することができる。よって、本発明は、同時に、タバコの主流煙中のタール量を低減する方法を提供するものでもある。
【0059】
また実験例に示すように、さらに、フィルターに含ませるニコチン低減剤(水性液状組成物)の量を増加することによって、その増加量に応じて、主流煙中のニコチン量及びタール量をより多く低減させることができる。フィルターに保持させるニコチン低減剤(水性液状組成物)の容量は、フィルターに保持できる容量であれば特に制限されないが、通常1滴〜数滴相当量(約50〜数百mg)、好ましくは1滴〜5滴相当量(約50〜250mg)の範囲を例示することができる。
【0060】
禁煙を困難にしている主な原因は、タバコの主流煙に含まれるニコチンに対する身体的及び心理的依存といわれている。このため、本発明によるニコチンの低減方法によると、喫煙が常習化している被験者であっても、喫煙しながら、体内に吸入されるニコチン量を低減することができ、それにより徐々にニコチン依存症を緩和することができる。また、本発明に係るニコチン低減剤によれば、喫煙者自らがその使用量(フィルターへの適用量)を調節することによって、吸入する主流煙中のニコチン量をコントロールすることができる。このため、喫煙者は自己のニコチンに対する依存状況に応じて、段階的にニコチンの摂取を低減させて、最終的にはニコチン依存を解消して、禁煙を達成することが可能となる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の内容を以下の実験例及び実施例を用いて具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは「重量部」を意味するものとする。
【0062】
なお、下記の実験例で使用した化合物の入手先は下記の通りである。印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
タマリンドシードガム:ビストップD−2033、三栄源エフ・エフ・アイ(株)
ローカストビーンガム:ビストップD−30、三栄源エフ・エフ・アイ(株)
キサンタンガム:サンエースC、三栄源エフ・エフ・アイ(株)
タラガム:ビストップD−2101、三栄源エフ・エフ・アイ(株)
グァーガム:ビストップD−2029、三栄源エフ・エフ・アイ(株)
プルラン:プルランPF−20(微粉)、(株)林原
サイリウムシードガム:ソアリュームPG−200、MRCポリサッカライド(株)
HMペクチン:ビストップD−2220、三栄源エフ・エフ・アイ(株)
LMペクチン:ビストップD−402、三栄源エフ・エフ・アイ(株)
λ−カラギナン:カラギニンCSL−1、三栄源エフ・エフ・アイ(株)
トレハロース:トレハ微粉(商品名)、(株)林原
水飴(酸糖化水飴):シラップ低(商品名)、向後スターチ(株)
大豆多糖類:SM−920(商品名)、三栄源エフ・エフ・アイ(株)
クエン酸三ナトリウム:クエン酸三ナトリウムF(商品名)、三栄源エフ・エフ・アイ(株)
グリシン:グリシンP(商品名)、有機合成薬品工業
L−アスコルビン酸:ビスコリン80M(商品名)、第一ファインケミカル(株)
茶カテキン:SD緑茶エキスパウダーNO.16714、三栄源エフ・エフ・アイ(株)
甘草粉末:リコチンP−1(商品名)、池田糖化工業(株)
実験例1
(1)水性液状組成物の調製
表2に記載する処方に従って水性液状組成物(実施例1〜15)を調製した。具体的には、まず表1に記載する多糖類(タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、プルラン、サイリウムシードガム、HMペクチン、LMペクチン、λ−カラギナン、カルボキシメチルセルロース)とトレハロースをイオン交換水に添加して、80℃で10分間、加熱しながら攪拌して溶解した。また、多糖類のうち、メチルセルロース(実施例14)とヒドロキシプロピルメチルセルロース(実施例15)については、トレハロースとともに、イオン交換水に添加して、60℃で10分間、さらに10℃で10分間攪拌しながら溶解した。
【0063】
これらに、予めイオン交換水に溶解した安息香酸ナトリウム水溶液、クエン酸水溶液、クエン酸三ナトリウム水溶液、着色料(赤色2号、赤色40号)の水溶液をそれぞれ添加し、混合した。全量をイオン交換水で100重量%となるように調整し、各水性液状組成物(実施例1〜15)を調製した。
(2)水性液状組成物の性状評価
上記で得られた各水性液状組成物(実施例1〜15)の粘度を、B型回転粘度計(粘度が2000mPa・s以下の場合はローターNo.3使用、粘度がそれを超える場合はローターNo.4使用)を用いて、20℃、60rpm、1分の条件で測定した(初期粘度)。また、これを50℃の条件で3週間保存し、その後上記と同じ条件で粘度を測定し(保存後の粘度)、下式に従って粘度残存率(%)を求め、下記の基準に従って粘度安定性を評価した。
【0064】
粘度残存率(%)=(保存後の粘度/初期粘度)×100

(3)使用感の評価
上記で得られた各水性液状組成物(実施例1〜15)を20℃に調整した後、タバコのフィルター部の先端部に2滴(約100mg)滴下し、液がフィルター内に浸透するのに要する時間を測定した(しみ込み性評価)。なお、フィルター表面の液滴が完全に消失した時点で浸透完了と判断した。また、液がフィルターに浸透したことを確認した後、喫煙し、煙を吸ったときに液が口内に吸い戻るか否かを評価した(吸い戻り性評価)。なお、各水性液状組成物(実施例1〜15)の、しみ込み性評価及び吸い戻り性評価は、下記の基準に従って、すべて同一人物が行った。また、吸い戻り性評価は、3回主流煙を吸い込むことによって実施した。

(4)結果
上記(2)及び(3)で測定評価した結果を、表2に合わせて示す。また、合わせて、上記(2)及び(3)で得られた結果に基づいて、下記の基準により評価した結果を、総合評価として表2に示す。

【0065】


【0066】
実験例2
(1)水性液状組成物の調製
表3に記載する処方に従って水性液状組成物(実施例16〜25)を調製した。具体的には、タマリンドシードガム及びキサンタンガムと、表3に記載する各糖類(トレハロース、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトース、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、デキストリン)をイオン交換水に添加して、80℃で10分間加熱しながら攪拌して溶解した。これに、予めイオン交換水に溶解した安息香酸ナトリウム水溶液、クエン酸水溶液、クエン酸三ナトリウム水溶液、着色料(赤色2号、赤色40号)の水溶液をそれぞれ添加し、混合した。全量をイオン交換水で100重量%となるように調整し、各水性液状組成物(実施例16〜25)を調製した。
(2)水性液状組成物の性状評価
実験例1と同様に、上記で得られた各水性液状組成物(実施例16〜25)の初期粘度を測定した。また、実験例1と同様に、50℃で3週間保存した後の粘度(保存後の粘度)を測定して粘度残存率(%)を求め、各水性液状組成物の粘度安定性を評価した。
(3)使用感の評価
実験例1(3)と同様に、上記で得られた各水性液状組成物(実施例16〜25)(20℃に調整)を、タバコのフィルター部の先端部に滴下して、フィルター内への液のしみ込み性を評価した(しみ込み性評価)。また、同様に、喫煙した際の口内への吸い戻り性を評価した(吸い戻り評価)。
(4)結果
上記(2)及び(3)で測定評価した結果を、表3に合わせて示す。
【0067】
また、合わせて、上記(2)及び(3)で得られた結果に基づいて、実験例1と同じ基準により評価した結果を、総合評価として表3に示す。
【0068】


【0069】
実験例3
(1)水性液状組成物の調製
表4に記載する処方に従って、下記の手順によって水性液状組成物(実施例26〜29)を調製した。得られた各水性液状組成物について、B型回転粘度計(ローターNo.3)を用いて、20℃、60rpm、1分の条件で粘度を測定した。
(i)実施例26
室温の水を攪拌しながら、ローカストビーンガムを少量ずつ投入して加温し、90℃到達後、さらに90℃で10分間攪拌溶解した。次いでトレハロースを投入してさらに攪拌し、メチルセルロースを少量ずつ投入し、20℃まで冷却した。そこへクエン酸、グリシン、L−アスコルビン酸、茶カテキン、クエン酸三ナトリウム、甘草粉末を投入し、更に着色料を添加した。なお、クエン酸、グリシン、L−アスコルビン酸、及び茶カテキンはいずれも予め少量の水に溶解して使用した。またクエン酸三ナトリウムと甘草粉末は、少量の水にクエン酸三ナトリウムを溶解し、これに甘草粉末を加えて溶解して用いた。調製後、水で全量(100重量%)を補正して、容器に充填して65℃で10分間加熱殺菌を行い、水性液状組成物(実施例26)を取得した。
(ii)実施例27
80℃の水を攪拌しながら、タマリンドシードガムとキサンタンガムを少量ずつ投入し、80℃で10分間攪拌溶解した(溶液A)。別に、80℃の水を攪拌しながら大豆多糖類とトレハロースの粉体混合物を少量ずつ投入し、80℃にて溶解した。この中にグリシン、アジピン酸、L−アスコルビン酸、茶カテキンを投入し、さらに少量に水に溶解したクエン酸三ナトリウムに甘草粉末を加えて溶解したものを投入し、着色料を添加した(溶液B)。溶液Aと溶液Bと水飴を合わせて攪拌混合した後に、水で全量(100重量%)を補正し、容器に充填後、65℃で10分間加熱殺菌して、水性液状組成物(実施例27)を取得した。
(iii)実施例28
キサンタンガムを用いない以外は、上記実施例27と同様の手順によって、水性液状組成物(実施例28)を取得した。
(iv)実施例29
タマリンドシードガムを用いない以外は、上記実施例27と同様の手順によって、水性液状組成物(実施例29)を取得した。
【0070】

【0071】
(2)水性液状組成物の粘度安定性評価
上記で得られた各水性液状組成物(実施例26〜29)のうち、実施例26の水性液状組成物については、温度を10℃から40℃に変化させて、液の状態を観察した。その結果、実施例26の水性液状組成物は温度変化(10℃→40℃)に関わらず、滑らかな状態を維持していた。
【0072】
また、実施例27〜29の水性液状組成物については、37℃で保存して経時的に粘度を測定し(保存後3日、7日、10日、14日、21日及び28日)、粘度安定性を評価した。粘度測定条件は上記と同じである。結果を表5に示す。なお、粘度安定性は、実験例1(2)に記載する式に従って算出した粘度残存率(%)で示す。
【0073】

【0074】
上記の表の結果から、ローカストビーンガム、タマリンドシードガムまたはキサンタンガムを用いて調製した実施例26〜29の水性液状組成物は、長期間の保存や温度変化によって粘度が著しく変動することがなく、ほぼ一定の性状を有していることが明らかになった。
(3)使用感の評価
上記で得られた各水性液状組成物(実施例26〜29)を、20℃に調整した後、タバコのフィルター部の先端部に2滴(約100mg)滴下し、実験例1(3)と同様に、液がフィルター内に浸透する時間を測定して液のしみ込み性を評価した(しみ込み性評価)。次いで、液がフィルターに浸透したことを確認した後、喫煙し、タバコの吸いやすさや口内への液状組成物の吸い戻りの有無(これを総じて「喫煙のしやすさ」という)を評価した。なお、各水性液状組成物の、しみ込み性及び喫煙のしやすさの評価は、すべて同一人物が行った。また、喫煙のしやすさの評価は、3回主流煙を吸い込むことによって実施した。さらに、喫煙後、フィルター部の変色の程度を観察した。
(4)結果
実施例26〜29の水性液状組成物はいずれも、タバコのフィルターの先端部に滴下すると15秒程度で均一に浸透し、また喫煙時において口中に液が飛散するとか、吸入が困難とかいう問題はなかった。さらに、喫煙後のフィルター部はいずれも黒く変色しており、水性液状組成物を含浸させなかった場合に比べてより多くのニコチン及びタールがタバコのフィルター部にトラップされていることがわかった。
【0075】
実験例4
実験例3で調製した水性液状組成物(実施例27)を用いて、本発明の水性液状組成物のニコチン及びタール除去効果を評価した。
【0076】
具体的には、実施例27の水性液状組成物をタバコ(マイルドセブン・ライト、日本たばこ産業:ニコチン含有量0.7mg、タール含有量8mg)のフィルター先端部に1滴(約50mg)、2滴(約100mg)、または3滴(約150mg)の割合で滴下して、直ちにタバコ煙中に含まれるニコチン量とタール量を測定した。また、比較実験として、上記水性液状組成物に代えて水(1滴、2滴、3滴)を用いて、上記と同様にして、タバコ煙中に含まれるニコチン量とタール量を測定した。水性液状組成物及び水のいずれも使用しない未処理のタバコの煙中に含まれるニコチン量とタール量をそれぞれ100%として、上記水性液状組成物または水で処理したタバコの煙中に含まれるニコチン量及びタール量から、それぞれニコチン低減率(%)及びタール低減率(%)を算出した。
【0077】
なお、タバコの煙中に含まれるニコチン量及びタール量の測定は、下記に示すように、平成元年大蔵省告示174号(日本)に定められた方法に従って行った。なお、各実験はタバコ10本ずつを用いて行った。
<ニコチン量及びタール量の測定>
1.タバコの調整
測定に使用するタバコは、予め22±1℃及び60±2%の湿度の下で、2日以上7日間保存して、条件を整えておく。
2.器具及び装置
(1)喫煙器:ピストンポンプ型
(2)煙捕集器:ガラス繊維フィルターを備えたシガレットホルダーを用いる。フィルターは、直径44mm、厚さ1〜2mmで、140mm/秒の速度において直径0.3μm以上のジオクチルフタレートの全粒子を99.9%以上捕集する能力を有するものを使用する。この速度におけるフィルター圧力降下は93mmHO(900Pa)以下である。なお、フィルターは、アクリル樹脂接着剤の含有量が5%以下のものを使用する。
(3)ガスクロマトグラフ
(i)水分測定用ガスクロマトグラフの測定条件
カラム:内径2〜3mm、長さ1.2〜1.8mのガラス製
充填剤:ポラパックQ(Waters製)(80〜100メッシュ)またはこれと同等以上の性能をもつもの
温度:恒温槽(170−180℃)、注入部(230−250℃)、検出器(250℃)
キャリアガス:ヘリウム
流速:40ml/分
検出器:熱伝導度型検出器
(ii)ニコチン測定用ガスクロマトグラフの測定条件
カラム:内径2〜3mm、長さ1.8〜2.7mのガラス製
充填剤:酸及び蒸留水で洗浄した60〜80メッシュのクロモソルブWにポリエチレングリコール−20W(10重量%)及び水酸化カリウム(2重量%)を被覆したもの、またはこれと同等以上の性能をもつもの
温度:恒温槽(170−180℃)、注入部(230−250℃)、検出器(250℃)
キャリアガス:ヘリウムまたは窒素
流速:20〜40ml/分
検出器:水素炎イオン化検出器
3.試験操作及び算出
(1)粗タールの捕集
測定用タバコの吸い口端をシガレットホルダーに9±1mm挿入し、以下の条件で喫煙をすることにより、吸殻の長さが30mmに達するまで喫煙を行い、粗タール(フィルターにより捕集されたタバコ煙中の粒子部分)を捕集する。なお、粗タールを捕集するために喫煙させる測定用タバコの本数は、1喫煙口当たり5本とする。
<喫煙条件>
喫煙容量(一回の喫煙で吸入するタバコ煙の容積):35±0.3ml
喫煙時間(一回の喫煙に要する時間):2±0.1秒
喫煙周期(喫煙から次の喫煙までの時間):60±1秒
喫煙波形(パフプロファイル):喫煙開始時より0.8〜1.2秒の間に最大値があるベル型で、その最大流速は25〜30ml/秒とする。
(2)粗タール量の算出
煙捕集器の喫煙前後の重量を0.1mg単位で秤量し、その重量差から粗タール量(mg/本)を小数点以下2桁まで(3桁以下切捨て)、次式により算出する。
粗タール量=〔喫煙後煙捕集器重量(mg)−喫煙前煙捕集器重量(mg)〕/喫煙本数
(3)試料溶液の調製
粗タールを捕集したフィルターを折り畳み、その裏側でシガレットホルダーの内壁面を拭き、更に未使用の4分の1のフィルターでシガレットホルダーの内壁面を拭き取る。これらのフィルター及び抽出溶媒〔イソプロパノール:エタノール:アネトール=4974:25:1(容量比)の混合溶媒、以下同じ〕10mlを容器にいれ、振盪して試料溶液を調製する。
(4)粗タール中の水分量の測定
試料溶液をガスクロマトグラフに1μl注入し、エタノールのピーク面積に対する水分のピーク面積比を求め、(6)(i)の方法で作成した検量線を用いて、試料溶液中の水分量(mg/本)を小数点以下2桁まで(3桁以下切捨て)測定する。これからフィルターに含まれる1日の平均水分量を差し引き、粗タール中の水分量とする。なお、各試料溶液ごとに2回測定を行い、平均値を求める。
(5)粗タール中のニコチン量の測定
試料溶液をガスクロマトグラフに1μl注入し、アネトールのピーク面積に対するニコチンのピーク面積比を求め、(6)(ii)の方法で作成した検量線を用いて、試料溶液中のニコチン量(mg/本)を小数点以下2桁まで(3桁以下切捨て)測定する。なお、各試料溶液ごとに2回測定を行い、平均値を求める。
(6)検量線の作成
(i)水の検量線の作成
粗タール中に存在が想定される水分量の範囲を網羅する4種類以上の異なる量の蒸留水に、抽出溶媒を各々10mlずつ加え標準液を調製する。この標準液1μlをガスクロマトグラフに注入し、エタノールのピーク面積に対する水のピーク面積比を求め、これらの操作を2回繰り返した後、ピーク面積比と添加した水分量の関係から検量線を作成する。
(ii)ニコチンの検量線の作成
粗タール中に存在が想定されるニコチン量の範囲を網羅する4種類以上の異なる量のニコチンに、抽出溶媒を各々10mlずつ加え標準液を調製する。この標準液1μlをガスクロマトグラフに注入し、アネトールのピーク面積に対するニコチンのピーク面積比を求め、これらの操作を2回繰り返した後、ピーク面積比とニコチン量の関係から検量線を作成する。
(7)タール量の算出
タール量(mg/本)は、粗タール量から粗タール中の水分量及びニコチン量を差し引くことにより、小数点以下2桁まで算出する。
【0078】
結果を図8に示す。
【0079】
図8からわかるように、本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)をタバコのフィルターに供することによって、タバコの主流煙に含まれるニコチン量及びタール量のいずれも50%以上低減することできる。また、図からわかるように、本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)のニコチン及びタール低減効果は、水だけを使用した場合の効果に比して約2〜5倍の効果がある。さらに、図からわかるように、タバコのフィルターに供するニコチン低減剤(水性液状組成物)の量を増やすことに伴ってニコチン及びタール低減効果も増大する。このことから、本発明のニコチン低減剤(水性液状組成物)の使用量(フィルターへの適用量)を調節することによって、適宜タバコの主流煙に含まれるニコチン量及びタール量をコントロールすることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
上述したように、本発明に係るニコチン低減剤を喫煙具のフィルター部に含ませて喫煙することにより、タバコの主流煙に含まれるニコチンが、フィルター内のニコチン低減剤に効率的に捕捉されて除去される。本発明に係るより好適なニコチン低減剤は、特定の多糖類を有しかつ適度な粘性を有していることに基づいて、フィルター部にキレよく滴下でき、また滴下後はフィルター部の繊維間に速やかに均一に行き渡り、かつフィルター部に留まるというものである。このため、喫煙してもニコチン低減剤が口中に飛散することなく、また吸い抵抗も少なく通常と変わりなく喫煙が可能であり、それでいて効率よくニコチンを除去することができる。
【0081】
また、本発明に係る好適なニコチン低減剤は、温度による粘度の変化が抑えられているため、冬場の低温時であっても不都合に増粘することなく、通常の使用状況下において適度な粘度を維持する。これにより、冬場の戸外であっても、室内と同様の粘度を有しているため、フィルター部への滴下が困難になるといった問題は生じにくい。
【0082】
本発明に係るニコチン低減剤を使用することによってタバコの主流煙に含まれているニコチンやタール成分が効率よく除去され、喫煙具のフィルター部には通常の喫煙時よりも多量のニコチンやタール成分が付着することとなる。本発明のニコチン低減剤は、喫煙パイプやシガレットホルダー内のフィルターにも使用することができるが、タバコ自体のフィルターに直接使用することによって主流煙中のニコチンを低減することができる。この場合、喫煙後はそのまま捨てればよく、喫煙パイプやシガレットホルダーを使用する場合に比して、経済効率も改善される。
【0083】
また本発明に係るニコチン低減剤は、喫煙具に含ませる量を増加させるに従い、タバコのフィルター部にトラップされるニコチンの量も増加する。このため、本発明に係るニコチン低減剤の使用量を増やすことで、段階的にニコチンの摂取量を減らしていけるため、節煙・禁煙下におけるニコチン依存症発症を徐々に和らげ、禁煙を達成することが可能となる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類を含有し、粘度が500〜3000mPa・sの水性液状組成物からなるニコチン低減剤。
【請求項2】
多糖類が、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、及びペクチンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1記載のニコチン低減剤。
【請求項3】
多糖類が、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、及びキサンタンガムよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1記載のニコチン低減剤。
【請求項4】
さらに、糖類を含有するものである、請求項1記載のニコチン低減剤。
【請求項5】
糖類が、トレハロース、水飴、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、及びデキストリンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4記載のニコチン低減剤。
【請求項6】
糖類が、トレハロース及び水飴よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4記載のニコチン低減剤。
【請求項7】
喫煙具のフィルター部に保持して用いられる請求項1に記載するニコチン低減剤。
【請求項8】
請求項1に記載する水性液状組成物からなるニコチン低減剤が容器に充填されてなる、容器入りニコチン低減剤。
【請求項9】
請求項1に記載するニコチン低減剤を保持したフィルター部を有するニコチン低減用喫煙具。
【請求項10】
上記ニコチン低減用喫煙具が、一端部に吸引口を、他端部にタバコ挿し口を備えるホルダー本体と、該ホルダー本体内に設けられたフィルターとを有するものであって、前記フィルターに、請求項1記載のニコチン低減剤を保持してなることを特徴とする請求項9記載のニコチン低減用喫煙具。
【請求項11】
請求項1に記載するニコチン低減剤を含ませた喫煙具のフィルターに、タバコの主流煙を通過させる工程を有する、タバコの主流煙中のニコチン量を低減する方法。
【請求項12】
請求項1に記載するニコチン低減剤を含ませた喫煙具のフィルターに、タバコの主流煙を通過させる工程を有する、タバコの主流煙中のタール量を低減する方法。
【請求項13】
タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類を含有し、粘度が500〜3000mPa・sの水性液状組成物の、ニコチン低減剤またはタール低減剤の調製のための使用。
【請求項14】
タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グァーガム、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカラギナンよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類を含有し、粘度が500〜3000mPa・sの水性液状組成物の、ニコチンまたはタールを低減するための使用。

【国際公開番号】WO2005/079609
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519353(P2006−519353)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002649
【国際出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【特許番号】特許第3882125号(P3882125)
【特許公報発行日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】