説明

ニットループテープおよびそれを備えたおむつ

【課題】製造および材料コストを減少できるよう低接着力バックサイズ層を必要としないニットループテープを提供する。
【解決手段】感圧接着層と、感圧接着層上に位置し、それに結合されているフィルムバッキング層と、フィルムバッキング層上に位置し、それに結合されているループ布層であって、第1の側と第1の側の反対の第2の側とを有し、各々に複数のループが形成された複数の平行な縦糸を含むループ布層とを含み、各ループが第1の側に向かってそれぞれ配向されていて、フィルムバッキング層に対して第1の角度を画定しており、第1の角度が約10°〜約80°である、ニットループテープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解放可能な係合可能フック・アンド・ループ部分を含むタイプのファスナにループ部分を形成するために、ピースへと切断されるよう適合されたニットループテープ、およびかかるニットループテープのピースを含む使い捨ておむつのような衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てパーソナルケア衣類市場においては、顧客は、使い捨ておむつ、成人失禁用ブリーフ、トレーニングパンツ、衛生ナプキン等のような製品のメカニカルクロージャシステムとして用いる、不織バックシート、ニットループテープおよびフックを含むフック・アンド・ループファスニングシステムを益々好むようになっている。
【0003】
かかるファスニングシステムは、ポリオレフィンバックシート、フィルムフロンタルテープ(FFT)およびフィルムサイドテープを含む従来のテープクロージャシステムとは全く異なる布状である。
【0004】
しかしながら、消費者はこのメカニカルクロージャシステムを好むが、ニットループテープから主に得られるものは高価格である。図1に示す通り、従来のニットループテープは、感圧接着剤(PSA)層Aと、パターン印刷層Bと、フィルムバッキング層Cと、ループ布層Dと、低接着力バックサイズ(LAB)層Eとを含み、1枚の層が他の層に下から上に順番に結合されている。
【0005】
図1および2によれば、ループ布層は、その上に複数のループが形成されており、各ループはフィルムバッキング層の同じ方向(図2に示す(+)Y方向)にあって、各ループとフィルムバッキング層(図2に示すX−Y面)間の角度は実質的にゼロである。ニットループテープをロール状に巻くとき(通常、(+)Y方向または(−)Y方向のいずれかに沿って)、LAB層がないと、PSA層がループ布層に貼り付く。従って、ニットループテープのロールを巻き戻すときは、非常に高い巻き戻し力が生じ、フィルムバッキング層とループ布層との間に層剥離が生じ得、ループ布層のループも損傷する。
【0006】
しかしながら、LAB層を与えると、製造および材料のコストが増大して、ループテープのコストも増大する。
【0007】
さらに、前述した通り、ニットループテープのループは、全て同じ方向(図2に示す(+)Y方向)に配向される。テープがおむつの前部の上端に沿って配置され、おむつの後部の上端の各側部にフック部分の与えられたフックと係合されるとき、テープのループと側部のフックとの間の剥離力は強い。しかしながら、もう一方の側部のフック部分は反対の方向に剥がれるため、テープのループと、おむつの後部の上端のもう一方の側部のフックとの間の剥離力は弱い。この弱い剥離力によって、おむつの他の側のフックとループの係合が容易に緩む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、高価でなく、製造が容易なニットループテープが必要とされている。さらに、おむつの各側の剥離力が互いに同様の、フック・アンド・ループファスニングシステムを備えたおむつが必要とされている。
【0009】
本発明の主たる目的は、製造および材料コストを減少できるよう低接着力バックサイズ層を必要としないニットループテープを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、フィルムバッキング層とループ布層との間の層剥離を防ぐ、ニットループテープを提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、おむつの各側の剥離力が互いに同様の、フック・アンド・ループファスニングシステムを備えたおむつを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の好ましい実施形態、ニットループテープは、感圧接着層と、感圧接着層上に位置し、それに結合されているフィルムバッキング層と、フィルムバッキング層上に位置し、それに結合されているループ布層とを含む。ループ布層は、第1の側と、第1の側の反対の第2の側とを有し、各々に複数のループが形成された複数の平行な縦糸を含む。各ループは、それぞれ、フィルムバッキング層に対して第1の角度を画定するように第1の側に向かって配向されている。第1の角度は約10°〜約80°である。
【0013】
本発明の第2の好ましい実施形態、ニットループテープは、感圧接着層と、感圧接着層上に位置し、それに結合されているフィルムバッキング層と、フィルムバッキング層上に位置し、それに結合されているループ布層とを含む。ループ布層は、第1の側と、第1の側の反対の第2の側とを有し、各々に複数のループが形成された複数の平行な縦糸を含む。同じ縦糸に沿ったいくつかのループの各々は、それぞれ、フィルムバッキング層に対して第1の角度を画定するように第1の側に向かって配向されている。第1の角度は約10°〜約80°である。同じ縦糸に沿った残りのループの各々は、それぞれ、フィルムバッキング層に対して第2の角度を画定するように第2の側に向かって配向されている。第2の角度は約10°〜約80°である。
【0014】
本発明はまた、第1の好ましい実施形態によるニットループテープでできた少なくとも1つのループ部分と、ループ部分のループと係合可能な複数のフックを備えた少なくとも1つのフック部分とを含むフック・アンド・ループファスニングシステムにも関する。
【0015】
本発明のさらなる態様は、第2の好ましい実施形態によるニットループテープでできた少なくとも1つのループ部分と、ループ部分のループと係合可能な複数のフックを備えた少なくとも1つのフック部分とを含むフック・アンド・ループファスニングシステムに関する。
【0016】
本発明の他のさらなる態様は、前ウエスト領域と、後ウエスト領域と、前ウエスト領域と後ウエスト領域との間に延在するクロッチ領域と、液体透過性トップシートと、液体不透過性バックシートと、トップシートとバックシートとの間に挿入された吸収体コアとを含み、トップシートとバックシートが吸収体コアの長手方向の両端を超えて長手方向に外側に延在して、前ウエスト領域および後ウエスト領域において一緒に結合されて、それぞれ、一対の端部フラップを前ウエスト領域および後ウエスト領域の各々に形成している、使い捨ておむつに関する。第1または第2の好ましい実施形態によるニットループテープの少なくとも1つのストリップが一対の端部フラップ間のバックシートに取り付けられており、テープの縦糸はおむつの長手方向に平行である。タブは、バックシートのもう一対の端部フラップの各々に取り付けられており、各タブは、その上に形成され、トップシートに対向する複数のフックを有している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来のニットループテープの断面図である。
【図2】図1の従来のニットループテープのセグメントを示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の好ましい実施形態によるニットループテープの断面図である。
【図4】図3のニットループテープのセグメントを示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の好ましい実施形態によるニットループテープの断面図である。
【図6】図5のニットループテープのセグメントを示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の好ましい実施形態によるニットループテープを備えたおむつの見開き図である。
【図8】図7のおむつの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の構造および目的は、好ましい実施形態の以下の記載を添付の図面と組み合わせることにより、当業者であれば容易に理解できる。
【0019】
図3および図4に、本発明の第1の好ましい実施形態によるニットループテープを示す。図示した通り、ニットループテープ1は、感圧接着層11と、感圧接着層11上に位置し、それに結合されたパターン印刷層12と、印刷層12上に位置し、それに結合されたフィルムバッキング層13と、フィルムバッキング層13上に位置し、それに結合されたループ布層14とを含む。
【0020】
ループ布層14は、X−Y面にあり、X軸は、縦ニット方向として画定され、Y軸は横ニット方向として画定される。Z軸は、X軸とY軸の両方に直交している。
【0021】
ループ布層14は、(+)X方向に配向された複数の平行縦糸141を含む。各縦糸141には、その上に複数のループ142が形成されている。
【0022】
図3および図4に示す通り、本実施形態において、ループ142は、(+)Y方向またはループ布層14の第1の側に向かって全て傾斜しており、各ループ142は(+)Y方向に対して角度αを画定している。角度αは約10°〜約80°、好ましくは20°〜60°である。
【0023】
ニットループテープ1の製造において、テープは、通常、(+)X方向にロール状に巻かれる。ニットループテープ1をピースへと切断し、フック・アンド・ループファスニングシステムに用いるとき、ニットループテープ1のロールをまず巻き戻す。角度αに基づいて、ニットループテープ1を巻き戻すときは((−)X方向において)、巻き戻し力を制御して、その力でループ布層14とフィルムバッキング層13との間の結合が壊れないようにする。
【0024】
指定されたループ角度αから生じた制御された巻き戻し力は、従来の低接着力バックサイズ(LAB)コーティングを適用する影響と等しいことに注意する。しかしながら、LABコーティングがないと、剥離剤や溶剤のような材料のコスト、および乾燥のような関連プロセスにおけるコストを減じることができる。さらに、LABコーティングにより生じ得る汚染やボイドがない。
【0025】
さらに、ニットループテープ1をフック・アンド・ループファスニングシステムに用いるとき、指定したループ角度αは、ループとフックとの間の係合力をさらに増大する。これは、ループからのフックの分離のための剥離力が増大することを意味する。
【0026】
ループ構造をより容易に理解するため、各ループ142は、図4に示す通り、隣接するループからは分離して示してあることに注意する。しかしながら、同じ縦糸141に沿ったループ142は互いに重なっていてもよい。さらに、本実施形態においては、角度αは、(+)Y方向に対してループの角度として画定されているが、ループは、(+)Y方向においてのみ傾斜させることに必ずしも限定されるものではなく、(+)X方向(「ループアップ」方向)または(−)X方向(「ループダウン」方向)のいずれかに向かって傾斜させることもできる。後者の2つの場合には、角度αはX−Y面に対するループの角度として画定される。
【0027】
本発明の第1の好ましい実施形態によるニットループテープ1の制御された巻き戻し力をさらに説明するために、第1の試験(試験1)を以下の手順に従って実施した。
【0028】
試験1
目的:幅広のロール形態におけるテープの巻き戻し力値を求める。
【0029】
試験材料:
1.それぞれ、表1に挙げられた、一定の温度および湿度の部屋で24時間調整した、フィルムフロンタルテープ(FFT、製品番号KT−1985、3M社(3M Company))製)、従来のニットループテープ(製品番号KLT、3M社(3M Company))製)および本発明の第1の好ましい実施形態によるニットループテープ1(ニューKLT1)3本ロールのテープ。
【0030】
【表1】

【0031】
2.各試験ロールからテープの少なくとも3つの重なりを除去する。
【0032】
装置:
1.23+/−2℃および50+/−5%相対湿度に設定された一定の温度および湿度の部屋
2.一定速度のインストロン伸張試験機
3.6インチトングを備えた巻き戻し装置
【0033】
装置セットアップ:
1.インストロン伸張試験機
a.クロスヘッド速度:20インチ/分
b.フルスケールロード:最低500グラム
c.チャート速度:10インチ/分
d.フィルタアウト
e.初期ジョー分離:上部ジョーと試験するロールとの間に約2インチ残すように調整
f.クロスヘッド移動:少なくとも6.2インチ
g.ゼロ調整:金属直線端部を上部ジョーに配置し、ゼロ調整
2.巻き戻し装置
a.巻き戻し装置を伸張試験機の一定速度の下部ジョーに留める
b.スピンドルが巻き戻し装置を自由に回転するようにする
【0034】
手順:
1.試験は一定の温度および湿度条件で行わなければならない。
2.テープのロールを巻き戻し装置のスピンドルに配置し、伸張試験機の上部ジョーの下に適切に中央になるようにする。
3.テープを金属直線端部周囲の自由端で折り畳む。
4.直線端部を一定の伸張試験機の上部ジョーに留める。
5.ダウンボタンをプレスすることにより同時にペンとチャートの動作を開始する。
6.テープを約6インチ巻き戻した後、チャートとペンをシャットオフし、リターンボタンをプレスして、ジョーを最初の位置まで戻す。
【0035】
結果:
1.チャートのトレースが実質的に一定になるときに、チャートの小区分の数(チャートを超えて数える)を、ベースラインから、テープをロールから機械的に巻き戻すための平均読取り値を表す点まで数える。
2.以下の式を用いて巻き戻し力を計算する。
【数1】

3.本発明の第1の好ましい実施形態によるフィルムフロンタルテープ(FFT)、従来のニットループテープ(KLT)およびニットループテープ1(ニューKLT1)の各々に関して計算された巻き戻し力をグラフ1にまとめてある。
【0036】
【表2】

【0037】
グラフ1から、KLTはLAB層を有していて、ニューKLT1はかかるLAB層を有していないが、本発明の第1の好ましい実施形態によるニットループテープ1の巻き戻し力は良好に制御され、従来のニットループテープの巻き戻し力より小さいことが分かる。
【0038】
さらに、本発明の第1の好ましい実施形態によるニットループテープ1は、従来の材料の剥離力よりも良好な剥離力を有し、表1の試験材料リストに、以下の手順に従って実施された第2の試験(試験2)を行った。
【0039】
試験2
目的:4.5ポンドのローラに固定し、13インチのジョー分離を用い、試験パネルを剥離中1つの位置に保った後の試験表面からのテープの135度の剥離接着力を測定すること。
【0040】
試験材料:
1.表1に挙げられた、一定の温度および湿度の部屋で24時間調整した、フィルムフロンタルテープ(FFT、製品番号KT−1985、3M社(3M Company))製)、従来のニットループテープ(製品番号KLT、3M社(3M Company))製)および本発明の第1の好ましい実施形態によるニットループテープ1(ニューKLT1)を含み、横方向に少なくとも2−1/4インチ、機械方向に反復試験に必要な数を切断するのに十分に長い3本ロールまたはテープのピース
2.TRM−300両面コート感圧接着テープ(米国、サウスダコタ州、アバディーンより注文、1.5インチ×36ヤード9579テープ#70−0000−8219−1) 3.3本の幅1インチおよび長さ約11インチの紙ストリップ
4.試験材料の3つの2インチ×5インチのピースで、1つはFFTテープに接着するための他のFFTテープであり、他の2つは従来のニットループテープ(KLT)およびニットループテープ1(ニューKLT1)と係合するフック層(製品番号CS600、3M社(3M Company)製)である。
5.2インチ×5インチ×1/16インチの平滑な鋼パネルまたは2インチ×5インチ×1/8インチのポリプロピレン板(ミネソタプラスチックス(Minnesota Plastics)製)
【0041】
装置:
1.23+/−2℃および50+/−5%相対湿度に設定された一定の温度および湿度の部屋。
2.メートルスケール、張力ロードセル、クランプジョーおよびチャートレコーダを備えた一定速度のインストロン伸張試験機
3.パネル固定機を備えた135度の試験ジグ
4.2つの単一エッジレーザー刃を平行な面に1インチ離して保持する試料カッター
5.PSTC試験方法、付録Bに従った4.5ポンドのゴムカバー手動ローラ
6.PSTC試験方法、付録Bに従った4.5ポンドのゴムカバー機械操作ローラ
7.13インチ測定可能なルーラまたはテープ測定
【0042】
装置セットアップ:
1.インストロン伸張試験機
a.クロスヘッド速度:12インチ/分
b.初期ジョー分離:約13インチ
2.チャートレコーダ
a.フルスケールロード:2000グラム
b.チャート速度:5インチ/分
c.フィルタアウト
3.試験パネル
a.ステンレス鋼試験パネルを清浄にし、接着剤およびその他異物を除去する。
b.適宜、ジアセトンアルコールおよびヘプタンで清浄にする。
c.試験をポリプロピレンパネルで行う場合は、新しいパネルの両側を用い、適切なやり方で廃棄する。
【0043】
手順:
1.試験は一定の温度および湿度条件で行わなければならない。
2.TRM−300両面コートテープを鋼パネルの片側に配置し、ライナをTRM−300テープから除去する。
3.試験材料の2インチ×5インチピース、すなわち、FFTまたはフック層を、試験側をTRM−300テープに向け、紙ストリップでカバーし、ロールダウンを用いて試験材料を固定する。
4.テープの最初の3つの層を試験ロールの外側から剥がし廃棄する。
5.1層以上の層を動作面に配置し、最後の層の剥離表面に触れないようにする。
6.1層以上を最後の層の汚染されていない剥離表面に配置する。
7.幅1インチの試料を1インチ試料カッターで切断し、テープを横方向に試験する。
8.テープの上層の一端を幅1インチの切断試料から持ち上げ、その約1/4インチにリーダーを付ける。
9.切断試料を工程2および3で作成したパネルに配置し、試料の長寸法がパネルの長寸法と平行になるように、それをパネルの中心とする。テープに圧力はかけない。
10.テープ試料を4.5ポンドの機械操作ローラの各方向に1回ロールダウンしたら直ぐに、テープを長さ方向に巻き、ロールダウン完了後直ぐに(15秒以内)、1枚のパネル当たり1回のみの試験をし、1つのみの試料を同時にロールダウンする。
11.135度の試験ジグを下部ジョーに固定し、試験パネルアセンブリをジグスロットにスライドさせ、テープ試料を位置合せして剥離が固定部に印を付けたラインで開始されるようにし、上部ジョーにリーダーを留める。
12.試験試料を試験表面から剥離する引張り試験機を始動する。
13.ポリプロピレンパネルはパネルの両側の試験後廃棄してもよい。
【0044】
結果:
1.テープの除去中に得られた平均剥離力値を目視で求める。
2.ベースラインから目視で求めた平均を表すラインまでの小区分の数を数える。
3.以下の式を用いて剥離力を計算する。
【数2】

4.フィルムフロンタルテープ(FFT)、従来のニットループテープ(KLT)および本発明の第1の好ましい実施形態によるニットループテープ1(ニューKLT1)の各々に関して計算された135度剥離力をグラフ2にまとめてある。
【0045】
【表3】

【0046】
グラフ2から、本発明の第1の実施形態によるニットループテープ1の135度の剥離力は、従来のニットループテープの剥離力よりも大きいことが分かる。
【0047】
図3および図4に開示された第1の好ましい実施形態のニットループテープ1は、LABコーティングの必要性をなくす。これに関して、本発明の第1の好ましい実施形態のニットループテープ1を、第2の好ましい実施形態のニットループテープ2へとさらに修正してもよい。
【0048】
図5および6に、本発明の第2の好ましい実施形態によるニットループテープ2を示す。図示した通り、ニットループテープ2は、感圧接着層21と、感圧接着層21上に位置し、それに結合されたパターン印刷層22と、印刷層22上に位置し、それに結合されたフィルムバッキング層23と、フィルムバッキング層23上に位置し、それに結合されたループ布層24とを含む。
【0049】
ループ布層24は、X−Y面にあり、X軸は、縦ニット方向として画定され、Y軸は横ニット方向として画定される。Z軸は、X軸とY軸の両方に直交している。
【0050】
ループ布層24は、(+)X方向に配向された複数の平行縦糸241を含む。各縦糸241には、その上に複数のループ242が形成されている。
【0051】
図5および図6に示す通り、本実施形態において、同じ縦糸241に沿ったいくつかのループ242は、対で(+)Y方向またはループ布層24の第1の側に傾斜し、各ループ242は(+)Y方向に対して第1の角度α1を画定しており、同じ縦糸241に沿った残りのループ242は、対で(−)Y方向またはループ布層24の第2の側に傾斜し、各ループは(−)Y方向に対して第2の角度α2を画定している。角度α1およびα2は約10°〜約80°、好ましくは20°〜60°である。図5および6に示す通り、隣接するループ対は反対の方向に傾斜している。
【0052】
第1の好ましい実施形態と同様に、ニットループテープ2の製造において、テープは、通常、(+)X方向にロール状に巻かれる。ニットループテープ2をピースへと切断し、フック・アンド・ループファスニングシステムに用いるとき、ニットループテープ2のロールをまず巻き戻す。角度α1およびα2に基づいて、ニットループテープ2を巻き戻すときは((−)X方向において)、巻き戻し力を制御して、その力でループ布層24とフィルムバッキング層23との間の結合が壊れないようにする。ニットループテープ2の剥離力は従来のニットループテープの剥離力より大きい。
【0053】
ループ構造をより容易に理解するため、各ループ242は、図6に示す通り、近接するループからは分離して示してあることに注意する。しかしながら、同じ縦糸241に沿った同じ対のループ242は互いに重なっていてもよい。さらに、本実施形態においては、第1の角度α1は、(+)Y方向に対してループの角度として画定されており、第2の角度α2は(−)Y方向に対してループの角度として画定されているが、ループは、(+)Y方向または(−)Y方向においてのみ傾斜させることに必ずしも限定されるものではなく、(+)X方向(「ループアップ」方向)または(−)X方向(「ループダウン」方向)のいずれかに向かって傾斜させることもできる。後者の2つの場合には、角度α1およびα2はそれぞれX−Y面に対するループの角度として画定される。
【0054】
図7および図8に、本発明の第2の好ましい実施形態によるニットループテープ2を備えたおむつ3を示す。図示する通り、おむつ3は、前ウエスト領域31と、後ウエスト領域32と、前ウエスト領域31と後ウエスト領域32との間に延在するクロッチ領域33と、液体透過性トップシート34と、液体不透過性バックシート35と、トップシート34とバックシート35との間に挿入された吸収体コア36とを含む。
【0055】
図7に示す通り、トップシート34およびバックシート35は、吸収体コア36の長手方向の反対の端部を超えて外側に長手方向に延在し、前ウエスト領域31と後ウエスト領域32それぞれに結合されている。第1の対の端部フラップ311は、前ウエスト領域31に形成され、第2の対の端部フラップ321は後ウエスト領域32に形成されている。
【0056】
おむつ3のフック・アンド・ループファスニングシステムを装着するには、本発明の第2の好ましい実施形態によるニットループテープ2のストリップを、端部フラップ311間のバックシート35に取り付け、テープ2の縦糸241をおむつ3の長手方向に平行にする。さらに、上に複数のフック(図5に示すフック)を備えたフック部分41を有し、トップシート34に対向するタブ4をバックシート35の各端部フラップ321に取り付ける。従って、各端部フラップ321上のタブ4のフック41をニットループテープ2と係合するには、図8に示す通り、おむつ3を使用者の体の上で折り畳む。
【0057】
本発明のおむつ3によれば、ニットループテープ2のループ242が両方向に実質的に均一に傾斜しているため、テープ2から対向するタブ4の各々を剥離する力は互いに同様である。
【0058】
本発明の第2の好ましい実施形態によるニットループテープ2を使用して、おむつ3の各側に釣り合いのとれた剥離力をさらに証明するために、第3の試験(試験3)を以下の手順に従って実施した。
【0059】
試験3
目的:伸張引張り試験機の記録一定速度を用いて、フック・アンド・ループファスナーの剪断強度を測定すること。
【0060】
試験材料:
1.表2に挙げられた、一定の温度および湿度の部屋で24時間調整した、1インチMD(機械方向)×3インチCD(横方向)従来のニットループテープ(製品番号KLT、3M社(3M Company))製)および本発明の第2の好ましい実施形態による1インチMD×3インチCDニットループテープ(ニューKLT2)。
2.1インチMD×1/2インチCDフック材料フック層(製品番号CS600、3M社(3M Company)製)
【0061】
【表4】

【0062】
装置:
1.一定速度のインストロン伸張試験機
2.1インチレーザー刃切断機および単一レーザー刃
3.11−1/4ポンドのローラ
【0063】
装置セットアップ:
1.フルスケールロードは20,000グラムにしなければならない。攻撃的な試験材料に応じて、50,000グラムとし、結果がフルスケールロードの20%〜80%にない場合にのみ調整する。
2.チャート速度20インチ/分
3.クロスヘッド速度は12インチ/分
4.初期ジョー分離は3インチである。
【0064】
手順:
1.両フック1インチMD×1/2インチCDの試料をカットアウトし、ストラッピングテープを用いて各試料の裏を強化し、リーダーを作成する。
2.フック材料をループ材料の中心に慎重に位置合せする。
3.11−1/4ポンドローラを用いて、追加の重りなしで結合したストリップの全長にわたってローラを押し、全長を引いて戻す。これを1サイクル繰り返す。連続的に途切れずに、試料から持ち上がることなく前後にローラを動かす。各サイクルを約2秒行う。
各試料について5回の連続サイクルを実施する。
4.引張り試験機のクランプを3インチ離して配置し、試料の自由端をクランプに配置し、フック試料を上部クランプとし、試料を中心にして、真っ直ぐ上げ、クランプに下げる。
5.チャートまたはコンピュータスクリーンを観察し、最大ピークに達したら試験を終了する。
【0065】
結果:
1.最大ピークをグラムで記録する。
2.従来のニットループテープ(KLT)および本発明の第2の好ましい実施形態によるニットループテープ2(ニューKLT2)の各々に関しておむつの左側および右側の観察された90度剥離力をグラフ3にまとめてある。
【0066】
【表5】

【0067】
グラフ3の開示内容から、本発明のニットループテープ2を用いると、おむつ3の両側の剥離力が良好に釣り合いがとれているのが分かる。
【0068】
上記の説明で、本発明の重要な特徴、運転方法および用途を明らかにしてきた。本発明を、好ましい実施形態を参照して説明してきたが、様々な変更または修正を、特許請求の範囲に挙げた本発明の範囲から逸脱することなく行えることは当業者には明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感圧接着層と、
前記感圧接着層上に位置し、それに結合されているフィルムバッキング層と、
前記フィルムバッキング層上に位置し、それに結合されているループ布層であって、第1の側と前記第1の側の反対の第2の側とを有し、各々に複数のループが形成された複数の平行な縦糸を含むループ布層と
を含み、
各ループが前記第1の側に向かってそれぞれ配向されていて、前記フィルムバッキング層に対して第1の角度を画定しており、前記第1の角度が約10°〜約80°である、ニットループテープ。
【請求項2】
前記フィルムバッキング層と前記感圧接着層との間に、それに結合された印刷層をさらに含む請求項1に記載のニットループテープ。
【請求項3】
前記第1の角度が好ましくは約20°〜約60°である請求項1に記載のニットループテープ。
【請求項4】
各ループの前記第1の角度が略同じである請求項1に記載のニットループテープ。
【請求項5】
感圧接着層と、
前記感圧接着層上に位置し、それに結合されているフィルムバッキング層と、
前記フィルムバッキング層上に位置し、それに結合されているループ布層であって、第1の側と前記第1の側の反対の第2の側とを有し、各々に複数のループが形成された複数の平行な縦糸を含むループ布層と
を含み、
同じ縦糸に沿ったいくつかのループが各々前記第1の側に向かってそれぞれ配向されていて、前記フィルムバッキング層に対して第1の角度を画定しており、前記第1の角度が約10°〜約80°であり、前記同じ縦糸に沿った残りのループの各々が前記第2の側にそれぞれ配向されていて、前記フィルムバッキング層に対して第2の角度を画定しており、前記第2の角度が約10°〜約80°である、ニットループテープ。
【請求項6】
前記フィルムバッキング層と前記感圧接着層との間に、それに結合された印刷層をさらに含む請求項5に記載のニットループテープ。
【請求項7】
前記第1の角度および前記第2の角度が好ましくは約20°〜約60°である請求項5に記載のニットループテープ。
【請求項8】
前記縦糸に沿ったいくつかのループの各々の前記第1の角度が略同じであり、前記同じ縦糸に沿った残りのループの各々の前記第2の角度が略同じである請求項5に記載のニットループテープ。
【請求項9】
請求項1に記載の前記ニットループテープでできた少なくとも1つのループ部分と、前記ループ部分の前記ループと係合可能な複数のフックを備えた少なくとも1つのフック部分とを含むフック・アンド・ループファスニングシステム。
【請求項10】
請求項5に記載の前記ニットループテープでできた少なくとも1つのループ部分と、前記ループ部分の前記ループと係合可能な複数のフックを備えた少なくとも1つのフック部分とを含むフック・アンド・ループファスニングシステム。
【請求項11】
前ウエスト領域と、
後ウエスト領域と、
前記前ウエスト領域と前記後ウエスト領域との間に延在するクロッチ領域と、
液体透過性トップシートと、
液体不透過性バックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に挿入された吸収体コア、ここで、前記トップシートおよび前記バックシートは、前記吸収体コアの長手方向の両端を超えて長手方向に外側に延在して、前記前ウエスト領域および前記後ウエスト領域において一緒に結合されて、それぞれ、一対の端部フラップを前記前ウエスト領域および前記後ウエスト領域の各々に形成している、
前記一対の端部フラップの間で前記バックシートに取り付けられた請求項1または請求項5に記載の前記ニットループテープの少なくとも1つのストリップであって、前記テープの前記縦糸が前記おむつの長手方向に平行であるストリップと、
バックシートのもう一方の一対の端部フラップの各々に取り付けられたタブであって、トップシートに対向するように形成された複数のフックを有するタブとを含む、使い捨て衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−176271(P2012−176271A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−113297(P2012−113297)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2007−519310(P2007−519310)の分割
【原出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】